第三話[再会]
東京某所高山 彰宅
いつもと変わらない朝・・・
いつもと同じように制服に着替え・・・
いつもと同じように朝食を食べた・・・
いつもと違うこと?
ああ、今日から2年生になるんだった・・・
こうして今日も学校へ行く。
今日もいつもと同じになる・・・・はずだった。
都内某所
いつもと同じ道、通い慣れた道。
この道を歩いているといつも必ず声がかかる。
「おはよー、彰。元気?」
ほら来た。
「元気だと思うけど、そういうお前は、裕二?」
俺が聞くと満面の笑みで裕二は
「元気、元気、超元気だよ。」
と返した。
「今日から2年生だね。クラスとかどうなるかなー?」
「さあな、でも、お前と総一郎とは同じクラスになる気がする。」
「あ、やっぱり?僕もそう思うよ。」
と裕二と話をしていると、前の方に総一郎を見つけた。
「あ、総一郎だ。おーい、総一郎!!」
と裕二が総一郎の所まで走って行った。
「・・・おはよう・・・。」
総一郎はそっけなく挨拶した。
「ははは、相変わらずだね。総一郎。」
そう、総一郎は出会った時からずっとこんな感じだった。
この3人、高山 彰(たかやま
あきら)と鈴村 裕二(すずむら ゆうじ)と川上 総一郎(かわかみ
そういちろう)は中学校からの腐れ縁だった。
なぜか同じクラスになる。
私立八ノ手高校2年5組
そして、予想通り3人は同じクラスになった。
「腐れ縁は続くな。」
総一郎が皮肉交じりに言った。
「でも、僕は嬉しいよ。また3人同じだね。」
裕二がまた満面の笑みで言った。
「始業式が始まるから、早く行こうぜ。」
クラスメートの一人が言ったので、彰たちは校庭に出た。
始業式が終わって、クラスに戻るとHRが始まったが、
そこで担任が
「えー、突然だが、転校生の紹介をする。」
と言った。
一気にクラス(の男子)がざわめいた。
「どんな子かなー?」
「可愛い子だといいなー。」
などとクラスの男子が話し始めた。
彰は特に意味も無く窓の外を見ていた。
「一体どんな子だろうね。楽しみだね。」
不意に裕二が話し掛けてきた。
「興味無い。」
彰は簡潔に答えた。
「ごめん、彰は女の子が苦手だったよね。」
「別に謝らなくてもいい。それにまだ女子と決まった訳じゃないだろ。」
などと、裕二とやり取りをしていると、転校生が入って来た。
「おおーー。」
彰と同じく興味の無さそうな総一郎以外の男子生徒が思わず声を上げた。
入ってきたのは、多くの男子の期待通り女子だった。
だが、転校生は男子の想像を遥かに上回る美少女だった。
「まずは自己紹介を。」
と、担任が言うと、
「はい。初めまして、私は坂本
理恵(さかもと
りえ)と言います。皆様、これからよろしくお願いします。」
「よろしくお願いしまーーす!!」
と、男子が声をそろえて返事をした。
何処かで見たような、と彰は転校生を見て思った。
「席はとりあえず・・・高山の隣に座ってくれ。」
と、担任が言った。
彰が考えている間に転校生が隣に座った。
「よろしくお願いします、彰君。」
「!なんで俺の名前を知ってるんだ。」
「えっ、憶えてないですか・・・・そうですよね、もう12年も会ってないですし・・・・。」
と、理恵は少し暗い顔をした。
彰はその時、理恵の横顔に見覚えがある気がした。
その後、色々な説明が担任からされた後、学校は終わった。
教室から理恵が出ようとした時、
「坂本。」
と理恵を呼ぶ声がした。
理恵が振り返って見ると声の主は彰だった。
「話があるから一緒に帰ろうぜ。」
と言うので、理恵は少し戸惑ったが、
「はい。」
と言って、一緒に帰ることにした。
2人のやり取りに驚いたのはクラスメート達だった。
「おい、高山って女が苦手じゃなかったっけ?」
「そうだよな、なんでだ?」
「なによ!!あの転校生!!いきなり高山君と仲良くしちゃって!!」
「本当よね、一体何様のつもりかしら!!」
とクラス中からボソボソと話し声が聞こえてきたが、2人は無視してそのまま教室を後にした。
「・・・・・。」
教室を出てから校門まで2人とも無言だった。
理恵はチラチラと彰の顔を見ていた。
「・・・・いつ日本に帰って来たんだ。」
沈黙を破ったのは彰だった。
「・・・・今年の初めくらいに。」
「お前のこと覚えてなかった俺の言える事じゃないけど、なんで知らせてくれなかったんだ。」
「・・・・ごめんなさい。」
理恵は申し訳なさそうに言った。
「お爺様の研究の都合で知らせられなかったの。」
「お前のお爺さん、アメリカで科学者やってるんだっけ。」
「はい。」
「なんの研究してるんだ?」
「それは・・・・言えません。」
「?そうか。」
彰は少しその事が気になったが聞かないほうが良いと判断した。
「でも、よく思い出せましたね。私のこと。」
「・・・・お前の悲しそうな顔を見てたらあの日のこと思い出してな。」
彰のいう『あの日』とは。
12年前のこと・・・・・
その日は朝から雨が降っていた。
俺は母親に連れられて理恵の家に来ていた。
理恵の家には、俺や母親を含め、黒服の人が大勢居た。
5歳の俺が理恵の両親の葬式だと知ったのはもっと後のことだった。
そこに理恵の姿はなかった。
俺は理恵を探した。
一緒に遊んだ公園。
一緒に通った幼稚園。
一緒に走った道。
何処にも理恵はいなかった。
そして最後に行った場所。
俺と理恵しか知らない場所。
大きな木の下に
理恵はいた。
「理恵ちゃん。」
俺は理恵に呼びかけた。
理恵は泣いていた。
「彰君、理恵のお父さんとお母さん、遠くに行っちゃった・・・・。」
「・・・・・・。」
俺は何も言えなかった。
「お父さんとお母さんにもう会えないって・・・・。」
俺はもう何て言えばいいのかわからなかった。
「うっ、うっ・・・・・。」
俺は咄嗟に理恵の手を握った。
「あ、彰君?」
「大丈夫。僕が一緒にいてあげるから、だから大丈夫。」
なんの根拠もなかったが、理恵を落ち着けばと思い言った言葉。
「ありがとう・・・・。彰君・・・・。」
その後理恵はアメリカに住んでいる祖父の元に引き取られて日本を離れた。
しかし、我ながらよくあんなこと言えたな、恥ずかしいなと彰は思った。
理恵を見てみると理恵は顔を赤くしていた。
同じ事を考えていたらしい。
「・・・・・・・・・・・・・・」
お互いに黙りこんでしまったので、再び長い沈黙が訪れた。
ピピピピピ・・・・・
沈黙を破ったのは理恵の携帯だった。
「あ、ごめんね。」
と言うと、理恵は鞄から携帯を取り出した。
見たことの無い携帯電話だった。
「それ、新型?」
「え、えっと、これは特別なの。」
その時、彰は理恵の携帯から不思議な力を感じた。
「はい・・・・はい・・・・わかりました、すぐに向かいます。」
ピッ
理恵は携帯を切ると、
「ごめんなさい、急に用事ができちゃって。」
「いいよ、急いでるんだろ、こっちこそ呼び止めて悪かったな。」
「本当にごめんなさい、でも彰君とお話できて嬉しかった。」
「じゃあな。」
「さよなら。」
と言って彰と理恵は別れた。
彰は走っていく理恵の背を見送っていた。
ドクンッ!
「!!」
彰は急に奇妙な感覚に襲われた。
ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!
何だ・・・・この感覚は・・・・一体何が・・・・
「くっ・・・」
彰はフラフラとした足取りで、何処かに歩いて行った。
都内某所
一台のトラックの周りを5台のパトカーが囲みながら走行していた。
一番先頭を走っているパトカーには2人の警官が乗っていた。
「一体何を乗せてるんでしょう?あのトラック。」
1人がもう1人の警官に聞いた。
「さあな、何か重要な物らしいな。」
「もしかして特事課の例の新装備関係ですかね?」
「ああ、噂の強化スーツか・・・。」
「装着員って、もう決まったんでしたっけ?」
「そろそろ決まるんじゃ・・・・」
などと話していると、
突然道路上に黒装束の男が現れた。
「!!」
キィィィィィィィ
警官はパトカーを急停車させた。
「何をしてるんだ!危ないじゃないか!」
2人はパトカーを降りて、男に駆け寄った。
「危ない?ああ、僕ですか?僕は大丈夫ですよ。」
黒装束の男は淡々と警官に言った。
黒いフードを深々と被っていて顔がよく見えない。
一つ目が描かれた黒いフードに黒マントと黒スーツ姿、黒い手袋に靴。
上から下まで真っ黒である。
「大丈夫じゃないだろう!早く退きなさい。」
「そんなことより、僕と取引しません?」
「取引?何を言ってるんだ。」
警官が尋ねるが男は無視して話を続けた。
「そう、貴方達がトラックの中身を僕に渡す、僕は貴方達のことを助ける。どうです?お互いに利益があって損がない。悪くない話でしょ。」
「助ける?一体何から助けてくれると言うんだ?」
警官は再び尋ねた。
「それは・・・・貴方達を待つ、死の運命からですよ。」
「・・・・・・・・」
警官2人は黙ってしまった。
この男、頭がおかしいのでは?と本気で考えてしまう。
「どうですか?交渉成立ですか?」
「・・・いや、大事な輸送品を渡す訳にはいかない。さあ、早く退きなさい。」
「あーっと、それでいいんですか?もっとみんなで考えるべきじゃないですか?」
「なんと言われても我々の答えは同じだ!早く退け!!」
他のパトカーの警官たちも集まって来た。
男は残念そうに、
「そうですか・・・。残念だなぁー。」
バッ
男は黒マントを翻して背を向けた。
するとそこに突然黒ずんだ銀色をした鉄くずが人型になったような集団が姿を現した。
「な、なんだ!こいつら!」
警官たちは慌てて拳銃を構える。
「もう遅い。ジャンクロイド・・・・やれ!!」
男の指令と共にジャンクロイドが警官たちに襲いかかった。
「う、うわぁぁ!!」
「う、撃て撃て!!」
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
警官たちは拳銃で必死に応戦したが、警官たちの運命は男の申し出を断った時に既に決まっていた・・・・・
無残に転がる警官たちの死体。
トラックやパトカーの周りは血の海となっていた。
ギ、ギィィィィィ
ジャンクロイド達がトラックの荷台の扉をこじ開けようとしていた。
黒装束の男はそれを一台のパトカーの上に座って眺めていた。
「早く開けろよー。じゃないと・・・・」
『ギィー』
バキッ! ドカッ! バキッ!
ジャンクロイド達は慌ててトラックの扉を壊し始めた。
「そうそう、がんばってねー。」
ギギギギギィィィィィ・・・・・バタンッ!!
ジャンクロイド達がついに扉を破った。
『ギギィー』
ジャンクロイド一体がトラックの荷台の中に入り、中身を運び出した。
荷物は小さなケースが一つだけだった。
『ギー』
ジャンクロイドはそれを男の所に持って来た。
「あれ?こんなに小さかったかな?」
男は首をかしげた。
「開けてみよう。」
ガチャ
男はケースを開けた。
中には4つの携帯電話のような物が入っていた。
「はぁー、目的の物じゃないのか。とんだ無駄足だ。」
男はガックリと肩を落とした。
「もういい、アレじゃないならこんな物に用はない。撤退するよ。」
男はその場を去ろうとした。
その時、
ブルルルルルルル・・・・・・
そこにトレーラーが突っ込んできた。
「なんだ!?」
男はトレーラーをかわしてヒラリとかわして、言った。
キィィィィィィ・・・・・・・!!
トレーラーはかなり無茶な止まり方をした。
ガチャ!
すると、トレーラーの後部から桃色の戦士が降りてきた。
「何者だ?あんた?」
男が尋ねた。
「風の戦士!コスモピンク!!」
桃色の戦士コスモピンクは男とジャンクロイド達に名乗った。
「これ以上の悪行は許しません!!」
コスモピンクは男たちを指差して高らかに叫んだ。
「はぁ、今日は厄日だ。目的の物はない、邪魔者はやって来る、本当にろくなことがない。」
男は呆れながらそう言った。
「スチルロイド。」
男がそう言うと、男の背後から湧いて出たように銀色の体で赤い一つ目の怪人が姿を現した。
ジャンクロイドに似ているが、こちらの方が断然強そうである。
『お呼びでしょうか』
「戦闘指揮を任せる。邪魔者を排除しろ。」
『承知』
「じゃ、後は任せたから、じゃあね、綺麗な声の人。」
「待ちなさい!あなたは一体・・・。」
「僕の名前はイズマエル。じゃ、また会えたら。」
イズマエルは、フッ・・、と姿を消した。
『ジャックロイド!!』
『ギギー』
ジャンクロイド達は戦闘態勢に入った。
「あなた達の相手は私です。」
『やれ!!』
『ギギー』
スチルロイドの指示と共にジャンクロイドがコスモピンクに襲いかかった。
「はあっ!」
バキッ!バキッ!
ジャンクロイドを一体また一体とパンチやキックで蹴散らしていく。
「コスモスナイパー!!」
コスモピンクは右腰にさげていた銃を取った。
ババババババ・・・・・・
コスモスナイパーから放たれた光線がジャンクロイド達を次々と撃ち倒していった。
そして残りはスチルロイド只1人となった。
「さあ、残っているのはあなた1人です。」
コスモピンクが叫ぶが、スチルロイドは冷静に
『戦闘能力・・・分析完了・・・現時点での勝率・・・・97.84%』
と、計算した。
スチルロイドはコスモピンクがジャンクロイドと戦っている間に、その能力を分析していたのだ。
『戦闘開始』
バッ・・・・・・ドカッ!!
スチルロイドは一瞬で間合いを詰めて、コスモピンクに強烈なパンチを食らわせた。
「・・・・っ!!」
コスモピンクはなんとかパンチを受け止めたが、すぐに次の一撃がきた。
ドカッ!!
これもギリギリで受け止めたが、敵のスピードが速すぎて反撃の隙がない。
(なんとかしないと、このままじゃ・・・・。)
コスモピンクはなんとか攻撃のチャンスを掴もうとした。
しかし、敵はこちらの動きを計算しているのでどうしても行動が読まれてしまう。
「コスモスナイパー!!」
コスモピンクがコスモスナイパーを取ろうとしたが、
『そうはさせん』
スチルロイドも銃を取りだした。
バシュッ!
スチルロイドの一撃がコスモスナイパーを弾き飛ばした。
「・・・くっ!」
コスモピンクに隙ができてしまった。
『終わりだ』
バンッ!!
スチルロイドの銃が火を吹いた。
(・・・・もう駄目・・・・)
そんな考えが頭を過った。
が、その時。
キンッ!!
刀が弾丸を弾き飛ばした。
「!」
『!!』
そこには赤い色の戦士が立っていた。
『貴様・・・何者だ!!』
スチルロイドが叫んだ。
「俺は・・・俺は炎の戦士!!コスモレッド!!」
『炎の・・・戦士・・・』
「コスモ・・・レッド・・・・。」
そう名乗ると、コスモレッドは踵を返して倒れこんでいたコスモピンクに手を差し出した。
「大丈夫か?坂本。」
コスモレッドのこの声は・・・・
「えっ!もしかして彰君!?」
コスモピンクは驚いた。
この声は確かに高山
彰の声だった。
「ああ、そうだけど・・・」
「な、なんで彰君がコスモスーツを!?」
「理由は俺にもよくわからないけど・・・・」
あれこれ問い詰めてくるピンクにレッドは
「とりあえず、今はあいつを早くやっつけないと。」
と、急かした。
「ええ、そうみたいですね。」
コスモピンクはレッドの手を取った。
『ギギギ・・・新たなる敵・・・データ無し・・・』
スチルロイドは突然現れたコスモレッドに動揺していた。
1人はデータ解析済み、1人はデータ無し。
『戦闘続行・・・・可能・・・・』
ジャキッ
スチルロイドは銃の代わりに剣を出した。
それを見てコスモレッドは
「向こうも剣か・・・。」
と、言うと
チャキッ
レッドは自分の剣、『フレイムソード』を構えた。
タッ!!
コスモレッドとスチルロイド。
2人は、ほぼ同時に走り始めた。
ギィン
2人の剣が激突した。
ギリギリ
「くううう・・・・」
『ギギギ・・・・』
お互い一歩も引かない。
「はあっ!!」
ギィン
レッドのフレイムソードがスチルロイドの剣を弾き飛ばした。
『!!』
スチルロイドの注意がそちらに向いた。
「隙あり!!」
フレイムソードの刃に一気に炎の力が宿る。
「フレイムスラッシュ!!」
ズガシャァァァァーーン
『ギ・・・ギギギギギギギギギギ・・・・・』
スチルロイドは一撃で縦に真っ二つになった。
タッ
レッドは地面を蹴って、スチルロイドから離れた。
ドカァァァァァーーン
スチルロイドは粉々に爆散した。
「ふぅ・・・・。」
彰は変身を解除し、元の姿に戻った。
タッタッタッタッタッ
「すごーい、すごいよ、彰君!」
理恵が彰に駆け寄ってきた。
「いや、あいつが場慣れしてる奴だったら多分勝てなかった。」
彰は冷静に言った。
「どうして敵が場慣れしてないって分かったの?」
と、理恵は尋ねた。
彰は
「俺が現れた時に、あいつは動揺してたから、後は勘。」
と、普通に答えた。
「勘って、ふふふ・・・、なんかすごいね。」
理恵は少し微笑んだ。
「でも、一体どうして?なんで彰君が?」
理恵は先ほどと同じ質問を彰に尋ねた。
「そんなの・・・俺が聞きたいよ。」
彰は困惑した表情で答えた。
そこに
「あの、お取り込み中に失礼します。」
と、声がした。
見ると、そこには1人の少女がいた。
少女を見て、彰は一歩引いた。
この男、年下だろうが年上だろうが、とにかく女性が苦手だった(理恵には少し慣れている)。
「理恵さん、お疲れ様です。司令部より帰還命令が出ています。それと、後30分ほどで回収班と警察が到着しますので、後のことはそちらに任せましょう。」
少女は表情も変えず、淡々と内容を伝えた。
何となく冷たい印象を与える少女だ。
「了解。夏海ちゃん、ご苦労様。」
理恵は少女を夏海と呼んだ。
少女は夏海というらしい。
夏海は彰の方を見ると、
「それと、あなたにも来て頂きます。」
「へっ?俺も?」
「はい、なお拒否された場合、強制的に連行しますので、ご注意を。」
強制的に連行・・・・
そう聞いてしまったら、拒否など出来る筈も無い。
「わかった。一緒に行くよ。」
彰は承諾した。
「ご協力に感謝します。ではこちらに。」
彰は夏海に指示に従い、理恵と共にトレーラーに乗り込んだ。
トレーラーの中は何やら色々な機械でいっぱいだった。
夏海は機械の前に座り、銀色の2つの破片を機械に入れ、なにやら作業を始め、
「では、私はデータの整理と回収した敵のサンプルの解析をしますので、静かにしていて下さい。」
と言った。
そんな夏海を見て、彰は
「なあ、あの子っていつもあんな感じなのか?」
と、理恵に尋ねた。
理恵は苦笑いしながら、
「うん・・・私もよく知らないけど、あの子には色々事情があるみたいだから・・・・。」
それを聞いて、彰はこれ以上聞かないほうが良いと思った。
と、そこに通信が入った。
『夏海ちゃん、そろそろ出発するよ。』
「はい、了解しました、中嶋さん。」
そのやり取りを聞いていた彰は理恵に再び尋ねた。
「なあ、中嶋さんって、誰?」
「中嶋さんはこの車の運転手さん。」
理恵はそう教えてくれた。
「それでは出発します。」
ブルルルルルル・・・・・・
トレーラーが動き出した。
彰たちを乗せ、トレーラーが出発する。
しかし、この後に更なる戦いが待ち受けているとは、
誰も知る由も無かった。
つづく