そのとき、僕は砂漠に立っていた。

ひゅううう・・・・

風が、熱い。

ごうっ!

その風が砂を舞い上げ、砂塵が僕の視界をさえぎった。

ずん・・・・

僕の後ろに何かが立った気配がした・・・

なんだろうと思い、振り向くと・・・

そこには、この間の「蒼い巨人」が立っていた。

蒼い巨人は、ゆっくりと僕のほうを向くと、睨むような鋭い光をその瞳から発していた。

僕がゆっくりと周りを見渡すと、かつて栄えたと思われる文明の遺跡があった。

相当に進歩した文明だったのだろう。

僕の常識では、考えられないものがたくさん見受けられた。

僕は巨人を見据える。

「君は・・・味方なの?それとも・・・敵?」

僕は、少し自信なさげにそう問うた。

曖昧に巨人は天を仰ぐ。

僕は、質問を変えることにした。

「この文明・・・は、君が・・・・?」

そう問うと、「彼」はゆっくりと首を振り、天空を指差した。

それが、何を意味するのか、そのときの僕には皆目見当がつかなかった。

「君はいったい・・・?」

そう問おうとしたとき、彼は後ろを向いて歩み去っていった。

「待って・・・!君は・・・!」

その問いはむなしく風に消え、砂埃が全てを覆いつくしていった。


スーパーヒーロー作戦SPIRITS
第参話「ガイア・・・そして蒼い巨人」後編


とある日曜日 エリアルベース・高山我夢私室

ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ・・・・・

先日、正式にG.U.A.R.D.の一員となった我夢は、士官居住区五階の空き部屋を割り当てられていた。

その部屋・・・ゴチャラゴチャラと、各所に部品や専門書、あるいは一般人には理解できない代物などが散乱していた。

転がっているものこそ普通と違え、しょっぱい部屋であることに間違いは無い。

「よくまぁ、これだけ散らかせたものねぇ・・・」

ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ・・・・・

「待って・・・ま・・・」

かち。

「おきろ、この寝ぼすけ坊主!!」

「寝言言ってんじゃないわよ・・・もう。」

先ほどからけたたましく鳴っている目覚ましを止め、二人がそう言う。

一方は、おなじみのパットだ。

もう一人は・・・

「まったく・・・これが本当にアルケミースターズか?ただのネボスケじゃねえの?」

ああ、僕たちはどこかでこの男を見たことがある。

「まま、そう言わないで・・・これから一緒に仕事する仲なんだから・・・」

「とはいっても、これじゃあなぁ・・・」

なだめるパットに、彼は不満げに漏らした。

寝汗をだらだらかく、我夢の頭をつかむと彼はぶんぶん振り始めた。

「いい加減におきやがれ!このスカタン!!コマンダーがお呼びだって言ってるんだよ!!!」

ぶんぶんぶんぶん・・・

ずいぶんと豪快に振るものである。

「「「「「やめてててててててて・・・・起きますすすす、おきますからああああ・・・・・!!!!」」」」」

頭の中身をシェイクされて、ようやく起きたようだ。

「ようやく起きたようですね・・・高山我夢君?僕を怒らせるとどうなるか・・・わかってくれましたか?」

「わ・・・わわ・・・・わかりいいいました・・・」

彼の穏やかな声に、我夢は頭をふらふらさせながら、そう言った。

「柊さん・・・ひどいですよ・・・」

「馬鹿いってるんじゃないよ・・・コマンダーのお呼びなんだ。さっさと着替えて長官の部屋に行けっての!」

「そうよ、アッコがいくら呼んでも出ないんだもの、あたしたちが起こしてあげただけ幸せと思いなさい?」

ぴぴぴぴぴ・・・・

今度は、XIGナビの着信音である。

「ほら・・・な」

そこら辺に落っこちていたナビを拾って、我夢に渡す。

『ちょっと、我夢!いくらなんでも・・・』

我夢が、それを受け取り回線を開くと、当然のごとくアッコの罵声が響いた。

「まったく仕方ないわねぇ・・・柊さん?」

「はぁ・・・こういうネボスケは戦場で足引っ張るぜ?・・・ああいうやつは、余程の覚悟が無きゃ、こういうところには入れないはずなんだがなぁ・・・」

「まあまあ・・・我夢は優秀ですから。」

「実戦は経験済みだそうだけどな・・・戦場でどうか、期待するとすっか。」

二人は、我夢とアッコのやり取りを聞きながら、そう言いあった。

そう、この男は柊虚である。

ICPO・・・FBIに居たはずの彼が、ここに居るのは・・・



3日前 エリアルベース・コマンドルーム

「堤チーフ、例の彼は?」

「はい、先ほど本艦に到着したところです。まもなくここへ来るものと。」

「そうか・・・これで、かねてよりの構想が実現するな・・・」

そういって、石室は窓の外に目を向けた。

「ええ、広域無限定の作戦活動が可能な遊撃チーム・・・」

「チームセイバー・・・」

今、石室が言った「チームセイバー」・・・

それは・・・

ぷしゅっ

そのとき、扉が開き、二人が部屋に入ってきた。

「パトリシア=ハックマン、入ります!」

「高山我夢、入ります。」

敬礼をして、二人は石室の前に立った。

振り向くと、石室は二人に言った。

「今日は君たちに、話したいことがある。堤チーフ。」

「はい・・・・・・実は君たちに新しいチームを組んでもらおうと思う。」

堤チーフに続けて、石室は、

「ニューヨークでの事件は聞いているか?」

と尋ねた。

「いえ・・・」

「聞いてませんけど・・・」

当然か、というように、石室は昨日付けのニューヨークタイムズを、パットに渡した。

「エーと・・・これ・・・は?」

「三面を見ろ。」

そういう石室に従い、それを開いて、パットは、

「こ・・・これ・・・!」

素っ頓狂な声を上げた。

「これ・・・合成写真じゃないですよね?」

我夢は、そういって紙面をまじまじと見た。

そこには、摩天楼の間を仮面の男が駆け、異形の怪人を引き千切っている写真が載せられていた。

見出しは・・・英語で「謎の仮面ヒーロー、摩天楼に現る!」と書いてあった。

「く・・・なんてこと・・・」

悔しげにパットはそれを握ると、

「まさか、髑髏仮面がそっちに出たなんてっ!しまったーーーーー!!こんな事なら、キョウスケさんと換わってもらうんじゃなかった!!」

と、我夢たちとはまったく違った視点で驚いたり、悔しがったりしていた。

「論点がずれてるよ、パット。」

我夢は突っ込むが、石室は「ゴホン」と咳払いをすると、さらに写真を渡した。

「これを見てくれ・・・」

そういって手渡した写真には、狼を模した仮面をかぶった男が、やはり異形の怪人と格闘していると思しきシーンが移っていた。

「とある、信頼できるルートから入手した写真だ・・・謎の組織が現在世界各国で猛威を振るっているという情報を、これで信じないわけには行かなくなった・・・」

石室は続ける。

「もちろん、これは合成写真や着ぐるみの類ではない。れっきとした“こういう生物”・・・としか言いようが無いものだ。」

さらに、

「これまでも、われわれはいくつかの信憑性に乏しい、こうした目撃情報を収集していた・・・だが、常に、確実な証拠は各国の政府、或いは軍事機密に阻まれ、入手することができなかった。」

そして、こう続けた。

「だが、こうしてはっきりとその存在が確認されたからには、われわれも手をこまねいているわけには行かない。われわれG.U.A.R.D.は旧TDFとは違い、あらゆる怪事件に対処できる・・・そして、それを君たちに・・・これから紹介する者と共にしてもらいたい。」

「入りたまえ。」

石室の無言の促しに、堤は外へ向かって呼びかけた。

ぷしゅっ

扉が開き、若い男が部屋に入ってきた。

「失礼します。」

綺麗な敬礼を石室に送り、彼は我夢たちに顔を向けた。

「ICPOから、G.U.A.R.D.諜報部に出向しておりました、柊虚といいます。よろしく。」

そういって、彼は我夢とパットに握手を求めた。

「ああ、どうも。高山我夢です。XIGのアナライザーをしています。」

「よろしく、パトリシア=ハックマンです。一応、ロボットの操縦をしています。」

それにおうじたふたりは、彼に簡単に自己紹介をする。

「これで、3人そろったな・・・早速だが、命令を通達する。君たち三人は、本日ただいまをもって新チーム「チームセイバー」を結成。その職務に当たってほしい。」

『チームセイバー?』

そう伝える石室に、我夢とパットは聞き返した。

「そうだ、チームセイバー・・・現在、世界各国で起きている怪事件を、ほぼ無制限に調査・解決し、必要があれば戦闘を行える権限を持った独立遊撃隊だ・・・」

「すでにG.U.A.R.D.本部には、許可を得ている。頑張ってくれ。」

二人はそういって、我夢たち三人を見た。

「了解しました。われわれの任務は・・・怪事件の調査解決および戦闘・・・ということでいいのですね?」

「そのとおりだ。そこで、我夢。君にファイターEXの使用許可を与える。」

柊の問いに、石室はそう答えた。

「この任務に機動力は不可欠だ。必要とあれば、地球の裏側にでも出動してもらう可能性がある。」

「わっ、わかりました!」

その言葉に反応して、我夢はそういって敬礼した。

「ところで・・・柊・・・さん?なんか、やけに落ち着いてませんか?普通、こんな重大な任務を下されたら、我夢の反応が普通だと思うんですけど?」

パットの問いに、柊は冷静に答えた。

少し、憂いを含んだ、冷静さで。

「こういう任務は慣れてるんですよ・・・昔から・・・ね。」

「ふーん・・・」

「柊さんは、ICPOで何をしていたんですか?こういう任務にも、驚かない任務って・・・?」

「秘密です・・・今知ると、痛い目見ますよ?追々、話してあげましょう・・・」

「はぁ・・・・」

人差し指を振り、そう答える柊に、二人は納得がいかない様子であった。

「まあ・・・いっか。ところで、しゃべり方が堅苦しくない?なんか外見に似合わない・・・・」

「ん?ああ・・・そうですね・・・初対面の方や、上司の前ではこうなってしまうんですよ。こればかりは癖ですから・・・」

「ひえー・・・難儀なくせねぇ・・・どうにかなんないの?」

「ならないと思いますよ。でも、普段は、今のイメージが崩れるかのようなしゃべり方ですから・・・」

「はー・・・なかなか変わってるわねえ・・・」

何とか無理やり納得させたパットの問いに、困った顔で答える柊。

会話が弾んでいるのはいいことなのだが・・・

「あー、おほん!」

石室は咳払いし、「解散してよし!」と言った。

こうして、やがて世界を救う最強部隊・・・「ガイアセイバーズ」の前身である、XIG・チームセイバーは結成されたのである・・・

そして、これは我夢、パット・・・そして柊の運命を加速させるのだ・・・



そして、先ほどの・・・

「さっさと着替えて、とっとと艦長室へ行け!レベル6の奥のほうだからな!!」

「はいっい!」

我夢は、着替えもそこそこに、上着のチャックを閉めながら部屋を出て行った。

「まったく・・・あいつはいったい何歳のつもりだ?しょうがねえな・・・」

「うーん・・・少なくとも、こないだ二十歳になったらしいよ?」

二人は少し、呆れていた・・・

「ところで・・・喋り方ずいぶん、違うわねえ・・・・会ったときと。」

「ふ・・・いつもはこんな調子なんだぜ?まあ、親しいヤツや、仕事仲間の前でしか、ここまではくずさねえけどな。」

「ほっほお・・・・」

「な・・・なんだよ、その嫌な笑みは?」

「んーん♪なんでもない♪♪」

「ふーん・・・(怪しいな)」

「んふふふ・・・(からかえるネタよねぇ・・・うっふっふ♪)」

なんか、ちょっと意地悪なパットであった。



エリアルベース艦長室

カタカタカタカタ・・・・

石室は、一人暗い部屋の中で、ノートパソコンのキーボードをたたいていた。

艦長の職務とは、戦闘の指揮や普段の統率だけではない。

面倒な報告書、艦内の各種作業・物資補給の認可、上部組織などとの折衝・・・

実に仕事は多い。

しかも、石室の場合、艦長であると同時に、XIGというG.U.A.R.D.有数の戦力を有する部隊の司令官・・・さらに、そこにはさまざまな癖の強い人物が紛れ込んでいる・・・を統率しなければならないのだ。

コンコン。

キーの上を動く指が止まった瞬間、扉がたたかれた。

「入れ。」

ぷしゅっ

「失礼します。高山です。」

「ちょっと待ってろよな・・・」

カタカタカタカタ・・・

再び、指がキーの上を滑り始めた。

・・・・・・・・

キョロキョロ。

我夢が部屋を見回すと、おそらくはコマンダーの妻と息子たちであろう人々の写った、一枚の写真が目に付いた。

「コマンダーって・・・お子さんいたんですね。」

微笑んで、そういった我夢に、石室は、

「君の家族はどうしている?」

と尋ねた。

「え・・・元気ですよ。実家が千葉なんです。」

「ここに居ることは知らせてあるのか?」

「あ・・・その・・・大丈夫です、うちって結構放任なんですよ。うちって。」

そう、あっけらかんと答える我夢に、石室はパソコンの電源を落とし、コーヒーカップを手に取った。

机をたち、我夢の肩に手を置くと、こう言った。

「君の命を、私は預かっている。本来居ては成らぬものを、私の権限で認めさせた。しかも、セイバーの任務を、私は君に与えた。納得づくの柊や、半分軍人のパトリシアとは違う。」

「・・・・・・ありがとうございます。」

「ちゃんと話して来い。」

暖かく、そういう石室。

「じゃあ、電話で適当に・・・」「午後のダヴライナーで降りるんだ!」

我夢の言葉をさえぎり、彼は優しく・・・

「ちゃんと会って話して来い。」

その言葉には、親である身の気持ちがこもっていた・・・



ダヴライナー機中

「で。何でパットと柊さんまでついてくるんですか・・・?」

「気にすんなって。単なる有給とっただけだよ、どうせこれからは絶対取れなくなるんだし。」

「そうそう、この任務、結構忙しくなりそうだもんねぇ。」

3人はダヴライナーの機中にあった。

もちろん、二人は純粋に休暇である。

こんなに早く申請が通るとは、奇跡に近いが、それも石室の思し召しというヤツであろう。

二人は・・・

柊は(温泉あったっけ?当然我夢の実家には、顔を出す・・・)と。

パットは(千葉かぁ・・・帰りは当然デ○○ニ○ラ○ドよね?)と。

邪念に縛られていた(汗

(まったく・・・子ども扱いして・・・これでも二十歳なのになぁ・・・)

我夢が、心の中で毒づく。

(この二人も・・・面白がってるだけなんじゃ・・・?)

・・・・そういうこと思っちゃいけませんって(汗

そのとき・・・・

ふと、パットが外を見ると・・・

ずずずずずずずず・・・・・

海中を何かが移動していた。

「ちょっと、我夢、柊さん!あれ!」

「なんだありゃあ・・・・」

「大きい・・・そうだ!連絡しないと・・・」

2人がそれを監視し、我夢が連絡した。

しかし・・・

『何よ?我夢。』

「今、千葉沖の海中を巨大な物体が進行中。」

『わかった。スキャンしてみる・・・』

アッコが衛星を通じてスキャンすると・・・

「NOT FOUND」の文字がディスプレイに表示されただけだった。

『何もないわよ!そんなにお父さん、お母さんに怒られるのが怖いの?』

「そんなんじゃ・・・」

「我夢・・・あれ、消えちまった・・・・」

「え?」

少し目を放した隙に、怪獣・・・?はその姿を消していた。

「いったい・・・あれは・・・・?」

そのとき、ダヴライナーは海上を過ぎ、空港に着陸態勢に入った・・・・



どこかのマンションの一室

ふっ・・・・

ふっ・・・・

一人の男が、筋トレをしていた。

その部屋の壁には、ガイア・・・そして銀色の巨人のポスターが所狭しと貼られていた。

男は、それを睨むように眺めると、また筋トレを再開した・・・・



海辺のバス停

「ここには、あまりいい思い出がない・・・・」

「ほお・・・なんでだ?」

「子供のころ、僕はいじめられっこだったんですよ・・・」

「へえ・・・・やっぱりね。」

「ひっどいなぁ・・・でも、やっぱ、そう思うよね・・・」

三人が着いたのは、千葉の片田舎。

そこのバス停で、彼らは話しこんでいた。

「勉強ばっかりできて、運痴だったから・・・『勉強できるからって、威張るな』ってね。」

「それは・・・つらい・・・な。」

「うん・・・でも、もう気にしてませんよ。僕には仲間が居る。認めてくれる人たちが居ますから。」

もっぱら話していたのは我夢だった。

重い土産を手に、彼らは海辺を歩いていく・・・

ついたのは、少し高いところにある、古い家だった。

「気ぃ重いなぁ〜〜」

「しっかりしなさいよ、男でしょ!」

「仕方ねえなぁ・・・家がねえよりゃましだろ。気が重いとか言ってんじゃねえよ。」

道路の手すりに手をついて、そういう我夢を、二人は怒っていた。

そこに・・・

「我夢?!」

買い物帰りの主婦が、我夢に声をかけた。

「母さん?」

「ちょっと・・・我夢じゃないの?」

「あ、母さん、これ。お土産!コーヒー豆とチーズケーキ。」

「そんなのいいから、早く入んなさい!・・・そこの人たちは?」

「あ、ああ・・・友達だよ、友達。」

「そう・・・じゃあ、入ってください。行くわよ、我夢。」

ぐいっ

「わ、わっ!」

そう、我夢の母親だった。

引っ張られて、家に向かっていく我夢を追って、二人は我夢の家へと入って行った・・・

「俺らが、怒るまでも・・・なかったか。」

「そうね・・・」



我夢の実家

我夢は、縁側に座ると、出されたスイカを手に取った。

「どうして連絡しないの?」

「どうしてって・・・自分の家なんだから、いつ帰ってきたって良いだろ?」

「そうじゃなくて!準備とか・・・」

我夢は、めんどくさそうに手を振って、

「良いよ・・・いつもどおりで・・・ってわけには行かないか。」

パットたちを見て、そういった。

「ごめんなさいね。たいしたものなくて・・・」

「あ、お構いなく。」

「そうそう、俺ら、そんなに図々しくないですから。夕方には行くところもあるし。」

「そう・・・で、我夢とはどんな関係なんですか?」

心配そうに、そう問う母に、柊は、

「友達です、友達。特にパットは同じ研究室の所属だし。」

「そうそう。」

「へえ・・・なんでまた、ここまで?」

「・・・田舎とは良いものです。そこには何か、得も知れぬ思い出・・・のようなものがあります。」

少し、うっとりと空を見上げる。

「それに惹かれて・・・・ですかね。」

「説明になってないわよ、柊さん。」

「そう・・・か?」

何か、テンポのずれた会話・・・

「・・・大学、辞めたって?」

「あ・・・ごめん・・・勝手なことしちゃって。」

「ま、自分で好きなようにしなさい・・・」

「甘いね・・・このスイカ・・・」

「塩・・・要る?」

「ううん・・・十分だよ。」

少し、我夢はスイカを見つめて・・・「本当に、甘いや・・・」とつぶやいた。

「・・・いい、母さんだね。」

「ああ・・・そうだな・・・」

ゆったりと、田舎の午後は流れて行った。



どどどどど・・・・

「あ・・・あれは・・・?」

「怪獣・・・ね。」

全身から湯気を上げながら、怪獣が海岸から上陸したのだ。

「あれだよなぁ・・・なんで、止められなかった?・・・って言ってる場合じゃねえか。」

我夢は、XIGナビでアッコに文句を付けていた。

「もう、しょうがないわねぇ・・・スキャナが故障でもしてたんでしょ。行くわよっ!コール・アイゼン!!」

「僕らは地上から調べる!」

そういって、我夢はXIGナビを閉じた。

「母さん・・・」

「良いよ、母さんは自力で避難するから。」

たった・・・

少し、駆け出してから、彼は、

「母さん!・・・僕さあ・・・この町って、あんまし好きじゃなかった。でも、今は帰ってきて本当によかったって、思ってる!」



「都市に入る前に止めるわ!」

アイゼンに乗り込んだパットは、攻撃を始めた。

「メガビームキャノン、発射っ!!」

どおうっ!どおっ!

ぼあっ・・・

じゅうう・・・・

「何で、すぐ火が消えちゃうのっ?!」

「パット、怪獣の出す霧をサンプリングして!」

だが、柊はそれに待ったをかけた。

「その必要はねえ・・・あれは、たぶん海水か何かだ。でかい熱を加えなきゃ、倒せない・・・ち・・・そんなん使ったら、町が吹っ飛ぶぜ・・・」

「そうか・・・・だから、少々の攻撃じゃ・・・うわっ!」

がつっ!

そのとき、何か硬いものが我夢に向かって投げられた。

それを柊が払い落としたのだ。

「誰だ?!出てきやがれ!!」

「いやいや・・・さすがですねぇ・・・」

「貴様・・・“メタニオス”だな・・・・・・?」

憎しみを込めて、柊がそう言った。

「おや、私の名前を知っているのですか?」

「だまれっ!貴様のために死んだ、すべての命を・・・今償えっ!」

彼は、右腕をゆっくりと上に上げ、左肩にもって行き、それを右斜めに突き出す。

そして、「陽装!!!!」と叫んだ・・・

瞬間、辺りが赤光に包まれる。

「悪しき世界のページを繰るのは・・・貴様らではないっ!陽光戦士カイザード・・・見参!!」

『陽光戦士カイザードがコンバットスーツの装着に要する時間はわずか1m秒である。ではそのプロセスを説明しよう。
柊の発した「陽装」コードの発信と共に、ギガファントムのソーラーシステム内の増幅システムが起動。増幅された太陽エネルギーは特殊軽合金グラニュームなど様々な物質と合成され、赤いソーラーメタルを生成する。生成されたソーラーメタルは、わずか1m秒でカイザードに陽装されるのだ。』

「てめえ・・・生きては帰さん!!」

柊・・・いや、カイザードはそう叫んで、メタニオスに襲い掛かった。

「おやおや・・・何とまあ、あの部隊のものだったとは・・・くっくっく・・・落ち着きなさい・・・今日は様子見なのですから。」

「なんだとっ!」

「来なさい・・・ナンヒウス共・・・」

彼がそういうと、闇がわだかまり、闇色のタイツを着た男たちが十数人現れた。

「では、また・・・まだ、完全では無いようですねぇ・・・ガイア・・・」

そういうと、メタニオスは、まだわだかまっている闇に溶け消えた。

「待ちやがれっ!」

「ちょ・・・柊さん・・・その格好は・・・それに・・・これ・・・は・・・」

質問する我夢に、カイザードは、

「これが・・・こないだ言った“聞くと痛い目にあう”任務の正体だ・・・」

「ええ・・・?」

「行け!お前にはやるべき事があるはずだっ!」

「はっ・・・はいっ!」

たったったった・・・

我夢は、彼の言葉に従い駆け去っていった。

「さあて。張り倒してくれるぞ・・・・」

そして、ものの数十秒で、それらは張り倒された。



「うおおおおおおおおお!!!」

カイザードは戦闘員どもをなぎ倒すと、怪獣へ向かって突進していった。

「Sチャリオーーーーーット!!!!!」

ごおおおお・・・・

空から、戦車が現れ・・・

「シュウッ!!」

飛び乗る。

「スラッシュロケッター!!」

バシュバシュバシュッ!!

ドガドガガガガガッ!!

じゅうう・・・

「チ・・・やっぱり効かない・・・か」

「ちょっと、その声・・・柊さん?どういうこと?」

「説明はあとだっ!行くぞ、パット!!」

「う・・・うん!」

ドガドガドガドガ・・・

じゅううう・・・・

『ぐぎゃああああああっ!!』

しかし、まったく焼け石に水だった。

「・・・やっぱり・・・僕が・・・」

我夢が、そうつぶやく・・・

・・・そのとき、気配を感じた。

黒服の、憂いを秘めた男が、そこに立っていた。

左腕に付けられた、何かの器具が光を放つ・・・

その瞬間・・・

光がはじけ・・・

ドガーーーーン!!

蒼い巨人が、地上に降り立った。

地面にうずくまるかのような体勢で現れた、彼はゆっくりと顔を我夢のほうに向け、そして怪獣へ向かって走り出した。

「砂漠に現れたやつ・・・ガイアじゃない・・・」

パットがつぶやく。

『ウオワアアアアッ!!』

じゃきいいん!

蒼い巨人は、光の刃を伸ばし、怪獣を滅多切りにした。

ずばっずばずばずばっ!

だが・・・!

しゅううう・・・・

がしっ!

『ウッ?ウオワアアアア・・・・!!』

怪獣は再生し、逆に彼をつかんでエネルギーを吸収し始めた。

「あいつが・・・ウルトラマンだったなんて・・・」

我夢はつぶやく・・・

「・・・ガイアーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

はじけた光は収束し、ガイアとなった。

どどーーーーん!!

『デュワッ!!』

ガイアは、地面に降り立つと、怪獣を彼から引き剥がしにかかった。

「援護するぜ、パット!!」

「おうっ!」

どしゅっどしゅどしゅ!!

ずばぁっ!!

ガイアの腕から放たれた光線、そしてパットとカイザードの攻撃が彼を拘束していた腕をぶち切った!!

「よっしゃ、行け!ガイア!!!」

『デュワアアアッ!!』

がきいっ!!

ばがっがあああああ!!!

ガイアの放った蹴りは、怪獣の頭を吹き飛ばした!!

だが、またも怪獣は再生し、今度はガイアを引っつかんでエネルギーを吸収し始めた。

『デュウワアアアアア・・・・』

そのとき、立ち上がった蒼い巨人は・・・

なんと、腕にエネルギーを集中し始めた!!

「ガイアごと、怪獣をやるつもり?!」

パットが叫ぶ。

「無茶苦茶だ・・・」

「ウウウ・・・・ウオワアアアアアアッ!!!」

ばしゅうううっ!!

彼は、収束したエネルギーを球と化し、怪獣にぶつけた!

『ギュギャアアアアアアアッ!!!!』

どおおおおおおおんん!!!!!

怪獣が爆散した!

そして・・・ガイアは・・・?

『デュウ・・・・』

無事だったようだ・・・

通信から、アッコやコマンダーの安堵の声が聞こえる・・・

《君が・・・ウルトラマンだったなんて・・・・》

『・・・・』

彼は、我夢の声にはこたえずに・・・

だっだっだっだっだ・・・

ガイアにあてつけるかのように・・・

『ジュワアッ!!』

シュウウウ・・・・

ガイアの間際で、地面を離れ、空へ消えて行った・・・

そして、ガイアも空へ飛んでいった。

柊はつぶやいた。

「あの、どちらかと・・・やることになるかも・・・知れねえ。」

「ちょっと、それより、その格好何?かっこいいじゃない?!」

「いや・・・すまん、忘れてくれねえか?これは、結構機密度の高い兵器なんだよ・・・」

雰囲気など無視して質問するパットに、柊は元の姿に戻りながらそういった。



浜辺の岩の間から、我夢が苦しげに這い出てきた。

「・・・くっそ・・・頭ん中じゃ、もっと動けてるのに・・・・」

息を吐くと、彼は振り返った。

そこには、先ほどの男。

彼もまた、振り返る。

「我夢・・・君が後だったんだよ!」

我夢がたずねる。

「・・・藤宮・・・博也君だろ?・・・どうして君がウルトラマン」「根源的破滅招来体を止められるのは、アルケミースターズなんて仲良しグループじゃない!それに気づいたから、俺はやめた!!」

藤宮は、さらに声を荒げる。

「人類は地球の癌細胞だよ!増殖し続け、地球を汚し続けるだけの存在!!」

「そんな・・・」

「ウルトラマン・・・アグルとガイアは地球を守るものだ!しかし、存在理由をもたない人類まで救う義理はない!」

我夢を指差し、彼は続ける。

「XIGなんてやめてしまえ!僕を手伝うことが、君のなすべきことだ!!」

我夢は首を振り、

「違う・・・絶対に君の考えは間違ってるぞ!」

と叫んだ。

夕日の中対峙する二人・・・

やがて、藤宮は夕闇の中に姿を消していった。



我夢の実家

「いやはや、とんだ初任務になっちまったな・・・」

「まったくです。父さんも、この騒ぎのせいで帰ってこれなくなっちゃったし。」

「しかも、電車もバスも、動いてないときたもんだぁ!」

三人は、星を見上げて、話し合っていた。

我夢は、母にXIGに入って、怪獣と戦っていることなどを話した。

驚くほどに、反発は少なく、「無茶しないでね」とだけ言われただけだった・・・

「柊さん・・・あのスーツ・・・何なんですか?怪獣と渡り合えるなんて・・・」

「どう考えても地球の技術レベル超えてる・・・って言いたいんだろ?」

「そうそう。だって、強化服の分野ではさ、ちょっと前にG3システムが開発されたばっかりのはずよ?」

苦笑いする柊は、「まあ、それもいずれ明かすよ・・・」と言い、続けて、

「ただ・・・これだけ覚えといてくれ。スーパーヒーロー作戦・・・魂の戦いが待つ・・・ってだけな。」

「はあ・・・」「ふーむ・・・燃えるわ!正義が!!」

それぞれが、それぞれの反応を返す中、後ろから我夢の母の夕飯を告げる声が響く。

「星は・・・綺麗だな。」

今日も、星空は瞬く・・・



またもどこかのアジト・・・

メタニオスが居た。

(やはり、ガイアもアグルも・・・完全ではありませんでしたねぇ・・・あの方の言われたとおりです。)

「どうした、あ?世紀末王様に謁見できるからって、びびってんのか?」

「いいえ・・・『蜘蛛』さん。考え事をね・・・クック・・・」

「ちっ・・・ふざけやがって・・・声だけでも謁見できるやつは限られてんだ・・・なめた態度とってんじゃねえぞ・・・?」

「いえいえ・・・」

そんなやり取りをしながら、彼はまったく別のことを考えていた。

(くっくっく・・・まぁ・・・そろそろですねぇ・・・あの部隊の連中も、出てきたことですし・・・ひゃーははははは!!!)

(ちっ、いけ好かない野郎だぜ・・・世紀末王様はなぜこいつを・・・)

闇は、じっくりと世界に浸透していく・・・

続く








次回予告

黒の雄たけびが響く。

黒き狼・・・黒き月・・・黒き太陽・・・・

復讐者の視線と、滅びの使者が待つ・・・

黒き月は、黒き狼に出会い。

黒き狼は、黒き太陽に出会う。

次回、スーパーヒーロー作戦SPIRITS

「黒」

魂より継がれし物語、今こそ語ろう・・・





後書け

ぐはああああ・・・・

ねむいっす。

結局のところ、前後編あわせると、前回と量がさほど変わってない。

むう。

・・・・・・・・

ま、いっか。

今回のゲストは・・・

前回と同じ、藤宮博也さんと・・・

次回出演予定の・・・

秋子「私です。」

藤宮「前回のあとがきでひどい目にあった、藤宮博也です。ちなみに我夢はまだ寝込んでます。」

・・・あ、やっぱり食べさせられちゃったんですか?

藤宮「ああ・・・ものの見事にひど・・・!?」

秋子「続きはどうしました?(ジャムを手に持っている)」

藤宮「い・・・いや、なんでもない。」

秋子「なら、いいです。」

・・・ま、まあ・・・落ち着いて・・・

次回は、黒狼とBlack、そして、ヒロイン悠子の登場が待ってます。

がんばってくださいね。

秋子「はい。久々に高校時代の榊に会えますね♪」

・・・お手柔らかに・・・

では・・・

藤宮君に、一発芸を。

藤宮「何で俺が?!」

秋子「あら、やらないんですか?(まだジャム持ってる)」

藤宮「・・・くっ・・・仕方ない・・・では、変身!」

謎の声「ファイナルベント」

え・・・もしかして、狙われてます?しかも、ハイドベノンっすか?

藤宮「喰らえっ!!!」

ぎゃあああああああああああ!!!!!!

ずっどーーーーーーーん!!!

終わり。



秋子「あらあら・・・やっぱりこうなるのね♪」

しかも・・・ベタなネタっす・・・がく。

Y首領殿・・・・今回も・・・・せりふあわせ・・・ありがとう・・・・

俺の・・・何かが・・・やっと・・・

効果音「ぐしゃっ」

藤宮「パクルなっ!!」

完。