「うん、うん…じゃ、またね…」
 警備の仕事をして、ビルの中を行ったり来たりしたりしてる時、トイレで携帯電話をかけてる佐倉を見つけた。
「ん…このビルじゃ携帯電話は禁止じゃなかったか?」
「あ、見つかっちゃった?」
 悪戯っぽく、佐倉は舌を出して頭をかいた。ここで仕事をするに当たって色々と制限された事が色々あった。それは、ビル内で携帯電話の禁止…何でも、ビル内の精密機械に異常が出るからだと…それから、エレベータではBRの部品や積載量が60kを超える私物を持ってきてはいけないし、タバコは喫煙室でって俺はタバコすえないって。
 それと訳解らないのが、外で買った物…特に食べ物とかは、は持ち込み禁止だそうだ…まあレストランがあるしそれが美味けりゃ問題は無いってわけだから…

「御堂や重役さんには内緒だよ……」
 しーっと指を口元にやって佐倉はそう言った。
「んで?誰と話してたんだよ、彼女か?」
「違うよ〜」
「んじゃ、重役に言ったろっか?」
「勇者が脅しなんて、非道だよ」
「すまんすまん」
 佐倉がだんだんむっとしてきて、そろそろ誤ってやったが、佐倉はムッとしながらトイレを去っていった。
「ぷんぷん」
 本当にプンプン言いながら出て行く奴なんて始めてみたぜ。

 そんで俺は、出すもん出した後に手を洗おうとしたら……
「み、水が出ない……蛇口が凍ってる!?」
 何で今は、夏がちょっと前って感じで暑い感じなのに…蛇口の先が凍りついてる、って全部だ……何故だ?
 は…確か…あの重役佐倉の事を、『氷の魔術師』って言ってたな…氷を操る、魔法使いっか…にしてもこんなにするまで怒るなんて…

 今度なんか佐倉に俺が奢ってやらなきゃダメだな。

 って敵になるかも知れない奴に何考えてんだ?


勇者あいだ
第2話 魔王の腕『中篇』〜BR激戦区域〜

 ふう、何とか別の場所で手を洗ったけど、佐倉には後で誤らないとな…って、ここぁ何処だ?
最上階と言っても、こんな要塞ビルだ…一階一階の広さなんて半端なもんじゃない。
「くぅ、これも佐倉のせいで迷っちまった、まさか…佐倉もそのつもりで!?」
 などと佐倉に責任転嫁していると、ある一室から誰かの話し声が聞こえてきた。
「ん?なんだ?」
 このドアの向こうで声がする…

「…ふ、そうですか。ええ私はあの二人とは違い、最後まで付き合うつもりですよ」
 確か、佐倉と一緒に居た俺と同じ雇われ用心棒で、陰陽師の子孫って言う御堂の声だ…なんだろう誰と話してんだろう…
「その代わり、報酬は連中より割り増ししてもらいませんとな……」
 げ、ずるぅ! あいつ佐倉や俺より金ふんだくろうとしてんのか!?
「報酬に関しては、問題ありませんよ…貴方は、ここの秘密を知る人間なのですから…もし、彼らにも不審な点が見つかれば…」
「ふ……良かろう」
 この野朗、佐倉にぜってーちくってやるぜ!
「私としても不本意な仕事だが、出された金の分は100%働くつもりだ…例え、悪魔の下といえども…それは変わるまい、もし邪魔する物が居れば排除も考えてますがね」
「ふふふ、かつての陰陽師、安部晴明の子孫に当たる御堂家が…今や、金で雇える傭兵ですか…」
「それはお互い様だ、栄えていた吸血鬼も…今では、人の技術無しでは生きていけない存在と化しつつある…なんて、体たらくだ?」
「……時代は常に流れて行きます、我等の血筋も行く行くは人に飲み込まれるでしょう。そうならない為に、貴方のような用心棒を雇ったのです…」
 …ちょっと待て、今なんて言った…確かに御堂は吸血鬼と言ったが、まさかあの御堂の奴、全て知ってて……奴等の味方に着くのか!?
「(たっちわりー…)」
「ん……誰だ!」
 ガタンと席を立つような音が聞こえたと思ったら、こっちに御堂が近づいてくるような足音が聞こえ俺はやばいと思い、とっさに通路を駆け回った。
「やべぇ!」
 見つかったらさっきの盗み聞きがばれて、殺されかねねぇ!
「ふぅ…」
 何とか曲がり角の付近に回りこんで何とか止まって、息を潜める…御堂はこっちまでは追っては来れないようだ。
ガコン…
「え?うわ!」


「御堂さん、どうなされました?」
「いや…ネズミでしょう」
「ご冗談を、このビルには害獣などは入り込めない作りになっているのですよ」
「うむ…それは、承知の上で……」


「いつつー…」
 寄りかかった壁が、急に開いたかと思うと俺は薄暗い不気味な部屋に倒れこんでいた。
「んだ?ここ…」
 さっきの壁が、隠し扉になってたんだと思うが、く…どうやって開けんのかわからねぇんじゃどうしようもねぇや。
「別の入り口を探すか……」
 俺はそう思って薄暗い、部屋の中を歩き回った…なんだろう、この部屋妙に暗くてそれに、ここの空気…何だか俺のしょうにあわねぇって言うか何ていうか…とてもきな臭い。
 暗闇になれてないせいかな?本当、お化け屋敷の先頭を歩く、そんな感じだ…
「ふいぃー、寒い…さっさと出るに限るぜ…ん?」
 突然俺の目の前に、大きなカプセルのような物が現われた、でっかいカプセルの中には、ホルマリンかなんか知らないが液体に使った不気味な腕のような物が、コードのような物に繋がれている。
「何だよ、この不気味な腕…きもちわりーな」
ごぽ……
 うえ〜、切断面から空気が出てる所が、呼吸してる見てーだ…もしかして、こいつが妖怪って奴の成れの果てか?
シャキ!
 俺は腰に持っていた剣を構える…こんなもん、見てるだけで気持ち悪いし、俺の美意識に反する。見た感じこいつ死んでると思うけど…
「なんか起きる前にぶった斬る!」
「おや?やはり、ネズミはここに居たか?」
「!?」
 後ろから突然声がして、俺は後ろを振り返ろうとした時、前進が金縛りにあったような圧迫感を感じた。
「ぐぅ!?」
「…やはりな、最初会った当初から…お前が怪しいと睨んでいたが正解だったようだな、相田亮太…」
「み、御堂ぉ…」
 苦し紛れに首を後ろに向けると、自分の背丈よりでかい筆を持った御堂と、その後ろにはさっきの重役がいた。
「いけませんよ、相田さん…我等が社長と出会うのは、任務をしている間は禁止のはず、これは契約違反でございますよ」
「…話の盗み聞きだけは、保留にしとこうと思ったが、依頼主に会ってしまってはな…」
 な、何言ってやがるんだ?こいつ等…ちょっとまて、依頼主ってまさか…
「我等が社長は、それは名の知れた、吸血鬼の王とも呼べるお方でした。ですが、もう高齢からか…その力も弱くなり、それを見計らった追っ手達との戦いで今や、このようなお姿へと、成り下がってしまった。これではもう戦う事はできませんし…追手を跳ね除ける事はできない……ですからこうして、丁度いい機械に満ちた街を我々一族が人間達から奪い、こうして身を隠しながら…復活の時を待っているのです。人間の技術と言うのは本当に我々も驚かされます、何せ…今の科学なら、主を蘇らせる技術があるのですからね」
 よくわからねぇが、やっぱ爺さんの言ってたことは正しかったな、こいつ等…街を人の手から奪って、自分の主を復活させようとしてやがる。
 復活したら、復活したで…また面倒な事になりそうだし…
「あなたが、『ギルティ』達追っ手達のスパイと解れば、もう用はありません…御堂さん」
「く…」
 重役がそう言うと、御堂が持っていた筆に力を入れる…
「おい、御堂…てめぇ人間なんだろ…だったらなぜ、こんな奴等に…」
「悪いな、私もお前と同じ普通の人間を守る同業者なんだがな…残念だよ」
「だったら……何故…」
「こちらの方が、報酬がいいからな、ただ、それだけだ」
「こんなろぉ…」
 俺の脳裏に沸々と、怒りがわいて出て来た…こんな奴が、人の命を守る為の陰陽師だと!?用心棒だと!?安部晴明の子孫が聞いて呆れるぜ!
 俺が今ここで死ぬかもしれないが、こいつだけは…ぜってぇぶっ飛ばしてやりてぇ!
「相田亮太、お前は知りすぎた…ここで死ね……怨!」
 巨大な筆の毛筆から、空気中に『怨』と言う文字を書く御堂…そこから何か嫌なモノを感じる、どうにかこの金縛りを解けたら!?
「ぐぬぬぅ!」
「無駄だ、私の作った結界から抜け出た妖怪もいないのだぞ!」
「こなくそぉ!!」
 力の限り俺は踏ん張った、どうにかこの金縛りが解けりゃ…こっから抜け出せるのに!
「ふ、どんな剣を持ってこようと、我が結界から逃れる事は出来ぬ…」
「…くのやろぉ!」
 剣で斬ろうとしても、金縛り状態じゃどうともいえないのが悲しい所だよな…
「声も出せぬ状態だろう?」
 薄ら笑いを浮かべながら、陰を唱えていく…さっきから「こなろー」ぐらいしか言えねぇ…ここで式神を唱えられれば…何とか勝機は見えてくるのに…
 こんな所でやられるのかよ…

ウー、ウー

「ん?なんだ、この警報は…」
 部屋の中にあった警報装置がけたたましい音が響き渡り、御堂と重役が違う方向を向く。
「火災警報です…しかし、このビル内でなんて…」
「…ふん、何を今更…って!?」
バシ!
「がは!」
 御堂が筆を落とし、後方に倒れこむ。
「いってぇ…ざまぁ見ろ。俺を怒らせた報いだ!」
 気がついたら、俺は御堂の懐に飛び込んで御堂を殴り倒していたのだ。警報が鳴って御堂の結界の集中が少し解けた事を気づいて、一か八か剣で斬って、御堂に殴りかかっていたのだ。
「ふう、手がいてぇ…なんつう石頭」
「こんがきゃ!」
 俺が赤く腫れた手を見ていると、さっきまで御堂の後ろに居た重役が牙を向いて襲い掛かって来た。
「血を一滴残らず、吸い取ってやる!」
 吸血鬼丸出しで、襲い掛かってくる重役に俺は剣を抜いて…
「げ!本性現しやがったな、でいやぁ!」
ザシュ!
「な…何…」
ジュオォォォーー!
 吸血鬼重役は俺の後ろで、俺が肩から胸に掛けて袈裟に斬った後に、一瞬燃え尽きるように灰になって床に落ちた。
「ふう、さて御堂も伸びてるし起きる前にさっさと…」
 御堂をこの部屋のどっかに縛った後、あの腕をぶっ壊そう!と思った矢先…
「く…貴様、よくも…」
「げ!起きやがった!」
 御堂がむくりと顔を抑えながら起き上がり、傍に落ちていた巨大な筆を再び構える。
「個人的にここまで私を怒らせた男は初めてだぞ、相田亮太…良かろう、お前は報酬も関係なく一番残酷な…一番、人が恐怖するような死に方をさせてやろう…」
 め、目がマジだ…ここに居たら、今絶対殺されそうと思い、重役を倒した後隠し扉が開けて、俺はそこに一目散に駆けこんだ。
「逃げるか!?怨・破・呪」
シュシュシュ…
 廊下を出て背を向けて走る俺の後ろで、巨大な筆を振って空気中に文字を三つ書き、俺にその波動を放ってきた。
「ち、避け切れねぇ!なら、食らえ!」
ジャジャジャ!
 俺は、ベルトのホルダーから取り出した札を3枚、その波動に向かって投げつけた。

ちと回想。
 俺が業者さんのトラックにBRを乗せて、乗り込もうとした矢先、爺さんに呼び止められた。
「おお、亮太…忘れそうじゃったんだが、ほれ…持ってけ」
 ベルトにある札を挿れる銃のホルダーに、なにやらごそごそと何枚かの札を詰め込んだ。
「なんだ?この札…『刃』って書いてあるぜ」
「そいつは、一風紙じゃが、相手に投げつけるとナイフのような鋭さとカミソリのような切れ味を生み出す、『刃札』じゃけ。式神は使い手の精神を削って放つが、こいつはそんな手間はかけぬ優れもんじゃ」
スタン!
 見事に爺さんの足の親指と人差し指の間の地面に、その刃札はダーツのようにピーンッと紙じゃないような鋭さで突き刺さる。
「おお、確かに紙じゃねぇようだ」
「あ、あ、あ、危ない事に扱うな!」
 紙手裏剣みてぇに扱っても大丈夫そうだな…


バシュゥ!
 俺が投げた3枚の刃札は、御堂の呪術を相殺して壁に突き刺さった。
「何!?」
「ふう、何とか成功したぜ」
「…私の呪術を相殺するとは…ますます腹がたつ男だ…」
「じゃ」
 俺は手を上げて、すたこらと御堂の前から逃げ去った、御堂をもっとぶっ飛ばしたい所だけど、このままだと絶対に捕まってあの世行きってな事になりそうだし、今のうちに逃げるが勝ちだ。

「く、これで綺麗に終わりと思うなよ、相田亮太…」
カチ
「佐倉か?私だ…鼠が一匹逃げ込んだ」

ウーウー
「な、警報かよ!やべー、マジでやベーよ!」
 何とかブレイバーに辿り着いて、逃げなきゃな、格納庫までの順路は佐倉と見学したときに見てるし、覚えてるはず!
「このエレベーターを1Fで降り、地下格納庫行きのエレベーターに乗り換える」
 そして、地下格納庫に!?あ、俺のブレイバーは無事だ、早く乗ってずらかろうぜ!
「やあ」
「げ!?」
 目の前にいきなり現われた佐倉に驚いて、きききーっと急ブレーキをするように停止する。
「さ、佐倉!?」
 佐倉はなぜか、忍者服のような服と背中にマントを羽織って、手には指が出るグローブをして、頭には鉢巻を巻いている。なんとも奇妙な格好だが今は気にしてる場合じゃねぇ。
「どうしたの相田君?そんなに慌てて…」
 何にしても、丁度いい…佐倉もこっから逃がさねぇと、佐倉はまだ利用されてる事をしらねぇ筈だ。御堂と違って、話のわからねぇ奴じゃないはずだ。
「ああ、佐倉いい所に居た、実はな!?」
「うん、知ってるよ、もうぜーんぶね…」
「え?」
ブオン!
 一瞬佐倉の笑顔が冷たくなったと思ったら、背中のマントから何かを取り出して俺に振り下ろしてきた。
「か、鎌!?」
「あ、外しちゃったね」
 佐倉の手には、自分の身長より長い魔術師が使うような先が大きくCの字に湾曲した、奇妙な形の杖を持っている。
 しかもそのCの字に湾曲している部分から、青く透き通った刃が生えて丁度、死神の大鎌を連想させる大きな氷の鎌を、今俺に斬り付けてきたのだ。
「あ、あぶねぇだろ!?」
「危ないも何も、相田君スパイなんでしょ?僕の仕事はそんなスパイを捕まえる事だから、当然だよ」
「佐倉、てめぇも御堂と同じように」
ジャ!
 剣を振りかざし、佐倉と対峙する…
「御堂からは相田君が、スパイだったって事しか聞いてないよ。それに何を知ったか知らないけどこっから出すわけには行かないよ」
 どーやら、佐倉はこの職員達が吸血鬼だって事知らないみたいだな…それに、自分が利用されてる事も、御堂より安く雇われてる事も全然…
「佐倉、お前騙されてんだよ、ここの奴等に!」
「今まさに相田君に騙されそうなんですけど……」
「う…」
 売り言葉に買い言葉を佐倉はにっこりと無邪気な笑顔で返してくると、こちらも何にも言えなくなってしまう。
「大丈夫だよ、相田君はただ捕まればいいんだから…御堂は殺せって言ってたけどそれ以上ひどい事はしないように言うからさ」
 佐倉は、氷の刃を仕舞って元の杖の状態に戻すと俺に手を差し伸べてきた。
「そりゃありがてーけど、そんなの信用ならねぇ、俺はここの実態を見ちまったんだからな、半殺しじゃ済まされないぜ」
「ここの実態?」
「ああ、お前もこれ聞きゃ、自分が利用されてるって事が解るはずだ」
「利用?だって僕達は利用されて何ぼな仕事じゃないか」
「ばっきゃろー!お前、自分の依頼人の正体がまだ人間だって信じてんのか!?」
「…何それ…」
 ザワリと、蛇のような目で睨みつけられて俺の体が凍りつくような、異様な寒気を感じた。何て冷たい視線なんだ…マジで人間の目か?
「……大人しく捕まっていれば、助けてやっても良かったのに…」
ジャ!
 氷の鎌が再び現われ、佐倉は俺の首にその冷たい刃を当てる。
「僕達、いい友達になれると思ってたのに…」
「く…このぉ!」
カイィーーン!
「う!」
 俺は一瞬、意識を奪われそうなくらいの視線を振り払うように、剣を振り上げて佐倉の鎌を払いのける。
「俺も、残念だぜ…いいダチになりたかったのにな」
「………」
「さあ、どっからでも掛かってきやがれ」
 剣を構えて佐倉に対抗しようとする、だけど佐倉は鎌を仕舞って…また、笑顔に戻ると。
「うん、合格」
「はぁ?」
「さすが、おじいさんが見込んだ人だって事だね。僕の凍れる視線を払いのけちゃうなんて…」
 けたけたと無邪気に笑いながら、そう言う佐倉に少し唖然とする。まさか爺さんと知り合いで?
「おじいさんって、お前…木野をしってんのか?」
「うん、木野仙人さんでしょ?あ、話は後、早く逃げた方がいいよ」
「逃がしてくれんのか?」
「後で戻ってくるならね、今は形勢不利だから、おじいさんと合流した方がいいよ」
 合流するも何もその前に佐倉と、一緒に戦えば…
「そうか、だったら佐倉も!?」
「僕はまだやってない事があるからね…それに、ここの自衛力は結構あるからそれを先にやらないと、ここに居たって返り討ちだよ、それに御堂も居るし」
「あ、ああ…」
 何か狐につままれたような感じが残る中、後ろから数人の人間の足音が近づいてきた。
「相田君、はやくBRに!」
「わかった、話は後で聞くぜ!それと一つ聞かせろ…お前、何者だ?」
「僕は、佐倉雪菜…ただの氷使いさ…」
ジャ!
 マントを翻して、佐倉は後ろを向いた所で俺は、剣を仕舞って、手すりを乗り越えて、ブレイバーの所まで着地する。
「解った、感謝するぜ!佐倉!」
 ブレイバーのコックピットを開けて中に入る際に、佐倉が手を振ってくれたように見えた。

ヴゥゥーン
 BRの機動スイッチを押すとディスプレイが表示されて、ハナコが画面に出てくる。
『こんばんは、マスター』
「よっしゃハナコ、こっから逃げっぞ!」
 単刀直入に、ハナコに言うとハナコはわたわたと慌てている。
『す、すいませんマスター!何が起きたか把握できない限りでは、BRを動かす事は…』
「とにかく当初の任務が失敗したから一時撤退すんだよ!」
 早く来ないと、このブレイバーがこの中でぶっ壊されちまう。ハナコに簡単に説明して、操縦レバーを引っ張った。
『ああん!りょ、了解しましたぁ!!制御カタパルト切り離し、最終姿勢制御解除、BR…ブレイバー、機動!』
 半分やけくそのハナコの声の後に、バックパックを押さえていたカタパルトが外れて、ブレイバーが軽くなったような揺れを感じた。
 よし、練習通り動かせば、歩けない事も無いぜ。それに、この最新式は簡単操作だ…
『マスター、大変ですぅ。BRの射出口が何者かに閉じられて行きます、このままでは脱出ができませんよぉ』
「ハナコ、こうなりゃ強行突破だ!」
『ええ!?機体が破損してしまいますよぉ!』
「ええもへちまもねぇ!兎に角、追っ手が来ないうちにさっさと逃げるんだ!」
『は、はい!後、数秒の後完全に機体は脱出不可になります、その前に脱出する必要がありますぅ』
「おしきた!ブーストアップしろ、一気に脱出しろ!」
『了解、ブーストフルパワー!衝撃に備えてくださーーーい!!』
ブオオ!ゴォォォォーーーーーーーーー!!
 背面バックパックにあった、ブースターをフルパワーに噴かして、格納庫内を猛スピードで駆ける。
「ぐぅぅー、うおおおおーーーー!!」
 俺の体にかかる強力なGに押しつぶされそうになりながらも、俺は操縦桿をしっかりと操作して、射出口を目指した。
「いっけぇぇぇーーーーー!!」
 射出台をすり抜けて一気に閉じていく射出口から間一髪の所でブレイバーは、脱出して外へと飛び出た。
ガシーン
 後ろで、BRの射出口が閉じる音が聞こえる…あ、危なかった。
「ふう、タッチの差だった…」
 機械の街のでかいビルに三日月の光が照らして、幻想的な風景を出している。こういう風景は東京より綺麗で俺は好きだ。
 夜の機械の街に浮ぶ赤いシルエット…俺のブレイバー、くー!かっくいい!
『脱出成功ですぅ!』
「さて、んじゃあじいさんのいる場所に向って…」
プシュウ…
「あ、あれ?」
 何だか、機体から何かが抜けるような音が…
シュゥゥ〜〜・ズゥゥーン!!
「え?」
 脱出して、機体の姿勢制御が解かれて、アスファルトの地面に轟音を立てて着地する。
ピー、ピー…
 コックピット内に変な警報が鳴って、赤いランプがぐるぐると回っている。
 操縦桿を握って引っ張ってもブレイバーが全然うごかねぇ…
「は、ハナコさん?これはどう言う事で?」
『あー、言わんこっちゃありません。ブースターエンジンがオーバーヒートして、メインエンジンが熱くなっちゃってエンスト起しちゃってます〜。その内エンストはラジエターの冷却で元に戻りますけど…』
「元に戻るけど何だ?」
『ブースターエンジンのオーバーヒートの回復には、6分掛かりますぅ。その間はずっとBRで徒歩で走って行くしかありません〜』
「なんだとぉ!?」
 その内、ぐるぐると回ってる赤いランプが止まって…普通にブレイバーが動けるようになった。
『メインエンジン回復、運動機能再起動です、でもまだブースターは使えませんよ〜』
「この街を出るのにもトラックで結構かかんだ…ブースター無しじゃ…」
『ブレイバーは、推定でもブースターをフルで稼動させて2分しか持ちません』
「つまりチマチマブースターをダッシュさせりゃいいって事か!?」
『うーんそういう事になりますぅ、ブースターのメーターで確認しながら使用すると効率がいいですよ…あ、マスター!』
 モニターのハナコの顔が一瞬険しくなったと思った刹那、機体に衝撃が走った。
ズゥゥーーン!
「う、何だ!?この振動!?」
『左腕部に被弾!高速連射砲の弾頭と思われます!続いてレーダーに、反応7機です!』
 ハナコの示す、レーダーに赤い点が7つあるその中で近い奴にロックオンされていやがる。
『ロックオン反応3・いえ4…本機に近づくに連れ数が増えてます!四方を囲まれました!』
 その言葉どおり、ブレイバーが敵に四方を囲まれてるけど、目視だと全く敵の姿が見えない。
「く!こうなりゃ返り討ちに…って、ブレイバーには武装って言う武装をしていなかったっけ!?」
 返り討ちにしようとも、ブレイバーには最初換装武装を搭載してあったんだけど、前回それを忘れてきてしまったらしく、今…かなりピンチなのだ。佐倉のBRから何か武装を借りてから来るんだった…
『武装は…無い事はありません、固定武装の標準装備ですが』
「え!?」
 モニターに、ブレイバーが映し出され右腰辺りの部分と右腕の部分が赤く光っている。
「BR専用近距離ハンドガンと、固定式レーザーサーベル?あるんだったら最初から出せよ!」
『うー、だって全然聞かないんだもん!』
「だけど、今はここ切り抜けねぇと!」
『は、はい!BR専用ハンドガン『フロッグ』アクティブ!』
ガシャ!パシ!
 腰アーマーが開いて飛び出した、ハンドガンを左手で受け止めるとくるくると回した。
「か、カエルって名前はなぁ…」
『装弾数12、接近戦に移ったらレーザーサーベルも自動起動…』
 兎に角、ハンドガンの銃口を上げて…モニターに移るターゲットスコープを操作する。兎にも角にも、囲まれてて敵が見えないのは…
 この武装で、しかも7体…加えてブースターも使えないとなると…俺、結構ピンチかも!
『って、ピンチなんですー!!』
「わーってるよ、そんな事!!」


BR格納庫

「佐倉、お前らしくないな…名の知れた氷使いが、あの鼠如きに逃げられるとは」
 御堂が自分のBRの前にいる、佐倉を見て鼻で笑う。
「それはお互い様だよ。彼結構強かったし」
 そんなの至って気にしないかのように、佐倉は屈託のない笑顔で笑う。
「だが、あの男の威勢のよさももはやこれまでだ、BR部隊が出たら私達も出るぞ、佐倉」
 御堂も自分のBR、『セイメイmk_5』の前にたってほくそ笑む…のを、佐倉は少しはぁっと溜息を漏らしながら…
「新型と言え、所詮武装の少ないBR…我がセイメイmk_5の敵ではない、無論…あの男自身がどんな力を持ってるとしても、あれはただの鼠だ…」
 鼠と聞いて少し顔をしかめる佐倉…でも、すぐにっこりと笑って。
「うん、そうだね。んで?例の『あれ』はこっから射出されるんでしょ?」
「ああ、『あれ』は大雑把な武器でな、ここで持っては機体自体でれんのでな」
「納得。んじゃ、逃げられない内、行くよ!」
 佐倉はいそいそと、御堂から逃げるようにアイスコマンドのコックピットへと入っていく。御堂もそれを見て、セイメイmk_5のコックピットへと飛び移る。

「ふふ…そうだな…さて、鼠狩りとしゃれ込もうか?」
 射出口から、鼠を狩る為の…セイメイmk_5の白い機体が射出された。
「…どうするかな?たしかに貧弱な武装で…僕も、演技しきれるか解らないや」

BR決戦編に続くぜ!


プロディック社私設部隊専用BR『ゼウス』
分類タイプ:多脚型BR
会社名&品種:プロディックオリジナルZEUS
全長:4m 重量12t
 ブーストダッシュ最高時速:150k
 武装:4連高速連射砲(両椀)
    ミサイルランチャー×3
    レーザーサーベル
 プロディック社が開発した、今回の敵がBRを不正に量産化したタイプの多脚型BR、7機生産された。両椀部は4連高速連射砲を装備して、1秒間に200発の鉄鋼弾を発射できたり、肩にはミサイルも搭載してある。4脚を生かした高い機動性を屈指した、かく乱攻撃や、上からのしかかり4脚で拘束することも可能。


御堂専用BR『セイメイmk_5』
分類:中量2脚型BR
会社名&機種:SONY・中型アクセルZX1000式モデル
搭乗者:御堂耕也
全長:10.3m 重量17t
 ブーストダッシュ最高時速:300k
 武装:レーザーサーベル
    メガシールド(笠型のシールド)
    ライディングブラシランチャー
    (筆状のセイメイmk_5の持つ武装。20mもの巨大な筆の毛筆は、ビームキャノン、レーザーネット、メガレーザーサーベルが内臓された万能武器。ただ巨大で重い為、本機とは別々に射出される)
 プロディック社の用心棒として雇われた陰陽師…御堂耕也が駆る、中型BR。個人のかなり趣味が入ってて、外見の形が陰陽師のように改造して、武装も御堂が使う筆と同じ巨大な筆状万能武器ライディングブラシランチャーを武器として、対艦ミサイルをも跳ね返す笠状のメガシールドを頭に持つ。御堂の趣味がふんだんに織り込まれてる為、趣味が悪いと誰もが思う。

佐倉雪菜専用BR『アイスコマンド』
分類:重量2脚型BR
会社名&機種:浅倉ニュートラル財団・BBR−2011型イクシード(特注)
搭乗者:佐倉雪菜
全長:9.5m 重量70t
ブーストダッシュ最高時速:400k
武装:20m機関砲×2
ギガバズーカ(右手)
ガトリングマシンガン(左手)
   レーザーサーベル(左手)
   中型多弾頭ミサイルランチャー(両肩)
   3連続小型ミサイルランチャー(両腰)
   90ミリロケット砲(バックパックスロット左)
   チェーンガン(バックパックスロット右)
   拡散レーザーキャノン(バックパックスロット中)
 佐倉雪菜が乗る、重武装BR。地上戦闘用に作られており、分厚い装甲が特徴的。重量型BRには武装換装スロットが多く備え付けてあり、多くの武装が装備できる。その為脚部への重量の過多を改善させる為、重量型の脚部は予め太く設定し、アイスコマンドにはこの重武装による更なる総重量で極端に低下する機動性をカバーする為に、脚部にジェットホバーを内蔵し、地上における機動性が従来の重量型より高い。

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