ここはどこだ?…夢か?
奇妙な感じだ…寝ているのに寝ていない、リアルな感じがする。

東京の町が燃えている。街に溢れる、異形の者…ば、化け物?
折れた東京タワーの前のビルの屋上に俺がいる。

あれが俺か?おかしな剣を持っている……
だけど俺だ、あの髪型も目がねも俺に間違いは無い。

俺のほかに誰かいる。
一緒にいる三人は…誰だろう……。


……
………

ドサッ

 こ、ここは?

えっと…確か、ここは自分のマンションのベットで、その上…寝相が悪くしょっちゅうベットから転落して…
「…いだい…」

 最近、本当夢見が悪いと思う今日この頃、それがただの夢で片付けられなくなっていく運命に…翻弄されていくのだ…

勇者あいだ

第1話 勇者誕生


 まずは自己紹介だな、
よう! 俺の名は相田亮太、17歳のフリーで彼女居ない歴17年だ!

自慢じゃないが去年、高校中退で今、マジでフリーターしてて、仕事をさがしているところだ。しかーし、俺のとりえは剣道と足の速さだけ他は全然…って事もあり、雇ってくれる所なんてあるわきゃねぇ。

その剣道と足の速さで高校時代、俺は喧嘩好きで、竹刀一つで番長グループを全滅させた事がある程の実力者だ。
んで成績が悪く、しかも喧嘩三昧…と、そんな訳で、高校を中退した。

 この東京でバイトをしながら、今まで一人暮らししてたけど…前のバイト先も首になっちまったからいまこうして、仕事探してるんだ。

「とは言ったものの…全然仕事ないじゃん」
 こんな…何のとりえも無い俺を雇う所なんて何処にも無いわな……あ〜あ、暇だな。
「ん?」
仕事を探しながら歩いているうちに、気がつくと奇妙な建物の前にいた。
「なっなんだ?ここ」
東京の下町にある商店街の中に一件だけ不釣り合いな店があった。看板は少し腐りかけていた為か、崩れ落ちそうになっているし…
気味が悪いさっさと退散した方が身のためだ。と思ったものの、俺の好奇心がその考えを打ち消し…、俺はその建物に引き寄せられるように近づいて行った。

 古びた、店の門をくぐると向こうに…また表札のある、今度は木で囲まれた、化け屋敷みたいな家があった。
「なっなんだ、霊界科学特捜事務所?」
 名前からして、いきなり怪しい……なんかのオタクの集会か、宗教団体か?!それだったら俺なんて、門前払いだろうな…
 でも、こんな化け屋敷だーって言ってる様な場所は初めてだ…
「なんだ?はっ入ってみるか」
 ギーッと、古びたドアを開けて中に恐る恐る入ってみると受付の所に初老の爺さん、だろうが…この暗い雰囲気でぬらりひょんかと思った…
その爺さんは首を俺のほうに向けて…俺を見るなり…
「仕事の依頼ですか?それともを働き口をお探しで?」
 …なんだか気持ちの悪い爺さんだな…
「あの〜、俺…仕事探しているんだけど」
一応そう言うと、ぬらりひょん見たいだった爺さんの表情がパッと明るくなり、うれしそうに手を両手で握ってブンブンと振り回す。
「そうか、そうか!ありがとうよ〜若いの!」
「だー!何だ、何だぁ!?」
「やっと働く奴がやって来た!…わしだけではどうにもならんからのう〜、あ…おお、すまん、すまん…歳甲斐もなくはしゃぎすぎたわい」
 雰囲気の変わりようも尋常じゃないって…この爺さん。
「この事務所は、履歴書なんてそんなかたっくるしいことはなしじゃ、わしの質問に答えてくれるだけで結構じゃ」
 爺さんは、俺の腕を放してもといた場所の戻ると…
「質問じゃ、お主は…ネス湖の怪物、心霊現象、未確認飛行物体、超能力、オーパーツその他いろいろの超常現象を信じているかね」
「へっ?まあ一応……」
俺はお化けとか幽霊とかそういう関係が結構好きだ、なんたって地球でまだ知られてない事って浪漫じゃんか?
「もひとつ質問じゃ、お主は何か武道を心得ておるかのぉ?」
「剣道を一応」
「おお〜ならぴったりじゃ! そして最期の質問じゃ、お主は仏教徒かね?それともキリスト教徒かね?」
「…うーん、あんまり気にした事は無いけど…強いて言うなら仏教かな…でも神様がいるかどうかはよくわかんね」
「…無信教者かそかぁ、うむ!合格じゃ!君をこの事務所に採用する!」
 何て簡単なんだ、俺の特技が剣道なだけで採用なんて…しかも超常現象や宗教のことまで聞いて…一体何のつもりだろう…
「あのすんませんけど、これだ…」
「早速じゃが、わしの変わりに頼んでくれないかね。依頼を…」
早ぁ!!
爺さんは採用早々に、俺に最初の任務をたたきつけてきた。
「いっ、いきなりですか?で何をするんすかこの仕事」
「扉に書いてなかったかのう?この仕事はのう、心霊現象だとか怪獣騒ぎとか…世の中を震撼している超常現象専門の調査事務所でな、クライアントが依頼してきた、非科学的な現象、つまり幽霊や妖怪騒ぎを…解決して報酬を貰う、言って見るなら…退治屋かのう」
 よ、妖怪退治で金を貰う!?すげぇな、ここは…って早速最初の依頼って…
「むっ、無理言うなよじいさん、初っ端の俺にそんなことできるわけないだろ!」
 俺は腕をぶんぶんと振って、断った、そりゃそうだろうたとえ剣道が得意であっても相手が幽霊や、妖怪だなんて…
「クライアントの報酬は、百万円円なんじゃがのう」
「ひっ百万!!」
 百万…ひゃくまん…ヒャックマン…そんな大金俺見た事無いぞ…これは、やらなきゃ大損じゃないのか!?
「で任務は?」
「あるラジオ番組の噂を耳にするじゃろう?」
「いんや?なんだそれ…」
「なんと」
ずこ
 爺さんは俺の素っ頓狂な反応に素でこける。
「新聞とか読まんかい、某ラジオ局Tのラジオ番組に笑い声が入っていたという噂話じゃ、しかも一つのラジオ番組、特定の時間に聞こえると言うのじゃ…以前に聞いて見た録音MDがあるが聞くか?」
「お…おう…」
 爺さんは棚から取り出したMDウォークマン(何て現代的な爺さんだ)を貸してくれて、俺に聞かせてくれた。
「お、この番組俺も良く聞く番組だぜ!」
「知っておって、この噂を知らんとは…」
 爺さんは呆れながらそう言った。
「問題の部分はこれじゃ!」
 ラジオの音に敏感に耳を澄ませていると…確かにそこには『イヒヒ』と言う笑い声や、不気味な叫びのような声が聞こえた。
「たぶん悪霊の仕業じゃろうとわしは踏んでいる」
「あっ悪霊?!」
「そじゃ、悪霊…それもたちの悪い、心霊ストーカーじゃな」
「心霊ストーカー…」
そのまま30分位沈黙したのち俺から聞いた。
「じいさん、報酬が100万だって事はわかったけど、その悪霊ストーカーとどうやって戦うんだよ?まさかお経を習え何て言うんじゃないだろうな」
「わし等はそこいらの、寺の住職とは違うぞい!」
と言ってじいさんは一振りの片刃の剣と袋を手渡した…袋の中には、キョンシーとかの頭にくっついている札らしき物が入っていた。札は赤・青・茶・白の四種類の札がぎっしり詰っている。
「この剣は『クロスソード』と言う剣でな霊体を封印するご神木の柄とヒヒイロカネと呼ばれる、金属と霊気で練りこんだ合金で作り上げた、霊や悪霊を斬る剣じゃ。そしてこの札は『四聖獣の札』いわゆる式神じゃな」
 ほうと、爺さんに手渡された剣をまじまじと見る。真剣らしいな…剣道の得意な俺にはぴったりだぜ、でも俺が夢で見た剣とはちょっと違うようだ。
 でもこれなら悪霊なんてぶった斬る事ができるんだな!
「よしっ!任せな爺さん!俺がこの剣で、妖怪だろうが悪霊だろうが何でもぶった切ってやるぜ!」
 そう言い俺は勢い良く、事務所のドアを開いて外に駆け出した。
「ああ、札の方はは式神の名を言って放つのじゃ!そうでないと、力が発揮できないぞいって…もうおらん」
爺さんの声なんて耳に入らず、そのラジオ局Tに向けて颯爽と走っていった。
「脚の早い若造じゃのぉ〜」

某ラジオ局T(PM3:20)
「ちわーっす、えっと霊界科学特捜事務所で〜す。お化け退治に来ました〜」
威勢良くカウンターの前で言ったら、一瞬奇異の目でカウンターのお姉さんに見られたが『しばらくお待ちくださいませ』と言って…後々で、丸目がねをつけて口ひげを生やした、アド○フヒ○ラーのようなおっさんが俺の前に出てきた。
「いやー、待ってましたよ。あなたですか木野法師様の言ってた、新入りさんと言うのは」
「はっ、はい…」
 木野ってあの爺さんの事だよな、そういや自己紹介せずにこっち着たからな。
「ご要望どおり、お金は用意してございます〜何分私達のお仕事は視聴者がおりますし、その番組も人気番組ですので…この噂が、酷くなれば視聴者は減り、やがては倒産だ…お願いします!何とかしてください!」
「あ、ああそうっすかぁ、じゃ…悪霊に合わせてくださいちゃちゃっと片付けますんで」
「いえ…それを探すのも、あなたのお仕事では?」
 おっさんは何を素っ頓狂な事をいってるんだ?俺がそんな霊感があるとでも思ったのか?
「ほう、自分では見つける事ができませんか…では、直に聞きますか?」
と言うとおっさんはスタジオに俺を案内して行った。
「ここが番組の収録スタジオです。この場所で番組をやっている内に不気味な笑い声とか…叫び声とか…」
「俺も聞いたっす、うーん手の込んだ悪戯かなんかじゃ…例えば電波ジャックとか」
 あの手の悪戯はよくある物だ、特に今のご時世だ…携帯とかで簡単に出来るらしいってニュースで言ってたような気がする。
「その線もあたって警察の方で調べてみたんですが…結局駄目で…それで、あなた方の事務所のチラシを見まして…」
 ああ、そう…って俺はそう言った。少なくとも俺はそんなチラシはこの東京に来てから一度も見ていない。
「あっ、そう言えばこの番組ってあの人気声優の上原泉さんの『ブレイブハート』って番組でしたよね〜」
「ええ、そうですが…あと少しで泉ちゃんが到着しますが」
「なに!?」
 ラジオが余りにも聞き覚えがあったからなんだと思ったが…やっぱそれだったか。
上原泉(うえはらいずみ)とは昨年デビューを果たした声優で歌手としてもよくやっているしアニメでもすごい活躍だ。
去年の春からこのラジオを聞いて俺は上原さんのファンになった。この番組は上原さんがDJを勤めて、この番組の見所は、何と言っても連載ヒーロー物でもある『機動狩人ウォーハンター』だよな、これで上原さんは『恋香』の役をやって、その健気さがマッチして…いいんだよな〜。後は上原さんと毎回のゲストを迎えてのトークショー!そして彼女の歌で締めくくると言う物だ…
「あのーもしもし?」
良く考えてみたら、ここで断ってはせっかく上原さんに会える機会が無くなってしまう。つまり生上原はその時点でバイバイなのだ。しかも悪霊の声は紛れも無く最後の歌のコーナーで出てきていた。何時も聞いてたけど…なんで聞き落としていたんだろうかと、疑問に思ってしまうが…まあそんな事はどうでもいい
「待合室は何処よ!おっさん!」
そう俺は悪霊退治を引き受けたのだから。ここで彼女を守らないと男がすたるってもんよ。
ちなみに俺は恋人はいまだにいない。(現在彼女募集中。)ひょっとしたら、上原さんと…今回の事件が縁で、ひょっとしたら、ひょっとしたりして!
「そろそろつく頃ですよ、番組が始まるのは11時ですので…」
 気がつきゃ、来てからもう8時になっている、おっちゃんと色々話してる内に…時間が経ったのか。

待合室前(PM8:34)
「一応、泉ちゃんは木野様には一度お目通りしておりますので…あなたも一度」
「あ、そうか」
 あの爺さん一度会ってたんだな…畜生、ずるい!
「泉ちゃん、お化け対峙の事務所の人ですよ〜」
 おっさんに待合室に先導されて、俺は中に入るとそこには本物の上原泉がちょこんと座っていた。
「あ、プロデューサーさん、あら?先日のお爺ちゃんじゃないんですね」
 少し釣り目がちだけど、可愛い顔立ちにすらっとした体系…それにこの可愛い声は間違いない本物の生泉だ!
「ど…ども、こんちわ…」
「こんにちは〜番組DJを勤めさせていただいています、上原泉と言います」
「こ、こちらこそご丁寧に…俺、相田亮太と申します」
「あっ、あいださんですか、よろしくお願いします〜」
生泉さんだ!本物だ、本物が俺の目の前1メートルにいる。
「番組何時も楽しく聞いています!会えて本当にうれしいです」
「あ、ありがとう〜こっちも番組に変な噂ばっかり出て、楽しく聞いてくれる人が居て…有難いです〜」
泉さんは笑顔でサインしてくれてしかも握手してくれた。上原さんの手があったけぇ…
「あいださんも、遠い事務所から態々番組のために…ご苦労様です」
 うん恋香のキャラに似合って…このおずおずとした口調が…
「いえ、全然遠くなかったっすよ!何せ生の泉さんに会えたんですから!」
「嬉しいな…本番まで、時間ありますしどうぞお茶でも」
「え、いいんすか?」
 優しいんだな〜思っていた通りだ…泉さんはそう言ってポットでお茶を沸かし始めた。
「じゃあ、僕も貰いましょうか」
 おっさん、居たのかよ…(怒)

 その後、泉さんの待合室で他愛ない話が花開いた、見た目よりもすこしおっちょこちょいな所とか、番組の話とかいろいろで、おっさんは出て行かなかった…ったく気を使えよおっさん!
「ははは、でも……どうしてかな」
 泉さんは少し顔を伏せた。悲しげな表情が…なんだか痛々しい…
「番組に変な噂は流れるし…変な手紙は来るし……」
「変な手紙?」
「家に良く来る変な手紙なんです、時には視聴者の中に…家にも…」
 そう言うとおっさんが耳打ちをして来た。
「局の方とか、泉ちゃんの家に変な手紙が毎日来るんだって…決まって『好きだ』とか『愛してる』とか、書いてある紙だけが入ってて、差出人は不明だって」
 まさに典型的なストーカー野朗だな…
「それに、暗い道を一人で歩いていると、誰かが後ろから着けて来てるような気がしてならないんです、でも振り返っても誰も居なくて…」
「そうか…」
 俺の知らない所で、泉さん苦しんでたんだな…でもこれって、今回の事件と同じような感じがするな…
「お願いします、あいださん私を助けて」
 切実に泉さんは俺に訴えかけてきた…その時…

「泉ちゃんリハ、行きますよ〜」
 スタッフの一人が、リハーサルをすると言う知らせが入り泉さんは我に帰って…
「あ、はーい。じゃあ、あいださん、私行かないと」
「お仕事、がんばってください」
俺は手を振って見送ってやった。なんだか切ない気持ちになった…
これが…恋!?(…おいおい(汗)

「あ、プロデューサー!こんな所に居たんですかぁ!?さっさときてくださいよー」
 やっとおっさんも連れて行かれるか…俺もリハーサル見に行くか!

『…ふふふ、泉ぃ…はぁ…はぁ』

「ん?おっさん、なんか言ったか?」
「いえ、何も…どうしたんですか?」
 さっきそこで、声がしたと思ったんだけど…

スタジオ・リハーサル(PM9:10)

「やっぱり来れないんですか…氷室さん(今日のゲスト)」
「仕方ないよ、そこら辺はカバーするから、泉ちゃんはそのままやってて」
 ゲストも急な腹痛これなくなったって言ってたな、これもなんか引っ掛かりを覚えるぜ。

 そんな事にもめげず、泉さんはいつもの通り元気で、番組のリハに入った。
「ではリクエストの飛び出せ青春ど〜ぞぉ!」
な…なんちゅう曲だ。
 曲はとも角、何時もならここで終わるはず…曲の後に…エンディングがきて
曲が終わる直前…
『終わらせない…終わらせないよ、僕の泉ぃ…』
 急に耳鳴りみたいに俺の耳に声がしたと思った瞬間…
「ど、どうしたんだ…急に音響機器が…誤作動を!?」
「どうしたんだ!」
「解りません、ただ……え?何?これ…声!?」
 女のADのスピーカーに、只ならぬ声が流れ…
「あ、ああ…」
 女のADさんは失神して倒れこんでしまった。
「おい!」
 その後、スタジオの機材が地震でもないのに勝手に揺れだした。
がたがたがた
「これって有名なポルターガイストって奴だよな…」
 ついにお出ましってか、悪霊さんの…こんな事映画でしかなかったと思ったけど…マジなんだな!
 ガラスの向こうの泉さんがおどおどと何かにおびえている。
「た、助けて!」
「ち、っくしょぉーー!」
 俺は、破れかぶれでガラスに飛び込んだ…ガラスが割れて俺は泉さんの居るスタジオに侵入できた。
バリーーーン!!
「く…」
 床を転がった時受身を取りそこない…体に衝撃が…加わる。
「あいださん!助けてぇぇーー!」
 素に声に俺は頭を上げてみる…

俺は頭上に2mほどの半透明の幽霊が泉さんの首をしめているのを見た。でっでかい、これが悪霊ストーカーの正体か!?物凄すぎるじゃねぇか!そ、そんな事よりだが今は泉さんだ。
「てめぇ!彼女を離しやがれ!」
俺は素手で幽霊に立ち向かったが弾き返された…
『邪魔だ!』
バシッ!
「うごふ!」
カチャ
俺は壁に叩きつけられて、大切な眼鏡を落してしまった。
「あいださん!」
泉さんが俺に助けを求めているのに当の俺は…
「眼鏡!どこだ…畜生、眼鏡が…」
 前が見えない、眼鏡がないと全然目の前が解らない。俺は辺りを手探りで眼鏡を探した。ああっ俺って超かっこわりぃ
『いきなり現われて僕と泉の愛の邪魔をしたからだよ…そら!』
にゅぅぅ
 悪霊ストーカーの巨大な腕が俺の背中から体に入り込んできた。何だ…この寒気と凄まじい吐き気…魂が、魂が寒いんだ…
 これが、魂を抜かれる感覚ってか?駄目だ…体の力が抜けてくる…もう、駄目だ。
シャ!!
『ぎゃぁぁーーー!』
「むん…」
 体の寒気が一気に抜けたかと思うと、一気に力が抜けた。
「大丈夫か少年!わしが来ればもう安心じゃ!」
 声からして、あの爺さんだ…何かで悪霊の腕を切って、俺を助けてくれたらしい。
「ほれ、少年!お主の眼鏡じゃ!」
「じいさん、すまねー」
 爺さんから、眼鏡を手渡されてそれを目にかけて、目が見えるようになった。爺さんが仕込み杖の入った剣で悪霊の腕を斬って…俺を助けてくれたらしいな。
「剣を使わんかい、わしが上げた剣なら霊体を寸断できるぞい!」
「解ったぜ、爺さん!さあ悪霊野朗!泉さんを放して、俺と勝負しやがれ!」
俺は悪霊に指差して言った。
『ふざけるな!!泉は僕の物だ!誰にも渡すもんか!』
 泉さんは悪霊の腕の中で気絶している、さっきみたいに命を吸い取って、同じ場所に行かせるつもりか?
「考えてるひまはないのじゃ!やるのじゃ!」
「おおっ!」
シャッ!
俺は腰に下げていた剣を引き抜いて巨大な悪霊に立ち向って行った、もう破れかぶれだ、どうにでもなれ!
「おぉぉーーーりゃぁぁーー!!」
俺は悪霊の体をその剣で袈裟にぶった斬った。
ザシュ!!
『ぐああ、畜生!ここで諦めるもんかぁ!』
悪霊は、スタジオの窓をガラスを突き破って泉さんを抱えて外へ飛び出していってしまった。
「あ、待ちやがれー!卑怯者がぁ!降りて勝負しろー」
ブンブンと俺は剣を振り回して悪霊に文句を言うが、悪霊は泉さんを連れて飛んでいってしまった。
「いかん、あいつは鬼門を通って霊界に彼女を連れて行くつもりじゃ!」
霊界って、なんか知んないけど、やばいじゃん凄く!
「そりゃ大変だって、霊界ってどこだ?」
「教えてる時間は無いぞい!早く行かんか、じれったい!」
 爺さんにせかされ、俺は悪霊の出て行った穴から飛び出してその脚で悪霊が通った道筋を辿って行った。

道路を猛スピードで走ったが俺の視界から幽霊は見つからない、何処行きやがった!?このままだと今日の本番までにまにあわねぇじゃねぇか!?
「おーい、しょうねーん!」
 後ろからなんか爺さんの声らしき物が聞こえた。
「止まらんカァ!」
キキキキキーーーー!!
俺の前に爺さんが運転する車が、急ブレーキをかけて止まった。
「なんだよ、じいさん、行けだの待てだの…」
「このままだと間に合わなくなるぞい、乗るのじゃ!」
 爺さんの運転する軽のワゴンの荷台に飛び乗ると、ハンドルを切って猛スピードで走り出した。
「うわぁぁーー!爺さんちょっと強烈すぎねぇか!?」
「わしのドラテクから逃げられると思わないでほしいわい!」
 年寄りの癖になんてドライブテクニックだ…俺も車乗る時になったらあやかりてぇ!
「見えてきたぞい、少年!」
「お!?」
 目を開けると、泉さんを連れた悪霊がふよふよと空を舞っている。あの台風の雲みたいな真っ黒などす黒いグルグルした奴…なんだ?あれ…
「じいさん!あれは!?」
「あれが鬼門じゃ!カーブが近い…よし少年!カーブの勢いを利用して飛べ!この勢いとお主の脚力ならたやすい筈じゃ!」
 あれが、鬼門か…何となく嫌な感じがするぜ…泉さんをあそこに連れていこうだなんて。
「解ったぜ爺さん、そのまま行け!!」
「おうさ!!」
 爺さんは思いっきりアクセルを踏んで、カーブめがけて直行した。荷台で剣を引き抜いて、ボンネットの上で構える。
「行くぞ!一気に飛べ!」
「おお!」
爺さんの車はヘアピンカーブに差し掛かり、俺はその反動を使い一気に夜空に飛び上がった。
「だぁぁーーーーー!!」
 悪霊は泉さんと、鬼門に入ろうとして…気づこうとしない。俺は上空で剣を構えて…
「とどっけぇぇーーー!!」
 悪霊に向けて一気に振り下ろした。
ばっーーー
『ええ!?そんなあんな距離から届くなんて…』
悪両派寸でで気づきに、飛びながら剣を紙一重で避けると、俺は鬼門の方へと吸い込まれて行く。
「う、わぁぁ!!」
『馬鹿、そのまま鬼門に…え!?』
ザシュゥゥーーー!!
 俺の剣は鬼門の雲を、一刀両断にして鬼門を消し去った。
『何!?壊す事の出来ない鬼門を…斬っただとぉ!?』
 鬼門を斬った反動をつけて、更にジャンプをして悪霊に向けて剣を振った。
「泉さんを放せーーー!」
ザシュッ
俺は悪霊の腕を一刀両断にして斬り落とした。
『いぎゃぁ!』
たまらず悪霊は泉さんを手から落とした。
「やっべ!」
泉さんが落下するのと同時に俺も急降下して、途中で泉さんに追いつき、しっかり受け止める。
俺は公園の植え込みの上に落下して、衝撃を和らげた。
「ふぅ、死ぬ所だった…」
『くそー腕を斬った挙句に…泉に触れて、もう許さないぞ!死ねぇぇーー!!』
腕を斬られて激怒した悪霊が後を追って俺に落下して来た。
「ほーごちゃごちゃうるせぇよ、ストーカー野朗!!俺に喧嘩売るなんて!100万年早いんだよ!!」
俺は気絶した泉さんを、そっと地面に寝かせると、爺さんから貰った札を銃を取り出すように、引き抜いた。
「えっと、赤い札か…飛べ!朱雀!!」

適当に叫んで投げたら。札が炎の鳥になり悪霊に突っ込んでいった。
『ピーーーー!!』
ズガーーーン!!!!
『ぐぎゃー』
見事悪霊に朱雀が命中し、悪霊は炎上して燃えあがった。燃え上がる悪霊を見上げて…剣を構え、落下してくる悪霊に向かって一気にジャンプした。
「地獄に帰れ!めーーーーーーん!!」
悪霊より高く飛んだ俺は剣を思いっきり悪霊の脳天を目掛けて振り下ろした。
バシューーーーーー
声もなく、悪霊の体は真っ二つとなった。それで俺は剣を奴に向け、言い放った。
「よく聞け、悪霊!俺は世の中の平和を守る正義の使者、勇者あいだを覚えておけ!」
『勇者あいだ……か…こ…と……しは…はっ…はやる…ぜ、うごふ!!』
悪霊はじゅーっと言う蒸発する音と共に消えてなくなっていった。
や、破れかぶれに言ったけど……は、はやるのか?

「はぁ…よっしゃ!勝ったぜ!」
 あまり実感わかなかったけど…悪霊に勝ったらしいな。
「そうだ、泉さん!」
 公園の植え込みに寝かせといて…泉さん、大丈夫かな…
「泉さん、泉さん!大丈夫ですか?」
 気絶している、泉さんの体を揺さぶると…泉さんはうっすらと目を開けた。
「あ…あいださん…」
「安心してくれ、悪霊は俺がきっちり成仏させたぜ!」
 泉さんの前で、俺は拝むように手をあわせた。
「あ、そうですかぁ…ありがとうございますぅ」
 泉さんは俺の手を握ってぶんぶんと振り回し、感謝の意を表した。
「助けてくださってありがとう、あ…でもお礼が…」
「いいっすよ、礼なんて〜」
「あ、本番が…」
「え、ええでも、今日はゲストが…」
 そう言えば、今日ゲスト来れないって言ってたな。これだけはどうしようもな…
ききーーー!!
 と思ってると、俺達の目の前に爺さんの車が急停車していた。
「二人とも、早くわしの車に乗るのじゃ!今から猛スピードで行けば、本番に間に合うぞい!」
 爺さんが車から降りてきて、俺と泉さんを強引に車に乗せた。
「あ、でも…ゲストも居ないし…」
「そんなの、少年!お前やれ、緊急じゃ!」
「ええ!?そんな、急に…」
 急にそんな事言われても、どうしたらいいか解らない。
「いえ、ぜひやって貰いましょう」
「うわ!びっくりした!」
 俺の座ってるすぐ横に、何故かプロデューサーのおっさんが現われてビックリした。
「お、おっさん何時の間に」
「いやー、いいドリフトでした…あいださんは泉ちゃんを助けた英雄ですから…」
 そんな時からいたのか!?全く気づかなかったぞ…
「いいですねぇ、あいださん是非…出てください!きっと視聴者も喜びます」
 そんな泉さんが言ったら断りようが無いじゃねぇか。
「今日のゲストに相応しい、アドリブで出来るよね」
「はい!」
 泉さんは嬉しそうに、笑いながら頷いてくれた…あー、こうなったら出演してやるよ!

スタジオ
 結局、俺の『勇者』としての初仕事はラジオ番組に、生放送と言う形で全国に広まってしまった。あのボロ事務所から、日本全国に知れ渡る『勇者』となり泉さんの番組のゲストとして…出る事となった。
 俺にとってはその方が、悪霊騒動よか怪奇現象で、これが夢だと思いたい。
 でも、こんな夢なら…大歓迎だぜ!
「…今日は私と番組を助けて頂いて、ありがとうございます。あっ、最後に…あなたはいったい?」
 えっと…なんて言おうかな〜
「俺は、霊界科学特捜事務所ナンバーワンエージェント、勇者あいだだ!みんな、覚えとけよ!」
俺はきまった〜と思った。こういう台詞言ってみたかったんだよな〜即席で作ったから役に立ったぜ!
「では今日のゲストの勇者あいださんでした!ではまた来週〜しーゆーネクストウィーク…」
 エンディングの曲が流れて、番組が無事終了した。
「おつかれー、いや相田さん…本当」
 プロデューサーのおっさんの話はこの際無視の方向で…俺は泉さんの所へと向かい。
「あ、今日は本当ありがとうございます…あいださん、どこか怪我してませんか」
 気遣ってくれるなんて嬉しいな…
「いや、大丈夫ですよ〜体はこれでも頑丈ですから」
「よかった」
「あ、あの…泉さん…もしよろしければ」
 今度個人的に会いませんかと…言おうとしたその時…

「泉!」
 遠くの方から、スタジオ(壊れたので緊急の場所)に見知らぬ男が駆け込んできた。
「あ、祐介」
 駆け寄ったと思ったら、いきなり男が泉さんを抱きしめた。
「え?ええ?」
 何だ?この期に及んでまたストーカーか?
「今日の放送、良かったよまた君の嬉しそうな声が聞けて…」
「うん、あいださんが助けてくれたから。あいださん紹介しますね」
 その男を俺の前に立たせると…とんでもない事を口走った。
「私の夫の祐介さんです」
「始めまして、泉を助けてもらって本当感謝の言葉もありません。これつまらない物ですが、あ、君はまだ未成年だったね」
 男はそう言い俺にワインのビンを一本渡した。貰いながらも俺は放心状態に陥っている。何で?泉さん結婚してたっけ?
「そういや、今年結婚したとニュースで言ってたぞい…」
 爺さんはそう言うと俺の手からワインのビンを奪い取り。
「熱いのぉ、若いお二人さん…ほ、ほ、ほ…」
「お爺さんも今日は本当ありがとうございます」
「いやいや、わしは何にもしとらんよ〜ほんじゃま、わし等は帰らせて貰いますゆえ…行くぞ!亮太!」
 爺さんは放心状態の俺の袖を引っ張って、局から出て行った。

「面白い人たちだったね、泉」
「うん、彼は『勇者』さんだから」

 爺さんの車の中
「はぁ…結婚してたなんて聞いてないぜ〜」
「ちゃんと情報誌には目を通さんと、世の中の情況からでも、霊的な物を感じ取れないぞよ、亮太」
「でもよぉ、爺さん…憧れてたんだぜ〜」
「じゃが、これでお主もはれて『勇者』じゃ!しっかり働いてもらうぞ、亮太」
 運転席から事務所に向かう所を俺はぼやきながら、剣を見た。泉さんが結婚していたなんてビックリしたが、俺悪霊と戦ったんだよな…
「ちぇ、先が思いやられるぜ…まったくよぉ」
 夜の東京のビル軍を窓から覗きながら俺は呟いた…
「で、爺さん…今回の報酬は?」
「な!?聞いてなかったのか?亮太」
 何かに気づいたように、爺さんは冷や汗を流しながら…ロボットみたいに…
「実はの…今回、壊されたスタジオの修理費に全部引かれちまったのじゃ!」

「な、なんですとぉぉーーーー!!」

今回の報酬 悪霊:1匹100万 人気ラジオ番組『ブレイブハート』の出演料:10万 上原祐介から貰ったワイン。 −スタジオの修理費:100万
合計報酬:10万円

次回につづく?


続くぜ!


設定資料集

登場人物

相田亮太(17歳)
 高校を中退して、バイト街道をひた走りながら仕事を探す、17歳。考えるより先に行動に出る、猪突猛進タイプな性格で、喧嘩っぱやい。加えて剣道の腕がたつためか、学校行ってたときは番長グループを竹刀で全滅させた実力があるが、学校の学問の知識はないに等しい。可愛い女の子と金に弱い。曲がった事が大嫌いな事から、悪人が大嫌いで…かつあげの不良を見つけて構成したりする。

相田亮太の武器
クロスソード(妖怪退治用に木野が洗練した剣。じいさんの話だと、霊体を封印するご神木の柄とヒヒイロカネと呼ばれる、金属と霊気で練りこんだ合金で作り上げた、霊や悪霊を斬る剣じゃ。と言うが妖怪や生身でも抜群の切れ味を持ってる。片手持ち用で、大きな片方の刃が特徴だが青龍刀ではない。)

 四聖獣の札(東方の錬金術による製法で古来に作られた、有難いお札。地球の万物に宿る四大元素を封印した物であり、投げつける事により呪府が発動し中に封印された聖獣が出てくる。妖怪に絶大な威力を発揮する。結構古くから作られてる為、オリジナルが劣化してしまい、相田に手渡されたのは台紙にコピーを施した物)

悪霊
 人が死んだ後の霊体が、現世に深い怨念や邪念を持った結果、人の魂を食らう魔物と化したのが悪霊。地縛霊とは違い、その目的を果たすまでは執念深くなり、人間だった頃の知性は当に無いに等しい。よく叙霊師による悪霊の洗練する場合もあるが最近だとその効力も薄くなるほど凶悪化してるとか…

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