首都高速道路
 夜の首都高速、青いライトに照らされた道路を、トラックやバイクが行き交う長い路…当然この連中も…このご時世になっても減る事はない。
ブーン!
「おわ、あぶねぇ!」
 トラックの前すれすれを、猛スピードでバイクが割り込んできた。
「へ、ちょろい」
 トラックを追い抜かした、バイクの少年はそのままスピードと騒音を立てて、高速道の彼方へと走り去って行った。
 バイクの少年は、スピードには絶対の自信を持っていた。自分より早い者などBRでも存在しないんじゃないかって豪語するほどの、彼の自身には凄まじい物を感じていたのだ。そうこの世に俺より早いやつなんて……
「ん?」
 ふと、少年の乗るバイクのバックミラーに1代のバイクが映る。そのバイクは今には珍しいサイドカーを持ったバイク、年代物には違いないが、かなりの早さで自分のバイクに向かってくる。
「改造車か?面白いぜ、抜きたきゃかかってきな!」
 少年はそのバイクに対抗意識を燃やして、更にエンジンを吹かして更にスピードを上げる。
 この早さに着いて来れまいと、鼻で笑う少年だったがバックミラーではまだあのバイクが自分の後ろを走っていた。
「何…たがだか年代物のバイクを改造した奴が…俺のスピードに着いてくる?どんな奴だ!?」
 少年は少しスピードを落としながら、そのバイクと並んで、どんな奴が乗っているのか自分の目で確かめた。
 その瞬間…少年は見てはいけない物を見てしまった。

 そのライダーには、普通人間なら誰しもあるはずの物がなかった、いや、むしろ無い方がおかしい……と思うくらい、なかったら普通死んでると…思う。しかし奴は動いていたバイクを動かしてる…どうして?

 ………首が無いのに…

「う、うわぁぁーー!」
 恐怖のあまり悲鳴を上げて、少年の乗ったバイクは路上に転倒してしまい、路肩に転げ落ちる。
「ぐぅ!」
 バイクの方はスピードが有り余って傍のガードレールにぶつかり大破した。少年はバイクから落ちた衝撃で体に痛みは走る物の、打ち所がよくすぐ立ち上がろうとした…
「く、まさか…ひ!?」
 さっきのは幻かと思い立ちあがって顔を上げた直後……横を何かが掠めて、少年は倒れ込んだように地面に転がった。しかしおかしい…体にまったく感覚がない…しかし目は開いている、向こうに倒れている何か…それが何か解った時、少年は……この世に解れを次げた。
 そう、そこに転がっているのは自分の体で…自分は首を何かに斬り落とされて……。

 目線の先には先程の首のないライダーがバイクに乗っていた…ライダーの手には長く細いサーベルが持たれて血が滴り落ちている。そのサーベルの血を振り払い再びバイクを走らせ、虚空の闇に消えて行った。

 残されたのは首を落された死体と大破したバイクのみだった。


勇者あいだ
第3話 首無しライダー包囲網

霊界科学特捜事務所の台所
 あの事件から1ヶ月を過ぎようとして居たある日…それほど大きな依頼も無く、ふつーのバイトも兼ねて、食い繋いでいたある日の朝。
 自分で焼いたトーストを口に運び、モーニングコーヒーで一息入れる……うむ、しみるねぇっと思ってるだろうが、そんな贅沢は出来ない。
 何故なら…
「えーっと、拝啓相田様へ(はあと)…先日の事件へのご協力ありがとうございます。少ないけど、成功報酬をお送りしますのでよろしくお願いいたします。あ、あとそれと僕が、先日闇オークションで儲けたお金の半分(実際は3分の1だけ)をお渡ししますが、失敗しちゃったので、ちょっとむかついたので、3分の1だけ送りますのでご了承してねw
 君の愛する、佐倉雪菜より」
 佐倉から届いた、手紙を読んで俺はわなわなと体を振るわせた。
「な・に・が!(はあと)だぁぁーーーー!! 半分って書いといて、思いっきり3分の1しかよこしてこねぇじゃねぇか佐倉ぁぁーー!」
「吸血鬼の粉ごときで不老不死になれたら、誰だってそうしとるわい…じゃが、粉の主が主じゃからそれなりの値段は来ただろうて」
「のん気にお茶啜りながら言う事じゃねぇだろ…じじぃ。てかよ、警察から出た報酬一千万円以上がなぜ、200万に減ってるんだ?」
 俺があの吸血鬼の親玉をぶっつぶして、街を取り返して、佐倉の所属するギルティ隊から貰った報酬の殆どが、街の復興に当てられたり…前回の戦闘で破損したブレイバーの修理代や、弾薬代に当てられて、あの大金が今では200万に減っていた。
「なんじゃ、前々回よりいい仕事じゃったろうに……」
「確かにそうだけどさ」
 なんだか納得がいかないような気がするのは気のせいか?あれだけの事件やって報酬がこれだけってのもあるけど、最初の事件より代金いいし…

「それで亮太よ、久々に依頼じゃ」
「おう、今度はまともな依頼だろうな?」
 何せ、今まで自縛霊の霊界への先導やら、ラップ音のするマンションの調査(結果、犬の霊がはしゃいでただけ)とか、そんな物ばっかりで金に全然なら無いから普通のバイトでこの事務所の生計を立てて、ようやく佐倉の所から報酬を貰っても給料にならないのが悲しい所だ。
 今回はちゃんと、給料が出るような奴ならいいな…
「久しぶりに、ギルティ隊から直属の依頼じゃ」
「何!?」
 ギルティ隊って、佐倉が所属する警察の何とか部って場所だよな、そんな場所からじきじきに依頼なんてまさか、すげぇ大事なんじゃ…
「だけど、どうして俺らに任せるんだろう?自分等で解決できないくらいでかいことだからか?大吸血鬼の次は大天狗か!?」
「馬鹿ちん、ギルティ隊は別件で出動する為…外せない事件をわし等に依頼して来たんじゃろうが?彼らも忙しいんじゃぞ」
「そか……んじゃあ今回は俺等だけか…」
 佐倉かギルティ隊が助っ人に来てくれんじゃないかと思っていたが残念だ…
「じゃが、ギルティ隊の依頼と言ってもな……はぁ、今回の依頼はどうも、ふに落ちないのじゃ」
 そう言って溜息を着いてしまうじいさん…
「どうしてだよ、ギルティ隊が直々に俺達に依頼して来たんだろ?」
「そうじゃが、まあまず依頼内容を聞くのじゃ」
 そう言って依頼内容が書いてある紙を俺に見せた。
「高速道路を中心とした殺人事件が発生、全員首を切り落された残酷な殺され方をされてる…なんだ、ただの殺人事件?俺達が出る幕は?」
「無いと思うが、実はあるらしいぞ…知らんか?そこらの高速道路で語られてる、都市伝説を知っておるか?」
「いや、あまり…」
「首の無いライダーがサイドカーの付いた年代物のバイクに乗って、高速道路に出現すると言う噂じゃ」
 あ、なんか知ってる。『首無しライダー』って奴だろう…その噂は俺がちっこい時、確か何かのHPで見た事ある。20世紀終盤辺りで流行った、『怪談伝説』ってのの中にあるやつで、結構マニアの間や20世紀を生きたおっさん達なら誰でも知ってる奴だ。
 この爺さんなどはそう言う話詳しいだろうな。
「首無しライダーって奴だろ?」
「言って見ればそうじゃな。20世紀が終盤に差し掛かった頃によくあった『怪談伝説』に出てくる妖怪の一種じゃな」
 あ、同じ事を考えていたな、爺さん…
「んじゃあ、今回はそいつをぶっ倒して…ギルティ隊から賞金を貰うってか?なんだ、簡単じゃねぇか」
 そう言って剣をタンスから出して、台所から出ようとすると…
「馬鹿ちんが、もうちょっと人の話も聞かんか。正直わしゃ今回の依頼は乗る気でないのじゃ」
「何だ?何時になく悲観的じゃん」
 俺はそう言って、またもとの椅子に座る。
「うむ、確かにただ悪霊を除霊したり、妖怪を退治するのは簡単じゃが。この手の、特にこのご時世に20世紀終盤の噂話でもある『怪談伝説』の妖怪は最もとっつきにくい相手じゃ。
 良いか?噂話や都市伝説が生んだ妖怪と言うのは、その時代の流行、事件、経済等に影響する人の心が産み出した空想の産物が多く、実際にはその手の妖怪が居ると言う事例も無い。
 噂と言うのは人伝いに広がるたびにその形態、容姿がだんだん変わっていき、同じようなものでも幾らかのバリエーションが生まれる。
 20世紀後半の子供は特にそういう、『怪談』と言う話が好きでの。刺激の無い現実に何か冷っとする話を少しでも求めようとして、自分から新しい怪談を思い付いたり…前に他の誰かから聞いた『怪談』をバージョンアップさせたりとかで……今に言う、20世紀の『怪談伝説』と言うのは、短期間にここまで大きく成長…いや、増殖を果たしたのじゃ」
「もう少し、解りやすく話してくれ……」
「うむむ…つまりじゃ、『首無しライダー』を礼にして…彼奴の特徴は、高速道路…追われる…追い抜かれたら事故を起こす…と言う3つの要素を持った、妖怪は他にもあってな…高速道路を100kで走るジェットババアやら、無人のバイクやスクーター、血みどろの運転手を乗せた幽霊車、はたまた人面犬まで…言うなれば『高速道路系』の怪談ノバリエーションは、登場する物は違えど同じ内容、同じ要素がおる。首無しライダーもその一つじゃ。
 特に高速道路を良く利用する者…また高速道路周辺に住む人々に語られる怪談でのぉ、その人間が口伝いに広めていく内にこれほどまでバリエーションを増やすに至ったのじゃ。解ったか?」
「お、おう……ようは、首無しライダーは人間が産み出した空想の産物の一つに過ぎないってわけか?」
 そう言うと、じいさんは難しい顔で考えて…
「う…うむ、そう言う事じゃ。わし等、妖怪退治屋にとってそう言う噂話程でしか語られないくらい、信憑性のかける話は…受けつけんのじゃ」
「だけど、ギルティ隊から来た依頼だろ?無視できないんじゃねぇのか?」
「そこなんじゃ、ギルティ隊は警視庁での妖怪退治のスペシャリストが集まった先鋭中の先鋭…それが、こう言う事件をわし等に押し付ける意図がつかめん。もしかして、何らかの意味があるか?それとも、ただ厄介事を押し付けてるだけなのか?」
「佐倉がそんな、俺に厄介事を任せるような…奴…じゃ…」
 そう思い、ふと今までの佐倉を思い出した……段々、そっちの方が信じられなくなってきたぜ…(泣
 あいつ、いい加減だもんなぁ…
「多分、半分半分なんじゃないか?」
「……うむ、雪菜君の事じゃからな…」
 そう言って、俺と爺さんは二人して、はぁっと溜息をついてしまう。
「断るか?」
「うむ…、生活費になりそうじゃったがな、致し方ない」
「って俺の給料払ってねぇくせに!?」
こんこん
 俺達が、文句を言い合いながら話していると、事務所のドアをコンコンと叩く音が聞こえた。
「はいはい、なんじゃろ?」
 爺さんがどっこいしょと言って、玄関へと向かった。どうやら宅配便が来たようではんこを探して、はんこを押して…業者の人は去って行った。
「こ、これは!」
「何だ?おお、ギルティ隊から届け物……ってええ!?」



……
………

3日後
 ここは、青森と北海道を繋ぐ青函トンネル…の入り口前。2010年に一般自動車道も開通して、列車のみならず車からでも、青森から北海道を行き来できるようになって5年、通行止めになった事は一度も無いだろう。
 青森側は愚か、向こうの北海道側の出口に至るまで…思いっきり通行止めだ。
「何故だ、何故俺はここに居るんだ?」
ブゥン
 トンネル前で、爺さんが何かにエンジンをかける、低いエンジン音と共に何かが中に浮かび上がる。
「亮太よ、エアバイクの運転はできるであろう?」
「BRも運転できんだ…当たり前だろうって、爺さん3日前は前々乗る気じゃなかったのに…よくあの依頼に乗ったな」
「そりゃ、この最新型エアバイク『SXL―01』に前金まで受けとってしまったからには、やらん事には始まらないぞ」
「現金な奴だ…」
 兎に角、あの時宅急便で前金400万と共にこの最新型エアバイクと、それからギルティ隊が調べ上げた首無しライダーの事件調査書っぽいもの。
 調査書は、首無しライダーがやったとされる、殺人事件…事故をまとめた物と、首無しライダーに関する目撃証言やらをまとめた物だった。事件…高速道路上で首を切り落された殺人事件が起きたのは最初起きた首都高速から、ここ青森に至るまで7件…男女問わず首を鋭利な刃物…または、ピアノ線らしき物で切り落された残忍極まりない犯行が、日にち時間によって、北上して行くのが書かれている。
 それと平行するように、首無しライダーを見たと言う目撃証言…そこから爺さんが推理して、もし…首無しライダーが日本を北上しようと言うなら、必ずここを通る筈だという推測を出したものだ。
 多分、厄介事を押し付けてるとその時まで思っていた俺と爺さんだったけど、ギルティ隊がここまで、この事に熱が入っている事がわかったのは確かだ。
 まあ、前金にこんないいバイク貰えたんじゃ、引きうけない方が馬鹿だ。
「しかし、首無しライダーが…実在するのはやはり、何処か納得が行かぬな」
「なぜだ?こんなに目撃証言と、何より7人も殺されてるんだ、居なくてどうすんだ?」
「うむ…実在したとしても、高速道路で不慮の事故に遭って死んだ若者の霊がさ迷ってるだけで、他人に危害を加えるとは考えられん。実際、その姿を見たとしてその後事故にあった例があるとしたら、それはその禍禍しい姿を目の当たりにした恐怖からバランスを崩して、転倒…事故に至ったというだけ……それに、何故奴は北上するのかがわからん」
 まあ、爺さんが言う事も最もだけど…今は考えるのはよしとしよう、そろそろ奴が来ると思われる時間帯だからな。
「さぁな、きっと北海道のカニでも食いに来たんだろうよ」
 多分違うとは思うけど、俺なら一度バイク使って、北海道のカニを食いに行くのは馬鹿が考える事かな?
「阿呆な事言っとらんで、霊気探知計測器が反応しておる、あと5Kで彼奴はトンネルに到着するぞい」
「お、おう!…そう言えば、向こう側にはブレイバー…ハナコも待機してんだっけ?」
 トンネルの向こう側のゴール地点には、ブレイバーを自動操縦にしてハナコが操作をして俺の声に反応して動く仕組みにしている。
 もし、俺がしくじった時や向こうに出させない為にソードランチャーを随時撃てるようにセットしてある。
「うむ、3人寄ればなんとやらじゃ、自動操縦と音声認識の方は大丈夫じゃろうな」
「ばっちしだぜ!」
 とりあえず、向こうに居るブレイバーを自動操縦しているハナコに通信を入れた。
「ハナコー、今からそっちいくぞー。いつでもソードランチャーを撃てるようにしろよ」
『はいです、その時はレーザーの軌道からはなれてくださいね』
「……むちゃぬかせ」
「亮太!くるぞ!」
 爺さんは首無しライダーが居る事を信じてるのか信じてないのか、どっちかわからねぇけど、ともかく俺はエアバイクのエンジンをふかした。
キュイィィーン
 車体が浮き上がり垂直に飛ぶBRにも使われるホバー走行を簡易化させた物だけど、性能はそんじょそこいらのバイクとは違うぜ!
「んじゃ、こっち側の壁頼むぜ!爺さん!」
「おうさ、はよいけ」
「うい、じゃな!」
ギューーーーーン!!
 爺さんに手を振ると、俺はバイクのアクセルを踏んでバイクを走らせて、猛スピードでトンネルに入っていった。
「うぉぉーーー、こいつはいいスピードだぜ!」
 振り落とされそうな、猛烈なスピードの中…オレンジ色の照明に照らされたトンネル内を疾走した。

「大丈夫じゃろうか?」
ブーン…
 見送った木野の後ろから低いエンジン音を鳴らせて、何かが近づいてくるのが分かった。
「お?来た来た…」
 木野は慌てながら、霊力探知計測器を抱えて、その場から離れた隅の草むらに隠れた
ブゥゥーーーン…
 道路の向こうから…トンネルに猛スピードで入っていくサイドカー付のバイク。それをトンネルの向こうに見送った木野は血相を変えながらトンネルの入り口まで戻ってくる。
「じ、実在しておったとは…おう、そんな事言っておる場合ではない。こっちも用意せんとな」
 木野は驚きながらもこっちでの壁の役目を果たす為後ろに止めてあった、トラックまで戻った。


「だいぶ奥まで走って来たけど……まだ現れねぇな」
 早くしないとゴール地点まで行っちまうよな……だけど、放っておく事はできないし、もしかしたらエアバイクが早すぎて追いつけないんじゃないのか?
ブゥゥーーーーーン!
 低いバイクの音、こんな音のするバイク、かなりビンテージな物でオークションじゃ結構な値段で売れそうなバイクの音。
 それが俺のすぐ後ろで聞こえてきた。まさかと思い俺はそのバイクの方を向いてるバックミラーを見てみた。バックミラーには年代物のサイドカーを持つバイクがうつるが、バイクに乗ってるライダーまでは分からない。
 時速は200を超えているエアバイクに追いつくだけでもすごいんだ。相手がもう何かなんて分かっているだろう。
「…う!」
 振り返って、そのライダーを目視で見ると……やっぱ実際見るととても怖いもんだな。そのバイクに乗ってるライダーは首がない…首があった所から血が滴り落ちている。その不気味さにハンドルを取られそうになったものの…
「俺が怖がってどうする!?」
 自分に突っ込みを入れて、俺はアクセルを吹かしてバイクを飛ばした。
「うぉぉーーー!」
 スピードを上げてそいつを突き放すが、奴はぴったりと俺のエアバイクにスピードを合わせて、くっついてきた。300kを越す高速の中、何が奴のスピードを上げてるんだ?

 その内、奴は俺の横に並んで…俺の方に体を向け、車体の右側に取り付けてあった細身のサーベルを鞘から引き抜いて、片手で運転しながら俺にそれを斬りつけてきた。
「うわ!あぶねぇ、走ってるときにそんなもん振り回すんじゃねぇ!」
 奴の車体を思いっきり蹴飛ばして横の距離を離すが、すぐに持ち直して追いつき再び俺にサーベルを振る、なんだか首を狙ってるように首ばっかりねらって斬ってくる。
「ち、このぉ!」
 俺もエアバイクの右側にあった剣を引き抜いて、そのサーベルを受け止める。高速で走りながら剣と剣が火花を散らした。
 首が無いってのに、的確に俺の首を狙ってサーベルを振ってくる、ふつう耳とか目とか無いと相手の位置がわからないんじゃないのかよ…
キィン!
 このままじゃ押し返されて、事故るかもしれねぇ、引き離さねぇと…
「しつこいってんだよ!」
げし!
 俺は思いっきり、首無しライダーのバイクに蹴りを入れて、バイクを遠くへと突き放す。突き放されたバイクはトンネルの壁にサイドカーを激突させ、火花を散す。乗ってる首無しライダーは突然不意をつかれたと思ったか、サーベルをしまってバイクを元に戻そうとするが。
バキィ!
 ついに隣にくっついていたサイドカーがバイクから外れて、その衝撃でバイクも右に横転した。
ガシャァァァーーーーン!!
 大音響と共に、地面に転がる首無しライダーのバイク。俺はエアバイクを反転させて、急停車させた。
「やったのか?」
 横転したバイクの横に、首の無い死体が転がるように奴は、倒れていた。これだけ見ても不気味なのにそれが起きるとなると…
ピーピーピー
『亮太!大丈夫か、バイクが止まったようじゃが』
 爺さんの声がエアバイクの通信機から聞こえてくる。
「おう、今奴をぶっ飛ばした所だぜ。ふう、意外としつこいんだな、『怪談伝説』の妖怪も…んじゃ止めさすぜ」
 俺はエアバイクの剣を引きぬいて奴のいた場所を振り返る。そしたら、何時の間にかバイクも首無しライダー事態…居なくなっていた。
 あれ?あいつは何処に…
『馬鹿ちん!奴の正体が解ったのじゃ、……ピー、ガガ…奴…の…しょうた……バグ…』
「おい、爺さん!どうしたよ!おーい、聞こえねぇぞ!」
『…き……れーだー…うじゃ……』
 通信機に突然ノイズがかかる、こんな深い場所まで来たんだから電波が届かない事が当然かと思った…
「故障かよ…」
 俺はそう言ってエアバイクの通信機をバンバンと叩いて、故障かと思った…その時、俺の背後で一瞬何かが閃光をきらめかせたと思って、俺はとっさにリンボーダンスをするように後ろに倒れた。
バ!
 目の前を銀色の何かが通りすぎて、それは俺の鼻の頭のすれすれを霞めて、エアバイクを切り裂いた。
ジャキィィーーン!!
「げ!」
ズガァァーーーン!!
 鉄の装甲を持つ、エアバイクが見事に一刀両断されて…大爆発を起こして俺はすっ飛ばされる。
「うわぁぁーーー!」
 見事にすっ飛ばされた俺は、道路を転がってダメージを押さえ……そして立ち上がってエアバイクを一刀両断にした奴を見あげる。
「い、何時の間に」
 サイドカーは無いものの、壊れたバイクにまたがってそこに居たのはサーベルを持って不気味な気配を出す首無しライダーが居た。
「…く、この野郎…上等だぜ」
 エアバイクが無くなったけど、これでタイマン勝負って訳か、俺は剣を持って奴と対峙した。
ジャ!
 首無しライダーに向かって剣を振り上げ突進しようとすると後ろから、首無しライダーとは違う何かが俺の横を掠めて、アスファルトの地面に現れる。
「!?」
 それは俺の前に現れた…それは、丁度大型犬程の大きさの四つの足を持つ、蜘蛛のような不気味なロボットだった。どちらかと言えば四脚BRをちっこくしたような感じの、変なロボット…
「何だよ、こいつ!」
 このロボット、まるで首無しライダーを援護するように現れた…ロボットと妖怪?なんだよ、この組み合わせ。
『………』
 コンピューターの機械音らしき音を鳴らして、そのロボットは俺を見て、頭を展開させて、中にあった銃らしき物からビームを発射した。
ビュンビュン!
「げ!」
 俺はロボットから連射される、ビーム砲をかわしたり剣ではじき返したりした。その攻撃に俺は後ろに後退させられる。
「何だよ、こいつ本当にあいつを援護するのかよ!?」
『………』
 ビームで俺を怯ませてから、奴は足を曲げてジャンプして…蜘蛛のように天井を伝いながら首無しライダーの真上まできて、落下した。
ガチャン!
『……』
 そのロボットは首無しライダーの背中にくっつく…何をするつもりだよ。
『……』
ウィーン
 それを見て俺は自分の目を疑った、こんな事あんのか?ロボットが液体になるように、首無しライダーの背中から体中を伝って、バイクにまでその液状化した体で包み込んで行く。これって融合か、ロボットが霊体である首無しライダーと融合しようとしてんのか!?
「やばい感じだぜ」
 段々と融合したロボットが首無しライダーの体を不気味に変形させて行く。
「やばくなる前に、倒すっきゃないか!」
 俺はそう言ってホルダーから赤い朱雀の札を取り出す、後ろで燃えてるエアバイクの炎が火だねとなって、赤い札に炎の気が集まる。
「いけぇぇ、朱雀!」
 投げ付けた札が炎の鳥となって、融合した奴に向かって飛んだ。
『ぴぃぃーーーーー!!』
ズガァァァーーーーーーーーーーーン!!!
 灼熱の炎の鳥が奴に衝突して、大爆発を起こす。巨大な爆風と、熱い熱気が俺のところまで来て俺は手で顔をかばう。
「やったか…」
 凄まじい爆煙が立ち込める中俺は、今度こそやったかと思った。
ギュイィィーーーーン
「え!?」
 そう思った矢先、煙の中で凄まじい程のエンジン音が聞こえて…こっちに桁外れのスピードで、何かが突進して来た。
キィィーーン!
 俺は襲いかかるサーベルを剣で受けとめるが、凄まじい衝撃にまた吹き飛ばされる。
「うわぁ!」
 弾き飛ばされた俺は、トンネルの壁に激突する。剣だけでこれだけの威力が…俺は前を見て目の前の首無しライダーを見上げる。
「な…」
 あのロボットと融合したらしい首無しライダーは、バイクと共に驚くくらいの変貌を遂げていた。進化って言うのか、これ…?
 無くなっていたはずの首には、新しい銀のドクロが装着されて白から黒いライダースーツを着て、サーベルは刃が長くなっている。バイクの方も、年代物から近代物のようになって、ライトとなっていた部分にさっきのロボットのモノアイがついている。
 やっぱ、あの変なロボットと首無しライダーが融合したんだな。
『………』
 さっきのロボットと同じ、機械音をその首無しライダー(いや、首がついたからゴーストライダーと呼ぶ事にするか)は立てて、俺を睨み付けると…再びバイクのエンジンをふかす。
「げ!」
ブルィーーーーン!
 サーベルが地面を擦って、火花を散しながら俺の首を狙ってくる。
「させるか!」
 受けとめるとまた、飛ばされると思い俺は、またしゃがんでそのサーベルの一撃をかわすが、サーベルは俺の肩を掠めて、肩から血が出る。
「うわぁ!」
 手から剣が落ちて、奴のバイクにはじかれて天井に突き刺さった。
「剣が!」
 ジャンプで届くが、そうなったら奴のいい的だ。ゴーストライダーはまた反転してから、今度はシルバーのドクロの目から、さっきのロボットが放ったのと同じビームを撃つ。
「あぶね!」
 剣が無く、はじく事が出来ずに俺はそのビームを走って避けた。
 どうする、剣は天井だ…それに朱雀を使おうとしても、一瞬で間合いを詰められる。だからと言っても、他の式神は火だねが無いと使えないし。
「だったら、こいつで!?」
 俺は刃札をホルダーから抜いて、構える。でも威力が小さいかもしれない…決定打を与えるにはやっぱ、すれ違い様に斬らなくちゃ、意味が無い。
 だったら、どうする?
「破れかぶれだ!」
 俺は刃札を3枚構えて奴に退治する、決定打にならなくても弱点をつけば…それに剣を取れば…
ギュイィィーーン
 ビームをやめ、再び俺に向かって突進してくる。俺もそれに合わせて刃札を構えて奴に突進する。刃札がピーンと固くなり、俺はすれ違い様に奴に刃札を投げつけた。
ザシュ!
 刃札を持っていた腕を斬りつけ、刃札の2枚は軌道がずれるが、一枚は確実にバイクのモノアイにあたった。
「ぐあ!」
 手から出血し、俺は手を押さえた…良かった落ちてない。
『……!?』
ジジ…ボン!
『…ギー…ギー』
 刃札の刺さったモノアイが、爆発して、奴は停止してコンピューターが壊れるような音がするどうやら、あそこが弱点だったようだな。…そして、ロボットバイクはゴーストライダーの操作と関係無く、俺に背を向けて逃げるようにバイクを走らせてトンネルの向こうへと走る。
「逃げんのか!?」
 ゴーストライダーは何かを急ぐように、北海道のゴールへと向かうようにバイクを走らせる。
「やべぇ、外に出るつもりだ」
 俺は急いでその後を走って追おうとしたら、そこに俺の剣が地面に落ちてくる。
「え!?なんで…」
 上を見上げたら、軌道を外れた2枚の刃札が剣の刺さっていたところに突き刺さっていた。俺は剣を拾って、走ってゴーストライダーの姿を追った。
 だめだ、奴の早さが上でゴーストライダーに追いつけねぇ。
「そうだ、ハナコ!」
 俺は携帯電話を取り出して、前もってブレイバーに備え付けてあった通信機の番号を打つ。登録しときゃよかった。
『はい、もしもし』
 電話の向こうからハナコの声が聞こえる、良かった…よし!
「ハナコ、俺だ!」
『ああ、マスターどうしたんですか?エアバイクの反応が無くなったから、心配したんですよぉ〜』
「馬鹿なこといってねぇで、奴がそっちに向かったレーダに写ってるだろ!?」
『え!?あ、はい…レーダーに猛スピードでトンネルをこちらに向けて走ってくる物が一つあります、あと30秒後にトンネルを突っ切ると思います』
「だったらやべぇ、ハナコ!ロックオンしろ、合図と同じにソードランチャーを発射だぜ、あいつを外から出させんな!」
『了解!レーザーが来たら、伏せてくださいね、巻き込まれますよ』
「さらりと、怖い事言うなよ…それじゃあ、後何秒!?」
『20…ロックオン開始、ロック完了…ソードランチャー発射用意完了』
「10で撃つぞ」
 俺は走りながら携帯電話で、ハナコに指示を出す…向こうではハナコがブレイバーを自動操縦させて、ソードランチャーを構えて、向かってくるゴーストライダーにロックオンを完了させる。
『発射まで5、4、3、2、1…0!索敵OK!』
「ソードランチャー!GOォ!」
 俺は倒れ込みながら伏せて、叫んだ。

バシュゥゥゥーーーーー!!

 威力を圧縮させたレーザーが銃口から放たれ、真っ直ぐトンネルの中を進んでゴーストライダーの方へと飛ぶ。
『……ジジ…』
 ゴーストライダーはそれに気付かずに、ロボットバイクを出口まで走らせる…光が見えた、だがそれはトンネルの出口の光じゃない…ブレイバーから放たれた圧縮されたレーザーだった。
ズゥゥーーーーン!!
 ゴーストライダーはサーベルを振り上げるが、レーザーはサーベルを糸も簡単に粉砕してロボットバイクごとゴーストライダーを飲み込んで、光の中でゴーストライダーは魂も粉々に分解されて、消滅した。

「…来た!」
ビューーーーーーーーン
 俺の真上をレーザーが、通りすぎ…俺は頭を抱えてレーザーが過ぎるのを待った。


「…亮太は無事か…エアバイクの反応が消えて、彼奴は首無しライダーと一騎討ちしてるはずじゃが、こっからじゃ何も解らん」
 木野がそう思っていると、赤い光がこっちに向かってくるのが見えた。
「何じゃ!?ね、熱源じゃと…まさか、あの馬鹿!ブレイバーのソードランチャーを…いかん!」
 木野はそう言って慌てながら、もしも戻ってきた時のバリケードとして使おうとした、手製の爆弾を全て抱え上げ急いで逃げる。
 なんとか爆弾を撤収して逃げると同じに後ろで、ブレイバーから放たれたレーザーがトンネルの出口を出て空の彼方へと赤い一筋の線となって消えた。
「ま、まったく無茶苦茶な奴じゃ…じゃがそうでもせんと、彼奴に勝てなかったかもしれんな」
ビービー
「…!?動き出したようじゃな…」
 レーダーに反応が出て、木野はそのレーダーを手にして見る。レーダーには赤い点がトンネルの天井…丁度エアバイクの反応が消えた辺りで反応を示していた。しかもその数は…数百…数千に上っていた。
「『サイコバグ』…ギルティ隊はこれを追っていたのか…」


……
「俺はまた悪い夢を見てんのかな…いで」
 目の前のことを現実と受けとめられずに俺は頬をつねる…痛い、少なくとも夢じゃねぇってことは確かだった。
「しっかし、どっから沸いて出るんだ?こんな数…」
『………』
『………』
 目の前のトンネルの天井や地面の至る所の隙間と言う隙間から這い出したと思われる、さっき首無しライダーと合体してゴーストライダーになった変な虫型ロボットがうじゃうじゃと…前と言わず後ろにもうじゃうじゃと、そのロボットの群は俺を取り囲んでじーっと俺を見ている。
 100…200…と言った生易しい数じゃない。5桁くらい行ってんじゃねぇのか?
「……なんだよ」
 剣を構えるが、数が多すぎるし、火種が無きゃ式神も使えないし…使ったら何だかトンネルが崩れそうな感じだし、それでなくても…こいつ等全員でビームを撃って来たらそれでトンネルは崩れる。
 向こうはその気満万だけど…
「…はぁ、どっしよ…あがくだけあがこうかな…」
じとー
「無理だな…」
 剣を落して、札の入ったホルダーを取って、全て丸腰の状態になると…
「ああもう、煮るなり焼くなり好きにしやがれ!」
『………』
 不気味な機械音をピコピコ鳴らしながら、ロボット軍団達はぞろぞろとこっちを見据えると、俺の方に向かって歩いてくる。
 ああ、俺の人生はこんなロボに食われて終わるのか…
ぞろぞろぞろ
 ……あれ?来ない…
 恐る恐る目を開けると、ロボット達は俺を綺麗に避けながら、トンネルの出口に向かってぞろぞろと歩いて行ってる。
「って、やらずに逃げるのかよ」
 俺は武器を拾い上げて、奴等の一体に斬り付けようと剣を振り上げるが、流れが速くなって、流れに飲まれそうになる。
「飲まれたらやばいか…」
 ロボット達の流れに飲まれたら、あっちに連れて行かれそうだ。
 取り合えず流れに乗らないペースで走って、俺は奴等が何処に行こうとするのかを追った。俺のペースに合わせるように、ロボット達は俺を避けながら段々ペースを速めていく。
ぞろぞろぞろ
 まるで、すっげぇ長いマラソンを走ってるみたいだ。
 ようやく、出口が見えて…俺はそこから出ると、さすがに体力が尽きて…
「ご、ゴール……」
 トンネルの外で、俺は膝をつく。あ、こんな事してる暇は無かった。
「!?」
 俺は首を上げて、トンネルの外を見上げる。トンネルの外に出たロボットの軍団は背中から虫の羽らしき物を出して、4本の足を丸めるとその羽を使って空へと飛びあがった。
ブーン
 虫みたいにその、ロボット達は空へと上がって行く…月を見るとそのロボットの軍団が黒い帯になって飛んでいる。黒い一本の線…なんかの番組で見た「蝙蝠の大量発生」みたいだ…
「どうしよう、ブレイバーで追おうか?って、ブレイバーがねぇ」
 確かここで配置されていたハナコが自動操縦していたはずのブレイバーがいねぇ。
「あああああ!」
 ロボットの群れが完全に居なくなったと思ったら、仰向けに倒れているブレイバーが出てきた。
「ブレイバーが…お、おいハナコぉ!」
 携帯電話を取ってブレイバーを操縦している、ハナコに声を掛けると情けない返事が帰ってきた。
『まぁーすたぁー…ぐず…何が起こったんですか?急にモニターが真っ暗になったと思ったら…倒れちゃって』
「……お前って奴は…」
『すいませぇん、倒れた衝撃で電源がショートしちゃって動けないんですぅ〜』
「んじゃあ、追えねえじゃねぇかよ!」
 空に見ると、ロボット軍と思われる黒い帯の尻尾の部分が月にかかっていた。
「……見ろ、完璧逃したぜ」
『すみませぇん…ぐず…でも急なことで怖かったんですよぉ』
「ハイブリットナビゲーションコマンダーが情けない事言ってんじゃねぇよ!」
 黒い帯はそこで途切れてしまい、俺はそのロボット達を完全に逃してしまった。

「まったく、何なんだよ…さっきのロボット…霊体と合体しちまうし、群でどっかいっちまうし、わけわかんねぇよ」

 飛び去って行くロボット軍の帯びがかかっていた月を見上げて俺は、頭をかいた。
「それより…ブレイバーも機能停止…エアバイクも壊れて…結構するって書いてあったな、ギルティ隊の文に…」
 前金貰っても何だかいつも通り取られそう…


 んで、帰って見たらいつも通り、前金からふんだくられてしまったが…首無しライダーを倒した給料は貰えた。
 だけど、爺さんは事件の後、しかめっ面で「ちょっと、行く所があるから1週間ほどで戻ってくるぞい」って言って、どっかに行っちまったし…

 何だか、いやーな予感が最近ぷんぷん匂ってきた…


今回の報酬 警視庁ギルティ隊より前金:400万
特別報酬首無しライダー殲滅料 合計万700
BR修理費:−150万
BR弾薬両:−200万
エアバイク修理代:−300万
合計報酬:50万円


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