黒い破壊者は、機械の戦士の前に再び立った。
「ハカイダー・・・どうやって黄泉返った・・・?」
「ふはは・・・狐に抓まれた様な貌をしているな。しかし、安心しろ。この頭に入っているのは、貴様の・・・いや、われわれの父親、光明寺のものではない。いや、人間のものですらないだろう。安心しろ。」
ハカイダーは、自分の頭に入った時折内部の光を透過してか点滅する物体を指差して、そう言った。
「何・・・」
・・・宇宙刑事シャイダー、沢村大が聞き返す。
そう、彼もジロー=キカイダーに協力して、ハカイダーが元属していた組織を壊滅させたのだ。
当然、彼のことも知っている。
「ククククク・・・知りたければ、俺と戦ってもらおう、キカイダー。この脳は人間の物ではない、間違いなくな。そう認識しろ・・・そうだ、そうすればお前は全力で俺と戦える。フッフッフッフ・・・」
低い笑いを漏らしながら、ハカイダーは続ける。
―――どうせ殺られるなら、お前に殺られたかったぜ、キカイダー・・・
ジローの心に、かつて彼が死に際に言った言葉が、メモリからよみがえった。
それは郷愁か、恐怖か、それとも安堵か・・・複雑な気持ちをジローは抱いた。
「もっとも、決着だけは今つける気はない・・・レクリエーションの一種と思って戦ってもらおうか!!」
ガゥン!
銃身に手を添える、独特の構えからハカイダーショットが火を噴く。
砂を抉るその一撃を一足で避け、ジローは両腕をクロスした。
「チェィンジ!スイッチオン!ワン!ツー!スリー!!」
そして、更に飛ぶ。
「ダブルチョップ!!」
ガィン!!
強靭なマニピュレーターから放たれる、岩をも砕く一撃がハカイダーを襲う・・・が、ハカイダーはそれを避けようともせず、ハカイダーショットで受け止めた。
「―――どうした、キカイダー?弱くなったんじゃないのか、ん?」
心持、キカイダーの顔を覗き込むようにそういうハカイダーの口は・・・無表情なはずなのに、まるで笑みを浮かべているように見えた。
「―――くっ・・・何故だ、何故・・・」
「クククク・・・何故、戦うのか、か?ダークは・・・滅んだのに?」
「―――!」
「なぁに、簡単なことだ。俺は・・・お前を単なる標的以上の者としてみているからだ。そう・・・人間が恋焦がれる、とはこんな気持ちなのかな?俺は、お前と戦うのが楽しいのだよ。」
ギリギリ、とハカイダーショットとキカイダーの腕が音を立てる。
「そう、だからなるべくなら長く、長く。一生戦い続けていたい。お前とな。」
「何・・・ぃ・・・?」
「だから、弱くなるなキカイダー・・・暫く付き合ってもらうぞ・・・」
ギィン!
その腕を、振り払いハカイダーは飛ぶ・・・いや、その足をキカイダーの首に絡める。
そうして、高く飛んだ。
「フハハッ!ギロチン落とし!!」
変形のフランケンシュタイナー。
それこそが、ハカイダーの必殺技のひとつ、ギロチン落としだ。
ギロチンを落とすかのように、敵の頭を高速で地面に叩きつける大技である。
ガアシャァ!!
金属が砕けるような轟音を発して、キカイダーの頭が地面に落ちる。
いや、落ちようとしたとき、静止の鞭が飛び込んだ。
ヒュウゥッッ!
「ブレードウィップ!!」
そう、それは宇宙刑事シャイダーの一閃だった。
“宇宙刑事シャイダーがコンバットスーツを焼結するタイムはわずか1m秒である。ではそのプロセスを説明しよう。宇宙刑事シャイダーは、バビロス号から発射されるプラズマブルーエネルギーを浴びて、わずか1ミリ秒で焼結を完了するのだ”
「待て!」
地面に落ちる寸前、キカイダーごとハカイダーの軌道を曲げ、そしてシャイダーは叫ぶ。
「宇宙刑事!シャイダー!!」
「フン・・・邪魔を・・・するなぁっ!」
ハカイダーショットがまた火を噴き、シャイダーが立つ砂を穿った。
地面に激突する寸前でキカイダーは態勢を立て直し、多少アンバランスな形のファイティングポーズを取って、シャイダーとともにハカイダーに対峙した。
「―――なるほど。二人となれば、こちらが不利か・・・」
「戦うためだけに・・・黄泉返ったというのか、ハカイダー!」
キカイダーのその叫びに、ハカイダーは冷徹に答える。
「その通りだ。俺の生きがいは貴様と戦い、殺すこと。その終わりはなるべく長いほうがいいと考えるのは・・・人情、とか言うのだろう?」
「―――狂って、いる。」
「いいや、どこも狂ってはいないさ。狂っているのは、お前だよキカイダー。人間の心を持つから、そう些細なことに煩わされる。そうだろう?」
足のエアークラフトを使い、ゆっくり着地しながら・・・彼は言う。
「人間から見れば狂っているのかもしれないが、機械として狂っているのはお前だ。」
「―――くっ?!」
ギィン!
ハカイダーの拳が、キカイダーの腕にヒットする。
火花を散らし、拳と腕は擦れあう。
「決められたプログラムに従うのが、機械だ。その点では俺も、お前も一緒だよ。お前は良心回路が与える命令によって人間のように振る舞い、そして俺は胸の悪魔回路に命じられるままにお前と戦っている。何故、拘る・・・所詮、人間の心も我々の思考も電気信号の塊にしか過ぎんのだ。」
「―――!」
ハカイダーの猛攻を耐えながら、キカイダーはうめく。
「だとしても・・・変わっていく心を信じて、何が悪い?!」
キカイダーの表情のない仮面が苦渋にゆがむ。
「何も悪いなどと入った覚えはない。拘るな、といっただけだ。心なぞ・・・自律進化型の人工知能を持つ俺たちには、それと考えなくとも勝手に心は変わっていく。拘るな。」
「偉く・・・饒舌になったな、ハカイダー!!」
拳を弾き、苛立たしげにキカイダーは叫んだ。
「キカイダースパーク!!」
「ビデオビームガン!」
バリバリバリバリ!!
キカイダーの腕からの白色、シャイダーの銃からの青が混じりあい大気に悲鳴が上がる。
「ふふふふふふ・・・待っていた!!」
不気味な笑いとともに、彼はハカイダーショットを放り投げる。
ガリガリガリガリ!!
白の電光はハカイダーショットに吸い込まれ、そして消えていく。
青の光線は光の速さゆえ、すでにハカイダーの肩を掠めて往き過ぎた。
「ふふふははははは!かかったな!月面飛行蹴り!!」
ガキィィッ!!
骨も砕けよと、ハカイダーのまるで飛ぶような蹴りが二人を襲った。
「くっ!?」
シャイダーは、たまらず吹っ飛ぶ・・・が、キカイダーはその自重を持ってその場に踏み止まった。
「喰らえぃ!地獄五段返し!!」
しかし、腕をつかまれたキカイダーはそのままハカイダーにぐるぐると振り回され放り投げられてしまった。
「うわぁあーーーっ?!」
がしゃぁん!
受身を取ることもままならずジローは地面に落着した。
微かに・・・関節や頭部のクリアパーツ部から煙が出始めている
「ふはははははっ!?どうしたキカイダー!詰まらんぞ!あの黒いピラミッドの中に入った男のことなど気にしてはいまいな?」
「―――くっ・・・」
既に、彼が中に入って・・・二時間半。
彼が突入しろ、といった時間まであとわずか一時間だ。
日もほとんど暮れた・・・やがて砂漠に闇が落ちるのだ・・・
「どうする・・・キカイダー・・・」
「シャイダー、中へ行ってくれ。とても気になる・・・それに、こいつは・・・ハカイダーは俺が倒すべき敵だ・・・手を出さないでくれ!じき、奴は血液交換の時間になるはず!そうしたら追いかける。だから・・・」
関節をきしませながらキカイダーは立ち上がり、一声叫んで飛び出していった。
「銀河ハリケーン!」
ハカイダーの周りを飛びながら、拳を放つ隙を伺う・・・
「―――わかった・・・!」
シャイダーはそう言って・・・黒いピラミッドへ向けて駆け出した!
スーパーヒーロー作戦SPIRITS
第二十話「熱砂のプライド」
夢を見ていた。
―――異形の怪物。
“父さん!”
―――巨大な爪・・・いや、刃物を腕に取り付けたジャガーの化け物に父が貫かれた。
目の前で、貫かれ死んでいく、大切な人たち。
“母さん!”
―――母も。
・・・・・・・・・この夢を見なくなるときなど、来るのだろうか。
“雪子・・・・・・”
―――最愛の・・・妹まで。
深い深い闇の中で、彼はそう思った。
“うわぁぁぁぁぁあああああっ!!!”
―――泣いた、憤った、運命を呪った。
思えば、あの工事現場で溶けていく作業員を見たときから・・・
彼の奔走は始まっていたのだ。
溶けていく作業員、目撃した女性、そして彼。
毒で殺されそうになり、注射を打たれそうになったり、爆発に巻き込まれたり・・・
それらの全てを超人的な運と体力で乗り切った彼を殺そうと、ついに謎の組織・・・彼の宿敵デストロンは実力行使に出た。
―――そして、父も母も・・・妹までもが殺された。
そして、彼を助けた二人の男・・・本郷猛、一文字隼人・・・
すなわち、ダブルライダーに・・・彼は言った。
―――俺のこの体を、こんな非道を防ぐために使えるなら。
―――否、奴らへの復讐でもある。
―――しかし、俺はそれを忘れよう。
“俺は今日限り、人間をやめる”
―――その心を見抜かれたか。
“仮面ライダー・・・力を・・・”
―――すぐには、彼らは頷いてはくれなかった。
“頼む。俺を・・・”
―――でも、俺は・・・彼らを助けようとして、一度死んだ。
―――そうして、蘇ったのだ。
“俺を改造人間にしてくれ!!”
“正義”の戦士、仮面ライダーV3として・・・
―――目の前には、懐かしい貌が、三つ。
風見志郎の父、母・・・
そして、妹の雪子がいた・・・
風見は、ニコニコと笑う彼らを見つめる・・・
笑みが、涙が毀れた。
ふわふわと、無重力で漂う感覚のなかで、彼はある種歓喜に包まれていた。
伸ばされた、妹の、手。
“―――来い、って言うのか・・・?”
優しい笑顔。
厳しいが、妹には甘い、家庭思いの父、達治。
上品で優しく、時代には珍しく和服がよく似合う・・・そんな母、綾。
人懐っこい、誰からも愛された妹、雪子。
“――――また・・・4人・・・一緒に・・・・・・”
夢だ。
夢だよ、これは。
心で、そう思う。
幸せだったあの頃を取り戻したい、そう思う自分が見せる幻影だ。
でも、でも若しかしたら。
その手を取る。
パァ、と花が咲いたように妹が笑った。
懐かしくて、懐かしくて、もう二度と届かないものが目の前にあった。
―――ふと、振り返る。
蟠る闇の中から、赤い仮面が現れ・・・まるで、まだその時ではない、と諭すかのように・・・
「ハッ?!」
寝台のようなものに乗せられていた自分に気がつく。
―――どうやら、本当に夢を見ていたらしい・・・
と思うまもなく彼は立ち上がる。
「ここは?!」
―――そうか、ここは黒いピラミッドの中・・・!
それも、あのアヌビスの面の女の船の上だった。
「お前たちは一体・・・!!」
目の前には、美しい・・・黒く長い髪と褐色の肌を持った女性が立っていた。
古代エジプト・・・というとピッタリ来る服装に、ジャッカルの紋章が天辺に象られたこれまた古代エジプト風の帽子をかぶっている。
「王妃ノ貌ヲ忘レタノデスカ?」
優しいが、どこか冷たい声で彼女はそう言った。
風見の貌に、触れるか触れないか・・・そっと手を翳すと、肩に手を置く。
「・・・ファラオ・・・三千年オ待チ申シテオリマシタ・・・」
スッ・・・
「?!」
まるで自然な動きで、彼女は風見の唇にキスをした。
一瞬ドキリとするが、すぐに・・・
―――硬い・・・
いや、正確には鉄の塊とかプラスチックとか、そういう硬さではない・・が。
間違いなく、人間の肌の柔らかさが、この王妃と名乗った女性にはなかった。
―――この女・・・機械・・・
よく見れば、その瞳もどこか虚で・・・確かに機械そのもののように見えた。
―――ジローよりは“人間”ではないが・・・
慎重に見極めようと思った。
とりあえず、風見は彼女に聞くことにした。
「―――ファラオだと?」
「ハイ―――ソノ猛キ不死ノ肉体・・・ソナタコソファラオニ相応シイ・・・」
風見のそばに音も立てず座り、彼女はそう言った。
「何故知っている。」
風見はその事実に少々驚くと、キロリ、と軽く王妃をにらみつける。
「想イ出(メモリー)ヲ見セテモライマシタ・・・」
―――俺の・・・想い出を・・・
胸を押さえながら、ぞっとしない気分で風見はつぶやいた。
―――あの記憶まで、見たのだろうか・・・
そう思い、嫌悪が体を打つ。
「―――!」
その時、不気味な仮面・・・丁度、右と左にそれをつけた、指の長い男たちが近づいてきた。
「―――儀式の刻デスネ・・・ワカリマシタ。」
そう言うと王妃はその手の杖を舟漕ぎの櫂を持つ屈強そうな男たち・・・おそらく、彼女と同じく人造人間なのだろう・・・に、「“船頭”ヨ」と命じた。
彼らはそれだけで伝わったのか、少し櫂を振るだけで天井から光が落ちる。
「!・・・彼らは!」
「アノ者タチノ想イ出ニヨレバ・・・日本トイウ国カラコノピラミッドヲ調ベニ来タ調査隊・・・トカ。」
「・・・!!」
王妃の、何気なさそうな言葉に、憤りを覚える。
「――ソナタノ国ト同ジデスネ、ファラオ。」
「・・・・・・彼らをどうするつもりだ・・・!」
多少の怒りが籠もった声に、王妃は笑みを消して答えた。
「―――不死ノ儀式ヲ施シマス。ソシテ、忠実ナル兵士ニ・・・」
「なんだと・・・!」
なるほど、そうなれば合点がいくというものである。
あのゾンビの改造人間は・・・すべてこのピラミッドにつかまった、地元の人間たち・・・あるいは、海外の調査隊やその他諸々の人々だったというわけだ。
ガシャガシャとガラクタが揺れるような音を立てて、“船頭”たちは調査隊の人々に近づいていく・・・
「―――やめろ!!」
その行動を制止しようと、風見は船頭の前に出た。
だが、すぐに肩口をつかまれて締め上げられる。
ギリギリと、その豪腕が彼の人工骨を軋ませた。
「グ・・・ア・・・」
――――まだ・・・逆ダブルタイフーンの影響が残っている・・・!
―――――どうあがいても、後30分は・・・変身できない。
絶望的な状況だ。
だが、それでも彼の頭は考えることをやめてはいなかった。
その時、不意に意外な声が聞こえる。
「――へへ。ざまぁねぇなぁ・・・カザミ?」
「!!」
それは・・・
しゃっ!
目に縦線の入った女性型のロボットの目から、光線が弾き出される。
ゴゥン!!!
声のしたあたりのカベが砕ける。
スタリ、とその影は地面に降り立つ。
褐色の肌と皮肉気な笑み・・・ベガだった。
「バカヤロォ!!戻れといったはずだ!!」
「ワリィが借りは作らねえのと、お宝ほったらかしでは帰れねえってのが・・・俺のポリシーでね?」
「チ・・・!」
ニヤニヤとそう言い放つベガに、風見は知らず笑みを浮かべていた。
「オラァ!急げ、ズラかるぞ!!バケモンにされてえのかよ!?」
ベガは調査隊の人々に急いで逃げるよう促すと、自らも走り出した。
ヘッ、と最後まで皮肉な笑みを崩さずに。
「“泣キ女”ヨ。」
王妃が杖を翳してそう言うと、さっき光線を放った女たちがまるで地面など関係ない、と言う風に飛んで行った。
―――ベガ・・・
風見は彼の逃げて行った先を、“船頭”が体を放すまで見つめていた・・・
「ふう・・・ふう・・・」
人間が息をするように、キカイダーもまた苦しい息を吐いていた。
「ふん・・・詰まらんな、キカイダー・・・」
ハカイダーはそう言って、構えを解いた。
「何・・・!?」
「何を悩んでいる、キカイダー・・・何も悩むことはあるまい。」
ため息を吐くようにハカイダーはそう言って、そして彼の体が変わり始めた。
「なんで、そう難しく考えるんだ、ジロー・・・」
人間の体・・・サブローと呼ばれていた姿に変わり、彼は続ける。
「お前は、何のために戦っているんだ?」
―――唐突に、そう聞かれた。
しかし、そんなことは考えるまでもないこと。
「人類の平和を守り、人造人間と人が仲良く平和に暮らせる世界を作ること・・・そして、俺のこの心を人間にもっと近づけたい・・・!」
キカイダーもまた、チェンジを解きジローの姿に戻っていた。
「なら誇りを持て・・・そうでなくては、殺し甲斐がない・・・」
ニヤリ、と笑うとサブローの姿は砂の向こうへと消えようとしていた。
「―――それから一つ、弟としての忠告だ。」
遠く、もう遠く声が響く。
「――――俺に気をつけろ。俺じゃない俺がいるはずだ。そいつに出会ったなら・・・迷わず殺せ・・・いいな・・・」
「・・・何・・・?」
姿を消したサブローは・・・そう言って砂塵の闇の奥へと消えていった・・・
「―――どう、言う意味だ・・・?」
キカイダーに、拭えぬ疑問だけを残して・・・
その頃。
シャイダーはピラミッドの中に突入していた。
―――なんだ、ここは・・・
そして、辿り着いた場所にあったもの・・・それは・・・
「ゾンビたち・・・の貯蔵庫・・・?」
アヌビスが描かれた巨大な壁画がある。
その目は・・・不気味な光を帯びて、まるで彼をにらんでいるかのよう。
それすら圧倒するような高い高い天井、柱。
そして、太いその柱たちの一本一本に50は下らないゾンビが安置されていた。
―――ハァ・・・ハァ・・・
――――人間の息遣い?!
シャイダーがそう感じて振り返ったとき、そこには幾人かの人間と・・・そして、ベガがいた。
「逃げ・・・切ったのか・・・」
「けど・・・ここは・・・」
その幾人かは、どうやら行方不明になった調査隊の人間のようだった。
貌に見覚えがあったゆえに。
「べ、ベガさん・・・!」
「ヒ、ヒィィ!!」
どうやら、彼らはゾンビたちの存在に気がついてしまったようだ。
「落ち着いてください!」
シャイダーは焼結を解き、彼らのほうへと近づいていった。
「ベガさん、無事だったんですね・・・」
その言葉に、彼は答えない。
「―――・・・?」
「ア、あなたは・・・沢村さん?」
研究員の一人が、どうやら彼に見覚えがあったようだが、生憎と彼はその人物を覚えてはいなかった。
「助けに来ました。早くここから・・・」
ガシャン。
何かが地面にぶつかる音がして、見れば先ほどの“泣き女”が現れていた。
「――!?」
「で、出たぁ!!」
―――ククク・・・
現れた“泣き女”を見て、ベガは低い笑いを漏らす。
バサァッ!
そして、ベガの背中から翼が生えた!
それは・・・鷹の翼だ。
「ハハハハハハハハッ!!」
「―――貴様?!」
バサッ!!
大は素早く飛び退くと、ベガをにらみつけるが、それを全く意に介せずに彼は飛ぶ。
シュシュッ!
ビスビスッ!
針が刺さる音がして、そうして“泣き女”は爆発して吹き飛んだ。
「くそっ!見抜けなかったなんて・・・ええい、考えてる場合じゃない!焼結!!」
蒼い閃光に包まれた大は、そのまま“泣き女”の残骸を持って飛翔を始めたベガを追っていった・・・
―――。
「三千年前・・・」
船の上で、王妃は謡うように言った。
「王ガ死ンデ、哀シミニ暮レテイタ私ニ完全ナル者ハ言イマシタ・・・」
王妃が立つ位置から、二歩離れたところで風見はその話を聞いていた。
「墓地ノ守護神“アヌビス”トナリテ待テ・・・ト。」
王妃の言葉が続く。
「―――復活ノ刻ガ来レバ、王ニ相応シキ肉体ヲ持ッタモノが訪ネテクル・・・ソシテ王ニ相応シクナイ者は、王ノ復活ニ備エテ兵士トセヨ・・・ト。」
―――兵士?!
「三千年デスヨ・・・ファラオ・・・永カッタ・・・寂シカッタ・・・」
走りより、胸に手を置いて、感極まったように言う王妃の瞳に煌くものがあった。
「―――!」
・・・涙・・・
そう、それは涙・・・
きっと、その永い間、啼き続けていたのだろうことを思わせる。
しかし、しかし・・・
ドン、と彼女を冷たく押し払い、風見は言い放つ。
「―――何ヲ・・・?」
「フン・・・ファラオだと・・・?」
明らかな、憎しみ。
「そんなモノのために・・・何人をさらって・・・そしてバケモノにした!」
そう、そんな物のために・・・
下らない妄執にひきづられ、歪んだ妄執で世界に席巻しようとしたものたちに。
「―――ファラオ・・・そんなものために・・・」
「!!」
ギリ、と歯が軋む音がする。
「俺の望む世界には。」
彼の望む世界には。
「王も兵士も。」
ただ、己の大切なものが。
「いらん!」
いれば、よかった。
キッパリとそう言い切り、そして睨み付ける。
多くの怪人たち・・・そして、デストロンの大幹部を震え上がらせてきた、凄みのある目だった。
その言葉を聴いて、そのまなざしを受けて、絶望に見開かれた王妃の目が、危険な色を帯びる。
「“ミイラ師”ヨ!!」
後ろに控えていた、不気味な仮面の男の・・・仮面が外れ、それが一瞬で風見の頭を覆った。
「!?」
―――瞬間、膨大な情報が頭に流入し、そして“風見志郎”の意識を圧迫し始める。
「ガ・・・アアアアアアッ?!」
―――王の記憶を受け入れよ・・・
――――そして、カザミシロウの魂よ・・・愛するものの棲む冥界へと往け・・・
そんな言葉とともに風見の意識は、また・・・あの夢の景色の中へいた。
殺されていく、父、母、妹・・・
そして、またあの白い空間・・・
妹とつないだ手が・・・ゆっくりと離れた。
―――ゴメンな・・・雪子・・・
家族の笑みも、自分の笑みも消える。
ここを出づれば、戦いの荒野。
―――スイマセン、父さん母さん・・・
荒野で戦い続ける。
自分と同じ、哀しい宿命を持つものを増やさぬように。
こんなつらい悲しみを背負うのは・・・俺たち・・・仮面ライダーだけでいい。
かつて、一文字隼人がいっていた言葉を今限りなく理解している。
そう、考える。
そして、最後の言葉がつむがれた。
―――俺はまだ、逝けないよ・・・
両腕を思い切り真っ直ぐに左に突き出す。
―――変身・・・
右斜め前に回転するようにもって来た両腕は・・・次の瞬間、まるで本郷猛、1号ライダーのように構えられる。
――――V3!!
涙が毀れる。
腕の間から見える妹は、一瞬寂しげな瞳をして・・・そして、まるで彼を激励するように、微笑んで瞳を閉じた。
瞬時、意識は世界に立ち戻る。
目の前では、驚愕に見開かれる王妃の瞳と、自分が変身したことによる影響か爆発炎上する“ミイラ師”の姿があった。
赤い、赤い、赤い仮面のV3。
赤は血の赤、人間の赤。
真っ赤に燃えて迸る、命の赤なのだと、先輩は言っていた。
だから、仮面ライダーのマフラーは赤く、そしてV3の仮面もまた赤いのだと。
「―――フン・・・三時間、たったか・・・」
平静にそう言う、彼の表情映さぬ緑の瞳には涙の痕があった。
「チッ・・・上手く洗脳できれば使える相棒に・・・とも思ったが、ヤッパ無理だったか・・・」
ガシャッ!
言葉とともに、上から二つ“泣き女”の残骸が落ちてくる。
「!!・・・これは・・・!」
上空に目を凝らす。
瞬間、Oシグナルが警告を発した。
敵だ、と。
「―――貴様・・・!」
上空には、この三日で否でも見慣れてしまった貌。
しかし、その背中には、鷹の羽が生えていた。
「!!・・・ベガ!!」
「・・・」
シュ。
ドス、と音がしてベガの放った鷹の羽が王妃に突き刺さり、小爆発が起きた。
「わりぃなぁ・・・ちと若すぎるかもしれねえが・・・」
ベガはそう言って、三日間決して外す事の無かったサングラスを取る。
「訪ねてくる男ってのはファラオじゃねぇ・・・俺さ。」
ニィ、と笑みを深くしたその瞳は、比喩ではなく猛禽の目そのものだった。
「王との想い出、王妃としての記憶・・・みんな嘘っぱちのツクリモンさ。ご苦労さんよ・・・」
バサリ。
「本当に三千年かけたのか、俺は聞いてねえけどよ。とりあえず、三万体の兵士は間違いなく回収させてもらうぜ・・・?」
ス、と音も無く舳先に降り立ち、彼は火花を上げて倒れ伏す・・・王妃の人造人間を一瞥した。
「三万体・・・まさか!」
ススススススス・・・
ベガは、その羽で自らの体を覆い隠す。
「ククク・・・まさかじゃねえよ・・・」
その羽が、羽音とともに広げられたとき、そこには異形・・・鷹の頭と人間の体、そして翼を持つ怪人が立っていた。
「この黒いピラミッドは・・・改造人間のプラントさ。」
「ベガ・・・貴様・・・!」
「この女は製造のための回路、そして・・・そのゾンビどもの起動スイッチさ。こいつの機能が低下すると・・・自動的にな・・・クククククク・・・」
「なにぃ!?」
嘲笑するように説明するベガに、V3はそう叫んだ。
「クハハハハハハッ!あのシャイダーとか言うお仲間が中に入ってるけどよぉ・・・もう死んでるんじゃねえの?ハハハハハハッ!」
「くっ・・・」
悔しげにそう漏らした彼だが、しかしシャイダーがあんな連中に負けることはないと信じていた。
―――無事でいろよ、シャイダー。
そう思い、V3はベガを向く。
「許さんぞ、怪人!!」
「ハハハハハッ!」
その叫びと嘲笑とが此度の戦いのプレリュードだった。
ベガの言葉とは裏腹に、シャイダーは善戦・・・いや、群がるゾンビたちを圧倒していた。
調査隊の人々を、ゾンビ貯蔵庫の外へと逃がした上で彼は戦っている。
もともと、一人で戦うことを宿命付けられている宇宙刑事には、単体戦闘における莫大な戦闘力が与えられているためだ。
すなわち、通常空間で異次元空間状態のパワーを発揮したとき、今のような状態が訪れる。
もちろん、これは一人のとき、しかもピンチのときしか許可されていない。
周りの事物や生命体を巻き込み、複数戦闘の場合は味方を巻き込みかねないからだ。
ゾンビ一体をビデオビームガンの一撃で砂と返し、シャイダーキックは一気に十数体のゾンビを弾き散らす。
「ブレードウィップ!!」
刃の鞭が、一体のゾンビの頭を千切り取る。
「ク・・・キリがないが・・・」
確かに。
圧倒はしているが、結局数で押されてしまうのだ。
「どうする・・・」
その時、彼の耳に聞き覚えのある失踪音が響いた。
ブゥゥゥゥヴン・・・
「これは・・・」
「大丈夫か、シャイダー!」
その言葉に振り向く。
「キカイダー!」
そこには、チェンジしたキカイダーが失踪してくる姿が見えた。
「このままでは不味い!一先ず、調査隊の人々と合流して脱出しよう!」
「見つかったのか?!」
「ああ、行こう!!」
その言葉に、キカイダーは自分のマシーン、サイドカー「サイドマシーン」のエンジンを吹かした。
「乗ってくれ、シャイダー。」
「ああ、わかっている!!」
サイドマシーンのサイドカー部に立ち、シャイダーはそう言った。
「喰らえッ!ビデオビームガン!!」
ガオン!!
その閃光が天井を砕き、そして自分たちが出て行く為の通路を塞がんと岩が落下していく。
それを間一髪で避け、彼らはそのまま走り抜けた。
すると、それとほぼ同時に、地面が揺れるのを二人のセンサーは捕らえた。
「―――これは。」
「ピラミッドが、浮かんでいる・・・?」
奇妙な浮遊感を感じつつ、彼らは逃げた調査隊の方へとマシンを走らせた・・・
船の上で、二人は対峙していた。
「ククク・・・どうする?まだ一人っきりで突っかかってくるのかい?」
そう言って、V3を睨み付ける。
「―――なぁカザミ・・・俺と来いよ・・・お前なら、俺同様“愛されし民”になれるぜ。」
確信を持った、勧誘の言葉・・・
だが、そんなもの・・・
彼には無意味だ。
正義の味方はガランドウ。
失った者のため、これから失うかもしれない多くの人々のため。
技と力と心と命を削って戦い続けるのが、彼の宿命だから。
「・・・確かに、王妃はプログラムだったのかも知れん・・・」
そう、そうだ。
「―――だが、貴様は・・・貴様らは、三千年・・・かけて、王妃に悲しみを与え、涙を流させた。」
彼の心も啼いている。
悪への怒り、理不尽への憤り、失われていく悲しみに。
「死者を・・・そして残された者の心を利用した・・・!」
残された者の苦しみを、彼はよく知っているから。
失ったものへの思慕が強いほどに、失ってガランドウになった心の中に様々な意味での、“力”が宿ることを知っているから。
「そんな貴様らの愛などいらん!!」
そんな、残された者の心を利用するものを許せるはずがなかった。
「―――たとえ、一人になっても・・・!一人で戦うことになっても・・・だ!!」
一人でも、一人でも、守る。
これから失われていく、奪われるかもしれないものを守り続ける。
それが彼の宿命。
ゴリ、と地面をえぐるように踏みしめ、彼は吼えた。
「・・・・・・・・・・・そうか。プライドの高い男だぜ。」
諦めたようにベガはそう言う。
「だったら、ここで死にな!!」
それが合図だった。
二人は同時に空へと舞い上がる。
「V3キィィーック!!」
ゴゥ、と疾風を切りV3の鋼鉄の右足が空を飛ぶ。
それをひらりと避け、ベガは羽手裏剣を投げた。
「ヘッ・・・羽ばたけねえ奴がよ・・・!」
ドゴゥン!!
「グ・・・ア・・・」
「ククク!戦うだと?!このピラミッドごとか?!だがそれじゃ誰も助からねえなぁ・・・!クハハハハハハハハハハハッ!!」
うずくまるV3をそう嘲笑う。
だが、その時のことだった。
異変が起こったのは。
「何・・・?」
V3とは別の場所で、キカイダーに調査隊のことを任せ、一人ゾンビたちと戦っていたシャイダーはそう呻いた。
「―――止ま・・・った?」
それは、何故だったか・・・
自問する間もなく、シャイダーは駆け出す。ここから走ればすぐ広間に出るはず・・・
そう考えてシャイダーは一人走り出した。
そして、それは・・・
ジ、ジジ・・・
ショートした電線と似た匂いと音を出しながら、王妃は立ち上がった。
それから、指を上げると・・・
すると、“船頭”が飛び出した。
「―――なんだ?!」
ベガの言葉が宙を裂いた。
その“船頭”はそう・・・先程のゾンビたちの貯蔵庫の中・・・アヌビス神の眼へと向かっていった。
ズッ・・・
ゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
光る目に、“船頭”の槍が突き刺さり、そして・・・轟音とともに貯蔵庫が吹き飛んだ。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
地響きが・・・いや、ピラミッドの崩れる音が始まった。
「まさか・・・!プラントの中枢をぉ・・・!」
ベガはそう叫ぶと、王妃のほうを見る。
「このクソプログラムがぁぁぁぁっ!!」
一声吼えて、ベガの羽から無数の羽手裏剣が飛び出した。
だが・・・
着弾する寸前、二つの影が王妃をかばう。
「―――バリアー!」
ドガァァァァァッ!!
シャイダーの手から形作られた四角いバリアが、その羽手裏剣を全て防いでいた。
「心のある人造人間を、こんなに簡単に壊そうとするなんて・・・」
キカイダーが叫んだ。
「チィィッ!!」
王妃の破壊もできず、そう叫ぶとベガは逃げるように飛び去っていった。
そして・・・機能も停止しようという王妃の口から、言葉が漏れる。
「ニゲテ・・・ファ・・・ラオ・・・」
その言葉とともに、船が・・・ゆっくりと下りてきた。
「―――これは・・・」
調査隊の人たちも、船のほうへと集まってきていた。
―――ピラミッドの崩壊は、続いていた・・・
その、崩れ落ちゆくピラミッドを上空から眺めながら、ベガはつぶやいた。
「チっ・・・失敗かよ・・・だが、連中もプラントと一緒に死ぬんだ。よしとするか・・・」
悔しいのか、感情がこもっていないのか。
そのどちらかで、彼は力なく呟くと翼をはためかせた。
だが・・・
彼の推測は外れるのだ。
ブォォォォォォ・・・
「!」
バイクの、駆動音。
宵闇の砂漠の静寂は、その音をとても大きくしていた。
「!」
そして、月を背景に、浮かぶ船にも気づく。
「―――よぉ」
月を背に立つは、赤い仮面、赤と青の戦士、そして蒼。
だが、キカイダーとシャイダーが動くことはなかった。
「―――トォッ!」
バッ!
バウン!
仮面とバイクは同時に空を駆ける。
クルリ、と回転しながらその車輪を天へと向けた。
「勝負だ、カザミィィィィィッ!!」
そう言って放たれた羽手裏剣。
仮面は・・・時速600km/hの高速を発揮するそのバイク「ハリケーン」の車輪を蹴った。
ギャルルルゥン!!
疾駆する。
羽手裏剣はその驚異的な跳躍の前にむなしく虚空へ消えていく。
そして、仮面・・・V3は!
ギュルルルルルゥゥゥゥゥ・・・・
空を切り、疾風を裂き、その肉体はまるで真空竜巻。
「ハッ!バカめ!!同じこと・・・ナンダヨォッ!!」
そうして、その竜巻を逃れるように飛行する。
だが・・・
ギュィィィィ・・・
竜巻は空中で方向を変え、そして。
「旋回しただとぉっ!?」
さらに、速度は上がる。
「!!!!」
速い、速い。
その速度は音速にも達さんかという勢い。
「V3―――――っ!!」
嘗て、蝙蝠のバケモノ。
デストロン大幹部にしてツバサ軍団の長、「死人コウモリ」ツバサ大僧正を葬った技。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
ベガの叫びが、宙を切った。
「マッハ・・・キイイイイィィィィィィィィッッック!!!」
その瞬間、全ての音が消えた。
音速を超え、音のない世界で。
月に看取られるように。
V3の鉄脚は、ベガの胴を翼を真っ二つに切り裂いた・・・・・・
舞い散る羽の雨の中、風見は・・・下半身を失ったベガを見下ろしていた。
「―――クソ・・・カザミ・・・負けたぜ・・・」
ジローもまた、静かに彼に近づく。
「へへ・・・だが、どうだい。途中までは俺にまんまと嵌められたろうがよ。」
ベガはそう言って、激しく咳き込む・・・
もう、死が近い。
“組織”の事を聞く気には・・・なぜか、風見もジローも・・・大もなれなかった。
「何故、王妃を壊そうとしたんだ?人造人間だって、命を持ってるんだぞ?!」
ジローは憤りを隠さずそう言った。
「ケ・・・戦いなんだぜ?そして、俺もお前も、あの王妃も、戦う力を持ってる。俺がお前でも、ああすると思うがねぇ・・・ゲフッ!・・・カザミ・・・お前の仲間もお前と同じでよ・・・いくらか自分とか、自分の境遇とかにプライド持ちすぎだ・・・」
ニヤリ笑って、悪びれもせずに言った。
「・・・そうか・・・」
そう言って、ジローは押し黙る。
「家族の話・・・アレもか?」
「へ・・・いや・・・アレは本当さ。」
向こうでは、調査隊が佇み、そうして壊れかけている王妃も立っていた。
「言ったろ・・・俺は墓荒らしの家系だってな・・・ヤバイ仕事さ、犠牲がつきもんの・・・」
哀しい声だ。
「しかし、俺が組織に肉体を売れば、あいつらももうヤバイ仕事する必要はない、って言われてよ・・・後は、よく知らねえな・・・」
彼は、風見とは違い・・・自ら置いていくものとなったのだ。
「―――会って・・・ないのか。」
「―――ケ・・・会えるかよ・・・こんなカラダで・・・」
もう、すぐに死。
「あんたもそうだろう・・・?カザ・・・ミ・・・・・・・・・・」
死んだ。
その死に、少しだけ黙祷をささげ、そして・・・
思う。
―――こいつも、守るために戦っていた・・・
「―――かも、な・・・」
風見はそう言うと、ゆっくりと背を向け、歩き出した。
「だが・・・」
だが。
彼は、彼を守り逝った大切なものたち、彼が死を賭しても守るべきだったものたちの為に、こう言うのだ。
「今はこの体が俺のプライドだ。」
その影は、V3。
仮面ライダーV3。
―――悪と戦い続ける男のプライドそのものだった・・・
エピローグ
数日後
「結局、あの王妃は何も知らなかったようです。」
大がそう言って、頭を下げた。
「俺とアニーさんが、バビロス号のコンピュータを使って徹底的に調べたんだが、それらしい痕跡は何もなかった。ただ・・・」
右手に手袋をつけた、若い男がそう言って続ける。
「―――風見、お前の報告どおりだ。あのピラミッドも王妃の人造人間も・・・今の地球の技術で作れる代物じゃない。」
「―――なるほど・・・」
「それに、ハカイダー・・・サブローが言い残した言葉が気になる。」
―――俺と違う俺を見たら、迷わず殺せ。
「一体何のことか・・・」
風見は少しだけ考えて、そうしてジローの肩に手を置いた。
「そいつは追々明らかになるだろう。それより、あの王妃はこれからどうなるんだ・・・?」
「多分、銀河連邦警察で第二の人生を送ることになると思います。それだけ精巧なロボットだってことですが・・・」
「そうか・・・わかった。」
そう言って、彼は少しすまなそうな貌をして、右手に手袋をした男を見た。
「スマンな結城・・・こんな所まで呼び出しちまって。」
その結城と呼ばれた男は立ち上がり、「なぁに、気にするな。」と言って笑った。
「なんだ、それ?」
「長くなるからまた今度。ところで、これからどうする?V3。」
おどけてそう言う結城に、風見もまた「まだ、調査が必要だ。本郷先輩と合流しよう、ライダーマン。」
そう言って腰を掛ける。
そう、彼は4人目の仮面ライダー、仮面ライダー4号「ライダーマン」である。
「―――まだまだ、この戦いは激しくなる・・・既に片手には余るほどの数の組織が現れている・・・」
風見の、誰に利かせるとも知れぬ呟きは風に溶け、そして消えて行った・・・
続く。
後書き
ごめんなさい。
切腹。
秋子さん「介錯はしてあげます。」
おお、紋付袴に鉢巻なんて、まるで江戸時代のエクスキューショナー、ってか子連れ狼のほう?
おっけー。一思いに。
ざしゅっ!どしゅっ!!
惨ッ!
秋子さん「どうも、この生首には時間と言う概念が薄いようですね・・・」
忙しかったんで。
今夏休みなんで。
でも今日から研究室なんで。
盆なのに。
秋子さん「生首は喋んないでください。盆なのに・・・って何でです?」
16か17には一つ仕事を終えなきゃいかんのですよ。
チョコチョコ進めてるんですが、如何せんスピードアップしないと終わらないことが判明(欝
それまでの休みで、何とかSS二本上げときたかったんです。
秋子さん「はぁ。確かにFate/Summon nightを一つと、これで二つですか。」
欲を言えばもう一つ・・・だったんですが、ちっと無理でした。
シヴィライゼーション(スーファミ)に嵌ってたんで・・・
秋子さん「やっぱりあなた死になさい(はぁと」
ではまた・・・
秋子さん「次回もこの番組で会いましょう。」
シュワッチュ!!
王妃が生き残ったのは、単なる趣味。
勿論、ハカイダー復活は大好きだから。
グハッ?!
ノシ