アトラスの転校生6
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
一触即発の2人・・・う〜ん、困ったなぁ・・・こういう場合漫画やアニメとかだと上手い具合に予鈴がなるんだろうけど、あいにく今日は早めに家を出ているので予鈴がなるわけがない。
俺が止めに入ったとして・・・。
「志貴は黙っていてください」
「遠野君は黙っていてください」
といわれるのがオチだろう。
いや、これだけならまだしも、俺がどちらの味方か? なんて言われた時は目も当てられない。
よって俺が止めるに入るというのは却下だな。
となると・・・第三者が止めに入ってくれるのが一番いいんだが・・・二人のことを知っていてなおかつこの一触即発の状態をおさめることの出来る人物・・・。
・・・・・・・・・。
「アルクェイドくらいか・・・」
・・・いや駄目だ、こんなところにあいつが来たらますます事がおかしくなる。
「呼んだ?志貴」
「「「え!?」」」
俺、シオン、先輩・・・三者三様の声。
声のした方向にはアルクェイドが立っていた。
「お前、いつからそこ・・・」
「なんで貴方がここにいるんですか!!」
俺が問いかけようとする前に早く、シエル先輩がいち早く叫んでいた。
やばい・・・このままだと、いつも通りのお約束の展開になりかねない。
「・・・・・・・・・」
アルクェイドは案の定シエル先輩を無視・・・視線は俺に向いている。
「お前、いつからそこにいたんだ?」
さっき言おうととした言葉を繰り返してみる。
「志貴たちが来る前かな。志貴はともかく、そっちの2人は周囲に気を配る余裕なんてなかったみたいだし。すぐに声かけてもよかったんだけど、なんか見ていて面白かったから。」
「いや、そういうことじゃなくて。なんでお前が今、ここにいるかを聞いているんだけど」
「なんでって・・・志貴ったら夏休みの終わりごろから朝ごはんと夕ご飯作りにきてくれないんだもん。約束してたのに」
・・・あ、そうだった。
アルクェイドがシオンの研究に付き合うかわりに、朝飯にプラスして夕飯作ることを条件に協力に応じてきた。
それくらいなら安いものかなと安請け合いしたのだったが・・・夏休みが終わりに近づくにつれ、二学期の準備やら秋葉の監視も強くされなかなかいけないんだった。
「で、なかなか来てくれないからこっちから来て見たんだけど・・・。なんか面白いことになってたから、ずっと見てたの」
というか、止めてくれよ。
「それよりも、何でシオンが志貴の学校の制服着てるの? 私には学校来るなっていうくせに・・・」
アルクェイドはジロっと俺のことを睨んでくる。
確かにアルクェイドにしてみたら、普段学校に顔出すなと言われているのに、シオンは学校に姿を見せて(しかも制服を着て)いるのを見たら納得は出来ないだろう。
「それについては・・・私から説明いたします」
すっと、シオンが俺の前に出てきて少し怒り気味のアルクェイドに説明を始めた。
・・・・・・・・・。
シオンの説明はとてもわかりやすく・・・いやわかりやすいというよりは、アルクェイドを納得させるような説明の仕方だった。
「ふぅん・・・だいたいわかったわ。なんか面白そうね♪♪」
アルクェイドはなにやら嬉しそうににやにやしはじめた。
「お・・・おい、シオン。アルクェイドのやつ本当に納得しているのか」
何かとてつもなく嫌な予感がしてきたんだが。
「えぇ、理解はしているようです。ただ、理解の仕方、解釈の仕方に少し問題があるようですね。あくまで真祖の考えで理解しているようですから」
「要するに、アルクェイドの都合のいいように解釈している可能性があるってことか?」
「そうですね」
・・・最悪だ。
「ねぇねぇ、志貴」
「な・・・なんだ」
「私も今日からこの学校に通うことにするから」
「・・・・・・・・・」
えっと・・・今、こいつおよそ考えられる最悪なこと言わなかったか?
「何を言っているんですか学校という場所は貴方なんかが来ていい場所ではありません」
『えっと・・・まずは制服を用意しないといけないのかな?』
すでに、アルクェイドの中では決定事項となっているようだ。
そして、当然というか何と言うか・・・シエル先輩の言葉は無視・・・見慣れたとはいえ、たまにシエル先輩の存在がかわいそうになってくる。
この人も、暗示かけて学校にいるわけだしそんなに、強くは出られないのかもしれない
まぁ、年齢的にみても・・・。
「遠野君、何かすごい失礼なことを考えていませんか」
「欠片ほどにも!!」
それよりも、アルクェイドを何とかしないと。
「まてまてまて。そんなの絶対に駄目だ」
「何でよ。シオンは通っているじゃない。シオンはよくて私は駄目なんて理由なんてあるの?」
「いや・・・それは・・・」
おおいにある。
「あるに決まっているだろ。シオンは周囲に迷惑をかけない。けど、お前は絶対に迷惑をかける」
「そんなことするわけないじゃない。私が迷惑かけているのは志貴だけだもん」
「そんなこと威張っていうな。とにかく駄目だ」
それに、アルクェイドが学校通うなんてことが秋葉に知られたらどうなるかわかったもんじゃない。
・・・何故か、秋葉の中では アルクェイドのやること=俺のせい という公式が出来上がっているようで。
「待ってください、志貴。真祖が学校に通うことはそれほど、悪いことでもなさそうです」
「何を言うんだ、シオン。悪いことだらけじゃないか」
「いいから、志貴は黙っていてください。志貴とて穏便に事を済ませられたほうが良いでしょう。それともこのまま真祖が黙って引き下がるとでも思っているのですか?」
「いや、思えないけど・・・わかった、シオンにまかせる」
「はい・・・」
そういうと、シオンはポケットの中から携帯電話を取り出す。
・・・いつの間に携帯なんか。
「もしもし、秋葉ですか。はい・・・はい・・・。それで1つ相談ごとがあるのですが。はい、真祖・・・アルクェイドを志貴の学校に通わせるという件なのですが・・・えぇ、というよりは真祖自らが通いたいと言ってきているのですが・・・」
「えぇ、秋葉の気持ちもわかります。ただ、これは決して悪いことばかりじゃありません。いいですか、秋葉、聞いてください。了承するかわりにこちらからも幾つか条件を出します。これが全て通れば6対4でこちらに分があります。私が志貴の学校に通っている以上、むげにことわることも出来ないことは貴方もわかっているでしょう。条件を全てのんでもらえればより、志貴を秋葉の管理下におくことができますが」
・・・管理下って、あんまり俺にとっていい事ではなさそうなのは確かみたいだ。
・・・・・・・・・。
「わかりました、では・・・またおって連絡いたします」
そういうと、シオンは携帯をきった。
「真祖・・・よろしいですか」
「まぁ、貴女と妹の会話は聞こえていたけど・・・」
「貴女も、何の条件もなしですんなりと要求が通るとは思ってはいないでしょう。それに、丸くおさまることが出来るなら志貴も賛成せざるを得ないでしょう」
「そうね、わかったわ」
「それは、了承と受けとってもいいのですね」
「えぇ、全員がそれぞれ少なからずリスクを負うけど得るものは大きいものね。とうわけで志貴、シオンと妹から学校通うことオッケーもらったから。これで問題ないよね」
・・・え、そんな馬鹿な。
あの秋葉が認めたっていうのか!? アルクェイドが学校通うの!? あり得ない。
「ほ、本当に?シオン」
「えぇ、秋葉別に志貴が考えているほど、頑固ではありません。もともと頭は良いのですから冷静になれば自分に対する利益、不利益は見極めることが出来ます。ただ、志貴のことになるとそうはいかなくなるようですが、それも第三者が場を取りまとめれば問題ないのです」
そっか・・・そうなんだ。
・・・それからシオンに成り行きを教えてもらった。
まず、アルクェイドが学校に通う条件として・・・。
●
学校において・・・一切の破壊行為を禁止する
●
志貴の部屋には帰らない 今までどおり屋敷には入ってもかまわない
●
夕方以降、志貴を外に連れて行かない。
というもの・・・だそうだ。
最初のは当然としてなんか俺がらみの約束事が多い。
別に夜出かけるのはアルクェイドに会うためだけじゃないんだけどな。
加えてシオンの説明によると・・・。
アルクェイドは念願だった学校に通うことが出来る。アルクェイド曰く、学校に通うことが出来れば(ちなみに同じ学年だそうだ)、今よりも俺と長い時間いれるのが嬉しいらしい・・・。それは俺も嬉しいのだが、とにかく何するのかわからないのでかなりの不安は残る。
シオンはアルクェイドと接する時間が長くなり、データをとりやすい。シオンにしてみたら、わざわざ屋敷にアルクェイドを呼ぶよりもお互いに会える場所が出来てかなりいいみたいだ。どういう経路か知らないが、すでに架空の部を作り上げ部室を1つあてがってもらってそれを研究室として使うらしい・・・さすがはシオンといったところか。
秋葉はアルクェイドがうちの学校に通うのはまだ納得できないが、シオンが監視役としていること、俺が門限の時間内に屋敷に帰ってくるという約束が守れるなら譲歩するというものらしい・・・なるほど、管理下というのはそういうことか。
というわけで、3人の利害が少なからず一致したことにより、アルクェイドが学校に通うこととなった。
「じゃあ、よろしくね、志貴。一緒のクラスになるのはもう決定済だから」
まっ、同じクラスになることはほとんど予想できたけど・・・というか同じクラスじゃないと心配でしょうがない。
「事も済んだことですし、真祖は・・・とりあえずは職員室にいったらどうですか?制服のこともあるでしょうし、今頃は秋葉が手を回して、正式に交換留学生としてこの学校に迎えられるはずですから」
「わかったわ、じゃあ志貴、また後でね〜」
言うが早いか、さっさとアルクェイドは校舎の中に入っていってしまった。
「でjは、私も事務室に教材をとりにいきます」
「あぁ、そのために早く登校したんだもんな・・・もうあんまり時間ないし早く行こう」
「はい」
そういって・・・俺とシオンは事務室に向かう・・・。
でも、何か忘れているような気もするんだけど・・・なんだったかな。
「志貴・・・急がないと」
「ごめん、今行くよ」
まっ、いっか・・・。
「ふふふふふ・・・3人の利害が一致ですか・・・。何でその中に私の意見が全く入ってないんでしょうねぇ・・・。とはいえ、向こう側にあーぱー吸血鬼が加わったとするとかなり分が悪いですね・・・これは何とか対策を立てなければ。私を侮辱した罪・・・どれだけ思いかあの3人に教えてあげなければいけませんね。そして、遠野君を我が手に!!」
続く
※
おまけ
「というわけで、あの3人を何とかしなくてはいけません」
「もう、いい加減に諦めましょうよぉ。もう・・・その、遠野志貴とアルクェイドさんはお付き合いしているんですからマスターが今さら何をしようとも埒があきませんって・・・」
バキ
「い・・・いたいです。そんな八つ当たりなんてひどいですよ」
「貴女が余計なことをいうからです。そんなこと言う暇があったのなら何か対策を考えなさい」
「何か・・・対策っていっても・・・。そうですねぇ・・・」
・・・・・・・・・。
「なんですか、ジロジロと私のことを見たりして・・・」
「あぁ・・・その・・・非常に言いにくいのですが・・・」
「何ですか、考えがあるなら何でもいいですから言ってみなさい。それが解決の糸口になるかもしれないのですから」
「わかりました。でも怒らないでくださいよぉ。その、マスターって・・・・・・地味なんですよ」
ピキ・・・
「アルクェイドさんと比べたらスタイル負けていますし、あるならある、ないならないではっきりしてもらわないと・・・そういう中途半端なのが一番いけないんですよ。そもそもメガネヒロインって地味系が非常に多いですし・・・」
ピキピキピキ・・・
「そう考えると対策なんて簡単には思いつかな・・・ってマスター、怒らないっていったじゃないですかぁ・・・」
「黙りなさい・・・。そうですね、忘れていました。あの3人をどうこうする前に・・・セブン、貴女を何とかしないといけないようですねぇ」
「ひいぃぃぃ。図星つかれたからって怒るのはなしですよ。そんなだから地味って・・・」
「ふふふふふ・・・この状況でまだそんな事を言えるなんて・・・もう、覚悟を決めたようですねぇ」
「ご・・・・ごめんなさい、マスター」
あとがき
実にSS書くのが三ヶ月ぶりになってしまいました・・・。いろいろあったというのもあり、書くネタが思いつかなくなってしまったというのもあり・・・。まぁ、全ては堕落した私が一番いけないのでしょう。・・・さて、相変わらずシオンが毒舌なのはいいとして・・・シエル先輩・・・本当にやられキャラになってしまいましたね。私が書くSSのほとんどがシエル先輩やられキャラですね・・・。そんなやられキャラの彼女ですから、もう出てくるのは最後・・・かもしれないですね。おまけがそのことを物語っているのかもしれませんが。・・・それにしても、アルクェイドの制服姿・・・想像しただけでも萌ですね♪♪ 私がお世話になっている藍川風月さんの「Indigo Blue」さんで制服姿のアルクェイドのCGがあります。かなりおすすめだったりしますよ♪♪
では、また次のSSでお会いいたしましょう。