赤い大地・・・火星に降り立った、新たなる巨人。

彼は、ファイティングポーズをとると、気合一閃、怪獣につかみかかっていった。

『デュワッ!!』

ガシッ!!

ドガッ、ドガァッ!!

ゴツゥン!!!

起き上がった怪獣の腹にキックを食らわせると、首筋にチョップを入れ、更に回し蹴りのコンビネーションにつなぐ。

『ジャアアッ!!』

そして、怪獣の頭をつかむと、彼は思いっきりジャイアントスイングを見舞った!

ドッガあアアアッ!!!

しかし、怪獣はすぐに体勢を整えると、鼻から光線を放ってくる。

ソレを難なくかわし、彼は空へ飛ぶ。

『デュウウワッ!!』

上空から、速度を増したとび蹴りが襲う。

ばぢっ!

『シュワッ?!』

しかし、怪獣の背中を光が覆い、いやな音と共に、彼は吹き飛ばされた。

「亜空間バリア・・・やはり、先ほどの三本足の怪獣の能力を引き継いでいるようだ。厄介だな・・・」

弾薬を撃ち尽くしたG0は、そうつぶやくと、α号の元へ引き返す。

「コウダを救出しなければ・・・」

G0がそう言ったとき、巨人の体から青い光が放たれた。

『フウウ・・・デュワッ!』

甲冑のようにも見えるストライブが消え、赤い紋様が消えていく。

光が消えたとき、そこには心なしかスリムな姿となった蒼い巨人が立っていた。

『シュアアッ!!』

彼はそう叫ぶと、腕から光線を飛ばし、怪獣の光のカーテンを取り払う。

『キッシャアアアアアアッ!!』

ビュウッ!!

苦し紛れに放たれた光線・・・だが。

『ジュッ!』

グニャリ。

どがぁ!!

本当にそういう表現が正しく、光線はその軌道を曲げ、怪獣に突き刺さる。

「・・・蒼い巨人は、超能力戦士・・・!」

リョウは、そう言って、感嘆した。

「よっしゃ、いまだ行けえっ!!」

ヒビキのその言葉に呼応するかのように、彼はその右手を前にかざす。

『フウウ・・・』

「空間歪曲指数増大・・・マイクロブラックホール・・・だと?!」

そう、G0の言葉に間違いはなく・・・

右腕を振り上げて、放たれた白い奔流は、怪獣を飲み込み・・・

そして、空間の中へと吸い込まれるように消えていった。

「・・・なんちゅう強さだ・・・」

そして・・・

ギュウウ・・・キラキラキラキラキラ・・・

現れたときと同じように、巨人は光に包まれて、消えていった。



――― 一体俺は、どうなっちまったんだ?

アスカは、光が消えたその場所で、呆然としていた。

―――俺が、光の巨人?そんな馬鹿な・・・

「冗談だろ?」

いつの間にかその手には、ウルトラマンの顔が刻印されている、焦げ茶色の彫刻のようなものが握られていた。

その時、不意に通信回線が開き、彼の耳に隊長の声が飛び込んできた。

『おい、新米野郎!生きてるか?』

「ハイ・・・なぜか、生きてます。」

一瞬黙り込んだヒビキだったが、すぐに。

『よぉし・・・基地に帰ったら、俺がお前のその甘〜い考えかたを、徹底的に叩きなおしてやる!!覚悟しとけ!!』

と、怒りの言葉が飛んだ。

それに呆れているかのように、カリヤの声も聞こえる。

『おい、リョウ・・・とんでもないヤツ推薦してくれたもんだな・・・?』

『ソレ、今反省してるところよ。』

そして、心底うんざりしたリョウの声も。

更に極めつけは。

変身をとき、α号の前で渋い顔をしてアスカをにらみつけている、豪の存在だった。

降りてくるβとγ。

豪の冷たい視線も、眼に入っていない様子でアスカは一人つぶやいた。

「・・・なんで、何で、俺なんだ・・・・・・?」

しかし、その言葉は、火星の赤い風に吹き消されていった・・・・・・



スーパーヒーロー作戦SPIRITS
第十一話「龍の都」

超合成獣ネオダランビア
地帝大怪獣ミズノエノリュウ
戦車怪獣 恐竜戦車登場



スーパーGUTS司令室

「光の巨人か・・・」

コウダはディスプレイに移っている、巨人の映像を見ながら、そうつぶやいた。

包帯が巻かれた頭が痛々しい。

「やっぱり、ティガやセブン・・・ガイアたちと同じように、人類の味方かな?」

カリヤは、にこりと微笑みながらそう言った。

周りには、ヒビキを除く隊員すべてが集まっている。

「決まってる!彼は絶対に正義のヒーローよ!!」

マイはそう言って、手を叩いた。

「過去のGUTSの資料では・・・セブンやマンは銀河からの救世主。そして、ティガは人類を導くもっとも崇高で純粋な光・・・と発表されています。」

「俺・・・そんなたいそうなモンじゃ・・・」

ナカジマの言葉に、そうボソリとつぶやいたアスカは、呆然とディスプレイを見つめ続けていた。

「・・・あんた、さっきからなにぶつぶつ言ってんの?」

リョウがそうまぜっかえす。

「ね、ね!この巨人に名前付けよ、名前!」

呆然とし続けるアスカを尻目に、マイはそう言ってみんなに呼びかけていた。

「名前?」

「そそ、名前!ねーねー、ダイナミックのダイナで、ウルトラマンダイナ、ってのはどう?」

「ダイナ?!ダイナじゃなんだかねえ・・・俺の趣味で言わしてもらうと、ウルトラマン・・・・ジャイアン。」

マイの言葉に、ナカジマはそう返した。

それに、豪から冷静な突込みが入る。

「・・・ソレでは、どこかのガキ大将だな・・・」

「いや、もっと強そうに!ウルトラマンスーパーDX!」

カリヤにも、豪は突っ込みを入れた。

「・・・すまん。何故そうなるのか、説明してくれないか・・・?」

そして・・・

カリヤ&ナカジマの口から出てくる名前候補の尽くに突っ込みを入れていった。

そう何度も突っ込みいれられれば、彼らとて・・・

「おい・・・豪。それじゃ、なんか候補上げてくれよ。」

「そうだな〜、そうしてくれ。」

こう問いたくなるというものだ。

そして、豪は・・・

「・・・ダイナで、いいんじゃないのか?EI-01やウルトラマンジャスティスよりは、よほどオリジナリティもセンスもあるだろう。」

「そーそー!そうだよね、ダイナがいいよねー!!」

マイのダイナ案に賛成し、ソレに乗じてマイもまくし立てる。

二人とも、こういう答えを予想していたのだろう。

露骨に嫌な顔をしたが、

「ダイナダイナ!ダイナが良いの〜〜〜!!」

と言う彼女の声に圧倒されていた。

そして。

大声で彼女がそう言っていると、圧搾空気の音を立てて、司令室のドアが開いた。

そして、入ってきたのは・・・

怒り心頭、と言った感じのヒビキだった。

「・・・おい新米!!ちょぉット、こっちに来い・・・」

「は?俺のことですか?」

「お前以外に誰が・・・いや、いたな。とにかくお前だ!つべこべ言わずこっちへ来い!!」

瞬時に静まり返った司令室に、ヒビキの声が響く。

アスカは、不承不承といった風でヒビキの前へ出た。

無論、その顔にははっきりと「不機嫌だぞ、こら」という気持ちがにじみ出ていた。

そして、アスカが彼の前で直立不動の姿勢になったことを確認すると、ゆっくりと口を開いた。

「・・・何故、俺の命令を聞く前に勝手な攻撃した?」

「・・・俺の判断じゃ、絶対に怪獣を倒せると思ったからです!」

一瞬逡巡してそういうと、アスカはヒビキの顔をまっすぐに見つめる。

その顔を見据えながら、ヒビキは言った。

「判断だと?お前のその勝手な判断が、コウダを殺しかけ、豪を危険な目にあわせたんだ!」

「隊長それは!」「待ってくれ、隊長」「アスカ!!」

コウダと豪の反論を手でさえぎり、彼は厳しい声を発する。

「お前は何のために戦っている?」

「・・・なんの・・・」

「いいかアスカ。勝手な行動で自分だけ死ぬのは勝手だ。だが、俺たちに迷惑だけはかけんなよ?」

そして、その言葉に続けて、彼は言った。

「お前、高校時代野球をしていたそうだな?・・・野球は自分ひとりの力で勝てるもんじゃない。俺たち、スーパーGUTSも、そうだ・・・!」

(戦う、理由・・・)

厳しくも、どこかに諭すような響きを含んだ、隊長のその言葉を聞きながら、アスカはポケットの上から、あの「彫刻」を握り締めていた・・・



赤道軌道上空八千m 空中戦艦エリアルベース・コマンダールーム

「先日火星に出現した、この球体を、TPCでは「スフィア」と名づけたそうです。スフィアの目的は依然不明です・・・この巨人も・・・ティガに少し似ているくらいしか、わかりません。戦闘力ではガイア以上と推定されます。」

「ふむ・・・そうかね。しかし、何故世界政府として機能しているTPCが、少数とはいえ実行部隊なぞ持っているのだろうね?」

「向こうでは、シビリアンコントロールのため、と言い張ってますが・・・スーパーGUTS以外の実行部隊は、ゴンドウ参謀の私兵と化しているとの噂が・・・」

「それは兎も角・・・私としては、こちらの東京ライフライン寸断事件の方が、切実だと思います。場所によっては、48時間以上も停電・断水・その他の影響が出ていますから。」

そう、現在コマンダールームでは、千葉参謀・石室コマンダー・堤チーフ、そして虚と我夢が最近起きた怪事件について、すでに数時間話し合っていた。

その中では、前述のスフィア、根源的破滅招来体、謎の組織群、そしてこのところ東京を始めとする世界各地の大都市を悩ませている、ライフライン寸断事件について話し合われていた。

「・・・すでに、市民の動揺は広まっています。これは、何者かの行っている破壊活動ではないでしょうか。」

虚はそういうと、一つの大きな地図を出した。

「東京と言う町は、風水と呼ばれる、中国の宋代に体系化された地相占術に基づいて設計されています。これは、水や大気の流れから大地のエネルギーを読み取り、土地の吉凶を占うのです。」

それを壁に貼って、そういう。

「東京は、東西南北・・・すなわち、青龍・白虎・朱雀・玄武の方角を守護するように、それぞれ演技の良い物が置かれ、また不吉を表す北東、鬼門に寺社を置くことで、風水的にとても安定している土地なのです。」

その説明を聞きながら、千葉参謀は一つ漏らした。

「・・・風水、と言うが、それはかなり非科学的なもの、迷信ではないのかね?」

「いえ、そうとばかりはいえないでしょう・・・東京や京都、香港と言った風水で設計された、あるいは風水的に縁起のいいとされている土地は、戦乱や疫病、災害で興廃してもそれほどかからずもとの活気を取り戻しています。」

そう言って、にこりと笑った。

「第二次大戦で香港は戦場になり、東京は空襲で焼けました。関東大震災、幕末動乱、古くは応仁の乱、源平動乱、平安時代の疫病の流行・・・そう言った不幸を撥ね退けるだけの要素があった,と言うことなんです。」

そして、彼は、

「壬(ミズノエ)の方角から走る龍脈の崩壊が起こっているのが、今回の原因なのではないのか、と私は考えています。これは、恵さんという知り合いの風水士も同意見だそうです。」

そうして、彼は・・・

壬の方角から流れる東京最大の地脈「壬龍」の上でしか、断水が起きていないこと。

この付近で大規模な土木工事・・・丸の内再開発工事が行われていると言う事。

そして、この工事について使途不明金がいくらか出ていると言う事を上げ、これらの関連性について調べるべきだ、との見解を示した。

「・・・賛成です。風水云々は兎も角、これらの事は何か関連があるように思えます。」

「うむ、わかった。では・・・堤チーフ。」

「はい。ジョジー、チームハーキュリーズを呼んでくれ。それから、セイバーのメンバーも。」

「了解。」

そうして、報道管制を含んだ、この事件への対策が策定されることになった。



東京 丸の内再開発工事現場近くの喫茶店

「やぁ。恵さん、お久しぶりです。」

「こちらこそ・・・お元気でしたか?」

落ち着いた雰囲気と、黒い服がマッチしている女性に虚は話しかけた。

彼女は・・・虚の、悠子いわく「よくわからない」交友関係の一つ、風水士の恵と呼ばれる女性である。

この事件に関してのアドバイスを受けるために、彼は今ここにいた。

「もちろんです。私がそう簡単に元気を失うと思いますか?」

「それは・・・確かに、そうですね。でも、無理は禁物です・・・あなたは、いつでも黒い影を背負っているような人ですから。」

ハハ、と笑うと心配そうに自分を見る恵に、虚は、 

「わかっています、わかっては・・・」

と言った。

「それよりも・・・今回の事件について、この間聞いた以上の何かを感じていますか?」

率直にそう言った彼に恵は、

「そうですね・・・私は、風水士といっても趣味の段階ですし・・・」

と言った。

「いえ、立派です。風水学を知っている人間が少ない世の中ですからね・・・」

「はい・・・でも、この間感じた以上のことは、感じません・・・」

「・・・そうですか・・・わかりました。早々それと・・・」

虚の少し落胆した声の後に続くものに引かれて、彼女は問い返した。

「それと?」

「この辺り・・・いえ、壬龍の近くには、しばらく近寄らない方がいいでしょう。危険かも、知れません。」

「はぁ・・・」

冷や汗を流しながらそういう彼の視線の先には、彼以外には見えていないのであろう・・・巨大な龍の首が浮かんでいた・・・



同刻 TPC本部近くの野原

(戦う・・・理由。)

アスカは、いまだそれを考え続けていた。

「父さん・・・」

彼はそういうと、地面に腰を降ろした。

空は満天の星空。

「俺・・・父さんみたいになれるかな?」

彼はそう言うと、ポケットの中の彫刻を取り出して見上げた。

苦渋の表情を浮かべ、彼はつぶやいた。

「俺は・・・人類を導くなんて、そんなこと・・・」

心が沈んでいた。

自分らしくもない。

ただ・・・無性に隊長の言葉が心から離れなかった。

(「野球は、一人の力でするもんじゃない」・・・か・・・)

そう思ったとき、遠くから一つの影がこっちにくるのが見えた。

それは・・・豪だった。

「どうした、アスカ・・・」

「いや・・・なんでもねえよ。」

「ふ・・・あの事なら、気にするな。新兵は誰でもそうだ。俺も・・・『海賊』に入った頃は、AIの未熟さのおかげで判断ミスを犯す事が多かった。そのたびに言われたものだ・・・『次は、頑張れ』とな。・・・お前も、そうするべきだ。」

その言葉は・・・彼の冷徹な電子頭脳には似つかわしくないほど、人間くさい響きを秘めていた。

「何かを守るための戦いは、強いものだ。俺の人工脳波の提供者がまさにそうだったと聞く。お前も、何か守るべきものを見つけるといい・・・」

(守るべき、もの・・・)

悲しみに満ちた、少なくともアスカにはそう聞こえた言葉は、彼の胸に沁みていった。

そして、その次の朝の事だった。

豪と共に、一時XIGのチームセイバーとの共同作戦を行う・・・

因みに、他のメンバーは別事件の対応のために動けない・・・

その、任務が彼らに伝えられたのは。



朝 コマンダールームにて

「うーん・・・昨日より更にひどくなってるな・・・」

我夢はそう言うと、ノートPCの電源を落とした。

状況は、刻々と悪くなっていった。

12時間前までは、地脈上付近以外の影響はなかったが、現在ではそれ以外の様々な地域に影響が出始めている。

「そうか・・・大丈夫かしらねー、サトウ君たち。」

「秋子姉のとこも心配だなぁ・・・」

パットと榊はそう言うと、椅子に座った。

榊は、少しイラついた様子で、思わず閉じそうになる瞼を開くために、虚の入れたコーヒーを口にした。

「・・・苦い。」

「そのくらいじゃないと、お前は起きんだろうが。」

「・・・ふっ、違いない。」

榊はそう言うと、そのコーヒーを一気に呷った。

「ごくごく・・・うげっ!?」

しかし、相当苦かったらしく、机に突っ伏してしまった。

悶絶するのがわかってやる辺り、相当秋子を心配しているらしい。

まぁ・・・それは兎も角。

「もだえてる暇があるか・・・とにかく、地底に潜ってみるしかあるまい。行動は昼から。現地ではスーパーGUTSの隊員が待機している。それまでは・・・」

「それまでは?」

榊のその言葉に、虚は「荷物運びだ。」と答えた。

そして、それに反応を返すより早く扉が開き、チームハーキュリーズの面々が中に入ってきた。

「よぉ〜、チューインガムゥ!」

「ア・・・志摩さん。」

「ちわ、吉田さん、桑原さん、志摩さん。今日のトレーニングはいけそうにないんだけど、ごめんなさい。」

我夢とパットは、志摩の言葉そう返し、我夢は迷惑そうにし、パットはにこりと笑った。

「そういえば、お前礼言ってないんだろ?俺が来る前に、三人に世話になったと聞いたが?」

「はい・・・ハーキュリーズの皆さんには、ご迷惑をおかけしました・・・」

虚の言葉にそう返して、我夢は少し後ずさった。

「そうそう。あの時我夢を助けたのは、俺たち!」

「XIGの陸戦隊!!」

「「「チームハーキュリーズ!!」」」

手をたたきあって、そう言った彼らに榊が、

「助けたって・・・何したんだ、吉田さん。」

と言った。

「ああ、それはだな。」

「スティンガーに勝手に便乗して、結果的に命を助けてもらったって形に・・・あのときの借りは、いずれかならず・・・」

そう行って、更に後退りする我夢の肩をつかみ吉田は、「いつかと言わず、今返してくれればいいんだよ。」と言った。

「そういえば、こっちのトレーニングの約束も、まだしてなかったわよねぇぇぇ・・・?」

「うッ・・・そ、それも・・・」

パットの言葉に対して、そういう我夢に、死刑宣告を下すかのように彼女は、「あたしも吉田さんと同じ意見よ?いつかと言わず、今返せぇぇぇぇ!」

・・・なんか、てんやわんやな状況になってしまった・・・

そうした喧騒を打ち消すかのように、虚は宣告した。

「さて、そういうわけで・・・荷物運びだ。行くぞ榊、パット、我夢。そうそう、それと・・・」

虚は、XIGナビのスイッチを入れ、悠子の周波数にあわせた。

「・・・悠子、光太郎と一緒に、準備しておいてくれ。これから俺たちは忙しい。」

『虚・・・?うん、わかった!』

「それじゃ、な。」

XIGナビを切り、虚は、榊やパット、それに吉田に連れて行かれている我夢と一緒に、コマンダールームを出て行った。



格納庫

「こいつらをよろしく、吉田さん。」

「・・・何を始めるんです、か?」

スティンガーを前に、「嫌な予感がする・・・」と言った顔で、我夢は言った。

その間に、何をするのか察していたのか、パットと榊は上着を脱ぎ始めた。

あっという間に、二人ともTシャツ姿になる。

「・・・おいおい。ここまで来て何するかわかんないのか?」

「呆れた・・・XIGだけじゃなくて、今は何処でも人手不足なのよ?」

「まさか・・・」

不安的中、と言った顔で後ずさる我夢の背中を志摩が叩いて・・・

「そう。装備品の積み込みをやってほしいんだよ。いいだろ?今回も、俺たちがお前らを地底まで送るんだ。」

と言った。

無常に虚が「そんなひ弱そうな体で、何が出来る。ウェイトトレーニングだと思って、頑張れ。」と言う。

「いや、ひ弱っちくなんて・・・」

「・・・うるさい。俺は、悠子たちの手伝いをしてくる。きちんと吉田さんの言う事を聞けよ、我夢。では、ヨロシク。」

そう言って、彼はすたすたと格納庫入り口へ行ってしまった。

「さぁ、頑張ろうぜ、我夢?」

吉田の言葉に反論しようともがく我夢だったが・・・

「いや、あのそ・・・そう!僕って一応アナライズ担当ですから、肉体労働は榊君たちに・・・」

「各種弾薬、燃料も満タンでいいんだな?・・・大体900kgくらいか。オッケー、やろうぜパット。」

「ほら、我夢も早く用意しなさい!」

「・・・XIGバルカン。こいつはタフな武器だぜぇ・・・」

やる気満々だぜな榊、せかすパット、そしてXIGバルカンをちらつかせる吉田を前に、彼が断れるはずも・・・なかった。

「・・・勘弁してよ・・・」



「ふう・・・終わったな。」

「そうね。思ったより早かったかな。桑原さんのおかげね。」

自分のノルマ・・・225kg分を達成し、二人は中で桑原と話していた。

その時・・・

「ひぃ・・・ひぃ・・・これで・・・最後です・・・」

我夢が入ってきた。

「おお、終わったか。グレネードの弾装は?」

「ちゃんとやりましたよぉ・・・弾倉に20!予備30!!はぁ〜〜〜・・・計50!!」

汗だくで、息も絶え絶えな彼がそういうと、桑原は笑ってこういった。

「吉田さんも志摩さんも、陸戦隊出身のたたき上げだからな。お前みたいなひ弱っちいヤツを見ると、つい鍛えたくなるんだよ。」

「情けねえなぁ。これがアルケミースターズの実体か・・・」

「失礼ねぇ。カナダのキャサリンはバリバリの肉体派よ?」

榊の言葉に、そう反論しつつ、パットは我夢にスポーツドリンクを渡した。

桑原は、ケースからXIGバルカンを取り出して、

「さっきも言ったが・・・こいつはタフな武器だ・・・」

「桑原さんのほうが・・・タフですよぉ・・・はぁ〜〜〜・・・」

スポーツドリンクを口に含む余裕もなく、椅子にへたり込むと、我夢はそうつぶやいた。



丸の内 工事現場近く

アスカと豪は、任務を受けてここにいた・・・

「・・・なんでこんなに誰もいねえんだ?普通・・・」

「いや、ここら辺は停電でな・・・今は工事はストップしている。」

豪はそう言うと、近くのベンチに腰を下ろした。

「・・・それより、おかしいな・・・」

「おかしい?」

アスカの問いに、豪は重々しく答えた。

「ここの工事は、NMSが発注した工事だ。・・・NMSが工事をする場合、土地の吉凶と言うものになぜか異常にこだわる。それゆえに、この工事が原因で地脈が断ち切られるということは本来ないはずなのだが・・・」

豪は、XIG側の情報から、そう結論付けていた。

「・・・だから、なんだよ。」

「これは、工事自体が原因ではないかもしれない・・・」

「・・・?」

苦悩の表情を浮かべてそう口走る彼の意図を理解できずに、アスカは首をかしげた。

(一体、何考えてんだ・・・?そんな馬鹿な・・・)

そう考えたとき、ポケットの中の彫刻が、熱くなったような気がした。

「・・・!」

それとほぼ同時に・・・

ゴバァァッ!!

『キュアァァァァッ!!』

工事現場の、搬入口から怪獣の首らしきものが飛び出した!

「な、なんだあれ!?」

「XIGに連絡だ、アスカ。」

そうして・・・

この事件の最終幕は、喧騒と共に開いた・・・



ビー!ビー!ビー!

警報と共に、アッコはコマンダーを振り向き、叫ぶようにこう言った。

「東京都内に未確認の巨大生物が出現!」

モニタには、怪獣の首が・・・そう、アスカたちが見たものと同じものが、東京各所に出現しているさまが写っていた。

「首の出現地点は六箇所を確認シテイマス。」

「電話はほぼ都内全域で不通。電圧は平均で20%低下・・・断水・ガスの不通は調査不能です。」

石室はその様子を不動の姿勢で見つめ、千葉は日本の首相官邸からの直接通話を受けている。

「・・・都庁のほうには、私から要請した!・・・ええ、はいそうです。では。」

電話を切り、千葉が「都民の避難路は確保した」と石室に言った。

「・・・今までの怪獣・・・第一次極東動乱以前からの怪獣には、このような例は殆どなかった・・・」

そこで言葉を区切り、石室はつぶやく。

「この怪獣は、都市を破壊するのではなく・・・ライフラインを寸断する事で、都市を占領した。」

「しかし、何が目的で・・・」

「ファイターを出撃させますか?」

血バラの言葉に、堤チーフがそういう。が・・・

石室は、首をふる事もせず、「いや、この怪獣を空からの攻撃で捕らえることは出来ないだろう・・・」と言った。

「いやしかし・・・」

「我夢。頼む。」

「今・・・モニターに出します。」

石室の言葉に、我夢が答えるとも似たに東京の地図が表示された。

「これは、東京の地下マップです。地下鉄・上下水道・ライフラインが納められた共同溝・天然の断層や地下水脈・・・怪獣はこの自然に存在する空洞に沿って出現しているんです・・・」

そういうと、更に地図が切り替わる。

「・・・その空洞のルートを表示します。・・・」

「こ、これは・・・」

「昨日、柊が見せた地図と同じ・・・」

「そうです・・・龍脈ですね。」

いつの間にいたのか、虚がそこにいた。

「・・・恵さんの受け売りですけど・・・古代中国では・・・」



「古代中国では、人々は地下に本当に龍がいると信じた。人々はそれを恐れず、むしろ積極的に活用するすべを求めた・・・それが、風水だ。」

豪は、龍の首を見つめながらアスカへそう言った。

「NMSは、上層部に行けば行くほど、そう言った・・・現在では迷信として忘れられている事を気にするんだ。だから・・・これは、おかしい。」

そう言うと、メタルアイザーを取り出す。

「・・・アスカ。攻撃はまだだ。XIGが来てから・・・今の俺たちでは、戦力不足だからな。行くというなら、俺が力づくでとめるぞ。」

「わかった・・・」

そう言って、アスカもまた龍の首を見つめた・・・



「しかし、近代の都市計画では地下にまでその設備を伸ばし・・・結果としてその流れを断ち切ってしまった。」

「この怪獣は、ライフラインを破壊することで、その流れを・・・復活させようとしているのか?!」

「おそらく、そうでしょう。かなり、強引ですねぇ・・・」

石室たちの言葉に、虚はそう返して嘆息した。

「都内の怪獣たちが、一斉に姿を消しました。反応が丸の内の地下工事現場・・・本日のチームセイバー調査予定地域の周辺に集まっています!」

アッコがそう知らせると同時に、地上のアスカたちからの連絡が入った。

『石室コマンダー・・・こちらでも確認した。XIGの派遣を要請する。』

モニタに現れた豪はそういうと、すぐに通信を切ってしまった。

それをみて・・・石室は決断を下した。

「・・・チームセイバー、およびチームハーキュリーズ!!」

こうして・・・少し予定の早まった地底探索行は始まろうとしていたが・・・



丸の内 地下工事現場 搬入口近く

「・・・チ。邪魔が入ったか・・・」

「シュワ・・・シュワシュワ・・・」

「ギルッ!ギルギルッ!!」

「な、なんだぁ・・・こいつら?!」

不気味な声に、アスカはそう言って銃を向けた。

「わからん・・・だが、敵だッ!!」

ズガガガガッ!

間一髪、彼の叫びと共に、彼らは体を翻していた・・・

不気味な集団は彼らに対しておもむろに手の武器・・・らしきものを投擲してきたのである・・・

そう、一足早く、入り口付近の調査を始めていた豪とアスカの前に姿を現したのは、不気味な面を付けた一団とそして明らかにロボットであろう一団だった。

地面に突き刺さったそれらをみながら豪はつぶやいた。

「ここで足止めを食らうわけにはいかん・・・か。」

そういうと、手に持っていたメタルアイザーを前にかざす。

「セタップ!」

そして、豪の体は戦闘用へと変わっていった。

「・・・仮面ライダーG0・・・見参。アスカ、お前は外へ出ろ・・・俺はこいつらを片付ける。」

「・・・わかった。死ぬなよ?」

「俺は死なん。決してな・・・」

そうして・・・戦いが始まった。



同時刻 スティンガー車内

「皆さんのバックアップは、任せてください。地下の構造は全てこのパソコンでモニタできます。」

我夢は、手元のノートPCのキーボードを叩きながらそう言った。

「俺たちの命、チューインガムに預けたぜっ!」

「信頼・・・してくれますか?」

「俺たちは、坊やをXIGに入隊させた、コマンダーの事を信頼してるのさ。」

我夢の言葉に、吉田はにこりと笑ってそう返した。

「・・・にしても、狭いなぁ。」

「文句言わないで。三人乗りのとこに、8人も乗ってるんだモノ、狭いに決まってるよ。」

榊の文句に、悠子も不満をたたえた口調でそう言った。

・・・因みに、今回はパットはお休みである。

正確には、ピースキャリーの上で待機・・・であるが。

「そう文句言うな・・・XIGには、戦車戦を行えるチームがハーキュリーズしかない・・・そして、この任務にバイソンは不向きだ。」

虚がそういうと、志摩が「わかってるねぇ、お前さん。」と返した。

それに「ありがとうございます」と返して、虚は時計を見た。

「・・・ソロソロ、降下の時間ですね。」

「そうだな。光太郎、何かにつかまっておけよ?」

「はい。」

そして・・・

『スティンガー投下。』

神山の声が響き、スティンガーは地面へ向かって、幾度かの減速過程を踏みながら、落下を始めた。



ドズンッ!!

轟音と濛々とした土煙を上げて、スティンガーは着地した。

「こちらスティンガー。降下に成功!!」

『了解。スーパーGUTSの隊員を収容後、調査を開始してくれ。』

石室の声に、吉田は「了解。これより突入する。」と答えた。

「・・・指示するまでは、トンネル内を直進してください。」

「了解!」

我夢と吉田がそう言ったとき、目の前に一人の男が立っているのが見えた。

『おおうい!!』

「アレが、スーパーGUTSの隊員か・・・おかしいな。あと一人いるはずだが・・・」

虚がつぶやいたとほぼ同時に、スーパーGUTSの隊員・・・アスカが中に入ってきた。

「お疲れ様。さ、行きましょうか?」

「そんなこと言ってる場合じゃねえ!豪が、変な連中に襲われてるんだっ!!」

「「「「「なんだとぉ?!」」」」」

アスカの、切羽詰った声に、全員がそう返したのだった。



「そうか、入り口付近でか・・・光太郎、榊・・・頼めるか?」

「わかった。柊さんも気をつけてな?」

「いくぞ、榊!」

「おうッ!」

そんな会話を交わして、榊と光太郎はスティンガーを降りていった。

「幸い、彼らが戦っていると思われる場所は、本道から離れた場所です・・・行きましょう。」

我夢は、そう行って再びモニタをにらめっこを始めた。

「おい、二人だけで大丈夫なのか?!」

「二人、と侮っちゃいけないぜ、スーパーGUTSの人?」

「そうそう。二人、とは言っても二個戦車師団くらいには強いと思うよ?」

あわてた声を出すアスカを安心させるように、二人はそう言って前を向いた。

「行きましょう、吉田さん。」

「ああ・・・チームハーキュリーズ、これより東京の地底世界へ向かって・・・発信!」

「チームハーキュリーズの力・・・見せてやる」

虚の言葉に、吉田と志摩は平然とそう行って、スティンガーは発進した。

「・・・なんで、そんなに平然としてるんだ?」

「・・・信頼しているからさ・・・そして、俺たちには守るべきものがそれぞれにあるから、絶対に敗れない。」

「・・・守るべき、もの・・・」

虚の言葉に、アスカは再び考えに身を浸すのだった。



「敵残数・・・32・・・数が、少々多すぎるか。」

G0はそうつぶやくと、右腕を振り上げまた一体アンドロイドを破壊した。

「如何に戦力が勝っているとは言え、これ以上足止めを食らうわけには・・・」

その時、後ろからバイクの走行音が彼の耳には聞こえた。

「・・・?新手か?」

しかし、彼の予測はハズレだ。

それは無論・・・

「いくぞ、光太郎・・・変身ッ!!」

「変・・・身!!」

バイクに身を乗せた男たちは、変身、と言うと異形へと転じていった。

「仮面ライダァァァ・・・Black!!」

「我、疾風の戦士ッ!仮面ライダー黒狼ッ!」

そして、ジャンプして彼の側に降り立った。

「スーパーGUTSの隊員ってのは、あんたか?こいつら一体・・・」

「わからん。だが、敵である事は間違いない。」

黒狼の言葉に、G0は事務的にそう返すとまた一体、面を付けた男を吹き飛ばした。

「確かに・・・エクス&ボルテスッ!!」

ジャキッ!

凶器である二振りの銃を手にすると、黒狼は目の前のアンドロイドと面男を吹き飛ばしていった。

(・・・この男・・・データ照合・・・『黒狼』だと・・・?いや、今はそんな思考をしている場合ではないっ!)

G0は、自分のAIに浮かんだその思考を消し去った。

・・・後に、これが重要な意味を持つことになるのだが・・・

今は関係ない。話を戻そう。

「・・・ライダーパンチッ!」

グシャッ!

Blackのパンチが炸裂する。

嫌な音を立てて、面男が溶解して行った。

そして、数分後。

残っていた敵は全て掃討され、彼らは・・・自らのマシンでスティンガーの後を追ったのだった。



岩が、目の前を塞いでいた。

支柱が、今にも崩れそうな感じである。

「このままじゃ、立ち往生か・・・こういう場合、どんな武装がいい?我夢。」

「この場合は・・・破壊力が集中するグレネードミサイルがいいと思います。」

「よしっ!グレネードミサイル発射ッ!」

ガゴォンッ!

そうして、我夢の指示通りに岩を破壊する・・・無論支柱は崩れない。

「お見事。的確な指示だった。」

「そりゃそうですよ。スティンガーの武装の事は、全部頭の中に・・・」

そう言ったとき、我夢は思い当たった。

(・・・もしかして、吉田さんはこういうときのために、あの補給作業を僕らに・・・?)

そう、彼らに補給を任せたのは・・・チームセイバーが全てのチームと共同作業しなければいけないチームだからだ。

そのためには、それぞれのチームの特性を把握していなければならない。

アレは、そのための訓練の一つだったのだ。

(そうだったのか・・・)

そう思い立ったときだった。

「・・・前が、行き止まりだ・・・いや・・・?」

「・・・通路は、ありますね。ここからはスティンガーでは無理でしょう。私たちに任せてください。」

吉田にそういうと、虚は我夢と悠子に促した。

「行くぞ・・・徒歩で地底探検だ。これを仕組んだ馬鹿の顔・・・拝みに行こうじゃないか。」

言葉の後部は、声を落としてそういう。

「わかった。いこ、我夢。」

「はい!」



・・・

虚たちは、水が滴り落ちる地下の空洞を一歩一歩前へ進んでいた。

「ところで・・・アスカ、って言ったよな?何でついてきた?」

「何でって・・・俺も、この調査が任務だからな!」

憮然として言うアスカを見つめて、虚は微笑んだ。

「何がおかしいんだよ?」

「いや、な・・・昔は俺もこうだったなぁ・・・って。」

「・・・?」

「若いってのは、振り向かないこと・・・そして、その分無鉄砲って事さ?そこ、危ないぜ?」

出っ張りを指摘しながら虚は進んでいった。

「・・・おかしいな。やっぱりそれらしい反応が二つある。」

「二つ?どういうこと?」

悠子が怪訝そうにそういうと、我夢は発信機らしきものを彼女に見せながら、

「ほら・・・この反応と、この反応。どう考えても反応が二つある・・・」

と言った。

「・・・つまり、どっちかが「壬龍」を象徴するヤツで、どっちかが違う・・・って事か。」

虚はそう言うと、「この反応の小さい方から行こう。二手に分かれるのは、戦力的に愚策だ。」といって歩を進めた。

そして・・・



数分後 反応のあった地点A

そこには、優に東京ドームほどもあるのではないかと思わせる、広大な空間が広がっていた。

そこをゆっくりと降りていくと、蒼く・・・それでいてどこか赤く光る液体が満たされている、川のようなものがあった。

「・・・なんだ、これは・・・」

「・・・地脈が露出しているな。邪気を封じ、良気を蓄え・・・数百年溜め込んだ、東京の気か・・・すでに結晶のようになっている。」

虚はそう言うと、そこに近寄っていった。

「・・・誰かが、このエネルギーをくみ上げているんだ。ミズノエノリュウが怒ったのは・・・これのせいか。」

「ふふふ・・・よく見破ったな。」

虚のつぶやきに、答えるかのように不気味な声が響き渡った。

そして、闇の中から、片目を覆うような形の歪なヘッドギアらしきものを付けた男が現れた。

「貴様・・・ハンターキラーか・・・連邦警察の病院から死体が消えた・・・と長官から聞いていたが、やはり生き返りやがったか。」

虚は指を刺し、冷たく鋭い口調でそう言った。

「ふふふふふ・・・そういう貴様は何者だ?地球人の分際で、何故俺の名前を知ってる?いや・・・ギャバンと同じく、宇宙刑事なのかぁ?」

「いや・・・そんな生易しいもんじゃない。とりあえず・・・お前は、死刑だ。」

冷たく、酷薄な笑みを浮かべると、彼は手を前にかざそうとした。

「どういうことなんですか?柊さん?」

「あんた・・・一体・・・?」

我夢とアスカの声にこたえるように、虚は言った。

「こいつは・・・破滅をたくらむ野郎さ。人と、この世界の、な。クズ同然・・・いや、クズ扱いも勿体無いくらいの外道だ。油断するなよ・・・悠子、行くぞ。」

「うんッ!」

「六道・・・その底である地獄界すら、貴様のようなモノには生温いっ!陽装!!」

「・・・確か、虚の友達のお父さんを、馬鹿に売ったって言うヤツだよね・・・?許さないよ・・・!影転!!」

二人の体が、変わっていく。

「・・・悪しき世界のページを繰るのは・・・貴様ではないっ!!陽光戦士カイザード・・・見参ッ!!」

「悪しき世界が裁かぬのならっ!世に変わって悪を誅す・・・!月光仙女ヴァーティセス・・・推参ッ!!」

二人の戦士は、怒りをたたえて降り立った。

「貴様・・・この気を吸って、何をたくらむ!!」

「・・・ククククク・・・まずは、ギャバンへの復讐・・・と言いたいところだが、我が主の万年帝国の野望達成のためよ!」

「なんだと・・・?」

「そのために・・・地球如きの組織と手を組んだ。そして、完成したのが・・・見るか?出でよ、恐竜戦車ぁッ!」

ズゴゴゴゴゴゴ・・・・

ハンターキラーの声と共に、空洞の奥から、巨大なキャタピラ音を立てて・・・恐竜が乗った巨大な戦車が現れた。

「・・・!?」

「ふはは・・・どうだ、カイザードとやら!手も足も出まい!!」

しかし、虚は不敵に「クク・・・」と笑いを上げると、

「こんなもので・・・俺たちを倒そうってのか・・・?ハハハハハハハ・・・甘すぎるぜっ!!」

と言った。

「それより・・・こんなでっかい物、誰に作らせたっ!?」

悠子の激昂と虚の嘲笑を前に、ハンターキラーは「いいだろう。」と言った。

心底、自慢げに。

「・・・光明寺とかいったか・・・ダークとか言う組織が手に入れた科学者に作らせた。少しばかり・・・でかくなってしまったがな?」

「なんだって?光明寺博士を?!」

我夢が叫ぶが・・・それを気にしないかのようにハンターキラーは続けた。

「クックック・・・今頃は、我々のために素晴らしいアンドロイドを作っている事だろう・・・無論、殺戮のためのなぁ?ハッハッハッハッハ・・・」

「チ・・・外道め。我夢、さっさと逃げろ。こいつを殺したら、俺たちも次の地点まで行く。」

「わ・・・わかり、ました・・・行こう、アスカ隊員。」

「・・・ああ・・・くっ!」

虚の勧めに、アスカと我夢は岸壁につないであったロープを伝って、洞窟へと戻っていった。



「このままじゃ・・・」

我夢は、洞窟からカイザードらの戦いを見つめていた。

「・・・行こう。今なら、アスカも見ていない・・・ガイア・・・!」

声を落として、エスプレンダーを掲げた・・・が。

「・・・?!変身できない?!」

そう、なぜか・・・彼は変身できなかった。

しかし・・・

その時、ガイアの光が語りかけてくるような、錯覚を覚えた。

「え・・・し・・・試練?それは・・・柊さんたち、の?」

しかし、ガイアの光は、否定するように点滅したのだった・・・

「ジャぁ、誰の・・・?」



「・・・クソ・・・俺は、何のために・・・」

アスカも・・・やはり、その光景を見ながら彫刻を握り締めていた。

「・・・何のために、戦う・・・?名誉・・・違う。名声・・・違う。俺は・・・ああっ?!」

その時、彼の目に飛び込んだものは・・・

「クソッ・・・?!意外と硬いな、この化けものっ!!カイザービームッ!!」

「雪崩残月ぅぅぅぅッ!!」

恐竜戦車相手に苦戦する、二人の姿だった。

「頼む、力をくれ!俺は行かなきゃならない。」

彫刻を高く掲げる。

我夢は・・・彼からは見えない位置にいる。

向こうも同じなのだろう。

そう思ったとき・・・

彫刻の頭が割れ、そこから光り輝くモノがあふれ出した!

「もう理由なんかどうでもいい!俺にみんなを守る力があると言うなら、俺は戦う!!」



そして・・・

そこには、火星の大地に降り立ったのと同じ・・・

光の巨人・・・ダイナが立っていた。

『シュワッ!』

「ガイアじゃ・・・ない、か。」

虚はそうつぶやいた。

『ギュワァァァァ!!』

恐竜戦車が、キャタピラをうならせて近づいてくる。

『ジュワァッ!?』

ドガッ!

そのパワーに圧倒され、ダイナは空洞の壁にその身をぶつける事になった。

『ジュウウ・・・』

「・・・どうする、我夢?僕は・・・」

その姿を見ながら、彼は苦悩していた。

「何故、今・・・ガイアになれないんだ?どうしてなんだ・・・?」

そう言ったとき。

後ろから近づいてくるバイクの走行音に気がついた。

「・・・榊君?」

「大丈夫か、我夢?!」

変身したままで、榊は我夢に声をかけ、そして空洞の中を見た。

「アレは・・・ダイナか。」

豪がつぶやいた。

『ジュウウウ・・・シェアッ!』

その時であった。

パワーに圧倒され、キャタピラで踏まれ喘いでいたダイナは・・・

赤い光を発して、変わっていった。

『ダァァッ!!』

どがぁぁぁっ?!

彼は、キャタピラを押し返し、逆に恐竜戦車をひっくり返らせてしまった。

「嘘・・・だろ?」

虚が呆然とつぶやく。

「赤いダイナは・・・力の重戦車、か。」

我夢には、豪の呟きが聞こえていた。

「重・・・戦車・・・」

『ダァァァァァァッ!!!』 

ダイナの腕に赤い光が集まり、それが放たれる・・・!

カッ!!

バッゴオオオオンンッ!!

轟音と共に、恐竜戦車は木っ端微塵となった・・・

「チッ・・・失敗か。まあ良い・・・」

そして・・・それと同時に、ハンターキラーも姿を消していた・・・



「ふー・・・助かったな。正直。」

虚は、目の前の巨人を見上げながらそう言った。

その時だった!

空洞の地面が盛り上がり、そこから龍の首が現れたのだ。

「・・・本命様か。幾ら、俺たちのせいじゃない・・・ッつったって聞いてくれるわけねえよなぁ・・・うわああアアアッ!!」

虚の声と同時に、大量の水が湧き上がってくる。

「クッ・・・このままじゃぁ・・・」

我夢が言うと・・・エスプレンダーが、まるで「もう大丈夫」と言っているかのように、きらりと光った。

『デュワァァッ?!』

みれば、ダイナは虚と悠子を手に乗せて、空洞の上部へと浮揚して行っている。

「・・・ガイアーーーーッ!!」

榊たちが目を離した一瞬、彼がそう叫ぶと・・・

周りの全ては赤い光に包まれて、そして・・・



『ジェアッ!!』

『シュワ・・・』

二人の巨人と、スティンガー・・・そして、他の全員も地上にいた。

「・・・大地を守るもの。」

陽装を解いて、肩を抑えながら虚はそう言った。

そして・・・暗雲が急に立ち込めていき・・・

ミズノエノリュウが姿を現した。

『キュワァァァァァッ!!』

ピコンピコンピコン・・・

ダイナの胸のランプが点滅を始めた。

「・・・どうやら、エネルギー切れが近いようだな・・・」

『キュワアアアッ!!』

しかし、そんな彼らの事情にはかまわず、ミズノエノリュウ葉の十本近い尻尾から光線を放ち・・・

そして、念動力で二人を拘束した・・・

『ジュワァァァ・・・』

『シュ・・・ワ・・・』

すで、ダイナのカラータイマーはその点滅スピードがかなり速くなっている。

その危機を救うため、

『スティンガー、前進ッ!!』

スティンガーも攻撃を開始した・・・

が、利いてはいない。

「クソッ!グレードミサイル、全弾発射ッ!!」

「駄目です、利いてませんっ!?」

絶望的な響きだ・・・

しかし。

その時だった。

「・・・アレは、東京と言う町が出来たときから・・・いや、できる前から、ここを住処にしているんだ・・・」

「ならば、人間を完全に駆逐するまでは、止まらん・・・と言う事か?」

「そうじゃない・・・そうじゃないよ。」

虚と豪に、悠子はそう言った。

「怒りや憎しみは、何も生まない・・・それがわかっているはずだよ、あの龍は。だって、この町の・・・人の営みを、彼はずっと見てきたんだから。」

悠子はやさしく、言った。

そして、別の場所で・・・

同じ事を言っているものもいた。

そう、風水士の恵、だった。

「地に戻って!お願い・・・あなたの想いは、巨人たちに伝わったわ!」

そうして・・・

別の場所で、同時に放たれた言葉を受けてか・・・

ミズノエノリュウは、青い玉になった・・・

『・・・?』

『・・・・・・』

そして、青い玉は・・・工事現場の地下へと消えて行った・・・

『デュワッ!!』

『ジェァッ!!』

それを見届けると、二人の巨人もまた、空へと消えて行ったのだった・・・



「なんだったんでしょうね、アレは・・・」

虚は、とある公園で恵と会っていた。

「私たちのこの町にも、風と水の流れがあります・・・そう、新しい風と水の流れが。」

「確かに、そうですね・・・」

「風水では、人間の作ったものも大地の一部と看做します。人間が何を作ろうと、それは所詮・・・地球と言う大きな自然の一部でしかないのかも・・・」

そういう恵に、虚は言った。

「・・・地球もまた・・・宇宙と言う大自然の一部です・・・そういう意味では、そうなのかもしれません・・・」

「相変わらず、面白い考えをするんですね?」

「いや・・・」

旧知との会話を楽しみながら、彼は考えていた。

―――その、宇宙の調和を乱そうとするものがいる・・・ハンターキラーを生き返らせたヤツ・・・そして”メタグロス”・・・

まだ、戦いは厳しくなりそうだった。



通路

「おう、我夢!なかなかいい働きだった!!」

我夢と、ハーキュリーズの面々は、バッタリ会って話をしていた。

「いえ・・・これが、僕の本業ですから。」

「んなこと言って・・・すぐ前線に出たがるのは誰だ〜?」

吉田に肩をたたかれ、志摩にそう茶化されながら我夢は自慢げだった。

だが・・・

「よぉし、じゃ格納庫へ行こうかぁ?」

「へ?」

「・・・スティンガーに弾薬を積み込むんだよ。」

「全弾、打ち尽くしちゃったからね。」

吉田と志摩は、がしりと我夢の両脇をつかみながらそう言った。

「え〜〜?勘弁してくださいよ〜〜?!」

・・・その数分後。

ハーキュリーズにこき使われる、我夢の姿があったのは言うまでもない。



TPC本部近くの野原

―――人間はな。いや・・・この地球ですら、宇宙から見ればとてもちっぽけな存在だ・・・

アスカは、父の言葉を思い出していた。

――――でもな、シン。その宇宙の大きさにも負けないくらい、大きなものを・・・人間は持っている・・・

あの時と同じように、心の中で父に問いかけた。

―――――それは、なぁに?

―――――心の中に・・・

あの時と同じように、父は答えてくれた・・・

「俺は・・・戦う。この力で、間違わないように。見ていてくれ、親父・・・」

そうして・・・

その夜は暮れて行ったのだった・・・

続く。





次回予告

復讐者が動き出す。

標的は、榊・・・そして?

帰ってくる。

帰ってくる。

赤いマフラー靡かせて。

銀の両腕ひるがえし。

一人の男が帰ってくる。

次回、スーパーヒーロー作戦SPIRITS

「烈風の緑」

魂より継がれし物語、今こそ語ろう・・・・




後書け

・・・気力ないよぅ・・・

秋子さん「情けないですねぇ。後書き書く気力もないなんて。」

うぐぅ・・・

秋子さん「仕方ありませんねぇ。」

スマソ・・・

では、また・・・

秋子さん「この番組で会いましょう。」

シュワッチュ!!



Ps,結局アグルは出せませんでした・・・また嘘予告。ぐふ・・・