第五話 「暗躍」

「はっ、はっ、はっ・・・・・」
コスモピンクはトレーラーへと急いだ。
後ろではコスモレッドが謎の犀怪人と、仮面ライダーソニックがネオジョーカー怪人『M』と死闘を繰り広げていた。
そして・・・・・・・
遂にトレーラーの後部の出入り口にたどり着いた。
「夏海ちゃん!」
ピンクがトレーラーの取っ手に手をかけた。
その時・・・・・・・
ビリッ!!
「きゃっ!!」
電気のようなものが流れ、ピンクは思わず手を放した。
「これは・・・・スキャン」
ピンクが扉をスキャンする。
すると、扉には高圧電流が流れていた。
コスモスーツのおかげで先程は大丈夫だったが、生身で触れていたら黒焦げになっていただろう。
「そうだ、前から・・・・・」
ピンクは運転席からもトレーラーの扉を開ける事が出来るのを思い出した。
すぐに運転席へと向かった。
「っ!中嶋さん!!」
ピンクは運転席でうなだれている中嶋を見つけた。
「中嶋さん!しっかりしてください!中嶋さん!!」
「うっ・・・・・」
気を失っていた中嶋が目を覚ました。
「あれ?理恵ちゃん、一体どうした?」
中嶋は不思議そうな顔でピンクを見た。
「一体何があったんですか?」
ピンクが聞くと中嶋は、
「何があったって・・・・何が?」
と首を傾げた。
「何言ってるんですか!?突然夏海ちゃんの悲鳴が聞こえて・・・・・」
「悲鳴?いつ?・・・・って言うか、俺なんで気を失ってたんだ?」
「中嶋さん、一体どうしたんですか!?」
話がまるでかみ合わない。
中嶋は夏海の悲鳴が聞こえる前に気を失ったのか?
だが中嶋は何故自分が気を失ったのかを解らなかった。
いや、解らなかったというよりは・・・・
「思い出せない・・・・・」
中嶋は気を失う前の5分弱の記憶を失っていた。
レッドとピンクが戦い始めた所で中嶋の記憶は終わっていた。
「そんな・・・・一体どうして・・・・」
ピンクはこの状態に驚愕していた。
その時
バチッ バチッ バチッ
火花が散るような音
「はっ、中嶋さんすぐに後ろの扉を開けてください!!」
「わかった!」
ピンクは再び後部の扉の所に向かった。
ギィィィィィ・・・・バタン!!
扉が開いた。
「夏海ちゃん!」
ピンクは中に飛び込んだ。
すると、夏海が中嶋の様に気を失って倒れていた。
「夏海ちゃん!!」
ピンクは夏海に駆け寄った。
バチッ バチッ
コンピューターが火花を上げていた。
ここは危険と判断し、ピンクは夏海を運転席の中嶋の元まで運んだ。
「中嶋さん!夏海ちゃんをお願いします」
「わかった!気をつけろよ!」
ピンクがその場を離れようとした時だった。
「り、理恵さん・・・・・」
夏海が力ない声で呼びかけた。
「夏海ちゃん!?気が付いたの?」
「それより・・・・あの犀型の怪人の・・・・後方にあるビルから・・・・」
「夏海ちゃん、あまり喋らない方が良いわ」
「・・・・大丈夫・・・・です」
夏海は弱々しく話し続けた。
「後方のビルから・・・・ブーメランのような・・・・物が・・・・気をつけて・・・・ください・・・・」
「わかったわ、ありがとう・・・・夏海ちゃん!」
ピンクは夏海にお礼を言うと、再び戦場に急いだ。




ドカァァァァァンン!!!
「うわぁぁぁぁぁ!!」
コスモレッドは凄まじい衝撃で吹き飛ばされた。
ドサッ!!
「くっ・・・・」
犀怪人の巨大鉄球による攻撃の直撃こそしていないものの、その凄まじい衝撃でレッドは大ダメージを受けていた。
「ふんっ・・・・つまんねぇな」
犀怪人は呟いた。
「もう少しマシな奴はいないのか?・・・・・・・そうだ。いい事思いついたぜ」
そう言うと、犀怪人は持っていた鉄球を消した。
「ハンデをくれてやる。俺はメタハンマーを使わないで戦う。お前は素手なり、武器使うなり、好きにしろ。ただし全力で戦えよ」
ボロボロになったレッドは剣を杖代わりに立ち上がった。
「ハンデ・・・だと・・・・・」
正直な話、レッドはハンデを貰っても勝てる気はしなかった。
あの巨大鉄球を軽々と振りまわしていたのだ。
腕力も相当のものだろう。
そんな奴が素手で挑んでくるなんて、迷惑極まりない。
「お前・・・・一体何者だ・・・・」
レッドは犀怪人に問い掛けた。
「冥土の土産に教えてやるぜ。俺の名前はライノセラスメタルだ・・・・・・・・ん?」
突然ライノセラスメタルが後ろの廃ビルの方に振り向き、誰かと話し始めた。
(何だ?誰かいるのか?)
レッドはその隙に体勢を立て直した
ライノセラスメタルと後方の存在の会話は続く。
「わかったよ・・・・・・しゃーねな」
ライノセラスメタルは会話を終え、レッドの方に振り向いた。
「待たせたな」
レッドは再び剣を構えたが、もう少しライノセラスメタルから話を聞き出そうと思った。
「お前・・・・一体何が目的だ?」
「そいつは言えねぇな。言ったら俺が後ろからやられちまうからな」
後ろ・・・・・やっぱり誰かいるのか・・・・・
「お前、一人じゃないな?」
「ああ、一応俺入れて三人だったか?」
三人・・・・・・
こいつと後ろのビルにいる奴と、もう一人は何処だ・・・・・
「もう一人は何処にいる?」
「そいつも言えねぇな、知りたきゃ自分で見つけな」
まさか、さっきの夏海ちゃんの悲鳴はこいつの仲間が・・・・・
「質問に答えるのも飽きて来た。さっさと続きやるぞ」
バキ! コキ!
ライノセラスメタルは拳を鳴らし始めた。
「行くぜ!!ヘビーパンチ!!」
ドコォォォォォォ!!!
ライノセラスメタルが地面を殴ると、地響きと共に地割れが起こった。
「くっ!!」
タッ!
レッドは地面を蹴って、地割れをかわすために空中にジャンプした。
その時、
ヒュン・・・・
風を切る音がレッドの耳に届いた。
「何っ!?」
廃ビルから何かがこちらに飛んでくるのが一瞬見えた。
そして、何かがレッドに当たる寸前、
「ウインドアロー!!」
ヒュン!!
ガキィィン!!
ピンクの放った矢がソレを空中で打ち落とした。
カラン・・・・
打ち落とされたソレは地面に落下した。
スタッ!
レッドは打ち落とされた物の側に降りた。
「これは・・・・・」
打ち落とされた物。
それは巨大なブーメランのような武器だった。
「彰君!大丈夫だった?」
ピンクがレッドの側に駆け寄ってきた。
「ああ。助かったぜ、坂本」
コキ・・・コキ・・・
コスモピンクの姿を確認したライノセラスメタルは拳を鳴らした。
「数が増えたか。面白い、少しはマシになったか」
「ウインドアロー!!」
バシュウッ!!
ピンクは間髪入れずにライノセラスメタルを攻撃した。
だが・・・・・
ガキッ!!
「なんだ・・・・・・お前もこの程度か・・・・・・」
ピンクの放った風の矢は確実にライノセラスメタルに直撃した。
しかし、ライノセラスメタルがダメージを受けた様子はなかった。
「そんな・・・・・・ウインドアローが効かないなんて・・・・・・・」
ピンクはショックを隠せなかった。
「今度はこっちの番だな」
ライノセラスメタルは再び拳を振り上げた。
「ヘビーパンチ!!!」
ドコォォォォォォン!!!
「っ!!避けろ、坂本!!」
「きゃああああ!!」
2人はギリギリの所で地割れをかわした。
「おいおい・・・・・逃げてばっかりじゃ勝てないぜ・・・・・・」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・)
「ゴチャゴチャうるせえな!!」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・)
「はいはい。わかりましたよ」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・)
「えぇえぇ。どうぞご自由にすればいいんじゃないですか?」
ライノセラスメタルと背後の何者かの会話はそこで終了した。
「ふぅー、やれやれ。これで自由に戦えるぜ。ヘビーパンチ!!」
ドコォォォォォォォン!!!
再び地割れがレッドとピンクを襲う。
「くっ!!」
地割れをかわしながらレッドは考えを巡らせた。
(どうする。どうすれば奴に勝てる。)
「ヘビーパンチ!!」
ドコォォォォォォォン!!!
そうしている間にも、ライノセラスメタルの攻撃は続いた。
先程からの地割れ攻撃で周りは荒れ放題、地面は罅だらけだった。
(地割れ・・・・・・・地割れ・・・・・・・地割れ・・・・・・・そうだ!)
「おい!坂本、ちょっと耳貸せ!!」
レッドはピンクに叫んだ。
「どうしたの?彰君?」
「いいから!急げ!!」
(ぼそぼそぼそ・・・・・・)
レッドはピンクに自分の考えを伝えた。
「ええっ!?でも、それじゃ彰君が・・・・・・」
「ゴチャゴチャ言ってる場合かよ!!じゃ頼むぞ!!」
そう言うと、レッドはフレイムソードを構えて、ライノセラスメタルに向かっていた。
「ちょっと彰君!!」
ピンクの静止も聞かず、レッドはライノセラスメタルに斬りかかった。
「でやぁぁぁぁぁ!!」
ガキィィィィィン!!!
が、フレイムソードの刃はライノセラスメタルの体を傷つける事無く、金属音だけが響いた。
「へっ!逃げてばっかよりはマシになったな。でもそんな攻撃じゃ俺は倒せないぜ!!」
ドスッ!!
「グハッ!!!」
ライノセラスメタルのパンチをレッドは胸にもろに食らい5メートルほど吹っ飛ばされた。
「ゲハッ!!ゴハッ!!」
・・・・・・・・一撃が重い・・・・・・息が出来ない・・・・・・・体の中の物全部吐き出しそうだ・・・・・・・
そんなことが頭に浮かんだ次の瞬間。
「彰君!!危ない!!」
ブゥゥゥゥゥン!!!
「!!」
ドカッ!!
「ゲハッ!!!」
今度は丸太のような太い足で蹴りを食らった。
ドサッ!!
派手に吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられた。
・・・・・・・・・・・やばい・・・・・・・・意識がなくなりそうだ・・・・・・・・
人間死にそうになっても意外と冷静でいられるものだと感心しつつ、こちらに向かって歩いてくるライノセラスメタルが目に映った。
「おいおい、まだ死ぬなよ。こっちはまだまだ暴れたいんだからよ」
そうだ・・・・・・・そのまま来い・・・・・・・・あと三歩・・・・・・・・
「地球人ってのは脆いな。ドラゴンの言った通りだぜ」
あと二歩・・・・・・・・・あと一歩・・・・・・・・・・
最後の一歩をライノセラスメタルが踏み出した瞬間、
「今だ坂本!!打て!!」
レッドは渾身の力をこめて叫んだ。
「うん!!」
ヒュォォォォォ!!!
ピンクの弓、ウインドアローに風の力が集まっていく。
「トルネードショット!!!」
バシュッッッッッッ!!!
「!!」
ドカァァァァァァァァン!!!
凝縮した風の力を一本の矢として放つコスモピンクの必殺技『トルネードショット』。
その矢がライノセラスメタルに、いや、ライノセラスメタルの足元に直撃した。
「くっ!!・・・・・・・・・・・目くらましのつもりか?それともただ外しただけか?」
ピキ――――――――――
「どっちにしろ・・・・・・・・」
ピキピキピキ―――――――
「俺の勝ちみたいだな」
ピキピキピキピキピキ――――――――
「・・・・・・って、さっきから何の音だ?」
先程から聞こえる奇妙な音にライノセラスメタルが気付いた。
「今ごろ気付いても遅いぜ・・・・・・・・・」
「何!?」
「さっきの攻撃はお前じゃなくてお前の足元・・・・・・・・・つまり、お前がボロボロにした地面を狙ってたのさ・・・・・・・・・」
「何!?・・・・・・・・」
ドカァァァァァァァァァァ!!!
轟音と共にライノセラスメタルの足元が崩れ出した。
「くそぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
ライノセラスメタルは崩れた地面と共に地底に沈んでいった。




レッドとピンクが戦い始めたのと同じ頃・・・・・・・・・・

「はぁ!!」
ドカッ!!
ソニックの蹴りが『M』を捕らえた。
「ぐぅぅぅぅぅ・・・・・・・・」
仮面ライダーソニックとネオジョーカー改造人間『M』の戦いは続いていた。
だがこの戦い、わずかだがソニックが優勢に進んでいた。
「くそっ・・・・・・・何故だ!?」
『M』は思った疑問をそのまま口にした。
新型の自分が旧ジョーカーの改造人間であるソニックに劣る理由がわからないのだ。
「何故だ!?何故この俺が、新型の俺が旧式に押されている!?」
ブゥゥゥン!!
『M』がパンチを繰り出すが、その攻撃は空を切った。
ソニックは空高く飛翔し、空中で回転しキックを放った。
「ソニックキック!!」
ドカァァァァァ!!
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ソニックのキックを腹に受けた『M』は吹っ飛ばされた。
「くそっ!くそっ!!くそっ!!!」
ダンッ!!ダンッ!!ダンッ!!
『M』は拳を地面に叩きつけた。
自身の力に絶対の自信を持っていた。
だがその力ではソニックに歯が立たない。
「おのれ・・・・・・・・・!!」
『M』が再びソニックに攻撃しようとしたその時だった。
「あらあら・・・・・・・全然ダメね、アナタ・・・・・・・・・・」
どこからか女の声が。
『M』は慌てて周りを見まわす。
「このお声は・・・・・・・・まさか!?」
すると、『M』の背後から別の改造人間が現れた。
腰のベルトに赤い石、両肩についているバラの装飾品、エースやソニックと似た容姿。
ソニックはその改造人間の姿を見ると、
「その姿にワイルドストーン・・・・・・・・・・・幹部か」
「ええ、そうよ。裏切り者の『S』・・・・・・・ああ、今は仮面ライダーでしたっけ?」
傍から見ると何気ない会話。
だが、2人の間には途轍もない殺気が漲っていた。
「私(わたくし)の名前は『Q』。お近づきの印に薔薇の花でも・・・・・・・・・」
『Q』はそう言うと、何処からか一輪の薔薇の花を出した。
「ふふふ・・・・・・・・・・・美しいでしょう?私はこんなに美しい薔薇の改造人間・・・・・・・・」
フッ――――――
『Q』は手に持っていた薔薇の花をソニックに向かって放った。
パサ
その花は静かにソニックの足元に落ちた。
「何の真似だ。こんな事をして!?」
「ふふふ・・・・・・・・言ったでしょう。お近づきの印って、そして・・・・・・・・・・・・・あなたへの手向けの花よ!!」
「!!」
ドカァァァァァァァン!!!
突如『Q』の放った花が爆発した。
それを見ていた『M』は、
「おお、さすがは『Q』様。見事に『S』を葬り去りましたな」
と感心した。が・・・・・・・・・
「ふふふ・・・・・・・・・・・まさか、これくらいで死んだりはしないでしょう?」
と落ち着いた調子で爆煙を見ながら話す『Q』。
「は?」
『Q』の言葉の意味が理解できなかった『M』は同じく爆煙の方を見た。
バッ!!
爆煙の中からソニックが上空に飛び出した。
「くっ・・・・・・・・!」
『Q』の予想通りソニックは生きていた。
が、無傷という訳ではなかった。
「ふふ・・・・・・・・・綺麗よ。惚れ惚れするくらい・・・・・・・・・・」
爆発でボロボロになったソニックを見て、『Q』は恍惚状態になっていた。
「ちょ、『Q』様。しっかりしてください!」
ボーっとしている『Q』を『M』は注意した。
その隙をソニックは見逃さなかった。
「ソニックキック!!」
必殺キックが『Q』に放たれる。
だが、その瞬間・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・ローズビュート」
バシッ!!
「ああっ!!」
ドサッ!!
『Q』の武器、茨の鞭『ローズビュート』がソニックの体の自由を一瞬にして奪った。
「ふふふ・・・・・・・・・・・やっぱりアナタは空を飛んでいるより、地を這いつくばっている方が綺麗だわ。・・・・・・・・・・・・『M』」
「はっ!」
ドカッ!!
「ぐふっ!!」
『M』がローズビュートで身動きの出来なくなったソニックのわき腹に蹴りを入れた。
ドカッ!! バキッ!! ドカッ!!
一方的な攻撃が続いた。
「さっきまでの礼をたっぷり返してやるぜ!!」
ドカッ!!
「ぐっ・・・・・・・・・・・・・!!」
『M』の先程までの恨みを晴らすかのような一方的な攻撃。
ドカッ!! ドカッ!! ドカッ!!
「くっ・・・・・!!・・・・・・・うっ!!」
「そろそろ止めを刺してあげるわ」
『Q』が新たにベルトのバックルからローズビュートを取り出す。
そしてそれは槍状に変化した。
「さようなら仮面ライダー」
止めの一撃が振り下ろされそうになった瞬間、ソニックの目に今まで共に戦ってきた相棒がマシンを走らせてくるのが見えた。
ギュゥゥゥゥゥウ!!
「なっ!?」
「な、何っ!?」
ドカッ!!!
ストームホッパーが宙を舞い、『M』と『Q』をふっ飛ばした。
「仮面ライダーエース!ただいま参上」
エースはストームホッパーから降りるとソニックのもとに駆け寄った。
「大丈夫か?明日香」
エースはソニックの体を縛っていた茨の鞭を引き千切った。
「お前・・・・・・・・・・・・何で来たんだ!!」
「はあっ!?」
ソニックの第一声はエースの想像していないものだった。
「お前、この前の怪我だってまだ完治してないんだぞ!それなのに何で・・・・・・・・・・・・このバカ者!!」
「バ・・・・・・・・・・・バカって、お前!!じゃあな、こっちだって言わせてもらうけどな!!お前こそ何で一人で勝手に行ったんだよ!!」
「そ、それはその・・・・・・・・・・・・・・・そ、そうだ。お前みたいな怪我人がいても足手まといだからだ!!」
カチン!!
「な・な・な・な・何だと!!!」
「本当の事を言ったまでだ!!」
徐々にヒートアップしていく2人の口論。
そんな中、忘れ去られた2人がいた。
『Q』と『M』である。
「あいつら・・・・・・・・・・・・・・俺らのことを完全に忘れてますよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『Q』は黙っていた。
が、その手が怒りに震えているのが『M』には見て取れた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ここは私にお任せを。『Q』様はお引き下さい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ブワッ!!
『Q』は黙ったまま、薔薇の花吹雪と共に消えた。
「・・・・・・・・・・・ふうっ」
『M』はため息をついた。
『Q』が怒り狂って暴れられたら、大変な事になると知っていたからだ。
その頃、エースとソニックの口論も終わりに向かっていた。
「とにかくだ!!この話は後で絶対に決着をつけるからな!!」
「ああ!!望むところだ!!」
口論が終了したところでエースの目に戦闘体勢に入った『M』の姿が映った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・お前は少し休んでろ。ここは俺がやる」
「なっ!?ちょ、ちょっと・・・・・・・・・・・」
ソニックの言葉を最後まで聞かずに、エースは戦いに向かった。
「『S』と同じ裏切り者の『A』よ。ネオジョーカー改造人間『M』が相手だ!!」
「もう1人いた幹部はどうした?」
「ふんっ。わざわざ『Q』様の手を煩わせる事もない。お前は私が倒す!!」
「やれるもんならやってみな」
お互いに構えた。
(とは言ったものの、この前の傷も完全に癒えていない。無理は出来ないか・・・・・・・・・・)
エースは頭の中で考えを巡らせた。
ジリッ・・・・・・・・・・・
沈黙が場を支配した。
バッ!!
先に動いたのは『M』だった。
「はあぁぁぁぁぁ!!」
ブウゥゥゥゥゥン!!
『M』が次々とパンチやキックを繰り出すが、エースはそれらをかわす。
「どうした!?かわすだけでは勝つ事など出来ぬぞ!!」
誇らしげに叫ぶ『M』に対して、エースは黙って攻撃をかわし続けた。
ブンッ!! ブンッ!! ブンッ!!
なおも攻撃を続ける『M』。
だが、一瞬。ほんの一瞬。『M』に隙が出来た。
それをエースは見逃さなかった。
「ライダーパンチ!!」
ドゴォォォォ!!
「ぐはっ!?」
エースの強烈なパンチを食らって『M』は吹っ飛ばされた。
ドサッ!!
「な、何!?」
一発。一発食らっただけなのに体の自由が利かなくなった。
「な・・・・・・・・・・・何故だ!?」
混乱する『M』。
「トオッ!!」
その隙をつき、エースは空高くジャンプし、空中で一回転をしてキックを放った。
「ライダーキック!!」
ズガーーーーーーン!!
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
エースの必殺キックを腹に食らった『M』は身体から火花を散らせ、フラフラになりながらもエースに問い掛けてきた。
「ゴフッ!!な、ナぜだ!?何故・・・・・・・・ワたし・・・・・が!?」
エースは静かに答えた。
「お前は脳改造されて痛みをあまり感じない身体になってるから気付かなかっただろうな」
「ナ、何のコト・・・・・ダ・・・・・・・・?」
「腹だよ、腹。お前、ソニックのキックかなんかを腹に食らっただろ。そこにダメージが溜まってたからな、2発ともそこを狙ったってわけだ」
「な・・・・・・・ナんだと?・・・・・・・・・ハッ」
『M』の脳裏にソニックのキックを腹に食らった事が甦った。
「ま、まさカ・・・・・・・・・」
「生憎だが、俺も本調子じゃなかったからな。早く決めさせてもらった」
「クッ・・・そレさえ・・・な・・けれバ・・・新型の・・・ワ、私が・・・・・・負ける・・・・・・・事は・・・・・・・・・・」
『M』はついに力尽き、地面に倒れこんだ。
ドカァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!
「そいつは違うぜ・・・・・・・・・・・・・・俺には・・・・・・・・・いや俺達には・・・・・・・・・・・・・・・護りたいものがある。だから、どんな事があっても・・・・・・・・・・・負けるわけにはいかないんだよ」
爆発した『M』を見ながらエースは静かに、そして力強く言った。
「護。終わったんだな」
エースから護の姿に戻り、振り向くと同じく変身を解除した明日香がいた。
「お前、休んでろって言っただろ」
「それよりも・・・・・・・・・・・・」



「彰君!!しっかりして!!彰君!!」
理恵は倒れた彰に必死で呼びかけた。
「大丈夫だって・・・・・・・・・・・・ちゃんと生きてるから・・・・・・・・・・・」
とは言うものの、怪我の具合からみて大丈夫とは言い難かった。
グゥゥゥゥ――――――――――
理恵の胃が空腹を知らせる音を出した。
「ええい!緊張感のない音を出すんじゃない!」
「えへへ・・・・・・・・・・ごめん」
と話している2人の下に、
「お―――い!!」
遠くの方から呼びかける声がした。
理恵がそちらの方を見ると、見知らぬ男女がバイクを押しながらこちらに向かってきていた。
「お前達も無事・・・・・・・・・・・・・じゃないわね」
バイクに乗っていた女性が彰と理恵を見て言った。
「この2人か?まだ高校生くらいじゃないか」
バイクを押していた男性が彰と理恵を見て言った。
「えっと・・・・・・・・・・どちら様ですか?」
理恵が謎の男女に質問した。
「おいおい。さっき一緒に戦ったでしょ?・・・・・・・・・・・・・・・そーか、自己紹介がまだだったわね、私は寺井明日香。またの名を仮面ライダーソニック」
「始めまして。俺は高坂護。またの名を仮面ライダーエース」
2人はごく普通に名乗った。
―――――――――――普通に名乗った。
2人は普通に仮面ライダーだと名乗った。
―――――――――――名乗った。
「「ええっ!!!」」
彰と理恵は驚いた。
「普通そういうのって秘密じゃないんですか!?」
彰が尋ねた。
「普通はな。でも君達も普通の奴とは違った事情があるみたいだからな」
護は彰の問いに答えた。
「とりあえず話は後だ。今は傷の手当てをしたほうがいい。特に君」
護は彰の状態を見て言った。
実を言うと、彰はずっと倒れっぱなしだった。
「そうですね。夏海ちゃんの事もありますし、とにかく一度病院に行きましょう」
「ついでに明日香も連れてってくれないか?俺は後からバイクで追いかけるから」
「こんなもの、たいした事はない」
明日香は強がるが、
「いいから行け」
と言うと護は明日香を抱えて、理恵は彰に肩を貸して、トレーラーに乗り込んだ。
「じゃ、頼むな」
「はい、お任せ下さい」
バタン!!
理恵はそう言うと、トレーラー後部の扉を閉めた。
ブロロロロロロ・・・・・・・・・・・・・・!!
トレーラーが走り出すのを見送ると、ストームホッパーの所に戻った。
「いい加減に出て来たらどうだ。物見の使徒」
護が静かにそう言うと、背後から物見の使徒が姿を現した。
「ほう・・・・・・・・・・・・いつから気付いた?」
「始めからだ。この独特の殺気。それにお前が近くにいると妙な感覚がする・・・・・・・・・・・『J』の時も見てたな?」
「正解。さすがだな。まっ、今回はこれくらいだな。お前達の能力も大体わかった」
物見の使徒がそう言うと、前回と同じく姿が薄くなってきた。
「おい!まだ話は終わって・・・・・・・・」
護が呼び止めるが
「お前と長く話をする訳にはいかない。だが、一つだけ教えてやる。さっきお前は俺に敵か味方か?・・・・・・・・と聞いた。俺はわからないと言った」
「・・・・・・・・・・・?」
物見の使徒が何を言わんとしているのか、護はわからなかった。
「前言撤回だ。お前達は俺の、いや我らの敵となる価値もない」
「!?」
「さらばだ・・・・・・・・・・・・・・」
物見の使徒の姿は完全に消えた。
だが、護はただその場に立ち尽くしていた。
「どういう事だ?・・・・・・・・・・」
物見の使徒は言った。
敵になる価値もないと。
この言葉の意味もわからぬまま、護はストームホッパーに跨り、明日香達を乗せたトレーラーの後を追った。





薄暗い空間

酷く禍禍しい空気が場を支配している

ここはネオジョーカーの本部

本部の最深部にある『首領の間』

『首領の間』にはすでに三人の影がいた。

そこに一つの影が入って来た。

「ケケケ・・・・・・・・・。威勢良く出てって結果がそれか!」
入って来た影に『首領の間』にいた影の一人・・・・・・・・・・『J』が話し掛けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・命令も無しに『A』と戦ったアンタに言われたくないわよ!!」
『Q』は『J』に怒鳴った。一触即発の空気が流れた。
「よせ!!」
その場にいたもう一人の影・・・・・・・・・・・・『K』が場を静めた。
「チッ!」
「ふんっ!」
『J』と『Q』は渋々黙った。
「それで?首領はどうしたの?『K』」
『Q』が『K』に尋ねた。
「首領はお休みになられている。報告は後でいいだろう」
「へっ!助かったな、『Q』」
『Q』が『J』に厳しい視線を向ける。
「それより・・・・・・・・・未確認の敵がいたわ。W.R.Gと仮面ライダー以外の奴が。どういう事かしら?クトゥルー教団のワイリーさん?」
『Q』がそう言うと、部屋の隅にいた最後の影が前に出て来た。
「おやおや・・・・・・・・・・・・確かにあの犀みたいな奴は私の仕入れた情報にはなかったですが、『どんな手を使っても絶対に奪ってくる』と言ったのは『Q』様ですよね?」
ワイリーと呼ばれた男は他の三人『J』、『Q』、『K』とは違いその姿は人間と変わりなかった。
紫色の長髪を後ろで縛ってポニーテールのようにしている。顔付きは美形なのだろうが、かなり目つきが悪い。
それがこの男、ワイリー・ギルバートの特徴だった。
「ちょっと・・・・・・・・自分のミスを私のせいにする気!?」
「それは『Q』様も同じじゃないですか?」
『Q』の手が怒りに震える。
それを見た『K』は
「やめろ、『Q』!だが、お前にも責任があるのだぞ。ワイリー・ギルバート」
「はいはい。では、今回は私のミスも確かにありますので情報料はなし、という事で・・・・・・・・・・おっと、時間だ。ではまた、ごきげんよう」
腕時計を見ながらそう言うと、ワイリーはさっさと『首領の間』を出て行った。
「チッ!気にいらねぇな!」
ワイリーが出て行った後、『J』がもらした。
「そう言うな。奴ら・・・・・・クトゥルー教団は確かに素性の知れぬ連中だが、利用価値はある。利用するだけ利用してやるさ」
「それは向こうも同じでしょうけど・・・・・・・・・・」
『K』と『Q』の言葉を最後に『首領の間』は闇と沈黙に満たされた。







ここはコスモレッドとコスモピンクがライノセラスメタルを倒した場所。

護達がここを立ち去ってから、すでに1時間近く経っていた。
ライノセラスメタルが沈んだ地面の側に、二つの人影・・・・・・・いや、その二人はヒトと呼ぶには異形過ぎる。
一人は蝙蝠のような姿をしており、もう一人は蠍のような姿をしていた。
「あーあ、これはまた。派手にやられたもんだ」
蠍怪人が地面を見ながら言った。
「へぇ、そんなに派手なのかい?」
蝙蝠怪人が不思議そうに尋ねた。
「ああ、もうメチャクチャだぜ。まっ、あの怪力バカは死んでねぇだろうがな。おい!!手伝うか?」
蠍怪人が地面に向かって呼びかけた。
すると・・・・・・・・・・・
ドカァァァァァァァァ!!!
地面を吹き飛ばし、ライノセラスメタルが這い出てきた。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・・・・・・・・・・・あいつら・・・・・どこ行きやがった!!」
息を荒くしながら、ライノセラスメタルが周りを見渡した。
「あのね、ライノセラスメタル。君が沈んでから、もう1時間はたってるんだよ。いるわけないじゃん」
蝙蝠怪人がライノセラスメタルをなだめる様に言った。
「んっ?バットメタルにスコーピオンメタル。なんでお前らがここにいる?」
「今頃かよ!?本当にお前の頭の悪さにはホントに驚かされるな」
「なんだと!?」
険悪なムードになるスコーピオンメタルとライノセラスメタル。
「まぁまぁ、二人とも。そう喧嘩腰にならないで」
が、二人の間にバットメタルが仲裁に入った。
「僕達はライノセラスメタルが帰らないから、迎えに来たんだよ」
「あの二人は?」
ライノセラスメタルがもらした。
「ああ、あの二人ならとっくに帰ったよ」
「何!?あいつら・・・・・・・・・・・・・・!!」
バットメタルの答えにライノセラスメタルは怒りに震えるが、
「まっ、賢明な判断だな。バカに付き合う必要はねえってこった」
「なんだとっ!!」
スコーピオンメタルの一言で再び険悪なムードになる両者。
「はあっ・・・・・・・・・・スコーピオンメタルは一言多いよ。早く帰還しよう」
そう言うと、バットメタルは懐から門の絵が描かれたカードを取り出した。
シュッ!!
バットメタルがカードを投げると、絵が実体化し、門が現われた。
ガガガガガ・・・・・・・・・・・・・・・
門が徐々に開いていく。
「じゃあ、帰ろうか?」
「おう!」
「へいへい」
三人は門を通って消えた。
ガガガガガ・・・・・・・・・・・・・・・
門が閉じ、そして門自体も消えた。


数秒後。

タッ!!
白い虎を模した鎧のような物を着た青年がその場に駆けつけた。
「くそっ!遅かったか、こちら『白虎』。ターゲットはすでに消失。残留物等はゼロ。現場を確認した後、帰還します」
『白虎』と名乗った青年はその場に誰もいない事を確認すると、夜の闇に消えた。


つづく



次回予告

男は戦う。

何のために?

皆のため? 平和のため?

否――――――――

自分のため 復讐のため

男は戦う。

次回、スーパーヒーロー作戦OG

第6話 「復讐の剣」


後書き

どうも、電波時計です。
用事で長く書いていなかったので、少々スランプ気味です。
気分転換に色々な方のSSを読ませていただきましたが、みなさんとても上手くて、自分の文章表現力のなさを思い知りました。
上手く文章を書きたいです。
ねえ、ゲストの護さん。
護「そこで俺にふるか。まあ、今回はタイトル通り、暗躍してる連中が色々と出てきたな。」
はい。ネオジョーカー、クトゥルー教団、謎の3怪人、『白虎』と名乗る青年。
護「あと、物見の使徒な。」
そうそう。果たして謎が解ける日は来るのか?それとも真実は闇に葬られてしまうのか?
護「ちょっと待て!闇に葬るつもりか?」
ないない。ちょっと言ってみたかっただけ。
護「ところで、前回のタイトル。ありゃなんだ?『馬と蜘蛛と犀と水溜り』だっけか?」
またまた、わかってるくせに。
馬→『M』
蜘蛛→物見の使徒
犀→ライノセラスメタル
水溜まり→???
つまり、登場した敵キャラの事だったわけ。タイトルが思いつかなかったから。
護「そんな適当な。・・・・・・・・・・んっ?じゃあ、物見の使徒とあの水溜りは敵ってことか?」
――――――あっ!!ではまた。
護「おい!どうなんだ?誤魔化すな!!」

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