アトラスの転校生7

 

事務室にシオンの教科書を取りに行き教室に戻っている時・・・教室に近づくにつれ、妙な視線を感じていた。

 

過去に経験のあるこの視線・・・・・・なるほど、そういうことか。

 

いうまでもなく、妙な視線は男子学生のものである。

 

留学生という名目のもと、うちの学校に来たシオン。

 

ましてやとびきりの美人ならば、注目も集まるだろう。

 

そして、向けられる俺に対する敵意の視線。

 

「また、遠野か・・・。あいつこれで、何人目だよ」

 

朝練か何かで早く来た学生だろう。

 

通り過ぎたあと、男子学生の話声が耳に聞こえてくる。

 

何人目って・・・。

 

「この間、シエル先輩と街で歩いているのを見たぞ」

 

それは、メシアンに言ったときのことだな。

 

先輩はメシアンに一人で行くことがない、必ず俺か有彦を連れて行く。

 

先輩曰く・・・。

 

『一人で行くと、いつのまにか財布の中身がなくなっているんです。不思議な現象ですね』

 

ということらしい・・・財布がなくなる前に止めてくれる人が必要らしい。

 

まぁ、俺の場合は慣れているからいいけれど、シオンはどうだろう。

 

チラ、とシオンの顔をうかがっている・・・表情はいつもと同じ、特に気にした様子はないようだ。

 

「どうしました、志貴?」

 

シオンの顔を見ながら歩いていたせいだろう、歩みが遅くなったのに気づき、問い掛けられる。

 

「いや、何でもないよ。」

 

「そうですか。先ほどから感じるものに対して私は何とも思っていませんのでお気になさらずに」

 

何だ・・・気づいていたのか。

 

「そっか」

 

「気にしても仕方のないことですし。私に問題があるとは思えません。志貴の日頃の行いに問題があるのではないですか?」

 

なかなかにきついことをすぱっと言ってくれるな。

 

「いや・・・それは、そうなんだけど」

 

これって、俺のせいか??

 

日頃の行いはお世辞にもいいとはいえないけど・・・。

 

俺の周りにいる女性陣が全員美人揃いというだけなんだと思うのだが。

 

「志貴の学校生活に関してだけいえば問題があるとは言いがたいですね。それに、こんなことを気にしていてはこれから乗り切れないと思います。今日は真祖が名目上留学生としてくる日なのですから」

 

・・・・・・。

 

「そうだった」

 

つい、さっき決まったことをつい忘れてしまっていた。

 

「そういうことです・・・頑張ってください志貴。私としても真祖と会える時間は長いほうがいいですし」

 

俺としてもまるくおさまるのなら、それが一番いいんだけど、不安はすごい残るんだよな。

 

「とりあえず、教室に行きましょう・・・志貴に教科書を持ってもらっているのも悪いですし」

 

「そうだね、行こうか」

 

教科書一冊だと全然重くはないのだが、全科目の教科書、それに資料集とかもあわせると結構な重かったりする。

 

・・・・・・。

 

ガラガラガラ

 

教室についたが誰もいない・・・だが、もう少しすれば部活の朝練のやつとか週番のクラスメイトがくるだろう。

 

・・・それは、何かまずいのかもしれない。

 

教室には俺とシオンしかいない・・・。

 

そこへ、クラスのやつが入ってきたらどう思うだろう・・・。

 

間違いなくいい展開にはならないな。

 

「志貴」

 

「え・・・何?シオン」

 

「私はちょっと用事があるので・・・いろいろと調べたいこともありますし。ホームルームまでは帰ってきますので」

 

「あ・・・うん」

 

そういい残し、シオンは教室を出て行く。

 

・・・もしかして、気を遣ってくれたのかな?

 

まぁ、いいや、そのうち誰か来るだろうし・・・。

 

暫くの間、窓の外をぼぉーっと眺めていた。

 

何か考え事をしようかと思ったが、こうやって一人で考え事するときは鬱な事しか思い浮かばないので止めることにした。

 

少なくとも朝の・・・それも、これから授業が始まるという時間に考えることじゃない。

 

おとなしくクラスメイトがくるのを待とう・・・頬杖をついて目を瞑ることにした。

 

  ・・・・・・・・。

 

  ・・・・・。

 

  ・・。

 

目を開けるとすでにほぼクラスメイトが来ている状態だった。

 

どうやら少し眠ってしまったらしい。

 

シオンも教室に戻っていて、昨日と同じく男女問わずクラスメイトに囲まれている。

 

やっぱり人気者だな。

 

「よぉ、遠野・・・」

 

朝から珍しい声がする。

 

「有彦か、最近早いな・・・真面目な学生にでも目覚めたのか」

 

というか、お前復活してきたのか。

 

平然としているあたり有彦らしいともいえる。

 

「なんだよ、思ってもいないことをいうな」

 

「確かに・・・」

 

こいつは何か自分にとって有益なことがないとこんなに朝早くこない。

 

「俺も曖昧なんだけどな、なんか今日は早く来るべきなような気がした」

 

それは、これから始まる悪夢を予想しているんじゃないか。

 

「で・・・お前、なんであの転校生と一緒にきたんだ?」

 

・・・なかなかに痛いところを。

 

まぁ、有彦になら話してもいいかな。

 

「シオンが遠野の屋敷に下宿しているから」

 

「・・・・・・・・・」

 

黙って俺の机から下がっていく。

 

「とりあえず、説明だけさせてくれないか」

 

「・・・・・・・・・」

 

廊下側まで歩き有彦が振り返り・・・。

 

「とおの〜〜〜〜」

 

こっちに向かって走ってきて・・・というか今朝と全く同じ展開!?

 

俺にライダーキックをくらわそうとしてきた。

 

とっさに椅子から立ち上がり・・・身を翻す。

 

ガシャーン!!

 

すごい音とともに、有彦が俺が座っていた椅子に突っ込む。

 

ついでに、俺の机と隣の椅子、机まで見事に巻き込んでくれた。

 

「なんだ、どうした遠野。乾がまた何かやらかしたのか?」

 

「・・・とりあえず、邪魔だからどっかに捨ててくる」

 

「早くしろよ、もうすぐHR始まるぞ。適当に廊下とかに捨てておいたら」

 

「そうする」

 

ぐったりしている有彦の両足を持って、ずるずると引きずっていく。

 

ドアの前までいき、あけようとすると・・・。

 

ガラガラガラ

 

なんか、自動的にドアが開いた・・・。

 

どうやら、誰か教室に入ってきたのとかちあったらしい。

 

「どこ行くんだ、遠野・・・もうHRやるぞ」

 

うちの担任だった。

 

「あぁ、有彦が気絶しているんで保健室にでも置いてきます。こいつもHRにきてたんで出席扱いにしてくれると嬉しいのですけど」

 

「乾・・・またこいつが何かやったのか・・・。まぁいい、なるべく早く戻ってこいよ。今日はいろいろと忙しいんだ。」

 

「はい、わかりました」

 

と、先生の脇を通ろうとすると・・・。

 

「あぁ、遠野」

 

「何ですか」

 

「ちょっと廊下に出てくれるか?」

 

少しだけ疲れて・・・そして真面目な顔をしていた。

 

「はい・・・」

 

廊下に出ると・・・一人の女生徒が立っていた。

 

見間違うはずもない・・・アルクェイドだった。

 

「・・・アルクェイド」

 

目が会うと・・・にこっと笑い、ぺこりと頭を下げてきた、おれも一応頭を下げる。

 

なんか、いつものアルクェイドと違うな。

 

多分大人しくしていろといわれ、それにしたがっているのだろう、いつもこうだと非常に助かるのだが。

 

「遠野はもう知っているはずと思うが今日また、うちに留学生がくることになった」

 

よく、わからないことをいわれる・・・いや、そりゃ知っていたけど。

 

「えぇ・・・まぁ」

 

「で、聞きたいんだが、何故うちのクラスなんだ?」

 

・・・いや、それは俺が聞きたいんですけど。

 

シオンが俺と同じクラスである以上、アルクェイドも同じクラスになるのはほぼ確定的だったわけだが、何故と言われても俺には答えようがない。

 

「なんだ、知らないのか」

 

「えぇ・・・経緯までは・・・遠野の後継者は俺ではないですし」

 

秋葉が何かやっているのだろうが俺にはわからない。

 

「そうか、上からの圧力でな。遠野と同じクラスにしろと言われたらしい。確かに、うちの学校は遠野財閥からかなりの寄付金をもらっているからな。反抗はできないのだろうが・・・」

 

「・・・そうなんですか」

 

普通の生徒が聞いたらまずい話をべらべらと・・・それほど疲れているのか。

 

俺の担任ってことだけでそんなに疲れる・・・もの、なんだろうなやっぱり。

 

それにしても秋葉のやつ・・・うちの学校にそんな寄付金まで出していたのか、全然知らなかった。

 

「というわけで、留学生2人の世話はお前に一任するけど、いいな」

 

何がというわけなのかはわからないが。

 

「・・・わかりました。とりあえずこいつを置いてきますので」

 

「そうだったな。すぐに戻ってこいよ」

 

そういうと、先生はアルクェイドに一言何かを言うと、教室に入っていった。

 

ずるずると有彦を引きずりながらふと後ろを振り返ると・・・アルクェイドがこっちを見ていた。

 

そして・・・にこっと笑った。

 

俺も少しはにかみながら微笑みを返し・・・。

 

「また、後でな」

 

と、伝えると・・・こくんと大きくうなずいた。

 

・・・いつもこんなに素直だと助かるんだけどな。

 

そして、名前を呼ばれたのか・・・アルクェイドは教室に入っていった。

 

さて・・・こいつを連れて行くか。

 

「おい、遠野」

 

後ろから声がする。

 

廊下には俺と気絶していたと思われる有彦しかいない。

 

そして、俺が名前を呼ばれるのだからその声の主は一人しかいない。

 

「お前、起きていたのか」

 

「あぁ、途中で起きた」

 

「それにしても、お前あの2人と知り合いだったんだなぁ」

 

「あぁ・・・黙っていて悪かった。有彦に話しておくべきだった」

 

というか説明しようとしたらお前がとび蹴りしてきたんだけどな。

 

「いや、お前にもいろいろありそうだしな。それにしても・・・遠野財閥がうちに寄付金ねぇ。何のメリットもないだろうに」

 

「確かにな」

 

「なぁ、遠野家の当主って秋葉ちゃんなんだよな」

 

「あぁ・・・今は代理人を立てているらしいけど」

 

以前、有彦と真面目な話をしたときに、話してしまったことだ。

 

有彦は有彦で俺が有馬の家から遠野にうつったことを心配していてくれていた。

 

俺が親戚連中からも疎まれていたを知っていた有彦に対し、当主は秋葉だからそんなに心配ないということを話した・・・。

 

秋葉にはそれだけ負担をかけてしまっているわけだが。

 

「でも、やっぱりそれって秋葉ちゃんの指示なんだろうな。くぅ〜、健気に兄を想うその姿勢・・・やはりここは俺が秋葉ちゃんを支えるために・・・ガハ!!」

 

「その兄貴がいる前で不穏な発言をするな」

 

ジャイアントスイングで有彦を放り投げ・・・。

 

「教室に戻るか」

 

修羅場へと戻ることにした。

 

続く

 

 

 

 

あとがき

このあとがきで何回も同じことをいっている気がしますが・・・更新のすんの遅すぎて・・・すいません。今度こそ・・・今度こそ、早く書けるようにいたしますので。さて、今回・・・別に盛り上がるシーンがあったわけでもなく・・・。秋葉が志貴の高校に寄付金を出しているというのは勝手に私が決めてしまったことです。というか志貴の高校にそんな寄付金制度があるのかさえもわかんないですけど。

ちょっと前に「空の境界」を読んで浅上藤乃の両親が通っている学校に多額の寄付金を出していていろいろと優遇されている話を読んで・・・。秋葉も志貴のためだったらそれくらい出すだろうという結果に行きつきました。戸籍上問題がある秋葉と志貴ですが、鮮花を応援したくなってしまったので、関係的には同じかなと想われる秋葉を応援してあげることにしました♪♪ 次回か次々回になるかはわかりませんが、ちょっとその辺のお話を書きたいなと思っています。ではまた、次のSSでお会いいたしましょう。

 

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