ONE SS
「浩平起きてよ〜、ねえ公平ってばあ」
瑞佳の声が聞こえる。
「う〜ん、もう少し寝かせてくれ〜」
そう、俺は今猛烈に眠いのだ。
「そんなこと言ったって、今日は9時までに入らなくてはならないんだから。もう知らないもん!」
そこで目がさめる。
「長森、今何時だ!」
「もう8時過ぎてるんだから」
「すまん、でもおまえ良く目がさめたな」
俺達は今日の準備のために、昨日寝たのは…。
「3時だよ!」
「うお、お前俺の心が読めるのか?」
「はあ…、声出してたじゃない」
そんなこんなで、家を出たときはぎりぎりの時間だった。
着いたのは、8時55分なんて効率の良い時間の使い方なんだ。
ちょいと自慢したくなる。
「浩平ニヤニヤしてないで行くよ〜」
「え、まてまて〜」
ロビーに駆け込んで、受付を済ませ……。
「遅かったですね、間に合わないかと思いましたよ〜」
この声は、俺達の担当の神崎さんだ。
「挙式の日に遅刻するなんて誰もしませんよ」
「ゴメンナサイ神崎さん、浩平が起きなくって」
ほほを膨らませ、俺をにらみつける長森。
そう、今日は俺と長森が結婚する日だ。
婚姻届はを出すのは来週だけどな。
それにしても眠い、立ったまま寝てしまいそうになる。
「ファー」
返答代わりの欠伸。
「浩平!」
「まあまあ(笑)、準備しないと遅れますよ、さあ行きましょう」
「ほら長森、ぼおっとしてないで行くぞ」
「それは浩平でしょ」
「新婦さんはこちらへ、新郎の方はこっちですよ」
「長森、また後でな」
「うん、あ! 浩平あとでこれ読んでね」
長森から白い封筒のようなものを手渡された。
「おお、大人しくしてろよ」
「もう、それは浩平でしょ」
おれは、無造作に封筒をポケットに仕舞い込んで部屋に入った。
それからは、あれやこれやで思い出しただけで疲れる。
まるでモルモットだよ……。
一息着けるようになったのは、部屋に入ってから1時間後。
「えっと、タバコは…… ポケットかな」
着てきたジャケットを調べてみると、あったありました。
「やれやれ、これで一息着けますっと」
煙草を出したとき何かが床に落ちた。
封筒、そう言えばさっき長森から手渡されたっけ。
「それにしてもあいつ遅いな」
俺は椅子に座って煙草に火をつけ封筒を開けてみた。
「手紙じゃないか、どらどら」
それは長森の手紙だった、俺は煙を吐き出すとそれを読むことにした。
式まではまだ時間がある。
「浩平へ。
大好きな浩平へ。今、浩平の寝顔を見ながらこれを書いています。
私何かいているんだろうね、でも浩平の寝顔かわいいよ。
えっとね。
浩平がいなくなった1年間浩平のことばかり思っていました。
毎日毎日、浩平が戻ってきてくれるのを信じながら。
毎日が辛い日の連続だった、我慢できなくなるとうさぴょん
の声を聞くの。
そんな日が続き、私があきらめかけそうになった日。
浩平が戻ってきてくれた。
「もう一度付き合ってくれ」って皆の前で言っててくれたよね。
恥ずかしかったよ皆の前だもん、でも嬉しかった涙が出そうになった。
もうこれからはけっして浩平と離れない、けっしてって思ったの。
でも、浩平がいなくなったのは私のせいだったんだね。
浩平に言われるまで忘れてた。
ゴメンね、私のせいででも浩平はいつも私のそばにいてくれた。
私のせいであんなことになったのに。
私は明日、もう今日だね、浩平の妻になります。
浩平、これからも永遠に、ずっと一緒にいようね。
これは私の新たな誓いです。
大好きな浩平へ。
PS 今日からは瑞佳と呼んでね」
………俺は手紙に見入っていた。
煙草の火はとっくの昔に消えていた。
「……瑞佳……」
目から自然と涙が出てきた。
「浩平」
顔を上げると瑞佳がいた。
白いベールに、真っ白のウエディングドレス、肘まである手袋、
手にはブーケを持って。
「…瑞佳…」
俺は見入っていた、頭の中は真っ白だった。
「浩平どうしたの、目が真っ赤だよ」
ちょっと恥ずかしそうにしながら瑞佳は言った。
「綺麗だ…」
俺は一言言った、それは自然と口から出た言葉だった。
俺は、手紙を丁寧にたたむとジャケットに再びそれをいれた。
「浩平読んでくれたんだ…」
「瑞佳、有り難うホントに有り難う、これからもヨロシクな」
「浩平……」
「瑞佳、ずっと一緒にいような」
「浩平…」
瑞佳は泣き出した。
「オイオイ、泣くのはまだ早いぞ」
瑞佳を優しく抱きしめながら言った。
「そろそろ、写真を撮る時間ですよ。皆さんお待ち兼ねですよ」
神崎さんが呼んでいる。
「さあ、行くか」
「うん、でも式を挙げる前から私達目を真っ赤にしてなんか可笑しいね」
「ま、それも良いさ」
俺達は新たな輝く時間に向かって部屋を出た。
戻ります