「落ち葉の中の雑談会」

 

「う〜。やっぱり寒いな。」

かじかむ手を吐息で温めながらぼやいた。

「もうすぐ冬だもんね。」

隣の少女も同じ動作を真似した。

「お兄ちゃ〜〜ん。お芋持ってきたよ。」

むこうの門から走ってくる少女が見える。

「おお。早かったな。」

「途中で、お姉ちゃんとあったからね。」

「じゃあ何で華子姐いないんだ。」

「坂神の応援のネタ考えてるみたいだったから。無理いわしちゃいけないから、『自分で持っていくから心配しないで』って言ってきた。」

「そっか。でも今日は球場雨みたいだから中止みたいだったかな。」

「そうだったの。まあいいよね。えへ。」

そうやってちとせはにっこり笑った。

その笑顔からは、3ヶ月前に絶望の病に侵されていた人だとは思えない顔だった。

(それもこれも、お嬢のおかげなんだ。)

あらためてお嬢の顔を見つめた。

昔と違って自分の人生を楽しむ目をしていた。

「僕の顔に何かついてる?」

「いやなんでもないよ。」

「それより。早く焼き芋作ろうよ。僕おなかすいたよ。」

「お嬢ちゃんったら。食いしん坊さんなんだから。」

「よく食べる子は、よく育つもん」

「食べすぎはだめだよ。お嬢ちゃん。」

「まあ、食べる話はさておき、焚き火を作るぞ」

「わ〜い。焚き火だ。」

「お嬢ちゃん。火には気をつけてね。」

「わかったよ。ちとせちゃん。」

そのやりとりを見ながら、マッチをこすり、燃えやすいように落ち葉のなかにおいた新聞紙に火をつけた。

そして、新聞紙から、落ち葉に火がつく焚き火はばちばちと、音を立てて燃え出した。

「わあ、すごい音。」

「お嬢ちゃん。危ないよ〜。」

二人とも、焚き火は初めてなので、驚いているみたいだ。

「二人とも、お芋は準備できてるか?」

「ここにあるよ〜。」

二人の声がハミングして、アルミホイルに包まれたお芋が用意されていた。

「ならば、軍手をつけてお芋を焚き火の中に投入だ。間違えてもやけどするんじゃないぞ。」

「は〜い。それじゃ、とりゃ〜。」

と、お嬢が大リーグボール1号を投げるかのごとく構えた瞬間だった。

門のほうから、すごい駆け足で走ってきた人物が一人・・・。

間違いなくそれは華子だった。

「どうした。姉さん」

「球場が雨でナイターは中止だし、せっかく考えた応援ネタがつぶれて、ぶちむかついていた時に、大リーグボール一号と聞いたから飛んできたのよ。」

恐るべし、坂神ファンの姉さん。

距人対抗意識は脱帽ものだ。

「それはさておき、焼き芋作り手伝ってくれない? この二人は焚き火初めてだから一緒に見ててほしいんだ。」

「それぐらいいよ。あとお嬢ちゃん。」

了承しながら、姉さんはお嬢の方を向いた。

「はい」

いきなりのことでお嬢はびっくりしたみたいだ。

「焚き火の中にお芋は投げ入れちゃだめよ。燃えてる物が飛んで危ないから。あと、後でそのフォームも改善してあげるからね。」

「僕、遠慮しておきます。」

「あらそう。残念ね。」

(顔が笑っていても、ちょっと怖いぞ姉さん。)

「お姉ちゃんもお嬢ちゃんもいつまでもそんなこといってないで早くお芋入れようよ。焚き火燃え尽きちゃうよ。」

「そうだね。それじゃいれようか。」

「うん。」

ちとせのひとことで、何とか本来の趣旨の戻った。

 そして、15分経過・・・。

「そろそろ、取り出すぞ。」

そういいながら、焚き火を崩して、中のお芋を取り出した。

「わあ、焼けてる。」

「やけどしないでよ。」

「ほら、気をつけろよ」

「わかって…あちゃちゃちゃ。ふーふー。」

「お嬢大丈夫か?」

俺は駆け寄ってお嬢の手を見てみると、軍手をしていたのでやけどにはならなかった。

「火傷なくてよかったな。でも一応冷やしておこう。姉さんこっちはお芋取り出しておくから、家から氷持ってきて。」

「わかった。」

と、いいなかがら家の中にかけていった。

「もうちょっと気をつけろよ。」

「は〜い」

どうやら、火傷はしなくても結構熱かったらしい。

そうこうしながら、お芋を全部焚き火から取り出し、焚き火を囲みながらのお食事タイムである。

「皮はがすの忘れるなよ。」

「いただきます。」

俺が注意を言うと、三人は声を合わせてお決まりのセリフを言った。

「あったかくておいしいね。」

口をホクホクさせながら、お嬢が言った。

「やっぱり外で食べるのはいいな。」

外にあまり出れなかったちとせは本当に喜んでいた。

 

…そして二人の話が始まって、盛り上がってる最中に、

「ちょっと来てくれないか。」

姉さんに呼ばれた。

「どうかした?まさか、坂神がいつも負けてることを俺にあたるのか?」

「あほか」

そしていつものつっこみを食らった。

「もっと大切なことだ」

「新しい漫才のねた」

「わかった。本来の話に戻そう」

さすがにそれ以上、茶化すのも罪悪感に負けてやめることにした。

「お前には本当に感謝しているよ。」

「何をいまさら。」

俺はちょっと笑っていたが、姉さんは本気だった。

「本当は私だけではつらかったんだ。もしちとせちゃんの手術の後、おまえが施設に戻ることを考えると。」

「姉さん」

いつも無く雰囲気が違う姉さんにただ相打ちを打つこともままならなかった。

「あの子はお前を必要としていた。いつもね。私があの子のそばにいるときによく聞いたものさ・・・。」

『いつお兄ちゃんはやってくるの』

私は、『いい子にしてたらやってきてくれるよ』と、しか言うことができなかった。」

「そんな、幼稚園児じゃあるまいし。」

「そんなこと、関係ないわよ。それだけあなたを必要としていたのよ。重い病気に掛かり、周りからもいい目では見られなかったわ

周りの同じ年代の子とも遊べずに、ずっとベットとお医者さんとの往復。遊びたい年頃考えをを押し殺して、本と映像の偶像しか見ることができなかった。そんな中でも、笑っていられたのは、宏・・・お前の存在よ。」

姉さんの話を真剣に聞くことによって俺は口を開いた。

「そうだったな。ちとせは大切な家族だからな。絶対に守るよ。」

その考えは、迷いも無いすっきりした考えだった。

昔、お嬢の夢の中の忘れ物を見つけ出したときの気持ちに似ていた。

「お前なら言ってくれると思ったよ。ありがとう」

「二人とも、早くお芋取らないと、お嬢ちゃんが全部食べちゃうよ。」

遠くから、元気によぶちとせの声があった。

「俺には守るものがある。今はそれに専念するよ。」

「わかった。おねがいするよ。」

そういって、姉さんは、

「お嬢ちゃん。私の分とってよ。」

と、いいながら二人の元に戻っていった。

その後姿が、一瞬、夢の中のアルキメデスと雰囲気が瓜二つだった。

(まさかね)

そう思いながら、俺は輪の中に戻っていった。

 

「はい、あなたのお芋だよ。」

「お嬢。ありがとう。」

お嬢からお芋を受け取る。そして、お嬢がつぶやいた。

「あと一ヶ月ぐらいで振るかな雪。そしたら、一緒に雪ダルマつくろうね。」

「その前に風邪引いて寝込むなよ。」

「う〜ん。そのときは看病してもらおうかな♪」

「おいおい。俺はお医者様じゃないぞ。」

「案ずるより産むが如しだよ。」

「難しいこと知ってるな。」

「行動や経験は僕の知らないことを教えてくれるから。これからもよろしくね。」

「わかったよ。お嬢様。」

そういいながら、手の中の暖かい、焼き芋にかぶりついた。

何かの決心を固めるように。

 

感想はこちらまで urujyuu@hamal.freemail.ne.jp


『roki』さんから頂きました「水夏」四章のアフターストーリーですね。ちとせが主人公にいつでも心配をかけさせないよう気丈にしてること・・・でも心の内を華子に明かす・・・そんなシーンが頭に中にイメージ出来ますね。お金はあっても本当の幸せは手に入らない・・・ただ主人公に側にいてほしいだけということを知る主人公。少しせつないながらもほのぼのしている焚き火をしながらのお話し・・・とても良いお話しです♪♪ ありがとうございます♪♪

 
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