アトラスの転校生11

 

「テストの結果なんだけど、あんまり思わしくなくて・・・」

 

秋葉がテストの日を知ってることはあえて聞かないでおいて、聞いてもムダだろうから。

 

「そしたら、シオンとアルクェイドが勉強見てくれるっていうから」

 

「・・・・・・・・・」

 

「最初は断ったんだぞ。でもなんか断りきれなくなって」

 

「まぁ、シオンと言い争っても兄さんが勝てるわけないものね。わかりました、では居間の方に行きましょうか」

 

「あ・・・あぁ」

 

秋葉とともに居間に向かう。

 

「あ・・・戻ってきた、何やってたのよ」

 

居間に行くなりアルクェイドから非難があがる。

 

家に連れてきてそのまま放っておいたから、当たり前なんだけど。

 

「あぁ、ごめん。それとなんか取り乱しちゃったみたいで・・・」

 

「やはり、秋葉はなんともなかったのですね」

 

シオンは何事もなく平然とつぶやく・・・

 

「悪い・・・シオンが何度も忠告してくれたのに、気づかなくって」

 

「いえ、悪いのは志貴だけではありません。いつもならきっぱり否定するところが二次的要素が入り、否定することができなかった秋葉にも問題があるのですから」

 

二次的要素!? 何だそれ?

 

「シオン、それって・・・」

 

「兄さん・・・それはもういいですから、改めてこの状況を説明してくださらないかしら」

 

あ、何か機嫌が悪くなっている。

 

勉強教えてもらうという名目でアルクェイドを連れてきたのに、紅茶を飲み、クッキーを食べ、完全にくつろぎモードに入っているのを見たら納得はいかないだろう。

 

「あぁ、わかった。とりあえず、俺はどうしたらいいか教えてほしいんだけど」

 

何か、偉そうな態度だが、もともと一人で勉強するつもりだったし、教えてくれるといっても今まで勉強なんて見てもらったことなんかなかったから、どうしていいかわからないのも本当のところだ。

 

「そうですね、では・・・今日のテストの自己採点をしてみましょうか。志貴のことですから問題用紙に解答くらい書いているでしょう」

 

まぁそうだけど。

 

「じゃあ・・・はい」

 

今日あった五科目のテストの問題用紙をシオンに渡す。

 

「では、採点します。それと一人では時間がかかってしまいますから・・・ちょうど採点する側も5人いますし、手分けしてやりましょう」

 

言うがはやいか、シオンは問題用紙をアルクェイド、秋葉、翡翠、琥珀さんに渡していく・・・って、何で秋葉と翡翠と琥珀さんにも渡すんだ!?

 

しかも妹に採点されるというのは兄としてのプライドが・・・もともとプライドなんてないけど。

 

「何か言いたそうですね、志貴」

 

「いや、何で秋葉達にも問題用紙を渡すのかなって・・・」

 

「秋葉は学力は志貴より遥かに良いですから。翡翠や琥珀においても同様です。志貴より悪いということはありえないでしょう」

 

・・・俺ってなんなんだろう。

 

ただ、あまりごねると翡翠あたりが謝ってきそうなので黙っていることにする。

 

そして気づいたのだが、多種多様というか随分とみんなの丸つけに癖があるというか。

 

まず、アルクェイド・・・。

 

「あはは、また間違っているぅ。こんなの簡単なのにぃ」

 

とにかくうるさい・・・。

 

シオン・・・。

 

間違いを発見すると、正しい解答およびその考え方、それに関する応用問題まで書いてくれている。

 

シオンに教えてもらうというのは良いかもしれない、シオンって結構家庭教師に向いているのかも。

 

秋葉・・・。

 

何か・・・間違いを見つけると、一瞬だが髪が紅くなるのは俺の目の錯覚だろうか。

 

それに加えて、無言の視線が突き刺さる・・・まるで「兄さん、こんな問題も解けないんですか」と言っているようだ。

 

シオンと違って秋葉は家庭教師には向いていないと思う・・・絶対に。

 

翡翠、琥珀さん・・・。

 

翡翠が拒んだのか、琥珀さんが遠慮したのか・・・二人一組で採点をしている。

 

といっても、琥珀さんは採点を翡翠にやらせて、自分は一人楽しんでいるという感じだ。

 

翡翠は・・・というと、あっ目が合った。

 

どうやら、間違いを見つけたらそれを本当に×をしていいか迷っているらしく、まず俺をみる、次に周りを見渡してまた俺を見る。

 

最後に琥珀さんに何か話しかけ、琥珀さんが一言いうと、ちら・・・と俺の方を見てからまた採点に戻るようだ。

 

・・・みんなの採点を見ていたが、今回そんなに俺の点数って悪かったのか!?

 

確かに、今回は勉強する時間がまったくなかったわけで。

 

夜はシオンに付き合っていたし、昼間は、夜出歩いていることをみんなにばれないようにして、無理やり起きていたから、ほぼ眠気との戦いだったからなぁ・・・シオンが来る前もアルクェイドが来たり、シエル先輩が来たりしていたなぁ。

 

とはいっても、結局俺がさぼっていた結果がこれだし、言い訳のしようがない。

 

でも、俺ってまだ進路決めていないんだよなぁ、うちのクラスでもほとんど進路決めていて決めていないのは俺と有彦くらいのものだ。

 

有彦の場合は・・・。

 

「進路?いいか遠野。道ってのはなぁ、ただ決められた道を進んでちゃ意味がねぇんだよ。俺の進む行き先に道なんてねぇ。道は俺の後ろに出来るもんだ」

 

よくわからないことを言っていた・・・要するにまだ何も考えていないってだけなんだろうけど。

 

「さて志貴、採点が終わりましたが・・・良いとはお世辞にも言えませんね。以前よりもかなり下がっている気がしますが」

 

「・・・・・・・・・」

 

「今回の成績に関してはもう過ぎてしまったことです。このことを悔やむより次どうするかを考えたほうがいいと思いますので、早速勉強の方を始めましょう・・・と、どうしたのですか志貴? 何か納得いかない点でもありましたか?」

 

「いや、軽く感動していたところ」

 

これが秋葉なら・・・

 

「何故こうなったのか教えてくださらないかしら、兄さん。もちろんただ怠けていたなんて言い訳は聞きたくないですけど、納得させる理由が欲しいですね」

 

とか絶対言ってくるしなぁ。

 

結局何言っても反論させるだけで説教二時間くらい・・・泣く泣く部屋に帰るというのがいつものパターンだし。

 

「感動? 勉強ができることに感動するんですか。そうですか、やはり志貴は勉強がしたかったのですね、申し訳ありません」

 

「いや、そういう意味じゃないから。とにかく始めようか・・・って場所は何処で」

 

確かアルクェイドは俺の部屋に来ちゃいけない決まりになっているから、どこかほかの場所が必要なんだけど。

 

でも、そのためには秋葉の許可がいるから・・・。

 

「図書館にでも行くか?」

 

「え〜、外暑いしまた外に行くのやだ」

 

間髪入れずアルクェイドから反対の声が上がる。

 

確かに夏休みが終わったとはいえ、残暑はまだまだ厳しい。

 

いかにこの屋敷が冷房関係がついていないとはいえ、外よりかははるかに快適である。

 

だが、確かアルクェイドは秋はとシオンとの約束で俺の部屋には入れないはず。

 

ここでやるといっても翡翠と琥珀さんの仕事の邪魔になるだろうから。

 

・・・そういえば、この屋敷には書庫か何かがあったような。

 

「なぁ、秋葉・・・書庫って開放してもらえないかな」

 

「書庫ですか・・・」

 

秋葉はチラ・・・とアルクェイドを見る。

 

「・・・・・・?」

 

「まぁ、いいでしょう。あそこなら間違いも起きないでしょうし、シオンも一緒ですし。わかりました開放します」

 

「決まりだな、じゃあ俺もちょっと準備してくるからちょっと待っててくれ」

 

今、気づいたことだが、まだ帰ってきて着替えてなかったんだよな。

 

「では、私達も準備をしましょうか」

 

「準備〜!? ただ、志貴に答え教えるだけでしょ。準備なんかと思うけど」

 

「私達も仕事に戻ろっか。翡翠ちゃん」

 

「はい・・・あっ、姉さん片付けは私がしますから」

 

みな思い思いに居間を後にしていく。

 

ただ一人の人物を残して・・・。

 

「どうしたんだ、秋葉?」

 

「何でもありません。私だって忙しいんですから」

 

そういい残すと、スタスタを去ってしまう。

 

何怒っているんだ?

 

とりあえず、準備というか、着替えてこよう。

 

居間を後にしようとしたとき・・・。

 

「琥珀、ちょっといいかしら」

 

そんな声が聞こえてきた。

 

続く

 

 

 

 

番外編

 

何故・・・納得がいかない。

 

どうして兄さんはあそこで私に頼らないのかしら。

 

私はいつでも兄さんのことを考えて、兄さんの要望なら何でも受け入れる用意があるのに。

 

今回の夏休みの出来事もそう・・・結局兄さんは私に一言の相談もすることなく、事件を解決してしまった。

 

この土地の管理者として闇のものを払うのは遠野家の仕事である。

 

シオンは、シオンなりの事情があり、あの吸血鬼を追っていたわけだが、兄さんはシオンとペアを組んでしまった。

 

最初あの2人を見たときは、どうしてやろうかと思ったが、シオンの事情を知れば納得も出来た。

 

それに、この町に住む異端の者の中では唯一気の許せる存在でもある。

 

しかし、今回も兄さんは私に何も言ってこない。

 

納得がいかない・・・納得がいかないから腹が立つ。

 

「どうしたんだ、秋葉?」

 

人がこんなにも悩んでいるのに、兄さんは平然と話しかけてくる。

 

「何でもありません。私だって忙しいんですから」

 

反射的に、怒鳴ってしまい居間を後にする、後で絶対後悔するってわかっているのに。

 

・・・でも、気になる。

 

「琥珀、ちょっといいかしら」

 

「はぁい、お呼びになられましたか、秋葉さま」

 

「後で、あの三人にお茶を持っていってくれるかしら?」

 

「えっと・・・はい、わかりました。お茶を持っていくのは建前で、3人を監視しろってことですね」

 

何で、こんなに鋭いのかしら。

 

「違うのよ。これは・・・」

 

「わかっていますから。そうですねぇ、志貴さんもあそこで秋葉さまにも手伝ってほしいって言えばいいんですけどね。それを言わないところがまた志貴さんの良いところなんですけど。当の本人としてはそれは辛いところですよね」

 

「もういいわ。とにかく頼むわね」

 

いろんな意味でやっぱり琥珀は油断ならない。

 

こちらの考えているかを見透かしているかのようだ。

 

「とにかく、何か対策を考えなければ」

 

 

 

 

あとがき

これ、書かなくてなって何ヶ月のレベルじゃないですね。すでに書かなければという縛られたものではなく、娯楽でのんびりと書いています。そう、ふとしたときに、書いてみる。これが結構良いみたいです。事実このあとがきを書いている場所も新幹線の中だったり・・・つまりは仕事中というか移動中というか。

さて、今回は素直になれない秋葉を中心にという感じで。もっと素直になったらいいと思うんですけど。妹キャラであり、ツンデレというんでしょうか。空の境界の鮮花はもう少し素直だった気が。でも、あまり秋葉に素直になられても困ってしまうという人が大勢いるかなと、そんな最近ツンデレもいいかなと思い秋葉の株が急上昇しています。では、また次のSSでお会いいたしましょう。

・・・そういえば今回はシエル先輩は一回も出てこないですね。

 

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