コンタクトレンズ徒然
私は目が悪い。両目の視力は、右が0.03、左が0.08程度しかない。普通に生活をするのにも、眼鏡やコンタクトレンズのような、視力矯正装置が手放せない。ここ2年ほどは、ソフトコンタクトレンズを愛用しているのだが、これは普段は便利なものだが、時に非常に不便で、ちょっと遠出をしようと言うときに、ついうっかりコンタクトレンズのケア用品を忘れたりすると、現地で薬局を探して走り回る羽目になる。不精者の私は、擦り洗いが不要のラクチン・ケアの製品を使っているので、一度コンタクトを外してしまうと、次にコンタクトを使えるようになるまで、消毒時間を含めて最低2時間は待たなくてはならない。その間、目が見えなくては困るので、泊まりがけで旅行するときなどは、コンタクトレンズのケア用品と一緒に、眼鏡も持ち歩く必要がある。
実は、今まさに旅行の途中なのだが、ついさっき、コンタクトレンズのケア用品も、眼鏡も、きれいさっぱり家に忘れてきたことに気がついた。コンタクトを付けるようになったばかりの頃は、こういう事態になるとパニックに陥り、どうしようどうしようと気が収まらなかったのだが、今はすっかり慣れてしまい、目的地に着いたら薬局を探せばいいやと開き直って、電車の中でパソコンに向かって自分の恥を書き綴っているのである。
自分の目が悪くなかったら、こんな不便は感じる必要もないのにな、と思うこともあるが、既に普通の視力を失って以来20年近くが経過してしまった。私の場合、中学の2年生までは、視力は両目とも1.5と人並み以上に優れていた。それが中学の3年生になったら、たったの1年間で0.1近くにまで落ちてしまった。中学3年生というと高校受験の年代なのだが、私は中学高校とエスカレーター式に進級できる学校に通っていたので、実は高校受験をしていない。大体、学校の勉強というものは、小学校中学校を通して、授業以外に自宅でやった記憶はほとんどないのだから、視力の低下が勉強とは無関係であることは明白である。そのころの私は、ストーリーテラーに憧れていて、特にSF作家と呼ばれる大うそつきの一段にとてものめり込んでいた。小松左京氏や、半村良氏、豊田有恒氏などの作品を読み、自分でも家人には勉強しているふりをして、ノートに適当な小説もどきをでっち上げていたころだ。私は自他共に認めるウルトラ級の悪筆なのだが、自分が書いた駄文を読み返すのにさんざん苦労したことを思い返せば、それが視力低下の原因なったのかもしれない。
また、中学3年生の頃と言えば、ちょうど性と言うものに興味を持ちだした頃で、学校で友人にエッチなテレビ番組(主に深夜の時間帯が多かった)を教えてもらっては、そ〜っと夜中に真っ暗な部屋でテレビを見ていた記憶もある。あれは今考えても目によいはずがない。しかし、深夜のエッチ番組は、しょっちゅう放映されているものではなかったので、それだけが原因で視力が低下したとも考えずらい。多分それも原因の一つなのだろが、当時田舎で生活していた私は、目のためによいとされている、星を見たり、遠くを見たりと言うことを、否応なく毎日実行していたのだ。深夜にテレビにかじりついていた時間と、星を見、山を見、遙か彼方まで続く畑の景色を見ていた時間を比べれば、比べものにならないくらい後者のために使っていた時間の方が長い。そう考えると、テレビが原因と言うことも、直接的には考えずらいのだ。
目が悪くなる原因は、医療関係者によれば、直接的には目の形の歪みによるらしい。つまり、生活態度が原因で視力が低下するのは仮性近視だけであり、本格的に視力が低下する原因と生活態度に直接的な因果関係は認められないらしいのだ。なるほど、それならば私の視力が落ちてしまったのも、成長の過程で目の形が歪んだからかと納得できる。ではなぜ、目が歪んでしまったのだろう?実は私は、視力の低下と生活態度には関連性がないという説に、半分納得しているが半分は納得していない。確かに、大人の場合はそうかもしれないが、成長過程にある子供や思春期の少年少女にとっては、やはり生活態度とその後の視力とは因果関係があるような気がしてならない。視力が落ちる直接の原因が目の形にあるとしても、目の形をゆがませる原因は、思春期の生活態度にあるのではないかと思うからだ。つまり体が形作られる思春期に、無理なガリ勉や、テレビやビデオの見過ぎ、ゲームやパソコンのやりすぎ等の要因によって、ある一定の距離を見続けることで目にストレスを与え続け、そのことが原因になって、目玉が本来成長するべき形に成長せずに、間違った方向に成長してしまい、その結果目の形が歪んで近視になるのではないかと思うのだ。
私は医療関係者でもないし研究者でもないので、このストレス仮説は極めて直感的なものなのだが、十代の頃の生活態度が視力に与える影響は全くないとは思えない(どなたか、この仮説を裏付けるような文献をご存じの方が、もしいらっしゃいましたら、是非ご一報をください)。自分の場合も、勉強やテレビが原因ではないにしても、多分文庫本や漫画の読み過ぎが原因ではないかと思わないでもないのだ。
なにやら歯切れの悪い文章をダラダラ書き綴ってしまったが、ようするに目が悪いのは不便だと言うことと、今、思春期よりも前の子供がいる方は、これから子供の視力が悪化しないように、充分子供の生活態度に注意を払って欲しいと言うことだ。勉強やパソコンやビデオやテレビやゲームは、体ができあがった大人になってからいくらでもできる。しかし、一度、目の成長の方向が狂って目の形が歪んでしまったら、視力は二度と戻らないのだから。
14th,March,1999 by Osamu Yamanaka