8月は、初心に返って再びランダムなセレクトでお送りします。ジャンルを問わず、時代も問わず、洋楽邦楽さえも問わずに、あっとらんだむに紹介していきます。よろしくおつきあいの程を!!(^^)/
今回の一発目は、アメリカ出身の、ジプシーテイストいっぱい、ラグタイム雰囲気いっぱいの不思議なグループSquirrel Nut Zippersだ!
1.「Perennial Favorites」 Squirrel Nut Zippers
風変わりな男女取り混ぜ8人組の大型グループ「Squirrel Nut Zippers」の1998年の最新盤です。このバンドの場合、Popバンドなのに楽器編成が風変わりで、バンジョーやサックス、トロンボーンやバイオリンが、曲のアレンジの重要なパートを占めています。またメンバーそれぞれの担当パートも厳密には決まっていないらしく、ある曲でサックスを吹いていた人が、他の曲ではギターを弾いていたり、またある曲ではボーカルを取っていたりしています。演奏される曲は、どれも風変わりな楽器編成をそのまま反映させたようなジプシー風、ラグタイム風のオールドタイムっぽい雰囲気を色濃く漂わせた曲です。しかし、だからといって聴きずらいという事は全くなく、立派なPop Musicになっているところがとても魅力的です。
収録曲は全曲個性的で、とても良い出来です。実はこのCD、一応試聴したとはいえ、主にジャケットに惹かれて買ったのですが、最後まで通して聴いてみたら、すっかり気に入ってしまいました。特にお奨めはヒット曲でもある1曲目「Suits Are Picking Up the Bill」あたりです。夏の仲間とのドライブのお供に、にぎにぎしい「長年のお気に入り」(Perennial Favorites)はいかが?
続いて二つ目は、前回も取り上げたVoice Of Japanをもう一度!
2.「E-Wah-OH」 Voice Of Japan
このコーナーでは毎度おなじみ、40人編成の和製ゴスペル・ソウルグループ「Voice Of Japan」の、現時点での最新録音盤です。発表時期が昨年の年末だったので、クリスマスソングなども収録されており、ちょっと時季はずれではありますが、声の力の圧倒的なパフォーマンスは、季節に関係なく聴感を直撃し、心に響きます。このアルバムでは、ピアノだけを伴奏にして繰り広げられる「OH HAPPY DAY」のボーカル・パフォーマンスが最高です。他にも、NHKのみんなの歌で取り上げられたタイトル曲「E-Wah-OH」、往年の松田聖子への楽曲提供で有名な作曲家・小田裕一郎の手による美しいバラッド「Heaven」、VOJA流クリスマスソング「Little X'mas Tree」等が収録されています。
お次は、VOJAの手本になったアメリカの本家本元ゴスペル・ソウル・グループSounds Of Blacknessだ!!
3.「Africe To America」 Sounds Of Blackness
Sounds Of Blacknessは、長いキャリアの割にはリリースされているCDの数が圧倒的に少なく、これと言ったメジャーヒットもないので、今ひとつ地味な印象を拭えませんが、とにかくこのCDを一度聴いてみて欲しいと思います。日本では知名度の低い彼らですが、アメリカでは「One and Only」のNO.1ソウルグループとして、圧倒的な支持と知名度を誇っている事実を、嫌でも納得させられてしまう素晴らしい出来映えの作品です。収録されている作品は、伝統的なゴスペル風の曲から、コンテンポラリーなソウルミュージック、美しいバラッドなど、様々なタイプの曲が収められています。その全てが名曲であるとは言えませんが、パフォーマンスの素晴らしさで全曲名演奏であることは間違いありません。楽曲的に私の好みは、2曲目「I'm Going All The Way」、10曲目「A Place In My Heart」などです。30人編成のゴスペル・コーラス隊を中心とする素晴らしいボーカル・パフォーマンスは、まさにOne and Onlyの存在であることを確認させてくれます。
前述のVOJAが、Sounds Of Blacknessに憧れて編成されたことは有名な事実ですが、ソウルミュージックが好きな人なら、誰だってこのバンドのパフォーマンスに触れたら、自分でもやってみたいと思うのは当然だと思います(それを実行し、実現したVOJAの亀淵友香は凄い人です)。Sounds Of Blacknessは、聴く者に対して有無をいわさぬ圧倒的な魅力を発散する、本物の希有なグループだと思います。
時代の流行や国の違い、ジャンルの好みも飛び越えて、全ての人に、超!お奨めです。
今回の最後は、ちょっと古めの作品ながら、いまこそ聞き直したいDon Henlyの「The End Of Innocence」だ!
4.「The End Of Innocence」 Don Henly
元Eaglesのドラマー兼ボーカリストとして、あの「Hotel Carifornia」を歌った人の、1989年のソロ作品。結果的にグラミー賞を受賞するなど高い評価を獲得し、大ヒットを記録した作品でもあります。MTV全盛だった当時、このタイトル曲は、あちこちのMTV系番組で流れまくり、日本でも大ヒットをしたのは良いのですが、ちょっと食傷気味になるほど露出したため、正直のところ今更聴き直すのもなんだなぁ、とも思いました。しかし、改めて今聴きなおしてみると、これがなかなか良い出来映えの作品なのです。
既に発表から10年を経過し、当時MTVから流れていた他の作品の多くが、今聴くとノスタルジックに響いてしまうのとは対照的に、1998年の今聴き直してみても十分聴けてしまう本物の魅力を備えています。Don Henlyと言う人の作品では、ソロ。デビュー作である「I Can't Stand Still」も有名ですが、その作品は楽曲を当時の流行に合わせ過ぎて、時代の中に埋没してしまった感があります。正直のところ「I Can't Stand Still」は、今聴くと古くさく、また説教臭くてあまり魅力的であるとは言えません。しかし、「The End Of Innocence」は見事な出来映えだと思います。楽曲、アレンジともに、時代を背景としていながらも普遍的な要素を兼ね備え、時代を超えて聴かせる力を感じさせます。全体に楽曲に力があり、アレンジを極めてオーソドックスにまとめたことで上手に曲の完成度を高めています。
お奨めは、Bruce Hornsbyとの共作のタイトル曲「The End Of Innocence」、ちょっとEagles風の「The Last Worthless Evening」等々です。
再評価するつもりで、是非もう一度、アルバムの最初から最後まで聴いてみてください。きっと新しい魅力を発見できることと思います。
7th,August,1998 by Osamu Yamanaka