「よぉ、榊。ずいぶん手ひどくやられたな・・・ここからは、任せろ。」

紅い腕の戦士はそう言って、榊を助け起こす。

「隼人・・・さんっ・・・!」

榊はまるで子供の頃、ショッカーの怪人から助けられたときのような、そんな声を出した。

「大丈夫。仮面ライダーに敵はない・・・そうだろ、本郷。」

「・・・ああ。ここから先のシナリオを好きにさせるわけにはいかん!」

銀の腕の戦士はそういうと、スッ、と構えを取る。

「久しぶりに、ダブルライダーってわけだ。」

「・・・ああ。」

1号ライダーはそう言って、敵を見据える。

見据えられた敵は不敵に笑い、見据える彼に語りかける。

「君にははじめて会うな?仮面ライダー1号。」

「ああ。元ショッカー大幹部、ゾル大佐。考えたくはなかったが・・・ショッカーの意思が生き続けているというのは、本当のようだな。」

「そうだな・・・本郷。デルザー大首領がいなくなって、ショッカーの流れは全て・・・」

2号の言葉に『金狼』は呵呵と笑って言った。

「滅んだ、といいたいのかね?一文字隼人・・・久しぶりだな。」

「・・・ゾル大佐・・・」

2号は食べ残して腐らせた食べ物でも見つけたかのような口調で言った。

ゾルは彼の鋭い視線を受け流すように。

「いやいや・・・滅びはせんよ。我々もそうだが、より忠実にその流れを継いでいる者たちもいる・・・人が人以上の者となり、人を支配しようとする欲求・・・」

と言って、そこで言葉を区切った。

「そう、かつてのナチスドイツが望んだことを望むものは絶えないということだ!」

「そうか・・・貴様は、ナチスの将校だったな。」

憎々しげに、2号がつぶやく。

「ふふ・・・そのとおり。アレからもう80年もたった・・・今こうしているのは、別段ヒトラーの復讐というわけではないがな。」

そう言うと、『金狼』はまた笑った。

「・・・ふ、ゾルさん・・・当たり前のことを講釈していないで、私のことも紹介してくださいよ。久しぶりに先輩に会ったんですし・・・♪」

いまだシンを捕らえながら、遊ぶように言った鬼塚は1号に顔を向けた。

「・・・久しぶりですねぇ、本郷先輩。いや・・・今は仮面ライダーでしたな・・・すばらしいですね、そのボディは・・・機械と生命・・・飛蝗の能力が実に機能的に、それでいて人としての外観を失わずに融合されている・・・」

「その口ぶり・・・まさか、君は鬼塚君か?」

「ご名答!いや、やはりあなたは聡明だ。すぐに気づいてくれるとは、うれしい限り!」

鬼塚の揶揄するような口ぶりから、本郷は彼のことに気がついた。

「知り合いなのか、本郷?」

「ああ・・・城南大学時代の、俺の後輩だ。」

そう言うと、1号は鬼塚を見据えて、言った。

「君は・・・狂気に駆られたんだな・・・ならば、聞く。鬼塚・・・君は、その狂気で何を手に入れた?」

「人類の正しき進化の道を。より強いものが全てのものを統べる、正統な世界への道です。」

躊躇せずにそう言った彼へ、1号は迷わずに言った。

「ならば・・・貴様は俺たちの、仮面ライダーの敵だ!」

「全てのものの自由を守ること。それこそが俺たちの使命だからな・・・榊、立てるか?」

2号は黒狼に促しながら、そう言い・・・

「面白い・・・守れると信じているなら、やってみるがよかろう。」

ゾルのその言葉を合図に、戦いは始まった。



スーパーヒーロー作戦SPIRITS
第十三話「復活!ダブルライダー」



「ライダァァァッ!パンチッ!!」

ゴッ!

空気を裂いて、剛拳が炸裂する。

「ふん!ずいぶんと再改造を重ねたようだな!この私のようにっ!」

「貴様らのような悪党がいる限り、俺たちも強くならなきゃならねえからなっ!!」

2号ははき捨てて、拳の軌道を変える。

「ライダァァアァチョップ!!」

ぶぅんっ!!

「その姿を維持しているのはなぜだ?貴様らには忌むべき、ショッカーの残した「姿」ではないのかね?」

「黙れ!この姿は、もはや俺たちの誇りなんだ!悪から生まれたものでも、使うものの心一つで変わるということを、俺たちは証明してきた!!」

剛拳と鉄脚が間断なく『金狼』を襲う。

「ライダーヘッドクラッシャー!!」

金剛をも砕く頭突きが宙を切る。

その隙に、フィンガーミサイルが飛んでくる。

着弾の煙にまぎれて、2号は大きくジャンプした。

「ライダァァァキィィィィック!!」

ずがっしゃぁっ!!

わずかに致命の箇所をそれた必殺技は、その代償にショルダーランチャーの半分を持っていく。

「ぐぁっ!」

「まだだっ!黒狼パンチッ!!」

後ろから黒狼が一撃を加える。

それによって、背部のマイクロミサイルポッドも破壊された。

「なかなか・・・やるな。月並みなせりふではあるがね。」

それでもまだ余裕を見せる『金狼』はフィンガーミサイルを放ちながら、滑る様に移動していく。

そう・・・まるで、二人を誘うかのように。



そして、1号は・・・

「無茶をするなといっただろう、風祭君。風祭博士は君がこんな無茶をすることは望んでいないはずだ。」

「グゥウ・・・」

念動力に捕らわれたシンを一閃の元に助け出した彼は・・・

「鬼塚。緑川博士の想いを忘れたか?あの人は、誰よりも人が自由に生きることを大切に思っていた・・・それをないがしろにしようというのか!?」

そう言って、鬼塚をねめつけていた。

「わかっていませんねぇ・・・?これは博士が望んだことでもあるのです。この、私と風祭君の姿はね。」

「なんだと・・・?!」

「すべては!あの時・・・川澄先生が見つけた緑川博士のノートから始まったのです。その存在は、私と風祭博士、望月博士、そして水瀬君・・・後は幾らも知りません。そこに描かれていたもの・・・それは・・・」

言葉を区切り、声を潜めるように言った。

「あなたの設計図。そして、それを元に創造されるであろう新人類の構想・・・最初から、彼はあなたを改造することを決めていたようですね?そう、ショッカーを叩き潰すための道具として・・・♪」

くぐもった笑いをあげながら、鬼塚はそう言った。

「・・・だから、どうしたというんだ?緑川博士は死の間際でそれに気づいた。人を道具として、自らの望みをかなえる道具として使うことの恐ろしさを・・・そして、それこそがショッカーそのものなのだと!だから、私にショッカー打倒の使命を託したんだ!」

「くっくっくっく・・・滑稽滑稽!いまだ緑川の怨念に憑かれて滅びを撒き散らす!まさしく愚鈍の極み。あのノートを見たものとしては、笑う以外には・・・」

「黙れ!俺は・・・俺たちは、あくまでも自らの意思で、自由を脅かす悪と戦っている!そんな言葉で揺らぐ信念なら、このマフラーはとうに捨てている!」

そう言って、赤いマフラーを1号は手に取った。

「このマフラーは血の紅。貴様らのために流れる人の血、俺たちが流す血、真っ赤に流れる人の血潮を表しているのだ!」

その怒りのこもった言葉を、さらにあざ笑い鬼塚は言う。

「それでも、正義のため、自由のため、と称して元人間を殺しているには違いない。くっくっくっく・・・それとも、その紅には、元人間の血も入っているのでしょうかねぇ??はっはっはっはっはっは!!」

そこまで言ったところで、1号が動いた。

ゴゥッ!!

轟音を発して拳が駆け抜ける。

「そうだ・・・そして同胞を殺さねばならぬ、血の涙でもある・・・!!」

食いちぎるような悲しみをその言葉は秘めていた。

それすらも・・・それすらもあざ笑い。

鬼塚は叫んだ。

「証明したいならば・・・僕に勝ってみてくださいよ、本郷先輩?いや、仮面ライダー1号!」



表層部格納庫

そこでは、一騎のアーマードモジュールが発進準備を整えていた。

『虚君、準備はできたぞ。』

搭乗するは、ビアン=ゾルダーク本人。

「ええ、後は待つだけです。」

そういって虚は、格納庫の隅の椅子に腰掛けた。

と、その時である。

『博士、沖で待機中の攻撃原潜「シーウルフ」から緊急報告です。回線まわします。』

急いでいるが、落ち着いたオペレータの声に続いて、明らかにあせっている潜水艦長の画像がコクピットのモニタに写った。

『博士、わが艦の前方20km、深度4000mから何か怪獣のような物体が接近してきます!敵速100kt!警戒をお願いします・・・』

ザザザ・・・・

そう言った瞬間、画像が乱れる。

間違いなく、ジャミングだ。

「どうやら・・・来たようですね。このタイミングからすると、今基地内で騒いでいる連中のお仲間でしょう。」

虚がそうつぶやくと・・・格納庫の扉が開けられる。

「・・・陽装っ!」

虚もまた戦闘態勢に入り、言った。

「ここは、海上で迎え撃つべきですね・・・!」

『うむ・・・今、アイドネウスに損害を与えるわけにはいかん!ヴァルシオン、発進するぞ!!』

「・・・Sチャリオーーットッ!!」

そして・・・

それと同時に、海面に姿を現したもの・・・それは・・・

ロケットに寄生したイカという表現がぴったりの巨大怪獣・・・

『海魔』・・・



潜水艦「ヒューぺリオン」倉庫

ズズズズズ・・・

表層のほうから地響きのような音が聞こえてきた。

「ほう。始まったようだな・・・」

「なんだとっ?!」

黒狼はそう叫んで、くるくると器用に攻撃をよける『金狼』を睨んだ。

「・・・アレは、この基地の主力兵器、ヴァルシオンの発進音。そうか・・・巨大兵器か何かで、ヴァルシオンそのものを捕獲すること・・・それがお前たちの目的か、ゾル大佐!!」

「クックック・・・今頃気づいても遅い。貴様らには今しばらく、私たちに付き合ってもらおうか?」

「そうそう。その任務についているのは、あなた方もよくお知りの人ですよ。」

鬼塚の言葉を聴き、1号は叫んだ。

「まさか?!」

「そうですねぇ・・・貴方が誰を思い浮かべたかは知りませんけど、かつては死神博士と呼ばれていた人物です。」

「・・・!」

ヒュゥンッ!

シンの爪・・・ハイバイブネイルを難なくかわし鬼塚は言った。

「ふぅーー・・・そろそろ、こちらの損傷も激しくなってきましたね・・・しばらくといいましたけど、私はもう飽きましたよ。時間を稼ぐのは、ね。」

「確かに、な。このような戦いは、われわれの望むところではない・・・地獄やブラックがやるべき仕事だ。」

そういって、『金狼』は腕のスイッチを押した。

「一気に決めさせてもらうぞ?これ以上、ここにいるのは耐え難い。この船ごと・・・死ね。」

一瞬、閃光が走り・・・そして、『金狼』の背中には7〜8mはあるだろう、巨大なミサイルが装着されていた。

「な・・・何・・・あ、れは?!」

黒狼がうめくようにそうつぶやく。

その傍ではシンが傷ついた体を抱えながら、ふー、ふー、と荒い息をついている。

「クックック・・・30年以上前の旧式巡航ミサイルを改造したものだが・・・この船ごと、貴様らを吹き飛ばすには十分だろう。」

「ああ・・・もちろん、私たちはテレポーテーションで逃げさせてもらいますよ?ESPって便利ですね・・・?」

その言葉に呼応して、2号が激昂する。

「逃がさん!!いくぞ、本郷!」

「おお、一文字!」

「「とぉぉぉっ!!」」

閃光が走ったかのように、二人の仮面ライダーはジャンプした。

「「
ライダァァァァッダブルキィィィック!!」」

ぐぉぉぉぉっ!!

「ハハハッ!死ぬがいいっ!」

ゴガァッ!!

轟音とともに、ダブルライダーの最強必殺技と放たれたトマホークはぶつかり合った!

「クハハハハハハッ!!ハッ・・・?!」

当然、爆発すると思われたそれは爆発もせずに破壊された・・・

「・・・なぜだ?信管は完璧だったはず・・・」

二人は地面に降り立つと、笑った。

「ハハハハハハ・・・ライダーポイントキックだ!」

「そう、技が放たれる瞬間、本郷はポイントキックに切り替え、信管だけを破壊したんだ!」

「そうか・・・!一点のみを破壊するポイントキックなら!」

黒狼の言葉に、1号は「そうだ。信管が反応しないような箇所を破壊したんだ」といった。

「ふうむ・・・やはり、貴様らは強いな・・・単純な強さよりも、強かである点、そこの小僧よりはるかに上だ・・・」

「・・・でも、今回はもう帰りますね?我々の事を知らせることはできたんだし・・・死神さんも、たぶん任務を果たせるでしょう。」

「そうだな・・・さらばだ。また会おう、ダブルライダー・・・」

揶揄するような口調でそういうと、二人の姿は霧にでも溶けるかのようにぼやけて・・・そして消えた。

直後、船は爆発のカウントダウンを始め・・・そして、4人は脱出した・・・

何の手がかりもないままに。



「くッ・・・まんまと乗せられてしまったか。」

破壊された「ヒューぺリオン」を前に悔しげに、本郷はそうつぶやいた。

そう・・・海上ではすでに『海魔』とヴァルシオンの戦いは始まっているだろう。

「まだ・・・手はあるぜ、本郷。」

「・・・!あれか。そして・・・」

気づいたように本郷はつぶやく。

それを榊も気づいたのだろう・・・

「そうだ、敵が死神博士なら、ポイントキックで頭を狙えば・・・」

と言った。

「何とかなるかもしれない・・・!」

「とにかく・・・外に出よう。外に・・・」

鬼塚を逃がしたことが悔しいのか・・・真はそうつぶやくと一人外へ出て行った・・・

それに続くように、三人も出て行く・・・

(虚さん・・・大丈夫かな?)

榊は、そんなことを考えていた・・・



アイドネウス島・東方海上100マイル

「こいつか・・・」

そこにいたのは、紛れもなく、怪獣、と称されるべきものだった。

ロケット・人工衛星・スペースシャトル・・・そう言ったものにイカが寄生したとしか言いようのないもの・・・

それが、海上に浮かんでいた。

身長は50m強・・・横に広がるような形をしているため、普通の怪獣よりも大きな印象を与えてくる。

「攻撃開始!・・・クロスマッシャー!!」

ズシュウウ・・・・

赤と青の光線が怪獣に突き刺さる。

だが・・・

「効いていない・・・だと?」

ビアンの言葉に答えるように、目の前の怪獣が「言葉」を発した!

『フハハハハハ・・・その程度の攻撃では、わしに傷ひとつ加えることはできんよ・・・』

海を裂くような大音声を上げ、それは叫んだ。

『わが名は『海魔』!伝説の海に潜むクラーケン!ここで貴様は死ぬのだ、ビアン=ゾルダーク・・・』

その瞬間・・・天を裂く轟音とともに、無数の隕石が上空から降ってきた!

ゴォォォォォ!!

轟々と摩擦音を上げながら、落ちてくる隕石を避けながらビアンは言った。

「貴様・・・何者だ!?」

『クックック・・・そこの若造にでも聞いてみたらどうだ?』

その言葉に答えて、カイザードは言う。

「まさか・・・本当に怪獣化していたとはな・・・死神博士・・・いや、ネメシス幹部怪人『海魔』!!」

「なんだと?!」

「やつの体は、軟体生物のそれと同じです・・・しかも、エネルギー吸収機能があるようだ・・・厄介ですね。」

そういってから、カイザードは説明しだした。

「ショッカー・・・はご存知でしょう?10年ほど前に世界中で猛威を振るった暗黒組織・・・その幹部だった男です、こいつは・・・」

「・・・そうか。確か「死神」と呼ばれて学会を追放された男がいたはずだ・・・まさか、裏の世界にもぐりこんでいたとはな・・・」

『そう、ワシだ。行く先々で死人が出る、などといわれた・・・認められなかったことは、もはや気にしてはおらん・・・だが、この世界は気に食わないのでなぁぁぁ・・・滅びを与えよぅぅぅ・・・・』

呻くような声を出しながら、『海魔』は触手を天に伸ばす。

「ク・・・!」

触手は、いくらでも伸びるかのように空間を占拠していく・・・

『ワシの・・・触手につかまれば、エネルギーを吸われるぞぉ・・・?そうした後に・・・隕石でズタズタにして・・・研究材料としてくれる・・・』

「・・・そういうわけにはいかん。娘の結婚衣裳姿を見るまでは死ねないのでな・・・!メガグラビトンウェーブ・・・発射ッ!」

ブワァァァァァツ!!

重力波が『海魔』を襲う・・・が。

『ファファファファファ・・・重力を操るワシに、その程度の重力波は効かぬよ・・・』

やはり、効いていない!

同じように、カイザードも先刻から攻撃を加え続けているが、生半可な攻撃では傷ひとつつけられないようだ。

「ク・・・ギガファントムを・・・呼ぶしかない、か?」

「待て、柊君。通常空間でアレを使ってはいかん!」

「し、しかし・・・」

そのとき、触手の一本がついにヴァルシオンを捕まえてしまった!

「ク・・・ぐあぁぁぁぁっ!!」

触手から電撃が放たれる・・・当然、ただの人間であるビアンには苦痛が訪れた。

「ク・・・くそぉぉぉっ!!」

「ビアン博士ッ!くそぅっ!!」

触手に阻まれて、カイザードも近づけない・・・

このままではまずい・・・

二人とも、特に虚はこれほどの戦力があるとは思っていなかった。

所詮、元は等身大の怪人・・・そういう侮りがあった。

『クックックックック・・・やはり・・・深海に潜んでいた・・・怪獣を何匹か食らったのは・・・正解だったな・・・少々、処理能力が落ちているが・・・問題、ない・・・』

―――なんだと・・・そのせいか、この能力の高さは・・・ッ!

虚は心の中で舌打ちした。

―――この戦力では・・・勝てない。

まず間違いなく、このままでは勝てないことを彼は悟っていた。

「・・・チックショウ・・・!」

そのときだった・・・

天空から、声が聞こえたのは。

―――我はゼンガー=ゾンボルト!悪を断つ剣なりぃっ!!

斬ッ!!

巨大な剣・・・剣と言うにはあまりに無骨な塊が落ちてきてヴァルシオンを捕らえた触手を断ち切った!

「おお・・・君はッ!」

「遅くなりました・・・アイドネウスに向かう途中、交戦中との連絡が入り、急いで駆けつけました。お叱りは、後ほど!元ATXチーム隊長ゼンガー=ゾンボルト・・・見参!」

現れたのは、黒い巨人・・・SRG-00グルンガスト零式だった・・・

「アレが・・・うわさに聞く、「悪を断つ剣」・・・か・・・」



アイドネウス島・東海岸

「榊、いや・・・黒狼・・・これから、エネルギーを全開にして、飛ぶぞ!」

「・・・やっぱり・・・アレをやるんすね?」

「ああ・・・カメバズーカを葬った、あの技を今こそ使うときだ!」

三人が何をしようとしているのか・・・

それがわからない真は、彼らに聞いた。

「何を・・・するつもりなんですか、本郷さん?」

「ライダーパワーを全開で放出し、そのパワーで飛ぶんだ。洋や一也・・・スカイライダーやスーパー1とは違って、放出したエネルギーで無理やりに飛ぶと言うものだからな・・・当然、負担も大きい。」

「無茶な・・・!」

無茶でも何でもやるしかない。

榊はそう言った。

「・・・いくぞ・・・ライダー・・・変身!」

「変身!」

「変身!」

三人は仮面ライダーの姿となり、そして・・・

「命を燃やすぞ!」

「うむ・・・今こそ、仮面ライダーの全パワーを出すときだ!!」

「青き石よ・・・俺の命を削ってもいい・・・ただ、今このときに力を!」

「「「ライダーパワー全開!!」」」

腕をクロスさせ、エネルギーをスパークさせる・・・

このエネルギーを飛行に利用するのだ。

「いくぞ!とぉっ!!」

三人のライダーは・・・こうして、空へと飛んでいった・・・



「吼えろ斬艦刀・・・!!」

ズシャァッ!!

一撃が、触手を切り裂き、金属を断つ。

実体剣で切る・・・

体が柔らかすぎるため、これ以外の攻撃は効きにくいということを知った彼らはそうした攻撃に終始していた。

カイザードは援護、ヴァルシオンのディバインアームと零式の零式斬艦刀で切り裂く。

時たま降ってくる隕石をかわしながらそうした攻撃を続けていた。

「ジリ貧・・・どっちにとっても、か。」

「弱音を吐くな。どんなことがあろうとも悪を断つ剣は折れたりはできぬのだ!!」

アインスト事変と呼ばれた戦いを潜り抜けたゼンガーの言葉だから、重みがあった。

―――この人が来てくれたのは助かったけど・・・このまま戦い続けるのは、どちらにも分が悪い・・・

そう思った。

敵も、環境を完全に破壊しかねない規模の隕石を呼ぶようなことはしていない。

チャンスはある・・・だが、それをものにするには・・・

そうしたとき・・・

「よぉ!苦戦してるみたいだな、虚さん!」

榊の声が聞こえた。

―――そんなわけ・・・

そこまで思ったとき、1号2号と肩を組んだ黒狼の姿が目に入った。

「・・・ダブルライダー・・・そうか。お前、二人の力を借りたんだな?」

「ご名答さ。何とか、あいつの制御機構を破壊してみせる!その隙に・・・頼む!」

榊の意図を理解した虚は、一言「わかった」と言った。

「・・・何者かは知らぬが・・・戦術に関しては委細承知!!我らに任せよ!!」

「久しぶりだな、本郷君・・・やるぞ!」

ゼンガーとビアンも呼応してそう言う。

「死神博士・・・いや、『海魔』。そんな姿になってまで、何を望むと言うのだ・・・?」

1号は『海魔』に問うた。

『ふん・・・誰かと思えば、本郷猛ではないか!・・・何を望む・・・じゃと?わしは滅びを望む・・・』

「・・・心まで怪物と化したか・・・」

「・・・やろう、黒狼。」

悲しげな二人の言葉に呼応して、黒狼も言った。

「わかった。いくぜ・・・疾風よ・・・蒼き石よ・・・」

腰のアグルストーンが煌きを増す。

「いけぇぇぇっ!!」

叫びとともに両脇の1号と2号を放り投げた!

「いくぞ、本郷!」

「おお、一文字!!」

ギュウウ・・・

『させるかぁぁぁぁぁっ!!』

触手が二人を襲う・・・が。

「わが斬艦刀に・・・断てぬものなし!!」

斬ッ!

「ディバインアーム!」

ズシャッ!!

二つの巨体が、それを阻む!

そして・・・

ライダーダブルポイントキィィィィィッック!!

ドガァァァッ!!

彼らの蹴りは寸分の違いなく、頭部を直撃した!

『・・・が・・・ガッガ・・・な、何をした・・・いや・・・そうか・・・制御機構に重大な損傷あり・・・隕石召喚・・・不能・・・』

「よしっ!!狙い通りだ!」

榊の叫びが全てを意味していた。

もともと、『海魔』の前身であるショッカー大幹部死神博士の怪人体「イカデビル」の頭部には隕石誘導装置・・・つまり、重力波で手ごろな隕石を誘導するための装置が内蔵されていた。

死神博士の製造した怪獣なら、あるいは死神博士本人なら・・・

そこに重要な制御機構をおくだろうと推測して、そこに「衝撃を集中させ、そこだけを破壊する」ための技である、ライダーポイントキックを当てて機能を止めよう、と考えたのである。

・・・無論、敵が怪獣ではなくロボット・・・キングダークのような敵が相手でも、頭部へのポイントキックは効くはずだと考えたのだ。

そして、狙いどおりに『海魔』は苦しんでいた。

それを見逃す、ゼンガーではなかった。

「今だっ!!
吼えろ、斬艦刀!!

零式の斬艦刀に灯がともる。

「打と、意地を持って貴様を倒す!!
奥義!!斬艦刀、疾風怒濤!!

グォォォォォッ!!

すさまじい勢いで、零式は突っ込んでいく。

ズバァァァッァァッァァッ!!

「我が斬艦刀に・・・断てぬものなし!!」

上空からの凄まじいほどの斬撃で、『海魔』の左半身を真っ二つに切って。

ゼンガーは吼えた!

『・・・こぉぉ・・・オノレェェェェ・・・よくもワシの計画の邪魔をぉ・・・ここは見逃すぅ・・・じゃが、次はないと・・・思えぇぇぇぇ・・・』

憎しみを込めた言葉がその場にこだました・・・

「逃がさんっ!!」

「待てぃ!!」

『ファファファファファ・・・ワシを捕らえることは・・・出来ん・・・』

ボシュゥゥゥ・・・・

ゼンガーと1号をあざ笑うと、『海魔』の触手の大半が切り離され・・・ほぼロケットそのものの形となった『海魔』は空へと猛烈なスピードで逃げ去っていった。

「く・・・惑星間航行用ブースターだと・・・?」

「・・・逃がしたか。」

先ほどと同じく、ゼンガーと1号の言葉が戦場に空しく木霊した・・・

そうして。

戦いは・・・あっけなく終結したのだった。



その夜 アイドネウス島・司令部

「本郷君・・・久しぶりだな。」

「ええ・・・狙われているのは、あなただけではなかった。」

本郷はそう言って椅子に座った。

「EOTをネメシスに渡すわけには行きませんので、私たち二人が来ました・・・今、我々9人ライダーは謎の組織を追っています。あなた方にあまり手を貸すことが出来ないのは心苦しいのですが・・・」

本郷は申し訳なさそうにそう漏らした。

「気にしないでもらおう。G.U.A.R.D.もきちんと機能している・・・君たちや各地で戦い続けている英雄たちが表に出なければならんのは、G.U.A.R.D.が機能不全に陥る・・・壊滅的打撃を受けてしまった時だ。それまでは・・・ICPOの彼によろしくな。」

「ええ。」

「真君・・・といったか、あの青年は。彼には悪いことをしたな・・・」

話題を変えたビアンに本郷は口をへの字に曲げて言った。

「彼は・・・親と恋人を連中に殺され、着の身着のまま彷徨っていたところを私が保護しました。彼の心は復讐に染まっている・・・無茶はさせたくなかった。」

「・・・しかし・・・そんな、人一人の心を無視してもわれわれは勝たねばならん・・・柊君とも話したが、すべては・・・」

悲しみと焦燥に彩られた二人の言葉が、この場を支配していく。

「全ては、この世界の秘密、にかかわっている、と?」

「うむ・・・」

その時、ドアが開きゼンガーが入室してきた。

「ゼンガー=ゾンボルト中佐、アイドネウス島守備隊司令部付として、ただいま着任しました!」

整った敬礼をしながら、ゼンガーはそう言った。

「うむ、楽にしていい。」

「ハッ!」

敬礼を解き、手を後ろに組んでゼンガーは話し始めた。

「先ほどの戦闘への参加は、私の独断によるものです。」

「ああ・・・その件か。危機を救われたのだ・・・別段咎めるような事もない。どっち道、君はこの基地に配備されることになるはずだったからな。少し早まっただけだ。」

生真面目に言う彼に、そう返すとビアンは笑った。

「弐式や参式の設計も進んでいる・・・君には、今しばらくここでがんばってもらわねばならんしな。」

「ハイ・・・了解です。」

そのとき、ゼンガーは本郷がいる事に気がついた。

「不躾ですが、あなたは・・・?」

「・・・何か?」

そうして、ここではまだ語れない話が始まった・・・



翌朝 アイドネウス島・第七滑走路

到着したダヴライナーの前に虚と榊はいた。

「さて。任務完了・・・と言う訳で、帰るぞ榊。」

「アー・・・」

中々にサッパリとした表情でそういう虚に、榊は気のない返事を返していた。

「・・・考えてることを当ててやろうか?なんか忙しすぎて、目的を果たし損ねた・・・そう思ってないか?」

「・・・当たりだ。」

―――ふむ。この分だと、確かにあの連中がこいつを改造したのはマチガイがなさそうだ。

榊の態度からそう思った彼はカマをかけてみることにした。

「・・・実は、敵の一人くらい捕まえて黙って敵の基地にでも乗り込もうとしたとか、な?」

「ぶっ!?」

如何やら図星だったらしい。

「そんでもって、自分の体の秘密でも解き明かそうとでもしてたんじゃないか?」

「・・・まぁ、な。このままじゃ、秋子姉たちまで巻き込んじまう・・・そんな気がして、ね。少しでも早く、自分の秘密を知りたいんだ・・・ガキのころの忘れちまった記憶も。」

いったんは驚いたのであろう、吹いたが。

すぐに冷静さを取り戻した辺りはさすがだった。

「もう、十分にみんな巻き込まれているさ。本郷さんから聞いたよ・・・緑川ノートか・・・どうも、偉大なことをしたような人物は後進に厄介ごとを押し付けたがるようだな。」

皮肉とも愚痴ともつかない、そんな言葉を吐いて苦笑する。

「・・・帰ったらすることは決まりだ。水瀬のおじさんに話しを聞く・・・」

―――そして、いくらかでも敵の狙いを知れれば。

そう思った。

「ああ、そうすればいい・・・」

虚は苦笑を張り付かせたままでそう言った。

「ところで、彼・・・風祭とか言う男はどうした?」

「・・・さぁな。あの後岸壁に泳ぎついたら、こいつだけ残っててね。」

そう言った彼の手には、一切れの紙が握られていた。

「『世話になりました。ご武運祈ります。本郷さん、一文字さん、榊へ。』だってよ。」

「ふうん・・・」

「まぁ、俺たちとあいつとは戦う動機が半分以上違うし・・・しばらくは仲間になれないだろ、って隼人さんがね。それに、あいつがいなくてもしばらく隼人さんは俺たちと一緒にいるわけだし・・・ま、なんとかなるだろ?」

その言葉に二人して苦笑して、それから虚は言った。

「さて・・・一文字さんはダヴライナーに乗り組んでるはずだ・・・行こうか。」

「ああ・・・」

―――ふー、この程度で済むなら、悠子に心配かけるじゃなかったなぁ。

搭乗口をくぐる瞬間、虚はそんなことを考えたのだった。



何処か

『むう・・・怪獣を食らえば、パワーは上がるが野獣性に支配されるか・・・有機CPUを増設せねばならんな。』

『海魔』は洞窟のような場所でおそらくは培養液なのだろう・・・緑色の液体で満たされた巨大なプールに身を横たえていた。

「まったく・・・結局ヴァルシオンは手に入らなかったわね・・・」

『蛇』はそう言うと、『海魔』に近づいていった。

「グロテスクね・・・まぁ、なんでご老体が怪獣なんかになりたかったのかは、聞かないし聞きたくもないけど・・・こっぴどくやられたわね・・・」

『・・・『金狼』や鬼塚如きに貸しを作ったな・・・まぁ、良い。次で巻き返せばよいのだ・・・』

「零式のこともあるし、最近失敗続きのあなたがそれを言うかしら?」

『く・・・くくくくく・・・まだ・・・まだだ・・・百の失敗がひとつの最終的な成功に結びつく・・・それが科学というものだ・・・くくくくく・・・ふぁふぁふぁふぁふぁふぁふぁ・・・』

『蛇』の皮肉に不気味な声が上がり・・・

次の幕が開くのが、そう遠いことではない事を暗示していた・・・

続く





次回予告

赤い勇者・・・

新たなる銀河からの執行人がその剣を振るう。

敵するは、宇宙エスパー犯罪結社マドー。

力を込めて、若き獅子が叫ぶ!

「赤射っ!!」

その叫びに、ついに煉獄の使者どもが姿を現す。

そして、使者どもを前に、陽光の戦士は復讐の心を思い出す・・・

次回、スーパーヒーロー作戦SPIRITS

「幻夢」

魂より継がれし物語・・・今こそ語ろう・・・




あとがき

イヤー終わった。

今回も一杯一杯だった。

秋子さん「ご苦労様です。他人に迷惑掛け通しのヘッポコ侍さん。」

うっ!

秋子さん「まったく、この間の――――――(シークレット)の醜態はなんですか?反省なさい。」

は、はい・・・

あ、あの・・・説明しますと、ちょっと洒落にならんレベルで人に迷惑かけちまったのですよ・・・あたふた・・・

K様、A様・・・この場を借りてお詫びいたします・・・本当に、迷惑かけてすいませんでしたっ!

秋子さん「それで許してもらえるとは思えませんがね・・・(冷たい目線)」

うう・・・

秋子さん「ふー、これでY首領がPC壊れてなかったら、あなた板ばさみで死んでましたよ、きっと。(呆れ)」

うううう・・・・

秋子さん「本当にダメ人間ですね・・・いっぺん死んで出直しなさいっ!(辛辣)」

うう・・・こんなダメぽな浦谷でした・・・

秋子さん「では・・・次回もこの番組で会いましょう。(怒気)」

シュワッチュ!!

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル