―――それは、夢。
アツイノハナンダ?
コレハナミダ。
ああ、赤い紅い朱いあかいアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
血。
血。
ち。
チ。
チチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目の前には一面の血。
ああ、これはムカシ・・・
失った。
取り戻した。
奪い返した。
黒くて紅くて白くて・・・
闇に闇に影に骸に食われる喰われる喰らわれ消えて吸われて飲まれて溶ける。
ゆめゆめゆめゆめゆめゆめゆめゆめ夢・・・・
紅蓮の記憶。
漆黒の思い出。
純白の染み。
意図的に封じていた全てが、夢の中ではよみがえる。
白髪の青年・・・
青年?
いや、その髪の色は流れた血で紅蓮。
彼が何か言った。
―――全て、お前に託す。
緑の髪の・・・少女・・・
少女??
いや、緑の髪は乾いた血で漆黒。
彼女は呟く。
―――全て、貴方の・・・
その言葉は、心に刻まれる。
黒く蟠る闇が語りかける。
―――強情ですねぇ・・・貴方がたが隠したもの・・・その在り処さえ教えていただければ・・・
その、耳に障る言葉に、青年は強く返す。
その言葉は強い否定。
すると、蟠る闇は、少女に刃を突き立てる。
悲鳴。
青年は辛そうに貌を顰める。
少女は・・・力なく笑った。
―――どうしても、ですか?
―――無論だ!
その言葉を聴くと、闇は剣を振るった。
ごとり。
ごとん。
二つの塊が、地面に落ちた。
喉が渇く。
―――ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
酷い叫びが聞こえる。
誰の声だ?
―――ああ、それは・・・
それは自分の声。
目の前には、二つの首。
暗く悪魔が口をゆがめる。
―――このガキは、精々利用して差し上げます。安らかにお眠りを・・・♪
目の前が歪む。
ああ、自分の涙。
それは血のように熱く、紅く。
そして、意識が白く霞む。
―――霞んで、消えていく・・・
スーパーヒーロー作戦SPIRITS
第十八話「闇を抱く」
―――はっ!
虚は、ベッドの上で飛び起きると、周りを見回した。
いつもと同じ、自分のベッド。
―――ああ、またあの夢だ。
そうひとりごちて、起き上がる。
寝床の脇の、真珠色した液体を飲み干す。
不思議に七色に輝くその液体は、ひどく苦かった。
「・・・さて、今日も・・・」
生き急ぐように、始めよう。
そう思って、ベッドを降りる。
―――
ふと。
ふと気づくと、そこは異界。
紅き異相の空間は、無数の推奨と眼科医を抱えて、なお冷たく虚に押し寄せる。
目の前には、骨と植物でできた紅い玉が取り憑いたがごとき異装の魔神。
それは、彼を見据えるとこう語った。
『―――動き出せ。汝、力あるがゆえに、我に替わり物見となるべき者。汝の持つ智こそ力。その力を呼び覚ますときは近づけり・・・』
厳かにそう告げる魔神は、虚の考えを見透かすようにそう言った。
「迷うな、ということか?物見の王。」
驚きもせず、眦も動かさず、毅然として虚はそう言葉を出す。
逆に驚いているのは、ノイ=レジセイアと呼ばれた異形のほうである。
『ほう。我をも見知るか。異界の智を身に付けしものよ。』
「―――止せ、これは俺の知識じゃない。あの人のものだ。」
冥い表情で言って、虚は物見の王をにらむ。
『なるほど。確かに、我がこの始まりの地で敗れたは運命であったか。古き者たちの中から生まれていた萌芽。この宇宙を広げ、生命を満たすべき力をみすみす滅ぼしてしまうところであった。』
「わけのわからんことを言うな。それ以外に用がないのなら、疾く失せろ。」
その言葉に、若干の笑みを含んだ声でそれは言った。
『・・・その智、無駄にすることなかれ。我は物見。故に今は見守ろう。我の滅びを察して、時の彼方より来る二柱の神と遥けき宇宙の彼方より来る悪魔を滅ぼすのだ・・・』
「・・・なるほどな。・・・二柱の神などと言うものは知らん。だが、空より来る魔を滅ぼさんと欲するならば、俺をあの場へ飛ばせ。禁断の智が封印された、全ての解が出づる地へな・・・」
不機嫌さを覆い隠そうともせずにそう言うと、物見を名乗る魔神を見据えた。
『―――判った。なれば・・・』
そうして、しばし彼は飛ぶ。
彼の言う、全ての解が出づる地とは何か?
それを、語るべきときは今ではない。
虚が知ることは、我らの想像を超えるほどに大きい。
それは、今はヴェールに隠しておくべきものなのである。
―――NMS本社ビル・社長室
「チ・・・流石にエリアルベースの電子防壁は完璧ですか・・・」
空魔・・・『蝙蝠』はそう言って、ひとりごちた。
虚を抹殺すれば、あの連中など一捻り。
そう考えた彼は、虚をおびき出すための策をいくつか選んでいたのだが・・・
まず、誰かを人質に取る、という戦法。
これは、彼が天涯孤独であり、彼のパートナーも自分たち幹部怪人に匹敵する能力を持っていることから却下された。
彼の唯一といっていい一般人の知り合いである・・・水瀬家周辺の人間に手を出せば、彼でなく黒狼が釣れることだろう。
それはそれでこちらにとって利益になるわけだが、前回の戦い以降、『蜘蛛』に似た執着・・・黒狼を自ら倒すという欲求を覚えた『蝙蝠』には選べなかった。
もちろん、ICPO関連の人間を人質に取るなど・・・・論外だ。
・・・量産型怪人やゴルゴムの連中を街中で暴れさせるという案もあった。
だが、それは『金狼』の「今はまだ、我々が表舞台に出るときではない」という一言に、『蛇』をはじめ多くの幹部怪人が賛成したため、却下された。
彼自身や、彼の部隊セイバーに挑戦状を匿名で送る、という古典的手法もとったが、虚はそれを無視したし、逆にこちらの行動をプロファイリングされてしまう始末。
最終的に、エリアルベースの電子情報網をウィルスで混乱させることを考えたが、エリアルベース自体の電子防壁、そして世界中のさまざまなコンピューターやネットワークに出現する謎の「ロボット式自己進化型ワクチンソフト」のために悉く失敗に終わっていたのである。
「苦労しているようだな、『蝙蝠』殿。」
あざける口調で、その部屋に現れたのは・・・
そう、ゴルゴムの剣聖ビルゲニアだ。
「・・・そう、言わないでほしいですね。ビルゲニア殿。まったく。」
「ふん・・・良いことを教えてあげよう。エリアルベースに潜入しているゴルゴムの工作員からの報告だ。」
そういうと、いくつかのファイルを机の上に提示した。
「―――これは?」
「クックックック・・・やつは、あの虚とかいうガキは今あの移動要塞にはいない。突然、行方不明になったそうだ。」
「なんと!」
前回の港での戦い以降、いかに挑発しようと、正規の出動を除いてまったく姿を現さなかった彼が、独断で動いた。
「そしてな、奴が現れたのは・・・お前たちの計画にある『サイトγ』だ。」
「なっ!?」
1年後を目処に立案しているとある計画を知られていることよりも、何故そんなところに彼が現れたのかが不思議だった。
しかし、それは好都合だ。
『サイトγ』は、太平洋のど真ん中・・・イースター島などの島々と同様に、島への侵入を絶海は阻む天然の要害である。
別名を髑髏島と言い、奇怪な植物と奇形進化した異形の生物群が棲む魔境である。
「・・・あの地は、私や『蜘蛛』ら、生粋の幹部の管轄ではない・・・」
「ほう・・・」
「そのとおり。あのブロックは、我が管轄にある。」
そうして姿を現したのは・・・ブラック将軍・・・いや、『黒蛭』だった。
「・・・貴方ですか。」
「ふむ。あそこでは兵を動かしてもらうわけにはいかん。確かめたいこともあることだしな。」
『黒蛭』は、『蝙蝠』の言葉など意にも介さず、そう言い放つ。
「―――確かめたいこと?」
「なに、貴官らには関係のないことだ。ビルゲニア殿、それでよろしいか?」
威厳ある声でそういった彼に、ビルゲニアは苦笑を含んだ声で答える。
「まぁ、仕方がありませんな。何せこの情報も、彼の島に貴方が設えているコマンドサテライト群のお陰で手に入ったのですからな。」
「なんと、そうでしたか・・・『黒蛭』殿、なぜ直接こちらに回さなかったのです?」
「ふっ。何を言い出すかと思えば。我ら旧組織(ショッカー・ゲルショッカー)出身者は貴官らに嫌われていますからな。」
嘲笑を含めてそういった彼は、ゲルショッカー時代からの愛用品・・・いや、もしかすると帝政ロシアの将校であった時分から使っているのかもしれない・・・である古びた指揮棒を振る。
「―――そのような態度が、我々の不信を・・・ひいては、世紀末王様の不審を招いていると、ご存知ではないのか?!」
「ふん。百も承知だ。ならば、働きで示そうではないか。」
「ならば、あの島で兵を動かすことを黙認していただきたい。」
ギリギリと奥歯をかみ締めるように言う『蝙蝠』に、『黒蛭』は先ほどよりもさらに深い嘲りを浮かべて、
「それはできないと言ったはずですが?」
と言った。
それだけ言うと、『黒蛭』は踵を返す。
「一人や二人の侵入者があったところで、予定している計画は崩れん。あの地に踏み入ることなど、メタグロスの連中でもできんよ。下手に兵を動かし、G.U.A.R.D.の連中に気づかれるほうがよほど問題だ。それに・・・」
「それに?」
「―――ふ、今は言えんな。これも計画の布石の一つである。」
そうして、音もなくその姿は虚空に掻き消える。
カメレオンの能力を持つ彼ならではの力だ。
―――チ、なんて老獪なやつだ・・・
流石は、帝政ロシア崩壊後、ずっと闇の世界で暗躍し続けたゲルダムの指揮官ではない、と『蝙蝠』は思う。
「だが・・・今に見ていろ。必ず尻尾をつかんで見せる・・・!」
それは、彼への憎しみであったか、それとも虚や榊に向けたものであったのか?
それは、『蝙蝠』にも判別のつかないことであった。
―――『サイトγ』、海岸。
そこは、すでに異界であった。
砂は凶器。
いったん肌に刺されば、食い込んで抜けなくなってしまう奇妙な棘を持った砂・・・いや、それは擬態する生命。
生える草は凶暴で、人とて油断すれば丸呑みしてしまいそうだ。
「・・・想像以上に、ひどいところだ・・・」
虚はそう言って振り向く。
そこには、いまだ物見の王が付き従っていた。
「なぜ、ついてくるんだ?ここまででいい。」
そっけなくそういう虚に、レジセイアは言った。
『虚空より来る悪魔ども、そして二柱の神とその手下も汝を襲うやも知れぬ。精神のみの存在であれども、我は物見。この地において数十億の時を過ごした者。物の役には立って見せよう・・・』
「―――余計なお世話だ。まぁ、いい。早速・・・」
役に立ってもらおうか。
そう言って虚は走り出す。
砂浜から一気に、すぐに見える密林へと走る。
疾走する彼の目に、映るもの、それは・・・
「此間の木偶か!」
そう、そこに居たのは間違いなく、メタグロスの戦闘兵器メタルゾードだった。
「ひぃ、ふう、みぃ・・・全部で六体か。不味いな・・・」
量産型とはいえ、このタイプの怪人は相当強い。
「チ・・・レジセイア、お前に頼むのは癪だが、動きを止められるか?」
『易き事・・・」
精神圧が飛ぶ。
すでに、それは物質にも影響を及ぼすほどの強烈なものだ。
金縛りにあったかのように、一体が動きをやめる。
それを見計らい、虚は大地を蹴った。
「陽装!!」
カッ!!
閃光放って飛び上がり、紅の装束を身にまとった彼は、一体の頭と胸に一撃ずつ双銃を見舞う。
あっさり、それでそいつは動きを止めた。
「まずは一体!」
二体目の胴を砕く。
通常空間でなら、自分は間違いなくこの木偶どもを遥かに凌駕する能力を持っている。
そうカイザードが思ったときには、敵の数はすでに2体。
残ったものも、レジセイアが精神圧で握り砕く。
殆ど音もなく、メタルゾード部隊は敗れ去ったのだ。
無論、レジセイアの援護により、敵は殆ど攻撃することも叶わず、ただ彼とレジセイアに砕かれていっただけなのだが。
「さて・・・次は・・・」
そう彼が言ったとき、茂みの向こうから、黒い服を着込んだ青年が・・・
姿を、現した。
―――それを、見つめる影一つ。
黒き髪、黒き眼、黒き体。
その黒は、ただの黒ではない。
全ての色が交じり合った、黒。
無秩序に混ぜられて、混濁しきった色だ。
―――クククククク・・・やはり、ここに来たようですね・・・
その影は、そう言って虚を見る。
――――クククククククククク・・・まさかまさか、あの時のガキが、こうしてここまでたどり着くとは・・・
不気味な笑みを漏らしながら。
その影はゆっくりと、闇に沈んだ。
―――そうして、黒の青年は口を開いた。
「・・・悲しいですね・・・物見よ。」
『抜かせ。我らが主の意向を無視する愚か者。この宇宙に進化していくものが満ちていくことを見守ることこそ、我らが役目。』
レジセイアはそう言って、その青年を見据える。
「言うものですね・・・一旦は、人に絶望した身でありながら。」
『命は換わり変わり行くものである。故にこそ、我は過失と違反に気づいたのだ。』
―――何を言っているのだろう、この二人は。
黒い青年は、間違いなく自分の後ろにいるレジセイアと同等のものだ。
そのくらいに大きな力を感じる・・・が、その肉体が発する力は、人と変わりない。
それは、間違いなく人以外の存在であり、人の規範を超えた存在だった。
それが、目の前で繰り広げている会話。
それは、多くの隠されたものを持つ、彼にとっても理解不能なものであり、かつ、不可解な代物であった。
―――わからない。だが、こいつは・・・!
虚はそう考えるとほぼ同時に声を出していた。
「貴様・・・何者!?」
しかし、青年はにべもなく。
「―――宇宙の果てから来るものよ、今それを知る必要はない。もとより、私はあなたの知る智にはない存在です・・・」
だが、とその青年は付け加えて言う。
「貴方が、私のしようとすることを邪魔するのなら、私は貴方を許さない・・・」
髪をかき上げ、厳かにそう告げる。
『・・・我は貴様を認める気は更々と無し。加えるならば、貴様と対をなす者どもも認める気はない・・・!』
レジセイアは声に怒りの波動をにじませて告げ、黒の青年を見やる。
それを無視するように、彼はつぶやいた。
「闇は・・・宇宙の果てより来る悪夢は、すでに幾度も、形を変えてこの地を侵している。」
ほう、と息をつく。
それは、なんとも悲しみのこもった吐息。
「―――ショッカーと名乗った、あの者もまた、アレの端末。彼自身は、そういう存在とは知らないで・・・そして、アレの端末どもは、融合してさらにおぞましい存在へと変っている・・・そう、アレそのものと、さして変わらぬ異形に・・・」
そうして、続ける。
「人を闇に導こうとする意思は、アレより生まれ、アレに帰す。憎しみは常に人のものであり、それを消すことはできない。だが、その暗き意志は彼の者に力を与える・・・そうしてやがて、進みすぎたものは、その力と憎しみで、自らを・・・滅ぼす。」
ならば、と言って彼は・・・
「―――人は、人のままで、いればいい―――」
そう呟くと、彼はまるで微笑むように、憂えるように、粛々とその場を後にした・・・
それは、虚に予感を芽生えさせる。
自分は、やがて、あいつと戦うことになる。
そして、その場には、彼が言った・・・
『人のまま』ではなくなった者たちがともにいるであろうことも・・・
―――コマンドサテライトの向こう。
コマンドサテライトとは、ネメシスの偵察用小型ロボットポッドである。
彼らの据えた衛星とのリンクによって、その情報をいち早く設置したものの場所へ送る優れた兵器である。
小回りも利き、ステルス性を備えるその自律型ロボットは、すでに世界中のあらゆるところに配備され、人々の情報を奪っていた。
そして、今それを覗いているのは・・・
「フッフッフ・・・やはりそうなのか。ゾルの言っていたことは本当だったようだな。」
そう呟いたのは、『黒蛭』。
その貌には歓喜がある。
「クックックック・・・これは好都合だ。」
そう言って、豪奢な椅子に身を任せる。
「我らが首領は生きている。たとえ、違った存在と化そうとも。あるいは、その本体であろうとも。」
そうして、卓上のウォッカを呷る。
「どちらの組織に付くにしろ・・・我ら四人がここにいる意味は・・・薄れてきたようだ。だが、今はこの組織を、精々利用させてもらうとしよう・・・クククク・・・」
いつの間にか、その後ろには『金狼』、『毒蛇』、そして『海魔』の立体映像が現れている。
『我らの忠誠はただ一人。偉大なる首領ただ一人へ。』
『ならば、この組織の終幕を閉じるべきは我ら。』
『やがて来る崩壊の日。その日に、我らこそが・・・』
「フフフフフフ・・・」
『フハハハハハハ・・・』
『ガハハハハハハ・・・』
『フッフッフッフ・・・』
悪魔の哄笑が聞こえる。
それは、やがて来る事態への伏線。
張られた糸は、クルリクルリと絡まりながら、やがて一つの線となって・・・
誘われた者たちを、容易く絡めとる極上の紐となろう。
だが、今はまだ・・・
―――地岩洞穴。
そこは、髑髏島の東端から少し西へ入ったところに存在する、天然の洞穴だ。
そこにもまた、奇怪な獣たちが住み着いていたが・・・
その妨害をものともせず、虚は中へと入っていった。
「レジセイア・・・ATXチームの提出した資料は読んだ。なぜ、あんたはこの宇宙を壊そうとした?」
虚は、そう言いながら歩んでいく。
『・・・さて、どこから語るべきか。そう、やはり、生命の進化が袋小路に入った、と思い込んだ故か。汝を見れば容易く理解できるが、生命の進化は素晴らしい。それを気づこうともせずに・・・』
自嘲気味に、レジセイアはそう呟く。
『言ってみれば・・・嫉妬していたのだ、我は。前を見て進んでいく汝等が。閉じた世界の中で永劫の一人遊び、を続けていると勘違いをしたまま、な。』
「なるほどな・・・しかし、今になって俺に力を貸すとはどういう了見だ?」
『生命は、生命以外の存在によって進化してはならない。そして、生命の進化を止めることも、滅ぼすことも許されない。』
それは、彼の主が嘗て決めた理を破壊するものだからだ、と彼は語る。
『―――それだけのことだ。』
それだけいって、レジセイアは話を終えた。
彼の様子を見ながら、虚は「全てを語ったわけではないだろうが、とりあえず信用はできそうだ」と言う結論を心の中で出し・・・
そうして、やがて彼らは終点へとたどり着く。
重々しい扉に守られた、エレベーターと思しき建造物。
神殿のようにも見える、広い空間だ。
そこにいたものは・・・
そこにいたものは、少年。
少女をすら思わせるあどけない顔付きではあるが、その瞳には残忍で尊大な押さえきれぬ滾りを秘めている。
「待っていたよ、ここにあるものを継ぎにきたんだろ?でもねぇ・・・残念でした。僕を楽しませてくれなきゃ、ここから先には通せないね。」
楽しそうにそう言う少年は、すっくと立つとその祭壇の巫女じみた服の内に手を入れる。
その様は、まるでそこら辺の少年らと変わらない。
しかし、その殺気は間違いなく並ではない。
「自己紹介・・・こっちからしようか?・・・こっちからするよ。僕はアラストル。ここの番人さ。この姿の時はラスト、って呼んでくれると嬉しいな。」
「ふん・・・復讐者だと・・・?何かの皮肉か?」
「ふふ・・・わかってるよ、あんたには・・・そりゃ皮肉だよねぇ。だって、あんたこそ復讐者で、そんでもって相手にしてる連中に、やっぱりネメシスっているんだよね。」
ニコニコと、邪気のない笑顔で告げるその死神は、続けてこう言った。
「僕の名前・・・ちょっと気に入ってるんだ。地獄の刑の執行官。非常な裁き手にして、ギリシャ神話においては雷神ゼウスの二つ名としてしばしばあらわれ、さらには女神ネメシスとも同じとみなされる。」
その背の翼・・・漆黒の翼を翻してそう言う。
その後半の言葉を無視して、虚は問いかける。
「―――なぜ、知っている?俺のことを・・・」
「知っているも何も。僕のマスターは、君の知っているあの人だもの。あの人がいなければ、僕も、イフも、ディーも、この世界では生を受けることすらできなかった。まぁ・・・僕もあいつらも、元の世界のとは若干違うらしいけど・・・この人間の体とかね。」
その言葉を聴いて、虚は答える。
「そうか・・・お前はあの人のノートからテスラ研が複製しているエアロゲイターの兵器と同様の・・・」
「そう、Nothing Weaponさ。本来この世界にあってはならない歪み。多分、僕のこの姿はそのせいなんだろうね。」
楽しそうに言うその姿は、恐怖を覚えるものがあった。
揺るがない自信を秘めて、常に殺気を絶やさない、冷酷非常なその雰囲気。
レジセイアは、これを虚のための試練と思っているのか、ここへ着いてからは何も話さない。
その雰囲気を飲み込んで、虚は一度だけ問う。
「通しては・・・くれんか?」
「うん、無理。だって、ここを通れるのは、僕より強いやつだけだもの。他の二人は調整中だし・・・殺しちゃったら、ごめんね。」
即答して、その少年の姿は・・・
黒い装甲と漆黒の翼を持つ、異形へと変化した。
そして、アラストルは飛び上がる。
虚を見下ろして、くっく、と微笑うと静かに言葉をつむぐ。
「さぁ、殺しあおうよ・・・」
「―――心得た。その爪牙、我が刃の糧としよう・・・陽装!!」
カッ!
『陽光戦士カイザードがコンバットスーツの装着に要する時間はわずか1m秒である。ではそのプロセスを説明しよう。
柊の発した「陽装」コードの発信と共に、ギガファントムのソーラーシステム内の増幅システムが起動。増幅された太陽エネルギーは特殊軽合金グラニュームなど様々な物質と合成され、赤いソーラーメタルを生成する。生成されたソーラーメタルは、わずか1m秒でカイザードに陽装されるのだ。』
「悪しき世界のページを繰るのは・・・貴様ではない!陽光戦士カイザード見参!!」
紅き姿を身に纏い、虚は叫んで宙を飛ぶ。
「ツインテックリボルバー!!」
「お見通しさ!!」
ガィンギィン!!
その腕に握られた大剣で、双銃の弾丸を弾き返し、返す刀で切りかかる。
その剣は、見た目より軽いのか・・・ヒュンヒュンとまるで風そのものの様に振舞っていた。
「あんたの攻撃は・・・まず遠距離、そして近距離に入ってくる!そんなパターン、僕には簡単に読めるのさ!!」
ガギィッ!!
咄嗟に出現させたソーラーブレードを叩き落そうと、連撃を見舞ってくる。
剣には、電撃と風がまとわりつき、ただ鍔迫り合いをするだけで虚の体力は消耗していく。
「チィッ!!カイザービーム!!」
両腕からレーザーエネルギーが放たれ、それは岩肌にぶつかって爆風と閃光を撒き散らした。
その爆風は、舞うように空中を左右と闊歩するアラストルのバランスを容易に崩した。
「今だ!シュッ!」
放った飛び蹴りが、彼の肩口にぶち当たる。
「へぇ。やるねぇ・・・でも、これならどうかな?雷鳴波!!」
ガガァァーーンッ!!
強烈な電圧を持つ光が、虚を灼こうとひた走る。
その青い雷をかわし、ツインテックリボルバーを幾度か放ちながら虚は後退し・・・
そして。
雷が着弾する寸前、その剣を投げ捨てる。
途端、雷は剣に吸い込まれ、剣ごと四散する。
―――これで、カイザーエクスティンクションは使えない。
そう思い、戦闘法をオーソドックスから彼にとっての変形・・・
すなわち、完全な近距離戦モードへと頭を切り替える。
「チェストォ!!」
ゴゥン!!
一撃が、アラストルの胸板に炸裂する。
その攻撃も、さして利いている様ではない。
―――明らかに、セイバーのメンバーの水準を突破した強さだ。
「やっぱり、強いな、あんた!楽しいよ!!ハハハッ!!」
岩肌と岩肌の間を、移動用ブースターを使って縦横に駆け回る。
スピードでは互角。
だが、小回りが利く分あちらが有利。
なら、一撃のパワーにかけなければ・・・!
―――押し切って見せる・・・!
そう言って、虚はその体全体に力を込める。
「トォォァァァァァァァッ!!業雷スライサーキック!!」
ドォン!!
空気を切って、紅い閃光が飛ぶ。
電光を帯びた一撃。
だが、それすらも受け止めてアラストルは笑う。
「そんな電撃…その程度で、僕を倒そうとしているの?甘いよ・・・!」
怒気をはらんだ声でそう言うと、その大剣を振り下ろしてくる。
だが、それが虚の狙い。
「今だぁァッ!!太!陽!光!グロストブラスタァァァァァァッ!!」
ズシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
腕から放たれた灼熱の塊が、二人の間で炸裂した。
塊が生み出す白光は二人を包み込み、そして消え去る・・・
後には、倒れ伏す二人の人の姿があった・・・
「やるねぇ・・・脱帽だよ。まだまだ、僕には勝てないと思うけどね。」
先ほどまでの殺気はどこへやら、甘楽と笑ってアラストルはそう言った。
「でもさぁ、よくあんな戦法とれるよねぇ。元の世界の僕が、大嫌いだったって言う奴みたいだよ。」
「―――それも、あの人に教えてもらったのか?」
虚の質問に、アラストルは笑う。
「あの人が残してくれたものは、多分あんたの想像以上に大きいよ。三つの世界の情報がごまんと含まれている。君が持っているものなんて、その氷山の一角さ。」
まったく、コロコロと表情がよく変わる奴だ・・・
なんでも、元の世界の彼は、彼曰く「高慢ちきでプライドがやけに高いエリート系お坊ちゃま」だそうだ。
虚は思う。
無邪気ってのを足しただけで、まったく同じだ・・・
と。
気付けば、レジセイアの気配が消え去っていた。
「―――ふふん。アレがこれ以上ここに近づくわけがないよ。それも、あいつの主との契約だそうだし。」
そう言うと、彼は続ける。
「もし、アレを手にすれば、君はおそらく僕たち三人をたくさん作ることもできる。あの人が絶対作っちゃいけない、って言ってたとても怖い物だって作れる。下手すれば、宇宙自体を壊しちゃうかもしれない。」
それでも。
「それでも、あれがほしいかい?」
この、怖いものなど何もないような、無邪気な怪人ですら恐れるものが封印されている・・・
それは知っている。
だから、今の虚には、こう言う事しかできなかった。
「ああ、今はいらないかもしれない。しかし、後で必要になるかもしれない・・・」
「じゃさ、それを見極めてからでも遅くはないんじゃないの?僕相手にこれじゃぁ、イフはともかくディーには絶対勝てないよ・・・?」
「そうだな、ラスト・・・」
「あははは。やっとその名前で呼んでくれたね。」
そう言うと、二人は笑いあった。
俗に言う、男の友情・・・と言う奴が芽生えたのかもしれない。
こんなに笑ったのは、いつだったか・・・
そう、そうだ。
悠子を助けて・・・それで、その後傷が治ったあいつにはじめて会ったとき以来だな。
そう思うと嬉しくなった。
―――ああ、あの人は、俺がこうなることすら予想していたのかもしれない。
一頻り笑うと、虚は・・・
「そこで見ている、無粋者に取られちまうかもしれないしな。」
と、唐突に言った。
「―――ふん、そうだね。虚空からくる悪魔・・・って奴?」
「ああ、そうだ・・・」
虚がそう言うと、床から何かが染み出してくる。
ズルズル、と引きずるような音を出して現れたそれは・・・
「---よく気付きましたねえ・・・フフフフフフ・・・」
皮肉と嘲笑と侮蔑を内包し腐敗した、笑みと呼ぶにはあまりに凄惨な表情を浮かべた男。
「メタニオス・・・」
「クックックックック・・・貴方の父母は本当に息子思いだ。そんなものまで貴方に残してあげるなんてねぇ・・・」
「貴様・・・俺たちが消耗するのを待ってやがったな・・・?」
嘲り笑い続けるその混沌の黒の持ち主に、怒りと憎しみをにじませながら虚はそう言う。
「・・・こいつか。僕たちのあの人・・・僕たちの生みの親と言うべきあの人を殺したのは。」
無論、アラストルもその口端に残忍な笑みを浮かべてそう言う。
「―――虚、あんたのこと復讐者なんていったけどさ。僕もやっぱり、復讐者(アラストル)なんだよ。こいつは・・・」
「―――今の、俺たちじゃ勝てない。」
ラストの言葉をさえぎって、虚はそう言った。
「―――だけど、この後の俺なら、勝てる。さがっていてくれ。」
「なんでさ・・・?」
不機嫌さと疑問を隠しもしないで、ラストはそう言う。
すでに、ラストの手足は怪人のそれと化している。
「―――駄目だ。俺は、せっかくできた友人を。セイバーの連中も、お前も友人だ。無くしたくない。」
最強の怪人である・・・ラストすら、一瞬ひるむそんな雰囲気で虚は続ける。
「今朝、あんな夢を見たばかりだ。俺は、俺を、抑える、自身が、な・・・い・・・!!!」
「―――わかったよ・・・でも、無理しないでくれよ。虚とは、後20回くらい戦いたい。」
ラストは、そう言って一歩下がる。
「たす・・・かる・・・」
息も絶え絶え、苦しげにそう言うと、虚はメタニオスを見据えた。
「―――貴様は、殺す。」
そう言った途端。
虚の体が不自然に歪む。
「陽装。」
静かに言って。
紅い姿に変わる。
そして、その紅い姿は。
いつものそれとは違っていた。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――!!!!!!!!!!」
声にならない叫びを上げて、1.5倍ほどの大きさとなった虚は大地を駆けた。
その腕には、巨大な曲刀。
その一撃は、先ほどの戦いでもなんら砕けなかった岩盤を叩き切る。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――!!!!!!!!!!」
綻び、砕けていく。
地面も壁も関係なく。
「―――なんと、これは素晴らしい!」
メタニオスは、空間を跳びながらその攻撃をかわしていく。
ドゴオオオオオッ!!
無茶苦茶だった。
岩を砕き、カベを破壊し、膾のように岩盤を叩き割る。
暴れ回る狂神のごとき、その姿。
紅い巨躯は、無差別・・・いや、メタニオスだけを”破壊”しようと駆け抜ける。
やがて、あっけなく・・・
グガシャァァァァァッ!!!
「グハッ?!」
メタニオスに攻撃がぶち当たる。
そして、その攻撃によって・・・
「チ・・・仕方ありませんねぇ・・・ここにある、と言うことはわかったのです。ここは引きましょう・・・」
そう言って、あっさり虚空に掻き消えた。
「■■■・・・」
そして、虚は・・・やはり、声ではない声を出しながら、気絶した・・・
エピローグ
―――大丈夫?
声が聞こえる。
ああ、どこかで聞いた声だ。
「悠子・・・?」
「寝ぼけないでよ、虚。」
それは、ラストの声だった。
「―――無茶する人だね、あんた。あんなことしてたら、体がいくつあっても足りないよ。でも・・・」
そう言って、虚のぼやけた視界に、非常に酷薄かつ面白がっている笑みが浮かぶ。
「あの虚とも戦ってみたいなぁ・・・」
そんな声がした。
融鬼装態。
あの形態を自分はそう呼んでいる。
理性を無くした俺が、少しの間だけ発動できる、そんな形態だ。
パワーは倍加するし、瞬発力も上がるが、如何せん理性を無くしてしまう。
―――普段なら、町ひとつ壊滅するまで暴れなければとまらない。
ラストには、感謝・・・だな。
「ま、いいや。君の通信機に連絡があったよ。なんでも、ダークとか言うのを、シャイダーとか言う人が壊滅させたんだって。そのまま、一緒に戦った人とエジプト行くらしいんだけど・・・聞いてる?」
―――なんだと・・・?
かつて、ハンターキラーが言っていた、あの戦車怪獣を作ったところだ。
それが壊滅・・・
まぁ、シャイダーなら当然か。
――――次にやるべきことは決まったかな。
そう思いながら、面倒くさそうに椅子に座ってこちらを見据えている少年から目をそらして。
そうして目を瞑る。
―――今は眠ろう。
そうして、エリアルベースに帰って・・・
そこで、俺の意識は9時間ほど途絶えることになる。
暗き嘗ての地。
―――レジセイア。
――――アルフィミィか。
―――お母様のことはどうしますの?
――――彼女か・・・彼女にも、そしてお前の父にも。
―――なるほど。
――――そう、やがてはおまえ自身にも重責を担ってもらうことになるだろう。
―――その日は近い、と言うことですのね・・・
闇が落ちる。
そうして、次の戦いの幕は開くのだろう。
続く。
次回予告
熱砂の大地に、三人の戦士。
それは、心持つ機械。
それは、蒼き執行者。
それは、赤い仮面。
―――蘇るは黒きピラミッド。
―――黄泉返るは黒き暗殺者・・・
次回、スーパーヒーロー作戦SPIRITS
「砂の不死者」
魂より語られし物語、今こそ語ろう・・・
後書き。
ごめん、Y殿。
アラストル、借りたけど別人に。
まぁ、あれだ。
スーパーロボット大戦αのイングラムと、スーパーヒーロー作戦のイングラムの違いくらいに捉えて・・・
駄目かな?
では、Y殿のところに出張中の秋子さんどぞー。
首領’s意見
Y首領。「ぽかーん……」
秋子さん「あらあら、唖然としてますよ…」
Y首領。「ダメかなっておい・・・ここまで書いて、ダメも何もいえないのが、ひとえに貸した本人が貸した気になれんのはどうしてだ…」
秋子さん「まあ、いいではありませんか?」
Y首領。「そうなんですが…ここまで書かれたら、後々劇場版でやるアラストルに・・・」
秋子さん「アラストルさんは、初期の設定はどういうのでした?」
Y首領。「G0や劇場版のアラストルは、イフリート同様(黒狼世界がスパヒロダイダルの延長と思ってください)で、帝国ダイダルのダイダスのデータを基に、バティム(あの人が設立しました)捕獲したダイダルホバーの後継として生み出された『魔人』です。
作った人は、当然あの人で、細かな設定とかはあってます。ただ性格が反転しちまって、逆にいい奴になってる・・・。まあ、虚さんの父親があの人ならば、彼もアラストルたちと同種と見てもいいのかもな」
秋子さん「成る程」
Y首領。「解釈としてはいいほうかも…復讐者は、知らなかった」
秋子さん「知らずに使ってたんですか?」
Y首領。「そういうわけじゃないんだけどな・・・」
秋子さん「まあ、彼もいっぱいいっぱいなんですし、堪忍してください」
Y首領。「とりあえず、こっちも劇場版やんないとって感じかな・・・」
秋子さん「そういうことですよ、でなきゃ進む物もすすみませんから」
Y首領。「まあそうですね・・・とりあえず、これをアラストル、向こうはこの劇場版にも出すと言ってますし」
秋子さん「・・・・・・(汗」
Y首領。「心配の種(SEED)は耐えないけど・・・ここまで上手くできてりゃ、何も言う事無いから」
秋子さん「首領さんも投げやりですね〜(汗」
Y首領。「投げやりなんて言わんでくださいな、これでも評価はしてるつもりなんだし・・・そろそろ帰らせてもらいますよ」
秋子さん「あら?お帰りですか?」
Y首領。「ええ、話も結構楽しかったですからね・・・次何か借りる時は、こうして場を借りますよ」
秋子さん「遠い所からわざわざ、ありがとうございました」
Y首領。「んじゃ、また会う時まで・・・とう!」
ぴゅー
秋子さん「では、そちらにお返しします。」
中継先の秋子さん、それにY首領殿、ありがとうございました。
ふう、何とか納得してもらえました(ぉ
というか、Y殿が言われたとおり、あの人同様に彼ら魔人も性格はやわらかくなってます・・・が、まじめに、ここまで変わるとは思ってませんでした。
アラストルなんて、ブラックマトリクス2のユーニ君だば。
レジセイアも、IMPACTのときの融通の利かなさと比べると、あれすぎだし。
あと、融鬼装態の虚君、Fate/stay nightのバーサーカーになってまったし。
今回は、消耗していたため、いきなり暴走しましたが・・・
本当は、ワラキアの夜っぽくなってから、バーサーカーになります。
この説明は、型月作品ががわからない人は読み飛ばしてください。(いまさらかよ。)
後ですね、夢追い人の吹き溜まりの管理人である最礼恩殿に感想を聞いたのですが。
「最初のと、レジセイアのおかげで雰囲気がまんまアレ。」
だそうで。
アレが何かって、間違いなく月姫でしょうな。
いやはや、仕方ないことになってしまったりして(意味不明)
いつの間にか、キカイダー・V3・シャイダー連合軍に滅ぼされたダークに合掌。
17話と18話の間には、深くて大きい閑話があるのですよー。
いずれ書きますが、リクないと遅れます。
1年位後まで。
―――我ながら、なんて、ひどい・・・
ま、まあそういうわけで!
そういうことにして!
ください―――!!!
では、これからも本作品をよろしくおねがいします。(何のことやら)
シュワッチュ!!
PS.作中に出てきたワクチンソフトは・・・多分、グリッドマンです。ノシ