美坂姉妹パーフェクトプロジェクト
あこがれの舞踏会まで後一週間を切りました。
舞踏会に行けるなんて一年前までは考えもしなかったです。
まさにそれが今実現しようとしているんです。
しかし・・・あの言葉が私の心の中に強く残っています。
『確かに、胸と身長が足りないかもしれないな』
『おっきくってことは・・・もしかして、胸の方を気にしてたのか?』
あれから約一年、祐一さんを見返そうと必死に努力してきました。
でも結果は見ての通り・・・胸も身長も一ミリも成長していません。
何で姉妹でこんなにも違うんだろう、私とお姉ちゃんはほとんど年違わないのに、同じ血が通っているはずなのに・・・何か悔しい。
祐一さんのイトコの水瀬せんぱ・・・いえ、名雪さんもスタイルがいいですよね。
みな・・・名雪さんは・・・うーん、やっぱり呼びにくい、最初は水瀬先輩と呼んでいたのですが、
「水瀬先輩なんて堅苦しい呼び方じゃなくて“なゆちゃん”って呼んで欲しいな」
と言われてしまいました。
“なゆちゃん”とは流石に呼べないので“名雪さん”と呼ばせてもらってます。
名雪さんは陸上部でしたね、今はもう引退してるみたいですけど、運動してる人はやっぱり違うんでしょうか。
「どうしたの?ボォーっとしたりして」
「あっ、お姉ちゃん」
いつのまにかお姉ちゃんが部屋にいました。
「何度下から呼んでも返事が無いから、おいしいハーブティー手に入ったんだけど飲む?」
「うん」
そうだ、お姉ちゃんに聞いてみようかな。
「はい、どうぞ」
「いただきます」
「で、何考えてたの?」
「・・・私とお姉ちゃんって血が繋がってるよね?」
「・・・・・・」
・・・お姉ちゃんがびっくりしてる、ちょっとストレートに聞きすぎたかな。
「ななな、何馬鹿なこと言ってるの、そんなの当たり前じゃない」
「じゃあ何で私とお姉ちゃんはこんなにスタイルが違うの?」
・・・またびっくりしてる、お姉ちゃんのこんな顔ほとんど見たことないから何か新鮮でいいな♪♪
「そんなこと言われても、これは勝手に・・・ん、そういえばそろそろ」
と、お姉ちゃんはカレンダーを見る、あっいつも名雪さんをからかっている時の顔だ。
「なるほど、もうすぐ舞踏会ね。確かドレスって着こなし方が大変なのよねぇ」
グサッ!!
「ちゃんと着ないとスタイルに自信が無い人はちょっと辛いかもしれないわねぇ」
グサグサッ!!
「本人だけならまだしも、相手の人にも・・・ねぇ」
グサグサグサッ!!
「でも、ちゃんと着ればすごいよく見えるのよ。知り合いからそんなドレスの着方を教えてもらったことがあるのよね」
「えっ本当?お姉ちゃん教えて」
「私はその日名雪と商店街にでも行くから関係ないけど」
「お姉ちゃん!!」
「かわいい妹に教えてあげたいのは山々なんだけど、本当に姉妹かどうか疑われちゃったからねぇ」
「そ、それは・・・お姉ちゃんスタイルいいし、綺麗だし、羨ましくて・・・ご、ごめんなさい」
「冗談よ、ちゃんと教えてあげる。でも何でそんなにあせってるの?あぁいうイベントは出ることに意義があるんじゃない?」
「うん、そうなんだけど」
祐一さんに言われた時のことを話しました。
「いろいろ努力したんだけど、でも結局駄目で」
話し終えると何かお姉ちゃん・・・怖いです。
「ふふふ、相沢君もいい度胸してるわね、かわいい妹にそんなこと言うなんて」
口は笑ってるけど、目が笑ってないです。
「栞、私も舞踏会出るわ。一緒に相沢くんを見返しましょう」
「本当?」
「えぇ、お姉ちゃんにまかせなさい」
と、お姉ちゃんは電話をかけ始めました。
「もしもし。美坂ですけど・・・名雪?突然で悪いんだけど舞踏会出るわよ。え、ドレス?大丈夫でしょ、おばさんに頼めば、いいわね出るのよ」
がチャ
「いいの、お姉ちゃん?かなり強引だったけど」
「いいのよ、思い出はたくさん作ったほうがいいでしょ」
さっきと言ってることが違う、商店街に行くって言ってたけど、まぁいいか。
「じゃあ栞、今から特訓よ」
「えっ、特訓って何を?」
「ドレスを着ての歩き方、踊り方、舞踏会における全ての作法をマスターするのよ」
「いや、私はドレスの着方を教えてもらうだけで」
「駄目よ、相沢君のことだからドレスが良くても何かしら言ってくるのは必至、何もつっませないようにするのよ」
お姉ちゃん、壊れちゃった・・・どうなるんだろう。
「返事は!!」
「は、はい」
「声が小さい!!」
「はい!!」
はぁ、先行き不安です。
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《舞踏会当日》
「いい栞、今までの特訓を思い出すのよ」
すごい辛かった思い出しかないんですけど。
「うん」
「この舞踏会で相沢君を完全に虜にするのよ」
虜って、私達は普通の恋人同士です。
「う、うん」
でもとりあえず返事だけはしとかないと、お姉ちゃん壊れたまんまだし。
「じゃ、行きましょうか」
私達は体育館に入った。
「わぁー」
すごい、ここがあこがれの舞踏会。
去年は外から覗くことしか出来なかったのに。
今はこうして、中に入ることが出来る。
「すごいね、お姉ちゃん」
「結構本格的ね」
お姉ちゃんの反応は普通だった、お姉ちゃん美人だしこういうのに参加したことがあるのかもしれない。
「香里、栞ちゃん」
「あら、名雪」
「こんにちは」
「こんにちは、栞ちゃん」
名雪さんのドレスはとても綺麗だった。
「それ、おばさんが仕立てたの?」
「うん、頼んだら作ってくれたの」
作る??あの立派なドレスを??
「お姉ちゃん、名雪さんのお母さんってデザイナーか何かなの?」
「違うと思うけど、名雪のお母さんは特別な人だから」
「特別?」
「あんまり突っ込まない方がいいわよ」
これ以上は追求しない方がいいみたいです。
「ところで、相沢君は?」
「もう少しで来るんじゃないかな、あっ来たよ」
「よっ」
「こんにちは、相沢君」
「こんにちは、祐一さん」
「えっと・・・誰?香里の友達か?」
「そんなこという人、嫌いです」
「栞か・・・ごめんわかんなかったよ・・・その・・・すごく似合ってるぞ」
「ありがとうございます」
ちら、とお姉ちゃんの方を見る、笑っていた・・・ありがとう、お姉ちゃん。
「私がいなくても、大丈夫そうね。上手くやるのよ栞」
前言撤回・・・上手くやるってお姉ちゃん、私はそんなつもりはないのに。
笑っていた理由はそういう意味ですか。
「じゃあ、私達はちょっといくわね、ほら行くわよ名雪」
「うん、それじゃ栞ちゃん、後でね」
「あ、はい、失礼します」
・・・何か祐一さんが私のことをじっと見てきます。
「えっと、何ですか?」
「いや、何か今日の栞は大人っぽいなと思って」
「そうですか、ドレスを着てるからだと思うんですけど」
「それもあるけど・・・よく表現できないけど、全体的に落ち着いてる気がする」
お姉ちゃんとの特訓の成果です、苦労した甲斐がありました。
「じゃあ、とりあえず踊ろうか?ご一緒できますか?お嬢様」
「ふふ、はい、お願いします」
特訓の成果の集大成です、散々お姉ちゃんにしごかれましたから。
・・・・・・。
「上手いな、栞。もしかして初めてじゃないのか?」
「いえ、初めてですよ。でも練習したんです」
「そうか」
・・・何か祐一さんが考え込んでいます、どうしたんでしょうか。
「どうしたんですか?」
「あぁ、今日みたいな栞も大人っぽくていいんだが、そうすると他の男子どもがほっとかないし・・・」
そういえば今日ちらちらと男の方が見ていた気がしましたけど。
最初はお姉ちゃんと思っていたけどその中には私を見ていた人もいたんでしょうか。
「個人的にはいつもの栞の方がからかい甲斐もあるし、かわいくていいかなとも・・・」
何だ、いつも通りでいいんだ・・・一言余計な言葉があったけど。
「大丈夫ですよ、今日は特別ですから♪♪」
そう、普通が一番です、でも根本の原因は祐一さんの一言から始まったような・・・まっいいか、これもよくある日常の出来事ですよね。
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「完璧すぎるってのも駄目なのかしらねー、折角特訓したのに」
「・・・何がぁ」
「名雪は・・・ドレスだけで変わらないわね、これもいつも通りか」
「うにゅ?けろぴーとおどるのー?」
FIN
あとがき
最初は栞とラブラブな話しにするつもりだったんですけどね。香里が出てきてからはまるっきり変わってしまいました。香里が途中から壊れまくりましたから、下手すればギャグになってしまう可能性まで出てきてしまいました。ちょっとギャグにしようとも思うこともあったんですけどね、まぁ今回はやめということで。今度は香里を出さないで栞の話しを書いてみようかなとも思ってます。香里が出てきたらギャグ方面に行きやすいと分かってしまったので・・・私の中で香里はくせものだなぁ。
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