アトラスの転校生13
遠慮している・・・か。
「シオン、それは・・・」
いかに心を許した友人だとしても、人の心の部分に土足で踏み込まれるのは納得がいかない。
「いいえ、エーテライトは志貴に預けましたから。ただ、ここに来るまでに、貴方たちのことは調査済みでしたから」
「仮にエーテライトを使えば相手の考えていることはわかりますが、心の深層部分まではわかりません」
シオンはこちらの疑問をあっさりと否定してくれた。
「すまない、早とちりしちゃったみたいだ。そうすると俺の普段の行動か・・・そんなに違ったりするのか?」
「いえ、違和感を感じるのは些細なことです。私はこの屋敷において第三者的な立場です。それで感じるのかもしれませんね」
「う〜ん、遠慮しているというか・・・何ていうのかな、自分の行動に秋葉達を巻き込みたくはないっていうか、理由としてはそんなもんだよ」
かいつまんで説明してしまえば確かにそんなものである。
「それは理由というよりは言い訳というふうにとれるのですが」
「うわ、相変わらず厳しいなシオンは」
「それは、志貴が真実を語らないからです。私はではそんなに相談相手になりませんか」
そういう言い方はずるい気がするが、まぁいいか。
俺の周りで相談にのってくれそうな人はシオンしかいないみたいだし。
ちょっと前まではシエル先輩がのってくれたけど、今は何ていうか・・・相談しにくい。
シエル先輩は結構物事を客観的に見てくれて的確なアドバイスをくれていたりしていたのだが、よくわからないが相談にしにくい人になってしまった。
あの人にもいろいろとあるということなんだけど。
「きっかけは・・・今思えばなんて事のないことだったんだ」
ぽつりぽつりと話し始めた。
今から約一年前、七年ぶりに有馬の家から遠野の家に戻ってきたときのこと。
「あの時、俺は四季と意識を同調していて、自分は殺人鬼かもしれないって悩んでいてさ、その時はシエル先輩に相談にのってもらっていたんだ」
「その時かな、秋葉が何か勘違いしたみたいで、秋葉が俺とシエル先輩はつりあわないとか言い出してさ」
「俺にしてみれば、秋葉達に自分がおかしな人間かもしれないなんて知られたくなくて、シエル先輩に相談していたんだが、いきなりそんなこと言われて・・・売り言葉に買い言葉だったんだろうな」
「何も知らないのにシエル先輩のこと悪く言わないでくれって言ったんだ」
「それに対して、秋葉も怒ったというわけですね」
「あぁ、兄さんも遠野家のこと何も知らないのに勝手なこと言うなって言われたよ」
あの時の秋葉、本当に怒っていたしな。
「これがきっかけかな。こっちのことなんか気にも留めないで有馬の家で平々凡々と暮らしていて、ひょっこり帰ってきていきなり口出しされたりしたら、誰だって怒るよな」
「しかし、志貴を呼び戻したのは他ならぬ秋葉なのでは?」
「確かにそうだけど、それはきっかけに過ぎない。事実俺は帰ると決めたんだし。実際有馬の家に残ることも出来たんだけどね。何でかな・・・出来なかった」
そう・・・あの家では、俺は家族になることが出来なかったから。
「志貴?」
「あぁ・・・悪い、話がそれちゃったな。話を戻すけど、それで秋葉と喧嘩してさ、いろいろ自分で考えたんだよ。自分がここにいるだけでどれだけ秋葉に迷惑をかけているか」
「シオンも知っているだろうけど、俺は遠野の人間じゃない。先輩とかに言わせると、俺の一族は遠野とは真逆の存在、天敵みたいなものなんだってさ。そりゃあ、親戚連中もいい顔しないよな」
「正直何度も家を出ようかと思ったよ・・・いろんなこと踏まえて、でも・・・何度考えても、俺はこの家が好きだし、居たいと思っている」
「ただ・・・」
「ただ・・・何ですか?」
「俺はこの目・・・この目が悪いものを引き寄せるって言われたとき、今度のこともそうだけど、あぁ俺が原因なのかなって思うとやっぱり秋葉達にはね、迷惑をかけられない。秋葉たちには普段どおりの生活をおくってもらいたいしね」
・・・まぁ、いつもばれて迷惑をかけているわけだが。
「ごめん、うまく説明できないな」
「いいえ、だいたいわかりました。志貴の中でさまざまな葛藤があり、結果志貴は秋葉たちと若干の距離を置いているというわけですね」
「距離ってほどでのものではないけどね」
何かはしょりすぎた気がするけど、これなら最初に俺が説明したのとあまり変わりがないような。
「だから、今回に関しても秋葉に頼まなかったわけですか?」
「う・・・それはちょっと、違うかもしれないけど、まぁそういうことにしておいてくれ」
「志貴? なにやら言葉が不自然で理解しがたいのですが」
「気にしないでくれ、頼むから」
勉強に関しては、シオンに頼むのが一番いいって思っただけだし、秋葉が俺の勉強を見るのは兄としてどうかと思うし、何よりも・・・秋葉は怖い、そんなことは口が裂けてもいえないが。
「あぁ・・・志貴って本当に馬鹿だねぇ」
突如、アルクェイドの声がした・・・というかいたな、そういえば。
「いきなり何だよ。お前漫画読んでいたんじゃないのか?」
「ん〜?読んでたよ。でも、志貴たちの会話も聞いていたから。志貴があまりにも馬鹿なこと言ってるから、集中できなくなっちゃたの」
「馬鹿なことって何だ、こっちは真面目な話をしているのに」
「馬鹿なことは馬鹿なことよ。志貴はそう思っているかもしれないけど、その中に妹の考えは入っているわけ?」
「いや・・・それは・・・」
聞いてはいないけど。
「でしょ?全ては志貴の憶測なわけ。志貴は迷惑なんて考えているかもしれないけど、そんなのは志貴の思い込みだけであって、案外相手は気にしないものよ」
「・・・・・・・・・」
意外だ・・・アルクェイドにこんなこと言われるなんて。
「何?じっと見たりして」
「いや、お前も案外いろいろと考えているんだなって思ってさ」
「む〜何よ失礼ね。まるでいつも私が何も考えていないみたいじゃない」
いや、実際そうだろ。
「じゃ、そろそろ続きやろうか」
アルクェイドのおかげで、何だか胸のモヤモヤがスッキリした気がする。
「そうですね。今なら勉強もはかどることでしょう」
「あっ、今からは私も見てあげる・・・みっちり勉強みてあげるんだから」
「お前・・・さっきの怒っているのか?」
さっきまでこっちのことなんか気にもせず漫画読んでいたくせに。
「当たり前でしょ・・・志貴はいつだって私にきついこというんだから、そのお返し」
「ははっ、お手柔らかに頼むよ」
これが終わったら・・・秋葉と一度話してみてもいいかな。
とりあえずは、今目の前にある物を片付けるとするかな。
続く
あとがき
自由気ままに書いています。さてさて、自分でもこの前書いたのはいつだったか忘れていますわ。今現在(2006年11月19日)特にやりたいものがないので、ちょいちょいと書いた次第ですよ。まぁ、この調子でつらつらと書けたらいいのですが、何しろ私が話しを読み返していますからね・・・駄目だこりゃ、次いってみよ〜〜〜。