アトラスの転校生3

 

チュンチュンチュン・・・

 

「・・・朝か」

 

今日も翡翠が来る前に起きることが出来た。

 

翡翠が来るまでまだ時間がある・・・昨日のことを少し思い返してみるか。

 

シオンを一通り案内して・・・特に珍しがることもなかったので、少し拍子抜けだったが。

 

帰りにどこが寄っていこうかと思ったが案の定シオンに・・・。

 

「秋葉が待っています。早く帰りましょう」

 

と、釘を刺されまっすぐ屋敷へ・・・。

 

夕食を食べた後、シオンは明日からの準備と今日のことをまとめるだか何だかですぐに部屋に入ってしまい、俺も特にすることがないので部屋に戻って・・・。

 

そのまま寝てしまったんだよな・・・どうりで朝早く目が覚めるわけだ。

 

早く目が覚めたことだし、シャワーでも浴びてすっきりすることにしよう・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・・・・。

 

・・・。

 

ふぅ・・・すっきりした。

 

バスタオルで頭を拭きながら部屋に戻ろうと廊下を歩いていると・・・見慣れた姿が・・・。

 

あれは・・・翡翠だ、俺の制服を持ってうろうろしている。

 

「おはよう、翡翠」

 

「あ・・・し、志貴さま。おはようございます」

 

今まで慌てていた顔が、ほっと安堵した顔に変わる。

 

「ごめん、勝手に起きちゃって・・・シャワー浴びていたんだ」

 

「いえ、こちらこそお目覚めになられたときに側にいれず、申し訳ありません」

 

「いや、こっちが勝手に起きているんだから・・・」

 

こんなことを言っても翡翠が納得するはずもないけど・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

翡翠はしばらくこっちを見て考え事をしていたようだが・・・。

 

「では、着替えましたら居間までお出でください」

 

制服を手渡すと居間のほうにいってしまった。

 

何を考えているか知りたいところだが・・・もしかして昨日の琥珀さんの話に関係しているかもしれないな。

 

そうと決まればすぐ着替えて琥珀さんに・・・。

 

「おはようございます、志貴」

 

・・・声がした方向を振り返ってみると、そこにはシオンがいた。

 

「あぁ、おはようシオン・・・もう着替えているのか、早いね」

 

「慌てて用意するのは、好きではありませんから」

 

・・・確かにそうだ。

 

「それよりも、朝からシャワーを浴びていたようですが・・・志貴は朝はそんなに強くないと思っていたのですが・・・」

 

「あぁ、夏休みはちょっと惰眠しすぎたかなと思ってね。二学期も始まったし少し心を入れ替えようかなと思って」

 

いつまで続くかわからないけど・・・。

 

そうだ、シオンは翡翠の行動の変化について何か知っているだろうか。

 

「あっ、それでシオン1つ聞きたいことがあるんだけど・・・」

 

「はい、私に答えられることであれば」

 

「昨日の朝からかな、翡翠の様子がなんだか変なんだよね。琥珀さんは何か知ってるみたいだったけど、教えてくれなくてさ。シオンも何か知っていたら、教えて欲しいかなと思って」

 

「具体的にはどのような感じなのですか?」

 

「昨日の朝さ、二学期も始まるからかもしれないけど、いつもより早く目が覚めたんだ。で、翡翠もいつも大変だし、翡翠に起こされなくても一人で起きる努力するよっていって・・・そしたら、何の誤解からか、翡翠怒らせちゃったみたいで・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「あの後、誤解は解いたつもりなんだけど、今朝もかな・・・起こされる前に目が覚めて、いつもより、早いからシャワー浴びてきてさ。翡翠、俺のこと探してたみたいだけど、やっぱりそっけなくてね」

 

「・・・なるほど、わかりました」

 

「え・・・わかったって何が?」

 

「時に志貴、あなたは今まで鈍いとかそのようなことを言われたことがありますが?」

 

シオンは俺の質問には答えずに逆に質問をしてきた。

 

「う〜ん、そうだなぁ。秋葉にはその手の言葉は何度か言われてるし、翡翠には・・・愚鈍とか言われたことがあるな」

 

あれは、結構きつかったな。

 

思っていることがあるならはっきり言ってくれと言ったら、直球できたからなぁ。

 

「はぁ・・・自覚がないとは。何故あなたは戦いと日常生活とではこんなに差があるのでしょう。理解に苦しみますね」

 

・・・よくわからないが多分誉められていないのだろう。

 

「志貴、誰にでも優しいのは大変結構ですが、その優しさももう一度根本から考えてみることをお勧めします。もっとも自覚がないのですから、仕方がないのかもしれませんが」

 

それだけ言うと、シオンは言ってしまった。

 

俺も早く着替えて、居間に行こう。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・・・・。

 

・・・。

 

居間に行くといつもの光景に若干の上書きがされていた。

 

おそらくは俺の朝ごはんをつくっているのだろう琥珀さんが台所でパタパタとスリッパの音を立てながら、せわしなく動いている。

 

ソファの後ろでは翡翠がひかえている。

 

ソファでは秋葉がいつものごとく紅茶を飲んでいる。

 

そこにもう一人、シオンがいた。

 

秋葉と同じく紅茶を飲み、話している。

 

シオンが居間にいるのは夜だったからな、朝は寝ていたし。

 

「兄さん、おはようございます。いつまでそこに立っているのですか?」

 

「あ、あぁ。秋葉、おはよう」

 

「兄さん、今日も早いのですね」

 

その言葉に翡翠がピクっと反応するのを見逃さなかった。

 

やはり、俺の早起きと何か関係があるのだろうか。

 

ここにいても埒があかないので、朝ごはんを食べることにする。

 

「じゃあ、ちょっと朝ごはん食べてくるよ」

 

そう言って、台所のほうへ向かう・・・。

 

「あっ、志貴さんおはようございます。すぐに用意しますね」

 

「おはよう、琥珀さん。うん、おねがい」

 

すぐにテーブルに朝ごはんが用意される。

 

「いただきます」

 

「どうぞ〜、たくさん食べてくださいね」

 

・・・いや、朝からたくさん食べるのはさすがにきついんですけど。

 

「そういえば・・・琥珀さん・・・」

 

ちょっと小声で琥珀さんを呼ぶ。

 

「あっ、内緒話ですね〜何ですか〜志貴さん?」

 

ちょっと嬉しそうだ・・・ただ内緒話ってわかっているんなら、はしゃぐのはやめてほしいかも。

 

「実はですね・・・」

 

今朝あったことを説明する。

 

・・・・・・・・・。

 

「・・・というわけです。昨日もそうだったし、琥珀さん何か知ってるみたいだから、できたら教えて欲しいなぁと」

 

「そうだったんですね。昨日説明しようとしたんですけど翡翠ちゃんに邪魔されちゃいましたけどね」

 

「そうだった、玄関前で教えてもらおうと思ったら、いきなり翡翠が現れて琥珀さんのこと羽交い絞めにしたんだった」

 

「はい、あれはびっくりしましたよ。驚くほど決まったもう少しでおとされちゃうところだったんですよ」

 

やけにうれしそうに言うね、琥珀さん。

 

「でも、今なら・・・実はですね。翡翠ちゃんは志貴さんに早く起きられてしまうと困ってしまうんですよ」

 

「え・・・困るって何が?」

 

寝坊するより、早起きのほうが断然いいのだから困ることなんてあるんだろうか。

 

「はい、翡翠ちゃんの朝の楽しみというか・・・その日一番の楽しみが奪われてしまうんですよ」

 

・・・全然わけがわからない。

 

それと俺の早起きが関係があるのだろうか。

 

えっと、俺が寝坊するというか、今までの起床時間だと必ず翡翠が起こしにきてくれる。

 

逆にこの二日間は俺が勝手に早起きにしてるから翡翠は起こしにきていない・・・。

 

・・・つまり。

 

「ふふ、わかりました?」

 

「えぇ・・・でも理由がわからないですね。翡翠が俺のこと起こすのは大変なだけであって、別に楽しみなことではないかと」

 

「ちっちっち〜。それが違うんですよ」

 

琥珀さんは人差し指が立ててかぶりをふる。

 

「翡翠ちゃんにとっては志貴さんは起きないほうがいいのです。遅刻になることは好ましくないのですけど」

 

琥珀さんは遠まわしに説明しているような気がする。

 

「琥珀さん何か遠まわしに言っていませんか?」

 

「あ、わかっちゃいました?どうせなら志貴さん自身に気づいてもらいたかったんですけど。仕方ないですね・・・実は・・・」

 

その刹那・・・。

 

「・・・ぐ」

 

琥珀さんが崩れ落ちる。

 

「琥珀さん!?」

 

いや、崩れ落ちる瞬間翡翠が抱えていた。

 

「お見苦しいところをお見せしました。失礼します」

 

琥珀さんを抱えていってしまった。

 

・・・翡翠は怒らすと怖いのかも。

 

朝食を食べ終え居間に行くと、秋葉とシオンがまだ話していた。

 

「そう、わかったわ。また何かあったら教えて頂戴」

 

「わかりました。しかし、秋葉。そんなことしなくても志貴は学校では優等生で、クラスでも人気があるようですが」

 

「それは上辺だけなの。兄さんは普段は優等生だけど、ある特定の人物と一緒になると何をしでかすかわからないんだから」

 

「代行者ですか?」

 

「そうね、それと乾先輩。兄さんは彼と一緒にいるときのほうが何かと危険ね」

 

「確かに彼と志貴はほかのクラスメイトとは何か違う感じがしますね。わかりました注意しておきます」

 

「お願いね」

 

・・・・・・・・・。

 

何か怖い会話をしているな・・・。

 

折角秋葉とシオンと紅茶を飲もうかと思ったんだが、行くに行けない状態になってしまった。

 

しかし・・・秋葉はどこから俺と有彦との関連を知っているだろうか。

 

確かにあいつと絡むとろくなことがなかったのは確かだけど・・・。

 

そういう情報を知っている遠野家の当主のほうがなんだか怖い気がした。

 

続く

 

 

 

 

あとがき

シオンメインなのに、翡翠がメインっぽい展開になってしまいました。そして、学校がメインなのに、何故か屋敷がメイン・・・話が一向に進まない。そんな展開になってしまいました。でも、シオンが朝の段階で居間にいるという話は書きたかったんですよね。文章中にもあるように、シオンは半吸血鬼ですから朝は出てこれなかったという設定が私の中でありましたから。まぁそれもかけたので、次回からは学校メインで書いていきたいなぁと思いたいですね。ただ、それでも秋葉とシオンの会話は面白いのでなかなかそうはいかないかもしれませんけどね。ではまた次回のSSでお会いしましょう。

 

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