“剣は、心で振るう物……邪念、雑念、全てを捨てて無心になる。そうすれば見えない敵でも、どんなに強い魔でも……斬れない物はない”
 舞の声が陽介の頭を過る……『対魔一神流剣術』魔物と戦っている時使っていた剣術…陽介は教えられて解った、一緒に魔物と戦ったのに……陽介は舞の足を引っ張っていた理由が、はっきりと解った。
 そして、魔物に躯を乗っ取られて舞と戦った時……なぜ負けたのかも…
 心の若干な迷い……自分の心に少しでも迷いがあったから、負けたんだろう。
 だが、今は違う……俺は本当は強くもなりたくないし戦いたくもない、だが…守るべき者が出来たなら、話しは別だ……
 
 “弟を失い……左手首と心に深い傷を負った少女”
 “たった一つの嘘の為に、10年分の笑顔を代償に自分の力と戦う少女”
 そして……千年の呪いが生み出し、空に囚われつづけ…悲しい運命を何度も…何度ともなく…記憶に刻み込んだ…もう一人の自分。

 俺は、この子達を守りたい……それだけで俺は動けるし強くもなれる。自分に必ず来るかもしれない、悲しき運命も乗り越える事ができる。
 迷いなんて……ないっ!





 ウォーハンターは、波が打ち寄せる岸壁に到着する。浜辺では仮面ライダー1号、X、ライダーマン…そして宇宙刑事シャイダーが敵のギャラクシービーストと交戦していた。
 そして彼等を海岸で攻撃する巨大なる敵…メタルキングダーク。
「G−クリスタルか……少し厄介だな…ん?」
 ウォーハンターは何かに気付き上空を見上げた。
「ギャラクシアンの攻撃円盤…トーラスの援軍か……5機か…」
 空にトーラスの援軍を確認してウォーハンターは、ゆっくりと息を吐く。そして、目を閉じ刀を抜いて腰をひねって刀を構える。舞との特訓を思い出していた。
“時には……剣を投げる事も考える、でも投げる時も十分に精神を統一させれば、剣は旋回して…自分に戻ってくる……”
 精神を統一させ、剣を投げる両手に力を入れる。そして、左足を思いっきり踏み込んで全身のバネをフル回転させて、上半身の回転を使って一気に刀を投げ付けた。
「ラウンドトリップッ!!」
ジャッ!ギュルルルルルッ
 刀はブーメランの如く回転しながら5機の援軍を目指して飛んで行き…隊列をなすトーラスの1機目に命中して…真っ二つにしながら真中の指揮官機…そして3機目と一瞬にして斬る。
 刀は旋回しながら、ウォーハンターの手に戻ってきた。
「……対魔一神流剣術の技、ラウンドトリップは全てを切り裂く」
 そして、ウォーハンターは下のヒーロー達の元へと大ジャンプした。
スタッ
「遅れましたっ!すいませんっ!」
 ウォーハンターは、ダウン寸前のヒーロー達の元に降り立った。
「陽介かっ!!と言う事は、成功かっ!!」
「はい、光波固定率100%…今度は成功ですそれに今は、ウォーハンターです…」
「100%っ!?と言う事は……」
「ええ、この『狩人』の装着時間は無限と言う事です」

『ウォー…ハンター…だと!?何者だ、何者なんだっ!!リストにない新たなスーパーヒーローだと言うのかっ!?』
 ウォーハンターの出現と同じに、ギュレル専用トーラスが驚きの声を上げウォーハンターを凝視する。ウォーハンターは、やれやれと言った態度で…
「あんたが、敵の指揮官か……ならばやけに単細胞な奴だ…」
『なんだとっ!!』
「力とは、データでは出ないって事だ……リストに戦闘記録、データがないなら実力で来い……時間の無駄だっ!」
 ウォーハンターの怒声が海岸の岸壁に反響して場内に響いていく。
『減らず口を叩けるは今の内だっ!かかれっ!!』
 ギュレルの賭け声と共に、ギャラクシービースト群が水面から現れてくる。
「陽介っ!ギュレルとあのメタルキングダークの戦闘能力を侮るな……得にメタルキングダークは必殺技のエネルギーをそのままレーザーにして撃ち返す能力があるっ!」
「解りましたっ…みんなまだ戦えますか」
 その言葉に……全員は立ちあがり顔を見合わせると全員で頷く。
「よしっ!異星の単細胞どもに見さらしてやりましょうっ!データだけじゃ、俺達には勝てないと言う事をっ!」
「「「「おおっ!」」」」
 最後にウォーハンターも強く頷いて、ヒーロー達5人は襲い来るギャラクシービースト群の方を向き直る。さっきまで戦い、体力が限界にまで達していたライダー1号、Xライダー、ライダーマン、宇宙刑事シャイダーの4人に闘志が再び漲って…体力が回復されるような感覚を感じる。
「散っ!!」
 ウォーハンターの一声で、5人は散らばり…敵に突っ込んで行った。

「指揮官機は俺が落とすっ!」
『くっ!なめるなっ!』
 ウォーハンターは、刀を構えてギュレル専用トーラスに狙いを定め、大ジャンプをする。そして、ギュレル専用トーラスの頭上で刀を両手に持ち、落下速度を付けながら斬りかかる。
「兜割りっ!!」
ガイィィーーーーンッ!
『ぐぉぉぉーーっ!』
ズゥゥーーンッ!
 ギュレル専用トーラスは、とっさに人型形態に変形して海面に着地する。ウォーハンターの刀をアームで受け止める、だが技の重さにより足が地面に沈む。
 技の反動を利用してウォーハンターはトーラスから離れ、浅い海面に着地する…小型機と言っても、自分とは3〜4メートルもの身長差がある。だが、ウォーハンターは恐れもせず刃を横にして突進力を付けながら、トーラスの胸部に向けてその切っ先の強烈な突きを浴びせるっ!
「スティンガーッ!!」
ガィーーーンッ!
 だが、切っ先はトーラスの装甲に阻まれて気味のいい金属音を鳴らしただけで、傷一つも付けなかった。
『ふんっ!そんな鈍ら刀で、トーラスの装甲に傷がつくものかっ!!』
「どうかな、ハイタイムッ!」
 刀を下から遠心力をかけながら、トーラスの装甲を切り上げる技を繰り出し、その力で飛びあがり再び刀を頭上から叩きつける。
「兜割りっ!!」
『はははっ!せいぜいあがけっ!!』
「(相当な単細胞だ……)」
 ウォーハンターは仮面の下で低く笑うと、地面に降りたって刀を投げ付ける、ラウンドトリップを食らわせた。
『無駄だと言うのが解らんのかっ!!』
ベキッ!
 トーラスは腕を振り上げると同じに機械が壊れるような、鈍い音が鳴り響く。
 その間に、ウォーハンターは刀を受け止めると……前方に構え…
「お前は俺がバカ正直に刀を叩き付けていると思ったら大間違いだ、そんな事にも気付かないなら……俺には勝てない…」
ビキビキッ!ベキベキ!
 トーラスの技を食らった部分の装甲の所々にヒビが入り…刀で斬った切り傷が出来始めてきた。
『なっ、貴様っ!金属質の刀ごときで斬れるはずが無いのに……宇宙刑事の必殺技と原理は同じレーザーブレードなのかっ!?』
「やはり、単細胞にはそれを見定める能力もないか……この刀はレーザーブレードでもなんでもない…ただの刀だ…」
『……なんだと、た…ただの鈍ら刀一本で、トーラスを斬ると言うのかっ!?』
「技量の差と言うものだ……止めだ、斬滅する」
 ウォーハンターは刀を前方に振りかざして、明鏡止水の心…無心の境地になる…
「鉄の血が…無の爪となり切り裂く……」
 水の一滴に向かい……一気に斜めに振り下ろす。
「鉄血無爪っ!」
ジャィィぃーーーーンッ!!
 真っ赤な血に染まった爪の残像が、ギュレルのトーラスに襲いかかり、トーラスに爪痕のような巨大な切り傷を作り…機械部分がショートしてトーラスは大爆破を起す。
「…我が刃に一点の曇り無し……」
ズガァァァーーーーーンッ!!
「これで、指揮官を叩いた……後はザコだけだ…」
『急ごうっ!陽介っ!』

 ウォーハンターは刀を持ちかえると皆のいる所へと戻って行った。

「ライドルホイップッ!X斬りっ!!」
 最後のザコ一体をライドルで切り裂くXライダー…
「よし、ザコはこれで全部だっ!」
「ああ…残りはこいつだけか」
 ライダー1号が見上げる先の海には、メタルキングダークが仁王立ちしていた。
「みんな、ザコはこれで全部ですかっ!?」
「ウォーハンター、ああ…後はあのメタルキングダークだけだっ!」
「そうですが……あのメタルキングダークは必殺技のエネルギーをそのまま撃ち返す能力があるんですよね……」
「……ああ、しかもちゃっかりと自己再生機能もつけてやがる」
 まさに無敵……そう、誰もが思った。
「ウォーハンター、どうする…」
ブロロローッ!!
「お待たせっ、シャイダーっ!ウォーハンターっ!」
 その時、後方から…アニーの運転して来た大型トラックが現れた。
「アニーっ!大丈夫なのかっ!?」
「ええ…恋香ちゃんとウォーハンターが助けてくれたから……」
「アニーさん、これは俺の『天槍』」
 荷台には陽介専用にカスタマイズされたSF−TYPE98『天槍』が乗せられていた。
「ダメージも追ってないから、大丈夫よっ!あとブーツも向こうにあるから…それより、シャイダー…バビロスに応急処置は施したわ…あれで15分は十分動くし、ビッグマグナムもあと一発撃てるわ…」
「そうか、それで十分だっ!ありがとうアニーっ!」
 そして、シャイダーとウォーハンターは顔を見合わせて…頷きあうと…
「行きましょう、シャイダーっ!」
「ああっ!バビロォォォーーーースッ!!」
「来いっ!ロンギヌゥゥーーーーースッ!!」
 二人は右手を天高く振り上げる…
 ダメージは負ったものバビロスは起きあがってバトルフォーメーションへと戻…シャイダーの前に現れ…SF−TYPE98『天槍』は上空を切り裂きながら陽介の元へと飛びあがる。
「行くぞ、ロンギヌスっ!バトロイドモードに変形っ!ブーツ射出っ!!」
 ウォーハンターは、コックピットの変形パスワードを入れると、『天槍』は飛行形態から変形し人型の上半身を形成する。そして…後ろから『天槍』専用ブーツが飛んで来て…飛行しながら、ロンギヌスの上半身へと合体して行き…完全な15メートルの人型戦闘ロボットへと変形を果たした。
「よし、行けるっ!」
 ウォーハンターはコックピット内でそう呟き、狼岩に手を伸ばそうとしているメタルキングダークに向かって超高速の飛び蹴りを放った。
ガイィィーーンッ!!
 メタルキングダークはよろめいて、狼岩から離れた。
「親父は渡さないっ!ビームサーベル!」
ヴゥンッ!
 ロンギヌスは、肩からビームサーベルを抜き…メタルキングダークに対抗した。
『メタルキングダークは任せた、私達はライダー達とあの輸送艦を叩くっ!まだ何か出しそうな気配がするからな』
「解りました…こっちは俺が叩きますっ!」
 ロンギヌスの横を、変形して戦艦に戻ったバビロスがライダー達を乗せて飛び立った。
「さあ、お前の相手は俺だっ!!」
ジャインッ!
 ビームサーベルでメタルキングダークの腕を切る。だが、斬られた腕はすぐに再生した。
「ちっ!コアのG−クリスタルを叩かなければ……死なないか!」
 ビームサーベルをコアである、緑色のG−クリスタル一点に向けて一気に突き刺そうとした瞬間、メタルキングダークのパンチをまともに受けた。
ガィぃーーンッ!!
「ぐはっ!」
 機体は大きく飛ばされ、距離が取られてしまう。ちっ…狼岩がっ!?親父が……
 ロンギヌスとの距離が離れたメタルキングダークは、狼岩に手を伸ばそうとした。
「このっ!スペースレーザー砲っ!展開っ!」
 ロンギヌスのレバーを引くと、機体の胸部が変形してビーム砲の砲座が現れる。
「ファイヤッ!」
ズキュゥゥゥーーーーンッ!!
 砲座から放たれた、レーザーはメタルキングダークへの直撃をさけ、狼岩を取ろうとした腕を溶かして向こうの海に抜けて行った。
「よしっ!やっ…なにっ!?」
キュィィーーーーン!
 奴の溶けた腕は再生して、額にスペースレーザー砲のエネルギーが集中し始めた。
「直撃じゃなくても、可粒子砲が撃てるのかっ!!」
ビシュゥゥーーーッ!
「緊急回避っ!」
 ロンギヌスは放たれた可粒子砲を寸でで避けて、ビームサーベルで反撃しようと振り上げた。
ガイィィーーーンッ!
 だが、奴は一瞬の隙をついてロンギヌスに猛烈なパンチを浴びせた。
「ぐっ!ぐぁぁーーっ!」
“破損率45% 光波エンジンオーバーロード 3分間機能を停止します”
 ロンギヌスのコンピューターが、エラーを伝えるが陽介の耳には届かなかった。気絶していたからか……頭は朦朧としていた。

 その間にも、メタルキングダークは…狼岩を両手で持ち地面から引き抜き…自らの液体金属の体に埋め込んで行った。
ギュル…
 メタルキングダークは狼岩を体内で徐々に分解していき…その力を体の液体金属へと移行していった。

 ギャラクシアン輸送艇内
 ライダー達とシャイダーは、外のロンギヌスとメタルキングダークの戦いを見ていたが…ロンギヌスが倒れてメタルキングダークが体内に狼岩を埋め込んで行った
「狼岩が……食われる」
「ロンギヌスでもあいつに勝つのは、難しいのかっ!?」
「早く陽介を援護しないとっ!奴にやられるっ!!」
「今は、あの子を信じて……私達はここの動力室を破壊して、あいつの動きを止めなければっ!!」
 ヒーロー達は頷き会うと、輸送艇内の廊下を動力室に向かって走った。
「おっおいっ!!皆っ!メタルキングダークの様子がおかしいぞっ!!」


 メタルキングダークは、狼岩を体内で分解した後…その体内で何かが起こり始めていた。奴の動きは一時的に止まって
「くっ……」
 陽介はロンギヌス内で放心状態に陥っていた。
“諦めるな……陽介…絶対に、大丈夫だ…”
「……父さん」
 陽介の脳裏に、遠い記憶が蘇ってきた……
 浜辺に、背の高めの青年がいた……
 海を、見つめ……水平線より向こうの世界を見上げている。
 サングラスをして、後ろで、長い髪を縛った不思議な男……
“俺がこれから、お前等に迷惑をかけるかもしんない…すまんな”
 笑顔で…すまなそうに謝った。
 彼の名は陣内榊である……
“心配すんな、俺はすぐに戻ってくるっ……だから、まだ死ぬなっ”
「父さんっ!!」
カッ!!
 メタルキングダークの額のG−クリスタルが発光して、緑色の光が放たれている。
 その光に陽介は気がつき、ロンギヌスのモニターから確認していた。
「G−クリスタルが光っている…この光、懐かしい感じがする」
 この光を陽介は白狼だった頃に一度見ていた……自分と対となる月の光を…
「黒狼……」
 G−クリスタルの発光と同じに、メタルキングダークの額の液体金属が集合し形を形成し始めて行った。
 メタルキングダークの体から生まれ出るようにその形は段々と人型の戦士へと段々と変わって行った。その戦士は……今まで陽介が捜し求めていた戦士の姿だった。
 その戦士はベルトにメタルキングダークのG−クリスタルを媒体として自らの体を形成して咆哮を上げた。
「ぐぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

 その咆哮は輸送艇のヒーロー達にも聞こえていた。
「黒狼…やはり、あの石には榊が眠っていたのか……」
「いえ……石の中には生命体のは反応はありません……言って見るなら、陣内 榊の思念ですか…それがメタルキングダークのG−クリスタルを媒体として液体金属で自分の体を作ったと僕は思います」
「ならば、あれは……榊であって、本当の榊ではない」
「言って見るなら、メタル黒狼です……」

 シャイダーの言った通り、銀色の体はG−クリスタルの力で自らの色を取り戻し…所々に銀色のストライプのある…メタル黒狼へと変身を果たした。
「……この金属の体も悪い物じゃねえな…」
 メタル黒狼は、そこから倒れているロンギヌスを見ると……
「何寝てやがる、まだ敵は倒れていないぜ……陽介」
「うっ…父さんなのか、本当に…」
 ロンギヌスのコックピット内で陽介はその姿を確認して驚愕していると…
「ちっと、不恰好だが……お前の親父だぜ…」
「そう……なのか…」
「感動の再会は、後だぜ。このデカ物……実はこの石の力でその姿を固定していただけだ…真のコアはもう一つある……」
 メタル黒狼は自分のベルトのG−クリスタルを指差して言った。
「ついで言うと、こいつの束縛が無くなったから……自己再生はしない。後はコアを叩くのみだ……俺が体を叩き割ってコアを出す…お前は、そのコアを貫けっ!」
 メタル黒狼の言った通り…メタルキングダークの液体金属は溶け始めて、もがき苦しんでいた。
「……わかったっ!」
 陽介は、頷くとロンギヌスのレバーを引っ張り…ロンギヌスの巨体を起き上がらせる。

 メタルキングダークは、頭に乗っているメタル黒狼のG−クリスタルを奪い取ろうと頭に手を伸ばすが、メタル黒狼はジャンプしてかわすと…メタルキングダークから奪った液体金属の固まりを、手の中で変形させて行った。
「出でよっ!絶剣オリハルコニアっ!!」
 その液体金属はメタル黒狼の手の中で変形して、巨大なる禍禍しい剣を作り出した。
「食らいやがれぇぇー!!」
バシュゥゥゥーーーッ!!
 メタル黒狼はその剣を伸ばして長刀状にするとメタルキングダークの溶けそうになっている頭に斬り付けた。
 その剣はメタルキングダークの体を断ち割って、抜けて行った。そして心臓部らしき部分には、メタルキングダークの真のコアらしき球体が浮いていた。
「今だっ!撃てっ!!」
 メタル黒狼の合図と同じに、ロンギヌスはスペースレーザー砲門と同じに、ウイングを展開させて、エネルギーをチャージする。
「座標軸固定……ターゲットロック、チャージ完了、最終接続…オールグリーン!食らえっ!メギドの矢っ!!」
ズキャァァァーーーーンッ!!
 スペースレーザー砲から赤い光の矢が放たれメタルキングダークのコアに見事命中した。
ズガァァァンッ!!
 矢はコアを完全に破壊して、メタルキングダークは完全に溶けきり……液体金属の山を形成させた。
「一丁上がり……上手くいったよ、父さん」
「よくやったぜ、陽介…」
 着地したメタル黒狼は剣を肩に置きながら陽介を誉めてやる。
「父さんっ、今本郷さん達が…あの輸送艇内に侵入しています。援護に向かいましょう…」
「いや、その必要は無いぜ……」
「えっ?」
 メタル黒狼の自身に満ち溢れた発言の後、上空に青い光の筋が見えた。それはバビロスから放たれたビッグマグナムだった……
「彼らはすぐに戻ってくるぜ」
「はい、そのようですね」

 陽介は、変身を解いて…ロンギヌスのコックピットから出ると、真っ先にメタル黒狼の方へと向かった。
「父さん…」
「…おっと、抱き付くとかはなしにしてくれや……」
「さすがに男にそんな事したら鳥肌がたつ……」
 メタル黒狼の言葉に陽介は半分呆れながら答えた。
「口が減らないのは、白狼と同じだな…」
「あんま思い出させないでくれません……白狼の事は…」
「……大きくなったな」
「ありがちだが……まあ、ここまで立派に育ちました」
 この性格といい、間違いない…この人物は陣内榊だ…そう陽介…恋香は思う。
「母さんはどうだ?」
「相変わらずだ……だけど、ちと人恋しい時期らしい」
「ふん、お前と同年期のガキを食ったりはしてないだろうな……」
「それはご想像にお任せしよう」
「なんだ、親父の面前で隠し事か?かなり気になるぞっ!」
 陽介ははははっと、笑いながら…
「まあ、手出すまでには至っていないようだ……安心してください」
「そっか、息子のお前にも手を出してそうだし…お前あの時の俺そっくりだからな」
「……笑えない冗談はよしてくれよ、父さん…」
 ちっと表情をしかめて、陽介は答える。その内…メタル黒狼はその体を人間の姿へと変形させて、陽介が夢の中で見た、榊と寸分違わない姿と化した。
「すまんな……まあ、今の俺の体じゃあいつを抱きしめる事はできないがな」
「思念体か?」
「ああ……お前の思念の中にいるお嬢さんと同じような物だ」
「恋香の事…気付いていたのか?」
「彼女を呼んだのは俺だからな……まあ、彼女だけだったな俺の声が聞こえたのは」
「そんな事はないさ……名雪にも聞こえていた…」
「名雪……」
 榊の脳裏に、自分の娘でもある名雪の映像が蘇る。もっとも…彼が覚えているのは赤ん坊の頃しか頭にない。
「やっぱ、俺に会いたいと思っているのか?」
「当たり前だろう……名雪はあんたの娘だからな…俺以上に勘が働く、だから俺や舞さんには聞こえない声が聞こえたんだ」
「そうか……名雪にも会いたい所だが、俺は今は金属の体…本当の体を見付けるまで、俺は会えない」
「なぜだ…せめて、一目会うだけでもいいだろうっ!」
「だめなんだ……今の俺は危険過ぎる…間違って名雪を殺しかねない」
「なんだって?」
 父親の思いがけない言葉に陽介は困惑してしまう。
「どういう事だ?…なぜっ、名雪を殺さなきゃならないっ!」
「名雪だけじゃない、人間の可能性……白き力の継承者全部に当たる…お前だって例外ではない……」
「なんだと……それは、どういう事だ…」
「あの時、俺は異空間で中間達とゼストを葬り…次元を元に戻すのに、アグルストーンとミレニアムストーンの全ての力を使っちまったせいで……俺はアグルストーンと共に3つに分離した…その時……俺は見てしまった。人間の行く末が…このままだと、人間は自らの可能性で自滅する……と」
 困惑する陽介をよそに、榊は虎視眈々と説明した。
「この地球上の遥か昔に……白き神と黒き神が存在した…白き神がそもそも生命体に知性を与え…進化を覚えさせた存在だったが、黒き神は進化の行く末は自滅だと断言して生命体の進化は危険を伴うと強く批判して…挙句の果てに白き神と争う結果となり……結局黒い神は白き神に葬られた……」
「それで、どうなったんだ?…その後」
 榊はその後…陽介に人類が驚くべき変貌の時を迎えているという事を教えて行った。

 白き神は……生命体に知性と進化の種を与えた……けど、白き神はもし自分の考えがもし間違っていた場合、黒き神の言った通り…万が一の場合、進化の末路が存在するのとしたらと考えた…それが、自滅かはたまた…宣戦布告か……と考えて…
 進化の種をウイルスと考えて見ろ……それが自分たちにとって害を与える存在になった場合…白き神はそれに対抗できるワクチンを予め用意しておいた…ワクチンは、それが発動した時の為に同じに発動するように…黒き神の『生命』を媒体として球状の宝石状にして、身に付けたものをワクチンへと変えてウイルスを滅する役割を与える。
 そのワクチンの名は……『アグルストーン』
 ウイルスの方は…その生命体の『可能性』という物を信じ…間違った進化が起きない事を信じて…白き神が自らの『魂』を媒体として、進化が促進するようにした。
 そのウイルスの名は……『ミレニアムストーン』

「それじゃあ、俺が白狼になったのは……」
「ああ……、ネメシスがミレニアムストーンを間違った使い方をした結果、白狼のような巨悪の堕天使に進化してしまった…だが、白狼は陽介を使ったから良かったのか、着実に自らの間違いに気付き始め、陽介と分離した後…異空間では、俺を助けて死んで行ったよ」
「……そうか、白狼が…」
 あの悪の天使が自分の父親を助けて死んだと言う事が信じられなかったが陽介なら解った……白狼と分離した時…『もう…私には戻るなよ』と言う声が聞こえた気がしたのだ。
 最も、2歳の頃の出来事で記憶はあいまいだが……
「だから、俺は二つの石を合体させて…黒狼X3になれてゼストを倒す事も出来たのかもしれない……ありがとうな…陽介」
「礼は白狼に言ってくれ……だが、それでなぜ…父さんが人間の可能性を殺そうと…」
「さっきも言ったと思うが、アグルストーンは元々白き神が作り出したワクチンだ、ミレニアムストーン同様の事が起きても不思議はない」
「まさか、白狼と同じように……アグルストーンも悪に染まる時が来ると言う事か」
「俺は3度…黒狼の『邪悪なる姿』になった事があるようにアグルストーンにも悪になれる可能性が無い事はない…だが、今回の場合は異空間の崩壊の際分離したアグルストーンは間違った事を俺に見せた……『人間の可能性はいずれ破滅を引き寄せる…可能性を持つ人間を殺せ』と…」
 陽介の表情が次第に固くなっていった……それもそうだ、昔自分がなり大破壊を起した存在に今度はその父親がなるのだから…
「俺は、決して人の可能性が悪いとは思わない…俺が見た事は間違った答えだって事も解っている……だから俺は思念体を、『心』『技』『体』のアグルストーンの欠片にそれぞれ埋め込んだ…だが、『心』に比べて、『技』や『体』へ埋めこまれた思念は僅かだ…もう、『体』は動き出しているのかもしれない…」
「何だって、どうやったら止められるんだ!?」
 陽介は縋るような思いで、榊の胸倉を掴む。榊は、自分の手の平から青い石の欠片を出し陽介に手渡し…
「これを持って行け、俺の『技』のアグルストーンだ……」
「『技』のアグルストーン…これをどうすれば」
「これと『体』『心』の3つを揃えて一つにすれば、俺は全てを取り戻して…自分を取り戻すと同時にその衝動も治まるだろう……暴走が始まった『体』や俺…『技』は倒せば、アグルストーンに封印されるが…『心』が暴走した場合は何をやっても無理だ…強制的に『体』と『技』と一つになり…完全なる悪の姿となるだろう…そうなった場合…手の施しようは無くなるだろう……」
「そんな事って…」
「俺もあと時間は残り少ないという事だ……案ずるな、封印さえしちまえば少しは時間を稼げるし……俺はお前ならやれると信じている…まあ、俺もその為に少しは協力するがな」
「なら……SUPにっ」
 陽介の誘いに、榊はびしっと手の平を上げて…
「だめだ……俺は影ながらでしか応援できない…それに今更どんな面見せて彼等と協力できる……」
「………そうか」
「お前の力を俺は信じている……俺を助けてくれるのを…」
「……父さん、ああっ!あんたは俺が助けてやる…その時は、母さんや名雪や舞さんと会ってくれ……」
 陽介の目に映る闘志に榊は以前の自分を重ねていた……ふっ、こいつと入れ替わりの立場に行くとは俺もまだまだ青いなと、榊は思った。
「ああ……ん?」
 榊は上を見上げると…上空の雲を掻き分けてバビロスが現れた、さっきの戦闘で完全にギャラクシアンの部隊は壊滅させて帰ってきたようだ。
「俺の仲間だ…何とか日本にギャラクシアンは入れないですんだようだな」
「それが、今の敵か……」
「ああ、今度の敵は…宇宙規模で地球に襲いかかってくる…」
「……虚空からの使者か…解った…それだけ解れば」
 そう言うと榊は手に持っていた液体金属の剣を変形させてバイクの形にする。絶剣オリハルコニアを変形させた専用マシン『メタルソーダー』だ。
 メタルソーダーに榊は乗り去ろうとすると陽介はそれを止めた。
「父さん……行くのか?」
「今更どの面下げて彼等に会えば良いのかわからねえからな…まあ、気付かれたんならよろしく言っといてくれ……」
「……解ってる…あんたは必ず俺が助け出す…」
 陽介はアグルストーンの技の欠片を見せて、言い放つと榊は微笑んで…陽介の頭を撫でると…
「………じゃあな」
 それだけ言い残し、メタルソーダーを発進させて浜辺から離れて行った。
 榊が自分の頭に乗せた手には、人間の温もりが確かに存在したと陽介は感じた…

 しばらくして浜辺にバビロスが降りたって、ライダー達と宇宙刑事達が陽介の元へと走り寄ってくる。
「陽介っ!やったのか…」
「はい……父さんがいなかったら、危なかったけど…」
「でもあのメタルキングダークの弱点に正確に矢を当てるのは難しい事なのに、良くやったぞ…陽介」
「……ありがとうございます」
「陽介……榊はどうしたんだ?」
「父さんは…もうここから立ち去りました…」
「そうか、あいつには色々聞きたい事があったのにな……」
 本郷達ライダーにとって榊は大切に育てた息子のような物、そしてライダーの名を受け継がせた……張本人達である。心配するのは当然だ。
 だが、今はもっと重要な事があると、陽介は思い出して…
「皆さん、その前に聞いてください……父さんから聞いた、深刻な事態です」
「深刻な事態……どういう事だ?」
 陽介はさっき榊から聞いた事の全てを本郷達に話してやった。榊の身に起こり得る自体とその危険性である。
「そうか……榊にそんな事が…」
「光と闇の戦いか、SUPの資料室の文献にはそんな物は乗っていなかったな…」
「はい……それが大元なのですから…」
「人の可能性を殺せ……か、それってここ最近現れている『アンノウン』という謎の超越生命体と特性が似ているな……よし、それなら陽介…君はSUP諜報部へと入れっ」
「えっ…諜報部と言うと、この世界の怪奇現象の調査や工作活動……また新たに出現したスーパーヒーロー・第三勢力の内定調査が主の部ですよね」
「ああ……君の実力は、まさにSUP五本の指に入るくらいに強くなった。そしてその冷静さ…まさかの時のとっさの判断力は私達も目を見張る物だ……それに、諜報部の方が自由にアグルストーンの捜査もできるだろ」
「……結城さん」
 陽介は、自分の目的がようやく見え初めて嬉しそうにガッツポーズを取った
「手続きの方は、私がしておこう……勿論、4人でな…」
 その4人と言うのは、陽介と佐祐理…舞にそして……恋香の事であろう…彼女等を守りたいという事は山々だが、陽介はいつでもこの3人と一緒であった。得に恋香は…
『いつでも、あたしは陽介と一緒だよ……』
 彼女は頼れる…最も信頼できる仲間である。
「あ…ありがとうございますっ!彼女達がいれば心強い……」
「よし、陽介にこれを与えよう……諜報部と言ったらこれだろう」
 結城はそう言うと、陽介に一つのサングラスを渡した。それは、榊のしていたサングラスと同じ形をしていた。
「陽介、これから色々困難が付き纏うかもしれないけど…それに負けない正義感を持っているんだ、今の私達に出来ない事を君がやり遂げてくれ」
 本郷は陽介の両肩を叩きながら助言をくれた……結城や敬介…大やアニーも頷いてくれた。陽介は、彼等に敬礼すると…
「了解……SUP諜報部所属、陣内陽介三等少佐…コードネーム『狩人』…この任務…了解しましたっ」
 そして、そこにいたヒーロー達も陽介に敬礼する。

 皆それぞれ、うんと頷くと……陽介はサングラスをかけて…大海原の水平線を見つめた。
「恋香……これから大変になるけど、お前は頑張れるか?」
『うん、陽介と一緒なら頑張れる……』
「そうだな…」

 この大海原をギャラクシアンから守りとおした、戦士たちは思う……これから、子の日本は再びあの時のように、極東内乱が勃発するに違いない…
 だが、どんな敵が現れようと……彼らは決して諦める事はなく、戦いつづける。

 守るべき物がいるならそれで強くなれる……

 今日のギャラクシアンの強襲は新たなるスーパーヒーロー、ウォーハンター『陣』…そしてメタル黒狼の活躍により何とか食いとめる事に成功した。だが、彼等だけでこの脅威に勝てたとは思わないで欲しい。仮面ライダー達や宇宙刑事達の協力もあり……月代恋香がいなかったら乗り切れなかったかもしれない。
 そう……彼らは一人で戦っているのでは無い事を改めて感じられる事件となった。

 なお、今回の作戦後にSUPに登録されしメンバー

 SUP諜報部配属予定
陣内陽介三等少佐:コードネーム『ハンター』
倉田佐祐理一等中尉:コードネーム『プリンセス』
川澄 舞二等中尉:コードネーム『ナイト』
月代恋香一等少尉:コードネーム『月の裏』

 新規配備ヒーローOrロボット
ウォーハンター『陣』
SF−TYPE98『天槍』+ブーツ

 なお新規に捜索手配指定される人物

陣内 榊:仮面ライダー黒狼

     …諜報部内偵調査より報告。




 エピローグへ…


設定資料集


SF−TYPE98『天槍(ロンギヌス)』カスタム
別名:ロンギヌス
全長:20.4m(戦闘機時)16.3m(バトロイドモード)
重量:17t(戦闘機時)20t(バトロイドモード)
翼長:15m
動力:光波粒子コンバータ
予想最高飛行速度:亜高速
武装:40ミリ機関砲×2
   ミサイル×10
   スペースレーザー砲×1
   ビームサーベル×2(※バトロイドモードのみ)
必殺技:メギドの矢(スペースビーム砲から発射される光の矢)
    カイザーファング(スペースビーム砲から放たれる狼の光線)
    スパイラルファントム(戦闘機時に発光しながら突貫する技)
新西暦198年正式採用された、98式特殊制空戦闘機『天槍』を陽介専用にカスタマイズした機体で、機体性能は従来の天槍の2倍以上の性能を持ち光波粒子コンバータを動力源として、戦闘機時には亜高速まで加速が可能と言われている。人型形態になる為のプラスパーツ、ブーツはSUP極東支部から射出されて、空中で変形合体する。人型形態でも宇宙使用可能である。かなりの不可が人体にかかるがウォーハンターだからこそ操縦できる機体となっている。
(モチーフはやっぱり、マクロスのバルキリーです(笑))

後書き

 メタル黒狼の設定は、エピローグで出しますっ!陽介をどうキザにそしてかっこよく出そうか少し手間取りました。でも最後ら辺は恋香の出番が少なくてめんご…
 さて、今回の外伝はどうでしょうか……結構渾身の力込めてやったつもりなんですけど……でも、私の実力はここまでが限界かな……

 でも、本編ウラタンダーに出す敵が結構多い、しかもウォーハンター自身も出演すると言う事で、設定からしてかなり大きくなりすぎる可能性が出てきましたので……
 本編を少し削ると言う意味で……この外伝をまたシリーズ化する事にします。
 なお、それに出すギャラクシアンの敵も決めます。
その名も…

ウラタンダー外伝…
機動狩猟者
ウォーハンター『陣』

 竜さんいかが?
 独断ですが……ゆるして…
ではっ!



ずいぶんと書き忘れてござったが、当然OKですよ・・・と言うか、すでに10話まで行ってる・・・わはは。
これの掲載当時、書き忘れていたことを、ご容赦ください。
シュワッチュ!!
2003年6月某日追加 by浦谷竜蔵

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