ひとかけらの勇気

 

 

12月6日・・・言うまでもなく私の誕生日です。

 

毎年お祝いにお母さんがケーキを焼いてくれます。

 

ここ数年は家族だけが祝ってくれる私にとってあまり意味のない行事・・・。

 

しかし、今年はお母さんから仲のよい友人を連れてきなさいと言われました。

 

去年まではそんなこと言われなかったのですが。

 

それはやはり、私が少しずつ変わってきているということでしょうか。

 

私自身、それなりに変わったと思います。

 

少しですがお友達も出来ました。

 

その中で、一番私がお呼びしたい人・・・ぶしつけながら誕生日を祝って欲しい人。

 

今までの私・・・天野美汐という存在を変えてくださった人・・・相沢祐一さん。

 

問題はどうやってお誘いするかということです。

 

こんな時、自分の内気な性格を悔やんでなりません。

 

相沢さんのいる教室に行くのもままならなくて・・・いつも正門で待っている私がどうして誘えましょうか。

 

そんなこと思いながらも何度か誘うことを試みてはいるのですが、なかなかできません。

 

気付けば、日付は誕生日の一日前になっていました。

 

もし、今日駄目なら諦めた方がいいですね。

 

私が何も言わなければ普通に時は過ぎ去るのですから。

 

相沢さんが私の誕生日をご存知かどうかもわからないのです。

 

予定があって困らせてしまうという可能性もありますから。

 

このまま何も言わないほうがいいのかもしれません。

 

でも、せっかくの機会ですし是非相沢さんに祝って頂きたいです。

 

二つの考えがぶつかり合う中、いつものように正門で相沢さんを待ちます。

 

そして、いつものように少し散歩をしての帰り道・・・。

 

今日しかないのです、私は思い切って、

 

「「あの(さぁ)」」

 

「ん、何だ?」

 

「いえ、相沢さんからどうぞ」

 

「そうか。えっと、天野って明日誕生日だよな?出来れば何かしたいなと思ってるんだけど、どうだ?」

 

「え・・・あ、あの・・・私の誕生日、ご存知だったんですか?」

 

「ん・・・ま、まぁ」

 

相沢さんは目を逸らしながら答えます。

 

「それで、OKか?」

 

「そのこと何ですけど、毎年家族が・・・」

 

「そっか、残念だな」

 

「い・・・いえ、そうではなくて、今年は誰か友達を呼んできなさいと母が・・・」

 

そこで言葉は止め、相沢さんを見つめます。

 

止めたというよりは、恥ずかしくてその後の言葉が出てこなかったというのが本音なのですが。

 

「俺・・・で、いいのか?」

 

「はい・・・お願いできますか?」

 

「あぁ・・・喜んで。でも他の友達の中で俺が混ざるのもどうかと思うんだが」

 

「大丈夫です、そんなに盛大ではないでから・・・その、お呼びするのは相沢さんお一人・・・ということなんです・・・けど」

 

・・・・・・・・・。

 

「そ、そうか、わかった。思いっきり祝ってやるからな」

 

「ありがとうございます」

 

「いいって、お礼なんて。元々俺の方から誘おうと思ってたんだし」

 

「あ・・・はい」

 

「それで、俺はいつ頃行けばいいんだ?」

 

「明日は日動日ですので、別に何時でも構わないのですが」

 

「うーん、どうするかな」

 

私としては早くにいらっしゃっていただきたいのですが、そんなことは恥ずかしくて・・・。

 

「遅く行って、遅く帰るのも悪いし・・・そうだな、10時頃で構わないか?」

 

「はい、それではよろしくお願いします」

 

・・・こんなに早くいらっしゃって頂けるなんて。

 

誕生日のことといい、相沢さんは私の心がわかるのでしょうか。

 

誕生日は明日なのに、今日はこんなにもいいことがあって・・・。

 

「じゃあ、今日は俺ちょっと寄るところがあるから。また明日な」

 

「あ、はい、お待ちしています」

 

相沢さんは足早に行ってしまいました。

 

今日の目的も果たすことが出来ましたし、私も帰ることにします。

 

 

 

 

パタン

 

「ただいま」

 

「おかえり。それで、明日は誰か来ることになった?」

 

早速母が聞いてきます、多分明日のための料理の分量のことでもあるのでしょうか。

 

「うん、相沢さんという友達が来ることになった」

 

「そう、一人だけ?」

 

「え・・・うん」

 

「そう、よかったわ」

 

「え、どうして」

 

「今日からお父さん出張で今日、明日っていないのよ。だから美汐が友達連れてきてくれて良かったってこと」

 

「そう」

 

少し、残念です・・・毎年お父さんとお母さんに祝ってもらっていましたから。

 

でも、今年は相沢さんが来てくれます。

 

お父さんには悪いですけどやっぱり嬉しいですね。

 

「で・・・相沢さんは男の子?」

 

お母さんがニコニコしながらそんなことを聞いてきます。

 

「え・・・そうだけど、なんで分かるの?」

 

「あなたの表情よ、そんなに顔赤らめて嬉しそうに話すんだからすぐにわかるわよ」

 

「・・・これは、外が寒かったから」

 

「ほんとかしら?」

 

「お母さん!!」

 

「はいはい、とりあえず明日は張り切って料理作るわね」

 

「あ・・・それだったら私も」

 

「あなたは主役なんだからなにもしなくていいの。そんな暇あったら明日のために何か準備しといたら?」

 

「だから・・・違うのに」

 

本当に・・・違うのでしょうか・・・。

 

「あの、部屋にいるから・・・」

 

「はい、夕御飯できたら呼ぶから」

 

「うん」

 

違くは・・・ないです・・・お母さんの言いたいことはわかります。

 

それは、私が相沢さんを恩人としてではなく、一人の男の方として見てるということ。

 

でも、それは・・・駄目ですね。

 

・・・ここから先は考えてはいけないこと。

 

絶対に答えが出ないことですから・・・。

 

準備・・・とりあえず、相沢さんが家にいらっしゃってもあがらないよう努力は必要みたいです。

 

でも、よく考えたらそんなに悩む必要もないのかもしれませんね。

 

たかだか誕生日にいらっしゃっていただくだけのこと・・・それ以上でもそれ以下でもありませんから。

 

お母さんが変なこというから・・・こんなこと考えてしまったんです。

 

変なこと・・・ではないですけど・・・。

 

もう・・・駄目ですね、考えがぐるぐる回ってしまって・・・今日は早くに寝たほうがいいのかもしれないですね。

 

明日はいつもより早起きしたいですから・・・。

 

「美汐〜ご飯できたわよ。降りてらっしゃい」

 

「うん、今行く」

 

下に降りて夕食を食べることにします。

 

部屋から少しでれば気分も変わるかもしれませんから。

 

「で、相沢さんはいつ頃いらっしゃるの?」

 

「うん、10時ごろに」

 

「そう・・・でも、本当に久しぶりね、友達が家にくるのは」

 

「う、うん・・・そうだね」

 

あ・・・駄目、せっかく忘れてきてるのに・・・。

 

「それに、男の子か・・・これは初めてのことね」

 

「え・・・あ、そうだっけ」

 

「そうよ、美汐は昔から男の子は苦手だったでしょ」

 

「うん」

 

男の方は苦手だった・・・すぐに意地悪するから・・・。

 

でも、本当は影でこそこそ噂話しをする女の子が嫌いな時もあった。

 

時間がたって、そんなことは気にもとめなくなりましたけど・・・。

 

「ねぇ、相沢さんってどんな人?」

 

「え・・・どんな人って言われても・・・相沢さんは1つ上の先輩だけど」

 

「じゃあ・・・かっこいい?」

 

「な・・・なんで、そんなこと聞くの」

 

「あら、気になるじゃない、美汐が男の人つれてくるんだから」

 

何か、今日のお母さんは少し意地悪です・・・。

 

確かに相沢さんはかっこよくて、人気もあるようです。

 

本人は全く気付いていませんけど・・・。

 

「それは・・・その・・・」

 

「まぁ、いいわ。その反応なら何となくわかるし、明日になれば分かるものね」

 

・・・だったら聞かないで欲しいです。

 

「ごちそうさま・・・」

 

「お風呂沸いてるから先に入りなさい」

 

「あ、うん」

 

結局場所を変えても気分は変わりませんでした。

 

お風呂に入ればまた少しは気分がはれるでしょうか・・・。

 

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

濡れた髪の毛をバスタオルで拭きながら部屋に戻り、エアコンのスイッチを入れます・・・。

 

「・・・私は何がしたいのでしょうね」

 

変わったと思っていた・・・変われたと思っていた・・・でも、結局は一緒だったんですね。

 

相沢さんといる日常が楽しくて・・・今日の出来事があまりにも嬉しくて・・・。

 

その、嬉しすぎる日常が・・・再びあの日を思いおこさせる・・・。

 

楽しかった日常から・・・絶望の淵へ落ちたあの日を・・・。

 

あんなことはもうおこらないことは分かっているのです。

 

あれは・・・あの時は・・・僅かな奇跡の煌めきだったのですから。

 

はぁ・・・少なくとも明日はいい日なのですから、もう少しちゃんとしないと・・・。

 

もう寝ましょう・・・眠っている間はこんなことを考えてないですむのですから。

 

 

 

 

チュンチュンチュン・・・

 

「・・・ん、朝・・・ですか」

 

ちょっと背伸びをして、鳴りそうな目覚まし時計を止めます。

 

どうやら、今日は目覚めし時計に勝ったようですね。

 

・・・早く、着替えて準備をしないと。

 

洗面所で顔を洗って居間へ・・・。

 

「お母さん、おはよう」

 

「あら、おはよう。今日は早いのね」

 

「うん」

 

相沢さんがいらっしゃるのですから・・・。

 

「何か、手伝うことある?」

 

早起きしたのはいいのですけど、何となく手持ち無沙汰なので。

 

「昨日も言ったでしょ。今日の主役は美汐なんだから・・・そうね、髪でも梳かしてきたら?」

 

髪を梳かすといっても私の場合くせっ毛ですし、あまり意味のないような気がしますけど。

 

「うん、わかった」

 

何もすることがないので、言われるままにまた洗面所へ・・・。

 

 

 

 

「・・・こんなものでしょうか」

 

・・・あまり変わりませんね、当たり前ですけど。

 

何かしてないと落ち着きませんから。

 

時間はまだありますね・・・いつもならすぐ時間が過ぎるのですが、今日はやけに遅く感じます。

 

人を待つということは、こんな感じなんですね。

 

結局この後は、自分の部屋の掃除などで時間を過ごすこととなってしまいました。

 

お母さんも最後まで手伝わせてくれませんでしたし。

 

時間は九時四十五分・・・そろそろでしょうか。

 

ピンポーン

 

・・・相沢さんがいらっしゃったんでしょうか。

 

慌てて玄関まで行き、ドアを開けます。

 

「はい」

 

「よっ、おはよう」

 

「おはようございます、相沢さん。どうぞ、上がって下さい」

 

「お邪魔します」

 

振り返るとお母さんが立っていました。

 

「いらっしゃい、相沢さん」

 

「あ、はじめまして。相沢祐一といいます」

 

「いつも美汐がお世話になって」

 

「あ、いえこちらこそ」

 

「さぁ、立話しもなんですから、上がって下さい」

 

「はい、お邪魔します」

 

お母さんは先に居間の方に行ってしまい、その間にお客様用のスリッパを出します。

 

「これ、履いてくださいね」

 

「ありがとう」

 

・・・それにしても。

 

「相沢さん、その大きいバックは一体なんですか?」

 

「あぁ、これか・・・まぁ後のお楽しみってことで」

 

「あ・・・はい」

 

何だか、すごい気になります。

 

「どうぞ、こちらです」

 

・・・居間まで行くとすごいごちそうがテーブルに並んでいました。

 

「・・・凄いな」

 

「そうですね」

 

「あれ、何で天野がびっくりするんだ?」

 

「はい、母が手伝わせてくれなかったんです。台所に立ち入るのも許してくれませんでしたから」

 

「そうなのか。まぁ、今日は天野が主役だからな」

 

「さぁ、どうぞ、好きなところに座ってくださいね」

 

「はい、失礼します」

 

・・・礼儀正しい相沢さんを見るのは初めてですね。

 

普段見たことのない相沢さんを見ることが出来て何だか嬉しいです。

 

あ・・・。

 

・・・座ろうとすると、相沢さんとお母さんがちょうど対面する形で座っています。

 

・・・どっちに座ったらいいんでしょう。

 

相沢さんのお隣には座りたいのですが、自分から座るというのも・・・。

 

はぁ・・・こんなことなら先に座ってしまえばよかったですね。

 

・・・どうしましょうか。

 

「ほら、美汐・・・いつまで立ってるの。早く座ったら」

 

「う・・・うん」

 

と、言いつつもどっちに座るかで悩んでしまいます。

 

「しょうがないわね。ほら、相沢さんの隣に座りなさい」

 

「え・・・あ、あの」

 

「相沢さんだって、隣に女の子がいる方がいいわよね」

 

「あ・・・はぁ」

 

チラと相沢さんが私の方を見ます。

 

「え・・・っと、じゃあお隣失礼します」

 

「あぁ」

 

・・・相沢さんのお隣に座ることが出来ました。

 

お母さんの考えてることはよくわかりませんが、とりあえずは感謝です。

 

「それでは、はじめましょうか」

 

お母さんが私と相沢さんのコップにジュースを注いでくれます。

 

「じゃあ、美汐の誕生日を祝って・・・乾杯!!」

 

「「乾杯」」

 

3人でコップを合わせます。

 

カチンとかんだかい音が鳴り響き・・・

 

「美汐、誕生日おめでとう」

 

「天野、おめでとう」

 

「ありがとう、お母さん。ありがとうございます、相沢さん」

 

「さぁ、どんどん食べてくださいね。今日は腕によりをかけて作りましたから」

 

「はい、いただきます」

 

「うん」

 

・・・そして、楽しい一時が流れます。

 

時折、お母さんが私を困らせる冗談を言って・・・。

 

私が困って、お母さんに文句を言って・・・。

 

相沢さんはいつもより大人しくて、それがまた微笑ましくて・・・。

 

そして・・・。

 

「じゃあ、ちょっとお母さん出かけてくるわね」

 

「え、お母さん出かけるの?」

 

「えぇ、ちょっと外せない用事があってね」

 

「そう」

 

「後は、若い人達にまかせて年寄りは退散するわ。ふふっ、何かお見合いみたいな台詞ね」

 

「お母さん!!」

 

「冗談よ。じゃあ・・・あ、相沢さんちょっとよろしいですか」

 

「あ・・・はい」

 

「美汐はちょっとそこで待っててね」

 

「え・・・うん」

 

お母さんは相沢さんを廊下に連れていって何やら話しているようでした。

 

しばらくして・・・。

 

「それじゃ、出かけてくるわね。相沢さん、ごゆっくり」

 

「はい」

 

「うん」

 

パタン

 

・・・二人きりになってしまいました。

 

何だかとっても緊張します。

 

「ふぅ・・・おいしかったな」

 

「はい、それと・・・今日は何か相沢さんの様子が面白かったです」

 

「面白かった?」

 

「はい、いつもはあんな礼儀正しい姿は見たことなかったもので」

 

「失礼だな、俺はそんなに礼儀知らずじゃないぞ」

 

「だから、いつもと違って新鮮だったということですよ」

 

「まぁ、いつもあんなんじゃ俺らしくはないからな」

 

「そうですね」

 

「そうだ、まだ誕生日プレゼント渡してなかったな」

 

「あ・・・」

 

「はい、天野。改めて誕生日おめでとう」

 

「あ・・・ありがとうございます。あの、開けてもいいですか?」

 

「あぁ、気に入ってもらえると嬉しいんだが」

 

・・・綺麗に包装紙を開き、四角い箱を開けると・・・かわいいイルカのペンダントが入っていました。

 

「はい、とっても嬉しいです。ありがとうございます、相沢さん」

 

「よかったよ、喜んでもらえて」

 

「はい・・・本当に・・・嬉しいです」

 

昨日・・・今日と本当に嬉しい日です。

 

こんなに幸せな日は・・・。

 

・・・!!

 

・・・・・・駄目です、折角我慢してるのに。

 

「天野、どうしたんだ」

 

「・・・いえ、何でもないです」

 

どうして・・・でしょう、お母さんの前ではちゃんと我慢できるのに。

 

・・・相沢さんの前だと・・・何故でしょう、我慢が出来なくて。

 

「天野・・・まだ、忘れられないのか」

 

「・・・何故、そんなことを聞くんですか」

 

「さっき、天野とお母さんと少し廊下で話していただろ、その時にさ・・・」

 

「・・・・・・」

 

「一時期とてもふさぎ込んでる時期があったって・・・あれ、あの時の頃だろ?」

 

・・・お母さん、気付いていたんですね。

 

「その頃に比べて最近はよく笑うようになった。でも、時々ふと寂しい顔をする時があるって言ってたよ」

 

「はい、あまりにもこんな日常が嬉しくて・・・あの時のことを忘れてしまうくらいに」

 

「でも、こんな日々が続いてるうちに・・・思いおこさせるんです」

 

「あの子は消えてしまったのに・・・私だけ・・・私一人だけこんなに幸せで・・・楽しくていいのかと思うと・・・」

 

・・・あの子はもう戻ってこないのに。

 

「そうだな、悪い・・・言葉を間違えたな」

 

「俺だって、真琴のことを忘れたわけじゃない」

 

「でも、俺は真琴が帰ってくるのを信じているよ」

 

「何で、そんなことを・・・信じることができるんですか?」

 

「あの時の・・・束の間の奇跡は、もう起こらないのですよ」

 

「でも、こうも言っていたよな」

 

「あの狐たちがたくさん集まれば、とんでもない奇跡を起こせるって」

 

「たとえば・・・空から、お菓子を降らせてみたり」

 

「それは・・・あの話しは・・・」

 

「ちょっと庭に出ようか・・・」

 

私の言葉を遮り相沢さんが変なことを言います。

 

何で庭なんかに・・・。

 

「その前に、あのバックとってこないとな」

 

「これ持って庭に出といてくれ。それと二階のベランダに出てもいいかな?」

 

「・・・はい、構いませんけど」

 

渡されたのは傘・・・相沢さんの意図することはさっぱりです。

 

先ほどのお話しと関係あるのでしょうか。

 

そして、あのバックの中身は一体・・・。

 

そうこうしてる間に相沢さんは二階に上がっていってしまいました。

 

とりあえず、庭に出ませんと。

 

庭にでると、既に相沢さんもベランダに出ていました。

 

「出たか?」

 

「はい、でもここで一体何をするんです」

 

「傘をひらいてくれ」

 

・・・言われるままに傘をひらきます。

 

「いいか、天野は奇跡だなんていっていたけど、こんなのは俺だって・・・おこせるってことさ!!」

 

・・・まさか。

 

「それ!!」

 

バラバラバラ バラバラバラ バラバラバラ

 

・・・上から降ってきたのは・・・小さな袋に包まれた、飴玉、キャラメルなどのお菓子でした。

 

「こんなこと下らないかもしれないけど・・・」

 

バラバラバラ・・・

 

「俺は、奇跡っていうのは待つことじゃなくて行動しなくちゃ駄目ってことだと思うんだ・・・」

 

バラバラバラ・・・

 

「俺にだってこんなことくらいは出来る・・・だからあの狐たちが集まればもっとすごい奇跡がおこせるはずさ・・・」

 

バラバラバラ・・・

 

「考え込むことは悪いことじゃない・・・でも、いつまでもそれに縛られてちゃいけないと思うんだ・・・」

 

バラバラバラ・・・

 

「だから、まず行動してみろよ。天野の出来ることから・・・」

 

・・・私の・・・出来ること。

 

「ありゃ、もうなくなっちまった。俺に出来るのはこんな些細だけど・・・一応おきたろ・・・一瞬の煌めきが」

 

・・・相沢さん。

 

「だから、俺は真琴が戻ってくるのを信じてる。でもそれに縛られないで、自分の出来ることをやったつもりだ・・・」

 

「・・・天野を元気づけてやりたくて・・・そして、もっと笑わせてやりたくてな」

 

・・・相沢さん、あなたはやっぱり凄い人です。

 

そして、こんな私のために・・・。

 

「そう・・・ですよね」

 

「あぁ、想い・・・行動・・・奇跡は必ずしもイコールじゃないけど・・・時にはイコールになることがあると思うんだ」

 

「俺たちは・・・実際にそれを経験したんだから」

 

「でも、私には・・・そんなことはできないです」

 

「天野には奇跡はおこせるよ、いやおこせたよ」

 

・・・え。

 

「覚えてるよな、天野と真琴が友達になった日」

 

「・・・はい」

 

「天野は自己紹介からはじめたよな。俺には天野が何をやってるかわからなかった、というより何でそんなことするのかがわからなかった」

 

「・・・あの時、真琴はもうしゃべることが出来ないと思っていたから」

 

「私は、真琴はまだしゃべることが出来ると思っていました・・・いえ信じていましたから」

 

そこまで、言ってはっと気付きます。

 

・・・そう、そういうことだったんですね。

 

「分かってくれたみたいだな」

 

「はい・・・信じていれば、叶うこともあるんですね。そして、信じなければ叶うものも叶わない・・・」

 

「そういうことだ。それに、最初縛られちゃいけないと言ったのは天野の方だしな」

 

相沢さんにまた・・・助けられてしまいましたね。

 

「はい、沈んでいたらあの子たちに申し訳ないですからね」

 

私も・・・信じてみることにします。

 

・・・そして、いつか帰ってきた時に笑って迎えてあげたい。

 

その時まで、私も出来ることをしましょう・・・。

 

「あの、相沢さん・・・」

 

「何だ」

 

これも・・・相沢さんが教えてくれたこと。

 

・・・想い・・・行動を結びつける・・・。

 

 

 

 

 

 

・・・ひとかけらの・・・勇気。

 

 

 

 

 

「祐一さんって呼んでもいいですか?」

 

 

 

 

 

・・・この勇気が全てを結び・・・繋げるんですね。

 

 

 

 

FIN

 

 

 

 

あとがき

私がSS書く癖として全体的な流れを決め手から書くのですが、今回は何故かあらかじめ書きたいと思っていた部分部分を繋げるということになりました。文章が繋がらないように見えるのと少しでも不自然がないようにダラダラ文章書いてしまってやたら文字数が多いのはそのせいです・・・。単に祐一がベランダでお菓子ばらまくというのが書きたくて・・・それだけだったんですよ・・・だから最初はほのぼの系にしたかったのですが、書いてみたら何故かシリアスに・・・。誕生日SSという題材で何故にシリアス書きますかね私は・・・しかも二回連続・・・。そして、今回文章を繋げるのと同様かなり悩んだのが美汐と母親の会話ですね。美汐はいつも敬語ですから。かなり違和感あると思います。でも、親に敬語使うのはどうかなとも思いまして・・・。賛否両論いろいろあると思いますが、美汐は親に対してはこのしゃべり方でいいのかなと思っています。で、最後に自分でこの文章書いといて何なのですが、考えるだけで行動しないという台詞・・・すっごい耳が痛いです、まさしく私がその通りの人間なので・・・だって、美汐の誕生日12月6日ですよ!! 書こうと思ったのは11月の中旬くらいでしょうか・・・なのに書き上げたのは・・・年越してます。決め手からすぐ行動というのが必ずしもいいとは思わないのですけど、今回はやりすぎですね・・・時間過ぎれば過ぎるほどあせって書いて、文章がよくわからなくなってしまいますから。今度は書く構想決めたらなるべく早く書くようにしたいですね。

 

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