ちょっと真面目なコラム


カーペンタース

Carpenters.GIF 70年代に大活躍したアメリカのグループ、カーペンタースが95年96年の足掛け2年で総計230万枚ものCDセールスを、この日本で上げているのだそうだ。96年にいたっては年間通じての洋楽トップセールスを獲得、この調子でいくと、日本においては絶えて久しい洋楽での300万枚ラインへ到達するのではないかと言われている。しかも、CDを購入している年代は十代中盤から二十代前半が中心だと言う。これはどういうことなのだろう?

 確かにカーペンタースの音楽は最近の音楽にはないタイプだが、それにしても230万枚はすごいポピュラリティーだ。

 カーペンタースの全盛期はちょうど今十代後半から二十代半ばまでの人が生まれた時代。自分が生まれた時代の音楽に惹かれる現象は、ビートルズが時代を経て繰り返し復活して来たことを思い出させる。一昨年から昨年にかけてリリースされたビートルズのアンソロジーを購入した中心世代が二十代後半から三十代だったことを考えると(ビートルズが世界的に大爆発した時代に生まれた世代)、今のカーペンタース大復活も状況的には似ているのかもしれない。

 ビートルズ現象と昨今のカーペンタース現象から導き出される一つの仮説として、人は自分が生まれた時代の空気に触れたとき、無意識のうちにシンパシーを感じるのではないか?という考えが頭をよぎる。今30歳前後の人が生まれた時代の空気を代表するのがビートルズであり、20歳前後の世代が生まれた空気を代表するのがカーペンタースなのかもしれない。では何故ビートルズ、カーペンタースなのか?それは多分、その全盛期に最も幅広い世代に支持され、最もコンスタントにレコードを売り、露出したアーティストだからだろう。つまり、父と母(大抵年齢的に少し離れているものだ)が共通して影響を受けた音楽を演奏していたアーティストであると言うことだ。

 しかし、それなら洋楽よりももっと身近な存在だったはずの、その時代の日本の音楽も復活しそうなものだが、実は順次復活していたのだ。

 現在三十代の人がレコードの中心購買層だった時代にはなにが起こったか?そう、GSブームの再来と言われたバンドブームである。実際、タイガースはじめ、昔のGSもいくつか復活したし、GSの香りを強く残した寺尾聡が大ヒットしたのは、この時代だ。

 では、97年は何が復活するのか?「生まれた時代の空気」仮説に依れば、今年静かに復活するのは、ずばり、フォークである。それも、さだまさし、オフコース、松山千春、ふきのとう、風、あたりの「優しい人生」流のフォークが静かに復活しそうな気がする。実際、最近、元かぐや姫、風の伊勢正三が長年のブランクを経て復活してCDの好セールスを記録したし、イルカあたりの動きも再び注目を浴びそうだ。静かな復活は、ある程度長い期間のCDセールスを見るとより実感できるようになると思う。例えば、ふたを開けたら昨年のトップセールスを記録していたカーペンタースのように。

 今年特に注目なのは、さだまさしのCDの動きではないかと思う。何故なら、彼こそが、むかし全盛期に最もコンスタントにレコードを売り、最も幅広い世代から支持を受けた男だからだ。つまり、ある意味では時代を代表しているといえる人だからだ。もし、熱心なファンの間で根強い人気のあるさだまさしの曲をピックアップしたベスト版でも出たら、かなり良いところまでいくのではないかと思う。

 フォークの一方では、70年代中盤を代表するもう一つの動き、ロックンロールも静かに復活しそうだ。代表格は、現役ばりばりの矢沢永吉。この人に「復活」と言う言葉は似合わないが、彼が在籍したキャロルなら復活で良いと思う。少し時代は下がるが、ツイストあたりもくるかもしれない。まあ、こっちは、全盛時代にも幅広い世代から支持されたとは言いがたいので、フォークと比べるとCDセールス面から見ると動きは小さそうな気がするが。

   

3,March,1997 by Osamu Yamanaka

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