ある日の、虚と榊の会話

「なぁ・・・こういう言葉、知ってるか?」

虚は、其の名の通りの虚ろさでそう言った。

「・・・?」

怪訝そうに眉をひそめた榊に、彼は・・・

「・・・『生きているからには、苦しいのは当たり前だと思え。くだらなく生きるのも、苦しんで生きるのも、同じ一生。ならば、苦しんで生き生きと生きろ。』・・・だったかな。」

「・・・なんだ、それ?」

「いや、昔、どこかでそんな言葉を聞いた気がしたんだ。」

「・・・生きるのは、苦しい事・・・か。少し前なら、頭から否定したろうケド・・・今は、自信が無いな。」

そういうと、榊は自分の掌を見た。

「そうさ。生きるのは苦しいんだ。でもな・・・一つ、違いとかがあるとすれば、世の中には二種類の人間がいるという事だ。」

「・・・?」

再び、怪訝に眉をひそめた榊に、虚は言った。

「苦しみを苦しみと思うか、そうではなく、幸せと思うか。たったそれだけ・・・」

「・・・ふーん・・・そうかもしれないな。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

そして、二人は沈黙した。

明けない朝。

落ちない夜。

・・・月、太陽、海・・・

運命は、まだ・・・

動き始めた、ばかり。



スーパーヒーロー作戦SPIRITS
閑話壱――――榊―――――



―――夢。

――――夢を見ている。

―――熱い。

――――熱くて、狂いそうだ。

――――ああ、そうか。

―――これは、俺が・・・・

―――改造人間、陣内榊が・・・

――――――――そうなった日の、夢。



その日、俺は・・・

気がつくと、手術台の上にいた。

前後のことはよく思い出せない。

いや、少しなら。

夏休みの最中。

区営プールで思い切り泳ぎ、秋子姉の水着にドギマギした。

それから。

西川に借りてたマンガを返して、その帰りにナオキにいかがわしい本を渡されたことを覚えている。

声が響いた。

『陣内の申し子よ、汝は余の腕の一つ『黒狼』として選ばれた・・・その黒いオオカミの力を自らの物とし・・・余のために働け・・・余のために動け・・・余のために人を・・・殺せ!!』

・・・なんだと?

馬鹿にされた気がした。

俺は、絶対に、そんな、ことは、しない。

途切れ途切れにそういったような気がする。

直後、フラッシュバック。

刀を手に、血まみれの自分。

目の前には、懐かしいな・・・

本郷おじさんじゃないか。

本郷さんは、無表情な俺を抱き上げて、「ひどいことを。」と呟いた。

暗転。

その幻影が消えると、やはり俺の体はつながれたまま。

体を動かそうとする。

馬鹿にしやがって。

体に力が漲っていた。

―――ああ、俺はもう人間じゃない。

妙に冷静な頭でそう考えていた。

「ガァァァァァッ!!」

バシュゥゥゥーーーー!!

「なっ何っ!?何が起きたの!?」

女の声だ。

人間じゃなくなった俺の体から、すさまじい勢いで煙とも蒸気ともつかぬ白い霧が吹き上がっていく。

『手術中止っ!手術中止っ!作業員は速やかに、室内より避難してください!』

「この煙は・・・機械の故障とかじゃない・・・・・・彼の体から出ているんだ・・・」

慌てふためく警報の声と、冷静な声。

「えっ!?でも手術はまだ終わってないんじゃ・・・」

「思い出したぞ・・・・・・陣内家の秘密、そう言う事だったのか・・・・・・」

冷静な声は、そうして遠ざかる。

気がつけば、拘束ははずれ、作業員が右往左往していた。

何か、声がしているが、聞こえない。

ごろり、と何かが転がった。

ああ。

人の首だ。

俺は、冷静だ。

仮面ライダーと一緒に戦ってきた俺は、こんな光景は見慣れている。

俺自身、敵の戦闘員をやむを得ず殺したこともある。

殺さねば、殺される。

そして、今もじっとしていれば、俺自身をなくすことになっていただろう。

後悔すべきことは、何もない・・・はずだ。

転がった人の首をみた連中は悲鳴を上げて逃げていった。

そして・・・

残された俺の目の前には。

青く、蒼く、碧く輝く一つの石。

何も思わずに、俺はそれを手にとって。

自らの腹に押し込んだ。

そうするのが、当然だと思えたからだ。

体が変わる。

重く、熱かった体が冷えていく。

いや。

冷えさせられていく。

冷たい・・・人の心・・・命。

瞬時に理解する。

この石を作るために、何十人・・・何百人も殺されたことを。

怒りが、冷える体をもう一度熱くさせる。

まるで、殺されたものの怒りが、俺に力を与えるようだった。

―――脱出、しなければ。

体はいい具合に熱くなっている。

今ならば。

そうして、周りを見回すと、一人の男・・・

いや、怪人がいた。

「オイタはいけねぇなぁ・・・黒狼よぉ?俺は、『蜘蛛』。お前と同じ幹部怪人さぁ・・・けっけっけ・・・」

俺は、はっきりと、この男を敵と悟る。

「お、なに?やる気か?ま、俺様はやる気なんだけどもよ。オイタする子供は躾なきゃあな?」

嘲笑するようにそういう、『蜘蛛』に俺は言い放つ。

妙に癇に障る、嫌な声だ。

やるつもりなら、容赦はしない。

ならば、俺も名乗ろう。

やつと同じように。

さっきの声が言った『黒狼』という言葉。

使わせてもらおう。

ああ、俺は戦う。

もう、平凡には戻れない。

俺も、あの戦士たちと同じように戦い続けるのだ。

そう悟って。

口から言葉がつむぎ出る。

―――我・・・

――――我、疾風の戦士!

―――――仮面ライダー黒狼!!

そうして、俺の戦いは始まった。

ひどく、長い、戦いが・・・




あとがき

はお、ボンクラSS書き浦谷です。

最近、SS書き、という風に自称するのが苦じゃなくなってきました。

よい傾向(?)。

と、言うわけで(どういうわけだ?)、スパヒロ魂における初の閑話、という事で、一つ完成しました。

今回は、榊が改造されたときの話です。

この後、彼は『蜘蛛』を撃退して脱走。

力尽きて捕まりそうになったところをストロンガーに助けられています。

そこは、ちょっと余韻を大事にするためにカットしました。

・・・これは二次創作ではありません。

むしろ、三次創作です。

あしからず。

では、Y(ヤクト)団首領。殿に無限の感謝をしつつ。

シュワッチュ!!

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!