夏の滞在

 

 

ペラ・・・ペラ・・・

 

「やっぱり・・・ないか」

 

何度見てもなかった・・・。

 

行った記憶がないのだから、ないのは当たり前なのだが。

 

ふと思ってしまった疑問がこんなにも気になるなんてな・・・全くどうかしてる。

 

「ふぅ・・・」

 

ソファに深く座りなおす・・・。

 

「祐一、何してるの?」

 

天井を見つめていると名雪が話し掛けてきた。

 

「ちょっと昔の写真を見てただけだ」

 

「祐一が昔のアルバム見てるなんて珍しいね」

 

「あぁ、そうかもしれないな」

 

そうだ・・・名雪なら何か知ってるかもしれないな。

 

「なぁ、名雪・・・」

 

「何?」

 

「何で・・・あぁ、あらかじめ言っておくけど変な意味で捉えるなよ」

 

一応先に言っておかないと・・・名雪はすぐ変な意味合いで捉えるからな。

 

「うん」

 

「何で、俺は冬休みだけここに来てたのかなって」

 

「え・・・祐一、来たくなかったの?」

 

「・・・・・・」

 

だから変な意味で捉えるなって言ったのに。

 

「違うって。まぁ、今のは俺の言い方が悪かったかもしれないな。ほら・・・俺ってさ、冬休みは来てたけど、夏休みって来てなかっただろ?何でだろうなと思ってさ」

 

特に何でもないことのはずが何故か気になって仕方なかった。

 

「そういえば、そうだね」

 

「普通考えてみたら、夏休みの方が長いし、こういう雪国は避暑地として来る方が普通のはずだしな」

 

「でも、スキーとかあるよ」

 

「俺はスキーなんて出来なかったぞ」

 

無論今でも滑れないが。

 

「じゃあ、単純に雪が見たかったんだよ」

 

「そうかなぁ・・・こんなすごい雪を何回も見に来ようと思うほど俺は勇気ないと思うけど」

 

ここに来た一年目でもう充分だと思っていたに違いない。

 

「後、何で毎年冬休みだけだったのかなって・・・ほんとにちょっとしたことなんだけどさ、考え出したら止まらなくなってな」

 

「う〜ん・・・あっ、わかったよ」

 

名雪は手をポンと叩く。

 

「何だ?」

 

多分ろくな答えじゃないだろうが。

 

「お年玉が欲しかったんだよ」

 

「・・・・・・はい?」

 

名雪は何を言っているんだろうか・・・。

 

「じゃあ、お前は俺がお年玉欲しさに来てたって言いたいのか?」

 

「うん」

 

にこにこしながら答える・・・おい。

 

「あのなぁ、そんなわけないだろ。普通そうやって集まるんだったら、親戚一同でばあちゃんの家とか集まるのが常だろうが」

 

「あっ・・・そうだね」

 

「うちの家系はもともと親戚が少ないし、名雪とかだって遠いんだから頻繁にこれないだろ」

 

「・・・うん」

 

全く・・・。

 

金欲しさに来てたと思われていると何かむかつくな・・・。

 

「だから・・・頻繁に集まれないんだから、短い冬休みなんかは逆に家族で・・・」

 

言いかけて慌てて止める・・・。

 

「どうしたの、祐一?」

 

「いや、何でもない」

 

そうだった・・・こいつには父親がいなかったんだ。

 

俺は何て軽はずみな発言をしようとしていたんだろう。

 

自分が嫌になった・・・。

 

「でも、言いかけて止めたでしょ?」

 

「そんなことは無い・・・」

 

・・・もしかして、秋子さんと名雪が二人っきりだから、俺は行っていたのか。

 

いや、行かされていたというべきか。

 

しかし、お袋にかぎってそんなことまだ考えていたとは到底思えない・・・。

 

秋子さんと姉妹なのに、あの性格の差は何なんだろう・・・。

 

同じ血が通っているとは思えない・・・そりゃ勿論顔だけ見れば多少は似ているところはあるが・・・。

 

「祐一何か隠してる?」

 

「だから、そんなこと無いって」

 

黙って考えごとしてるんだから、嘘なんてことはバレバレだろう。

 

「あのね・・・私ね・・・冬休みに祐一が来てくれるの毎年楽しみにしてたんだよ」

 

「あぁ・・・」

 

初めて行ったときにはお互いに何を話していいのか分からなかったけれど・・・同い年ということですぐに打ち解けて・・・。

 

その次の冬休みからは・・・名雪の家に到着する日、名雪はいつも玄関の前で俺のことを待っていた。

 

 

 

『あっ、祐一』

 

手を振りながら名雪が待っていた。

 

『何もこんなところで待ってる必要なんてないだろ』

 

『祐一に早く会いたかったから』

 

『寒くないのか』

 

『うん、全然平気だよ』

 

『そっか、俺は凄く寒い・・・だから早く家に入りたい』

 

『うん・・・その後、一緒にかまくらと雪だるま作ろうね』

 

 

 

名雪の家に行って、名雪の誕生日をやって・・・一緒に正月を過ごして、宿題をやって・・・。

 

「好きな雪の季節で・・・祐一が来てくれて、冬休みは一年の中で一番楽しみだったんだよ」

 

名雪は嬉しそうに微笑む。

 

・・・あ。

 

・・・何だ、簡単なことじゃないか。

 

俺は毎年、この笑顔を見るために此処に来てたんだ。

 

夏休みより冬休みの方が、名雪は喜んでくれるってわかっていたから。

 

一番の楽しみはとっておくものだ・・・名雪が一番好きな季節の為に。

 

そう思っていたのかもしれない、子供のころだからもうわからないが。

 

でも、今は・・・。

 

「じゃあ、今はどうなんだ?」

 

「え・・・今?」

 

ちょっと意地悪かもしれない。

 

「俺は一年中此処に・・・いやこれからもずっと此処にいるつもりなんだけど・・・夏も冬も関係なく」

 

「あ・・・」

 

名雪の顔が赤くなる・・・多分俺の顔も赤くなっていることだろう。

 

「うん、とっても嬉しいよ」

 

そう言って、名雪は俺の腕にしがみつく・・・。

 

「こら・・・暑い」

 

「夏だもん、当たり前だよ」

 

「あぁ、そうだな」

 

夏だもんな。

 

「私ね、これからは春も夏も秋も冬と同じくらい好きになれそうな気がするよ」

 

「何で?」

 

「それはね・・・祐一がこれからずっと此処に居るって言ってくれたからだよ」

 

「・・・・・・」

 

こいつなんて恥ずかしいことを・・・。

 

「祐一は違うの?だってさっき夏も冬も関係ないって言ってくれたのに」

 

「違くはないぞ・・・ただ、そんな恥ずかしい台詞よく言えるなって思ってな」

 

「祐一から先に言い出したんだよ」

 

「あぁ・・・そうだったな」

 

ほんとにそうだ。

 

「それから、明日海行こうよ・・・」

 

「急な話だな、別に構わないけど」

 

「うん・・・砂山作ろうね」

 

「冬にかまくら作ろうって言ってるのとあまり変わらない気がするけど」

 

しかも海に行って泳ぐではなく砂山を作るというのがいかにも名雪らしい・・・。

 

「いいの」

 

「あぁ、いいぞ」

 

そう・・・今は季節なんて関係ない。

 

好きな人と一緒に居られればそれが一番・・・幸せなのだから

 

 

 

 

FIN

 

 

 

 

あとがき

祐一は何故冬休みしか行かなかったのか・・・それはKanonの舞台が冬だからです。う・・・確かにそうかもしれないですけど、それだと話が続かないのでこんな感じで。かなりの短編になってしまったのですが、だらだらと話を続けても仕方がないかなと思ったので。ほとんど盛り上がりも何もないですが・・・まぁ名雪の父親がどうたらこうたらは少しシリアスですが。そして、改めて気付いたこと・・・KanonのほのぼのSS書いてるときの私・・・何か顔がにやけています♪♪ 傍から見たら精神病院に電話されそうな状態かもしれないですね♪ ではまた次回で・・・。

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