ファミレスでお仕事?
私は、仕事場として、よく近くのファミリーレストランを利用している。持っていくものは、財布と愛用のPowerBookのみ。他には何も持たずに、車で、駅からちょっと離れたところにあるファミレスを目指して一人で出かけていく。
駅に近いファミレスだと、深夜でも結構混んでいて、一人で2時間(PowerBookのバッテリーが切れるまでの時間だ)も粘っていると、店員(と言うか、店長)に、明らかに白い目で見られれることになるから、できるだけ歩いては行きずらそうな店を選んで、車で出かけるようにしている。郊外の店だと、深夜は比較的すいていて、席も半分以上空席だ。そういう店だと、2時間いてもあまり気にされることなく、遠慮なく仕事に集中できるのだ。
しかし、パソコンで文章を書くのに、何でわざわざファミレスまで出かけるのか?と、不思議に思われる方も多いだろう。それは、私の意志の弱さと大いに関係がある。
私は、自分の部屋で仕事をしていると、たった2時間、集中して仕事をすることもできないのだ。なにしろ、部屋には誘惑が多すぎる。テレビもあるし、オーディオもある。電話もあれば、ベッドもある。床にごろっと寝ころびたい誘惑に駆られれば、たちまちかなえることもできる。そういう環境では、1時間も集中して仕事をしていると、すぐ「一服タイム」に入ってしまい、はなはだ効率が悪い。ファミレスですれば2時間で終わる仕事が、自宅ですると3時間以上かかって半分もできていないなんてことにもなるのだ。
更に悪いことは、部屋にいると仕事を始めるきっかけが見つけられず、ただ怠惰に時間を過ごしてしまうことだってある。「あと20分で○時か、よし○時になったら仕事をしよう」等と思っていても、ふと気がつくと○時はとうに過ぎてしまい、「いいや、○○時まで休もう。○○時になったらやろう」と言うように続いて、結局その日は手つかずなんてことが結構あるのだ。ファミレスに出かけることにすれば、時間は関係なしで、それが「仕事をする」きっかけになるから、出かけてしまえば必ず仕事をするのだ。
しかし、ファミレスで仕事をするのは、良いことばかりではない。なんといっても、ファミレスぐらい一人で入りづらい場所もない。ランチタイムならともかく、夜の時間帯に一人でファミレスに入り浸っている人なんか、ほとんどいないに等しいのだ。店に入って、店員に「何名様ですか?」と聞かれるのが、まず辛い。「一人です」と答えるのだが、そのときの相手の反応が、結構冷たいような気がする(被害妄想かもしれないが・・・)。
更に、席に着けば仕事をするためにノートパソコンを広げるから、店員や周囲の客の好奇の目にさらされることを覚悟しなければならない。「今はパソコンが普及したから、そんなに珍しがられることはないんじゃないの?」と言う人もいるが、なんのその、ファミレスでノートパソコンを広げる人は、まだまだ少ないようなのだ。周囲の好奇の視線を無視して、敢然として注文(このとき、さすがにコーヒー1杯と言うのは、未だにできない)をするのにも、結構勇気がいる。また、店員の冷たい反応を感じる一瞬だからだ。
頼んだ食事などを摂っているときに、ふと周囲を見渡せば、大概の場合、一人で来ている客は自分一人である。この寂しさ、孤独感にも耐えなければならない。周囲から話し声や笑い声が聞こえてくる中で、自分は一人で黙々と食事なりなんなりをしなければならない。
食後は、いよいよ本格的に仕事タイムだ。コーヒーを傍らに、周囲の喧噪をシャットアウトして、仕事に集中する。
ファミレスで仕事をしていると、なんと言っても集中が違う。周囲に目を向けても、辛いばかりの環境だから、嫌でも神経が仕事に向かう。また、仮に休みたいと思っても、テレビもベッドもないし、雑誌なども敢えて持っていかないから、気分の転換のしようがない。勿論床に寝転がるなんてこともできないから、気の抜きようがない。どうしても、パソコンに集中して仕事をするしかないのだ(勿論、パソコンにゲームなどは入れてはいけない)。
そんなに根詰めて仕事をしてたら、神経が参っちゃうんじゃないか?などと思ってくださる優しい方もいらっしゃるかもしれないが、その心配もない。なぜかというと、ノートパソコンのバッテリーは、今のところ約2時間(高性能なものでも3時間以内)しかもたないので、必然的にファミレスで仕事に集中する時間は2時間程度に限定されるからだ。人間、2時間ぐらいの集中なら、神経が参ってしまう等と言うこともない。
ファミレスでの仕事は、怠惰な私が集中的かつ効率的に仕事を進める上で、今のところ非常に効果がある。どんな仕事にも応用が利く方法ではないかもしれないが、「自分は集中が苦手だ」と言う人や、「なかなか仕事に向かう気になれない」と言うような人には、お奨めの仕事術だと思う。
ただ、ファミレス関係者には迷惑な話かもしれないが・・・・。
17th,March,1999 by Osamu Yamanaka