一回読みきりボンドの妄想SS
千鶴の小道
第2回 千鶴さんの相談


春も近くなって寒さもやわらいできたある晩の電話から今回の話しは始まった。
それにしても、耕一にしても千鶴さんにしても、まあいいかあ。
話しを進めていくとしよう。


その電話はいつもの様に夜中近く仕事からかえって来て、遅すぎる夕食をとっている時になった。
一瞬耕一かなっと思ったが、あいつはこんな時間にかけてくるような常識は持っていないし、こんな時間ににかけてきてもても相手になってくれるとは思っていない。
「もしもし、ボンドです」
俺は、疲れと時間の遅さから多少の不機嫌さを隠さず電話に出た。
「あ、あの、私、柏木ともうします」
俺の不機嫌さに驚いたのだろう。
かけて来たのは女性だった、それも耕一と同じ柏木と名乗る女性。
でも千鶴さんがなぜ俺のところにかけてくるのか検討もつかなかった。
でもあの人ならこんな時間でもしゃべっても良いかなっと思ったのも確かだ。
「あの、もしかして柏木千鶴さんではないですか」
俺は気を取りなおして明るく答えた。
「え、は、はいそうです、でもどうしておわかりになったのですか」
「だって、柏木と名乗る女性で俺のところにかかって来る可能性のある人は千鶴さんしかいないから」
俺は笑いながら答えた。
「それもそうですね、あ、私ったら事故紹介もしないですいません」
こほんと、咳払いをして千鶴さんは言った。
「始めまして、柏木千鶴といいます」
「どうも、耕一のいとこのボンドです、噂は耕一からいやっと言うほど聞かされています」
俺は笑いを堪えながら言った。
「いやだ、耕一さん何をしゃべっているのかしら」
「いや、うらやましい事ばかり聞かされています、ところで千鶴さんどうしました?
耕一と何かありましたか?」
俺がこの一言を言った瞬間千鶴さんは今までとうって変わったように沈んだ声で答えた。
「ええ、そのことでご相談したい事があって、明日の土曜日はあいていますでしょうか」
「ええ、あいていますが」
俺はその変化に少々面食らいながら答えた。
「では、Tホテルの最上階のラウンジでお会いしたのですが」
千鶴さんは、皇居に面した東京でも指折りの最高級ホテルの名をあげた。
ブルーべりーパイが有名なホテルと言えばわかると思う、さすが大企業の会長だけある
「分かりました」と答え2時に待ちあわせをして電話をきった。


そして、次の日つまり土曜日、俺は東京のTホテルについた。
久しぶりの東京、そして何年かぶりで訪れたTホテル,
ここの最上階にあるラウンジは眺めがよくてお気に入りの場所だった。
入り口のカウンターで聞けと昨日の電話でいわれたように、
俺は入り口で聞いてみると眺めの好いある席に通された。


そこには窓の外をそっと眺める細身の美人が一人たたずんでいた。
ちょっとたれ目で、笑顔が美しそうな人だ。
俺が来たのに気ついたのかこっちを慌ててふり向くと愛らしい笑顔で俺を迎えてくれた。
彼女は大企業の会長という感じををぜんぜん見せず俺に挨拶をした。
「来てくださって、ありがとうございます。来てくださるか不安だったんですよ」
「はは、おきるのがちょっと辛かったです」
千鶴さんはちょっと照れたように微笑みながら言った。
この人の笑顔を見ていると俺まで「ドキ」としてしまう。
耕一が夢中になったのも分かるような気がする。


「ごめんなさい。お休みのところ」
「いえ、いいんですよ。ここのパイはおいしいですし、
耕一から聞かされていた千鶴さんに会って見たかったから」
俺は笑いながら答えた。
「ところで、今日は何でしょう、耕一とのことですか」
俺の問いに千鶴さんは顔を曇らせた。どうやらかなり悩んでいるようだ。
「はい実はそうです。耕一さんの事はご存じですよね」
千鶴さんはいかにも思いつめたように言った。
「ええ、知っていますよ」
俺は辺りに人がいない事を確かめていった。
「耕一があなたと同じって事でしょう」
「え、は、はい」
千鶴さんは驚きで言葉も出ない。
「安心してください、だれにも言いませんから。言えない理由があるんです」
千鶴さんは俺を見つめたままだ。
「それで」俺は先を急がせようと言った。
「あ、はい。実は先日耕一さんからプロポーズされたんです。」
「あいつ、とうとう言いましたか。おめでとうございます」
俺は恥ずかしそうに顔を赤らめている千鶴さんに言った。
それにしても、あいつとうとう言ったか。
耕一にしては上出来だ、しかしどうして彼女は悩むのだろう。
「良かったですね、耕一の事よろしくお願いします」
「はい、ありがとうございます。でも私」
「耕一と何かありましたか」
「いえ、耕一さんとは何もありませんし、愛しています」
「ならなぜ」
「ボンドさんはご存じですよね、耕一さんは鬼である事。そして耕一さんのお父様も同じである事を」
「ええ、知っています」
千鶴さんは何が言いたいのかやっと分かった。
「結婚したら、そうですよね」
「はい、でも私あの時のような思いはしたくありません」
「でも女の子だったら、大丈夫だと思いますけど」
「でも、男の子だったら、そう思うと私」
「子供を作らない手もありますよね」
俺は言って見た、けどそんなことではだめだろう事は分かっていた。
そして、俺は驚くべき事を聞いた。
「実は、いまお腹の中に」
なんと、突然の事に驚いた。
「耕一は知っているのですか」
「いえ、まだ伝えてありません」
千鶴さんが思いつめている事は十分わかった。
「千鶴さん、その心配はありませんよ」
俺は、千鶴さん目を見つめて言った。
とうとう言わなくてはならない時が来たのかな。


「なぜ、なぜ大丈夫なのですか」
「千鶴さん今から俺の言う事を驚かないで聞いてください、このことは耕一も知りません」
検討もつかないというような顔の千鶴さん、今にわかるさ。
「耕一がなぜ鬼を制御出来たのか分かりますか」
分からないと言うように顔を降る、そのしぐさもかわいい。
「耕一のお母さん、つまり俺の叔母さんも鬼だった事は知っていますか」
「そ、それは本当ですか」
「つまり、俺のおやじもおふくろも鬼の血を引いているのです」
「じゃあ、あなたも」
俺は、立ちあがりながら言った。
「そうです」
そして、俺は俺の中の鬼を開放した。
久しぶりの開放、しかも完全に変身してはいけないので出来るかどうか心配だった。
床のじゅうたんに足が沈みこむ、床がミシと音を立てた。ここら辺が限界だろう。
俺は鬼を戻した、どうやら出来たようだ。
ふと、気になって千鶴さんの方をみる。
千鶴さんは立ちあがって赤い目をしていた、そう鬼の目だ。
俺は、笑いながら言った。
「千鶴さん、もう良いですよ。戻ってください、床がぬけてしまいます。」
千鶴さんはほっとしたように元に戻った。
「あなたも鬼だったのですか」
「はい、そうです。でも人に明かすのは初めてですが、耕一も含めてですが。
でも制御は出来ていますよ」
「でも、制御出来る人がいるなんて」
「いや、俺のおやじつまり耕一のお母さんの兄も制御できます」
お腹に耕一の子がいる千鶴さんをこれ以上驚かせてもいけない。
「世の中には鬼を制御出来る人は結構いるのですよ」
「でも、鬼を制御出来する方法があると言うのですか」
「ええ、方法はあるのですよ。まあ、俺の話しを落ち着いて聞いてください」
俺は、我が家系に伝わる話しを千鶴さんに話す事にした。
絶対に他人には明かしてはならないと伝わっている我が家の秘密だ、
ご先祖様は怒っているだろうと思う。
耕一の幸せのためと、自分に言い聞かせ話しを進めた。


 うちの家では、男子が18歳になると1週間家の中に閉じこめられます。
もちろん、鬼の事です。この1週間で鬼になるということから始まって、
これからの生きかたまで聞かされるわけです。
鬼の姿を見たのもこの時が初めてでした、正直な話し腰がぬけるほど驚きました。
親父のからだがみるみるうちに変化していくのですから。
この時の話しの中で重要な点があります。
鬼の血をひくものは、鬼の血をひくものとしか一緒になってはいけないと言う事です。
片方だけではだめです。うちの家では代々その教えを守って来たのです。親から子へとね。
耕一の場合は当然鬼を制御出来たんです。悲劇なのはあいつの御父さんですね。
千鶴さんや耕一の御父さんは制御出来るはずがなかった。
つまり、千鶴さんあなたのお子さんは耕一との子である限り心配いりません。
大丈夫鬼の血を制御出来ますから。


「耕一さんはその事を知らなかったのですか」
「そうです、あいつの場合親父さんは離れて暮らしていたし、お母さんはなくなってしまった」
俺はつづけて言った。
「完全に俺のミスです。耕一の親父さんと連絡を取ってこちらでやろうとしたんですが間にあわなかった」
そう言うと千鶴さんは、笑顔でこう言った。
「耕一さんも私も今一緒に生きているのですから、良いじゃないですか」
「千鶴さんありがとう、さて俺のつまらない話しは終わりです。
今度耕一を閉じこめて修行させなくてはいけませんね」
俺が笑いながら話すと千鶴さんは。
「おねがいしますね」
と笑顔で答えてくれた。もう大丈夫だろう。
「さて、せっかく東京に来ているのだからあいつに電話して会ってやってください」
そういって、俺が立ちあがりかけた時。
「あの、ボンドさんは決まった人はいらっしゃるのですか」
「いえ、耕一がうらやましいですよ」
「今度、うちへおいでになりませんか。きっと妹達も歓迎しますから」
千鶴さんの思いもかけない誘いに正直言って驚いた。
「ええ、耕一と御邪魔させていただきます」
「絶対いらしてくださいね」


俺は耕一と千鶴さんの幸せを願いながらホテルを出た。
辺りはすっかり日が沈もうとしていた。春だとはいえまだまだ風は冷たく身震いしそうになる。
しかし、心の中は何故か暖かった。
「そうか、耕一もとうとう親父になるのか」
おれは、何だかうれしくなってそうつぶやくと、駅へ向かうために足を向けた。


戻ります

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