月。

地球の衛星。

大昔、もうひとつの惑星になるはずだった星がぶつかって、母なる星から分かれた星。

その重力が起こす潮汐は、生物の進化を助けてきたと言う。

現に、人間のリズムは、月に支配されている・・・

満月の夜には、凶悪事件が多くなるとか。

身近なところでは、月経の周期は、その名が示すとおり月の巡りだ・・・

人はその不思議な輝きを、数々の伝説で語ってきた。

かぐや姫。

月のウサギの伝説。

狼男や吸血鬼も、月に支配されるモンスターだ。

そんな、月・・・

冷たい夜の女王・・・

昔、あたしにも、みんなみたいに黄色く見えていた。

でも、今は、黒く、蒼く見える・・・

自分が死んだ日。

黒い運命が、あたしに微笑んできた日。

ここじゃないところで・・・

星々のかなたで・・・

あたしの運命が勝手に変えられた夜。

にびいろの闇と紅い太陽が、運命に飛び込んできた日。

その日から、あたしは「黒い月」・・・

紅い太陽の輝きを受けて、冷たく黒く輝く月・・・

そう、その日から・・・



スーパーヒーロー作戦SPIRITS
第四話「黒」



東京某所 水瀬信一氏宅

ピピピピピピピ・・・・

目覚ましの音が響く。

ピピピピピピ・・・・

もうひとつ・・・

ぴぴぴぴぴ・・・

もうひとつ?

いくつ有るのだろうと、誰もが疑問に思うほどに、部屋のいたるところに置かれた目覚まし時計が、一斉に動き始めた。

普通の人間なら、10回はたたき起こされるであろう音量に達している。

だが、この部屋の主・・・

まったく起きる気配がない。

いったい、どういう神経してるのだろうと、余人が考えてしまうほどだ。

「・・・・・・」

がばっ

音量に耐えかねたのか、彼は、起きる気などない、とでも言うかのように布団を深くかぶった。

その時。

ばんっ!

勢いよく扉が開け放たれ・・・

「起きなさいっ!榊――――っ!!」

がんがんがんがん!!

高校生くらいの女の子が、部屋に入ってきてフライパンをたたき始めた。

古典的な方法ではあるが、その効果は絶大だったようだ。

がばっ!

彼は、布団を吹き飛ばすと、上半身をのそっと起き上がらせた。

「くー・・・・・・・」

おっとっと・・・また寝ているようだ。

ぴき。

額にすこーし青筋を浮かせた少女は、ごそごそと周りを引っ掻き回し・・・

メガホンを手に取った。

おきろーーーーーーーっ!!この低血あーーーーーーーつっ!!!

どがっ!

ず・・・ずん。

ガラガラガラ・・・・

突然起きた、巨大な声に驚いたのか、榊はベッドの後ろに頭をしこたまぶつけ・・・

その衝撃でくずれてきた、本棚の本・・・の下敷きになってしまった。

「あ・・・あれ・・・?わ・・・榊――――っ!!?」

ごそごそ・・・

「あ・・・おはよ・・・秋子姉・・・」

その崩れた本の中から、榊は起き出して来た。

「はぁ・・・よかった・・・って言うか、その低血圧何とかしなさいよ。前より酷くなってるわよ?」

「ああ・・・ごめん・・・」

のそのそ、本の山から出てくる彼の手には・・・

「これは・・・あ!」

「それ・・・もしかして・・・」

「あ、あ、これはさ・・・あのさ!」

「きゃああああああっ!!」

その手には、先日彼が、名も無き友人Aが、榊が「いらん」というのに渡して、その後処理に困り本棚の上においておいたヤバゲな本・・・

榊の運命は、半ば決まったようなものであった。

「榊の・・・
スケベ――――――――っ!!!

ぶううううん!!

秋子は、小脇に抱えたままのフライパンを手に取ると、思いっきり榊の顔面めがけてフルスイングした!

ばっごおおおおおおおん!!!

「ぐはっ!?」

榊は、ものの見事に吹き飛び、ベッドにまたも頭をぶつけて昏倒した・・・



同時刻 同じく東京郊外 立花オートレーサー

「は?おやっさん、下宿だって?」

紅いTシャツ・・・真ん中にでっかくSの文字が書かれている・・・を着た、精悍な顔つきの若い男が、初老の男性にそう言った。

彼の名は、城茂。

初老の男性は、立花藤兵衛・・・

どちらも、歴戦の勇者・・・である。

「オウ、そうだ。茂・・・この手紙見てくれ。」

藤兵衛はそう言うと、戸棚からエアメールと思しき便箋を取り出した。

「・・・これ、結城さんからかい?」

「ああ、連絡もせず、今まで何してるかと思えば・・・若いモンはこれだからいかん。」

少し不機嫌に・・・だが、懐かしさをこめた口調で、おやっさんはそう言った。

「何々・・・拝啓、立花藤兵衛様・・・」

「拝啓 立花藤兵衛様
 夏の太陽もまぶしい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?
 こうして、手紙に筆を滑らせていると、あの苦しかった日々が思い起こされます。
 戦いから離れられました、おやっさんにこのようなことを頼むのは心苦しいのですが・・・
 用件を単刀直入に申し上げますと、私の知人の妹がこのたび、そちら近くの高校に通うことになりました。
 つきましては、彼女の下宿を探しております。
 下宿先の選定などをお願いできるでしょうか?
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 では・・・いつまでもお元気で・・・
                               結城丈二 敬具」

手紙には、丁寧な文字でそう書かれていた。

そして、もう一枚の手紙には、昔の思い出や気になっていることなどが、事細かに書かれていた。

「へえ・・・結城さんからとは珍しいぜ。」

「ああ・・・それでだ、ここは見てのとおり、アパートなんざ一軒もないからな。うちに下宿させることにしたのさ。」

「ふーん・・・」

そう、雑談を交わす中、茂は別のことを考えていた。

(おかしい。結城さんが、こんなことぐらいで手紙を出すわけがねえ・・・なんせ、あの人が手紙をくれたのは・・・ネオショッカーと戦っていたとき、洋の野郎を手助けしてやれ・・・ってのだけだったんだ・・・)

そう、彼は裏があるのじゃないかと思っていた。

その思考を見透かしたように、藤兵衛は、

「良いじゃないか・・・もう、俺たちには関係ないんだ・・・そのぐらい、聞いてやろう・・・」

と、さびしげにつぶやいた。

その時・・・

「おはようございまぁーーーっす!!立花さんちはここですかーーーーっ!!!」

元気な声が響く。

「なんだぁ?」

「はいはい、今行くよ。」

そう言ってどたどたと、藤兵衛が店の軒先に出ると・・・

銀髪、金眼の少女がそこに立っていた。

見た目は、どう見ても12〜3。

その子は、彼を見てまっすぐに言った。

「今日からお世話になる、芽鑰悠子です!よろしくお願いしまーす!」

そう、彼女が今日から、立花オートレーサーの下宿生・・・と言うか、居候となる、芽鑰悠子その人であった・・・



「・・・ひでえことするなぁ・・・秋子姉・・・」

しゃこしゃこ・・・

歯を磨きながら、彼は先ほどのことを思い出していた。

そう、彼は秋子に張り倒されたあと、気絶・・・

数分間昏倒し、さっき起きたばかりだった。

当然のことながら、学校は遅刻したも同然である。

それがゆえに、ゆったりしている・・・と言うことだ。

洗面所の脇から、秋子が顔を出した。

「榊・・・もう、遅刻決定よ?」

「ああ、大丈夫、大丈夫。おやっさんのとこまでバイクで行けば・・・」

「だめよ、巡回の先生に見つかったら、停学になっちゃうもの・・・」

「仕方ない・・・普通に走るか。デモさ、遅刻決定は、秋子姉のせいだぜ?あの本は友達から預かったモンなんだ・・・」

むくれてそう言う秋子に、榊はやんわりと言い返した。

「むー・・・でも、いくらあんな状況だって、あんなの握って来られたら・・・困っちゃうよ・・・・」

少し、秋子は紅くなり、言い返した。

「だからって、フライパンで殴るか?普通死ぬぜ?」

ガラガラとうがいをしながらそう言う。

「うう・・・ごめん・・・でも。」

「おっと、もうバイク乗ってもやばい時間だぜ!行こう、秋子姉。」

「うん・・・」

榊の口調から、気にしてないことを知ると、彼女は走り出した。

彼女は、最近少し思うところがある。

(最近、榊の足、速くなった。今までも速かったけど・・・なんか、今は追いつけないくらい・・・)

そう、少し前までより、彼の運動能力が、異常・・・と言って良いほどに上がっているのだ。

(いくらなんでも・・・変よねぇ?どうしちゃったのかしら?)

その疑問に、朝のひと時は答えを与えてはくれなかった・・・



彼のフルネームは、「陣内 榊」・・・

5歳のときから、ここ水瀬信一博士宅に居候をしている。

彼は五歳より前の記憶が無い。

彼の記憶は、彼の叔父によって水瀬博士に預けられるところから始まっている。

叔父の名は、「本郷猛」。

・・・仮面ライダー1号である。

彼が預けられたのは、本郷がまだ改造手術を受ける前・・・

緑川博士の失踪を、本郷が知ったころである。

持ち前の正義感で、何かを知った本郷が、どこかから榊を連れて逃げ出したらしい・・・

そして、緑川博士の愛弟子で、彼の信頼する先輩だった水瀬氏に預けた・・・

彼は、そのことを知っている。

そして、彼が本当の叔父なのかどうか、わからないということも。

それでも、彼は快活に育ち、今は少し離れた高校に通っている。

水瀬家のものにとって、もはや、彼は家族同然の存在である。

彼は、自分がここに居るのが一番良い・・・

水瀬姉妹・・・春奈と秋子にこき使われるのは何だが。

このまま、昔の記憶は戻らなくても良い。

叔父の素性や、自分の生まれなど、どうでも良いと思っていた。

・・・つい、この間まで。

「あ、榊君。おはよう・・・でも、今日も遅刻寸前だね?」

若い男が、榊に声をかけてきた。

彼が水瀬信一氏・・・

この家の家主で、城南大の教授・・・

専門分野は応用生物学・・・

すなわち、生物遺伝子の改良による有益な新生物の誕生などの実践的分野で、成果を上げてきた人である。

ちなみに・・・ずいぶんと若作りである。

榊も、その年齢を知らなかった・・・

それほどに彼の容貌は、若かった。

「信一さん、おはようございます。遅いですけど休みですか?」

「いや、今日は出張でね・・・鬼塚先輩が迎えに来るまで待機さ。」

ニコニコと笑みを浮かべて、彼はそう言う。

「大変ですね・・・」

「そうでもないさ。鬼塚先輩や風祭先輩も居るし。春奈も手伝ってくれるからね・・・成果は上がっているよ。」

そう言うと、彼はネクタイに手を伸ばした。

「そんなことより、時間は良いのかい?秋子が、玄関で待ってるよ。」

「げっ!やばい!!・・・んじゃ、行ってきます。」

時計を見て、さすがにヤバイと感じたのか・・・榊はテーブルの上のジャム付トーストを手に取ると、走り出した。

「榊ぃーーーー!本当に遅刻しちゃうわよっ!」

秋子の声が響き、榊はトーストをくわえた。

(今日は、イチゴジャム・・・何か良いことあるかもな・・・)

そんなことを思いながら、予鈴まで後3分・・・

実質2kmはある道を、二人は駆け出すのだった。



私立城南大学付属空雪高校1年D組

「はぁはぁ・・・」

何とか、ホームルームには、間に合ったようだ・・・

「こら、また遅刻か、陣内。」

「すいません・・・」

「もう良いから、とっとと出席許可証を出せ。」

「はあ・・・」

がたん。

遅刻者限定出席許可証を先生に渡し、榊は席に着いた。

「おはようございます。榊さん。」

「あ、おはよう、観奈美。」

「いっつも、大変ですねぇ〜〜〜」

のほほんとしたひそひそ声が、榊の耳に届く。

彼女は倉田観奈美。

国防軍増強を掲げて、現在選挙戦を戦っている倉田代議士の娘である。

彼女・・・かなりの美人で、人当たりもよく、かつ金持ちの娘であるため、この間までナンパどもに付回されていた。

・・・ちょっと行き過ぎたやつは、ストーカーとして逮捕されてしまったほどである。

そして、そのナンパどもを尽く叩きのめした男・・・

・・・それが、榊であった。

それ以来彼女は、榊に何くれとなく世話を焼いていた。

榊はそれを、鬱陶しくは思っていたが、同時に憎からずも思っていた。

特に、彼女の作る弁当が。

「ああ、バイト先のおやっさんと、ちょうど会えたんでね・・・ジープで送ってきてもらったんだ。」

「へぇ〜そうだったんですか・・・」

「・・・」

(あー、秋子姉大丈夫かなぁ?かなり息切らしてたけど・・・)

ぼんやりと、そんなことを考えた。

「そういえば、今日転校生が来るらしいんですよ〜」

「へえ・・・」

「何でも女の子だとか。お友達になれるでしょうか〜?」

「ふーん・・・」

二人がひそひそ話を、いったん中断した頃、担任は・・・

「エー、と言うわけだから、夜道は十分注意するように。男だからって油断するなよ?この間・・・東星大学の男子学生が二人、失踪しているんだ。」

まだ話を続けていた。

次の授業・・・

担任が、担当の授業だから話を続けていられるのだろう。

(話なげえなぁ・・・もうちょっと遅れてきたほうがよかったか?)

そんな不遜な考えを頭に浮かべた、そのとき・・・

「アー・・・では、今日は転校生を紹介する。入ってきたまえ」

がらっ

教室のドアが開けられ、少女がぴょこんと、顔を出した。

スタスタと、教壇の前に立つと、彼女は眦をあげた。

「エー・・・転校生の、芽鑰悠子君だ。みんなよろしく頼む。」

「あたしは悠子!よろしく!!」

元気な声が上がる。

生徒等に向けて、ピースサインをすると、彼女はニカっと笑った。

そう、転校生は先ほどの彼女・・・悠子だった。

シーン・・・・・

悠子の元気な声と裏腹に、教室は静まり返っていた。

「・・・あり?どうしたの、みんな?悠子が何かした?」

シーン・・・

沈黙は続き・・・

やがて、一人の手が上がった。

「何だ、陣内。」

「はあ・・・その子・・・本当に転校生ですか?・・・小学生じゃ・・・ないんですか?」

そう、教室の皆は彼女の年齢を、図りかねていたのである。

「どう見たって、小学生じゃないですか?漫画じゃあるまいし・・・」

スタスタ・・・

・・・榊がそう言う中、悠子は榊に近づいていった。

悠子は榊の目をまっすぐに見ると、

「キミ・・・いくつ?」

「・・・そりゃ、16に決まってるだろ?」

多少うろたえながら、そう答えると、悠子は・・・

「悠子は17・・・キミより年上なんだぞっ!?」

そう言うと・・・

しゅっ

右腕が小刻みに動く。

ずがっしゃあああああああっ!!!

そして・・・左腕のパンチがみぞおちに入った!!

捻りを利かせたパンチ・・・俗に言うコークスクリューパンチが、榊に突き刺さったのだ。

「ぐえええっ!?」

その勢いで、彼は後ろの席に激突すると、朝に引き続き、またも昏倒してしまった。

「思い知ったか。悠子の年を間違えないでよねっ!」

腕を組んで、そう言うと悠子は教卓の前に戻った。

「と言うわけで・・・よろしくお願いしますっ!」

シーン・・・

またも、沈黙した後・・・

「すごいっ!」

「まぢかよ・・・あの榊をぶっ飛ばすなんてっ!?」

「フリッカージャブ?!」

「左のコークスクリューだと?!」

「ぜひ、わが女子ボクシング部にっ!」

「わっわっ・・・」

・・・みんなが押し寄せてきた。

もみくちゃにされながら、悠子は「ちょっとやりすぎたか」と、心の中で反省していた。

「大丈夫ですか〜」

「あ、ああ・・・何とか。」

昏倒していた榊は、観奈美に介抱されて、何とか立った。

群衆を押しのけ、悠子に近づくと、榊はこう言った。

「お前・・・なかなかやるな。後で話がある・・・付き合えるか?」

悠子は、にこっと笑うと、二つ返事で、

「うん、良いよ!」

と微笑んだ。

そう言うと、ほかのみんなは榊を見た。

もちろん、観奈美もである。

「知らなかった・・・」

「・・・まさかねぇ・・・」

「でもさ、観奈美って、結構幼く見えるよねぇ?・・・だとしたらやっぱり・・・」

ぼそぼそと話し合うクラスメートを見て、榊はなんだこりゃ・・・というように観奈美を見た。

「え〜と・・・多分、榊さんに、ロリコンの趣味がある〜〜って思ってるんじゃないでしょうか〜?」

観奈美は、榊に近づくとそう耳打ちした。

「はぁ?」

榊は、何を言ってるかわからん・・・と言う顔をした。

その時・・・

「榊っ!貴様・・・クラスのアイドル・・・倉田さんと仲良くしてる上に、ロリコンとはなぁっ!?死ぃぃぃねぇぇぇぇぇっ!!」

一人が、叫びながら襲い掛かってきた。

それにつられるかのように、男子生徒がまとめて襲ってきた。

「うおっ・・・な・・・何とち狂ってやがる!」

クラスメートを叩きのめしながら、彼は叫ぶ。

「誰か何とかしてくれっ!?」

そう彼が言ったとき、悠子が「何とか、してみようか・・・」と呟くのが聞こえた。

常人には聞こえないような、小さな声で。

「はっ!」

ぼんっ!

悠子が叫ぶと、クラスメートが数人吹っ飛んだ。

それを見た全員が動きを止める。

「・・・いい加減、静かにしようよ。でないと・・・悠子、怒るよ?」

シーン・・・

額に、少し青筋を立て、彼女は穏やかに。

「わかったら、席つこう?ね。」

そう言うと、みんなはつき物が落ちたかのように、席に着いた。

「アー・・・仲良くするように・・・」

担任の声が空々しく教室に響く。

「うー・・・席は・・・陣内の隣、空いてたな。そこに座ってくれ。」

「はいっ!」

スタスタ・・・

先生の言葉に従って、悠子は榊の隣に腰を下ろした。

「よろしくね、榊っ!」

「あ・・・ああ。」

「それより・・・さっきのこと、榊君に謝ってください〜」

観奈美が、少し不機嫌そうにそう言う。

「あ、ごめん・・・えと、年の事言われると、あたし見境なくなっちゃうんだ・・・本当にごめん!」

悠子がそういって、深く頭をたれると、観奈美は一転していつもの穏やかな表情に戻り、

「悠子ちゃん・・・人をたたいちゃいけませんよ?」

と言った。

「うん・・・ごめん。」

「よし、それじゃ仲直りの握手!」

観奈美は、榊と悠子の手を握らせ、そう言った。

悠子は、テレながら、彼女に挨拶をした。

「よろしく・・・えと。」

「観奈美です、よろしく〜」

「うん、よろしく観奈美っ!」

元気よく二人に挨拶をする悠子。

その声を聞きながら、榊は別のことを考えていた。

(あれは普通の力じゃない・・・まさか・・・)

「さっき、後でって言ったよね?多分、キミの疑問は晴れると思うよ?」

見透かすかのように、無邪気・・・だが、言い知れぬ何か・・・そう、榊自身が背負っているものと似た、「何か」を秘めた表情を浮かべ、悠子はそう言った。

「?何のお話ですか〜?」

観奈美は、のんきそうにそう言った・・・

「おーい。ホームルームはまだ終わってないんだぞ〜?そこの三人・・・廊下に立ちたいか?」

担任の声が響き、三人は「すいませーん」と、なんとも気のない返事をした。

当然のことだが、三人とも廊下に少し立たされたのだった・・・



放課後 学校帰りの道

榊と秋子・・・そして、悠子の三人は繁華街へ向かう道を歩いていた。

「疲れた〜〜〜」

「ま、あれだけ部活見せられれば、そりゃあ疲れるわな・・・」

「でも、悠子は部活なんてやらないよ?」

「・・・ま、いいんじゃねえの?」

「よくない・・・だって、半分強制的に・・・だよ?やんなるよ・・・」

なぜか親しげに話す二人を見て、秋子は榊の頭を引っ張り、ひそひそしゃべり始めた。

「榊・・・この子誰?」

「いや、今日来た転校生。話聞いたら、おやっさんとこで下宿するらしいから・・・」

「ははぁ、それで夜道は危ないから集団下校・・・ね。」

「そう、そう言うこと。」

「榊はやさしいからね・・・」

「よせよ、秋子姉。照れるだろ?」

珍しく、おどけたように笑う榊・・・

その表情の中で、昼間屋上で悠子から聞かされた話を反芻していた・・・



「あたし・・・改造人間なんだ。」

「へえ〜〜・・・って、マジか!?」

「まじめもまじめだよ。」

少し翳りのある顔で、悠子はそう言った。

「・・・あたしは、宇宙から来た・・・デモね、本当は地球人なの。」

そう言った彼女の口から、さまざまな言葉が飛び出してきた。

「あたしは・・・もともと、こことは違うところ・・・日本のどこかで平和に暮らしてた・・・」

だが、彼女が12のときに、彼女はさらわれた。

さらったのが普通の誘拐犯だったら、まだましだったろう・・・

彼女をさらったのは、宇宙の果ての犯罪組織だという。

そんな、とんでもない話を聞かされた。

「それでね・・・あたしは、そこで改造されたの・・・エルリアって言う星の、古代狼の遺伝子を合成されてね。」

「狼・・・」

「そう、狼・・・すごく寿命が長くて、大きな狼なんだって。だから、あたしは年をとらなくなった・・・」

そこで、悠子はいったん話をきった。

「信じて・・・くれる?」

「・・・にわかには信じがたいな・・・証拠は、あるのか?」

榊がそう言うと、彼女はポケットから手紙を取り出した。

「これ・・・キミも知ってる人から。」

それを受け取ると、榊は読み始めた。

「何々・・・これは・・・!」

「そう、キミの叔父さんからだよ。」

「・・・わかった、信じる。けど・・・」

一転して、真剣な顔つきになった彼は、

「・・・それにしても・・・何か恐ろしい事が起きてるようだな・・・」

とつぶやいた。

「うん・・・本郷さんから、キミも改造人間だって事は聞いてる・・・だから、協力してほしいんだ。」

「・・・どんな事情か、説明してくれ・・・」

「うん、これはまだ、本当は秘密なんだけど・・・」

悠子はそう言うと、ひとつのディスクを取り出した。

「あたしの所属してる組織・・・宇宙のごみ掃除が仕事なんだけど・・・」



(参ったな・・・どうにも、俺を改造したやつらを叩き潰せばいいって問題じゃなくなってきたらしい・・・・そういえば・・・天野、大丈夫かな?)

そう考えると、また榊の思考は昼の屋上へ戻っていった。



「でね、あたし・・・相棒がいるんだ。あいつ・・・今頃どうしてるかな・・・」

「相棒か・・・」

「うん、そう。」

「・・・俺の知り合いにな、お前みたいに相棒がいた人がいるんだ・・・」

「ふーん・・・その相棒の人、どうしてるの?」

ちょっと興味がある・・・と言うように、悠子は言った。

「いや・・・ユリ子さんって言うんだけどな・・・死んだよ。」

「・・・・」

「ユリ子さんが言ってたんだ、いつか平和になったら、遠い美しい場所に行きたいって・・・茂さんに言ってた・・・」

「・・・茂って?」

「ああ・・・俺の兄貴分みたいな人さ。」

「そう・・・」

「いつか・・・俺も行きたいよ・・・」

さびしく、そう彼はつぶやいた。

「・・・悲しいね・・・こういうのって。」

「ああ・・・そうだな・・・」

その時、悠子は異質な気配を感じた。

今まで気配を完全に消していたような・・・

高位の能力者のにおいがした。

「そこにいるの、だれっ?!」

悠子が叫ぶ。

「ん・・・この気配・・・天野か?」

榊がそう言うと、物陰から短めの髪をした娘が出てきた。

「陣内さん・・・今の話し、何なんですか?!」

驚きと困惑を隠せず、彼女は叫んでしまった。

「聞かれちゃったか・・・仕方ない。」

悠子が冷たくそうつぶやく。

「おい!何をする気だ?」

「ちょっと、ごめん・・・」

とんっ・・・

すばやく悠子は天野と呼ばれた娘の後ろに回ると、首筋にアンプルらしき物体を当てた。

「すぐ済むから・・・」

「あっ?・・・はぁぁ・・・」

息を吐くと、彼女は地面にくず折れた。

「何をしやがった!」

榊が叫ぶ。

「・・・規則なんだ。もらしていい人以外に、機密を知られたら、こうするって。」

「まさか・・・」

「殺してなんていないよ・・・ただ、ここ30分ばかりの記憶を消しただけ」

アンプルをつぶしながら、そう言う。

つぶれたアンプルは、瞬時に消えていった。

「え・・・?」

「代わりに、とんでもない記憶をお薬の中のナノマシンが作ってくれるから。」

そう言ったとたん、天野が目を覚ました。

「う・・・うーん・・・はっ?!」

「・・・大丈夫か、天野?」

「じ・・・陣内さん、そんな・・・」

「へ?」

起きたとたんに、天野が顔を赤くした。

「屋上でいつも寝てるものと思ったら、うわさの転校生と盆踊りを踊っているなんてっ?!」

「はぁっ?」

なぜか顔を赤らめながら、素っ頓狂な事言う天野を横目に悠子は、「ね、言ったでしょ?」といった。

「この薬の欠点はねぇ・・・本当にとんでもない記憶になっちゃうことなんだよね。」

「おいおい・・・」

「・・・ところで、自己紹介してなかったよね、あたしは芽鑰悠子。キミは?」

「天野・・・天野咲耶です。近くの神社で、巫女をしています・・・」

「うん、よろしくっ!」

・・・こうして、榊に釈然としないものを残して、昼のひと時は過ぎていった。

その光景を、遠くから見ているものがいるとは知らないで・・・

「ふうん・・・あの流れ者の言ったとおりね・・・やはり「黒狼」にコンタクトしてきた・・・か。」

女教師らしき人物が、その光景を遠くから見ていた・・・



「さて・・・遅くなったし・・・おやっさんとこで、ご飯食べる?」

悠子が言う。

「んにゃ、家では春奈姉が待ってるだろうし・・・いいよ。」

「うん、秋子・・・ちょっと元気ないね?」

そう言うと、悠子は秋子の手を握り、ちょっと榊からはなれた。

「・・・秋子、榊の事好き・・・なんでしょ?」

「えっ?!」

秋子は頬を染め、驚いた。

「んー・・・だって、顔に書いてあるよ?あたし、勘はいいほうなんだ。」

「え・・・あの・・・えっと・・・」

「それでさ、榊ってすっごくもてるから・・・悠子もって思ったんでしょ?」

「え・・・あ・・・うん・・・」

スー・・・ハー・・・

秋子は、驚きを抑えるため、深呼吸をした。

「うん・・・そうだよ、悠子ちゃん。でも・・・」

「でも?」

「女心には本当に鈍感な子なのよ、榊は・・・・」

そういって、彼女は頬に手を当て、困ったような表情をした。

「うーん・・・あたしの相棒も、結構鈍いほうなんだよねぇ・・・そう言うの。」

「そう・・・なんだ。相棒って?」

不思議そうに秋子が聞くと、彼女は、

「うん、そう・・・相棒だよ。あいつ・・・悠子のこと妹ぐらいにしか思ってないんだよねぇ・・・」

「そう・・・なんだ。」

「仲間だね?」

微笑んで、悠子がそう言うと、秋子も笑って。「うん」と言った・・・

ぶおおおお・・・

そのとき、ジープが歩行者の網をくぐるように近づいてきた。

「あれ・・・おやっさんのジープじゃ?」

「うん、間違いない。」

「どうしたのかしら?こんなところ。」

三人が口々に言っている。

ぶおおおお・・・

やはり、こちらに近づいているようだ。

「?・・・おやっさん、どうしたんだろ?」

そうつぶやくと、おやっさんの声が聞こえた。

「おーい、榊〜、春奈ちゃん今日家帰れないってよ〜〜」

「はぁ?・・・さては、朝の出張の件か・・・」

ききっ!

目の前で急ブレーキをかけると、おやっさん・・・藤兵衛のジープは止まった。

「オウ、悠子も一緒か。遅いから心配したんだぞ?」

「・・・遅いって、まだ8時だよ?」

「いや、女性・・・それも、子供が出歩いて良い時間じゃない!」

「おやっさん・・・古。」

「うん、ふっるーい。悠子、感心しちゃう。」

「何だと?!」

二人と話す藤兵衛に、秋子が声をかけた。

「あの・・・帰れないって、どういうことですか?」

「ん、ああ・・・何でも、出張先の城北大で、昔の友人と会っちまって、今日はその人の家に泊まるそうだ。春奈ちゃんの話だと、信一君かなり酔ってるそうだからな。」

「・・・わかりました。で、どうして立花さんが?」

怪訝そうに、秋子はそう聞いた。

「おやっさんでいいって、いっつも言ってるだろ?・・・まあ良い。秋子ちゃん、携帯調子悪いって、こないだ言ってたろ。榊は持ち歩こうとしないからな。」

「あ・・・!」

「で、うちに電話が来たってわけだ。」

「大体榊、お前が携帯持とうとせんから、わしがこうやって来ることになったんだ。何か言うこと無いのか?」

おやっさんは、パイプをくわえてそう言った。

「すまない・・・」

そう言うと、榊はとっととジープに乗った。

「お、おいおい。」

「まあ、いいから、いいから。早く帰ろ?」

「む・・・わかった、わかったよ。」

そういって、みんな笑いながら、ジープに乗り込もうとしたとき・・・

悠子は、ビルの上をさして「あれ、何?」と言った。

その指差す先にあるもの・・・それは・・・



男は追われていた。

「はぁ・・・はぁ・・・」

雲もないのに雷がなり・・・

そして、彼は人の波をかいくぐりながら、逃げ続けていた。

後ろを振り向くと、壁から手が伸びてくる・・・・

「見つけたぞ・・・ブラックサン。」

緑の水晶のようなもので出来た面をつけた、神官服の男が壁から現れる。

「おいたはいけませんよ・・・われらが皇子(みこ)よ・・・」

今度は、透明なプラスチックのような面を付けた、やはり神官服の女が、駐車場の天井に立って見下ろしていた。

「うわっ!うわああああっ!!!!」

追われていた男は、それを見るや、一目散に駆け出した。

「逃げられはせぬよ・・・」

しゃがれた声が響き、地面から白くしわくちゃの顔をした老人・・・また神官服・・・が現れた。

「どこへ逃げても無駄だ・・・お前はわれらゴルゴムの世紀王となるのだ・・・」

「さあ、戻るのです・・・ブラックサン・・・」

「お前はもはや人間ではないのだ・・・」

呪詛のように、言葉が響く。

彼が行き着いたのは、あるパチンコ屋の屋上。

「ここまで来れば・・・」

だが・・・

その彼のつぶやきもむなしく、目の前には・・・

「無駄だったな、南光太郎・・・」

「お前は、すでに人間ではないのだ・・・」

「うわっ!」

目の前には、神官たちが立っていた。

「お前は改造手術を完了させて、われらゴルゴムの“世紀王”になるのだ・・・・」

「や・・・やめろ――――――――――っ!!!」

光太郎が叫ぶ・・・

老人が言う。

「もう遅い・・・お前はもはや、人間ではない・・・その証拠をお見せしよう・・・」

「やめろ――――――――――っ!!!」

再び、叫ぶ光太郎・・・だが。

ぶわっ!

老人が手をかざすと、光太郎は浮き上がり・・・

「うあああああっ!!」

がしゃあっ!!

バリバリバリ・・・・!

パチンコ屋の看板に突っ込み、そのネオンに流されていた高圧電流が、光太郎に流れ始めた。

「ぐああああああああっ!!!!!」

バチバチバチィッ!!

火花がはじける。

どさっ・・・

「うがあ・・・ぐっ・・・」

地面に落ちてもがく光太郎に、老人は、

「あれだけの高電圧を受けても無傷・・・普通の人間ならば、とても耐えられまい・・・」

と言った。

「お・・・お前ら、何をしたっ?!!」

男が言う。

「お前は、これから改造人間の王として君臨する・・・栄光の男なのだ!」

「お前らの操り人形になってたまるか――――っ!!ぐあっ?!」

そう叫ぶと、光太郎は昏倒した。

女が、「駄々をこねてはいけません、ブラックサン・・・」と言うと、神官たちは光太郎を抱え上げ、空中を歩き始めた。

だが・・・

「は、はなせっ!」

がつっ!

「う・・・うわあああああっ!!」

光太郎は途中で目を覚ますと暴れはじめ・・・倉庫の上に落ちたのだった・・・



「何だ・・・あれは・・・」

榊は、空を飛んでいる3人の神官たちを見て、そうつぶやいた。

「とにかく、追おう!」

悠子はそういって駆け出した。

「チ・・・おやっさん、秋子姉を頼むっ!」

そう言うと、榊も駆け出した。

「・・・どうやら、東へ向かっているみたい・・・ああっ?!」

「どうした、悠子?」

「うん、あいつらが運んでた誰か・・・落っこちたみたい。」

そう言うと、悠子はさらにスパートを駆けた。

「チ・・・倉庫街か・・・」

榊も、スパートをかけた・・・

倉庫街・・・光太郎が落ちたところまで、あと少し・・・!



「う・・・ぐ・・・」

「手こずらせてくれるな・・・南光太郎。」

老人がそうつぶやく・・・

そのとき・・・

「まてっ!お前ら、何をしているんだっ!?」

「見過ごせないよな・・・貴様ら、何ものだっ?!」

悠子と榊が現れ、そう叫んだ。

「邪魔が入ったか・・・」

男が言う。

「しかし、ここで引き下がるわけにはいきません・・・」

「人間ごときが、秘密を知ればどうなるか・・・死ねぃっ!」

ぐわあっ!!

バリバリバリッ!!

男の手から雷電が、女の手からは猛烈な風が吹き始めた。

「くっ・・・」

「この程度で・・・俺が・・・俺たちがどうにかなると思ったかぁっ?!・・・・
変身!!

“いいか、精神を集中させ己の刀を引きぬけ・・・・・・風の流れを感じ、そして斬れ!”

変身するとき・・・いつも心に響く声が、榊の脳裏を揺さぶった。

閃光の中、榊の身体が変わっていく・・・

ベルトが浮かび上がり、その中心の石が青い光を放つ・・・

やがて、その身体は一旦狼に近い姿と化し・・・そして。

その人狼の、巨大な筋肉を覆っていた体毛は黒い鋼の外骨格を形成し・・・

犬型の頭部は、額の毛が耳と重なり三叉の鶏冠を形成する。

目は昆虫の複眼となり、口と鼻は金属質のマスクへと変形した・・・

我・・・疾風の戦士っ!仮面ライダー黒狼!!

そこには、漆黒の戦士・・・黒狼が立っていた。

「すごい・・・なら、こっちも、見せなきゃね・・・
影転!!

悠子は、榊の変身を見ると、自らも叫んだ。

グ・・・グルルルルルルゥゥゥゥウウウウウ・・・・

服が裂け、疾風が彼女の身体を覆った。

筋肉が隆起し、隆起した筋肉は、目にも留まらぬ速さで引き締まって、元の太さへと戻る。

その身体に、紫がかった黒い体毛が生えていく。

その紫黒の体毛は硬く集まり、胸の部分、そして、身体を防御するための要所要所を装甲化して行く。

髪の色は、銀から銀を帯びた蒼へ・・・

そして、黒い体毛は、徐々に黄色くなっていく。

最後に・・・閃光が走り、むき出しの顔にバイザーが装着された。

悪しき世界が裁かぬのなら、世に代わって悪を誅す!月光仙女ヴァーティセス・・・参上!!!

「そうか・・・それが、お前のもうひとつの姿か・・・」

榊・・・黒狼も、ヴァーティセスの姿を見てその変身に感心した。

「キ・・・貴様ら、何者だ・・・?」

老人が言う・・・

三人の神官は、明らかに動揺しているようだ・・・

それに対し、榊は、

「言ったろ・・・疾風の戦士、大自然の使者・・・自由の闘士「仮面ライダー」だっ!」

「あたしは・・・あんたらみたいなクソッタレを掃除する、掃除屋(イレイザー)だよ?」

二人は、それぞれ、そう言う。

「・・・お前たちは・・・やつらじゃ、なさそうだな?」

榊はつぶやき・・・そして、叫ぶ!

「ルガァァァァァァッ!!!!」

叫ぶと、遠くからバイクが近づいてきた。

「エクス&ボルテスっ!!」

叫ぶと、ルガーと呼ばれたバイクから二つの銃が飛び出し、彼の両手に握られた。

「いくぜ、悠子・・・いや、ヴァーティセス。俺は青仮面としわくちゃをやる。お前は、あの女をやってくれ・・・・」

「うん、わかった・・・」

「んじゃ・・・1・2の・・・」

「散!!」

二人は、合図とともに猛烈なスピードで、三人の神官たちに飛び掛った!!

戦いが・・・始まった!!



「爪月っ!!」

悠子が叫ぶと、両手から爪が出現した。

「でやあっ!!」

ざばしゃっ!!

「くっ・・・やりますね・・・これでも食らいなさい!!」

ぶわあっ!

女が手をかざすと、そこら辺にあった鉄骨が悠子めがけて襲い掛かってきた。

「こ・・・んなものおおおおっ!!」

悠子は叫ぶと、「雪刃っ!!」と、もう一度叫んだ。

「氷結けええええん!!!「冬の嵐」っ!!!」

左腕の甲から、唐突に出現した氷色の刀は鈍く光ると、猛烈な吹雪を生み出した!

ごおおおおおっ!!

吹き出した嵐は、鉄骨を吹き飛ばし女に向かった。

だが、嵐は女の手から吹き出した、風で押し返され・・・消滅した。

「何・・・?!」

「やりますね・・・我が名は、栄えあるゴルゴムの、大神官ビシュム・・・」

「ヴァーティセスだって、さっき言ったよね?何で、あそこでぴすぴす言ってる人の事いじめるの?!」

「・・・それは、お子様には理解が難しいでしょう?ここで死になさい!」

ビシュムは、そう叫ぶと腕から念動力の糸を出した!

「こんなものぉぉぉぉぉっ!!!」

再び叫ぶと、悠子はその糸を雪刃で断ちながらビシュムに肉薄していった。



「黒狼ダブルガン!!」

ばしゅ、ばしゅっ!!

がんがん!!

「・・・おのれ・・・われらゴルゴムに逆らうとは・・・」

「待て、バラオムよ・・・あの腹の石を見よ・・・!」

黒狼のアンチ・テレキネシスフィールドは、二人の神官の動きを効率よく止め、黒狼は攻め一方で戦っていた。

「どうしたっ!?その程度か!!」

黒狼はそう叫ぶと、2丁の拳銃を投げ・・・コンバットナイフを手に取った。

「貴様らの目的・・・吐いてもらおうか・・・返答しだいでは、ただでは済まさん!!」

ナイフは、満月の光を浴びて煌く。

「俺を改造した連中とは・・・関係がなさそうだが。悠子の言っていた連中とかかわりがあるなら・・・ここで叩きのめす!!」

黒狼が叫ぶ。

「・・・ダロム、どういうことだ?」

「あれは・・・われらゴルゴムの至宝、キングストーン賢者の石にも劣らぬ、幻の石・・・アグルストーン・・・」

「何だと!?では、あれがやつら(・・・)の言っていた?」

ダロム・・・そしてバラオムがそう語り続ける中・・・

黒狼は「やはりそうか」とつぶやいた。

「お前ら・・・やっぱり、どっちかと関係があるようだな?!なら、逃がすわけにはいかない!!」

がぱあっ!

そう言うと、黒狼のマスクの上顎と下顎が開く。

放熱現象だ。

「行くぜっ!黒狼キィィーーーックッ!!!」

ずがしゃあああああっ!!!

黒狼は中空で一回転すると、神官たちに鋭いけり・・・必殺の黒狼キックを放った・・・



二人と三人は、攻防を一進一退と繰り返しながら、倉庫街中を戦い続けた。

その頃・・・

「こ・・・ここは?」

光太郎は目を覚まし、周りを見回した。

どがっ!

ずしゃああっ!!

「くっ・・・!結構やるね!?」

目の前に、妙な格好をした少女・・・悠子が落ちてきた。

「ん・・・?キミ、大丈夫?怪我は?!」

光太郎の姿に気づくと、悠子はそう言った。

「キミは・・・?ウッ?!」

悠子に名を聞こうとしたが、光太郎は痛みで気を失ってしまった。

「ビシュム・・・バラオムよ。ここでこやつらといつまでも遊んでいるわけには行くまい・・・われらが皇子を回収して、この場を去るぞ?」

三神官が、近づいてくる。

しゅたっ!

「大丈夫か?ヴァーティセス!」

黒狼も、追いついてこの場に来た。

「うん、あたしは大丈夫・・・でも、この人が・・・?」

悠子が、そうつぶやくとほぼ同時に、光太郎の肉体が変化を始めた。

その表皮は、人間のものから徐々に昆虫・・・飛蝗のものへ、そして・・・腰に浮き出したベルトからは赤い光が・・・

やがて、飛蝗の表皮は黒い装甲で覆われ・・・異形の戦士が誕生した。

「こ・・・こりゃあ・・・?」

「この人も・・・改造人間・・・?」

二人のつぶやきに呼応するかのように、彼は起き上がった。

「この・・・姿は?」

「く・・・ブラックサン・・・!」

「ブラック・・・サン?」

光太郎が、三神官の言葉に、そうつぶやく。

「・・・とあっ!」

ブラックサンは、叫ぶと空高くジャンプし、高空からパンチを放った!

バラオムが、とっさにシールドを張る・・・だが。

パキィン!!

そのシールドは、まるでガラスを砕いたかのように消滅した。

「はぁ・・・はぁ・・・」

ブラックサンは息を漏らす。

「このままでは、形勢は不利か・・・退くぞ、バラオム、ビシュム!」

「また、会いましょう・・・異形の戦士・・・」

―――――この借りは必ず返すぞ!

バラオムの声が虚空に響き・・・

三神官は虚空の中へ姿を消した・・・



少し離れた場所・・・

「川澄君・・・「黒狼」は順調のようだね?」

「ええ・・・まさかゴルゴムの連中と戦りあってるなんて思わなかったけどね・・・」

「ふむ・・・」

「それより、被験体0号に逃げられたらしいけど?」

「フ・・・心配するな、餌は用意してあるよ。」

「そう・・・」

「計画のほうだが・・・ガイボーグのほうは順調らしいが・・・何、我々には敵うまいよ。それより、ファラー計画のほうが役に立つかもしれないなぁ・・・・」

「・・・戦闘データは取れたわ。行きましょう・・・」

そこには・・・昼間の女教師と、白衣を着た男がいた・・・



「キミ・・・大丈夫?」

「あ・・・ああ。キミたちは?」

「俺たちは・・・まあ、通りすがりの正義の味方・・・さ」

「ま、こっちもわけアリなんだよ・・・いずれ話すから・・・キミが、あたしたちと一緒に戦うなら。」

三人は、変身も解かぬまま、話し合っていた。

「それより・・・その姿は?」

「こ・・・れは・・・」

そう、決まり悪そうに光太郎は言った。

そして、ぽつぽつと、自分のことを語り始めた。

「俺は、南光太郎・・・あの日・・・俺は・・・」



19歳の誕生日・・・

彼、南光太郎と、義理の兄弟・秋月信彦は船上の誕生パーティーにいた。

著名な考古学者、秋月総一郎の子息として、各界の著名人を集めての豪華なパーティーだった・・・

そこで、見た恐るべきもの・・・

「なぜだ?なぜ、みんなこれほどの飛蝗に気づかない?」

そう、その席で・・・

ものすごい量の飛蝗が現れ、二人を襲ったのだ。

しかも、それに誰も気づいていない。

それを不審に思った二人は、パーティー会場を抜け、総一郎の研究室に向かった。

そこならば、何かわかるのでは・・・と直感したからだ。

その途中で・・・

彼らは雷に打たれた。

光太郎が意識を失う直前聞こえたのは、しゃがれた老人の声・・・

「さあ、わが皇子よ・・・案内しよう・・・」

・・・次に意識が覚醒したとき・・・そこは、何かの手術台のようだった。

いや、儀式の祭壇のようでもある。

「後は・・・人間としての意識を消し去るのみ。」

しゃがれた声が聞こえる。

そのとき、唐突に総一郎の声が聞こえた。

「待ってくれ!!約束が違う!記憶を消すのだけはやめてくれっ!両方とも、私のむすこだっ!!」

「プロフェッサー秋月・・・光太郎と信彦は、もはやあなたの息子ではない・・・ゴルゴムの世紀王、シャドームーンとブラックサンなのだ・・・」

その声が、むなしく響く。

「最終改造を施す・・・」

そう言うと、ダロムは爪を伸ばし・・・



「そして、その改造が終わる寸前に、父さんが・・・助けてくれたんです。でも、信彦は・・・多分、父さんももう・・・」

「そうか・・・それで、逃げ出したんだな・・・」

もう、すっかり変身を解いた三人。

光太郎の話は続いていた・・・

「俺は・・・どうしたら・・・」

「戦えばいい。そいつらは、人類の自由を奪おうとしているらしいからな・・・」

「そうだよ・・・」

悲しげな表情を浮かべた、二人はうつむいた。

「こういう、悲しい運命を背負うのは・・・少ないほうがいいのにね・・・」

「そう・・・だな」

光太郎は、そう言う二人にもう一度「君たちは・・・」と聞いた。

「ああ、俺たちも・・・改造人間なんだよ。」

「そう・・・大切な人と、同じときを歩けない・・・」

そう答える二人は、光太郎の手を握る。

「一緒に戦お?そのほうがいいよ・・・」

「あ、ああ!」

光太郎は、悠子の言葉にそう答えると、後ろを見た。

「あれは・・・?」

榊がつぶやく・・・

「バトルホッパー・・・」

そこには、緑の飛蝗を模した形のバイクがたたずんでいた・・・



・・・ぷるるるるるる・・・

「あーあ・・・すっかり夜が明けちゃったねぇ・・・」

「ね・・・眠いおー・・・・」

「ちょっと、榊しっかりしてよ〜」

眠そうな目をこすりながら、榊は「連絡ぐらい入れとこう・・・」と、それぞれ公衆電話から連絡を入れていた。

今は、光太郎がかけている。

ぷるるるるる・・・かちゃ。

「あ、杏子ちゃん?」

『光太郎さん?今までどこ行ってたの?お兄ちゃんは?克美さんも心配してんだよ・・・』

受話器から、心配そうな声が流れてきた。

「そんなことより・・・家は危険だ!早く離れろ!!」

『ん・・・わかった・・・て言うか、今家にいないの。』

「え?」

光太郎は驚いて、そう言った。

『家に強盗が入ったのよ・・・で、私と克美さんは城って人に助けられて、今立花オートレーサーって所にいるよ?』

「・・・わかった。くれぐれも、そこから動くんじゃないよ?」

『うん・・・光太郎さんも、気をつけて・・・』

がちゃっ

光太郎は受話器を置くと、榊たちに向き直った。

「・・・どうやら、君の下宿先にかくまわれているらしい・・・」

「そう・・・よかったね、光太郎?」

「ああ・・・」

「・・・それで、これからどうする?おやっさんとこに行くか?」

「ああ・・・そうしようと思う。」

光太郎がそう言ったとき、首筋から何か発信音がした。

「何だ・・・」と思うまもなく、そこから声が聞こえだした。

『聞こえているか?光太郎・・・』

「父さん?!」

そこから聞こえ出したのは、光太郎の義父・・・総一郎のものだった。

『もし、この通信が聞こえているのなら・・・お前にぜひ話したいことがある。キャンプ・ディアブロ跡地まで、必ず一人で来るように・・・』

そう言うと、唐突に通信は切れた。

「父さん?父さん!!?・・・生きていたのか・・・」

「こりゃ、行ってみるしかないようだなぁ・・・」

「あたしたちは、外で待機してるよ。」

榊と悠子はそう言うと、それぞれバイクにまたがった。

「いいのか、悠子・・・それ、ナナハンだろ?」

「いいからいいから、気にしない♪それ言ったら、榊だってそうじゃん?」

小さな体に不似合いの、大きなバイクに乗って悠子はそう言った。

「ま、そうだな・・・んじゃ、いくか・・・光太郎さん?」

「ああ・・・」

そして、光太郎もバイクにまたがると、三人は走り出した・・・



「父さん!!」

光太郎は、キャンプディアブロの跡地に来ていた。

キャンプディアブロ。

その昔は、この辺の高校中学、あるいは大学や実業団のスポーツグループの合宿場として利用されていた施設である。

数年前に閉鎖され、今では利用するものもなく、朽ちるままに放置されている。

・・・その場所に、秋月総一郎はいた。

「・・・光太郎。心配したぞ・・・」

光太郎は駆け寄り、

「父さん・・・ゴルゴムって何なんですか?!どういう関係なんですか!」

と言った。

「父さん・・・まさか・・・」

光太郎の言葉に、総一郎はしばし沈黙し、

「そうだ・・・お前の予想通り、私のゴルゴムのメンバーだ!」

そう言うと、振り返り・・・歩きながら彼は話し始めた。

「あの日から・・・私は死んだも同然の人間になってしまった・・・」

そういって、遠い何かを懐かしむように、彼は上を向いた。

「これから話すことは・・・すべて本当のことだ・・・落ち着いて、よく聞いてほしい。」

「・・・・・・」

「あの日・・・19年前・・・日食の闇が、町を覆っていた。」

それから、彼は恐るべき話をした・・・

その日食の闇の中、まるで本当の双子のように生まれた、光太郎と信彦・・・

彼の親友・・・南博士と彼は数十年来の友人だった・・・

その二人に、ほとんど同時に子が生まれたのは偶然であろうか・・・

光太郎が3歳のとき、飛行機事故で亡くなった南夫妻・・・

それから、光太郎は彼に引き取られ、実の息子、信彦とわけ隔てなく育てられた・・・

・・・二人が生まれたころ、二人は中東のとある遺跡の発掘作業を行っていた・・・

パズス・・・風の魔神を信仰していたらしい、古い部族の遺跡だった・・・

だが、その発掘には、莫大な費用がかかってしまった・・・

もう、四苦八苦でお手上げ寸前だった・・・

「そんなときだ・・・ゴルゴムと名乗るものが、資金援助を申し出てきたのは・・・」

ゴルゴムは、資金の提供と引き換えに、ゴルゴムのメンバーになるよう要請した。

だが・・・

「私は、考えに考え抜いた挙句それに乗った。だが、キミのお父さん・・・南博士はそれを、きっぱりと断ったんだ。」

「あの事故は・・・っ?!」

その言葉は、光太郎を絶句させた・・・・・

「・・・殺されたんだっ!父さんたちはゴルゴムにっ!!」

そのとき・・・蜘蛛が、部屋の天井から落ちてきた・・・

「なぜです!?なぜゴルゴムのメンバーなんかになったんですか?!!」

「やつらに一度目を付けられたら・・・逃げることなど出来はしない!!ゴルゴムは悪魔の集団だっ!!!」

光太郎の辛辣な言葉に、総一郎も叫ぶ。

だが、光太郎は・・・さらに辛辣な言葉を返してきた。

「その悪魔の集団に・・・あなたは俺たちを売ったんだっ!!」

「生き延びるためにはゴルゴムに従うしかないのだ・・・」

そう言う総一郎に、光太郎は・・・

「・・・嫌だ・・・誰が従うもんか・・・この身体を見てよ、父さん・・・」

光太郎は、目の前にあったバルブを握った。

ぐきゃり。

光太郎が力を入れると、バルブは、パイプごと奇妙な音を立ててねじ切れた・・・

「改造されて・・・こんな身体にされて・・・もう普通の人間じゃないんだっ?!こんなことが許されるのかっ?!」

「これからの世界は・・・ゴルゴムに選ばれたものしか生き残れない!人類は淘汰されてしまうんだ・・・!」

「なんてことを言うんだ、父さん・・・」

そう言うと、光太郎は落胆したかのように、目を伏せた。

「お前たちにだけは・・・ゴルゴムの世紀王として、生き延びてほしいんだよ・・・」

そう言う総一郎に、光太郎は顔を背け、

「やつら・・・人類の自由を奪おうとしているんだっ!父さんだって、戦わなければ、この廃墟と同じじゃないかっ!!そんな父さん、見たくはないよっ!!!」

と言って、走り出した。

だが・・・

入り口は、びっしりと蜘蛛の糸で覆われていた・・・入ってきたときには、なかったものだ。

「不味い・・・父さん、ここは危ない!!早く逃げてっ!!」

だが、一歩遅かった!!

がしゃあっ!!

ぐ・・・きゃあ・・・・

天井から、そして床、窓・・・

あらゆるところから巨大な蜘蛛・・・いや、蜘蛛の怪人が侵入してきた!

「う・・・・」

どっがああっ!!

その時っ!

「大丈夫かっ!光太郎!!」

「黒狼!!」

黒狼と、そのバイク・・・「ルガーソーダー」が部屋に飛び込んできた。

「光太郎・・・この辺、蜘蛛の化け物に包囲されてるぞっ!!」

そう言うと、黒狼は拳銃を撃つ。

「・・・おっさん、話は少し聞いた・・・選択が・・・安易過ぎるぜっ!!」

そう叫び、黒狼は総一郎をつかもうとしていた蜘蛛の糸に銃弾を叩き込んだ。

「親なら・・・親なしの俺が言うのもなんだが・・・もう少し、子供の気持ちを考えろっ!!そんなことで子供が喜ぶかっ?!」

蜘蛛どもを叩きのめしながら、叫ぶ。

「うおおおおおおおっ!!光太郎、お前も・・・チッ!?」

ばしゃっ

ずるずるずる・・・・・

「うわああああああっ!!」

「とうさああああん!!!」

黒狼の、一瞬の隙をつき、蜘蛛は総一郎に糸を巻きつかせ、外へ飛び出した!

「とうさ――――――――――――ん!!!」

鉄塔の上に引き上らされた総一郎を・・・蜘蛛は無情にも地面へと落とした!

ひゅううう・・・

「うわあああああああああっ?!!」

「父さん!!」

だが・・・

「てやあっ!!」

悠子だ。

悠子は、落ちる総一郎を受け止め、地面へ降り立つ・・・

しかし・・・

「父さん、大丈夫か?!」

光太郎の言葉に、悠子が・・・

「ううん・・・だめ、この糸が、致命傷だよ・・・最期だから・・・顔を・・・よく見せて上げなよ。」

悲しげにつぶやいた。

「父さん、父さんっ!!」

息も絶え絶えの総一郎の口から、言葉が漏れる。

「すまない・・・光太郎・・・・・・そこの彼が言った・・・ように・・・・・・私の選択は・・・安易だったのかもしれない・・・・・・杏子を・・・信彦を頼む・・・・・・・・・・・・」

そう、言うと、彼の身体から力が抜ける・・・

その腕には「1986 EB」と、ゴルゴムの認識票なのであろうものが刻印されていた・・・

「ウッ・・・うわああああああああっ!!!」

光太郎が叫ぶ・・・

悲しみの叫びが・・・天を揺らした。

「光太郎・・・」

「くっ・・・守れなかったのかよ・・・!」

悠子も榊も、悔しげに顔を落とした・・・

そして、光太郎は、ゆっくりとたつと・・・きっと蜘蛛どもをにらんだ。

変・・・身!

腕を引き絞り・・・そして、すばやくポーズをとる。

すると・・・

光太郎の身体は、一瞬で飛蝗人間のものになり・・・そして、それを黒い装甲が覆う。

ベルトのエナジーリアクターの働きで、各所にストライプが形成され・・・

「とあっ!!」

光太郎はジャンプした!

空中でくるりと一回転し、地面に降りる。

・・・俺は、ブラックサン・・・いや!仮面ライダァァ・・・Black!!

叫ぶ!

ここに、新たなる「仮面ライダー」が生まれたのだ・・・

「行くぞ・・・黒狼、ヴァーティセス・・・」

「ああ、わかった・・・光太郎、いや・・・「仮面ライダーBlack」!!」

「うん!・・・この人の、弔い合戦だっ!!」

・・・

「とあっ!」

「てええええええい!!」

悠子とBlackがそれぞれつかんだ蜘蛛をぶん投げる!

黒狼スナイパーキィィィック!!!

かっ!

ずがああああん!!

黒狼の放った必殺の蹴りが、蜘蛛を消滅させる。

「まず、二体!!」

「まだまだぁ!!
花竜ううう!!!

悠子が叫ぶと、肩の装甲が変形を始め・・・

砲台のような形を成した。

行けえええええっ!!

かっ!!

どっがあああああっ!!

花竜から放たれたエネルギー弾は、蜘蛛2体に吸い込まれ、消滅させる。

「ぎしゃああああああっ!!」

爆発の煙をくぐって、蜘蛛が悠子に肉薄する。だが・・・

「やらせん!」

Blackはそう叫ぶと、腹の前でこぶしを合わせ、腕を引き絞るようなポーズをとった。

ライダーパアアアンチっ!!

紅く光るこぶしは、蜘蛛に吸い込まれる・・・

ずがっ!ずがあっ!!

蜘蛛はなすすべもなく殴られ続け・・・

「とどめだっ!!
ライダーキィィィィィック!!

気合一閃、空中から放たれた紅く光る蹴撃は・・・

どがああああっ!!!

残る蜘蛛どもをすべて吹き飛ばし・・・

ぼあああああっ!!!

蜘蛛どもを燃やし尽くした・・・!



ききっ!

車が、ディアブロキャンプについた・・・

そこから出てきたのは、秋子たちと同じ制服を着た娘と、ショートカットの女性・・・

彼女たちが見たものは・・・

「あれは・・・お父様?」

そう、蜘蛛の糸に包まれ絶命している総一郎だった。

「お父様、お父様ぁぁぁぁぁぁっ!!」

泣叫ぶ娘・・・

おそらくは、光太郎の義理の妹・・・杏子であろう・・・

そして、女性は信彦の彼女だった、克美・・・なのだろう。

そして、陽炎にかすむ道を向かってくるもの・・・

榊と、悠子・・・そして、光太郎だった。

・・・南光太郎は・・・暗黒結社ゴルゴムによって改造人間にされた・・・

そして、同じ悲しみを背負う仲間・・・

陣内榊、仮面ライダー黒狼・・・

月光仙女ヴァーティセス・・・芽鑰悠子。

そして、仮面ライダーBlack。

彼らは、悲しみを乗り越え・・・戦い続ける・・・





・・・あれから、光太郎はここ立花オートレーサーで働き始めた。

働きがいいので、藤兵衛は少し上機嫌だ。

だが、彼がライダーであることは・・・まだ話してはいない。

・・・戦いを離れた・・・藤兵衛には。

「光太郎、元気ないね・・・」

「ああ、これから・・・戦いが始まるからね。」

「うだうだ言ってても、どうしようもねえよ・・・最初、茂さんにあったとき言われたろ?守るために戦うなら・・・取り戻すために戦うんなら、負けらんねえって・・・さ。」

「そうだな・・・」

「しっかりしろよ・・・お前も、仮面ライダー・・・何だからな?」

そう、光太郎は茂と会った。

そして、しこたま怒られたのである。

自分の大切なものくらい、自分で守れ。

守るために戦えと。

茂の言葉から、光太郎は・・・自分と同じように、守りたいものを守れなかった・・・そんなにおいを感じたのだった。

「まったく・・・ひどい目にあったぜ・・・あの後、秋子姉にしこたま怒られるし・・・」

「いいじゃない、事情話したら許してくれたんだし・・・ま、うそ80%だけどさ。」

「そうだな・・・」

フフっと、光太郎は、そのやり取りを見て笑った。

久しぶりに笑ったと思った・・・

その時、疑問に思っていなかった疑問が、頭に湧き出してきた。

「ところで、悠子ちゃんは・・・小学生なのかい?」

「あ、馬鹿・・・それは禁句・・・・・・」

すでに、遅かった・・・

「悠子は17歳だぁぁぁぁぁっ!!!」

どがっしゃあああああっ!!

思いっきり、ジェットアッパーが光太郎のあごに突き刺さり・・・

今日も、日は暮れていく・・・





・・・・

悠子は、話していいことはすべて話していた。

これで、準備が整った・・・と思った。

戦いが・・・本当の戦いが始まる。

彼女の相棒・・・

そう、柊虚から、二人とともにチームセイバーに参加するようにとの要請が来ていた・・・

・・・もう少ししたら・・・行くからね、虚。

続く







次回予告

東京・・・

犯罪の渦巻く都市。

榊と秋子がそこで出会ったものとは?

謎の生物による変死事件。

かつての未確認生命体を思わせる、その犯行を行ったのは一体誰か。

それを追うため、悠子は一人走る。

そして、起こる第2の変死事件。

言い知れぬ不安・・・

それをかき消すかのように、そいつは現れた。

次回、スーパーヒーロー作戦SPIRITS

「謎の新英雄」

魂より継がれし物語、今こそ語ろう・・・・





あとがき

もう開き直りました。

短くなくて良いや(自爆

と言うわけで、黒狼とヴァーティセスが登場しました。

黒狼とヴァーティセスは、使っている遺伝子とか似通ってますが、気にしないでいただきたし(核爆

・・・では、今回のゲストは・・・

秋子「今回、あまり出番のなかった私と・・・(じとっ)」

悠子「ようやく出番の、悠子だよっ!」

はい・・・よろしく。

秋子「・・・出番・・・」

悠子「・・・出番・・・」

う・・・

悠子「もっと目立たせてくれてもいいじゃん・・・」

いや・・・あの、その・・・・

秋子「・・・ジャムですね、これは。」

いや・・・あの・・・

ぐはっ!?

秋子「これは・・・」

悠子「天罰だよ。」

ぐ・・・フ・・・

いや、あの・・・

・・・それから、信一さんの友達とは、当然・・・アギトに出てきたあの人です。

心理学の教授の人です。

では・・・

キャラを貸してくれた・・・そして、せりふの指導をしてくれたY(ヤクト)団首領に、今回も敬礼・・・

シュワッチュ・・・(へろへろ

秋子「・・・今回のジャムは、いまいちですね。」

悠子「もっかい、やっとく?」

・・・勘弁してください・・・

劇終

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