崖近くの草原に二人は座っていた。

夏から冬への贈り物を作るために。

「季節外れの贈り物」

「ねえ、ソウジ君」

風が緩やかに吹く中で少女はキャンバスに筆を振る少年に声をかけた

「何ですか？先輩」

少年はキャンバスから目をそらさずに応えた。

「あれから、一年になるのよね」

「そうですね」

相変わらず少年はキャンバスから目をそらさない。

「いつまでも絵に夢中にならずに景色を楽しもうよ」

「まあ。そうですね」

少年は苦笑いしながら筆を止めた。

「あの時は苦労したよね」

「本当ですよ。僕なんてずっとベットの上でしたからね」

「それは苦労したとは言わないよ」

苦笑しながら少女は二人分の缶ジュースをバックから取り出した。

「はい。どうぞ」

「どうも。すみません」

少年は筆を置いた手で缶を受け取りプルトップのふたを開けた。

そして、冷たい液体で乾いたのどを潤した。

「ぷは～。やっぱり夏はこれですな」

「それじゃ。親父だよ」

からかいながらも、お互いに笑っていた。

「ところで文通してる相手って誰？」

とめていた、筆をまたキャンバスに戻しながら、少年は少女に聞いた

「初音島とか言うところに、住んでるみたいだよ」

「ここから遠いんですか？」

「う～ん。そうでもないみたい」

手に掻いた汗をシャツでぬくいながら、新たな質問を投げかける

「何でその人に詩を送ろうなんて決めたんですか？」

「ほら。今私売り出し時でしょ。それだからこそ多くの人に私の文章を見てもらいたかったんだ」

「そこでなんで僕が・・・」

「小説や詩には挿絵が重要でしょ。私の詩にはあなたの挿絵が必要なのよ」

「そんなものですかね」

軽く不満を抱えた顔で応える。

「そんなものだよ。深く考えるよりも、気楽に考えることだよ」

少女には悪びれのない声で答えた。

「まあ、僕も期待してますから。それに応えないといけませんね」

「そういうこと」

「となると。その人はファン二人目ですね」

「そういうことになるね。そして、一番目はソウジ君」

「出版されるまでは、二人か。出版した後にファンが増えたらどうしよう」

「それはうれしい悲鳴だね」

「でも、それで付き合ってくださいといわれたら・・・」

「その時は、そのときだよ」

「何か、冗談にならないことさらっと言いませんでした？」

いったん筆を止めてしまうほどにドキッとしていた。

「あははは。そんなことないって。私はソウジ君一筋だよ」

そんなこといいながら真っ赤な舌をを出しているところからすると。

最初からからかうつもりだったみたいであった。

「もう。先輩が言うと冗談が冗談で内容に聞こえますよ」

「ごめんごめん。ここまで君が驚くとは思わなかったよ」

相変わらずの苦笑いを浮かべながら。自分のメモ帳に目を傾けた。

「話しながらも、進んでますね」

「あたりまえだよ。　本末転倒はだめですよ」

「わかりました。こちらも仕上げに入りますか」

そして、しばらくの時が流れた。

「完成！」

二人が同時にその声を上げ草原に大の字に寝転んだ。

「疲れたね～」

「そうですね。これどうするんですか？」

「後で何かに印刷して送る予定だよ」

「僕の絵でよかったのかな？」

「さっき言ったよね。私の詩にはあなたの挿絵って」

「そうでしたね。忘れてました」

「もう。意地悪なんだから」

景色はもう夕焼けで太陽が海に沈んでいる最中だった

「喜んでくれるかな？」

「もちろんだよ。あなたと私の作品でしょ」

「そうですね。要らぬ心配でした」

赤く染まる空の中に二人の笑い声がこだまする。

その声はこの夏からの贈り物だった。

これから始まる、始まりの冬への

あとがき

テスト間に思いついて、すっきりさせたくて完成させた作品です。

所要時間は１～2時間ぐらいでしょうか。

あまり深く考えずつづった作品です。

ゲーム中のおやっと思ったところを書いてみたんですけどね。

何気ない情景が大切だって。思うほうですから。

感想はこちらまで　urujyuu@hamal.freemail.ne.jp

『ｒｏｋｉ』さんから頂きました「水夏」二章のアフターストーリーですね。二章のキャラの性格がとっても良く現されていてとても面白かったです。それからＤ．Ｃ．ダ・カーポの複線にもなっているこの作品、しかも私の大好きなさやか嬢と音夢さんの会わせ技♪♪　私のツボ突きまくりでした♪♪ありがとうございます♪♪

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