「こ・・・ここは・・・いったい、何が・・・」

虚が気づいたとき、周囲は・・・まるで何も無かったかのように、閑散としていた。

「グゥッ!!」

額と喉・・・そして左胸に激痛が走る。

「馬鹿な・・・兵士たちの遺体も、敵の残骸も・・・はっ!」

そうだ。俺が手当てをしておいた兵士たちは・・・

虚はそう思い、回りを見回したが・・・

やはり、彼らも雲か霞か・・・消えてしまっていた。

「くっ・・・あの、俺を気絶させたヤツだな・・・!」

虚は、憎憎しげにそう吐いた。

「・・・己・・・」

そう言うと、踵を返し、彼は、寺院病院のほうへ走っていった。

「グライバー・・・」

貌も見えず、何もわからず、ただ翻弄され、しかも一瞬で倒された。

―――こんな事は、初めてだ。

その心の中で、驚きと焦燥に満ちたそんな言葉をつむいでいた。

やがて・・・

そこは、寺院病院。

・・・く・・・遅かったか!

彼に見えたのは、人の気配のほとんどしない寺院と・・・そして、崩れた仏塔。

「・・・何と言う、ことだ。」

何度目とも知れぬ、驚愕の声を出し、彼は生存者の救出に当たった・・・



スーパーヒーロー作戦SPIRITS
第九話「信じた笑顔」



・・・10分後。

生存者のほとんどが、野外に放置されているのを発見した虚は、彼らに応急手当・・・

陽装して、彼らに治療光線「クレアスケア」をかけて回った。

・・・無論、彼らが驚かぬ様に、睡眠光線「ナイトメアアンク」で完全に眠ってもらった上で、だ。

まるで、負傷者には用はない・・・と言うような、無造作な放置の仕方だった。

「ふう・・・これで、最後か・・・」

そう言って、最後の患者に毛布をかけると、彼は仏塔のほうへ向かう。

・・・すると・・・

「・・・滝さん!?」

そう、そこには・・・滝和也がさきほど、グィンにやられたままに放置されていた。

見れば、腹を負傷していることに、誰もが容易に気づくだろう。

「くっ・・・クレアスケア・・・!」

キィィ・・・

何かが擦れるような音を立てて、白い輝きが滝の腹部を包んだ。

「大丈夫ですか、滝さん・・・」

その輝きが消えると、腹部の傷はほとんどふさがり、滝が目を覚ました。

その滝に、そう言うと虚は、

「襲撃が、あったんですね?」

と言った。

「ああ・・・そうだ。それより、一文字が・・・痛ッ!!」

「まだ無理をしないでください・・・どの辺りに・・・いや、仏塔のところですね?」

崩れた仏塔を見て、そこに隼人がいる事を直感した彼は、俊敏にそこへ駆けていく。

「まったく・・・らしくないと言えば、らしくないぜ。馬鹿にしやがって、あのクソ野郎・・・」

そんな言葉を、グライバーにか、それとも、別の何かか・・・あるいは自分かに向けて吐くと、彼は土砂を瓦礫を掘っていく。

一分もしないうちに、そこに隼人を発見した。

「大丈夫ですか!?・・・これは、ひどいな・・・クレアスケア!」

また、さっきと同じ擦れる音が聞こえ、光が一文字の傷を塞いでいく。

「・・・くっ、すまない。突っ込みすぎだ・・・」

目を覚ますや否や、さっきの戦いの反省からか、隼人はそう言った。

そして、虚は彼から粗方の状況を聞いた。

最早、一刻の猶予も無い。

虚はそう判断した・・・当然、隼人もそう判断しているだろう。

そこまで考えた虚は、急いた感じに言った。

「・・・真美さんたちを、早くさがしましょう。このままでは、危険すぎます。」

「わかっているさ。行こう・・・」

あちらを見ると、滝が「大丈夫か、一文字!」と言いながら、かけてくる様子が見えた。

「・・・行きましょう。子供を使って、何企んでるかしらねえが・・・絶対、ユルサネエ・・・」

「ああ。絶対に・・・」

虚と隼人は、それぞれそう言うと、おそらくグィンどもが向かった先であろう、寺院の奥へ歩を進めた・・・



・・・隙がないっ!

黒狼とBlackは、『金狼』の飽和攻撃に、どうにも攻めあぐねていた。

その攻撃は、黒狼が狙いなのか・・・

7割近くが、榊への攻撃だった。

もう、いつもなら・・・とっくの昔に倒れているほどの攻撃を、黒狼は受け続けている。

・・・チャンスが、つかめない。

満身創痍の体を抱えて、榊の脳はそう叫んでいた。

「どうした?何か狙いがあるのではないのかね?」

そう言うと、背中のマイクロミサイルポッドが火を噴く。

パパパパパパパ!!

撒き散らされる、閃光と爆炎を紙一重で避ける、二人。

だが、かわした隙の一瞬に、再び肩のランチャーからの砲弾が襲う。

「ぐおおおっ!!」

「ぐぁっ!!」

吹き飛ぶ二人に、『金狼』は容赦しない。

「ふむ、ここまで粘るとは・・・戦闘プログラムが不完全なままで、よくそこまでやれるものだ。」

そういいながらも、フィンガーミサイルは間断なく二人に襲い掛かっている。

爆炎と閃光が尽きる事は・・・今のところ無かった。

「クックック。狙いがあるのなら・・・こんなものに引っかかってはイカンなぁ。」

面白そうにそう言うと、指をピンと張る。

「そうら。吹き飛べ。」

そう言うと・・・

グワッ!!

壮絶な爆砕音を上げて、地面が爆裂した!

「なぁっ?!」

「そんなに驚かないでくれ。楽しくなってしまう。爆導索を仕掛けておいただけだよ。ハアッハッハッハ!」

素晴らしい玩具を手に入れた子供のように、『金狼』は哄笑した。

「グゥウウ・・・くそっ!狼男の頃より数倍・・・いや十倍は強くなっている・・・!」

「どうする、榊?」

「このまま逃げ回っていても・・・埒があかない。かといって・・・」

「かといって、何かね?」

・・・撃ち方をやめた『金狼』は、そう言って切り株に腰をかけた。

「もういい加減にしたまえ。私とて・・・こんな楽しい時間は手放したくないのだが、そうも言ってはいられないのだ。貴様らの戦闘データ収集はもう十分。これで『蛇』や『蜘蛛』にも言い訳が立つ。」

名残惜しそうに、そういう。

「・・・だとすれば、最後は、やはり決め技が欲しいところじゃないかね?ん?貴様らの最強の技を出してみるがいい。受けて立とう。」

名残惜しそうに、しかし、とても楽しそうにそう言うと、『金狼』は立ち上がった。

「くっ・・・馬鹿にしやがって・・・!」

黒狼はそう言うと、文字通り怒髪天を突くように、その場にあった木の棒を、なんとなく手にした。

見れば、空には・・・満ちたる月。

Blackは、それを見上げて思う。

――――人狼は、月が満ちるほどに強くなる。満月になれば不死身にも――――

そう、古い伝承を思い浮かべた。

(そうか・・・榊の耐久力がいつも以上なのも・・・、『金狼』の強さも!)

―――――月の、せいか。

そう思ったときだった。

黒狼がつかんだ、何の変哲もない木の棒。

その棒が、光を上げて・・・

いや、ベルトのアグルストーン、つかんだ右腕、右手。

その全てが光っている。

――――いいか。

黒狼の・・・榊の脳裏に、変身するとき、いつも聞こえる声が、響いた。

―――――精神を集中させ。

いつもなら、変身するときにしか、聞こえない・・・

――――――己の刀を引き抜け。

それ以外のときに聞こえた事など、一度も無い、その声が・・・

―――――――風の流れを感じ、そして・・・切れ!!

「うおおおおおおおっ!!!」

木の棒は、輝きを・・・不可思議で神秘的な輝きを出しながら、ゆっくりと変化していく。

光が収まったとき、黒狼の右手には、両刃の大剣が握られていた。

そして、その姿も・・・

北欧神話の英傑シグルズ・・・ジークフリートを想起させる、鎧とマントに身を固めた剣士の姿。

「聖なる剣、ジークキャリバーよ、我に力を!!」

全身から、光輝の燐光を発して・・・

我、疾風の騎士・・・!仮面ライダー黒狼、ジークフォーム!!

自然と、そう口にした。

そう、その台詞を言うのが、まるで決められているように。

「ほお。聖剣体・・・か。ふむ、満月時に極限まで追い詰めると、こうなるか・・・貴重なデータだ。」

興味深く、その光景を見ながら、『金狼』はこう言った。

「だが、完全に覚醒していない状態での聖剣体・・・長くは持つまい。早くかかってくる事だ。」

「望むところだ!てやぁぁぁぁっ!!」

黒狼は、ジークキャリバーを振り上げ、『金狼』に切りかかる。

『金狼』の火器攻撃は・・・全て、大剣の元に叩き落される。

「ふむ・・・さすがに強い。ならば・・・」

ぐわぅ!

再び爆導索が火を吹き、辺りが消し飛ぶ。

だが・・・!

「くらえええっ!!」

斬ッ・・・!

聖剣体の強固な装甲に、容易く弾かれ、身体内部へのダメージを最小限へと抑えた。

そして・・・その攻撃は。

的確に、肩部ランチャーと指の数本を叩き落していた。

「くっ・・・!素晴らしい。なんという精神力、なんという執念。・・・惜しいな。しかしだ・・・」

「ハアアッ!!」

ジークキャリバーの一撃をかわすと、『金狼』は、

「・・・もはや、限界か。」

と言った。

その言葉とほぼ同時に、彼の体から、光の剣と鎧が消え失せ・・・

元の黒狼に戻った。

「・・・くっ・・・一分が・・・限界かっ?!」

悔しげに、そうこぼす黒狼・・・だが。

Blackが叫んだ!

「しかし、十分に隙はできた!行くぞ榊!!」

「・・・ああ!!」

「「トォーーーーッ!!」」

その言葉に、黒狼もまた天高くジャンプする。

「行くぞ、キングストーンフラッシュ!!」

カッ!

「・・・何ッ?!」

舞い上がった彼らに、ミサイルを放とうとしていた『金狼』は、その閃光に眼をくらませた。

「行くぞ、Black!!」

「ああ、黒狼!!」

空中で、二人の腹部の聖石・・・アグルストーンとキングストーンが輝く。

その光は、まるで共鳴するかのように輝きを増す。

二人の体は・・・それぞれ、キックの形に整えられ。

「食らえ!
ライダー!

ダブル!!

「「
シュゥゥゥゥゥゥウウト!!」」

高空からの急降下キックが、まったく同じタイミング・・・

不思議なくらい綺麗に落ちてきた。

ズガァッ!!

「グフッ?!」

『金狼』の胸に、それは狙いたがわずヒットした。

すたっ・・・

二人は、同時に地面に降り立つと、確信を持って言った。

「・・・キングストーンと・・・」

「アグルストーンの、不可思議な共鳴が・・・」

「この業を、成功させてくれた・・・!」

そう言うと、彼らは・・・膝をつく。

「くっ・・・これじゃぁ・・・隼人さんのところ・・・にはッ!」

悔しげに、黒狼がそう言ったとき、後ろから声がした。

「ふっ・・・なかなかやるな・・・もっと強くなれ。そして、私を楽しませてくれ・・・」

『金狼』・・・いや、その姿は元のゾル。

いや、片手の指は一本しかなく、口から血を流し・・・

そして、胸の軍服は、盛大な血の装飾で彩られている。

・・・つまり、彼も満身創痍と言う事だ。

二人と、同じく。

「くっ・・・!」

「この場は、見逃そう・・・だが、その腹の石の使いかたを知らなければ、お前では私には勝てん。」

黒狼・・・いや、人間の姿に戻った榊に、楽しげにそう言うと・・・

ゾルの姿は、三度闇に紛れ・・・

そして、彼が消えると同時に、二人もまた・・・

気を、失った。



・・・寺院病院奥の、広場。

そこには、蜘蛛の糸に囚われた子供たちと・・・

全身に神経節を浮き出させて、苦しげに喘ぐ真美の姿があった。

無論、彼女らを捕らえた、兵士たちと戦車は・・・その砲口を彼女らに向けている。

・・・軍人らしく、油断などしない・・・と言うわけだ。

苦しげに、息を吐くと、真美は、

「わ・・・たし・・・にな・・・にをさせる・・・つも・・・り・・・」

蜘蛛の糸には、まるで手術台に固定されたような、子供がいて・・・

そして、真美の手には、銀の光沢を持つ・・・メスが移植された手袋が輝いていた。

「これまで、慈しみ、労わってきたのだろう・・・その子供たちを?ならば、最後までお前の手で幸せにしてやればいい。」

無感情な声を出して、グィンはそう言った。

「地雷と言う兵器を知っているだろう・・・完全には人を殺さぬ威力を持ち、その介護のためにさらに多くの兵員・物資が消費される・・・しかも、容易く、安価な上に、撤去には莫大な犠牲を費やす。」

腕を広げ、言う。

楽しそうに。

「素晴らしい発明だと思わないか!いまや世界中の戦場・・・まぁ、もっとも、今はほとんどが「元戦場」だが・・・そこで、今も息を潜め続けているのだ。」

言葉を区切る。

「そして・・・今夜我らは、この兵士たち同様・・・極上の兵器を作り出す。」

兵士たち。

無表情な、仮面。

「ククク・・・子供とはかわいいものだなぁ・・・弱く、愛らしく・・・助けを乞う。たとえ、どんな訓練を受けた軍人でも油断させる・・・」

その言葉に、真美はグィンが自分に何をさせようとしているのかを知る・・・

「そして・・・受け入れた途端・・・クククククク!・・・生きた子供の誘導地雷・・・これは地雷・機雷に次ぐ革命になる!・・・何しろ、子供など、幾らでもふえつづけるのだからなぁぁぁ?!」

ビクリ、と彼女の体が震え、腕と足が意思を無視して動き出す。

ジャキリ、とメス手袋から金属音がした。

「うえええ・・・や・・・やめ・・・」

「やめてええええ!!」

そのメスが・・・男の子の額を傷つける・・・

怯え、震え、恐怖にまみれた子供の声と、真美の必死の声。

「あ・・・が・・・」

真美は、舌を噛み切り自害しようとするが・・・

「そんな事をしようとしても、無駄だ。お前は、そいつらを全て爆雷にするまで、死ねん。」

「助け・・・て・・・助けて・・・」

真美の頬に涙が伝う。

「助けになど来ない・・・誰も、な。弱者はおとなしく強者の糧となれ。」

グィンが、満足げにそう呟いたときだった。

「やなこった。この六角形が!」

その声は・・・

まさしく、一文字隼人。

不敵に笑むと、彼は、

「腕ずくなんてよぉ・・・テメエこそよっぽど弱者だぜ。」

と、嘲る。

その足は、丁寧にグィンの頭を、ゴリ、と踏みつけていた。

「隼人・・・さん」

真美の、その言葉・・・

報われた、その言葉。

ぶつ。

そんな音がして、真美の肉体の呪縛は解かれた。

とさり。

急に力が抜けた彼女が地面に倒れようとしたとき、それを支えたのは、滝だった。

その手には、グィンの神経節が握られている。

「来たぜ・・・チ・・・隼人のヤツ、大怪我してるくせに・・・大丈夫かよ・・・」

「えっ?」

そして・・・その時。

気配もなく。

兵士の頭が、まとめて二つ、砕けた。

その手は人。

その貌は・・・虚。

「馬鹿な・・・その兵士を・・・素手でだと?!」

隼人の足を振り払う事もせず、グィンはそう叫んだ。

そう、虚は・・・生身でそれを砕いた。

「黙れ・・・貴様の非道なやり口・・・決してユルサネエ。」

それには答えず、ただ怒りのままに。

「貴様は俺が殺す・・・と言いたいところだが、それは一文字さんの仕事だ・・・」

そう言うと、虚の体は赤光に包まれて・・・カイザードの姿を見せる。

「悪しき世界にも・・・貴様らの居場所はない・・・俺がこの手で消す・・・」

名乗りはなかった。

完全に切れているのだろう、と、滝は思った。

「ク・・・キサマラァァァッ!!」

グィンは大声を出して、隼人を振り払った。

隼人は、それをやすやすとよけると。

すたっ、と地面に降り立った。

ポタポタポタ・・・

その体から・・・血のしずくが、地面に流れ落ちる。

そして、呆気にとられ、まだ怯えている子供たちを束縛する糸を、ブチブチ、と千切り・・・

男の子を地面に降ろすと、彼は・・・言った。

「・・・なぁ・・・聞いてくれるか・・・」

その貌には、さびしくて・・・

暖かくて。

強い、笑顔が浮かんでいた。

一言、一言。

かみ締めるように。

言い聞かすように。

包み、抱くように。

彼は・・・言った。

「  お ・ れ ・ は ・ み ・ か ・ た ・ だ  」

その言葉を言い終えると、隼人はすっくと立ち、

その両の腕を、まっすぐ右に伸ばし。

左へ向けて、ゆっくりとまわす。

その貌には、変わらぬ笑顔。

その両腕は、左に向けられ、力を示すような形に納まる。

そして――――

「―――――――変身」

カシャ

カメラのシャッターが開くように、腹部に浮かんだベルトのシャッターが開く。

中の風車が猛烈な光を上げ・・・

気づけば。

空には・・・緑の仮面。

紅い、拳の、優しい戦士。

「なあ・・・信じてみねえか」

滝は、ゆっくりと、そう言った。

「たとえ、神も、仏も、いなかったとしても・・・・・・・・・」

真美の貌には、滂沱の涙。

「仮面ライダーは、いる・・・ってな。」



後は、圧倒的だった。

2号のパンチがキックが、兵士たちを確実に破壊・・・嫌、のろわれた運命から解き放ち。

カイザードの怒りの攻撃は、戦車をなぎ倒し。

なぎ倒された戦車を2号が弾き飛ばし、それが兵士たちをさらに屠っていく。

「おい、お前ら!早く安全なところに!」

そういう滝だったが。

「おい・・・」

子供たちは、轟音とどろく戦場の、どこか荘厳な・・・

そんな、「誰かのための戦い」に魅せられていた。

誰も、一歩も動かない。

・・・空が白み始め・・・

2号の腕は・・・ライダーファイトの形になっていた。

傷だらけになって・・・あんなに血を流して・・・

それでも戦う、仮面ライダーの戦いに、彼らは魅せられていたのだ。

気づけば、すでに兵士たちはすべて沈黙している。

カイザードは・・・その剣を納め。

ただ、戦場には・・・

2号と、グィンだけがいた。

朝日が・・・

もうすぐ昇る。

その中で・・・

しばらく、二人は睨み合った。

そして・・・勝負が決するときが、来た。

す・・・と、2号が身を屈める。

「・・・!・・・ギィィィィッ!!」

グィンは、その牙を・・・2号に向けて射出した。

だが・・・!

空気を引き裂き、ギィン、という嫌な音をたてて・・・それは、2号を大きく外れていた。

その姿は、はるか天空。

朝の陽光を浴びて、緑に輝くその姿。

シャアアアアアアッ!!

グィンは糸を吐き、前の戦いと同じく、彼を縛ろうとする。

それが、彼の動きを止めれば、グィンが勝つだろう。

しかし・・・

ライダーの体は、ぐるぐると、卍を描くように回転していた。

その回転が、糸を絡めとり、弾き、拡散させていく。

―――――――子供たちの瞳には、彼だけが。

――――――――陽光を浴びて、輝く彼の姿だけ。

――― お れ は み か た だ ―――

「なぁにぃいいいいいっ?!」

ライダアアアアアァァァ卍キィィイイイイッック!!

斬・・・ッ!

その鋭すぎる蹴りは、グィンの体を真っ二つにした!

「ギ・・・ギギギギギ・・・スバラシイ・・・性能だ・・・!それだけの力を持って・・・キサマハ・・・ナゼ・・・・・・何の・・・・タメニ・・・理解・・・デキン・・・」

ドッドォオオオオンッ!!

そう、疑念と質問を投げかけて。グィンは消滅した。

この世から。

だけど・・・その質問には、かつて彼が・・・一人の子供を救うために、滝とともに編み出した、今の技と・・・

そして・・・

「よぉ・・・」

やっと笑った・・・

「やっと・・・笑ったなぁ。」

この、子供たちの笑顔が答えてくれるだろう・・・・・・



「で・・・やっぱり、別働隊がいたか。」

笑顔を取り戻した子どもたちでも、絶対近寄らない、元重傷者の部屋。

そこで、ボロボロの榊の包帯を巻き直しながら、虚はそう言った。

「ああ・・・まさか、ゾルがよみがえるとはな・・・」

その問いに答え、隼人に向き直る榊。

「隼人さん・・・」

「わかっている。ゾルがよみがえった・・・そして、グィン将軍とは別の組織の一員である・・・ということはわかった・・・」

そう言うと、、帽子を深くかぶって、うつむいた。

「・・・ということは、死神博士や地獄大使も、生きている・・・かもしれないってことだな。」

「ショッカーの・・・大幹部ですか。」

やはり、腕と頭に盛大に包帯を巻きながら、光太郎がそう言った。

「・・・もう一度、絶対に戦い抜く。」

隼人が、そう言ったとき、遠くから真美の声が聞こえた。

「おーい、隼人さん何処ぉー?ご飯よぉー!」

「飯か・・・行こうぜ、榊。」

「ハイ。」

そうして、彼らは、その・・・死臭染む部屋を後にした。



結局、彼らが、寺院病院を出たのは、それから三日後の事だった。

・・・子供たちが、彼らを・・・特に、隼人から離れようとしないせいだったことは・・・言うまでもないことだろう。



「『金狼』・・・ナゼ黙っているの?」

『蛇』はそう言って、彼を凝視した。

「ナゼ、黒狼を逃がした?納得いく答えを聞かせてもらいましょう。」

「・・・私が与えられたのは、この新しい体とミューティアンども・・・そして、黒狼のデータの収集だ。それ以上をする義務はない。」

「何・・・?あの状況なら、容易く捕らえられたでしょう?!」

「ふ・・・それでは面白くない。」

「・・・つかめないヤツね、貴方は。」

楽しげにそういう『金狼』・・・ゾルに『蛇』は気を抜かれたように、そう言った。

「ま、これは所詮小手調べ。次の一手をご覧あれ・・・だ。」

そう言うと、ゾルは部屋の外へ向けて歩き出し、『蛇』もまた、同じように外へ出て行った・・・



エピローグ

ラジオから、ニュースが流れている。

『依然、グィン将軍は行方不明ですが・・・ゲリラに不穏な動きは見られなくなっています。このまま、内戦が収まれば、この国にも平和の兆しが・・・』

プチ・・・

ラジオを消して、彼女は思った。

(そうね・・・もう、この国で、これ以上の悲劇は起こらない。そう信じるわ・・・)

「ハイハイ、わかったわかったぁ・・・もう、真美〜〜あんたのメールと違って、元気いっぱいじゃないの〜」

一文字たちが去ってすぐ、真美の友人がこの国に来た。

おかげで病院のほうは助かっている。

「一寸、元気すぎるけどね!」

カルテに、メモをつけながら、彼女は明るくそう言った。

「ところで、あんたの言ってたカメラマンの人は何処行ったの?」

「うん・・・」

その言葉に、彼女は少し声を鈍らせ・・・寂しげに笑む。

「行っちゃったわ。行かなきゃならないところがいっぱいある人だから・・・」

「そう・・・そうよね、カメラマンなんだし。」

真美は壁に眼を向ける。

そこには、子供たちに抱きつかれまくった隼人と、それを見守る榊と虚、光太郎、そして・・・呆れたように頭をかいている滝が写っていた。

(また・・・会いましょう。)

手紙の隼人に、心でそう言うと、写真の文字が眼に入る。

『またくる!! 隼人』

そう書かれた、その写真は・・・

子供たちの笑顔であふれていた。


続く。





次回予告

ネオフロンティア計画。

人類の生活圏をはるか太陽系の外にまで求めたこの計画は、すでに火星への本格殖民を可能にしていた。

そんな中、特捜チームスーパーGUTSの新米隊員・・・になるはずの男。

アスカ=シンは、訓練中に襲い来る、謎の敵との戦いで不思議なものを見る。

そして・・・

それは、彼の宿命のプレイボールだった。

次回、スーパーヒーロー作戦SPIRITS

「新たなる光」

魂より継がれし物語、今こそ語ろう・・・




後書け

だー!

またうそつきまんぼー!

黒狼聖剣体・・・許可もらったとはいえ、もう出しちゃったよぅ。

・・・ちなみに、エクストリガーなしでの聖剣体は、1分〜1分40秒が限界だそうです。

秋子さん「しかも、満月のときしかなれませんしね。」

そうですよぉ〜

しばらく、出せません。

・・・というわけで、次はダイナ話です。

G0が、少しだけでますよ〜

秋子さん「ところで、これで一区切りなんですよね?」

ええ、第一部シーン1が、これで終了です。

次の話の前に閑話が入るか、いきなり次かは・・・わしのスケジュール次第ッす。

秋子さん「・・・ふむふむ・・・それはいいとして、ここらで状況の整理しません?9話に一年2ヶ月もかけたんですし。」

そうですねぇ・・・では。

9話終了一週間後の、登場したヒーロー、悪の組織の現在を、箇条書きでまとめてみます。

1、 本郷猛・仮面ライダー1号 隼人の居場所を滝に教えた。現在地不明。
2、 一文字隼人・仮面ライダー2号 虚たちと一緒に出国。現在、虚たちとは別行動。
3、 南光太郎・仮面ライダーBlack ゴルゴムの手がかりを得られぬまま、チームセイバーに参加。現在エリアルベース。
4、 津上翔一・仮面ライダーアギト アギトの力覚醒。三杉家にいる。
5、 氷川誠・仮面ライダーG3 Gトレーラーで出番のなさを嘆いている(嘘。アンノウン事件調査中。
6、 葦原涼・仮面ライダーギルス 黒い青年に連れて行かれた。今のところ所在不明。
7、 陣内榊・仮面ライダー黒狼 黒狼聖剣体(不完全)発動。光太郎らとともに、現在エリアルベース。6話の秋子の行動に、戸惑いを隠せていない。
8、 ジャンパーソン 関東各所に出没。アンノウンや犯罪者と戦っている。
9、 ジャック=シンドー・ウルトラマングレート 東京でガイアを助けて以来、行方不明。
10、 高山我夢・ウルトラマンガイア 現在エリアルベース。チームセイバー。
11、 藤宮博也・ウルトラマンアグル 現在地不明。
12、 パトリシア=ハックマン 現在エリアルベース。チームセイバー。
13、 柊虚・陽光戦士カイザード 現在エリアルベース。チームセイバー。謎の男「グライバー」にやられた事を気にやんでいる。
14、 芽鑰悠子・月光仙女ヴァーティセス 現在エリアルベース。チームセイバー。
15、 謎の組織1(BADAN) 作戦を二つ阻止された。次はエジプトか?
16、 ゴルゴム 帯脇コンツェルンと協定を結ぶ。現在アギト捕獲をもくろんでいる?
17、 アンノウン(黒い青年) アンノウンは殺人をしている。黒い青年は、涼をどこかへ連れ去った。
18、 謎の組織2(ネメシス) 他の組織の陰に隠れて、何か画策しているようだ。過去のショッカー大幹部を幹部怪人としている・・・また、ミューティアンという生物兵器を投入してきた。
19、 帯脇コンツェルン ゴルゴムと手を結び、ジャンパーソン抹殺をたくらむ。そのために、アギトを捕獲しようとしている。
20、 根源的破滅招来体 3話でアパテーを送り込んできて以降動きなし。
21、 謎の組織3(メタグロス) ネメシス同様、他の組織の陰に隠れて何かをたくらんでいる。が、その行動は、ネメシスより謎。


・・・と、このくらいでしょうか。

秋子さん「ずいぶん増えましたねぇ。」

そうですね・・・

そのうち、まとめが一番大変になるんないかと・・・

秋子さん「人数増えると大変ですねぇ・・・」

ええ、黒狼のように、ライダーだけ・・・って言うなら、登場人物数も抑えられるんですけど・・・

あくまで、「スーパーヒーロー作戦」ッすから。

秋子さん「そうね・・・」

うむ、そういうことです。

て言うか、アレだけのボリュームのものを1年足らずで作る、スパロボ・スーパーヒーロー作戦スタッフを尊敬します。

・・・それと、いずれ出すであろう、あるものの設定を下に。

秋子さん「本当に出すんですか?」

ええ・・・そうじゃないと、最初の設定が忘れられてしまうので。

秋子さん「そうですか・・・なら、後は何も言いません。」

うっす。では・・・



カイザード・融鬼装態
能力 パンチ力25t キック力60t ジャンプ力70m 走力120km/h
技 千滅餓龍衝(ティルブレードによる、滅多切り。威力160t)
装備 次元速度対応機ディメンションコントローラー
   ティルブレード(レーザーブレードを、有機金属が強化したもの。威力90t)
カイザードの改造兵士として改造された部分が、コンバットスーツを侵食して誕生した形態。完全に理性は失われ、歪んだ闘争本能のみが行動を支配する。
ディメンションコントローラーを除いて、装備・武装は使用不可能。
レーザーブレードを有機金属で強化した、禍剣「ティルブレード」を装備する。



では、今回はこの辺で・・・

あ、そうそう・・・次回は、G0が出ます。

お楽しみに。

秋子さん「では・・・」

来週も。

作者&秋子さん「この番組で会いましょう。」

シュワッチュ!!

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