AM4:25 狼岩付近 総作チーム本部仮設テント

「なんだ……このエネルギー量は…」
「全てのメーターを振りきっている、まだ姿も現していないのに…これだけのエネルギーを発するなんて……」
 本郷と結城、そして敬介は目の前のモニターのエネルギーメーターを凝視していた。
「でも、改造人間でもない研究員に変化もないってのはどう言う事ですか……」
「当面から見れば、このエネルギーは無害だが…狼岩を掘り起こした瞬間、増幅されたエネルギーが大爆発を起す危険性もある。沢村君、アニーさん一旦作業を中断して戻って来てくれ」
『解りました、研究員達にもそう伝えます……ここからでも、岩が蛍のような光を放ってますよ』
 結城は通信機ごしの大とアニーに伝え、狼岩から離れるように言った。
「どうかしたんですか?結城さん」
 後ろから眠たそうな目を擦りながら、恋香が結城たちのいるテントへと入ってくる。
「恋香か、狼岩にあと一歩の所で強力なエネルギーが放出されている事がわかっ……恋香っ!その刀……」
「刀?名刀『正幸』がどうかしたんですか?」
 恋香自身気付いていないだろうが、彼女が持ってきた陽介の刀でもある名刀『正幸』が薄く青白く不気味な光を放っていた。
「刀が光っている……今までこんな事無かったのに…」
「もしかして、狼岩が…『榊』がその刀を呼んでいるんじゃないか?」
「………陣内 榊が、呼んでいる」


超弩級巡洋戦士ウラタンダー!
外伝 陣内 榊の章 〜狩人〜前編

 AM4:34 狼岩付近 総作チーム本部仮設テント

 狼岩が発光して居ると同時に、名刀『正幸』も発光している事に、戻ってきた大もアニーも驚愕していた。
「綺麗……」
「ああ、この光は狼岩の光と同じだ……」
 仮設テントのテーブルに恋香は、名刀『正幸』を置いてその周りに本郷、結城、敬介、大、アニーが囲んでいた。
「刀から発せられるエネルギーは、狼岩から発せられるエネルギー波計と見事に100%一致した…あの物質が、刀と同じ材質で出来ていると言う事は確かだ」
「恋香……何か感じるか?」
 本郷が恋香に聞くと、恋香は手を刀に翳して……目を閉じた。
「……」
 意識を集中させ、狼岩の発光が刀を呼んでいるいや、陽介を呼んでいるんではないかと恋香は思った、呼んでいるのは…我々が必死で探している『狼の戦士』…陣内 榊、その人ではないのか?
 もっと意識を集中させれば、榊の声が聞こえるのかもしれない恋香はそう重い一層強い念を刀に込めて見た。
 刀は恋香の念に反応するかのごとく、その輝きを増した。鞘に入っているのに刀の刃の形がはっきりと解るほどの輝きを…そして、恋香の中にそれは話しかけてきた。
“鞘を抜け……”
 その言葉だけが恋香の頭の中に飛び込んできた。

 バチッと言う音と共に恋香は吹き飛ばされ、傍にいた本郷は恋香を支えた。
「きゃ!」
「おっと、大丈夫か?恋香……」
「はい、何とか…」
 恋香は少しくらくらする頭に手を当てながら、本郷の手を借りて立ち上がった。
「それにしても、何が聞こえたんだ……」
 変わって、敬介が恋香に聞いてくる。恋香はすうっと深呼吸をすると……
「鞘を抜け……私が感じたのは、その声です」
「読めたぞ、狼岩を取り巻く岩盤は…その刀で言って鞘…本体は刃とする。刀の鞘を抜けば狼岩の岩盤は自動的に外れると言うのか?」
「そうか、だから本体まで後1メートルの岩盤を中々取り除けないのか…鞘を抜けか……」
 大はそう言うと、徐に刀を持ってその刃を引きぬいて見せた。
「何も起こらないわよ……」
「結城さん、狼岩のほうはどうなってます?」
「待ってくれ……いや、変化は見られない……刀は確かに抜いたのに」
「しかも、刀から輝きが失われて行く…これは、もしかして……」
 大は何を思ったのか、刀を鞘に戻すと恋香に返した。すると恋香の腕の中で刀は再び発光現象を見せた。
「多分、陣内家の血を引く者でしか狼岩の本体を出現させる事はできないのではないか?」
「……多分…そうだと思います…」
「恋香でしか、榊を助け出すのは不可能なのか」
「いつギャラクシアンが襲ってくるとも限らない、恋香……行こうっ」
「……はいっ!」
 恋香は刀を胸に抱いて……大とアニー共に狼岩の一番近くまで走って行った。狼岩の近くまで行く時、恋香の胸の鼓動は高鳴っていた。榊に会える……自分は知らない人物、でも追い求めていた人物に今やっと会えるのだ。
「陽介……待っててね、あなたのお父さんを助けてやるから」

 そして、恋香、大、アニーの三人は不気味に発光する狼岩の近辺までやって来た。恋香の手に持っている刀…そして狼岩は近づくに連れて更なる光を放っていた。
「アニーっ、結城さん達に映像を転送してくれ!」
「アニーにお任せっ!」
「恋香……頼んだよ…僕は君を信じているからね」
「ありがとうございます、沢村さん…」
 大はアニーに指示を出して、作業用のMSと作業員達を退去させて行った。
『恋香、何が起きるか解らないっ!慎重にやってくれっ!』
「解りましたっ……」
 耳に付けた通信機から結城の声が聞こえ…恋香はそれと同時に刀に手をかける。
「恋香っ!こっちは終わったぞっ!」
「こっちもOKよっ!」
 作業をしていた、大やアニーが恋香に終了の合図を出す…それと同時に恋香は手に力を入れて……刀を鞘から引き抜いて行った。
 重い…不思議な力が働いているのか、刀はさっきとはまるで違い、何かを拒絶するかのようにその刃を簡単には現してくれない。
「お願い……出て」
 そして、恋香は刀を徐々に鞘から抜くと狼岩の岩盤にピキッとヒビが入る。
「岩盤がっ!?」
 刃が現れて行くと共に、岩盤のヒビは大きくなり…刀が完全に鞘から抜かれた瞬間。
ビキッビキビキッ
 そして岩盤が崩れ出した時、恋香は刀を天に掲げると……
「割れる…岩盤がっ!」
「シャイダーっ!恋香ちゃんが!」
ズガァァァァーーーンッ!!
 アニーの声と共に、狼岩の岩盤は粉々に砕けて四方に散った。
「焼結っ!」
 “宇宙刑事シャイダーがコンバットスーツに装着できる所要時間はわずか1ミリ秒に過ぎないではその原理を説明しよう、バビロス号から放射されるプラズマブルーエネルギーを浴びる事でわずか1ミリ秒で焼結を完了させるのだ“
 コンバットスーツに身を包んだシャイダーは、岩盤の破片から恋香をバリアで守った。
「大丈夫かい、恋香?」
 恋香は岩盤の崩壊で腰を抜かしてしまったらしく、シャイダーに守られて呆然としていた。
「はい……大丈夫です…」
「よかった、それより恋香…君の読みが当たったな」
「はっはいっ!」
 恋香とシャイダーの目の前には、しゃがみ込み遠吠えを上げる体制の狼の形をした石造がそこにあった。
「あれが、狼岩……」
「はい…そうです、あれが…」
「でも、出したのは良いけど……この後はどうすれば…」
「それは…あたしにもわかりません…聞いてみます」
「ああ…でも無理はするな」
 恋香は、刀を仕舞って狼岩の近くまで寄ってくる。この中に…陣内 榊が封印されている……そう思いながら恋香は手を狼岩に掲げる。
 だが、傍にいたシャイダーに結城からの通信が入ってくる。
『沢村君っ!大変だっ!狼岩の出現する瞬間に爆発的なエネルギーが放射されてすべてのレーダー機器がショートしたっ!気になるのは、レーダーがショートする瞬間に何かがにレーダーに映った!』
「解りましたっ!アニーっ、バビロスのレーダーを本部に回してくれっ!」
「わかったわっ!……えっ…これ、何?シャイダー!バビロスのレーダーにギャラクシアンの大編隊がっ!!」
ドドーーーーーンッ!!
 激しい爆発音と共に、上空に轟音を上げて5機の飛行物体が飛来した。
「ギャラクシアンっ!!」
「恋香っ!」
 シャイダーは恋香の手を引いて、狼岩から引き離した。丁度その時恋香のいた地点にレーザーが撃ちこまれていた。
『ちっ!外したかっ…全機!フォーメーションに付けっ!輸送艇はギャラクシービーストを投下っ!岩と小娘の持っている刀を奪えっ!!』
『了解っ!』
 ギャラクシアン円盤の黄色い指揮官機から命令が下り、周囲の5体の戦闘円盤が陣形を取りながら飛行した。
「アニーっ!敵の狙いは狼岩と刀だっ!僕は狼岩を、アニーは恋香を頼むっ!」
「アニーにお任せっ!恋香ちゃんっこっちよ!」
「はいっ!狼岩をお願いしますっ!」
「解ったっ、さあ来い!」
 シャイダーは狼岩を奪取しようとする、ギャラクシアン円盤に単身立ち向かって行った。
 後ろから巨大な輸送艇から、何体もの極地対応戦闘員、ギャラクシービーストが海に投下される。そのギャラクシービーストは海中を泳ぎながら岸辺に上がり…シャイダーに襲いかかった。
「ちっ!ビデオビームガン!」
 シャイダーのビデオビームガンから光線が発射され、一体を撃破。だが、何十とその数は半端ではない。
「レーザーブレード!」
 シャイダーはレーザーブレードを光らせ、ギャラクシービースト軍へと対抗した。

「シャイダー大丈夫でしょうかっ!?」
「ええ、シャイダーはフーマを壊滅させた宇宙刑事よっ!そう簡単にはやられないわっ!」
「アニーさんっ!前っ!」
「えっ?わぁっ!」
ズーンッ!
 突然、戦闘円盤『トーラス』の一体が人型へと変形してアニーと恋香の前を塞いだ。
「ありがとう、恋香ちゃん…このよくもやってくれたわねっ!」
 アニーは尻餅をつきながら、人型形態のトーラスに向けて小型の銃『バードニアブラスター』の銃口を向け、そのビームをトーラスに向けて放った。
 だが、アニーの放ったビームはトーラスの装甲に傷を付ける事は無く…無常にも跳ね返された。
「うそっ!効かないっ!」
 驚きの表情を浮かべるアニーと恋香…トーラスのチェーンソーアームが回転し始め恋香とアニーに振り下ろされた。
「ライダーキーック!」
「Xキィーーーック!」
ガキャァァァン!!
 振り下ろされた瞬間、トーラスに何かが飛び掛り必殺のキックを浴びせていた。
「アニーさん、恋香っ!無事かっ!?」
「借りは返したぜっ!!」
「本郷さんっ!敬介さんっ!」
 恋香とアニーを救ったのは、仮面ライダー1号と仮面ライダーXだった…
「助かりましたっ!」
 その後ろから、ライダーマンも駆け付けて恋香を起した。
「恋香、そろそろ夜明けだっ!」
「はいっ!」
 ライダーマンから恋香は、ある物を渡された。それは陽介が『狩人』に装着できる変身ブレスであった。
 夜明けが近い……すなわち、太陽の出現と共に恋香から陽介へと戻るのだ。
「本郷さんっ!結城さんっ!こいつ、ダブルライダーキックを食らってもまだ起きあがるぜっ!」
 敬介の掛け声が聞こえ振り向くと、さっきダブルライダーキックに倒れたトーラスが立ちあがっていた。胸部装甲は二人の攻撃によりへこんでいた。
「私に任せろ……グレネードアーム!」
 1号ライダーとXライダーの前ライダーマンが現れ、右腕を新たなカセットアームであるグレネードアームに変えてその銃口をトーラスに向けた。
「ファイヤッ!」
ドゥンッ!
 ライダーマンの腕から、グレネードランチャーが発射され、トーラスのへこんだ部分に見事命中し爆発した。
ドゴォォぉーーーンッ!
 装甲は爆発により大破して、トーラスは轟音を上げて大爆発を起した。
『ギュルルル……』
 そしてトーラスの機能は停止して、その場に横たわった。
「よっしゃっ!さすが結城さんっ!」
「うむ……やくと君の考案した新しいカセットアームが今やっと役に立ったよ」
「よし、アニーさん私達はシャイダーの援護に向かいます…あなたと恋香は本部に連絡を取ってください」
「はいっ!」
 1号ライダーはアニーにそう言うと、アニーは恋香の手を引いて走り出した。
「皆さん、死なないでくださいっ!」
「解ってるよっ!!」
 そう言うとライダー達はシャイダーのいる海岸へと走って行った。
「恋香ちゃんっ、バビロス号から本部に連絡をとりましょうっ!」
「はいっ!」
 アニーの声に恋香は強く頷いて刀を抱えて全力で走り出した。


「シャイダーブルーフラーッシュ!」
ザシャァァァーー!!ズガァァァン!
 シャイダーのレーザーブレードがトーラスを切り裂く物の、ギャラクシービーストの大群を一人で相手をするのはさすがに難しい。
「ビデオビームガンももう弾切れか……キリが無いっ…バビロッ」
 シャイダーはバビロス号を呼ぼうとしたが、目の前にギャラクシービーストの爪がシャイダーを捕らえた。
「間に合わないっ!当たるっ!!」
「マシンガンアームッ!」
ズガガガガガガ!
 ライダーマンのマシンガンアームが、シャイダーに襲いかかろうとしていたギャラクシービーストを貫いた。
「仮面ライダーっ!!」
「シャイダーっ!援護するぞっ!」
 そこに、仮面ライダー達もようやく到着してギャラクシアンの編隊に立ち向かう事にした。
「シャイダーっ!バビロス号を呼んで、アニーさんと恋香を非難させてくれっ!」
「解りましたっ!」
 だが、バビロス号を呼ぼうとした瞬間…敵の指揮官機が彼等の前に立ちふさがった。
『ふふふ、役者はどうやら揃ったようだな……青い星のスーパーヒーロー達』
「その声は、ギュレルっ!!」
 Xライダーは敵のトーラス指揮官機から発せられた声の主に驚きの声を上げた。
「知っているのかっ!?敬介っ!」
「ああ、あいつは……オランダ支部を強襲した編隊の親玉だ…まさか今回もお前がっ!?」
『仮面ライダーX…君のデータは我等のデータバンクに入っている……私達はそれに相応しい相手を用意して来た』
「何っ!まさかっ!!」
『出でよっ!ギャラクシーモンスター!メタルキングダーク!』
 ギュレルのトーラスから発せられた声と共に、輸送艇のメインハッチが開き…銀色の液体が海に落ちて行った。
「あの液体金属かっ!?」
『青い星の技術には、ギャラクシアンも惚れ惚れする……G−クリスタルと言う高エネルギー集合体は、この液体金属と見事にマッチした……どうする、スーパーヒーロー達よ』
「くっ…ギュレルっ!!とうっ!!」
 Xライダーの怒りは頂点に達して…天高くジャンプした。ベルトから万能武器ライドルスティックを引き出し…
「X必殺キィィィーーーーーーーック!!!」
 ライドルスティックを使った空中大回転を利用して、威力を増したキックがギュレル専用のトーラスに突っ込んで行った。
ガキィィィンッ!
 トーラスは、そのキックを受け止め…
『ふっ、その程度か……仮面ライダーの力は…』
「くっそぉぉっ!いっけぇぇ!」
ガキィン!
 Xライダーのキックは見事に相殺され、地上に降り立った。
「ちぃぃっ!」
『ふふ、これで終わりか……それでは面白くない…』
ザバァァッ!
 海中から、巨大な銀色の巨人が現れ仮面ライダー達とシャイダーの前に立ちはだかった。それはかつて、Xが戦った銀色のキングダークだった…
 元はバダンという組織の作った人口液体金属が人の恐怖を形にする物だが、Xによりコアのドクロを破壊して、サンプルはS.U.P.オランダ支部に回収された物だ。
「なんて奴だ……」
『ふふふ、このキングダークは今度はG−クリスタルをコアとしている、そう簡単に壊れないのは宣告承知だよな……』
 メタルキングダークの額には確かにG−クリスタルが輝いていた。
「くそっ!バビロォォォーーーーースッ!!」
 シャイダーはとっさに、宇宙にあるバビロス号を呼び寄せた。
「一気にカタをつけるぞっ!シューティングっ!フォーメーション!」
 上空に、シャイダーの残像ができ……バビロス号が銃形態に変形して行き、シャイダーは狙いをメタルキングダークに向けそのエネルギーを一気に放った。
「ビッグマグナムっ!!」
ズォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!
 銃形態のバビロスから放たれたビームは、一気にメタルキングダークの体に命中した。だが、メタルキングダークは両腕でそのビームを受け止め、そのエネルギーをG−クリスタルに集中させて行った。
『ふふふ、スーパーヒーローのデータは全てあると言っただろう、無論…お前も例外ではない……宇宙刑事シャイダー…』
「何っ!」
 そして、メタルキングダークの腕のビッグマグナムのエネルギーが額に転移していく。
「危ないっ!みんなっ!避けろっ!!」
 1号の叫びと同時に、メタルキングダークの額からビッグマグナムのエネルギーを集中させた可粒子砲が放たれた。
ズギャァァァーーーンッ!!
 可粒子砲の光線が、地上を切り裂き…そして上空のバビロス号にも直撃し大爆発を起した。
ドゴォォォーーーーーンッ!!
「うわーーーーーーーっ!!」
 この爆発により、仮面ライダー達とシャイダーは大ダメージを負って…バビロス号は右ウイングから火を吹き…下降して行った。
「く…強い……」
「まだ…まだだっ!」
「俺達はここで諦めるわけにはいかないんだっ!」
「そうだっ!希望がある限りっ!僕達はまだ戦えるっ!!」
『ふっ…まだ立つか、それでこそ面白みがある!』
「バビロスッ!バトルフォーメーションっ!!」
 ギュレルの掛け声と共に再び、ギャラクシービースト達がヒーロー達に襲いかかってきた。だが彼等は立ち上がり…迫り来る敵に立ち向かって行った。

AM4:54 『天槍』付近

「今の爆発はっ!」
「ああっ、バビロスがっ!!」
 上空で右ウイングを炎上させながら落ちるバビロス号を、遠くから恋香とアニーは目撃していた。
 だがすぐに、バビロス号は浮上し変形して巨大ロボットと化した。
「バビロスが変形したって事は、ギャラクシアンの円盤の他に巨大な敵が現れたのね」
「そのようです……アニーさん、トラックから連絡を取りましょうっ!」
「そうねっ!」
 バビロスが向こうにいる以上仕方がない、恋香とアニーは『天槍』のある大型トラックへと走って行った。
 だが、地中を突き進む数体の影に二人は気付いて、アニーは恋香を押し倒した瞬間、紙一重でギャラクシービーストの爪が恋香の髪の毛を掠めた。
『キシャァーッ!』
「きゃっ」
「このっ!」
 アニーは銃で応戦して、一体倒したが…打撃を与えただけで奴はすぐにむくりと立ちあがって…恋香とアニーに襲いかかった。
「狙いは恋香ちゃんねっ!やらせないわよっ!」
「アニーさんっ!」
 恋香を庇うように、アニーは岩場まで逃げ…恋香を背に数体の敵に対抗した。
『クワァァァーーッ!』
 アニーは近づいて来た敵をキックで掃い、遠くの敵には銃を撃って応戦するが、アニーのどの攻撃も、奴等には効果が目覚しくなく…アニーに徐々に疲れが見え始めてきた。
「アニーさんっ!あたしも戦いますっ!」
「だめっ!あなたを守るってシャイダーに言ったからっ!私にはあなたを守る義務があるのよっ!」
 そう言うアニーの足や手には敵の攻撃でできた爪の傷が所々にできていて痛々しい、恋香は見るに見かねて、刀を抜いて前に出ようとしたけどアニーはそれを制した。
「私も…これでも女宇宙刑事でシャイダーのパートナーよ、彼と一緒にどんな修羅場も潜りぬけてきたのよ……簡単にはやられないわっ!」
「それでもっ!」
ドスッ!
 刃が肉を裂く鈍い音が、アニーと恋香の耳に入る……アニーは音のした方を見ると、恋香がアニーに襲いかかっていたギャラクシービーストに刀を突き刺して寸での所で助けたのだ…串刺しにされたギャラクシービーストはもがきながらその場に倒れた。
 恋香は刀を引きぬいて……
「あたしも守られてばかりは嫌ですっ!あたしも、あなた達と共に戦う同士ですっ!」
 恋香の闘志の満ちた眼差しに…アニーは始めてあった時の陣内陽介の表情を思い出した。すこし生意気なようで、キザで…それでも何かを守りたい、と言う闘志に満ちた瞳を…
「恋香……ちゃん…そうねっ!なら、恋香ちゃんはこっち、私はこっちを相手するわっ!」
「解りましたっ!」
 恋香とアニーは背中を合わせて、一体減ったギャラクシービースト達と対抗した。2対数体と形成はかなり不利、しかもアニーも恋香も満身創痍…だが、二人は互いにフォローしあい、確実に一体ずつ倒して行った。剣に不慣れな恋香も、諦めずにギャラクシービースト達に果敢に斬りかかっていった。
 そして、恋香の中で一瞬過った。あたしは無力じゃないっ!こうして…みんなと戦っているっ!陽介の言う通りあたしは一人じゃないんだっ!

バシッ!
「はうっ!」
 数体のギャラクシービーストも徐々に増えて、恋香達は結局追い込まれて行った。
「恋香ちゃん、何体倒した?」
「4体です……」
「私は…だめ、もう体力の限界……数えるのもいやよ」
 アニーは恋香と背を合わせて、体制を変えずにそう言った。恋香も息が上がり…体力の限界に達していた。
「あたしも……です。体に力が入りません」
 刀を杖代わりに…恋香は膝をついた……
「諦めちゃだめよ……私達がこんな所で諦めちゃ…」
「そう…で……す」
 意識も朦朧としてきて…恋香の胸がドウンと痛いくらいの強い鼓動が鳴った。
「うっ!!」
「どうしたのっ!恋香ちゃんっ!」
 心臓が焼けるように痛い……熱い鈍りが体の中を駆け巡るように、血が沸騰している感じがする。とても苦しい……あたしもここまでなの…
『キェェェッ!』
 恋香に向かって、一体のギャラクシービーストが爪を振り上げて襲いかかってきた。
「(だめっ、ここで……諦めたら、ここで…死んだら……陽介を…守りたい…のに)」
 ギャラクシービーストの凶爪が恋香の眼前まで迫り…恋香は朦朧とする意識の中脳裏
を過った言葉…
「(助けてっ!陽介っ!!)」
ガキィィィーーーーーーン!!
 だが、恋香の耳に鋭い金属音が鳴り響いた。恋香は…虚ろな瞳を開く……目の前が眩しい……けど、恋香の目にははっきりと映った。

「(これは……奇跡なの?)」
「………」
 東から指し込む太陽の光に照らされた、その少年は…黒光りする刀で恋香を襲う爪を受けとめて…弾き返した。弾き返した瞬間、そのギャラクシービーストは上半身下半身と寸断された。
 そして……陽光に照らされた、その少年は恋香の方を振り向き…優しい笑顔を見せると。
「……待たせたな、恋香」
「…陽……介」
 そうだ…これは奇跡…神様がくれた一瞬だけど…これは、あたしと陽介を一瞬だけ分離させてくれた奇跡なんだ。
「行くぞ恋香っ……あいつ等を一緒に蹴散らすんだ」
 陽介は恋香に、手を差し伸べて……
「……うんっ!」
 恋香は満面の笑みで、陽介に駆け寄って…抱きついた瞬間、陽介と恋香の体をまばゆい光りが包み込み……その中で、陽介は叫んだ。
「光波っ!招来っ!!」
 金色の光りを浴び……陽介は今、陽光の勇者へと変身する。

シューッ…
「うっ…凄い光りっ!恋香ちゃんはっ!?さっき一瞬、陽介君と恋香ちゃんが見えたような気が…」
 光がおさまり、アニーは目を擦りながら周りを確認する。
「あっあなたは……」
「……光波率100%装着…ウォーハンター『陣』、起動完了」
 アニーの目に飛び込んできたのは、赤黒い金属の戦闘強化服に身を包んだ陽介の姿があった。陽介は、手に拳を作る……パワーが体に注ぎ込まれてくる。
「陽介君?……陽介君なの?」
「アニーさん、待たせてすいません……」
 陽介はそう言いながら、背中に装備してある名刀『正幸』を抜いて構えた。
「陽介君っ、いまさっき恋香ちゃんの姿が一瞬見えたんだけど……彼女は?」
「恋香は今……俺の中で一緒に戦っています…それに今の俺は……ウォーハンター『陣』だっ!」
「ウォーハンター…『陣』!?」
 ウォーハンターは目の前に居るギャラクシービースト達に対して刀を掲げて…強化服の中で目を閉じ……精神を統一し始めた。
 そして、陽介は記憶から……舞との剣の特訓を思い出していた。
“……無心で、精神を集中させる…明鏡止水の心を持って…水の一滴を見出す……”
「明鏡止水の心……水の一滴を見出せ……」
ピチャン
「見えたっ!」
“一滴が見えたら、それに向かって一気に剣を振り下ろす!……”
「はぁぁっ!!」
斬ッ!!
 陽介は舞の教えの通り、水の一滴を見出してその滴目掛けて一気に刀を斜めに振り下ろす。すると、風圧か何かは定かではないが、取り囲んでいた数体のギャラクシービースト群を斬り捨てた。すべてのギャラクシービーストには獣の爪で引っ掻いたような傷痕を残して……
鉄血無爪っ!
「一太刀で、数体の敵を一気に……」
「対魔一神流剣術の奥義……鉄血無爪、あらゆる敵を見えない爪で引き裂く技…こいつ等には相応しい死に方だろう……」
 ウォーハンターは刀の血を掃うと、刀を仕舞い……
「アニーさん、ここで待っててください。俺はみんなの援護に向かいます」
「はっはい……」
 あまりの実力にアニーは目を丸くして頷いた。そしてウォーハンターは海岸の方へと走って行った。
「みんなが心配だ、急ぐぞっ!恋香っ!」
『うんっ、陽介っ』

 AM5:12 海岸 狼岩付近

 ここまで、1号、ライダーマン、X、そしてシャイダーは…ギャラクシービーストを40体、トーラスを4体落とした…だが戦局はまだギャラクシアンにあった。
「ちぃっ、敵を倒すほど増えて行くっ!」
「ああ、これではきりが無いっ!」
『どうした、それで終わりかっ!?ん?……トーラスの援軍か…さあどうする、スーパーヒーロー達よ…』
 ギュレルの嫌味な笑い声に誘われるかのように、上空からトーラスの援軍が現れた。
 バトルフォーメーションになったバビロスも、メタルキングダークとトーラス部隊の集中攻撃に倒れこんでしまい。シャイダーは再び外で戦っていた。
 だが、これだけの援軍をバビロス無しでどう戦えと言う……
「こうなったら一機ずつ確実に落とすしかないっ!行くぞっ!みんなっ!!」
「おおっ!」
「行くぜッ!」
「おうっ!……ん?あれは…」
 シャイダーは、海岸の岸壁の上に一人の人影を発見した。
「ラウンドトリップっ!」
 その人影は、敵に向けて鋭い刀を投げ付けた。円盤状に旋回しながらブーメランのようにトーラスの援軍に飛んで行き、その刀は一気に3機ものトーラスを斬り裂き、撃墜して刀の主に戻っていった。
「一気に3機もの戦闘円盤を……刀一本投げただけで…」
 その刀は主の手に渡り、それはライダー達の元へと軽快に降りたった。
「遅れましたっ!すいませんっ!」

 今、ウォーハンターとなった陽介の決戦が今!始まるっ!

後半に続く。

設定資料集

ウォーハンター『陣』(00式特殊戦闘機鋼)
パンチ力:10トン キック力:35トン ジャンプ力:250メートル 走力100m3秒 最大聴力60km 最大視力90.0
変身所要時間・原理
 陣内陽介が特殊戦闘機構に着結に要する時間はわずか0.5ミリ秒に過ぎなく、変身速度はスーパーヒーローの中でも最速。天槍の光波粒子コンバータから放たれる光波を体に浴びる事により、光波粒子の鎧が装着され陽介を『狩人』にするのだ。『光波招来』が発信コード
武装:名刀『正幸』
   ダブルカノン
   Gスナイパーライフル
流儀:対魔一神流
必殺技:鉄血無爪 その他
 陣内陽介が白狼の力を取り戻す為に、結城丈二と佐祐理に頼んで製作してもらい新西暦200年に正式採用予定される為の次期主力戦闘強化服候補に改良を加え、陽介専用にカスタマイズした強化服。シャイダーのコンバットスーツのノウハウも取り入れた物、当初は光波と言う新しいエネルギーの固定方法に手間取り、テストでは7分が装着限界だった。が何が働いたのかは不明だが、この事件を切欠に装着時間は無制限となった。狩人らしくスナイパーライフルを持つこともあるが余り使用はしない。ただ、あまりの性能で結城丈二はこのカスタム機を次期主力戦闘強化服候補からこれを外したのは言うまでもない……。


敵設定資料

ギャラクシービースト
体長:1〜1.5m 体重:32〜62k ジャンプ力:40m〜150m 走力:100m4秒 泳力:100m25秒
武装:ビーストクロー
   ビーストファング
   クロー魚雷
必殺技(仮)吸血
 アメリカでは通称『チュパカブラ』と呼ばれたUMAの正体がこれで、ビースト星に落ちたリトルグレイ型のヒューマノイド・エイリアンがそこの特殊な環境下で異常進化した物。牙は伸縮じざいで、動物の首を噛み動脈を通って脳まで達し生き血を吸う。爪の間には水かきもついていて、水中を自在に泳げるし柔らかい砂地や泥の中にも潜る事ができる。水中での戦闘では、その爪を魚雷状に飛ばす事も可能。

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