私立遠野高等学校(課外授業6)
アルクェイドに加え、琥珀さんにも引きづられ、ついに水着売り場の前まで来てしまった。
「なぁ、やっぱり駄目だって。男の俺が水着売り場に入るのはおかしいって・・・」
最後の抵抗を試みる・・・。
「何言っているのよ。どうせ、妹の帽子買うときは躊躇せずに入ったんでしょ」
「う・・・」
あれは、衝動買いだったんだってことが何でわからないかな、この馬鹿女は。
それに、帽子は男女関係なく被るものだから特に意識することもないが、水着ってのは男は絶対に着ないだろうが。
「ほらほら志貴さん。早く入りましょう♪♪」
「遠野君これなんてどうですか? 私に似合いますかねぇ」
シエル先輩はすでに選別を始めている・・・もう、逃れられないのか。
「シエルったら聖職者のくせにそんな露出ある水着きるんだ。全く、埋葬期間ってのは何考えてるかわかんないわね」
「今は、仕事と関係ないからいいんです。貴方のほうこそ、男を誘惑して血でも吸おうと考えているのではないですか?」
「何言ってんの・・・そんなことしないわよ。まぁ、志貴を誘惑できればそれはそれでいいけどね〜」
えへへ〜と普段ならかわいいと思える笑顔を俺に見せるが、今はとてもじゃないが・・・。
「ほら、シエルなんてほっといて私の選んでよ。約束でしょ」
「ほら、遠野君、こんなアーパー女なんてほっといて、これなんかどうですか?」
もう・・・勘弁してくれ。
・・・ん?
見ればボーっと立ったままの二人がいる。
翡翠と秋葉だった・・・。
この二人はどうやら、水着を選ぶのは気が進まないらしい。
まぁ、何となく理由はわかるのだが・・・。
秋葉は勿論のこと、翡翠だって決して・・・
「兄さん!!」
「志貴さま!!」
「!!」
「「ひょっとして、すごく失礼なことを考えていませんでしたか」」
「いや・・・そんなこと・・・」
考えていたとはいえない・・・命にかかわる。
どうもこのすぐ顔に出る癖は直さなくちゃなと思う。
それにしても、ボーっと立ったままだったのに、何でこっちの考えているのがわかるのかが謎だったりする。
「ほらほら、翡翠ちゃん・・・何やってんの。こっちきて選ばないと駄目じゃない。あっ、もしかして私をおいて一人で志貴さんに見立ててもらおうと・・・」
「ち・・・違うよ、そんなのじゃなくて・・・」
相変わらず琥珀さんはのりのりである。
というかこれがマイペースなのかもしれないが。
しかし・・・これはある意味逃げ出すチャンスかもしれない。
アルクェイドとシエル先輩はいつものごとく揉め始めたようだし、琥珀さんは翡翠に絡みだした。
秋葉はもともと気が進まないようだったし・・・。
・・・逃げられるか!?
・・・・・・・・・。
いや、止めとこう・・・見つかったらとてつもなくやばい目に会うし、何よりもあの面子で逃げ切れる自信がない・・・。
それに・・・約束は守らないとな。
さて・・・火中の栗でも拾いに行くか・・・。
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「あはは、楽しかったねぇ♪♪」
・・・・・・・・・。
「遠野君と海に行くの、楽しみです」
・・・・・・・・・。
「あは〜良かったね翡翠ちゃん。おそろいの水着だよ♪♪」
「・・・(コクリ)」
・・・・・・・・・。
「大丈夫ですか、兄さん?」
「・・・全然大丈夫じゃない」
疲れた・・・果てしなく・・・。
甘かった、適当に『これがいいんじゃないか』と言えば終わるものとばかり思っていたが・・・。
まず、アルクェイドが『私の選んだときよりも目が真剣だった』と文句を言い始め、後はお決まりの展開・・・。
ただ、選ぶのだけにえらい時間がかかってしまった。
気づけばもう夕方・・・結局今日は何もせずに終わってしまったな。
「あは〜、やっと着きましたね。志貴さんの疲れではないですか?」
「いや、疲れているといえばかなり疲れているけど」
「待っててくださいね、帰ったらすぐご飯にしますから」
「あぁ、お願いします」
とりあえず、今日はカレーじゃないことにほっとし、屋敷の中に入る・・・。
・・・・・・・・・。
あれ? 何か違和感が・・・。
この屋敷に帰るべき人数は4人のはず・・・。
俺、秋葉、翡翠、琥珀さん・・・アルクェイド、シエル先輩。
・・・多い。
まさか、この二人・・・。
「なぁ、アルクェイド・・・」
「何、志貴?」
「お前、かえるところ間違ってないか?」
「何言ってるの?志貴、別に間違ってないよ」
「だって、ここはお前の家じゃないだろう」
「そうだよ、でもしばらく泊まることにしたから」
・・・待て、今何て言った。
『しばらく泊まることにしたから』
「おい、何でだよ。別に泊まらなくたっていいだろう」
「よくないわよ、だって麻雀の決着もついてないし、明日も出かけるんでしょ。ならこっちに泊まったほうが好都合じゃない」
・・・また、繰り返されるのか・・・あの悪夢が。
「そうですね、まだまだ夏休みは長いですし、やることはたくさんありますから。特に私は兄さんの勉学を見なくてはなりませんし」
「お掃除する場所もまだたくさんありますよ、志貴さま」
「今度は私も一緒にお料理作りますよ」
・・・そうだった、忘れていた。
あまりにいろいろありすぎて忘れていたが、まだ二日しか経っていなかったんだ。
しかも今日俺は課外授業とか言っておきながら何もしていない・・・。
間違いだったかもしれない・・この企画を持ち上げたのは・・・。
そして、多分もう逃げられない・・・有彦のところに連絡しようと思ったが、もう遅いだろう・・・。
「そして、全部終わったらみんなで海に行きましょう・・・」
「いや、だから海は・・・」
「大丈夫です、志貴さんは別に泳がなくてもいいですよ・・・やるのは水着コンテストですから。あっ、勿論審査員は志貴さんですよ」
にこにこしながら琥珀さんが、強烈な一言を・・・。
そして、いまさらながらに悟った・・・今年の夏休み・・・俺に安息の日々というものがないことを・・・。
何が悪かったかのカ、どこで間違ってしまったのか・・・考える間もなくまた誰かに引きづられ俺は屋敷といういまや監獄と同レベルになってしまった場所に入っていった。
終わり
あとがき
やっと・・・やっと書ききりました。まさかこんな時間がかかるとは思いませんでした。最後のほうかなり無理やり終わらせた感じがありますが、これ以上ネタが浮かばないので終わりにしとかないと、また書かないまま終わってしまうような気がしましたので。本当は水着選ぶところとかもうちょっと詳しくやりたかったのですが、私はそういうのに詳しくないのでちょっと簡単に終わらすことに・・・。とりあえず、シエル先輩以外のヒロインは話の中でかわいく書けたので満足してる話もあるのですが、全体的にみると間延びしているなぁと・・・。個人的には、掃除のときの琥珀さん、日傘かしてくれるときの翡翠がけっこういいなぁと思っていたりしますけど。では、また別のSSでお会いしましょう