―――房総半島南部の、とある港

あたりは一面の闇。

空には、星も瞬かず。

月は姿を消している。

―――今は、新月。

「ひどいものだ・・・」

虚は、瓦礫で覆われた街を見て、そう言った。

先日の、台風13号・・・いや、気象コントロールマシン「テンカイ」が起こした、ソニックブームがこの町を完全に破壊していた。

―――同じ光景は、房総半島南部のいたるところで見られ・・・

それは、首都圏にも少なからぬ影響を与えていた。

つまり、ソニックブームが如何に限定的な発生だったとはいえ、台風のそのものの強風と豪雨による、交通・ライフラインの面への大きな打撃があったということだ。

この怪事件が多発するご時世、そんなことが起これば・・・

言うまでもない。

社会不安による犯罪の増加がおこり、それにつけこんで暗黒組織がその猛威を振るうのだ。

そして、この町には人がいなかった。

少なからぬ生き残った人々がいたはずなのに、である。

被災地に作られた、物資配給のテントが目に入った。

虚は迷わずそこへと歩を進めた・・・が。

「・・・ふん、どうやら、予想通りだな。」

虚はそうつぶやいて、ため息をつく。

そこには、まるで今しがたまで人がいた・・・そんな気配がある。

具体的に言うなら、炊き出しの炎が消えていない。

まだ暖かい、豚汁の実。

ぬくもりが残った、いす。

それら全てが、ここから唐突に人が消えてしまったことを意味していた。

「―――チ、こりゃまるで・・・」

―――まるで、何だというのかな?

突然声が響き、虚はゆっくりと後ろを振り向く。

そこには・・・

そこには、黒い軍服・・・まるで、近代初期の将軍のような出で立ちをした、おそらくは30半ばの男が立っていた。

「貴様・・・何者だ・・・?」

「クククク・・・よく知っているのではないか?虚空のかなたから、われわれを倒しに来たのだろう・・・?」

男の、あざけるようなその言葉に、虚は首を振って言った。

「・・・そうか。貴様が元ゲルショッカー大幹部・・・ブラック将軍か!」

「ふっふっふ・・・やはり知っているではないか?」

「黙れ・・・何が目的でこの町の人々をさらいやがった・・・・!」

虚はそう言って、腰溜めに構える。

声に、明らかな敵意と憎悪を含んで。

「そう、いきり立つな。貴様にはまず、こやつの相手をしてもらおう。」

余裕を含んだ声で、ブラック将軍はそう言った。

「それと、今の私は・・・『黒蛭』。できれば、そう呼んでもらおう。」

言葉に続けて、パチリ、と指を鳴らす。

すると・・・

がしゃぁっ!!

瓦礫が砕け、その中から、まるで蜘蛛とライオンを混ぜたような、醜悪な化け物が姿を現した。

崩れたライオンの体から、無数の蜘蛛の手が触手のごとく伸びている、猛悪な肢体。

間違いなく、誰もが嫌悪するようなものだ。

『ムヒョォォー・・・ムヒョォォォー・・・』

その瞳に、意思はない。

「クックックック・・・『奴ら』の言うことには、転生体というらしいが・・・まぁ、我が古き組織ゲルショッカーの作ったものの、完全体と考えてもらえればよい。存分に・・・」

ニヤリと笑う。

「楽しんでくれたまえ。ゆけ、クモライオン!」

その言葉と同時に、その化け物は・・・

『ムヒョォオオオオォォォッ!!』

襲い掛かってきた!

「チ、陽装!!

叫んで、虚も戦士と変わる。

そうして、戦いが始まった。



スーパーヒーロー作戦SPIRITS
第十七話「影と向き合う」



―――時間は少しさかのぼる。

それは、気だるい、午後のひと時。

立花オートコーナーにて

「いやぁ、おやっさんのコーヒーはいつでも美味いなぁ!」

光太郎は、少々大げさにそんなことを言って、皆を笑わせていた。

「おいおい、それ何度目だよ・・・光太郎。」

久しぶりにここに戻ってきていた榊は、そういって光太郎をからかった。

「はっはっは。そう喜んでもらえると、俺も作りがいがあるな!ところでどうなんだ、G.U.A.R.D.、ってやつは?」

「ん・・・ま、ぼちぼち。それより、バイト少なくなって、困ってないかい?おやっさん。」

榊は、ごまかすようにそういって、話題を変える。

おやっさんもそれには気づいているのだろう、変えた話題にすぐに乗ってくる。

「ははは、心配無用さ。雑事のほうは、お嬢様方がやってくれてる。お前らより役に立つくらいだよ。」

「そうかい?」

「ああ、お前ときたら、豆のブレンドが・・・」

少し、顔を青ざめさせておやっさんは続ける。

「―――正直、あのブレンドはないぞ、榊。」

「・・・?美味いじゃん?」

「おいおい・・・あんなの飲めるのは、お前と悠子だけだよ・・・」

榊との会話に、おやっさんは花を咲かせる。

光太郎は、榊ブレンドの話に、おやっさんと同様に少し青ざめながら、

―――悠子ちゃん、よくあんなの飲めたよな・・・

と心の中で思っていた。

そして・・・外を見ると、お出かけ姿の秋子と・・・光太郎の妹の杏子、そして・・・ゴルゴムにとらわれたままになっている信彦の、恋人である克美がこちらへ向かってくるのが見えた。

数瞬もせずに、彼女らは店のドアをたたいた。

「いらっしゃい!」

光太郎がふざけてそう言うと、克美たちは「ただいま!」と返して笑った。

「コーヒーができてるぞ。それより、昼までに帰ってくる約束だろ?」

おやっさんがそういって、ニヤリと笑い、コーヒーを入れた。

ミルクと砂糖入れも一緒に差し出す。

秋子はそれを受け取って、砂糖とミルクを、それぞれ一匙ずつ入れて、一口飲む。

「おいしい・・・!」

「おう。最近、水出しコーヒーのドリッパーを見つけてきてな。どうだ、美味いだろ?」

笑みを深くしてそう言うと、杏子たちにも勧め、そうして言った。

「ところで、遅れた理由は何だ?」

「ごめんなさい!ちょっと・・・」

杏子はそう言って、思い出すしぐさをする。

「ルビーとダイア・・・素敵だったなぁ〜・・・」

「??」

榊は、首をひねって「わからない」という仕草をする。

「えーとね、榊には言ってなかったけど・・・今日から近くの美術館で、発掘品の展覧会をしているのよ。それを、杏子さんや克美さんと一緒に見に行っていたの。」

「ふーん・・・そうなんだ。で、どんなのがあったんだ?」

「それがねえ・・・あの剣と盾!昔の王様の剣と盾らしいんだけど・・・蛇の瞳がダイヤで、林檎がルビーなの!あんな大きいもの・・・はじめてみたわぁ・・・」

うっとりとそう克美は言う。

「その剣と盾の前で二時間もたってたものだから・・・足が棒になってしまったわ。」

「そうか・・・そのせいで遅れたんだな・・・」

そう言って、おやっさんは彼女らをからかった・・・が・・・

秋子だけが、浮かない顔をしていた。

「どしたい、秋子姉・・・なんか元気ないぜ?」

「う・・・ん」

榊が声をかけても、浮かない笑みを浮かべる。

「それがね。秋子さんたら、あの剣と盾を見ていたら、気持ち悪くなっちゃったんだって。」

「・・・?!」

榊は、困惑の色を浮かべる。

そして、光太郎も。

「ハイ、これがそのパンフレット。」

「ふ・・ぅん・・・」

光太郎は、パサリと渡されたパンフレットを捲って中を見る・・・

―――そこには、確かに林檎を食らう蛇の紋章を持つ盾と、禍々しい装飾の純白の剣が映し出されていた。

「―――これは・・・!」

光太郎は榊に目配せした。

そして、突然緊迫した面持ちとなった二人は、彼女らから少し離れる。

まるで、話を聞いてはいけないという風に。

そして、小声で二人は話し始めた。

「―――これは・・・間違いないぜ。」

「ああ。虚さんが言っていた・・・『林檎を食らう蛇・・・仮面ライダーBlackの胸にある紋章には、そういう意味がある』と。これは・・・!」

そう言って、パンフレットを閉じる。

「「調べてみる必要がありそうだ・・・!」」

二人は同時に言って、そして・・・

ドアを開けて、榊と光太郎は出て行く。

後ろからは、美術館閉館の時間はとっくに過ぎている、という女性陣の声がするが・・・

それを無視して、二人はバイクに飛び乗った。



さらに時間をさかのぼろう。

ここは、ゴルゴム地下神殿。

悪の巣窟、魔の宮殿だ。

そこに今、稲光と、暴風が荒れ狂っていた。

「お、お許しください、創世王様・・・!」

その中で、三神官たちは苦しみ続けていた。

「創世王様の・・・お怒りはごもっともでございます、しかし・・・」

おそらくは、直接彼らの脳に話しかけているのだろう。

彼らは、虚空へと声を放っていた。

「な、なにとぞお許しを・・・」

ダロムが言った。

「な・・・そ、それは・・・シャドームーンが目覚めるまでに・・・仮面ライダーBlackを抹殺できぬときは、われわれに責任を取れと、言うこと・・・ですか?!」

バラオムが叫ぶ。

「こ、これまでの失敗は・・・ひとえに怪人どもが不甲斐なかったからでございますぅ・・・!」

ビシュムが弁明し、それにバラオムが付け加えた。

「そ、そうです!やつに敗れたものどもは、動物の本性を前面に出しすぎ・・・冷静な判断を欠いたために、われわれの作戦を無視したからでございます!」

ヴォヴヴォヴヴォヴ・・・

不気味な声が響き、そして、稲光がいっそう激しさを増す。

「な、なんですと・・・!?ビルゲニアの封印を解けと・・・仰るのですか・・・!」

「き、危険な男です・・・それだけはぁ・・・」

「く、くあぁぁぁっ!!」

そうして、一人吹き飛ぶ。

「だ、大神官バラオム!」

「ぐぅ・・・」

その光景を目に、決して創世王の怒りが晴れぬことを悟ったダロムは、決意して言った。

「―――創世王様の御命令とあらば・・・やむをえないでしょう・・・」

―――そして、三人の大神官は、創世王・・・と呼ばれた雷光の主の言に従い、神殿の一室へと向かった・・・



「・・・この部屋にだけは・・・足を踏み入れたくなかった・・・!」

ダロムのその言葉に、バラオムとビシュムもうなづく。

部屋の扉を開け、奥へ進むと、そこには粗末な・・・もう、何千年も埃すら払われていないだろう棺があった。

「封印を解くぞ・・・」

そう言って手をかざす。

すると、どこからともなく風が起こり、数千年分の埃と蜘蛛の巣が払われていく。

そして、そこから現れたのは・・・

棺に張られた一枚の札。

それには、Blackの胸にあるマークを同じ・・・『林檎を食らう蛇』の紋章が描かれている。

それを、まるで汚いものを目にしたかのように一瞥し、再び手をかざす。

「クォァァォ・・・・」

見る見るうちに、札は燃え尽き、そして・・・

棺内部から、突風が吹き、鎖が、「ガチン」と音を立てて切れた。

ギィ、と音を立ててふたが開く・・・

すると、どこからか一枚のマントが飛んできて、棺の中へと吸い込まれていった。

見れば、棺の中には白煙。

何か・・・恐ろしいものが居るような、不気味な気配の、白煙。

その中から出てきたもの、それは、紫の鎧に身を固め・・・

そして、あの美術館にあった盾と剣を携えて・・・

切れ長の瞳に、眼光と殺気だけがギラギラとした、一人の男が姿を見せた。

雷光が、部屋に満たされている。

男が、ギラリ、と棺をにらむと棺は持ち上がり、空中にさかさまに浮かんだ。

男はその鋭い眼光をさらに鋭くして、剣を引き抜いた。

ジャギン!!

それを、目にも留まらぬ速さで振りぬくと、棺は火花を上げて真っ二つになっていた!

驚く三神官を余所に、男は少しだけ殺気を和らげ、呟いた。

いや、呟くという表現は間違っている。

明らかに三神官に対して言ったのだから。

「―――我が妖剣も、錆付いてはおりませぬな・・・」

冷たく光る刀身を眺め、男は続ける。

「三万年も・・・こんな狭い棺に閉じ込められていたので、体が鈍ってしまいましたよ・・・大神官様。」

そこで言葉を区切り、酷薄な笑みを浮かべる。

「もしも三万年前、創世王様の怒りに触れ、棺に閉じ込められなかったならば・・・あなた方も、命がなかったでしょうなぁ・・・?」

「貴様ぁ・・・!」

「ハッハッハッ・・・冗談ですよ、冗談・・・話は棺の中で全て聞いておりました。仮面ライダーBlackとやらを、倒してまいりましょう・・・そのために・・・」

そう言って、男・・・ビルゲニアはその場から消えていた。



時間は榊たちの元へと戻る。

二人は、そろってその美術館までやってくることができた。

誰の妨害もなく。

「どこから忍び込む?」

榊はそう言って、自動ドアの周りに誰も居ないことを確認する。

光太郎は、「目立ちたくない」と言って、近くにあったビルを指差した。

「あのビルの屋上から、美術館へ飛び移ろう。」

「OK。」

二人は、慎重にビルを上り、そして屋上からビルへと飛び移った。

何事もなく、進入成功・・・

鍵を榊がぶっ壊し、中に入ろうとしたそのとき。

誰かの、断末魔の悲鳴が聞こえてきた!



美術館 展示室

紅い絨毯が敷かれ、いくつもの古代の美術品が、そのフロアには置かれていた。

どれも、一級の考古学資料・・・

中には、超考古学・・・オーパーツ研究をも含んだ、新しい考古学のためにも重要な代物がいくつか見えた。

その中を、悠然と・・・

そう、警備装置などものともせずに、ビルゲニアは歩を進めていた。

「やつは、必ずえさに食らいついてくる・・・」

そう言ってほくそえんだとき、後ろからカチャリ、とドアを開ける音が聞こえた。

「誰だ、お前は・・・!?」

そこに居たのは。

これから死ぬ運命にある、哀れな警備員。

ライトを照らしながら、彼はビルゲニアへと近づいていく。

だが・・・

その時、物陰から突然、黒い影が襲い掛かった!



「今のは!?」

「行くぜ!」

叫びを聞いて、そのほうへと二人は急ぐ。

しかし、展示室にはすでに沈黙が流れ・・・

血の一滴も、血臭のひとつもしない。

しかし、ただ妖しい気配と、すさまじい殺気だけが場を支配している・・・

「いったい・・・どうなってるんだ?―――これが、王の剣と盾、か・・・どう思う、光太郎?」

「いや、わからない。だが・・・この気配は・・・?」

―――ニャーオ・・・

その時、ふと気付くと、一匹の黒猫がこちらを見つめているのがわかった。

光太郎が、怪訝そうにそれを見つめると、猫は人懐こそうにこちらへ近づいてきた・・・

だが。

その黒猫は、一声長く鳴くと、光太郎に飛び掛った。

『ウギャウウウウ・・・・』

それは、一瞬にして人間大の怪物に・・・

変わった!

「くっ?!」

突然飛び掛られて、光太郎は面食らい倒れ伏す。

「黒猫の・・・怪人?!」

榊は叫んで、そこにあった、王の剣ではない骨董品を手にとって、黒猫・・・クロネコ怪人に切りつけた。

「てりゃぁっ!」

ザンッ!

だが、それは易々とよけられ、そしてクロネコ怪人は部屋の隅から隅へと移動する。

まるで、本物の猫のように、人間大の猫は巧みに部屋のさまざまなところに隠れ、二人に攻撃を仕掛けてくる。

これはたまらない、と思った二人は・・・

変・・・身!

変身!

変身して、周りを見回す。

だが。

『ウギャアゥッ』

クロネコ怪人は仮面ライダーたちの優れた動体視力からも逃れ、攻撃を仕掛けてきた。

「クァッ!?」

Blackの体に、一本の爪あとが残る。

「くそぉ!動きがつかめねえ!」

黒狼が毒づくと、その隙に黒猫は襲い掛かってくる。

今日は新月。

黒狼も、普段の動体視力が発揮できていないようだ。

「とぉっ!」

ズガァッ!

それにカウンターでパンチをぶち当て、吹き飛ばす。

吹き飛んだ先から、Blackが畳み掛けようとする、が・・・

その時、黒猫の目が光った。

闇夜で光る不気味なそれは、催眠効果でも持っているのだろうか、二人は自分たちの動きが鈍っているのを感じた。

「あの目を見てはいけない!ライダーセンサー!!」

光太郎が叫ぶと、ブラックの頭のアンテナがくるくると回転を始める・・・まるでレーダーのようだ。

ライダーセンサー・・・それは、額のアラートポイントと連動して、敵の体温や動きをサーモグラフィーのごとく感知する能力である。

アンノウンや犯罪ロボット・・・そして、他ならぬゴルゴムとの戦いを通じて知った、仮面ライダーBlackの力だ。

じりじりと近づく気配だけ・・・

それだけしか感じない。

そのはずのクロネコ怪人を、ライダーセンサーは目で見るように完璧に捕らえていた。

『ウギャァァッ!!』

飛び掛らんと跳ねた黒猫の位置は、完全に彼の手の中だ。

「右上だ、黒狼!目を狙え!やつの弱点は目だ!!」

弱点すら、そのセンサーの前に暴かれて。

「オウ!黒狼クロー!!」

ズシャァッ!!

黒狼が前の戦いで『蜘蛛』から奪った「爪」・・・自ら「黒狼クロー」と名づけた爪が、クロネコ怪人の両目に突き刺さる。

吹き飛ばされて苦しむ怪人に、Blackは追い討ちの・・・

ライダァーーッ!キィィィィッック!!

ガヅゥッ!!

ライダーキックを食らわせて、地面に降り立つ。

そして、見れば・・・

『グェェェェェ・・・』

真っ赤な炎と化して、クロネコ怪人は燃え尽き・・・

いや、違う!

ドゴォォォッォッ!!

部屋の壁を破り、剣型の妖気が・・・

クロネコ怪人の体を突き抜ける。

『ギャァァァァァッ!!』

今度こそ、怪人は燃え尽きて虚空へ還る。

「なにっ?!」

驚く黒狼。

もちろん、Blackも驚愕の表情を浮かべているのだろう。

その前に・・・

妖気が降り立つ。

そして、それは渦を巻き、人間の形を成した。

表れたは、あの男・・・

「お前は誰だ!」

Blackが叫ぶ。

それに対して、悠然と構えた男は言った。

手には、王の剣と盾・・・

「貴様らを抹殺するために、地獄より使わされたゴルゴムの剣聖・・・ビルゲニア!」

「剣聖・・・ビルゲニア?!」

「貴様らの動きは・・・今のクロネコ怪人との戦いで大まかわかった。」

その言葉に、Blackは怪訝に「何?!」と言った。

が、そんな言葉は聴いていない、と言わんばかりにビルゲニアは剣を抜き放つ。

「―――そのそっ首どもまとめて刎ねてくれるわ!」

「やれるもんなら・・・やってみやがれ!!」

黒狼は叫んで、手から黒狼爪を出し、ビルゲニアに襲い掛かる。

だが、あっさりとその爪牙をかわし、剣が黒狼の背中を薙ぐ。

「ぐはっ?!」

「甘い!武器はもっと上手く扱うのだな?!」

蹴りが、黒狼を弾き飛ばし、返す刀がBlackのすぐ脇の木を薙ぎ倒した。

「トァッ!」

Blackはジャンプして、襲いかかろうとする。

「甘いと言ってるだろうが!」

「何っ?!」

しかし、それもビルゲニアが投げた盾によって届く前に打ち落とされる。

そして、黒狼とBlackは一つ所に堕ちた。

「く・・・」

「てんめぇ・・・」

関節から煙が出ている。

どちらも、かなり痛手を負っているようだ。

「ビルセイバー!ダークストーム!!」

ビュンビュンビュン・・・

∞字に剣を振るう。

そして、それは・・・

妖気纏う竜巻と化し、二人に襲い掛かる!!

ゴォォォォオオッ!!

巻き起こされる大風が、二人をあっさり吹き飛ばし、地面に叩きつける。

「ここは、退くぞ、黒狼・・・!」

「わかってる・・・っきしょ・・・ルガァァァァァァァッ!!」

「・・・バトルホッパー!!」

ブォォォーーーンン!!

形勢不利と見た二人は、バイクを呼ぶ。

ビルゲニアは悠然と構えながら、さも、見逃してやろう、と言わんばかりの瞳で彼らをにらみつける。

「トォッ!」

「トァッ!」

二人は、跳ねてバイクに飛び乗り・・・

そして、逃げ出したのだった・・・



―――ゴルゴム地下神殿

そこには、三神官とビルゲニアが居た・・・

「いくら仮面ライダーどもを抹殺するためとはいえ、我が愛しきクロネコ怪人を捨石にするとは・・・!なにごとですか!!」

ビシュムは激昂してそう言う。

だが、それを意にも介せず、ビルゲニアは嘯く。

「やつとライダーどもの力の差は明白。それも二匹相手となれば、まず勝てないでしょう・・・それならば、捨石とするのが当然ではありませんか?」

「何を・・・!」

「まぁ、よい!―――しかし、そこまでライダーを追い詰めながら、なぜ逃がしたのだ?」

ビシュムを静止して、ダロムがそう言うと、ビルゲニアは苦笑して言った。

「やつらの力はとくと分析しました・・・いつでも消せますよ。」

そう言うと、ゆっくりと歩き出し、そして自嘲の色を持つ言葉を吐く。

「それより・・・あの程度で世紀王を名乗るとは・・・ゴルゴムも地に堕ちたものですなぁ・・・?」

「貴様ぁ・・・愚弄する気か!」

その言葉に、三神官は目をむく。

しかし、それも意に介せず彼は続けた。

「いえね・・・同じ日食の日に生まれたのにもかかわらず、3万年早く生まれたばかりに、私には世紀王たる資格がない・・・その運命を嘆いているのですよ・・・クックック・・・」

その言葉に、我慢しきれなくなったバラオムはビルゲニアを叱責した。

「下らん無駄話をしている暇があったら、仮面ライダーを倒してこい!!」

「力押しばかりではライダーどもには勝てませんよ。頭を使わなくてはねぇ・・・」

ビルゲニアがそういったとき、唐突に声がした。

「まったくそのとおりです。彼らは力押しで何とかなる相手ではないのです・・・」

見れば、背広を着た男が、こちらに近づいてくるのが見えた。

「―――何者だ?」

すぅ、と目を細めて、ビルゲニアはその男に聞いた。

「―――私は・・・」

「『蝙蝠』殿、何の御用ですか?」

ビシュムが彼の言葉を防いで、そう言った。

「おやおや、つれないですね。折角、策をお持ちしたと言うのに・・・」

―――それは、『蝙蝠』。

ビシュムが言ったとおり、正しくその男は、ネメシスの幹部怪人『蝙蝠』だった。

「同盟の為の訪問でしたが・・・興味深いですねぇ・・・どうです・・・?あなた方、一口乗りませんか?」

『蝙蝠』が、不気味にそう言うと、ビルゲニアが不敵に笑い、そして・・・

「よろしい。それに私も一つ乗せてもらおうか?」

慇懃にそうもらすと、『蝙蝠』に近づいていく。

「ありがとうございます・・・では、作戦について説明します。ついてきてください・・・」

そう言うと、『蝙蝠』は闇に溶け、ビルゲニアもまた妖気と化して消えていった・・・



ディアブロキャンプ跡 光太郎の倉庫

そこは、光太郎が私的に使用している倉庫だった。

以前から、自分の養父・秋月総一郎が借りていたところで、光太郎はそれを譲り受けていた。

そこには、工具や食料品、そしてバトルホッパーなど、戦いのために必要な物が隠されていたのだ。

「いてててて・・・もう、大丈夫だ。」

腕に包帯を巻き終わって、榊はそう言った。

光太郎も、腕と足に大きな打撲を負った。

「なんなんだ、あいつ・・・」

「わからない。しかし・・・あいつは、今までのゴルゴムの怪人とはどこか違う。氷のような眼差しとすさまじい殺気・・・侮れない。」

光太郎はそう言って、薬箱を戸棚にしまった。

「さて・・・これからどうする?おやっさんとこには、まだ戻りたくないんだけど・・・」

「そう・・・だな。傷がいえるまで待たないと、みんなに心配させるからな。」

「ああ・・・」

おやっさんは戦いを離れ、秋子や杏子たちは彼らの正体をまだ知らない。

ここで、下手に姿を現せば、正体が知れてしまう。

それは防ぎたかった。

―――しばし。

することもなく、かといって何かいい考えが浮かぶわけでもなく、ただ時間だけが過ぎていった。

ガシャン!

そうした時、ガラスをぶち割って何かが部屋に飛び込んできた。

榊は、すぐさまそれに近づく。

「―――矢文?」

そう呟いて、鏃についた紙を開く。

そこには、きれいな・・・しかし、温かみのない文字で、こう書かれていた。

―――機械の生み出せし嵐が破壊した街で待つ。
                ネメシス幹部怪人『金狼』


「「―――!!?」」

瞬時に理解する。

彼らは、エリアルベースからの連絡で房総南部の壊滅が、怪獣機械の仕業だということを知っていた。

二人は、すぐさま立ち上がると、それぞれ上着を羽織り、バイクにまたがった・・・



―――そして、冒頭の時間軸へと戻る。

「悪しき世界のページを繰るのは、貴様たちではない!陽光戦士カイザード、見参!!」

赤き陽光の戦士は、叫びとともに地に降り立つ。

『ムッヒョォオオオオオッ!!』

クモライオンは、そう叫んで桃色の糸を吐く。

それは、一瞬前までカイザードの立っていた地面をえぐり、そして消えた。

ツインテック・・・リボルバー!!

ガガガガガガガガガガガッ!!

銃身は音を立てず、地面が巨大な炸裂音とともに裂ける。

戦車をも一撃で大破させる銃弾が、大地をえぐり、瓦礫を砕き、そしてクモライオンにもいくらか突き刺さる。

だが、それは幾分かは利いているのだろうが、傍目には・・・

『ムフォーーー!!!』

まったく、利いているようには見えなかった。

「チィ・・・!なんて化けもん作りやがる!」

「ハハハハハ・・・単純な戦闘兵器としてなら、私のような幹部怪人をもしのぐレベルに調整してある。苦しめ・・・」

サディスティックな笑みを浮かべ、『黒蛭』はそう言った。

「チィッ!!一気に決めるぞ・・・
太!陽!光!・・・グロストブラスタァァァーーー!!!

腕に集まったエネルギーが、収束し・・・

赤から、黄色、緑・・・そして白く昇華する。

腕を組み、振り下ろす。

すると、同時に両腕から・・・

グワッ!!

放たれたそれは・・・

クモライオンに突き刺さり、その瞬間、全てを白熱させ・・・

砕けた!

ズガガガッァァァッ!!

吹き飛ぶ・・・!

カイザードは粉々になったクモライオンの残骸を見つめ、『黒蛭』へ向かって毒づいた。

「さぁ・・・次はてめえだ!降りてきやがれ!!」

しかし、その言葉を委細気にせず、彼は言った。

「ふ・・・その程度で、その化け物を倒したと思っては困る。表に出ている遺伝情報は二つだが・・・原生生物の情報を混ぜ込んだ特注品だ。そうれ、見ろ。」

その言葉どおり・・・

バラバラに砕けたはずのクモライオンは・・・

少しずつ固まり、寄り集まり・・・

元の形へと還ろうとしている。

そして、一瞬後。

以前と同じ姿で・・・

『ムゥヒョォ・・・・』

その化け物は立っていた。

「チ・・・ふざけやがって・・・!」

憎しみを封じ込めた、その言葉を吐いて・・・

再び、虚は拳を構えたのだった。



そして、榊たちはその町に着いた。

転がる残骸。

そして、何を処理したのだろうか・・・

ひどいにおいが・・・

死臭(・・)がした。

「―――ひでぇ・・・「テンカイ」のせいで、ここらが壊滅したって聞いてたが、これほど・・・」

「いや、おかしい。ニュースでは、この辺りに被災者キャンプがあったはずだ。」

榊にそう言って、光太郎はあちらを指差した。

「あっちに光が見えた。行ってみよう。」

そう言って、光太郎は歩き出した。

向かう先に、何が待つとも知らずに。



―――そこは、地獄。

渦巻く怒号と悲鳴。

そして、絶望と悲哀がこの空間を支配していた。

追われる人々が、あっという間に捕まり、次々と輸送トラックに詰め込まれている。

逆らうものは、殴り殺され・・・

そして、証拠が残らぬように投与された液体によって、文字通り、溶けて消えていく。

警察も無力だ・・・

一人、哄笑をあげる人物が居た。

「わははははは!もっと捕まえろ!われわれの目的のために、人間が必要なのだ!」

男は・・・カーキ色の軍服に身を包み、その瞳は・・・シャドーを描いたかのように濃く隈取りがされている。

「クククククク・・・下らぬ人間どもが、我が組織の役に立てるのだ・・・ありがたく思え!」

相当興奮している。

それでいて、目からは酷薄な色・・・そして、力を絶対視するもの独特の、ギラギラした色が浮かんでいた。

人々を追うのは、銀色のボディと仮面をつけた男たち・・・

ガイボーグと呼ばれる、ネメシスの戦闘員どもだ。

「―――ふん!詰まらん・・・まぁ、単なる材料集めだからな、この作業は・・・」

誰に言うともなく、(もっとも、今までの哄笑もそうだろうが)男は呟いて輸送トラックの中を覗き込む。

そこには、おそらく薬をかがされているのだろう。

拘束され、猿轡をつけられた街の住人たちが、眠っていた。

「さて・・・『黒蛭』も今頃は所定の行動に出ているだろう・・・よし、貴様ら!撤収の用意だ!!」

「ハッ!」

ガイボーグたちが、彼の号令に従い、作業を取りやめる。

そして・・・

彼らが全て、輸送トラックに乗り込もうとしたときだった。

彼が表れたのは。

その男の名は・・・

「見つけたぞ・・・ネメシス!」

単発の黒髪、精悍な顔つき、そして憎しみをたたえた瞳・・・

彼は・・・そう、彼は・・・

「逃がさん!」

風祭真。

復讐者・・・真だった!



そうして、榊たちは光の下へとやってきた。

そこにあったのは・・・

ライトで照らし出される、二つの墓。

丁寧なことだ。

瓦礫のなかにうずもれながら、それには明らかにこう書いてあった。

―――陣内榊の墓

―――南光太郎の墓

と。

「―――ち、悪趣味な。」

その墓を蹴倒して、榊は叫ぶ。

「いるんだろ・・・出てきやがれ、ゾル・・・ビルゲニア!」

瓦礫のなかの、何とか無事だった樹木から、一人・・・二人・・・いや、三人の男が姿を現す。

それは、『金狼』、ビルゲニア・・・そして『蝙蝠』だった。

「久しぶりだな、黒狼。『蜘蛛』を退けたそうだな・・・ならば、俺も侮るまい。」

今まで、余裕をもってか、「私」と呼んでいた一人称を「俺」と変えて、『金狼』は言う。

そして、『蝙蝠』もまた言う。

「たいした失態を演じさせてくれましたね・・・前回は。許しませんよ・・・」

前回の、もったいぶった余裕ある態度から、悔しさをにじませたどこか余裕のない様子だ。

「手前ら・・・何をたくらんでやがる。」

榊は言葉に怒りを封じてそう言う。

「南光太郎・・・いや、仮面ライダーBlack!貴様の死に場所をあつらえてやったぞ・・・嬉しかろう?!」

ビルゲニアもまた、そう言って剣を構えた。

「黙れ、ビルゲニア・・・!人々を街のみんなをどうした!?」

「ふん、それは俺の知るところではない・・・だが、貴様らをおびき寄せるには・・・まぁ、絶好だったがな。」

「なんだと!仲間を見殺しにし・・・関係のない人まで巻き込むとは!断じて許せん!!」

油断せずに構えを取りながら、怒りの視線をビルゲニアに向ける。

榊も油断なく距離をとる。

そして、叫ぶ。

変・・・身!!

変身!

そして・・・ここでも、戦いが始まった!



「貴様ら・・・人々をさらってどうするつもりだ?!」

真はそう叫んで、纏っていた襤褸を脱ぎ捨てる。

そして、一声叫んで、異形の姿へと変わって・・・行く!

「ウォォォォォォッ!!」

そして、軍人・・・はニヤリとほくそえむと、ガイボーグたちに「行け」とだけ言った。

口には笑みが染み付いて、不気味さを拍車する。

そうしている間に、真は変身を遂げ・・・

改造兵士の姿を現した。

「貴様・・・名を名乗れ!」

変身した状態では話せなかったはずの真は、はっきりとそう叫んで、ジリジリと包囲を狭める雑兵どもを無視して、軍人の顔を見た。

「ふ・・・そこまで進化したか、われらと同じ存在・・・幹部怪人候補・・・真よ!」

そう言って、軍服の上着を脱ぎ捨てる。

「我が名は地獄大使・・・地獄からの使い!死を呼ぶガラガラヘビ・・・『毒蛇』だ!!」

バリィッ!!

叫んで、変わる。

ガラガラヘビを模した、不気味な色の鱗を持つ、怪人に!

「カァァァ・・・この姿になるのも、久しぶりだ・・・では、パーティーを始めよう。主客は貴様。まずは・・・前菜を味わっていただこう。ゆけ、ガイボーグどもぉ!」

合図とともに、ガイボーグは襲い掛かってきた。

「うぉぉぉぉぉっ!!」

獣の叫びと、人の叫び。

二つが交じり合った雄叫びを上げて真は突貫する。

振動する爪・・・ハイバイブネイルがガイボーグの仮面を引き裂き、中の人間の顔まで砕く。

幾人かに包囲されても・・・

「ガォォォッ!!」

雄叫びを上げ・・・100mを超えるジャンプ力で、そこから脱出し、上空から・・・・

そう、まるでライダーキックのごとき、鋭い蹴撃を放つ!

がしゃっ!!

そうして、また一体ガイボーグが爆散する。

腕についた無数の刃・・・スパインカッターを使って雑兵の骨髄を切り裂き、引き抜き、ごみのように投げ捨てる。

「ウヴー・・・この程度で・・・俺を倒せるものか!」

真は吼えた。

だが、彼は気付いていない。

後ろから迫る影が、なんであるのかを。

そうして、迫る影は、声を出す。

「ほうほう・・・やるようになりましたね、風祭君・・・」

あざけるような、その声音は・・・

そうそれは、改造兵士レベル3。

鬼塚だった。

そうして、鬼塚は、真と相似なその姿を現して真に言った。

「しかし・・・この短期間で、口を利き、しかもサイコブロック・・・精神制御を行うまで進化するとは・・・何がありました?」

「鬼塚ぁ・・・そうだ、俺は進化したんだ。あの電脳世界でな!」

「おやおや・・・やはり、拾い物は使えない、ということですかね?」

その言葉は、いまだ明かされぬ事物。

あのアイドネウスの戦いの後、真が経験したもう一つの戦い。

―――今は、真たちにしかわからない会話を・・・続けよう。

「あんな子供たちを巻き込んで・・・何を考えている!」

「―――子供?アレが、子供!ふはははは・・・愚鈍としか言いようがない。見たのではないですか?彼らは、われわれのような力は持っていないかもしれない。しかし、彼らのもつ力は、使いようによっては世界を支配しうる力なのですよ?」

「―――そうか・・・貴様らは、グリッドマンの力を、そんな風に利用しようと!」

激昂する真に、嘲笑・・・真にしかわからないシンパシーによるものだが・・・を返して、鬼塚は、

「どうでもいいことでしょう?今は・・・ね。」

そう言って、構える。

「さて、どこまでサイコキネシスを扱えるようになったか・・・見せてもらいましょうか!?」:

ギン!

一瞬、空間がゆがむ。

ガイボーグたちの残りは、警戒して手を出していない。

そして、『毒蛇』もまた面白がるようにこちらを眺めるばかり。

「一騎打ち、というわけです。面白い趣向でしょう?」

「だぁまれぇぇぇぇえっ!!」

真は、その腕に不可視の力場を纏わせて、鬼塚へと迫る。

グンッ!

鬼塚が手をかざす。

すると一瞬、たった一瞬だけ真の動きは鈍り、すぐに同じ速度で拳打を繰り出した。

ドゴォッ!!

「ガッ!?」

予想外だったのだろう。

鬼塚はその拳をまともに食らい、吹き飛ぶ。

瓦礫にうずもれると、一瞬遅れて立ち上がり、首をゴキゴキ鳴らしながら、

「やりますね・・・」

と言った。

「鬼塚よ・・・もうその辺にしたらどうだ?楽しみよりも、任務を優先させたほうがよいのではないか?」

後ろから、『毒蛇』が声をかける。

それに対して、肩をすくめると、鬼塚は「仕方ありません・・・」と呟いて、

「―――君の進化は見届けました。我々には、後100人ほど人間を捕らえなければならない任務があるのですが・・・さすがは、地獄さん。すでに済ましてしまわれたようだ。」

と漏らす。

「ふん!まぁ、いい。真よ、教えておいてやろう。すでに9000人もの人間を我々は捕らえ、本部基地への輸送を完了した。ふ、ふあはははははは!!任務の完了は、すでになされたも同じだ!」

哄笑する『毒蛇』に、真は明らかな憎悪を感じ、飛び掛る。

だが・・・

「ふん、所詮は出来損ないか。人間の生き死ににそのような感情を抱くとは・・・馬鹿メ!」

しゅん!!

右腕のムチを本物の手のごとく扱い・・・

それは。

ずばしゅぅ!

鋭い刃物のごとく、突貫する真の胸を切り裂いた。

「ぐぉぉぉっ?!」

そして、『毒蛇』は輸送トラックの中のガイボーグに、「行け」とだけ言う。

真は苦しげにうめくと、立ち上がり、トラックへと向けて失踪を始めんとする・・・が。

「逃がしませんよ・・・まぁ、足止め程度ですが、楽しんでもらいたい。今日のこの場の主客はあなた。我々はメインディッシュ。さぁ、召し上がれ!!」

グワシャァッ!!

鉄拳が真のみぞおちに食い込む。

しかし、すぐに回復すると、真はばく転で後ろへ下がる。

そこには、『毒蛇』がいて・・・

「グハァァァ・・・」

そして、不気味な色の毒霧が真を襲った!

「がぁぁっ?!」

その霧に苦しむ真に、まるでゴムのおもちゃのように、『毒蛇』の腕が伸びて巻きついた。

「クククククク・・・夢を見るか?」

そう言うと、『毒蛇』の目が輝く。

「そぉれ・・・」

「く!」

その目の光に誘われるかのごとく、幻・・・そう、幻と確かにわかる映像が目に浮かぶ。

「・・・愛!くっ!貴様ら・・・・・・!」

死者はよみがえらない。

決して・・・

それを知っている真は、激昂する。

一瞬でその幻影は消え・・・

そして、目には手をかざす鬼塚の姿。

「食らえ!」

ごぅ!

空気の固まりが、まるで砲弾のごとく真の体を襲う。

「グゥゥゥ・・・」

いつの間にか、『毒蛇』のもう片腕も、体に巻きついて・・・

身動きとれず、間断なく訪れる幻のせいで、精神の集中が出来ない。

―――このままでは・・・!

真がそう思ったとき、トラックが動き出す。

だが・・・

突然トラックは動きを止め、そして座席からガイボーグがたたき出される。

表れたのは・・・

それは。

「見つけたぞ、ネメシス!」

叫んで現れたその男は、剛!

ガイファード、剛だった!

「加勢するぞ、そこのやつ!鎧気装!

一つ叫ぶように言って、七星の気を集め、変身する。

そして、ガイファードは苦しむ真を救わんと、拳を構えて走り出した!!



黒狼たちは苦戦していた。

今夜は新月。

暗闇の中で、本来は役に立つはずの漆黒のボディも、相手が改造人間では意味を成していない。

しかも、敵の戦力は、撹乱を得意とする『蝙蝠』、遠距離戦を主とする『金狼』・・・

加えて、剣と盾を持ち、近距離戦を行うビルゲニア。

正直、俄仕込みにしてはいい連携だ。

―――追い詰められていく。

黒狼はそう感じていた。

「ビルセイバー・・・ダークストーム!!」

「フィンガーミサイル!!」

嵐が彼らの動きを止め、ミサイルが着弾する。

『金狼』は・・・

新月であるせいだろうか、以前のような力は感じられない。

だが、こちらも黒狼はおなじく力を半減させているし・・・

なにより、ダークストームを足止めに使うビルゲニアのために、ミサイルを打たれっ放しになっている。

「くそぉぉっ!」

黒狼は一声叫んで、空へと跳んだ!

が・・・

「クハハハッ!逃がすと思いますか、黒狼!」

『蝙蝠』がその翼で忍び寄り、一撃食らわせる。

落ちていく先には、ビルゲニア。

「食らえ!」

斬!

強烈な斬撃が、間一髪のところを過ぎていく。

落ちる途中で姿勢を変えたのがよかった。

「ふん・・・確かに、腕を上げているようだが・・・いささか、戦力不足だな。つまらん。」

『金狼』はそう言うと、もう一斉射フィンガーミサイルを放つ。

そして・・・

黒狼が、Blackに囁いた。

「―――分散させないと、勝ち目ないぜ・・・」

「確かに・・・」

関節から煙を出して、Blackは言う。

「なら、俺は・・・ビルゲニアをひきつける。」

「へっ・・・わかってるさ。俺は、ゾルとあのコウモリ野郎を叩く!」

そう言って、黒狼は叫ぶ!

「ルガァァァァァァァァァッ!!」

Blackも!

「バトルホッパー!」

すぐに現れる彼らの愛車は、ゾルのミサイル攻撃を巧みによけながら二人の下へとたどり着く。

「よぉし・・・いくぞ、ルガー!」

「ハァッ!!」

それに飛び乗り、彼らは去り行く。

ひきつけるため、に。

「ふん・・・逃げられると思っているのか、ライダー!?」

ビルゲニアが言うが・・・

『金狼』は勤めて冷静に言う。

「姑息な罠だ。行くつもりなら止めぬが・・・」

それにビルゲニアもまた冷静に返す。

「だから・・・ですよ。私はひとりでもBlackを圧倒することなど造作もない。ならば、追うのが筋というものだろう?」

「ふむ・・・一理あるな。ならば、『蝙蝠』・・・お前は黒狼を追うか?」

『金狼』の言葉に、『蝙蝠』は答えて、

「いいでしょう・・・しかし、あなたはどうするつもりです?」

と返す。

「俺は・・・ふむ。折を見て、苦戦しているほうに加勢するとしよう。」

そう言った時、ビルゲニアは音もなく妖気と化しBlackを目指し、『蝙蝠』もまたその翼をもって黒狼の逃げたほうへと向かう。

―――場には、『金狼』のみが残る。

そうして、『金狼』は口を開いた。

「・・・仮面ライダー、か。」

ボソリと。

言って辺りを見回す。

変身を解いて、タバコに火をつけた。

深い因縁だ。

元はといえば、仮面ライダーを生み出したのは自分が元いた組織・・・

彼にとって、ショッカーが全ての発端だった。

ナチスドイツの流れを汲む暗黒組織。

多くの元SS隊員と同様にイスラエルの諜報機関「モサド」に追われていた彼は、庇護を求めてその組織の門を叩いた。

ショッカーの目的は、世界征服。

そのはずだった。

―――なぜだろうな。

一人つぶやく。

首領の言葉を思い出す。

自らが改造人間と化したときに、その言葉を聞いた。

『改造人間が世界を動かし、その改造人間を私が支配する。』:

と。

何時からか・・・

なぜだろうか、その言葉に真実味が見られなくなったのは。

確かに自分は、世界征服の尖兵として戦った。

敵を倒した。

多くのものを、自らの策略で追い落とし、攻め、殺していった。

だが・・・

なぜだろう?

『仮面ライダー』という存在が現れてからの首領は、まるで・・・

その時、唐突に気配が生まれる。

―――まるで何かね・・・

「?!」

その声は紛れもなく、懐かしき首領の声。

―――ふふふふふ・・・私はメタガイブル・・・問いかけるものなり・・・

――――汝、疑問に思うがよい。この世界を。全てを。不幸と猜疑と嫉妬と妄執と・・・

―――――あらゆる”負”がこの世界に蔓延することを・・・

その声は紛れもなく、首領。

悪の意思そのもののようだった、あの首領だ・・・

その声は、哄笑を残して消え去る。

その声に、かつての自らの主と同じ声に。

言いようのない戦慄を覚え、『金狼』は・・・ゾルは、その場に立ち尽くしていた・・・



そこは、町から大分離れた場所。

草木一本ない、採石場の真ん中だ。

黒狼と、『蝙蝠』は、そこで対峙していた。

「ふふふふふ・・・この何もない闇ならば、私のような能力を持つものを倒せる・・・とでも思いましたか、黒狼?」

「ふん・・・んなわけあるかよ?ここなら、誰にも迷惑がかからねえ、ってことだっ!!」

そう叫んで、黒狼は跳ぶ。

愛車ルガーソーダーとともに。

「食らいやがれ、黒狼双銃撃ダブルガン!!」

連続して放たれる銃弾が、『蝙蝠』を狙って放たれた。

「『蜘蛛』と、あの女はどうした!!」

ドラグーンのごとく、拳銃を放ちながら疾走する黒狼。

それを飛翔して追う『蝙蝠』に彼は問う。

「ふん!『蜘蛛』は貴方に力を奪われた咎で反省中です!『蛇』は・・・!」

『蛇』は、この任務を拒否していた。

人間狩りをし、その上ライダーや他の邪魔者を一つ所に集めながら、分散させる・・・

下手をすれば逆に力を結集され、倒しにくくなるこの作戦に反対だったからだ。

そして、『蛇』が来ない代わりに・・・

「その代わりに鬼塚が来ています!貴方のお仲間・・・真とか言う小僧は今頃どうなっているでしょうねぇ!?クハハハハッ!!」

「なんだとぉ!!黒狼狙撃脚撃スナイパーキック!!」

黒狼は、ルガーの体を蹴り・・・

ざしゅう!

鋭い蹴りが虚空を薙ぐ。

再びルガーの背中に飛び乗り、黒狼は疾走する。

幾度も幾度も放たれる超音波攻撃と、時折襲い掛かる牙と爪をかわしながら、反撃のチャンスを狙っているのだ。

「それにしても・・・本当に前回はよくやってくれました!私の目論見を全て打ち砕いて、その上『蜘蛛』の力まで奪うとは!」

怒りと憎しみをにじませて、『蝙蝠』は叫んだ。

「貴方は殺します!今、この場で!!真空断裂斬!!」

「殺せるもんなら殺して見やがれぇ!!」

空中から、今までよりも高速の斬撃が放たれる。

それは、技の名どおりに真空波でも起こすのだろうか。

地面をえぐり、黒狼とルガーの装甲を傷つける。

黒狼はそれをかろうじてよけながら、またルガーを使って変幻自在に地面を、空中を駆け巡った。

地面には、ルガーがつけた傷跡がくっきりと残り、黒狼はまた跳ぶ。

そして・・・

ガツッ!!

一撃が『蝙蝠』の背中に打ち当たる。

「ぐぁぁぁっ?!」

怯んだ!

今が好機であることは、誰が見ても明白!

「いまだ!
黒狼――――――マッハッキィィィィィィィィィック飛翔音速脚撃!!」

ルガーが加速する。

今までで最高の加速度で。

そこから飛び上がり、黒狼はそう叫んだ!

この技は、仮面ライダーV3・・・風見志郎から借りた技である。

マッハキックとは、ライダーマシンの車輪や怪人の出す竜巻、ジャイアントスイングなどの高速回転を利用して飛び上がり、空中を飛ぶ敵を的確に捕捉するための技だ。

ギュラララララララァァァァァッ!!

そんな音が聞こえそうな回転を見せて。

「キィィィィィィィッ?!」

『蝙蝠』は高い声を出しながら、高速で逃げ回る。

そんな『蝙蝠』を黒狼は全力で追う。

時速は双方とも400km/hは出ているだろう。

そして、黒狼が。

夜を舞う蝙蝠に追いつく。

その牙は、狼の牙。

狼の牙は、やすやすと蝙蝠の翼を切り裂いた!

ズシャァァァァァッ!!

たった一枚・・・4枚の羽のうち一枚が損傷する。

だが、それは彼にとって致命的。

バランスを崩す彼を、黒狼が見逃すわけがなかった。

「行くぜ!
黒狼キィィィィィッック衝撃脚!!」

ドガシャァッ!!

その蹴りは、すかさず身をかわした『蝙蝠』にはクリーンヒットしなかった・・・

だが、肩を掠めて羽にダメージを与える。

「グゥゥウオオオオオッ!!貴様、貴様ぁぁっ!!」

今までの紳士的な態度はどこへやら。

『蝙蝠』は悔しげに、憎しみを込めてそう叫ぶ。

そして・・・いまだ無事な二枚の羽をはためかせ、飛び上がる。

「次こそはぁ・・・必ず、殺してやる!!」

負け惜しみのようにそう言って、彼は飛び去った。

その姿を見ながら、黒狼は一言―――

「こっちこそな・・・くそやろうどもが。」

そう、呟いたのだった。



「奥義、風花乱舞!」

風に舞う花びらのごとき、華麗な蹴り技が『毒蛇』を襲った。

それはよけられるが、『毒蛇』もまたかろうじてよけた風体だ。

「貴様・・・何者だ!」

「ガイファード!貴様らを滅ぼす、闘神だ!!」

絶え間なき連続攻撃を食らわしながら、ガイファードはそう言った。

「とぅっ!」

一撃、ボディに入る。

華麗に、豪胆に、ガイファードの演武は冴え渡る。

鬼塚のテレキネシス攻撃を巧みに避けながら。

『毒蛇』の伸縮自在の体から繰り出される攻撃を、流れるような動きで受け流し。

そうしてまた一撃、鬼塚を吹き飛ばした。

「人間をさらって、何をするつもりだ!」

ガイファードは、先ほどの真と同じ問いを『毒蛇』へと向ける。

「ふうむ・・・知りたいか?よかろう・・・千年の秘石を作り出すための贄よ、こやつらはな!」

叫んで、その腕のムチが回転を始める。

「それ以上は言えぬ!知りたければ、わしらを倒してみることだな!」

哄笑してそういう『毒蛇』。

見れば、真も立ち上がり、キッ、と鬼塚らを見据える。

ガイファードはそれを見ていった。

「そうか、お前がもう一人の・・・ネメシスと闘ってる男か!」

「・・・あんたは?」

ざ、と彼のそばに寄ったガイファードは言った。

「仮面ライダー黒狼・・・榊が言っていた。そういえばわかる、とも。」

「そう・・・か。わかった。」

真はそう言うと、完全に立ち上がる。

「いくぞ、『毒蛇』・・・鬼塚ぁ!」

飛び上がる。

そのジャンプは優に100mを超えている。

真・・・真!ライダァァァァァッキィィィィィィィック!!

直上から、落ちるような蹴撃が襲い、鬼塚を捕らえる。

「チィィッ!」

鬼塚は、避けきれぬと悟ったか、その超能力で彼の動きを止めようとする。

だが、それは一瞬。

その一瞬でも、破壊力の数割を減殺するには十分だったが・・・

しかし、遅かった。

それは、鬼塚の右の肩口を捉え、砕いた。

「ぐぅぅぅぅぅっ?!」

「おのれぇ!」

回転するムチが『毒蛇』の手から放たれ、そして無防備な真を襲う・・・

が、それはガイファードが体に届く一瞬前に打ち払った。

奥義、撃竜衝!!

ガイファードは、鎧気装と同じような形で、体を舞わす。

両手をクロスさせ、十字に切って・・・

それは、気の刃と化し、『毒蛇』を襲う!

ドォォン!!

「ぐぉっ!?」

その威力に、彼もまた吹き飛ばされる。

「おのれぇ・・・」

『毒蛇』は毒づき、鬼塚に視線を這わす。

「鬼塚・・・撤退するぞ!」

「心得ました、地獄さん・・・不足分は、簡単に手に入るレベルです。少なくとも・・・ね。」

鬼塚がそう言うと、空間がゆがむ。

「ふふふ・・・われわれの目的は九分九厘達せられました。精々悔しがるといいでしょう・・・この後に起こる事態を見つめながら・・・」

そうして、二人の姿がぼやける。

―――ヴン、という音のみを残して、『毒蛇』と鬼塚は虚空へと掻き消えた・・・



「クククククク・・・どうした、カイザードとやら。手も足も出ないか?」

『黒蛭』の言葉が、いちいちカイザードの鼻につく。

「チィ・・・なめやがって・・・」

カイザードは、カイザービームを放って、そして再び駆ける。

クモライオンは相も変わらず、ダメージを負っているようには見えなかった。

「感情をなくした兵士は、死の恐怖も感じず向かっていく。再生するならばなおよい・・・祖やつは私が命じぬ限り、半永久的に貴様を追う!理想の兵士というやつだよ・・・」

笑う。

それが癇に障る。

―――やめろ。

――――笑うな。

―――――俺を怒らせるな!

虚は心の中で激昂する。

昂ぶり、弾けそうになる精神を押さえ込んで、カイザードは懸命に戦い続けている。

コンバットスーツは確かに、異常空間では絶大な攻撃力と防御力を誇る。

それこそ、異常空間ならば、素手でスーパーロボットを破壊することも可能だろう。

だが、まともな三次元空間の中ではその力は激減する。

集団戦を行う際や、市街戦なども想定されうるため、リミッターが掛けられているのだ。

それが、コンバットスーツの弱点の一つ。

よって、この瓦礫の町での戦いは・・・

「このままでは・・・!?」

虚が叫ぶ。

クモライオンの糸と、そして炎が虚を襲う。

辛うじて避けて、体勢を立て直し、カイザードはそれを呼んだ。

「サン!ファルコン!!」

数十秒もせぬうちに、彼の元へと一台の大型バイクが現れる。

それを駆って、クモライオンをひき潰さんと突貫する。

だが・・・

『ムヒョオオォォォッ!!』

吐いた糸が車輪に絡まる。

如何に異常空間対応の超次元戦闘用マシンでも、地面を走っている異常物理法則からは逃れられない。

転倒する一瞬、カイザードは飛び上がり、そして虚空から剣を取り出し叫ぶ。

ソーラーブレード!
カイザー、エクスティンクション!!

ぐわっしゃぁっ!!

居合いのごとく横薙ぎにし、加えて上段から斬撃が訪れる。

しかし、十字に断ち割られ、普通なら簡単に死ぬはずの物体は、まるでビデオを巻き戻すように元に戻る。

「く!これでもだめか!!」

虚は悔しげに叫んだ。

「オノレ・・・」

クモライオンが近づき、決定的に戦局はあちらに傾いていた。

死ぬかもしれない・・・そう思ったときのことだった。

ヒュォォォォ・・・

ビスビスビスッ!

グワッ!

突然の冷気が場を襲い、そして数条の赤いレーザーがクモライオンに突き刺さり、爆発する。

それすらも、利いてはいないようだが・・・

それをしたものが誰かはすぐにわかった。

「悠子、シャリバン!!」

虚が叫ぶ。

見れば、そこには確かにシャリバンとヴァーティセスがいた。

「今です、カイザード!」

シャリバンが叫ぶ。

叫びとともに。

カイザードは駆け出し、クモライオンの体を持ち上げる。

「悠子、行くぞ・・・しくじるなよ!!」

ヴァーティセスは、一瞬でカイザードの言いたいことをわかったようだ。

長年の経験であろうか?

「うん、わかってる!」

カイザードはその言葉を受け取ると、全力でジャンプする。

「冬の嵐よ・・・闇を凍てつかせろ!!」

猛烈な嵐が、カイザードと、クモライオンに襲い掛かる。

すぐに、カチンコチンに固まったクモライオンを、さらにカイザードは抛る。

「今だ、シャリバン、船を呼ぶぞ!!」

「オウ!
グランドバース!!

ギガファントーーーームッ!!

二人の叫びが天に木霊し、空間を裂いて二隻の船が現れた。

バースビームッ!!

放たれる、紅き光弾が・・・

ファントムバスター!!

白き閃光が・・・

クモライオンに収束する。

ガガガガッ!!

そして・・・

さしもの、クモライオン転生体も。

分子レベルまで蒸発したのでは、再生の仕様もなかった・・・

それをも見て、『黒蛭』はうなづくと、たった一瞬で姿を消し、どこかへと消えていったのだった。



その頃。

漆黒の闇を抜ける影があった。

深緑の仮面。

紅いマフラー。

そして、そのマフラーにも負けぬほど、赤い朱い真紅の腕。

それは、白い機馬を駆って、闇を駆ける。

―――見えた!

影がそういった時、闇の向こうには紅く光るベルトが見えた・・・



そして、Blackは・・・

「貴様の動きは全て見通しだ!」

冷酷な声が響き、Blackは身構えた。

「・・・!」

ビルゲニアの斬撃が彼を襲う。

柄を止め、盾を防ぐ。

「―――ビルセイバー・・・デモントリック!」

ヴン・・・

ビルゲニアがそう言って剣をかざすと、ビルゲニアの姿は二つに割れる。

それが幾度か続き・・・そして、6人のビルゲニアが現れた。

「ハァッ!」

「フン・・・!」

同じ声が六つある。

ビルゲニアたちは、口々に叫んでBlackに襲い掛かる。

一人がマントを脱ぎ放つ。

それが、Blackに覆いかぶさると、闇がさらにその色を増す。

彼を囲んで、ビルゲニアの集団はグルグルと回りだす。

――― 一体、どれが本物なんだ?!

「マルチアイ!!」

しかし、Blackの赤外線やX線すら見分けるその優れた視力も、本物を見分けることは出来なかった。

「だめだ!」

信じがたい、という声を出してBlackは叫ぶ。

その間にも・・・

一人が切りかかる。

それを防いでいる間に、もう一人が切りかかる。

あるときは一人ずつ時間差で、あるときは6人ともに襲い掛かる。

幻術とは思えない。

ダメージもあれば、実態もあるというのに・・・

Blackは困惑する。

「くそっ!」

「とどめだぁ・・・・!!」

じりじりと近づくビルゲニア。

その時、Blackの脳裏にある映像が思い浮かんだ。

こいつは闇だ。

夜の闇だ。

人の心を惑わし、不安にさせる夜そのものだ。

夜の闇を照らすのは、朝の曙光。

ならば、たとえ自分が黒き太陽といえども。

黒き闇を打ち破る!

「―――よし!!キングストーンフラッシュ!!

カァッ!

エナジーリアクターが灼熱する。

猛烈な光が、あたりの昼の明るさへと引き戻す。

6人のビルゲニアは、影が払われ、闇が吹き飛ばされ・・・

そして、一人に戻る。

猛烈な光の本流に、ビルゲニアは苦しんでいるように見えた。

「今だ!!ふん・・・!」

腕を引き絞り、力を溜め込む。

足を屈伸させ、運動エネルギーを少しでも上げていく。

「トァッ!!」

跳ぶ。

足にエネルギーが収束し、赤き太陽の輝きを生み出した。

ライダァァァァッ!キック!

づがぁす!!

それは、ビルゲニアの盾に受け止められる。

「ふんん・・・!」

そのエネルギーを受け流して、ビルゲニアは・・・

無事だ。

「キックが利かない?!」

「俺を本気で怒らせてしまったなぁ・・・地獄に叩き落してやる!!」

「こいつ・・・不死身か?!」

ビルゲニアは怒りもあらわに、剣を構える。

Blackも同様に構える・・・

「ハァァッ!」

「トォゥ!!」

それぞれが同時に剣を、拳を繰り出そうとしたとき!

一つの影が動いた。

それは、深緑の仮面。

仮面ライダー2号だ!

「間に合ったか!トォォォウ!!
ライダァァァァァ回転キィィィィィック!!

ズガシャァッ!!

「がぁぁっ?!」

突如出現した2号ライダーの放った蹴撃は、ビルゲニアを吹き飛ばす。

好機と思われたその時。

突然、唐突に、ビルゲニアの姿が消える。

そして、虚空から声が・・・

―――仮面ライダーBlackよ・・・今回はほんの挨拶代わりだ!次に出会ったときは必ず殺してやる故、首を洗ってまっているがいい!!

恨みの篭るその声音に、Blackは呟く。

「2号先輩の必殺技を受けて無傷とは・・・」

―――その呟きを最後に・・・

この夜の長い戦いは終わりを告げた・・・



「みんなここにきていたのか・・・」

残された人々を助けるために奔走していた虚は、榊ら、真らのグループと出会ってそう言った。

「全くだぜ・・・連中の目的は、きっと・・・」

「そうだな、おそらくわれわれ全員のデータ入手と、あわよくば抹殺・・・」

榊と光太郎の言葉に、真が言う。

「そして、『毒蛇』・・・地獄大使と名乗った男が言った、人間狩りだ。」

一文字はその言葉に、「やはり生きていたか・・・」という貌をした。

「それだけではない。ブラック将軍も、『黒蛭』と名を変えて生きていた。」

虚の言葉に、みなが沈黙する。

―――そして、虚は一つの決心をしていた。

――――アレを見なければいけないときが・・・近づいているようだな。



ゴルゴム地下神殿

「大口を叩いた割りに、情けなかったな・・・貴様ら。」

バラオムがそれ見たことか、という顔で言った。

「まぁ、よいではないか・・・われらでも把握しきれぬ、仮面ライダーどもの力・・・それらのデータが手に入っただけでもな。」

ビルゲニアは、そんな大神官どもの言葉など気にしていないという風で立っている。

「『蝙蝠』殿。次の策は・・・?」

「―――」

ビルゲニアの言葉に、『蝙蝠』は沈黙する。

そして・・・すぐに口を開いた。

「―――あの、柊とか言う男を殺しましょう。やつが、黒狼どもを指揮している可能性が高い。」

「よかろう。その線で・・・」

そう言うと、ビルゲニアも『蝙蝠』も闇に溶け消える。

―――狙われているのは、虚。

その事実だけを残して―――



某所

「なんだと・・・首領が、生きているだと?」

「あの方は、―――とか言う組織の首領の一部になったのではないのか?」

「しかし、あの声と、あの気配は紛れもなく・・・」

『ヌウ・・・』

聞き覚えのある声がいくつかして、そして消える。

次の戦いは、間近・・・

続く





次回予告

紅き復讐者は、決意を秘めて荒野に立つ。

そこに秘められしは、死か、生か。

古き記憶を呼び覚まし。

血と硝煙と、黒き記憶を揺り起こす。

闇が動く。

影が蠢く。

問いかける者とかつての四人の従者。

蠢くは・・・なにか?

次回、スーパーヒーロー作戦SPIRITS

「闇を抱く」

魂より語られし物語、今こそ語ろう・・・






あとがき

闇の中〜見つめてる〜♪

秋子さん「手を〜の〜ば〜し〜・・・掴み取れ〜君、求めるもの〜♪」

―――てなわけで、17話完了です。

秋子さん「で、なんでアギトを歌わなくちゃいけないんです?」

次回、黒の青年が出るからですよ。

別名黒ダミアンが。

秋子さん「は?」

関係あるんですよ。

ショッカー首領(デルザー大首領)・黒ダミ・白ダミとメタガイブルには。

しかも、悪霊のエネルギー(バダン首領)とか、JUDOとかとは関係ないDeath。

むしろ、アインストと関係あったりして。

秋子さん「どういうことです?」

次回を見てください。何時できるか知りませんが。

秋子さん「なんて無責任な・・・」

あー、ある程度納得できるように構成できるので、そんなジト目で見ないでくださいよ。

一ついえることは、裏設定に深くかかわってるということです。それが。

秋子さん「そうなんですか?」

はい。

秋子さん「そうですか・・・わかりました。では・・・」

また次回もこの番組で。

秋子さん「会いましょう」

シュワッチュ!!


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