(罪人よ・・・)

夜の大都会。その片隅に声が響く。

(罪人の群れよ・・・)

地の底から、あるいは、闇の淵から響く声。

「いやぁーーーーッ!!」

女の声が響く。誰かに追われているのか?

(主は嘆き悲しんでいます・・・「愛さなければよかった」と・・・)

また、あの声だ。

「たッ・・・たす・・・けて・・・」

追い詰められた女は声にならない声をあげた。

(そうして流した黒い涙の中から私たちは来ました・・・)

女の首筋に、牙がつきたてられる。

(悔い改めよ)

女からどんどん血色が失われていく。

ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・・

血を・・・なめる音。

そして、また声がひびいた。まえよりもはっきりと。

「そして死に絶えなさい・・・愛されなかった人々よ・・・」



スーパーヒーロー作戦SPIRITS
第1話「疾風の戦士、陽光の戦士」

・・・夢

夢を見ている。

懐かしい夢だ。

おれは戦っていた。

誰と?

そんなものは決まっている。

人間の自由を奪おうとする悪党どもだ。

隣に男たちがいる。

俺の戦友。

俺の戦いはいつもこいつらと一緒だった。

そいつらが叫ぶ。

「ライダー変身!」「変身!」

光が、疾風が渦巻く。

そこにいるのは異形の戦士・・・

俺の戦友、「仮面ライダー」・・・




ニューヨーク。

この街は不思議だ。

秩序が無い様で有る。

様々な人々が住む、人種の坩堝たるアメリカの象徴とも言える都市・・・

その日、その都市で奇妙な事件が起こった。

それは・・・・


旧国連ビルFBI分室

だいぶ旧式のディスプレイ、部屋の電気を落とさねばはっきりとは見えないそれになにかの写真が映る。中にいるのは屈強そうな男たち。FBIの刑事だ。

「アレン=デニソン。職業、娼婦。13人目の被害者だ。」

カシャ

写真が変わった。

「他の被害者同様、体液の9割以上がなくなっている。」

カシャ

映っているのは、異常、としか言いようのない死体。

「うえ・・・摩天楼の天使が・・・もったいない・・・」

説明をしている男以外の誰かが言った。

「それ、最近続発してるスラムの失踪事件と時期的に関係あるんじゃないか?」

また誰かが言った。

最初の男が、

「それに関して・・・だ。最近入手したこの写真だが・・・」

カシャ

またディスプレイの写真が切り替わる。

今度は、鳥とも獣ともつかない影が摩天楼を舞っている、というものだった。

「何ですか?鳥?」

「明るいこの街の夜なら、カラスだって飛んでますよ。」

しばし、この写真についての憶測が飛ぶ。

声が飛んだ。

揶揄の色を隠そうともしない声だった。

「プ・・・プハハッ!翼長4mの鳥ねぇ・・・?」

「はっ!そんな鳥、いるわけないじゃないですか・・・?」

声は二つ。

「連続殺人も、大量失踪もその怪人が絡んでるって話でしたよね?」

後に言ったほうがそう言う。

説明していた男が言った。

「怪人・・・だぁ?!」

ブラインドが明けられ、外の光が差す。

「オイ、お前ら・・・滝和也と柊虚!」

サングラスをずらして、滝と呼ばれた男は、

「チっす。」

と慇懃に言った。

柊と呼ばれた男は席を立ち、

「精が出ますね、皆さん。」

と言う。

「先に行ってます、滝さん。いつものところでまた・・・」

そう言って柊は部屋を出ていった。

刑事たちは、舌打ちをする、目をそらす、敵意を持って睨むなど様々な態度で不快を表した。

「キサマらは部外者のはずだ、出て行け。」

「へいへい、どーもすみませんこって」

席を立ち、おかしそうに彼は、

「ねえ、ボス。なんでFBIはこの件を公表しないんですかね?」

と尋ねた。

さも当然とばかりにボス、と呼ばれた男は行った。

「ここは世界経済の中心とも言える場所だ。混乱を避けるためだよ。」

「はは、13人もミイラになってりゃ十分だと思いますがね。スラムのホームレスだって噂してらあ。なんで警戒警報出さないんです?お得意の隠蔽体質?・・・それとも」

シニカルな笑みを浮かべ、

「この国の誰かが・・・それと知ってやらせてる・・・とか。」

「オイ!滅多なことをいうんじゃない!」

滝の胸倉をつかんでボスは怒鳴った。

「お前に話すことはなにもない」

「いいんですかね・・・こんな手回しの悪いことやってて・・・」

滝は一転してまじめな顔つきになって、

「この国に・・・仮面ライダーはいないんだぜ」

そう言うと、またもとのおどけた顔に戻って、

「なんちて。失礼しゃあした。」

と言って部屋を出ていった。

「マスクド・ライダー?」

「ふん、やつの作り話だよ。無償で戦う仮面の戦士。そんな酔狂な男がいるものか」

そう言って、ボスは一笑に付した・・・



「滝さん、また捜査外されたんだな?」

「うるせーよ、新入り。」

滝と柊は路上で話しこんでいた。

柊の口調はさっきとは打って変わった調子である。

「しかも、その後ブリジットさんのお尻でも触ったんだろ?その頭・・・」

そう、よく見ると滝の頭・・・タンコブだらけである。

「だからうるせーよ。第一ICPOの捜査員がなんでFBIに出張してんだよ?」

柊は困ったように

「うーん・・・そいつは秘密・・・てことにしといて欲しいんだが・・・駄目?」

と言った。

「駄目だ」

即答されてしまった。

「そうか・・・なら仕方ない・・・内緒だぜ?約束できる?」

「ああ、まかしとけ!」

ちょっとためらってから

「・・・実は、俺探してる人がいるんだ。あんたのよく知ってる人で。」

と言うと、

「誰だよ、それ。」

と言われてしまった。

「それは、どーしても言えないんだってば!」

「・・・ふーん、わかった。」

いまいち納得していないと言う感じで彼はそう言った。

「んじゃま、俺はちょっくらでかけてくらぁ。」

バォン!!

そう言うと、滝はバイクに乗って行ってしまった。

「・・・ありがとう、滝さん。」

離れていく背中に向けて放った柊の声は、彼には届かなかった・・・

「思えば可哀想なやつだよな、あいつも。」

「ホプキンスさん。どうしてここに?」

現れたのは黒人の老人。

柊は怪訝そうに、

「いっつもあの喫茶店から出てこないのに、どうしたんですか?」

と言った。

「いや、新入り。お前さんにあいつのことを教えとこうと思ってな・・・」

「はあ・・・・」

「昔のあいつはもっと正義感が服着て歩いてるような・・・そんなやつだった。」

懐かしそうに目を細めて、

「FBIからICPOに出向すると言う栄誉と共にあいつは故郷の日本に帰った。そしてだ・・・世界的に猛威を振るったカルト集団の正体を探っていたらしい。」

と言った。

「・・・」

「”SHOCKER”・・・”GELSHOCKER”だったか。そいつを一人で壊滅させちまったらしいんだ、あいつは。自分の手柄じゃない、ってあいつはいっとるがな。」

「”仮面ライダー”ですか・・・」

柊は心に刻むようにその名を口にした。

ホプキンスはやり切れなさそうに、

「ま、とにかく知りすぎちまったって事だよ・・・信じて戦った結果あいつは牙を抜かれちまった。ヒデエ話しだ。」

その言葉を、柊は少し残念に思った。

彼の牙はまだ、抜かれてはいない。そう思ったからだ。





スラム街・サウスハーレム

滝はそこにいた。

滝は、歌声を聞いていた。

少年の透き通るような声だった。

黒人の少年の声に、スラムの大人も子供も集まって、それを聞いていた。

歌が終わると歓声が上がり、少年は大人たちに囲まれた。

「ありがとう、スパイク・・・これでまた生きていく元気が出たよ。」

「まーた、大げさなんだから!」

元気良く返事をして、少年は照れたように頭をかいた。

「さすがだな、マイケル・ジャクスン」

滝が声を上げる。

子供たちが駆け寄り、おひねりをせがんだ。

「ほらよ」

「わーい、タキだー!!!」

おひねりを粗末な帽子に入れると、子供たちが歓声を上げて飛び掛ってきた。

手を引っ張る、背中に乗る、足につかまる、服にしがみつく。本当にてんやわんやだ。

「おいおい、元気だなぁ、コゾーども!」

満更でもなさそうに滝は、楽しんでいた。

それは、彼にとって懐かしい場所を思い出させる。

彼が親しみ愛した子供たちに、彼らの雰囲気は似ていた。

ニューヨークに帰ってきた彼が、ここに魅かれたのはその為だろう。

ここには懐かしいにおいがある。

彼にはそう、思えたのだ。

それを少し遠巻きに見ていたスパイクに、声をかけたものがいた。

「本当に、スバラシイ声です。スパイク君。」

「神父さん」

神父と呼ばれた男は、にこやかに、

「ぜひ、今度の礼拝でゴスペルでも歌っていただきたいものです。」

「へっ、ガラじゃねえよ!」

子供たちにまとわりつかれ、身動き取れなくなっていた滝はスパイクに、

「誰だ、スパイク。その人は?」

と聞いた。

「ペトレスク神父。ほら、イーストハーレムに無人の教会があったろ?あのキッタナイところに好んで赴任した変わり者さ。」

そういったスパイクに周りの大人たちは、失礼だぞとたしなめた。

「ごめーん♪」

おどけてそういうスパイクの言葉のあとを継ぐかのように、ペトレスクは、

「皆さん、どうです?今日夜露をしのげるところがない方、金銭的にお困りの方、教会でよろしければ少しだけなら食事もございますし・・・」

と言った。

「本当かい?!ありがてえ!!」

歓声が上がった。

「慈悲深いな、神父さん。俺も、FBIクビになったときには、頼むぜ。」

「ええ、喜んで。神の愛は誰しも受ける権利があります・・・・」

滝にそう返した神父の言葉は、今はまだ信じられると、滝は思っていた。今は・・・・・・




スパイクたちと一緒に、彼らのねぐらへ行った滝は、途中合流した柊と一緒に彼らと話しこんでいた。

「もう十分じゃないか?スパイク。アポロ何とかの発表会に出るには。」

「違います、滝さん。アポロシアターのアマチュアナイトですよ・・・」

突っ込みを入れられた滝に、追い討ちをかけてスパイクが言った。

「そうそう、何度いってもタキさん覚えてくれないんだからなぁ・・・いいかい?アマチュアナイトはただの発表会とは違うんだぜ?」

少し言葉を切って、続ける。

「客もシビアだし、そんなかでうまくいけば大物からのお声がかかる場合もある。ジェイムス・ブラウンもナット・キングコールも、アマチュアナイト出身なんだぜ?」

少し誇らしげに上を向いて彼はいった。

「最近ハーレムで失踪事件が続いてっけどさ、大して騒いでもくれやしないだろ?この町のごろつきなんていなくなってもどーでもいい人間なんだろうな・・・俺たちだってそうさ。身寄りもねえ、たいした未来もねえ・・・でもさ、俺は絶対このアマチュアナイトでマイケル・ジャクソンみたいに成り上がってやるのさ・・・」

スパイクは、仲間の子供たちのほうを向いた。

「そして・・・俺は、俺はあいつらの・・・」

そういいかけたとき、子供たちが声を上げた。

「ねえ、タキ!!あれのお話を聞かせてよ!」

「あれって?」

そう聞く滝に子供たちは、

「ほら、あれだよ!!仮面ライダー!!!」

と言った。

「あ、馬鹿。やめとけよ、明後日まで帰れなくなるぜ?!」

年長者らしい子がそう言うが、彼の隣にいた柊は、

「いいじゃないですか?俺も聞きたいしね、滝さん。」

そういうと、滝はサングラスをはずし、話を始めた・・・

仮面ライダーの悲しくも辛い、そして誇りにみちた戦いを・・・

悪いやつらに体を作り変えられてしまったこと。

そいつらから世界の平和を守るために戦い続けたこと。

自分も、彼に協力していたこと・・・

「いいか?敵は半獣のグールやヴァンパイアどもだ。どいつもこいつも半端じゃねえ。」

子供たちが息を飲む。

スパイクが少し厚めの板を持った。

ぱきゃっ!

滝は軽々とそれを正拳で割る。

「そこで一発。ライダーパンチ!こいつは岩をも砕く。」

おおおおお・・・

歓声が上がる。

「そしてとどめは・・・・ライダーキック!!」

浮かんでいた木の葉が、鋭いけりで真っ二つになる。

「これで怪人どもはイチコロだ。」

おおおおおお・・・

また、歓声が上がる。

「どうよ、ライダーはカックイーだろ?」

「うん!カックイー!!」

「ライダーはサイコーだろ?」

「うん!サイコー!!」

「そうか・・・サンキュー・・・」

子供たちは興奮しっぱなしだ・・・

それを見ながら、滝は思った。

彼の戦友のことを・・・

・・・戦友よ、お前は今どこで戦っている・・・

「気をつけて帰れよ?いなくなっていい人間なんざ、一人だっていやしねえんだからな。」

子供たちを見送りながら、滝はそういった。

「大丈夫だよ!いざって時は、ライダーが来てくれるんでしょ!?」

そして、スパイクが言った。

「ねぇ、タキさん。俺思うんだけどさ。あのすげえカラテといい、そうやってバイクまたがって現れる所とかさ・・・仮面ライダーって、タキさんのことなんじゃないの?」

滝は少し、おかしそうに「そいつぁあいい・・・」とだけ言った。

はしゃぐ子供たちの中、彼は郷愁を感じていた。

その、少しの郷愁を打ち破ったのは、柊だった。

「すごいですね・・・ライダーは。」

「なんだ・・・お前も、信じてくれるのか?」

少し意外そうに、そういうと滝は、

「・・・サンキュー」

少し、照れくさそうに、そう言った。

「そうそう、忘れてました。このデータを・・・」

「ん?なんだ?」

携帯端末を滝に渡して、柊は続けた。

「この事件に関してのデータです。詳しくは、ここを離れて。」

「・・・・わかった。」

「どうやら、悪しき世界は次に繰るべきページをわれわれに教えてくれそうです・・・・それが、どう出るかは、ここからです。」




柊のアパート

薄暗いアパートで、二人の男・・・柊と滝が話していた。

いまや、なくてはならないものとなってきたスターネット用の携帯端末と、小型のノートパソコンだけが光を発していた。

柊の集めた情報によれば、事件はペトレスク神父が来てから起こっているということ、そして・・・

「なんだって・・・?あの神父が来てからか。」

「ああ、間違いないぜ。そして、これを見てくれ。」

ノートパソコンに新たなファイルが表示される。

「事件の起きたあたりで、死亡推定時刻、もしくはそれにごく近い時間に、13回の事件のうち9回まであの神父が目撃されてんだ。」

「チ・・・・なんてこった・・・・」

どかっ!

心底からむかついたように、壁をたたいて彼は言った。

「・・・俺が行って来る。カマかけてくるんで、少し待っててください。」

「・・・わかった。」

「・・・それまでここにいてくれ。連絡入れる。」

「・・・わかった。無理、すんじゃねえぞ。」

少し心配してくれてるのかなと、柊は思った。

そして、彼は自分のことを信頼してくれているということも。

それはそうだろう。歴戦の戦士である彼が、素性も知れぬ自分にこんな危険なことをさせるのだ。信頼していなければ、任せられない。

そうでなければ、よほど憎んでいるか、だ。

扉をくぐって、彼は言った。誰にも聞き取れないくらいの声で。

「ありがと、滝さん。でも・・・ちょっと、やばいかも・・・な。」




う・・・・ああ・・・・・・

地の底から響くような声がする・・・・

・・・・ひもじい・・・・・よぉ・・・・

「ひもじい・・・そうでしょうねぇ・・・生まれ変わるには大量のカロリーが必要ですから・・・どうです?今宵は外食などしては・・・」

もうひとつの声、それは・・・あの神父のものだった。

声のトーンが変わる・・・われわれはその声を知っている。いや、知っているはずだ・・・

「神の恵みのパンをほおばり・・・紅い・・・ワインを・・・」

かちゃ・・・

そのとき、教会の扉が開き、影がさした。

「おいっす。神父さん、おはこんばんちは。」

「おや・・・?あなたは。」

声のトーンが戻る。

それは昼間の温厚な神父のものだ・・・

「・・・ふん、刑事。滝さんの同僚だよ。」

「おやおや、その方が何か?」

柊は目を細めて、こういった。

「いえね・・・最近は物騒になってきましたよねぇ?スラムでは毎日人が消えてるし、変な殺人事件は起こる・・・・しかもだ、ちょうどあんたが来たころから、かなぁ・・・なぁ、神父さん。何かしらねぇか?教会には人が集まるからさ・・・噂には詳しいんじゃねえの?」

「う〜〜〜〜ん・・・申し訳ございません・・・そんなウワサは何も・・・・・・」

にこやかにそれを告げる神父。

柊は外に出て、

「・・・そうか・・・・・・じゃあな・・・・今日はどうもすいませんでした。また、礼拝のときにでも来てみます。」

と言って教会から去っていった。

少し離れると彼は携帯端末から、メールを発信した。

メールにはこう書いてあった。

『脈あり。次にやつが狙うのは、俺たちの知り合いである可能性が高い。気をつけてくれ。』と・・・・



夢になる。俺はずっとそう思ってきた。

スラムで育った俺たちにとって、毎日は決して楽しいものじゃなかった。

でも、俺には歌があった。

歌うと、みんな喜んでくれた。うれしかった。

やがて俺は夢を持った。

アポロシアターのアマチュアナイトに出演して、そこで、誰か大物に目をつけられて成り上がる。

そして、俺はスラムのみんなに希望を与える、夢になる。そう思ってきた。

誰一人、ガキどもをギャングなんぞにさせはしねえ。

絶対夢になるって・・・

なのに・・・なんで俺は・・・

何で、来てくれねえんだ・・・・?仮面ライダー・・・・タキ・・・さん・・・・



「お前・・・スパイク・・・か・・・?」

それは振り向いた。

それは・・・変わり果ててはいたが、紛れもなく、俺の知っているスパイクだった。

「タキ・・・ザァン・・・オレ・・・ドウナ・・・ッテルノ・・・・ナンカ、カラダ。ゴワゴワシテェ・・・アタマンナカマッカニナッテ・・・・・キガツイタラ・・・エミリオニカブリツイテテ・・・・ソシタラ・・・・アイツ、シンダミテエニ・・・」

俺は叫んだ。

「落ち着け、スパイク!お前、まさか・・・あの教会に・・・?」

柊からメールが来た後、俺はスラムにすっ飛んで行った。

すでにスラムでは大騒ぎになっていて・・・

エミリオが病院に担ぎ込まれた。

しきりにうわごとをつぶやいていたそうだ、仮面ライダー・・・って・・・・チクショウ!!!

それで、血を吸った化け物がサツに包囲されてると聞いて、ここに来た・・・結果は・・・くそったれだ!!!

目の前の変わり果てたスパイクが言う。

「ソウ・・・ペトレスクシンプダ・・・アイツニサソワレテ・・・キョウカイニイッテ・・・ソコデ、トンガッタモンヤギザギザシタモンデ・・・・・・オレナンカサレテ・・・・ソシタラチガスイタクナッテ・・・・・ア・・・レ・・・・オレ、ダレノチヲスッタンダッケ・・・?」

「スパイク・・・エミリオだ!しっかりしろ!」

俺はもっと叫んだ。

「アアアアア・・・・ドンドンアタマガハッキリシナクナルヨォオオオオ!!!ソウダ・・・アイツガイッテタ・・・コウヤッテ・・・・ドンドンゼンブワスレチマッテ・・・・ソシタラニドトモドレナク・・・・ナルッテ・・・ギギギギギギ!!」

「昔!仮面ライダーって男がいた!!」

スパイクに攻撃されながら、俺は叫んだ。

下から、同僚の声が聞こえるが、完全無視。

「あいつも・・・お前みたいにくそったれどもに体を化け物同然にされちまった!!」

スパイクの攻撃をかわしながら、受けながら俺は声の限り叫んだ。

「でもなぁ・・・あいつは、あいつらはそのゴリゴリした体で悪党と戦い続けた!無償でだ!!自分のためじゃねえ!他人のためにだ!!」

スパイクの羽が顔を殴る。

「今だってそうだ!今日も、今も、あいつらは世界のどこかで戦い続けてるんだ!!」

攻撃の手が止まる。

「どうよ、いい話だとはおもわねえか?!お前も同じだ、お前も…ガキどもの夢になるんだろう?!」

「ア・・・ア・・・・アアア・・・・ダギ・・・ザ・・・ン・・・・」

スパイクは、その羽で飛び立った。

そこには、あいつのバンダナが残されていた。

あいつ・・・・泣いてた・・・くそぉっ!!

「なぜ、撃たなかった!」

ボスの罵声が聞こえる。

そんなことはどうでも良かった。

俺は、もう心を決めていた。

スパイクのバンダナを突きつけ、俺は言った。

「あいつの・・・あいつの夢を聞いたからさ」

俺は、歩き出した。

頭の中でガキどもの、スパイクの声が響く。

(大丈夫だよ!いざって時は、ライダーが来てくれるんでしょ!?)

(仮面ライダーって、タキさんのことなんじゃないの?)

絶対ゆるさねぇ・・・あのクソ神父・・・・





イーストハーレム・教会

「ギ・・・ギギ・・・ギグウエエ・・・・・」

苦しむスパイクがそこにいた。

それを冷徹に見つめる瞳・・・ペトレスクだ。

「ナゼ・・・殺さなかったのです・・・?」

「ガ・・・アグ・・・・」

「もうよろしい。お前はそこで、ミスクリエーションの干物になりなさい。」

目を細め、もうスパイクなぞには興味は無いとでも言うように、

「サアテ・・・・ミナサン・・・・外には細く・・・美しい三日月が下がっています・・・罪びとを串刺しにしたくなるような・・・・ね・・・」

と、彼は言った。口を恐ろしい形にゆがめて。

彼の言葉に従うように、蝙蝠の化け物が舞い上がる・・・

とそのとき、ステンドグラスが割れた!!

ガッシャァァァァァン!!!

ギュウッ!

ドゥッ!ドウッ!!

教会に飛び込んできたのは、黒いライダースーツを着込んだ男。

大型のバイクの振動と騒音が教会に満ちた。

「晩餐の前に無粋な方だ・・・どなたです?」

男は言った、あの名を・・・

「仮面・・・ライダー」

ペトレスクの眉がピクリと揺れた。

スパイクが振り返る。

ギギ・・・・ギギギギギギ・・・・

蝙蝠どもが、彼に襲い掛かった。

恐れず・・・怯まず・・・伝説にあるグールのように。

ドンッ!ドンッ!!

ショットガンが火花を散らし、数匹の怪物が吹き飛んだ。

それを投げ捨て、高電圧と思えるメリケンサック方のスタンガンを彼は手に取り叫んだ!

「うおおおおおおおおっ!!ライダーーーーーーーッパァーーーーーンチッ!!!」

襲い掛かってきた怪物の頭が吹き飛ぶ!

「おおおらぁぁあああっ!!!ライダーーーーーーーーキーーーーーーック!!!!!」

足からも、放電の火花が散り、跳び蹴りは数匹の化け物を薙ぎ散らす。

「うおおおおおおおおお!!!!!!!」

一歩も引けをとらず、彼は戦い続けた。

そして・・・ペトレスクが口を開いた。

「カメン・・・ライダー・・・か・・・嫌な名前だ・・・・私の愛しい彼らを壊した男の名もそうでした。」

「!」

キィィィィィィィィィィィ・・・・

何かを引っかくような高温が響く。

「誰もがののしった私の力を・・・・・・彼らだけが認めてくださったのにぃぃぃぃぃ・・・・」

大口を開けた、神父の口からだ。

「貴様・・・ショッカーの・・・」

男がそういった瞬間。

彼の仮面が割れ・・・素顔が見えた・・・

「!!・・・ダギ・・・ザ・・・ウワアアアアアアアッ!!!!」

滝・・・滝和也だった。

「スパイク!逃げたって何にも・・・」

「・・・どこを見ているのです・・・?」

ざしゅっ!

ぐぃっ!

神父の背中から、羽が生え・・・徐々に、怪物と化していく・・・・

そして、羽が彼を薙ごうとしたとき、何者かが彼を抱いてジャンプした!

スたッ!

「ふう・・・アブねえ、アブねえ・・・滝さん、あんた死ぬ気か?こんなヘチョイ装備で・・・」

柊だった。

「お前・・・・・・ばっかやろう!!こんなところに来るやつがあるか!?」

「馬鹿はねえだろ?ほら・・・聞こえねえか?俺の探してた人・・・そして、あんたの生涯の戦友が・・・さ。」

どうん!!

どぅんどぅんどぅん!!

「マ・・・マサカ・・・コンナトコロマデェェェェェ!!」

教会の扉を砕き、ライトがすべてを照らす。

「お前・・・・本郷猛!」

ライトに浮かび上がった顔、それは紛れもなく、彼の生涯の戦友、本郷猛だった。

「・・・スマンな、滝。遅くなった。」

涙で、滝の顔がゆがむ。

「ばっか・・・やろう・・・・」

ライダー・・・・・

ギギギギ・・・・

本郷の体からベルトが浮き出、猛烈な光を放つ。

変身!!

ベルトの風車が回り、彼の体が徐々に変わっていく・・・

体を装甲が覆い、やがて仮面が彼の顔を覆った。

「敵は多いな・・・滝・・・・」

ひざを突き、滝の肩に手をかけ、

「いや・・・・・・たいしたことはないか・・・・
 今夜は、俺とお前で、ダブルライダーだからな。」

そういう、本郷・・・いや、仮面ライダー1号がそこにいた。

「ようやく・・・俺の任務が果たせるな・・・」

柊が言った。

「おい・・・柊、お前・・・なんなんだ?」

滝が言う。

「・・・今からわかるよ・・・・悪しき世界のページの繰り手は、貴様たちではない!」

最初は滝に、そして、後は蝙蝠どもに言った。

「君は・・・?」

1号が言う。

「それは・・・見ていればわかります。いくぞっ!悪しき世界のページの繰り手は俺たちだっ!!陽装!!!!

まばゆい光が教会に満ちる。

「シャラクサイワァァァァッ!!」

バシュッ!!

ペトレスクだったもの・・・・巨大蝙蝠が鋭い羽を1号、そして柊の方向へ飛ばした!

ギィイイン!!

1号に向かったものは、彼がはじき、それは周りにいた蝙蝠どもを薙ぎ散らす。

だが、柊に向かったものは、彼を貫いた・・・・ように見えた。

だが・・・・!

光が消えた後、そこには何もなかった。

「ドコヘイッタァァァァッ!!」

巨大蝙蝠が叫ぶ。

「ここだぁっ!!」

彼は天井のステンドグラスの上にいた。

「ふふふふ・・・・我が陽光、夜如きに遮れるものではない!陽光戦士カイザード見参!!」

『陽光戦士カイザードがコンバットスーツの装着に要する時間はわずか1m秒である。ではそのプロセスを説明しよう。
柊の発した「陽装」コードの発信と共に、ギガファントムのソーラーシステム内の増幅システムが起動。増幅された太陽エネルギーは特殊軽合金グラニュームなど様々な物質と合成され、赤いソーラーメタルを生成する。生成されたソーラーメタルは、わずか1m秒でカイザードに陽装されるのだ。』

「と言うわけです。さあ、やりましょう・・・本郷さん、いえ、仮面ライダー1号・・・滝さんの話どおりの強さを期待しますっ!!うおおおおおおっ!!」

「おおっ!いくぞぉっ!!」

戦いが始まった・・・・!

「ヒ・・・ヒヒィィィッ!」

「ライダァァァァァッ!!キィィィィック!!!」

どごぁぁぁぁっ!!!

ステンドグラスをぶち破り、ライダーキックが巨大蝙蝠の右手を吹き飛ばした。

「ツインテックリボルバー!!シュウウット!!!」

どがっどががががっ!!!

カイザードの二丁拳銃がさらに左手を吹き飛ばした。

「ヒギィィィィッッ!ギヒャァァァァッ!!!」

大袈裟な悲鳴を上げ、それは飛び去っていった。

それに呼応するかのように、人間蝙蝠たちも飛び去っていく。

「不味いぞ、こいつらもう、イッちまってる!!外に出たら、見境なく人を襲うぜ?!」

どるん!!

「本ご・・・・・」

「先に行ってるぜ、滝さん。サンファルコンッ!!」

ぐぉぉぉぉっん!!

爆音を残して、二人ともとっとと行ってしまった。

「そうだよ・・・忘れたぜ。あいつは人よか遅く来るくせに、人よか早く行っちまうようなやつだった・・・柊の消える癖もそうだし・・・・ちくしょーーーーッどいつもこいつも待ちやがれぇーーーーー!!!」

どぅん!!

滝も、自分のバイクで、彼らを追って町に向かった・・・

だが、その教会にまだ何かいるとは彼らは気づかなかった・・・

「チッ・・・あの『コウモリ』、せっかく私が再就職に協力してやったのに・・・所詮は拾い物と言う訳か・・・ふん・・・・」

「ほお・・・自分と同じ名前だからですか?近親憎悪か・・・醜いですね。」

「聞き捨てなりませんな、今の言葉・・・いくら貴公があの組織のものだからとて・・・舐めた口は自らの死を招きますぞ」

「いやいや、これは口が滑りましたねぇ・・・くくっ・・・ま、ここは彼らのお手並み拝見ですねぇ・・・ひ・・・ひゃはははっ!!」

「ふん・・・」

この声が何者なのか・・・それは、まだわからない・・・・





ニューヨーク市街


「なにあれ・・・」

青年が声を上げる。

影が近づく・・・・

「いやぁぁーーーッ!!」

悲鳴。

「吸血鬼がこんなに・・・なんで!?」

町中がパニックに陥っていた。

そのとき・・・・!

ぐおおおおおん!!!!

2台のバイクが、町を駆け抜ける!

「サイクロンアタァーーーック!!!」

サイクロンの羽が、車輪が蝙蝠どもを打ち砕く!

「とぉっ!!ライダーーーーーーッパーーーーンチ!!!!」

1号必殺のパンチが怪物を引き裂く!

「カイザービームッ!!」

カイザードの腕から飛ぶ光線が、蝙蝠どもを薙ぎ払っていく。

その光景を、窓から見ていたものがいた。

「おい・・・あれは!」

「なぁに?ホプキンスさん・・・って、あれは?!」

「あれが・・・タキの言ってた・・・」

「うそ・・・・」

そう、仮面ライダーの存在を疑っていたものたちが、それを見ていた・・・・




ばさっ・・・・ばさっ・・・ばさっ・・・・

「ウグ・・・ゴ・・・ブ・・・ハァハァ・・・ハヤク・・・アノカタノ・・・モトニカエラネバ・・・ワタシヲ・・・ワラシヲアイシテクレルアノ・・・・」

グオオオオオオオオオオオ!!!

逃げるそれをバイクが追っていた。

「タキ・・・・フン・・・ムダナコトヲ、ツバサモモタヌウジムシガ・・・・」

「逃がすかぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

滝のバイクは、陸橋のパイプの上を駆け上がる!

「へっ、どーしたばーかっ!!」

「チ・・・・コノ・・・シニゾコナイガァァァッ!!」

超音波が、滝を襲う!!

だが、彼にそれがぶち当たる寸前、別の超音波が、それを弾き飛ばした!

「!!スパイク!!!」

滝は気づいた。

スパイクが助けてくれた!

「チ・・・・コ・・・ノ・・・クサレガキィィィィィィ!!!!」

ざしゃぁっ!!

巨大蝙蝠の翼を食らい、スパイクは落下していった・・・・

落ちる間際、彼が言った言葉は、滝に届いていた。

・・・タギ・・・サ・・・ゾイツ・・・ブッゴロ・・・・

「オーケー・・・スパイク」

そういうと、彼はパイプの角度を利用して、やつの上に落下した!!

そして・・・・彼らも・・・・!

「どーでぇ!400kgだ、落ちやがれぇぇぇぇぇっ!!!!」

「キ・・・・サマァァァァッ!!!」

そのとき!!

ぶぉぉぉぉぉぉぉっん!!

やつらをすべて片付けた、1号とカイザードだ!!

「滝さん!」

「滝、行くぞ!!」

「おおおお本郷!!来いッ!!!」

「でやぁっ!!」

「とぉっ!!」

二人がバイクからジャンプする!想像を絶する速さで!!

「ヒ・・・ヒヒ・・・イイキニナル・・・ニンゲン・・・!!」

狂ったように哄笑する蝙蝠。

電光ぉーーーーーーーっ!!

業!雷―――――ッ!!

さらにスピードがあがるっ!!!

「キサマラハ・・・・カミニミハナサレタ!!ヒャハヒャハァァッ!カワイソウニナァァァッ!!」

ライダァーーーーーーーッキーーーーーーーック!!!!!

スライサーーーーーーーーキーーーーーック!!!!!

「シヌ、シヌンシニタエルゥゥゥゥゥ!!ヒトリモノコラナイィィィィィィッ!!!」

っざしゅざしゃぁっ!!!

三方からの強烈なモーメントを受けたやつの体がバラバラに四散する。

その光景を見ながら、滝は死にゆく蝙蝠に心で毒づいていた。

'バァカ・・・俺たちがいる限り・・・もう、一人も死なすかよ!!'

それは、彼の心の叫びだった・・・・

そして、それは・・・やがて集う英雄たちの、支えとなるであろう・・・言葉でもあったのだ。



アポロシアター前

本郷と、落下の衝撃で体中擦り傷だらけの滝が話し込んでいた。

「なあ、滝」

「・・・・」

「まだ、遅れてきたこと起こってるのか?」

それに対して滝は、心底嫌そうな顔で、「ッてるのか、じゃねーよ。」と答えたきりだった。

「お前よ」

「ん?」

「今まで、どこで何やってたんだ?」

「俺は・・・どこに至って、相変わらずさ。」

「ケ・・・ま、そんなとこだろうぜ。」

その時、柊が呼びに来た。

「おーい、滝さん。もうあいつの出番始まっちまうぜ?」

「お・・・そうか」

そして、アマチュアナイトが始まった。

スパイクはぎりぎりのところで助かった。

体力を極度に消耗していたことと、本郷の持ってきたワクチン、そして最後の決め手は心であると、本郷は言った。

「そういう力が、ひとの心にはある・・・・」

「そうですねぇ・・・そういう力あればこその、人間ってやつなんですよ、きっと。」

「ところで、お前、いったいナニモンなんだ?柊」

「エエト・・・今はまだ言えないな・・・ただ・・・ひとつ覚えておいてほしい。戦いが、また始まるかもしれない。10年前の侵略戦争や、ショッカーどもなんか目じゃないほどの災厄が・・・」

「そっか・・・」

「そのときは頼みます、本郷さん、滝さん。」

「ああ、わかった。」

「チ・・・しゃあねえな・・・人類の自由のためってやつ・・・だな、本郷?」

「ああ」

「じゃ・・・・俺は行く・・・本郷さん、滝さん・・・ありがとう。それと・・・Operation:Super Hero Spirits・・・・この言葉・・・忘れないでくれ。」

「おい!それはどういう・・・」

ぶぉぉぉぉぉ・・・・

「いっちまったか・・・」

「それじゃ、俺も行く・・・頼む。」

「ああ・・・まかせとけって。お前も、絶対負けるなよ?」

「ああ!」



こうして戦いは始まった・・・柊は去り、本郷もまた、戦いの荒野へと消えてゆく。

そして、滝は柊の言葉に、言い知れぬ不安を抱くのであった・・・・

Operation:Super Hero Spirits・・・

この言葉が意味するところは?

底知れぬ何かが動き始めていた・・・・

次回へ続く












次回予告

空から迫る巨大な物体!

侵略者の生体兵器なのか!?

根源的破滅将来体とは?!

そして、新たなる光の巨人が光臨する・・・・!

次回、スーパーヒーロー作戦SPIRITS

「光をつかめ!」

魂より語られし物語、今こそ語ろう・・・・




あとがき

・・・なげえ。

ただひたすらに、長い。

まあ、仮面ライダーSPIRITS第壱話ほとんどそのままだから、長くもなろうというものか・・・?

ふう・・・・疲れた・・・

弐話は、もう少し早く作ります。

台詞回しにご協力くださった、Y(ヤクト)団首領殿に感謝しつつ・・・

では。シュワッチュ!!


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