ちょっと真面目なコラム


We Can't Stop The Music

〜ロックの時代の終わりに〜

 中学生の頃ロックに目覚めてしまった私は、今に至るまでロックから離れられず、今では立派なロック親父予備軍になってしまっている。私の場合は、ロックといっても70年代的なシリアスなロックよりも、マニアの間では邪道的に扱われるいわゆる産業ロック、すなわち80年代的な軽やかなポップロックが好きなのだが、70年代の重々しいロックが嫌いなわけではないし、遡って60年代のハッピーなロックやサイケデリックなロックも大好きだ。ただ、私がロックを聴き始めた時期が80年代だったため、その時代のロックに、最も同時代的なシンパシーを感じるのだ。

 

 80年代的ロックは、ポピュラリティの追求と、それに伴うロックの産業化が最大の特徴だろう。70年代的なロックがアーティストの生活や生き様を伴う一種の芸術としてのロックだとすれば、80年代的なロックは、より商業的な楽曲至上主義的な側面が強く、アーティストの存在感は70年代よりも希薄である。70年代的なロック作品が、生き様の反映としてアーティストに直結した唯一無二のものだったのに対して、80年代的ロックは、アーティスト固有のものではなく、一人歩きした音楽として確立された作品として成立しているものであるように思う。ロックは、70年代的な唯一無比のアーティストの自己の結晶としてのロックから、80年代には音楽家が作り上げた汎用性を持つ音楽作品としてのロックに変貌したのだ。このことは「The Rock」から「a Rock」への変貌と表現することもできるだろう。もちろん、70年代にも「a Rock」としてヒットした作品はあるし、80年代に「The Rock」として認知されたアーティストもいる。しかし、大きな流れとしては、「The」から「a」への変貌というのが、80年代のロックを語る上での重要なキーワードなのではないかと思う。

 

 しかしながら、ロックという音楽はそんなにも変わったのだろうか?とも思うのだ。90年代の初頭には、80年代を振り返って「ロック不毛の時代」という言葉が囁かれていたものだが、90年代も終わろうかという今、90年代を振り返ってみれば、80年代以上にロックは不毛であったのではないかという思いに駆られてしまう。90年代は、明らかにロックがポピュラーミュージックの主役から滑り落ちた時代である。90年代の主役はHipHopやSoul Music系のダンスミュージックであり、決してロックではない。70年代的なシリアスなロックも、80年代的な楽曲至上主義的ロックも、90年代には沈黙した。この10年間を通じて最も元気がよかったロックアーティストが、70年代に「生き様」を見せて伝説を作り、80年代に「楽曲至上主義」への転換に成功した、エアロスミスでありエリック・クラプトンであったことは、90年代を代表するような典型的ロックアーティストの不在を示すなによりもの証拠のように思うのだ。

 今の尺度でいえば、70年代的ロックも80年代的ロックも、どちらもロックであり、それ以上でも以下でもない。70年代的ロックから80年代的ロックへの変遷というのは、実は何のことはないポピュラーミュージック全体の流れの変化であり、ロックの音楽としての変質(音楽的な成熟といってしまっても差し支えないのではないか?)はあったにせよ、今にして思えば大した出来事ではなかったように感じられるのだ。

 ロックが没落した90年代は、かつてジャズ・シンガー達がポピュラーミュージックの主役から陥落したのと同じことで、ロックという音楽自体の変化ではない。ただ、主役の座を奪われただけのことなのだと思うのだ。

 

 正直に告白すれば、私は90年代のポピュラーミュージックの大半は好きになれなかった。なぜなら、その音楽はロックではなかったからだ。過去において、ロック好き=ポピュラーミュージック好きだったのだが、90年代はそういう時代ではなかった。60年代後半から始まったロックの時代は、様々な紆余曲折を経ながら音楽的に成熟していき、ついに90年代に幕を下ろした。これからもロック音楽はいくらでも制作されていくだろうし、時には大ヒット曲がでたり、ビックアーティストが登場することもあるだろうが、かつてのようにヒットチャートの大半がロックという時代はもう二度とこないだろう。

 私がロックを聴くようになった頃、ジャズを愛する人たちは、どちらかといえばマイナーな存在のように感じていたのだが、これからはロックにこだわって音楽を聴いている人も、同様にマイナーな音楽ファンとして周囲の人には認識されていくのだろう。かつて海外のロックの動向を一生懸命に追いかけることは、音楽ファンとして時代の先端を行く行為だったのだが、今となっては時代に置きざりにされた趣味人の行為になりつつあるのだ。

 まぁ、それでもいいか。好きな音楽を好きなだけ聴ければ、音楽ファンとして特に文句もないのだから。ちょっとだけ寂しさも感じるが、かつて栄華を誇ったロックというジャンルの音楽にこだわり、時々新しいアーティストの鮮烈な登場を喜び、時たまのすばらしいロック楽曲のヒットに心を躍らせ、それ以外の時はヒットチャートに背を向けて、かつての甘い時代のロックに惑溺するのも悪くない。

 今日のBGMは、QueenとPrinceとLed ZeppelinとCulture ClubとBeatlesとStonesのごった煮にしようかな・・・と思う1999年の年の暮れだ。

28th,December,1999 by Osamu Yamanaka


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