衛宮士郎は、少し困っていた。
冷蔵庫の中身をのぞきながら、ちょっとだけ困っていた。
「あのバカ虎・・・!なんて無駄なことを・・・!」
怒りとともに、少しだけ困っていた。
その手には。
―――ブノレガリアヨーグルト。
という表記がされている、一つの容器があった。
因みに、ふたがない。
このヨーグルトは。
「無糖タイプ・・・だよなぁ、この大きさで砂糖入れると、保存利かないからなぁ」
なのである。
つまり、ふたがないということは、備え付けの砂糖がないということである。
しかも、この手のヨーグルトについているのは溶けやすいよう加工した砂糖であり、ついているのを使ったとしたら、買ってこなければいけない。
消費期限は3日後。
どう考えても、あほだ。
明らかに、虎辺りが気まぐれで買ってきて放置した、のだろう。
正直、このまま無駄にしても一向に構うまい。
しかし、それでも無駄にするなと騒ぐ士郎君の主夫の血が騒ぐ。
それでも、まぁ。
時間は昼も程よく過ぎた午後二時。
正直申し上げると、
「―――うわー、めんどくさい」
という感じだった。
ちょっとだけアンリ出てる士郎君なのである。
というわけで、ヨーグルトをそのまま食べることは断念した士郎君だった。
実は士郎君、連日連夜、新規ヒロインコンビvsメインヒロイン3人衆を見せ続けられ、ちょっとどころじゃなく疲れていた。
それこそ、暗黒面がちょぼちょぼこぼれるくらいに。
砂糖入れずに食べるという選択肢を取らないだけ、まだマシだった。
「さて、どうしようか」
鮭のヨーグルトマリネ。
没。鮭がない。果物も柿しかない。
カレーでも作ろうか。
・・・却下。どこかのシスターが来そうだし、カレンに辛いのを与えると五月蝿いから没。
オーソドックスに行くなら、と思案して、思考は静止。
次いで、邪悪な考えが頭をもたげた。
繰り返して言う。
そう、この日の士郎君は、かつて彼を殻としていた性悪な悪魔君の性格が出ていたのだ。
「―――正直に藤ねえに食わすか」
いやいや、もっと引っ掻き回す方法があるはず。
正直言って、500gもヨーグルトを食べれば、どんな人間でもお腹がゆるくなる。
バゼットに食べさせたとしたら・・・
「ふっふっふ・・・いつもいつも、人に意味のわからないペイントしくさって・・・」
カレンもろとも、嫌がらせをしてやる。
それと気づかれない方法で、だ。
ククククク。
邪悪な考えを心に浮かべつつ、士郎君はいつまでも、いつまでも低い笑いを続けていた。
繰り返し、繰り返し言う。
今日の士郎君には、アンリくんが憑いてるとしか思えなかったのだ。
さて、どうするか。
そのまま食べさせても効果は薄い。
なら・・・
1.下剤を混ぜる
却下だ。
あの女は思いっきり、そういうのには敏感そうだ。
2.腐るのを待ってそれを与える
・・・没。
本当に死ぬような目にあわせる気はない。
3.諦める
・・・おいおい。
その後もいくつか考えは浮かんだが、どれもうまくいきそうにない。
しかも、後半になればなるほど、じゃんけん死ねぇ!を打ち込まれるような気がしてならなかった。
どうしよう。
そう、例えアンリが取り付いてようがなんだろうが、衛宮士郎の頭の中身は悪事を働くようには出来ていないのだった!
そこで思考を深くしてみたら。
ぽかっと、虚しくなった。
「あー、もう何でも良いや」
投げやりにつぶやく。
いくら砂糖がないといっても、ほかのもの、たとえばジャムでだいよ・・・
・・・今何か不吉な考えが心に浮かびましたよ、このやろー!?
ジャムも却下だな。
どう考えても、大却下なのである。
「普通に砂糖混ぜても美味しくないしなぁ」
やっぱり、バゼットに食わせようか。
それも芸がない。
喜ばせて、その上で嫌がらせになるようなそんなものはないかな。
そう考えていると、唐突に浮かぶ考えがあった。
そうだ。ランサーが釣ってきた魚があった。
バゼットがなんか嫌がるから、どうしようか悩んでたものである。
サーヴァントに労働やらすな、とかそんな話だけど、ランサーには迷惑だよなぁ。
あいつ、結構職業意識とか有りそうだし。
まぁ、いいか。
ランサーの釣った魚の味を知るというのも、あのサドマゾには利くことかもしれない。
そう思って、冷蔵庫から魚を取り出す。
幸い、野菜も、前に作っておいたブイヨンもたっぷりある。
なら、今日の夕飯のメインは、一風変わった洋食、白身魚とイカのトマトヨーグルト煮だ!
そうと決まれば話は早い。
てきぱきと作業を始める。
あのサドマゾにほえ面かかせてやる!
歪んだ愛情ともいえなくもない考えで、士郎君は料理を続けるのであった。
どっとはらい。
追記
出来たトマトヨーグルト煮は概ね好評だった。
バゼットも、ランサーは自立しているよ、といってあげるとちょっと悔しそうであった。
サドマゾシスターについては、繊細な味付けはお嫌いでしょう、と士郎君にあるまじきいやみをこぼしながらハバネロをたっぷり加えて差し出したら、ニヤリと嫌な笑いと。
一筋の汗を流したという。
概ね、士郎君の狙いは達成されたといえよう。
追々記
あまりの邪悪さに、メインヒロインズには不気味がられ、しかも食後新規ヒロインズにとっつかまりペイントされたという。
合掌。
おとがそ
スカイピ。意味不明。
WEB拍手返信
3月6日分
>セイバー結局、子ギルに名前を聞いてませんね。しかも酔っ払てるし・・・士郎と凛、桜のこと言えないよ。
ニート王ですし。金ぴかとそう変わらない暮らしぶりに乾杯。
>いつも思うんですが、子ギルと大ギル。どこをどうやったらあそこまで性格が変わるんでしょうね。一番の謎。
素直に考えると、性悪女神イシター様との舌戦とか、友達失ったこととか、その辺りと関係あるんじゃないでしょうか。英雄としての全盛期がああだとすれば、エルキドゥと付き合ってた頃はあんな感じだったんでしょうね。そのだいぶ前と、戦友の死後はそこそこ謙虚だったんじゃないですかね?
>性格が子ギルのまま成長したら…求婚はセイバーじゃなく三枝…(大ギルと三枝のツーショットを想像)
それを想像できない僕は汚れてます。
3月7日分
>嘘タイトル懐かしすぎですがな。最近メスロンは復活してるそうですね。
それ,マジですか!?
嘘タイトル
「Fate/Devil Summoner 葛葉ライドウ 対 聖杯戦争」
最新作。昨日クリアしたばっかです。使える悪魔にスカアハ(スカサハ)いますから、ランサーでは勝てません。多分