ごぽ…ごぽ…

 カプセルの培養液の中で、それは脈打つように蠢いている。

 復活の時を待ち望んで…

勇者あいだ
第2話 魔王の腕『前編』〜ブレイバー〜

「はー…」
「亮太どうしたんじゃ?」
「なんだかなー……」
 俺は相田亮太、前回…この妙な霊界科学特捜事務所と言う、悪霊とか妖怪とかの退治して報酬を貰う、退治屋に入りいきなりの依頼を受け…悪霊と戦いかっこよく勝った…それまでは良かった。
 今までは冗談半分で信じていた、本物の悪霊とかとマジで戦って…それが実感できた。
「何が不満なんじゃ」
「不満もクソもありまくりだ!泉さんにはふられるわ…報酬もスタジオの修理費に持っていかれるわ、それで貰ったのは出演料の10万円だけ!?しかもその10万円も爺さんが私用で使ったってきいたぞ!?」
「あーあれか…悪霊と亮太のおかげでスタジオはめちゃくちゃじゃからのお〜仕方あるまい、いつも同じようなもんじゃ…おぬしの出演料はわし等の生活費じゃ」
 私用で使ったんだろ…なら俺の報酬とか給料はただみたいなもんだ。
「って爺さん、俺のせいでもあんのか!?」
「派手にやってくれたからの〜」
「俺は死ぬ思いで悪霊ぶっ倒したんだぞ!それでただ働きってか!!」
「…ラジオに出れてお前は日本中のヒーローになれたんじゃ、文句は言うもんじゃないぞ」
と言ってじいさんは俺にテレビをつけて見せた。ワイドショーではラジオ局での怪奇現象を見事解決した謎の『勇者』として取り上げられていた。
『4月11日、午後10時から11時に…視聴者から送られてきた映像です!』
ニュースのVTRには、確かにこの前倒した悪霊が映っていた…このシーンは、悪霊が泉さんを連れて鬼門を通ろうとした時だった。
しばらくすると俺が横から飛び上がって、鬼門をぶった切り…そしてしばらくして下のほうから朱雀が飛び出て悪霊に直撃して燃え上がる中、とどめの一太刀を浴びせたところが映っていた。
「ここまで撮られていたのか、ふーん俺良く映ってんじゃん」
 視聴者さんからの映像でも結構長けていて、楽しめる内容になってる。
『この透き通る物体の正体は何なのか、そしてこの剣を持った少年は何物なのか?例の噂となっていた某ラジオ局の噂と関係があるようですが…謎は深まるばかりです』
 全国ネットで流れた映像にしばし見入っていた。
『以上です、では次は芸能面いってみましょう』
ぴ!
 爺さんがテレビを止めてニヤニヤと笑って…
「どーじゃ、有名じゃろ!」
「ああ、有名だな…けど!?」
ジャキン!
俺は腰元に置いてあった剣を引き抜いて、切先をじいさんに付きつけた。
「じじぃ…」
「まっまて、話せばわかる!!」
「確かにそこまでは良かった、…けどギャラもねぇ、給料もねぇ…泉さんにはふられるは、一回目で踏んだり蹴ったりってどーいうこった!?」
 ええ!?っと爺さんに切っ先を構えながら俺はまるでサラ金が借金せがむように叫んだ。
 ちなみに、有名になっていたらここに報道陣が事務所に殺到して居るはずだけど、居るのは俺と爺さんだけ……と言うのも、ラジオでゲストで出た時、この事務所の住所や電話番号を言っちまったが、爺さんが操作して自主規制されたのだと聞く。
「そ、そうじゃ!次の依頼…次の依頼なら、金がたんまり手に入るぞな!!じゃから剣を下ろすのじゃ!物騒な…」
 次の依頼と聞いて、少々の不安を覚えたが何とか持ち直して…剣を鞘に収める。
「こん畜生!!…そんでお代は?」
「何せ、依頼主が一つの街の町長さんじゃからのぉ…一億くらい下るのではないか?」
「なーーーーーーーーーーーにーーーーーーーーーーーー!!!」
俺は宝くじ並のねだんに耳を疑った。そりゃそうだ、俺は今までそんな大金を拝んだ事など一度も無い。
「ほんとーだろーなー?貧乏くじひかされてんじゃねえだろうなぁ」
「そんな、ほんとじゃ!だから剣を下ろせ!」

 と言うわけで俺はソファに座って、次の依頼の話を聞く事にした。
「亮太、次の依頼というのはな…、ある街を征服する妖怪を倒し、街を奪還して解決する事じゃ」
 さっきまでのおふざけ気分な爺さんではなく、まじめな探偵みたいに話す爺さんに、少々の緊張感を持ちながら俺は聞き入った。っておい、ちょっと待て…
「町の奪還だ!?一つの町の!?」
「まあ聞くが良い…何でもある大手企業の発展でできた街でのぉ、町の町長さんはその企業出のエリートで街一つを取り戻す大仕事じゃからのぉ、ギャラは弾むと言っておったぞ」
「そりゃまあ、街一つが妖怪に征服されたんじゃ…無理ないけど」
「しかもじゃ、その妖怪は街の防衛システムであるBRを私設で量産して、都市機能を麻痺させおった」

説明しよう(なれーよんです)
 BR…(バトルロイド)の略で、2003年より陸上自衛隊で正式採用されて、現在では市販もされている…人型機動兵器、汎用性と機動性が良くしかも…パーツ換装機能搭載で安価でパーツを買える為、生産率も高いから2005年はそのパーツの闇市に出され、問題が発生した為、2007年になって初めて警察で使用された後、市販重機にもBRを採用して、今では自動車学校にもその免許取得ができるようになってるけど、市販パーツの改良は許されてるが、その改造パーツの私設で量産、販売は法的に禁止されている。
 あ、ちなみに今年は2015年です。

「BRの解説、役に立ったかのお」
「なんてこった、BRなんて…前はただの悪霊一体が相手だったってのに今度は私設で量産された、違法BR部隊かよ」
「それを操ってるのは、ヴァンパイヤー種と呼ばれる吸血鬼じゃ。精神体の固まりでもある悪霊とか幽霊とかとは違い…妖怪種とは肉体を持ち、人間のようなのから獣のような物、野性的な感情を持ち、しかも特殊な能力をも操る特権付きじゃ」
「そんな危険なやつ等と、何で俺一人が町一つの為に闘わなきゃならんのだ!」
「そう、そんな時の為に…来い」
 爺さんは俺の手を引いて、地下の格納庫へと俺を連れて行った。はっきり言って何が何だか不安だ。

 地下格納庫の事務所の外層の作りとは全く違い、だだっ広い…貧乏そうに見えて結構裕福なんじゃないのかと疑ってしまった。
「まっくらじゃねえか」
「おお、そうじゃ電気をつけんとな」
 爺さんの声が隣から聞こえた後、カチっと言う音と共に、暗い部屋に明かりがついた。
「こ、こいつは…」
 明かりが点いた、格納庫内に…ひときわ目立つ赤いシルエット。9mほどの赤いBR…「こいつ、ホンダ社制の宙間活動可能のBRじゃないか?!」
 元は車の会社が今はBRも取り扱ってる会社の、最新モデルである。
「よく知ってるではないか、そじゃ、そのBRにわしなりの改良を施したのじゃ」
「でもこれ、武装ないじゃねぇか?」
 よく見ると、武装と言う武装はこのBRには装備されていないのだ。最新モデルだけど、これ使えるのか?
「おお、まだ搭乗実験はしておらんからのぉ、BRの免許もっとるか」
「あたぼぉよ!俺は、職を見つけるために、車の免許からバイク、大型特殊からBRに至るまで行けるんだ」
 実を言うと、BRの操縦は結構得意な方なんだよな…免許取得ではオールA取ったし。なんだかこういう所で意外な才能…なんちって。

「よし、それならば今回の依頼主は街はある程度破壊しても賠償は依頼主が払うと言っておるからBR戦では、気にする必要なないぞい」
「あ、ああ…」
 なんかBRで戦闘するのは不安はあるけど、やるっきゃないかな…
「それと、真っ向勝負ってのも無理あるから、少しわしがいい作戦を考えたぞい」
「作戦?」
 俺はどっちでも構わないが、爺さんは構わず作戦を話し始めた。
「まずは、あ奴らを油断させる為に、奴等の用心棒として雇われる」
「え!?敵側につけってか?」
「まあ、焦るでない。今回のターゲットたる者は、自らの身を守る為に私設BR部隊に加え、用心棒たる3人雇ったのじゃ」
「その一人が俺ってか?」
「いんや、全くの別人じゃが…まあ、大丈夫じゃ最期の一人はお主になっておるから」
 なんか怪しいけど……(汗)
「用心棒も倒さなきゃならないのか?」
「いんや、できれば用心棒もわし等のような雇われ人間じゃからのお、無駄な戦闘はさけるべきで、進入したら奴等の眼を盗んでターゲットを狙って行って後は、逃げるのみじゃ」
 それって、なんかヤバイ感じがするけど大丈夫なのかな…
「ターゲットさえ潰せば、他の部下である奴等も死ぬからのぉ、何とか大丈夫じゃ」
「おお、そうかんでBRが出てくる場面は?」
「もし失敗した場合の脱出方法と、敵側にいる用心棒も戦闘BRを所有してる可能性もあるのでのぉ」
「う、やる前から不安要素をつくんじゃねぇよ!怖いじゃねぇか!」
「大丈夫じゃ、このBRの性能はそんじょそこらじゃ図りしれんからのぉ」
「よっしゃ、なら早速行ってくるぜ…いつ、どこに行きゃいいんだ?」
「BRの郵送業者さんと一緒に行くが良い、場所は…某県の某市の機械化都市じゃ。そこは日本で十年前から盛んに街の機械化を進めた、亮太もしっとるはずじゃ」

 機械化都市か…東京に続く産業都市を目指し市長が多額の費用を投じたのがその機械化のだって事だ、都庁よりでかいビルが立ち並ぶ街を奪還か…
 一回目は悪霊を倒すので手一杯だったのが、今度はその街を占領した吸血鬼の一団で私設BRも持ってやがる…用心棒付ときたら…荷が重すぎのように思えるが…

「かー、もう破れかぶれだ!もう何だって来い!」
「よし元気があってよろしいぞい」




 てな訳で成り行きと、勢いだけでそのBRの運送業者のトラックで機械都市へと向かっているけど…今更後悔したって遅いか。
「なあ、あんちゃん。もう少しでその機械化都市につきまっせ、BRの点検でもしときな」
「おお、んじゃ見てくるわ」
 そう言えば、BRのコックピットに入ってもいないからな、一度だけみとかないと俺がこれから一緒に戦う為の相棒になるんだからな。
 そう思いながら俺は、トラックの後ろのドアからBRの格納されている荷台に入って見る。前屈みでないと狭いし動きづらい。
「何でこんなに狭いんだろうな〜」
 赤いBRの胸の部分にあるコックピットの入り口までよじ登って、入り口のキャノピーを開けてコックピットの中へと入った。
 シートに座って、キャノピーを閉じて操縦間の前のディスプレイを開けた。これはもう基本中の基本だ、そしてOSの確認っと。
ポイン
 ディスプレイに光がついて、コンピューターが起動した。よーし、OSの調子はいいっと…
『こんにちは、マスター』
 無機質な機械音と共に、何だか可愛げな女の子の声が流れた。目をディスプレイに移すと、少し変なコスチュームを着た女の子が映っていた。
「ディスプレイに、女の子が…」
『この度は、BR専用・新OS『エンジェル』お買い上げありがとうございます。パイロットの皆様をサポートさせていただきます私は、『ハイブリット・ナビゲーション・コマンダー』…「HANAKO」です。どうぞ、末永くよろしくお願いいたします』
「ハナコか、よろしく頼むぜ!」
『では、ユーザー登録とパスワードを登録してくださいまし』
「パスワード?」
『もし、このBRがマスター以外の人に私用に使われないように、プロテクトを施すのです〜』
「つまり、BRを他人に使われないように守ってくれるって訳か」
『そういう事です〜では、ユーザー名を登録してください』
「おお…じゃあ、ユーザーは相田」
『相田様ですね、パスワードは誕生日とか母親の名前とか、わかりやすい物だとばれちゃうかもしれませんので、なるべく解りにくい物をお願いいたします』
「なんか、難しいな…じゃあ、このBRってまだ名前無かったよな」
『ええ、BRの名前は基本的に、OSコントロールパネルからBRの名前を設定画面がありますので、そこから設定できますです』
「んーじゃあ、パスワードと兼用していいか?」
『それでは、他の人にばれちゃいますよ』
「硬いこと言うなよ、んじゃあ…決めますよ〜」
 知りませんよと、ハナコは少し唸るしぐさがかあいいが、その前に俺はBRの名前でパスワードを決める事にした。
「BR…バトルロイド…んーそれじゃあ何だからな、よし!決めたぞ、『勇者』の乗るBRだから、『ブレイバー』でいいか?」
『そ、そんな簡単すぎです〜』
「硬いこと言うなって、んじゃあブレイバーって入れて、ついでに名前登録しといてね」
『うーん、少し納得いきませんけど、マスターがそう言うのなら。登録いたしますね』
 ウイーンと言いながら、ハナコがOSのパスワードを書き換えをしているのが解る。ブレイバー、これからしばらくしてそのパスワードの登録が終了して、再びハナコが俺と向き合った。
『ではブレイバーと登録が終了しましたです、ありがとうございます尚、お買い上げの初回特典として、高性能ナビゲートシステムと360度汎用レーダーを装備しております故、戦闘経験の少ない人でも簡単に扱う事ができます〜』
「高性能ナビゲート?」
『つまり、敵の位置を的確に指示して、ターゲットカーソルを瞬時に表示したり、敵の攻撃が着弾する前に私が声でナビゲートする画期的なシステムです』
「おお、そりゃ頼もしいな〜レーダーのほうは何となく機能はわかるからいいよ」
『それでは、むむ!?内通回線が入ってます、トラックの運ちゃんさんからです』
「お?繋いでくれ」
『はーい』
 旧時代の回す式の電話みたいな物を、頭の上に載せてその受話器を取ると、受話器からトラックの運ちゃんから通信が入った。
『あんちゃーんそろそろ着くぜー』
「解った、すぐ行くぞー。んじゃハナコ、またな」
『はいです〜またのご利用お待ちしてます〜』
 そう言って、終了画面になってハナコはベッドに入って電気を消して、その日は終わった。
「細かいな動きが、流石最新式」
 と薀蓄垂れながらも、俺はコックピットから出て、運転室へと戻って行った。

 運転室の窓から、巨大なビル軍が立ち並んでいるのが見えた。
「すっげー、東京より凄いんじゃないか?」
「どうだい、でかいだろ?」
 ビルそのものが、鉄でできてるようで本当に機械化された街みたいに見えるが、東京を考えると少し進んだ近未来の街みたいに見えなくも無い。
「お?見えて来たぜ、あれがこの街の中枢であんたの行き先である、サイコタワーだ」
「ん〜〜」
 普通に見上げて、都庁より高い高層ビルが俺の目の前に立って、それから下がるように巨大な敷地内へと入っているのだ。
 まさにでっかい機械の街の要塞がそこにでかでかと立っているのだ。
これも奪還しろと?
「んじゃあ、入り口から入って…受付に行くんだぞ、おりゃBRを格納庫へと運ぶからな」
「おお、サンキューな」
「いいって事よ、何せそれが俺の『運び屋』としての仕事なんだからよ」
 お仕事頑張ってて大変よろしいべし。
 俺は助手席から降りて、運ちゃんに手を振ると、自動ドアから俺はビル(要塞)の中へと入った。
 入り口から入ると、ビルの中はいたってシンプルな大理石の作りをしているし…可愛いお姉ちゃんの受付もいるし。
「すんまそーん、えっと雇われた…相田ってのだけど」
「はい、しばしお待ちくださいませ」
 受付のお姉ちゃんが内線通話でどっかに連絡を入れる。
「はい、解りました。最上階の手前から、2番目の部屋が待合室でのことです」
「うい、了解したぜ」
 最上階は34階…って、なんて高い所だ…

 エレベーターで34階に辿り着いて、待合室をきょろきょろしながら探した。
「えっと、あれ?」
 すーっと通路を誰かが通ったような気がした、見えたまではいいがありゃ完全に気配を消して足音を立てずに歩けるなんて…
 誰だ?あいつは…と、その前に…
「お、おい!」
 俺はその後姿を追いかけた。
「…ん?」
 俺の呼びかけに、そいつはくるりと首をこちらに向けた。一瞬ドキッとしてしまった、お、女の子か?頭が肩の所までしかないくらい背が俺より低くて…髪の短めで、どこかぽやんとした感じのする、可愛い系の少女…
「僕に何か用かな?」
「僕…ってことは、男か?」
「何だと思ったのさ?」
 むすっとして、そいつは頬を膨らませる。声は少し声変わりがした程度で、男だって事がわかる。
「すまねぇ、いや待合室を探してたらお前を見つけてさ、それでどこか聞こうかと」
「ふーん、奇遇だね僕もそこに行こうと思ってたんだ、ついてきて」
 そいつは俺の前をさっきとは違い足音を立てて歩いた。そこに行こうと思っていた…ってまさかこいつが…
「お前、雇われた用心棒の一人か?」
「君もそうなんだね〜、早くしないと遅刻だよ」
 何にしてもフレンドリーに接する少年がいてなんか良かったような気がする。でもこんなちっこい奴まで、俺と同じような戦闘力のある戦士ってことになるな?
「ここが待合室だよ、あ…中に居る御堂(みどう)って奴は口が悪いけどあんまり気にしない方がいいよ、きり無いからね」
 待合室の前で少年はひそひそ話しをする、俺とこの少年の他に後1人いるって爺さん言ってたな…御堂って奴が最後の一人?
「何せ、彼は少々プライドの高いお堅い人物だからね…」
 そう言って、少年は待合室のドアを開けて部屋の中へと俺を連れて行った。そいや名前聞いてなかったな。
 待合室には、一人の坊さんのような服を着た20代くらいの短髪の男がソファーに座っていて、機嫌悪そうに少年と俺の方を鋭い目つきで睨み付けた。
「トイレにしては遅かったな、サクラ…」
 そいつは、人を見下したような態度でにたりと笑って少年に皮肉を吐く。
「帰りに彼と出会ってね〜」
「彼?ああ、気づかなかったよ」
 そいつはようやく俺のほうに気づいたかうっとうしい物を見るような目でそう言った。
「か?」
 な、何だ…こいつ…
「見た感じじゃ、それほど力を感じないな…それに大方、道に迷ったのを連れて来た所か?」
 わなわなと拳を震わせて、俺はそいつに殴りかかろうと思ったのをサクラと言われた少年に制されて。
「…押さえて、初めての人にはみんなこうなんだ……」
「ふん」
「け、気にいらねぇ」
 この少年とは全く大違いだぜ。
「あ、僕は佐倉雪菜(せつな)同じ仕事を受ける者同士、仲良くなろう」
「おおよろしくな、佐倉!」
「まあ、せいぜい我々の足を引っ張らないように頼むぞ」
 く、またこいつは……
「まあまあ」

ガチャ
 その内、待合室にスーツ姿の男が秘書の女と一緒にやってきて、俺達の向かい側の椅子に座った。
「今日はお忙しい中、お三方には遠い所からお越しくださってまことにありがとうございます。この度は我がプロディック社の守手を勤めさせていただきますあなた方には深く感謝いたします」
 畏まって言われて俺も、一緒になって頭を提げてしまう。何だか偉そうな人だけどこいつまで、ヴァンパイアって言う妖怪種なのか?
 うーん、にわかには信じられないけど…ってここプロディックって会社だったんだ。
「しかしながら、このような歴戦の猛者が我々の敬語に当たってくれると思うと、心強い。歴史に名高い陰陽師、安部晴明の子孫…御堂耕也。絶対零度の氷を操る、氷の魔術師…佐倉雪菜…そして、ワイドショー等で巷で話題となったルーキー勇者、相田亮太どの…」
「あ…いや、その照れるな」
「ほう?一夜で悪霊を退散させたっていう、序霊未経験者の少年が…お前だったのか?」
「へー、僕あまりワイドショー見てないから、知らなかったよ」
 ああ、そうかい…俺もお前等のこと全然知らなかったよ。
「そんな事はどうでもいい…報酬は頂くとして、依頼主、具体的には我々は何から何を警護すればいいのか?」
「あなた方に警護していただくのは、我が社の社長であり、あなた方を雇った張本人です…具体的に何者かはまだ不明ですが、社長の命を狙う者が居るらしいのです」
「社長の命?理由は?」
「ここの社長は、この機械都市の市長でもあります。もしかしたら、社長を亡き者にした後、この街を乗っ取ろうという魂胆でしょう」
 直接、耳で聞いていると…悪者から市長を守れというのは本当らしいが、爺さんの話によると、こいつ等が街を既に乗っ取ったと言う事で、俺を雇い街の奪還を依頼した。
 そう考えると、俺はこっち側から見りゃ『敵』つまり街を奪おうとする侵入者でもあり、ここに俺が招かれたのはそういった敵を排除するのが目的。
 俺はこいつ等と一緒に、守手につくふりをしてから…この街を奪った奴を倒し街を奪還する。ばれりゃ、即排除ってもんだ…
「やばー」
「どうしたの?あいだ君」
「いや、なんでもねぇ」
「いいでしょう、敵が何であれ…我々は金を貰って雇われた傭兵…期待以上の仕事はするつもりです」
 お、傭兵の鏡みたいなことを言う御堂…まさにその通りだ。これだけは奴に共感しよう。
「ええ、その都度報酬は払わせていただきますので」
「……結構、だが私にはまだ府に落ちない点がある」
「それとは?」
「雇い主である社長が、何故我々の前に姿を現さないかだ……」
「そうだね、普通なら社長自らが来てもいいのにね」
 確かにそれは、可笑しな点だな……なんだってこんな優男を連れてくる必要があったんだ?
「今も言われましたように、社長は命を狙われてる事を恐怖してます…ですから極力外部の人間との接触を避けているのです」
「例え、我々のような傭兵でも…?」
 げ、なんだか雰囲気が怪しくなってきたな…
「それって俺らを信用していないってのか?」
「いんや、悪い考えじゃないよ、あいだ君。僕等は雇われた用心棒だけど、逆に考えて向こうも、傭兵を雇ってここに用心棒を装い潜入させたなら」
「敵のスパイと言う奴だ…もう少し学習しろ」
 う、痛い所を点かれてしまう…何だかモロばれしてるような怪しい雲行きだぜ。
「そう考えて、直接僕達に会ってぐさーってなったら、それこそ僕等が雇われた意味もパーだからね」
「まあ…俺が社長なら、まずはまえにでねぇな」
「でしょ?」
 御堂はむかつくが、佐倉の言ってくれて何とか納得が言った、確かに効率はいいけどその時点で俺も殺されてしまうのが落ちだし…社長が出てきてもやりたくない戦法だし、俺はそんな姑息な真似はできねぇ。
「そこで、あなた方には社長の警護を24時間体制でやっていただきます。その間は我々の私設部隊も使用して構いません」
「その計らいは感謝しよう……なぁに、私や佐倉が居れば大丈夫ですよ」
「おい、俺はどうした?」
「……なんだ、居たのか、まあ精々我々の後ろで頑張るがいいさ…」
「な、この…」

 その場は何とか佐倉に宥められて、今日の所は解散となった…警護する側の俺達の扱いは疑われはしてるけど、扱いはいい方でこの私設は社長室以外なら何処でも行き来可能だし、レストランもIDカードさえあればただでいいと言うこった。
 やはり疑わしいのが、奴等が本当にここを支配している妖怪なのか?その辺が良く解らないが…どっちかと言うと、全員人間に見えるけど…
 でも、すっきり晴れなのにブラインドは全部下ろしてる所見ると…やっぱそうなんじゃないかな…って思っちゃうんだよな。
「ずずー…探ってみっかな?」
「相田く〜ん、おーい」
「お、佐倉?」
 レストランでジュースを飲んでいると向こうから佐倉が走ってきて俺の前に座った。旗から見れば、先輩にジュース持ってきた後輩に見えなくも無いが…
 本当に男かって思えるくらいだ……
「相田くん、格納庫見にいこーよ」
「うえ?」
「僕のBRを見せたげるから〜」
 子供が玩具をねだるように佐倉は俺の手を引いて、格納庫へと連れて行かれた。女の子には見えないが少なくとも子供には見えら。
 こんな奴が本当に、強いのかさえ疑ってしまう。

 地下までヘルメットをしてエレベーターで降りると…
「へぇ?ここが、BR格納庫か…」
 爺さんの家の格納庫より広くて内装はいいし…まるで巨大戦艦の格納庫みたいだ。
「本当すごいよねぇ」
「俺のは…っと、お?あったあった」
 3体の異なる二脚型BRの真ん中に赤く塗られて目立ちやすい俺のBRがズーンと立っていた。
「あの赤いのが相田君の何だね、ホンダ社のニューモデルか、なかなかブルジョワだね」
「いんや、こんな金があるんだったら事務所の生活費に使えっての」
「はは、苦しいと見たね…あいだ君の事務所は」
 苦笑いを浮かべる、俺と佐倉…そして俺の横のBRに目をやった、ごっつい装甲と体中に重火器を搭載して背中には巨大なレーザーキャノンを搭載した、青い重量級二脚BRがズーンと置かれていた。
「あ、これ?僕のBR、アイスコマンドさ」
「お?おまえんか?」
「うんそうだよ〜、対怪獣用ギガバズーカに、30mガトリングマシンガンを両手に持って、3連続小型ミサイルランチャー腰に、中型多弾頭ミサイルランチャーを肩に装備、背面にレーザーチェーンガンと拡散レーザーキャノンの3砲門を装備。格闘白兵戦用にレーザーサーベルもあるけどね」
「なんちゅう重武装だ、機動力が失われないか?そんな重武装で…」
「うん、そこの所は腕前でしかカバーしきれないね」
 にしても、あんな武装が一気に吐きかけられたらここら一体は灰燼に帰するに間違いないかも…おっ考えようによって、かなりおっそろしいもんが…
「んで、その隣の変わった奴は?」
 俺のBRを佐倉の奴と挟むように並んでる、奇妙な形の二脚方のBRがある…何だか、俺達のBRとは違い何だか趣味の入ったようなBRだな。腰から膝にかけてのスラスターを見ると、まるで陰陽師のようにも見えなくも無い。
「なんだ?この趣味の悪いBR…」
「ああ、これは御堂のBR…趣味が悪いなんていったら怒られるよ」
 見た感じは、佐倉のBR武装はされてないし…強そうって訳でも無さそうだし…
「まあ、BRは使う人それぞれだよ。でも…あいだ君のBR…武装は?」
 え?確か、爺さんが俺のブレイバー用に作ったって言う、強力な武装が見た限りでは全くされていないのだ、そう最初ブレイバーに出会った時の姿そのまんまだった。
「あ、聞いちゃ悪い事だったかな?」
「佐倉ぁ…戦闘になったらお前の武装、ちょっとだけ貸して…」
「え、構わないけど…」
 やっぱ、こう言う時でも、持つべき物は友達だよなぁうん。だけど、武装は爺さんが運送業者の人が纏めて持ってったと聞いたけど…ちゃっかり入れ忘れてんじゃねぇかい!

 先が思いやられるな……こりゃ。


最上階のとある場所

……ごぽ…ごぽ…

『ふぅ…ふぅ……』
「ご安心ください…護衛に3人の『勇者』を着けました…大丈夫です、金に物を言わせれば……奴等も使える駒…例え、ギルティと言えど…」

…ごぽ…ごぽごぽ…

『はぁぁぁ…』




中篇に続くぜ!


設定資料集

BR
 バトルロイドの略で、2003年に陸上自衛隊が開発した人型戦闘車両の事で、つまり搭乗型巨大人型ロボット。それが始まりとなり…2015年の今に至るまで、一般社会にも適応できるMRと言うものにまで発展し、自動車メーカーから大手パソコンメーカーも作っていて値段も安価。ただそのメーカーが自分等で制作し量産た物を売り出すには国の許可が必要である。BRは戦闘目的で作られてるためか種類が豊富に存在する。今回はそんなBRの種類について話そう。
 今では2013年より頻繁に現われてきた、巨大なる敵…妖怪獣に対しての唯一の抗体へとなってきている。

二脚型BR
 これも一口では表せなく、中量級、軽量級、重量級、逆関節と存在する。中量級が先に来るのは、基盤として丁度いいからだ。

中量二脚型BR
 スタンダートなモデルと高い汎用性を持つ二脚型BRで、例えるなら「ガン○ム」相田が使うブレイバーもこれに辺り、その汎用性を生かしたバランスのいい戦闘能力を持ち、リアルロボットの鑑とも言えるBRと言えよう。

軽量二脚型BR
 中量型から、いらない装甲を剥ぎ取って…かなりスマートな形を持つ。驚異的な運動能力を有したスピーディーな戦闘が可能だが、装甲が余りにも薄い為、もし敵の砲撃に当たったら耐えられないし、スピードに掛かるGのお陰で乗りこなせないパイロットも居る。

重量二脚型BR
 分厚い装甲と、並外れたパワーを実現化したBRで『前線の盾』とも言われるように、その厚い装甲を生かした防御にも用いられまた、強力な武装を幾つも装備できるように、換装スロットルは中量型より多め。スーパーロボットマニアには高値で取引できる。

逆関節二脚BR
 中量級の脚の関節を逆に折り曲げ、速さだけなら軽量型並にアップさせたBR。極地専用に作られたのが目的だが、今じゃ競技用BRとして4年に1度開催されるBRレースと言う物があったりもする。

多脚型BR
 異名は『四本足』で、二脚型とはまた違った機動能力を実現した。ジャンプ力が驚異的でカエルのような高いジャンプが可能。新たな自衛隊の戦闘車両として採用されて、首都防衛などに利用される。

車両型BR
 今では数える程しかなくなった、2005年で自衛隊の多脚型が採用される前は良く使われていたBRで普通の戦車と一緒に走っていたりもした。多脚型や重量級が現われてその姿が薄れていったが、普通の車両としても活躍してる。

可変型BR
 2014年に採用された、BRの可変機構(トランス)システムにより変形機構を持ったBR。一般車両から、スペースシャトルに至るまでBRへの変形を実現化させた新たなる可能性…。その中に変形・合体を持つ物もあるらしい。


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