プロローグ
すべては、ある種族同士の争いが引き金だった。

人ならざる者達の衝突…血を求める者と獣となりし者の戦争。吸血鬼と獣人の全面戦争…その戦いは、数で勝る獣人に対して吸血鬼が取った日中の奇襲で、痛み別けにはなったものの、獣人で一番強いとされる種、龍人族の全滅により、吸血鬼の勝利として幕を閉じた。

100年も続いた戦争は終わり、奇襲を受け敗戦した獣人の生き残り達は…この屈辱的な敗北から、戦争が終わっても獣人は吸血鬼を事を憎んで…その後も吸血鬼と獣人の小競り合いは、何度も続いた。

思えば、戦争の終わりを告げる、生き残った獣人達への見せしめに死刑にされた最後の龍人族の一人が言った言葉が、生き残った獣人達に火をつけたのだろう。

「生き残った我が同胞達よ!この敗北は、我等にとって最も汚点であり…屈辱的な敗北である!いや…獣人達よ、我等は決して、敗北したわけではない!
いつか、吸血鬼共に裁きの鉄槌を下し!我等獣人達にとって栄光の日が必ず来るだろう!
我は獣人最後の龍として、我は死して…同胞達にリベンジの炎となる!
同胞達よ、わが命の炎を…受け取れ!」

 その言葉の後首を跳ねられた龍人の体が…火の気のないにもかかわらず炎が出て…燃えたと言う。

やがて龍人の言葉に獣人の吸血鬼に対する恨みは、呪いや怨念となって、悠久の歴史の流れに乗り。

時は過ぎ、1998年……


吸血鬼の血を引く物達と獣人の恨みを受け継いだ者が再び衝突する。


鍵爪
 第一話 『侵入者』

「はっ!」
見苦しい夢を見て、俺は目を覚ました…ここは俺の家……俺の部屋の天井。

ちゅんちゅん

小鳥のさえずりがする…もう朝だ、なん何だよ、今の夢……。訳の解らない化け物同士の戦い…凄まじい数の化け物の激突だった、まるで戦争だ…。血が血を削るような、生々しい光景だった…
全く朝っぱらから、夢実が悪いせいで…学校へ行く為に起きる時間かなり早い。
確か、今日は智弘叔父さんの養子で、うちの会社にした新入社員の人がこの家に来る予定となっていたな。
俺はまだ覚めきっていない頭をかきながら、そのことを考えていた。確かその人、俺の実家である屋敷の隣に一人暮らしをしてたらしく、智弘叔父さんの養子の人で…会社が近くなるこの家に引っ越して来るんだよな。
俺は、考えながらベットから起きあがり、階段を下りてキッチンへと向かった。

「あっ智也(ともや)さん早いですね」
「おはよう、真知子(まちこ)さん…どうも夢見が悪くて…」
佐倉真知子さん、俺達浅倉の分家筋に当たる家柄の人で、死んだ母さんとは仲が良かった人だ…俺が住んでるこの家の家主でもある。
まだ少女のような幼い表情を残しながら34歳で13歳の子持ちだ…旦那さんは要るが単身赴任中で外国にいると言う。
「あら、悪い夢を見たんですね…」
俺が親父達を亡くした時もこの真知子さんが優しく慰めてくれて、俺が浅倉の屋敷を出るといった時も、彼女はこの家に暖かく招きいれてくれた。
 今ではもう、彼女が俺の第2の母親であり、よき理解者でもある。
「また…お父様が?」
 目覚めのコーヒーを俺の前に置き真知子さんは聞いてきた。
「いや、親父の夢は最近になってから見てないよ。なんて言うか、迫力のある映画の中に自分が引き込まれたような…そんな感じ」
「どんな映画だったんですの?」
「うーんなんて言うか、中世ヨーロッパの古い時代にタイムスリップしたような…」
「タイムスリップですか?」
 うーんと、真知子さんは指を唇に当てて考え込んでいるしぐさが可愛い…
「私、中世ヨーロッパの町にいつか旅行に行って見たいなって思っていたんですの、ローマとか…」
「確かに綺麗な街の風景だろうね」
 考えて見ると、真知子さんになんだか、かなり似合いそうな風景だと思う。でもオレが見た夢はそんな夢じゃなかった、何かと何かの大群がぶつかり合い…生々しい狩りの様な大戦争だった。

あ、そうそう俺は浅倉智也(あさくらともや)、16歳の高校1年だ…

俺のうちはお爺ちゃんの世代から続いた名家で、いまや日本の何処に行っても知らない者は居ない、大企業浅倉グループの会長でもある親父を持つ…が、2年前、謎の事故で親父と母さんを亡くしてから…俺は日本の大企業浅倉グループの若き会長!…てなわけにはいかないだろう。
今は叔父さんで、親父の弟に当たる智弘さんが会長を務めている。二年前の時はショックで眠れなかったが、真知子さん達のお陰で、今を楽しくやっている…だけど親父達が死んだあの事故でひとつだけ謎なことがある、親父の死体がどこにも見つからないということだ。
警察は一説では熊か何かの猛獣が死体を持ち去ったのではないかと言う人もいる。雨でスリップして崖から転落事故で死体が見つからない…もしかしたら、親父は生きてるかもしれないと思いたくなるが…
「智也さん?」
 急に真知子さんに呼ばれて初めて俺がうあの空になっていた事に気づいた。
「わっ!まっ真知子さん」
「わっ、じゃないですよ、早く朝ご飯を食べないと遅刻しますよ」
 時計を見ると、俺が起きた頃よりかなり時間が経っている。
「あっああ!もうこんな時間だ!すいません、トーストだけにします」
「智也さん、今日は午前中ですよね」
「うん、今日は終業式だけだから」
 と言うのも、次の日から夏休みだ…
「ならよかった、お昼は今日は大目に用意しますから」
真知子さんが焼いてくれたトーストを口に押し込めコーヒーで流して、そのまま学校に向かう事にした。


終業式
校長の長ったらしい話が体育館内に続いた。俺は名家で誰でも知ってる浅倉のぼんだが、一般の学校に行くのには、親父や母さん、強いては智弘さんも了承してくれたのだ。
 まあ、どこぞのお坊ちゃま校よりは、庶民の方が学ぶ事はたくさんあると踏んだのだろう…
でも夏なのにこんな暑っ苦しい空間で校長の長ったらしい話を聞いてなけりゃならないのは嫌気が差す。
そんな校長の話にも4週間から断続的にこの町で発生している通り魔殺人事件の事について取り上げられた、この街は浅倉グループの本社ビルもある事で…街自体が浅倉に支配されてると言っても良いだろう。そんな街でこんな物騒な事件が起きるなら、智弘さんも警察を通じて結構事件の事とか把握してるかもな。知ってる所では今現在の被害者は、9人であることだけだ。
そして、俺の学年のD組の美村奈美と言う少女が行方不明になった事件も取り上げられた。家出をしたとも考えられるが…誘拐か、遭難か、今も近くの裏山で探索されている。あの事件のこともあるが、俺には関係ないだろう。
そこは熊も出るらしいく…そこの近隣の車道の崖から親父達は車で転落死したのだ。
とも角、そんな物騒な山だから近づくのは危険だと言うことがしつこく言われた。この裏山はある樹海につながっていて、方位磁石もきかないし一歩間違えて入ったら、生きては戻ってこれないところなのである。
だがそんな山の頂上にも神社があり、その裏に『勇者に切り落とされた鬼の手』のミイラが神として祀られている。俺は一度も見たことがなく、一度は見てみたいと思う。熊の手とかそういう落ちが付くとは思うが。



やっと長ったらしい終業式が終わり長い夏休みが始まった。暑く照りつける太陽が空で忌々しく輝いている…、俺は夏ってのが苦手だったが、夏休み自体は好きだった。
「浅倉くん!」
 帰宅途中、俺の後ろから声がして振り返ると…そこには、亮二(りょうじ)の姿があった。
「亮二、どうしたんだ?慌てて…」
「うーんそうだね、暇そうだから一緒に帰ってやろうかなって」
「俺は何時もそんな顔に見えるのか?」
 この虚弱そうで、俺より背の小さい奴は俺のクラスメートでもある、日向亮二だ…この学校に入ってから、数週間した時に出会って以来、よく俺の後ろを付いてくるようになった奴だ。
 よくこうして、暇そうだから帰ってやろうかと言うのも毎回のおなじみである。
「いよいよ夏休みだねぇ、浅倉くん何か予定とかある?」
「今日は、俺の家に居候するって奴が引っ越してくるんだ……その後は割りと暇だ」
「そか、浅倉君はあの浅倉グループのご長男だから割と忙しいかと思ったら、思ったより暇なんだね」
「それは褒めてるのか?まあいい、それよりお決まりなんだろ?」
 こいつと長く要ると、こいつの行動も結構解る様になる、亮二は白を切るように…
「何が?」
「あのな、『暇そうだから、浅倉君と遊んであげよう』ってのはもうばればれ何だよ」
「僕ってそんなに解りやすい?」
 亮二は細い眼をして、怪しく微笑んだ…う…
「ま、いいか。そんなに言うんだったら夏休み中にどっかに誘ってやろうじゃないか」
 そんな表情もころりとはや代わりする…こいつと要るとなんか調子狂うんだよな。
「じゃあ、夏休み使って何か面白い事があったら浅倉君も誘うよ」
「まあ、期待しないで待ってるよ」
 そんな他愛のない話を亮二としている途中、向こうの道から、セーラー服の女の子が走ってくるのが解った。
「智也くーん」
真知子さんの娘、宮子(みやこ)ちゃんだ。セミロングの髪に両側にリボンのある、13歳で中学1年生の、俺にとってはかわいい妹みたいな存在だ。
「宮子ちゃん、もう終わったの?」
「うん!終わったよ〜智也くん達も帰るとこ?」
 宮子ちゃんは元気よく俺に聞いてくると変わりに亮二が答えた
「そうだよ、じゃ、一緒に帰ろうか」
「うん!」
いつも元気いっぱいだ。この子は元気がいいから友達も多い。
俺と亮二はよくこうして、時間が一緒の時はよく宮子ちゃんも一緒に帰っている。

「じゃあね、僕はこっちだから」
 途中で、亮二が曲がり角で俺たちは別れることとなった。
「じゃなぁ」
「ばいばい、亮二さん」
 宮子ちゃんも手を振って亮二を見送った。


「たっだいまーー!!」
「ただいま」
宮子ちゃんの元気な声にのほほーんとした返事の後、ちょっと間を置いて、真知子さんがやってきた。何だか若奥さんみたいで照れてしまう。
「お帰りなさい宮子、智也さん」
「おか〜さ〜ん、お昼ご飯、お昼ご飯」
「はいはい、智也さん、お昼ご飯を食べ終わったら彼を駅に向かいに行きましょう」
 この家に居候になるっていう、奴は今日の午後2時に来る予定となっている。迎えに行くのは俺たちと手はずは決まっていた。
「はい、宮子ちゃんはどうする?」
「ごめんね智也くん、今日メイちゃんと約束しているの」
 残念そうに笑いながら宮子ちゃんは上目遣いでそう言った。
「そっか、じゃあ俺がエスコートしますよ真知子さん」
「まあ、はい、じゃあお願います」
 真知子さんは照れながら差し伸べられた手を置いた。
「送りおーかみにはならないようにね、智也君」
「ぶ!宮子ちゃん、冗談なのに…」
そんな楽しい会話をしながら昼飯を3人で食って…少し休憩を挟んで…
「じゃあいってきま〜す」
「はい、いってらっしゃい」
友達の家に向かう宮子ちゃんを真知子さんは見送って。俺達も一緒に駅に向かった。


 駅の前で、俺と真知子さんはその男が現われるのを待っていた。新入社員だから俺とさほど歳は違わないだろうな。
「遅いね…」
「私の写真を送ったはずですけど」
 それらしき人物はまだ駅から出てこない…駅前にある巨大な立体テレビはこの町の待ち合わせのメッカだ、彼が知っているのならここを通るはずだが。
「それならわかりやすいけど……遅い」
「はい、どうしたんでしょうね」

「あの真知子さん彼って、叔父さんの養子って聞いたんすけど会った事は?」
 唐突に真知子さんに聞くが、彼女は首を横に振って。
「いえ、私も智弘様からはお話は伺っていたんですけど、実際に会ってはいません」
 本家の人である俺にも紹介するのがこんなに遅いのもなんだか怪しいしな…





15分後
一人のすごい量の荷物の青年が何度も俺達の前を素通りしていくのが解った。
「はぁ〜はぁ〜」
俺は登山に来た人かと思った…、いや…気がついていて無視していたのか?随分前から俺達の前を行ったり来たりしていた。
「真知子さん…たぶんと思うけど」
「ええ、彼でしょうね〜」
 小声で耳元で話している時でも彼はこっちには気づかない様子だ。
「私達に気づくまで、待ってあげましょう」
 少し、前の青年が困って徘徊してるのを楽しげ見ている真知子さん、いや楽しくて彼はここらへんをうろついてるんではないんだが…
「ん?………」
ようやく彼はこちらに気づいたようである。
「……あーーーーーーーー!!!」
持っていた写真と真知子さんを見比べてようやく気づいたのか、指を差して大声をあげた。
「??」
 それで畏まりながら、俺たちに近づいてきて…
「もしかして、佐倉さんの……」
「はっはい、佐倉真知子です」
「は〜やっと見つかった」
やっぱり、彼だったようだ…

「どうも、失礼しました。俺こういうものです」
青年は深々と頭を下げてから胸ポケットから名詞を取り出した。名刺には「フレキ・O・浅倉」と書かれていた。
「フレキ……さん?」
 変わった名前だな、外国の人かな?でも浅倉って書いてあったから、智弘さんの養子って事は確かだ。
俺より幾分背が高めで、灰色の髪の毛をストレートに下ろして後ろで縛ってあり、目が細くて、カッコいい系の青年だ。
それにしても背中のその布に包まれたものはなんだろう……?
「では後日、入社の手続きを」
「実際には来年の4月なんですが、まだ大学を出たてで、個々で色々学べと父上にいわれまして……」
 父上って智弘さんのことだよな…
「では、まだ4月まで学生で」
「フリーターみたいな物ですが…」
 しばらくフレキと呼ばれた青年と真知子さんとのやり取りをじっと見ていると。
「そういや、そこの人は……まさか」
フレキは俺を見てから目を細めながら真知子さんを見た
「別に、私の旦那様ではありませんから」
「んなこと聞いてないでしょ、真知子さん」
「冗談もお得意ですね。そうか、あなたですね、智也様は……この度、居候させていただきます、よろしく」
 紳士的な態度で、俺に握手を求めてきた。俺もその手を握りかえして。
「あっああ、よろしく、それに俺は様付けされるとなんかしっくりこないからそれはよしてくれ」
「では、智也さんとでも呼んでいいですか?本家の人ですのでそれなりに敬意は必要ですし…そうでないと親父様にしかられる」
「智弘叔父さんはそういう肩書きは気にするなって何時も言うよ」
「そうですか、では…智也さん」
 友好的なフレキに俺も何だか気に入って、握手した手を縦に振って…
「俺の方もフレキって呼んで言いか?」
「どうぞ、私もこの名は気に入ってますし…ではよろしく智也さん」
「ああ、よろしくフレキ」
「こちらこそ、智也さん」
やっぱりなんか、年上の男にさん付けってのはしっくりこないけど、まあいっか。

「フレキさん、ここがお家です」
そんなやり取りをやっているといつの間にやら、佐倉家についた。
「では、お世話になります」
 フレキは、畏まりながら家に上がってきた。
「フレキさんの部屋は智也さんの隣の部屋が開いてますけど、ここでいいですか?」
「ええ、かまいません」
俺の隣の部屋にフレキは居候する事となった。
「自分の荷物は明日送られて来ますので」
「はい、わかりました」
「荷物が到着したら俺も手伝うよフレキ」
「ありがとう、智也さん…では自分は長旅で疲れましたから、休んでいてもよろしいですか?」
「ベットは、まだ届いてませんけどいいですか?」
「素で寝てもが風が涼しくていいんです」
爽やかににそう付け加えるとフレキは自分の部屋へと入っていった。
「おやすみなさい」
真知子さん、何だか赤い顔だな…。もしかして…
「惚れた?フレキに…」
「いえ、かわいい人だなって、思っただけですわ」
「ははは、そうか」
まあ良いか、俺も疲れたし……俺も寝るかな。俺も自分の部屋のベットに横たわった。



……


目をあけるといつもの天井が広がっていた。さっき夢に親父が現われた、死んだ後は俺の頭に悪夢のように親父の顔が浮んだけど、さっきの夢で出てきた親父は穏やかだった。

親父が俺の6歳の頃の本を読んでいる所だった。
 
親父に買ってもらった恐竜の本は今でも本棚にしまってある。今は表紙はぼろぼろだが大切な宝物だ、俺は久しぶりに呼んでみることにした。
子供の読むような短い本、このラプトルってのが俺の一番のお気に入りの恐竜だった。
あの頃が懐かしいなぁ
「智也さん、フレキさん、夕食ができましたよー」
「はい」
食事はいつものメンバーにフレキを加えた4人になった。
なんかいつもより豪勢なのはいうまでもないが、フレキの肉だけ大きいのは気のせいか?

宮子ちゃんはフレキに会うのは初めてだが母親同様、なんか頬が赤い。
やっぱ親子だよな、好みは似ているのかな。
「負けられないな、真知子さん、おかわりお願いします」
「はい、たくさん食べてくださいね」
「??」
何だか疑問系のフレキをよそに俺はあと3杯食った。
「自分の分残しといてくださいよ、智也さん」
「ふ、この夜は弱肉強食の世界だぞ、フレキぃ〜」
「賑やかで楽しいですねぇ」

うがっ食いすぎた、やっぱ対抗意識を燃やすのはよくないな。苦しい

俺は風呂に入ろうと浴場に向かった。
「あれれ?智也くん、お風呂?」
風呂上りなのか髪の毛をタオルで拭いてる、宮子ちゃんが聞いてきた。
「まあね、食い過ぎたから消化しないと」
「腹八分目だよ智也君、でも残念だったね。私はもうとっくに入りました」
「そっか、残念」
 そう言うと、宮子ちゃんはぶーっと膨れて
「智也くーん?いやらしいこと考えてたでしょ」
「な、何言ってんだよ」
「智也くんのえっち」
頭にぐさりと来るようなことを言って、宮子ちゃんは俺の横を通っていった。
「冗談なのに」
 そう言うと、宮子ちゃんはこっちを振り向いてにこりと笑って舌を出してそのまま上に行ってしまった。
なんて言うか自分で言っていて恥ずかしくなった。


風呂から出て俺はベットに横になった。

俺はベットに寝転がりながらまた、懐かしい恐竜の本を読んだ(と言うか見た)また、ラプトルのページで止まった。この鉤爪がヴェロキラプトルに似合っている、ほかにもこのラプトル系にもでかいの奴や強そうな奴やおんなじような爪をもった恐竜も数多く乗っているが、俺にはこのラプトルが非常に好きだ。

「智也さん」
「わっ!」
 気配も無く、って言うかオレが気づいてなかったのか?フレキが突然俺の部屋に居てビックリした。
「わっじゃありませんよ、ノックをしても返事が無かったから、勝手に入った事は詫びますけど、智也さんも要るなら返事してください」
 子供を叱り付けるお父さんの如く俺の前に人差し指を立てて言った。
「あ、ああ…すまん、フレキ」
「それはそうと、明日荷物を運び終わったら自分に町を案内してくれませんか?」
「いいぜ、それくらいお安い御用だ」
「ありがとうです。ん?その本は」
「あっこれは親父に6歳のとき買ってもらった本だ、懐かしくなってつい読んでいたんだ」
「へー自分も子供のころこんな本を買ってもらったな」
フレキはその言葉の後、声を詰らせた。両親が死んだ俺に気を使ったのかな…
「いいよ、もう…立ち直れたからし、フレキが気にする事はないよ」
「すいません。あ、それより、街を案内してくれる時自分、行きたいところがあるんです…この裏山の神社です」
「ああ、案内するよ」
「ありがとうでは、明日」
そう言って、深々と頭を下げながら俺の部屋から出ていった。
「……変な奴……」
俺はようやく眠りについた。


 部屋に戻って、自分の呼吸が上がってる事が解った。
「はぁ……はぁ」
 まさか、彼と話しただけで、こんなにも俺の血の衝動が強くなるなんて…思ってなかったな…。
 彼は…親父様の予測以上の人かもしれない…
 いや、たぶん親父様以上の力を持ってるんじゃないか…だとしたら、前者か後者か…それで俺の今後の行動が変わるんだ…

 明日彼と一緒にあの神社を見に行けば…それが判断付けるだろう。


「…ん?」
 また今日も血の匂いがして来た………満月と、血の匂いは俺に仕事の時間を告げている。





 これは夢、悪い夢だと思いたい…想像以上の悪夢。

アスファルトの道路に、おびただいし血
アスファルトを真っ赤に染めている。
そこに転がっているのは、死体。
無数の爪の跡、肩の大部分を食われた死体。

 思わず吐き気がするような無残な光景…なんだ、この夢は…

ズン…
 俺のすぐ後ろに巨大な影が見えて俺はくるりと首を回して、眼を疑った。

 俺の目の前には…今まで見た事がない、獣がそこに居た…
2メートルはあろうかと思うくらいの身長に、プロレスラーのような、がっしりとした体格に頭から胸に掛けて流れる長毛、体は人間だが…頭が犬のような巨大な頭だった。そいつは、人間とは別の…化け物だった。
人間の首など丸ごと食うような、大きく裂けた口にそれに並ぶ無数の血の付いた牙、丸太のような太い手足に、指につくナイフのような鉤爪。

 この化け物には見覚えがあった、前見た夢に出てきた、怪物だ。

丸い満月をバックにその獣人は、巨大な雄叫びを上げた…

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
後ろで女の人の声がした。
『ふぅぅ…獲物……心臓…女……』
獣のような荒い吐息をふいて、獲物を見つけ…不気味な台詞をはく化け物。
恐ろしさで、彼女は腰が抜けたか、その場に腰を落としてしまった。逃げろ、今逃げないと、殺されるぞ!
『ぐぉあ!!』
ブオン!
化け物は足のバネを使い、高く飛び上がった。何て跳躍力…
スタン
化け物は彼女の背後に着地する。
バシュ!!ビチャ!!
腕に付いたナイフのような鋭い爪で背中を切り裂く。背中から大量の血が噴出した、脊髄が砕かれ、内臓を抉り…一撃でその女の生命を絶った。
ドサッ
絶命した彼女は前に倒れこむ。
奴はそれでも肩をつかみ仰向けにして、そして腕に力をこめて、胸の一点に向けて爪を振り下ろす。
ガシュ!!
グシャ!!
そして心臓を、体からひっこ抜き出した。
『ぐうぅぅぅぅーーー』
 そいつは、抜き出した彼女の心臓をその場で食った。
『がうぅぅ…』
昨日の、夢とは違う意味で…俺はその光景に吐き気を覚えた。まるで一級ホラー映画を間近で見ているようにも見えた。
リアルだった…吐く物も吐けないほど…

俺の夢は、日に日を追うごとに、リアルさを増して行く、俺が気がついたら朝だった。気がついたら、奴は消えている事にも気づかなかった。
時計を見ると、8時だ。夏休みでも…朝は遅くても、何とかなった…俺はベットから起きて、服に着替えた。

居間にはフレキも早起きをしたか、テレビを見ていた。同じくその隣で宮子ちゃんも見ていた。
「おはよ、どうした、こんな朝早くから」
「智也さん、おはようございます」
「智也くーん、おはよう〜」
 フレキと、宮子ちゃんが…元気にそう言った。
「おはようございます、智也さん。何でも家の近くでまた通り魔殺人事件が起きたそうなんです」
「またですか?今度は…何人目?」
 殺人事件なんて、そんな珍しいと言う物でもなくなった…なんていうかまた物騒になってきたな。
「そうなんです。何でも近くの公園で男二人、女一人と殺されたそうです」
真知子さんが俺の後ろから言った…俺はフレキの前に座り、テレビを見た。
「この街に来て、覚悟はしていたんですが…」
「三人か、フレキも夜歩く時は気をつけろよ…とおり…ま…!!」
俺は一瞬吐きそうになった。こ、ここは…
「げほげほっ!」
「智也さん、大丈夫ですか?」
そう言ってフレキが背中をさする。
「はーはー」
 嘘だろ…なんで?
「いきなりむせるから、自分まで吐きそうになりました」
フレキの声も聞かずに、俺は急いで朝飯をかき込んだ。
「早い、ですね」
「うん、智也君はこのうちの中で一番食べるのが早いんだよ〜」
「でも慌てて食べたら毒ですよ」
「俺ちょっと、散歩して来ます」
「10時には自分の荷物が届きますから、それまでには…って行ってしまった」
フレキの台詞もあまり聞けずに俺は急いで家を出た。

走ってて未だに信じられなかった、ニュースで言ってた殺人事件の場所は俺の夕べ見た夢とまったく同じ場所なのだ。あの情景、間違いなく市内の中央公園だ…

 偶然なのか?それとも、正夢!?

中央公園は野次馬と警察でごった返していた。俺はよく見えないので人気の無いところに回る事にした。
地元だしこの公園も俺の会社が作ったような物だから、見取り図くらい把握してるつもりだ…裏道くらい知っている。俺は裏道から入って行った。

裏道はあっても中央公園だから、さほど広くない。どっかで嗅ぎつけられて、野次馬が追ってくるとも限らないし、俺も警察に見つかると面倒だけど…見ておかないと…

 殺人現場を、一度見ておかないと!夢の内容と…何処まで似ているのか…

殺人現場の近くまで来ると……

第2話……『獣』つづく……










浦谷感想

良いですね。これは・・・
続きに期待です。
・・・解説として、拙者がするべきところを一つ。
フレキとゲリ・・・それは、北欧神話における、二対の狼の神獣の事です。
何でも、オーディンの側にあって、オーディンの食べるべきすべての食べ物を与えられているそうで。
オーディンは、その様を身ながら葡萄酒を飲み続けるそうです。
さらに、幸運をもたらす獣であるといわれているそうです。
この、幸運をもたらす獣の名を持つ兄弟の物語り・・・続きを期待しております。
シュワッチュ!!


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