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私立遠野高等学校(昼休み)

 

 

「はい、ではいただきましょうか」

 

「あ・・・あぁ、そうだね」

 

結局あの甘いカレーを何とかするため・・・新たにカレーを作り合わせることで帳尻を合わせることにした。

 

水分を少なくして濃いカレーを作ったのだが、おたま三杯分のハチミツの効果は素晴らしく、結局まともな味になるまでに屋敷にあったおなべ全てを使うことになってしまった。

 

作り始めてから・・・どのくらい経ったことか。

 

お昼に食べようと作り始めたカレーが夕食用になるくらい時間がかかった・・・。

 

幸い空腹感の方は味見をするうちになくなったが・・・。

 

「申し訳ありません、私が至らないばかりに・・・」

 

どうやら翡翠は相当に責任を感じているようだ。

 

「結果ちゃんと作れたんだから良かったじゃないか」

 

その代償は大きかったが・・・

 

「それに、カレーってのは日持ちするし日が経てば経つほどおいしくなるんだから」

 

「はい・・・」

 

「あは〜・・・でもちゃんと作れて良かったですね。もしもの時は私が作ったものをお出ししようかと思ったんですがその必要はなかったみたいですね」

 

「・・・・・・・・・」

 

今何て言いました!?

 

「もしかして琥珀さん、ちゃんと別に作っていてくれていたんですか?」

 

「えぇ、ほら良くテレビ番組とかであるじゃないですか。教える側もちゃんと作らないと示しつかないですし」

 

「琥珀・・・そういうのはもっと早くに言って欲しかったわ」

 

「あは〜すいません。でも秋葉さまも結構楽しまれていたようですし、良かったじゃないですか」

 

「それに関しては否定はしないけれど・・・」

 

それに、関しては俺も秋葉と同意見だ、楽しかったがすっかり遅くなっちゃったからな。

 

「では、もう夕方ですけどお昼の調理実習で作ったものを食べましょう。はい、皆さん手を合わせて・・・」

 

そっか、この時間は琥珀さんが担当だったっけ。

 

作ってる間琥珀さん居なかったし、時間もかなり経っていたからすっかり忘れていたな。

 

とりあえず、言われたとおり手を合わせる。

 

「いただきます」

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

気のせいだろうか・・・声の人数が多かった気がする。

 

いや、絶対に気のせいではないんだが。

 

そして、それはとても聞き慣れた声だ。

 

同時にこれから起こる展開も予想できてしまう。

 

「やっほ〜、志貴・・・遊びに来たよ〜」

 

「嬉しいです、私のためにこんなにもたくさんのカレーを作ってくれたんですね」

 

そして次の展開が・・・。

 

「何で、貴方達がそこに居るんですか」

 

そう、こうなる・・・秋葉の髪が真っ赤なのは言うまでもない。

 

「それはですね。私がお呼びしたからなんですよ」

 

さらっと琥珀さんがとんでもないこと言う。

 

「そうそう、ちゃんと呼ばれて来たんだから不法侵入じゃないよ〜」

 

不法侵入という自覚はあったのか・・・。

 

「琥珀・・・どういうことか説明してくれる?」

 

「はい、それはですね・・・。こういうことやるのならやはりお知り合いの方皆さんでやるのが一番かなと思いましたので」

 

「そうだ〜、抜け駆けは良くないぞ妹」

 

「だから、妹っていうのはやめなさいと何べんも・・・」

 

さて・・・そろそろ止めに入るか。

 

このまま放っておくと確実に巻き添えをくらうから。

 

「まぁまぁ、いいじゃないか秋葉。学校なんだから人は多くても別に問題じゃないだろ」

 

「兄さんまで・・・」

 

「それにな秋葉・・・あの台所に置いてある大量のカレー、お前はどう処分するつもりでいるんだ?」

 

「あ・・・」

 

秋葉ははっとする。

 

「俺たち四人だったらいつまでかかるかわからないぞ。いくら日が経ってカレーがおいしくなるといっても流石に飽きるだろ」

 

「そ・・・それは・・・」

 

秋葉もこれには反論できないだろう。

 

「このカレー美味しいですね。誰が作ったんですか?」

 

今ある話を全く無視して1人カレーを食べまくるシエル先輩・・・。

 

「それは、俺と翡翠と秋葉で3人で作りました。時間かかりましたけどそれなりにいけると思いますよ。たくさん作ったんで好きなだけ食べてください」

 

「はい♪」

 

シエル先輩はカレーがあるだけでかなりご機嫌のようだ。

 

アルクェイドと秋葉のやりとりにシエル先輩が入らないだけ良かったと言える。

 

「ほら、自分で作ったものおいしいって言ってもらえるのって嬉しいだろ?」

 

秋葉は本当に嬉しそうに食べるシエル先輩を見て・・・。

 

「そうですね」

 

とだけ言った。

 

「はい、万事解決です。では改めていただきましょう」

 

モグモグ・・・

 

1人全く無視して食べているがそれはそれでいいだろう。

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

このあとは円満に食事が続いていた。

 

この面子においても食事のときくらいゆっくりしたいし・・・。

 

「そういえば、志貴さん・・・」

 

「何?」

 

「こんなに遅くなっちゃいましたけど、志貴さんの担当する時間はどうしましょうか?」

 

「そっか、俺まだやってないんだよね」

 

流石に、今からやるのもな・・・もう門限過ぎてるし。

 

俺は外出てやろうと思っていたからどっちにしろ今日は無理だな。

 

「あのさぁ、だいたいの話は琥珀から聞いたけど。私も参加していいんだよね」

 

聞いてはいるが、既にアルクェイドの中では決定事項だろう・・・。

 

俺は別に構わないのだが・・・お隣のお嬢様が・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

あれ? 何も言わない、おかしいないつもなら絶対に反対するのに。

 

「兄さん、今私が絶対に反対すると思ったでしょう」

 

・・・う、何か考えている読まれている。

 

「確かに、大いに反対ですけどどうせ兄さんは賛成なさるでしょうし、今回は譲歩します」

 

「そ・・・そう」

 

珍しいな、秋葉が譲歩するだなんて・・・。

 

それだけ機嫌が良いってことなんだろう。

 

「それで、さっきのことだけど琥珀さん・・・」

 

話を元に戻す。

 

「やっぱり今日は難しいと思うし、明日がいいかなって思うんだけど」

 

「そうですね、そうしましょうか」

 

「じゃ、アルクェイド、シエル先輩そういうことだから、明日からってことに・・・」

 

「まさか、帰れだなんて言わないでしょうね、志貴」

 

「いや、だってもう何もしないぞ」

 

後はもう寝るだけだし・・・。

 

「シエルじゃあるまいし、カレーだけ食べにきてはい満足だなんて思うわけないでしょ」

 

「相変わらず失礼ですね、貴方は。私がカレーだけの人間と思っているんですか」

 

といいつつもスプーンの手をやめないシエル先輩・・・それじゃあ言われても仕方ないですよ。

 

まぁ、それはいいとして。

 

「じゃあ、何がしたいんだよアルクェイド」

 

俺がそう言うとアルクェイドはにこっと笑って・・・。

 

「今日ここに泊まる」

 

・・・と、とんでもないことを言い出した。

 

「な・・・」

 

「何言ってるんですか、貴方は!!」

 

俺が言おうとしたことを代わりに秋葉が言ってくれた・・・。

 

「いいでしょ、別に。部屋ならあり余るほどあるんだし。それに琥珀が泊まっていったらって言ってくれたんだよ」

 

「本当なの琥珀?」

 

秋葉は怒りの矛先を琥珀さんに向ける。

 

「いえ、ただそうなると良いですねと話しただけですよ。流石に秋葉さまに了解なしにそんなことは言えませんよ」

 

「そうですか。なら答えは1つです。駄目です」

 

案の定却下である。

 

「妹はいいや。志貴はどうなの?」

 

アルクェイドは秋葉の意見を無視して俺の意見を求めてきた。

 

「その前に・・・お前泊まってどうするんだ?悪いが俺はさっさと寝るぞ」

 

それでなくても今日はいろいろあってかなり疲れてるんだから。

 

「志貴と話したいだけだよ。だって最近テスト勉強だぁとか言ってあんまり会ってくれなかったし」

 

・・・う、それを言われると弱い。

 

「うーん、今からお前追い返してもどうせ窓から侵入しそうだしなぁ」

 

「そうだよ・・・」

 

・・・そうだよじゃないだろ。

 

秋葉の方を見ると・・・承諾なんかしませんよね兄さんと無言の圧力をかけてきているのがわかる。

 

俺としてはこのさいアルクェイドとシエル先輩に泊まってもらって秋葉とじっくり話してもらって何とか和解してもらいたいんだよな。

 

よし・・・。

 

「秋葉、いいんじゃないか」

 

「兄さん、何てこと言うんですか。こんな人達を泊めるだなんて何を考えているんですか」

 

・・・この返答は予測できたが、いい機会だし言っておくか。

 

「秋葉さぁ・・・何で、そんなにアルクェイドとシエル先輩のこと毛嫌いするんだ、ろくに話をするわけでもなく。何かあったのなら話し合ってその上で言うならまだわかるんだが・・・」

 

「そ・・・それは・・・」

 

「いいぞ〜志貴〜♪♪」

 

「お前は黙ってろ。ちょっと真面目な話してるんだから」

 

「にゃによ〜、せっかく応援してあげてるのに〜」

 

とりあえず、アルクェイドを黙らせる。

 

「一度くらいちゃんと話してみたらいいんじゃないか」

 

「・・・・・・・・・」

 

秋葉は少し考えて・・・。

 

「そうですね、兄さんの言うことも一理ありますね。確かに私の方も少し大人気ないところがあったのかもしれません」

 

「じゃ・・・じゃあ」

 

「はい、でも今回は特別です。しかしあのようなお二人ですから話し合っても無駄だと思いますけど。だから今回だけです

 

「そ・・・そうか。いやそれでもいいよ」

 

良かった・・・承諾してくれた。

 

承諾の仕方は秋葉らしいと言えば秋葉らしいけど・・・もっと素直になればいいのにと思うが、今回はこれで良しとしよう。

 

「じゃあ、さっき言った修学旅行みたいに・・・皆さん同じ部屋に泊まりましょうか」

 

「・・・・・・・・・」

 

な・・・アルクェイドのことが解決したと思ったら今度は琥珀さんがとんでもないことを言い出した。

 

「一緒にってここにいる全員?」

 

「そうですよ、布団を並べて・・・枕投げして・・・楽しみです」

 

何か琥珀さんの言っていることは微妙にずれている気がする。

 

いや、これは絶対にまずい・・・何としても避けなければならない・・・。

 

しかし・・・みんな急に真面目な顔をしだした・・・。

 

「いいね、賛成。じゃ、志貴の寝る隣は私ね・・・」

 

おい・・・。

 

「何言ってるんですか、ずうずうしい。兄さんの隣は・・・秋葉に決まっているんですから

 

ちょっと・・・。

 

「あは〜面白くなってきましたね」

 

「・・・・・・・・・(真っ赤)

 

「あっ、ご飯のおかわりってまだあります?」

 

若干1名、別のことを考えている人がいるが・・・このままじゃ。

 

「ちょっと待て。俺は反対だぞ」

 

「何でよ〜」

 

「当たり前だろ、普通に考えても」

 

絶対におかしい・・・。

 

「じゃあ、多数決で決めましょうか・・・賛成の人?」

 

琥珀さんが勝手に仕切り進行を始めてしまう・・・だから、ちょっと待てという意見は聞いてもらえないらしい。

 

予想していた、あるいは確定事項なのか・・・俺以外全員が手を挙げすんなりと決まってしまった。

 

「じゃあ、次は誰が何処に寝るかなんですけど、ここは1つ勝負して勝った人が好きな所・・・もとい、志貴さんの隣に寝られるというのはどうでしょうか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

俺は・・・もういいよ。

 

「いいよ〜別に〜。どうせ勝つのは私だもん」

 

アルクェイドが真っ先に賛成する・・・力押しなら絶対に負けない自信があるのだろう。

 

秋葉も賛成のようだ・・・髪を真っ赤にしているからすぐにわかる。

 

シエル先輩は・・・よくわからない。この期に及んでまだカレーを食べているが、いつの間に用意したのか、物騒な物がいろいろと置いてある。

 

こうなると分が悪いのは翡翠と琥珀さんになるのだろうか。

 

「いえいえ、今回力押しではなく皆さん平等になるようにしたいと思いますので・・・」

 

「なら、何で決めるの?」

 

「はい、勝負の方法は・・・」

 

その次の言葉を全員じっと待つ・・・だがいつの間にか琥珀さんの勝手な意見で全て決まっていることに誰も気付いてないんだろうか・・・。

 

流石は策士琥珀さんと言ったところか。

 

「麻雀です」

 

「・・・・・・・・・」

 

いろいろな意味で拍子抜けさせられた勝負方法だが、どっちにしろ俺にはあまり関係のない話しだ・・・。

 

どうなろうと、俺の意見は聞いてもらえないということなのだから・・・。

 

誰が勝とうが、それに関係なくすぐに寝ようと心に誓った。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

あとがき

前回から随分とかかってしまいました・・・。流石にまずいと思いちょこっと根性出して一気に書き上げました・・・。そして、思わぬ展開へ、これは私自身もそうです♪♪ いや、アルクェイドとシエル先輩が出てきた時点でおかしな方向に進むだろうと予測がついてはいたのですが、まさか麻雀とは・・・。それにしてもやはり人数が増えてしまうと全員しゃべらすのは難しいですね。翡翠なんか最初しかしゃべってないですし・・・。アルクェイドが登場した時点で彼女がしゃべりまくるというのはある程度仕方ないかなと思っています。これに加えて秋葉が反論するという形ですね。そして、シエル先輩ですが彼女も加わってしまうと流石に収拾つかなくなってしまうので彼女には今回カレー食わして黙っていてもらうことに・・・次回は喋るんでしょうか♪♪ ではまた次回で。

 

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