〜bond〜(第三話 最終話)
・・・・・・外は賑やかだ。
いろんな人が集まってきている。
何故なら今日は秋葉の誕生日だから。
僕も行きたかったけど、秋葉に・・・おめでとうって言いたかった・・・。
僕なんかじゃ大したものは贈れないけど・・・。
秋葉に似合うと思って花の首飾りを作ってみた。
でも、渡せなかった。
ここから出ちゃいけないって、そう言われた。
僕がいるとみんなが嫌な気持ちになるからだって・・・。
だから僕は1人ここにいる。
明日になればまた会えるけど、出来ることなら今日渡したかった。
何回同じことを考えたことだろう。
どうすれば今日秋葉に会えるのか。
でも他の人の僕を見る目が怖いから。
でも会いたい・・・。
結局そんな願いは叶わず日付が変わろうとしていた・・・。
コンコン
誰かが来た・・・誰だろう、こんな夜遅くに・・・。
「兄さんまだ起きていますか?」
秋葉だった。
何でこんな夜遅くに来たんだろう、夜10時過ぎの部屋からの外出は堅く禁じられているのに。
心配だった・・・こんなところを見つかったら凄く怒られるから。
「うん、起きてるよ」
「入ってもいいですか?」
「うん、でもどうしたの。こんな遅くに」
「えっと・・・それは・・・」
秋葉が言葉をつまらせる・・・。
でもそんなことはどうでもいい。
秋葉が会いに来てくれた・・・そのことが今は凄く嬉しい。
そうだ、プレゼント渡さないと・・・。
「秋葉・・・」
「何ですか?」
「遅れたけど、誕生日おめでとう」
「こんなものしか贈れないけど」
花の首飾りを差し出す。
「・・・・・・・・・」
秋葉は固まったまま動かない。
「あ・・・ごめん、やっぱりこんなのいらないよね」
秋葉はもっといいものみんなから貰ってるだろうし。
「いえ・・・嬉しいんです。私はただ兄さんに・・・今日会えただけで満足だったのに・・・」
そっか。
「あの・・・兄さん」
秋葉が顔を赤らめながら聞いてくる。
「何?」
「その・・・首にかけてくれませんか?」
「うん、いいよ」
そっと秋葉に花の首飾りをかけてあげる。
「似合いますか?」
「うん、すごく似合うよ」
「こんなプレゼント貰ったのは初めてです」
「ごめん、そうだろうね。こんなのプレゼントっていえないかな。庭に生えてたの摘んで作っただけだし」
苦笑しながら答える。
「違います・・・他の人達はお父様に気に入られようと高価なものばかりで・・・でもそれだけで・・・」
「だからこんなにも心のこもったプレゼントがいただけてとても嬉しいんです」
そう言って、秋葉は笑った。
この時・・・僕は思った・・・。
秋葉はこの家にいる限りこの先も心から嬉しいと思える出来事が少ないのかもしれない。
なら人よりも長く生きればいいんじゃないかって。
じゃあせめて一緒にいれる間は僕が秋葉のことを守ってあげればいいんだ。
たとえこの身がどうなろうとも・・・。
秋葉には、笑顔がとても似合っているから・・・。
「・・・・・・・・・」
「兄さん、起きたんですね」
「・・・・・・・・・」
「兄さん?」
「・・・え・・・あぁ」
さっきのは夢・・・か。
すごい懐かしい夢を見た。
でも、長生きすれば良いって我ながら馬鹿な考えだな。
子供の頃だから仕方ないといえば仕方ないけど。
「・・・兄さん、私の声が聞こえていますか?」
しかも、まだ夢から覚めきっていないのだろうか・・・秋葉の声が聞こえる・・・。
・・・・・・・・・。
秋葉の声!?
慌てて身体を起こし周りを見渡してみる。
自分の部屋だった。
そうだ、頭が痛くなって寝ていたんだっけ。
じゃあ、目の前にいるのは・・・。
「本物の・・・秋葉!?」
「他に誰がいるっていうんですか」
間違いない、この声は秋葉のようだ。
でも、何でこんな時間にここにいるんだ。
「秋葉・・・何でここにいるんだ、パーティーは?」
「もう、終わりました。だから帰ってきたんです」
「終わりましたって、そんなはずないだろ。あぁいうのは大抵その後に親戚会議なんかが開かれるはずだろ」
「そうです、所詮誕生日なんて口実でしかありませんから・・・」
目を逸らし、どうでもいいかのように呟く・・・。
「すまない、口にしていいことじゃなかった」
「いいんです、事実ですから」
「秋葉は参加しなかったのか?」
主役がいないのでは問題にならないのだろうか、それに秋葉は当主だ。
「えぇ、どうせ進言されることはいつも決まっていますから」
いつも・・・同じ!?
それは、俺がここに来てから同じということなんだろうか。
「それは・・・俺がこの屋敷にいることについてか」
「・・・・・・」
秋葉がピクっと身体を震わせる・・・どうやら当たっているようだ。
確かに俺を呼ぶために、親戚筋の人達を屋敷から追い出したんだ、文句の1つも出ているだろう。
遠野の一族にとってはいるだけで存在悪の血筋・・・七夜。
やっぱり俺はここにいるだけで秋葉に迷惑をかけているんだな。
「秋葉・・・」
「兄さんが心配される必要はありません」
「いや・・・でも」
「いいったらいいんです。これは私の問題ですから」
無理やり話を打ち切られる。
こう言われてしまうと何も言えなくなってしまう。
「・・・・・・・・・」
「ごめんなさい、私は本当に勝手ですよね。私の問題と言っておきながら兄さんを巻き込もうとしたりして・・・」
何か夢で見たことと重なっている気がする。
秋葉はまだあまり心から楽しい誕生日といものを味わったことがなくて・・・。
だから俺を・・・と思うのは自意識過剰だろうか。
いや、それだけじゃない。
何を・・・忘れていたんだろう、俺は。
俺が・・・俺自身が純粋に秋葉を祝ってあげたいだけなんだ。
「ごめんなさい、部屋に戻りますね」
秋葉が部屋を出て行こうとする・・・。
「秋葉!!」
思わず声が大きくなってしまう。
「はい、何でしょうか」
くるりと振り返る、もういつもの秋葉に戻っていた。
いや・・・そう見えるだけか。
「その・・・この後暇か?」
「何か用事なんですか」
秋葉の声は淡々としている・・・用がないなら付き合えないという感じだ。
「これからさ・・・秋葉の誕生会をやりたいんだけど・・・ここで」
秋葉は黙ったままだ。
「その・・・俺がここに来た時に歓迎会やってくれただろ。あんな感じのをやりたいなって思っているんだけど・・・秋葉?」
「はい・・・何でしょうか」
「いや、だからどうかなって思っているんだけど」
「昨夜兄さんがお話しがあるというのはそのことだったんですか?」
「うん、まぁそうかな」
結局は秋葉のこと、遠野家のことなんて全く考えてなかったわけだったんだけど。
「そうですか、やはり私は勝手な女ですね。兄さんの気持ちもわからず自分勝手な事をおしつけてしまって」
「いや、それは違うよ。俺だって結局自分のことしか考えてなかった・・・秋葉の立場とか何も」
結局は・・・そう、ちょっとした気持ちの行き違いだったんだ。
「じゃあさ、ちょっと強引だけどお互いさまってことでよしとしないか」
「・・・・・・」
秋葉は何か考え込むような仕草をしたが・・・。
「そうですね、兄さんがそういうならそういうことにしておきます」
実に秋葉らしい答えを返してくれた。
「では、兄さん・・・私の誕生日、祝っていただけますか?」
「あぁ、勿論・・・といいたいんだが一つだけ、いいか?」
「はい、何でしょうか」
「やっぱり今日は、お酒・・・飲むのか?」
これだけは聞いておかないといけない。
「勿論です。そうですね、今日は兄さんが祝ってくれることですし、盛大に飲みましょうか。付き合ってくれますよね、兄さん」
秋葉は実に嬉しそうに言う。
仕方ない・・・でも、そうなるとプレゼントはちゃんと意識のあるうちに渡しておいたほうがいいかな。
「じゃあさ、今のうちにプレゼント渡しておくよ。酔い潰れて渡しそこねたなんてならないうちに」
ポケットから小さな小箱を取り出し、秋葉に渡す。
「あ・・・ありがとうございます。その、開けてもいいですか?」
「あぁ」
秋葉は青い包装紙を綺麗にはがし、中を開ける・・・。
「指輪・・・あっ、でも何か彫ってありますね」
「あぁ、それね」
ポケットからもう一つの指輪を出し秋葉に渡す。
「これで・・・わかると思うけど」
「・・・bond・・・絆、ですか」
「まぁ、他にもいろいろあったんだけど、それ見た時にこれが一番いいかなって思って」
そう・・・絆。
以前までの俺は秋葉が命を分けていたおかげで生きてこれた。
今は・・・普通に、とは言えないが自分の命で生きてこれている。
しかし・・・。
「今までは秋葉から与えてもらってばかりだったけど、これからは二人で一つのものを持っていられればいいなと思った」
「嬉しい・・・凄く嬉しい、です」
「兄さんを感じられなくなってしまってから、私は少し不安になってしまっていたんです」
「今までは、離れていても・・・身体が兄さんを感じさせてくれたから・・・苦しくても、それだけ兄さんが生きているということを感じてこれたから」
「すまない・・・迷惑をかけた」
「いえ、いいんです。それは私が望んでいたことだったから。でも、兄さんが感じられなくなってしまってから・・・そばにいても、いつか私の知らないところにいってしまうのではないかと・・・」
「秋葉・・・」
俺は秋葉を優しく抱きしめる・・・。
「兄さん・・・」
「大丈夫、もうどこにも行かないから。この家が・・・秋葉のいるこの家が俺の帰る場所だから」
「はい・・・。その・・・兄さん、お願いがあるんですけどいいですか?」
「あぁ、何?」
「もう少し、このままでいいですか。この指輪のように、もう少しだけ・・・このままで」
「勿論・・・」
俺達はしばらくの間抱き合っていた・・・。
そのうちに顔を近づけ・・・そして・・・。
バン!!
「志貴さん、秋葉さま、もう少しで準備できますからね」
その瞬間身体をはなしお互いに反対方向に身体を向ける・・・。
琥珀さんだった。
「こ・・・琥珀さん!?何、準備って?」
「いやですよ、翡翠ちゃんから聞きましたよ。これから志貴さんの提案で秋葉様の誕生会をするんじゃないですか。もう少しで準備できますから呼びにきたんですよ」
・・・嘘だ、翡翠は絶対にそんなこと言うはずがない。
「それでは、兄さん私は部屋に戻りますね・・・こちらの方はお返ししときますね。その、楽しみにしていますから」
足早に部屋を去っていってしまった。
「・・・琥珀さん、つかぬことを聞きますけど」
「何ですか」
満面の笑みを浮かべる・・・しかし、今の俺には悪魔の微笑みにしか見えない。
「この部屋には何もついていませんよね?」
「さぁ、どうでしょうね」
「それから、翡翠にも何か取り付けていませんよね?」
「さぁ、どうでしょうね。あっ、私はこれからまだ準備がありますのでこれで失礼しますね」
・・・逃げるように去っていく琥珀さん。
「やっぱり、一度琥珀さんの部屋を大掃除した方がいいかな」
多分、いや間違いなくこの屋敷のことは琥珀さんの手中にある気がする。
・・・・・・・・・。
あまり深く考えるのはよそう・・・。
・・・さて、そろそろ居間に行くかな。
指輪を軽く握り締め・・・居間に向かうことにした。
今日は9月22日・・・俺の妹、そして大切な恋人、遠野秋葉の誕生日だ。
Fin
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございました。「bond」とは英語で「絆」という意味でした。かなり自分の中で暖めていたことで(思いついたのは2003年1月頃)かなり煮詰まりすぎていた節もありますが自分ではなかなかにおさまったと思っています(あくまで自分の中でですよ♪♪)。本当はもうちょっと続けるつもりだったのですが、誕生日のプレゼントも明らかになったことですし、いいかなと。最初はどこからのストーリーかかなり悩んでいました。一話、二話のときは一応宵待閑話ということだったのですが、明確ではありませんでした。でも、最終話でやはりここからだなと思いました。初めての月姫SSながらも自分の中でかなりお気に入りのお話しとなりました。まぁ気が向いたらおまけでこの続き書いてみようと思っています。ではでは・・・次のお話しでまたお会いしましょう。