すっかり忘れていた、子供の頃の記憶。
「大丈夫だよ、僕が宮子ちゃんを守ってやるよ」
 いつか交わした、約束…元よりお化けとか幽霊の類を怖がった子だったから俺が守ってやらなくてはと思った。
 あの時も俺はあの子を……守りたいと思ったから、俺は…心の中にあった『あれ』を開放させた。開放と言うより、覚醒に近かった。
 親父や、叔父さんがやったようにその時俺は体の中の血を覚醒させたんだ。

 そして俺は…『剣』を使った。

 子供の頃の他愛ない約束が、俺を先祖からの力を解放させたんだ。


鍵爪
 第十一話『記憶』



 井上となぜか怪獣映画を見た後、分かれてから俺は、佐倉家へと帰ってきていた。
 フレキと帰れなかった事が、残念だったが叔父さんが言うように仕方ないと言う事なんだろうな、今のフレキを連れて帰ることはできないんだ。
「さて、少し入りにくいな……」
 フレキを連れて来れなかったからではない、宮子ちゃんと会うのが少しばかり怖いというか何と言うか……そんな感じだった。
俺はあの夜から宮子ちゃんとはろくに話してもいないし、今日もフレキや自分の事について、浅倉邸に戻っていた為か…宮子ちゃんのことをすっかり忘れていた気がする。
 それに、叔父さんから話を聞いて……

「そう言えば、お前が始めて吸血鬼の覚醒をしたの時の事覚えているか?…いや、聞くまでも無かったか……」

 亮二が宮子ちゃんを浚った時、既に…あの時の事を思い出していた。その時は亮二の事で他の事を考えられなかった為か、『覚醒』の記憶だけは思い出さず、ただ子供の頃、宮子ちゃんを守った…と言うキーワードしか頭に無かったが、今冷静に思い返してみたら…俺が…その時…に『吸血鬼』として…覚醒していたんだって、確信が持てていた。




……
 10歳の時、俺は何時ものように屋敷を出て従姉妹で仲の良かった宮子ちゃんに俺は毎日のように会いに行っていた。
 元より、佐倉の家とは分家筋でもかなり面識もあったし、母さんと真知子さんの仲が良かった事と家も浅倉邸より近かった事から、俺はいつでも宮子ちゃんの家に子供の足で良く行った。
 その日も俺は、宮子ちゃんと一緒に佐倉家を出て、あの裏山の神社近くで俺達は遊んでいた。いや、だけど宮子ちゃんは今のように、お化け嫌いで怖がっていたけど安心して遊べたのは、俺が何時ものように宮子ちゃんに言った事があった。
「大丈夫、太陽が昇ってる時はお化けは出てこないし、もし出ても僕が必ず宮子ちゃんを守ってやるよ」
 と約束したからだ。宮子ちゃんはその言葉を信じていたから、俺についてきてくれたんだ。

………
……


 さて、考えていても始まらないし…佐倉家に入ろう。俺は佐倉家の門をくぐって、玄関に入った。
「…ただいま、あ」
 俺が玄関までもどって見ると、丁度目の前に宮子ちゃんが出かけようとしている姿が飛び込んできた。
「と、智也君……」
「………」
 玄関で、無言で目線を合わせる俺と宮子ちゃん。俺を見て宮子ちゃんは泣きそうな顔をしているから何を言ったら良いのか、何から話したら良いのか解らなかった。
 無理も無い、あの夜からろくに話しちゃ居ないんだ…宮子ちゃんにしてみれば、何日かぶりに再会と同じだろうな。
「智也君……」
「…宮子ちゃん、俺…」
ぽす…
 俺が言葉に詰っていると、宮子ちゃんのほうから俺に抱きついてきた。
「バカ、智也君のバカ」
「……」
 俺の胸を両手で叩きながら、泣きじゃくる宮子ちゃんに俺は心の臓を打ち抜かれた気を感じた。
「心配したんだから、お屋敷に行って、全然帰ってこないから…もう戻って来ないんじゃないかって…智也君のバカァ」
「……ごめん、ごめん」
 言葉が思いつかない、宮子ちゃんはずっとここで待っていたのに…思いつく言葉はただ、彼女に謝ることぐらいしか、思いつかない。情けないな俺って……
 俺は自分の胸で泣き続ける、少女を抱きとめて、頭を撫でる。せめてもの償いだと思いたいが、許してくれるとは思っちゃ居ないだからこうして何度も彼女の頭を撫でて誤り続ける。
「随分待たせて、ごめん……」
「ひどいよ…智也君……ずっと待ってたんだから」
 上目遣いで俺を見る彼女に俺はすごい罪悪感を感じた……頬を伝う涙を俺は優しく拭く。
「正直、俺はどうすれば君に許してもらえるか、解らない。責任を感じてるのにどうすれば……解らない」
 それを聞くと宮子ちゃんは俺の背中に手を回してギュッと抱きしめる。心臓の鼓動がさらに激しく脈づいている事に俺は気づいた。
ドクン、ドクン、ドクン
 亮二に宮子ちゃんが捕まって、二人で逃げていた時もそうだったこの感じに偽りと言う物を感じない。
「私から離れないで欲しい……ずっと、宮子の傍に居て欲しいの」
「…宮子……ちゃん」
 俺もそうだった、昔から俺の後ろをチョコチョコとついてきて、一人っ子の俺には可愛い妹みたいで、いつも一緒に遊んでいた……彼女が、ずっと好きだった。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
 俺は宮子ちゃんの体を抱き寄せる。まだ若干幼いが、もう立派に女の子になってるんだと言う事が実感できる。
 心臓の音がさらに早く大きくなっていった、このままでは心臓が破裂してしまうんじゃないかと思うくらい……早くそして…大きく脈打ってる。
 吸血鬼の衝動でもない、この気持ち…俺は……
「ここじゃ、なんだから…俺の部屋に行こうか」
「……うん」



……

 子供の頃の、思い出話の続きを思い出そう…

 宮子ちゃんと一緒にあの神社の近くで俺達はかくれんぼを始めてしばらく経って、俺が鬼をやっていた時、いつまで経っても何処を探しても、宮子ちゃんを見つける事が出来なかった。ここで親父が出てくるのが嘘で、俺は一人で宮子ちゃんを探していた。
「宮子ちゃん、おーい!」
 何処行っちゃったんだと思って、俺は色々な場所を探して…段々日が落ちてきて、暗くなる前に見つけないと、父さんに怒られると思い…俺は宮子ちゃんを探して墓地の方に行ったんだ。
まさか、お化け嫌いの宮子ちゃんがこんな所に来てはいないだろうと疑ったが、何処を探してもいなくて…墓地は次第に暗くなって行く。
「どうしよう」
 暗くなるに連れて、不安も一層募る……お化け、幽霊の類は居ないそう思っていたが、俺の頭を最悪の予感が過ぎってならない。

 暗い…暗闇に閉ざされた、墓地は、何も居なくても不気味な気配はする、ここはまだ捜していなかったが、ここに宮子ちゃんが居る確信は持てた。
「宮子ちゃん!いるんだろー、おーい!」
 声の限り、宮子ちゃんを呼んだが…返信は帰ってこない、すれ違いそんなはず無い…あの子が一人で帰るはずは無いと言う事は解っている。もしかして向こうもこっちを探してるんじゃないかって言う事も考えたけど、それで今まですれ違っていたのも可笑しい…だから、ここに居るって思った。
「……う!?」
ドン…
 胸が急に厭な鼓動を打った、まるで心臓を銃で貫かれたよな鈍い…響き…体が崩れ落ちそうなくらいな激しい目眩。生まれてこの方病気なんて風邪程度しか引いていないのに、それとは違う、『痛み』を心臓から、全身で感じていた。
 例えて言うなら、麻薬…毒…ウィルス…そんな物を体中の血と交換したような激しい痛み…

 痛い…痛い…イタヒ…

 それでも、俺の足は墓地の奥へと進んで行ったのだ、体全体が『何か』を求めている、その先にある、その『何か』を感じる。

 それさえ得ればこの痛みは引く、痛みから解放される……そして、俺はそれを発見した。

「!?」
 信じられない、光景なのに俺は見とれていた。墓地の奥で、それは青い火の玉と戯れていた。無数の魂と楽しそうに遊んでいる幼い宮子…
 怖い暗闇から彼女を安心させるように照らしてくれる、青白い光……宮子は決してそれらを恐れることなく、むしろ楽しげに走り回っている。
 体中の痛みを忘れるくらいの不気味ながらも、美しい光景……ここは、宮子が見つけた秘密の遊び場所、誰にも外界からも…闇の介入をも許さない、魂の遊び場…
「……」
 俺は、物陰に隠れながら…魂の遊び場で遊ぶ宮子が『違う』と感じた。少なくとも、俺は宮子を求めていなかった……。
 それに墓地の魂達が、結界を張ってるように中に入れない……でもあの子だって家が恋しくなる。だけど彼等と繋がってる宮子なら、何時でもここに遊びに来れる…「またね」と言って帰ってくるまで少し、ここで待つ事にしよう。
 それに彼等も宮子を連れて行こうとは考えちゃ居ないだろう。だから、心配要らないように見えた。邪魔するのも…何だか嫌になるくらい…

ドクン!!
「ぐぅ!!?」
ドク…
 ドク…
  ドク…
「!?」
 心臓がまた急に痛み出した。もうさっきとは違い、歯止めが全く利かない、毒が全身に回って、脳内まで達しようとしている。胸を押さえ、膝を落とす…痛い、体中の毒がも脳を犯そうとしていた。
毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒・毒毒毒毒毒毒
宮子じゃないはず、宮子とは違う何かを俺は求めている、いや…求めているんじゃない、明らかに『殺意』と言う物を持っていた。
 俺はそいつを殺さなくちゃならない、いや殺さなければならない。
 そう思った瞬間、心臓が早く毒を分泌し始めた。
毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒
 叫びたくても毒が舌までも凍らせてしまい、声が出ない。はやく、そいつを殺さないと、俺は…俺は!?
「……!?」
 見つけた、奴は自分から現われた……青白い魂の結界の中をそれは音も無く進入してきた。

 例えて言うなら酔っ払いのサラリーマンを想像する。足取りは悪くおぼつか無く、猫背、しかし普通の人と明らかに違うのが、あれには人の生気と言う物が全く感じられない。顔色なんて蒼白に近く、両目は瞬きもせず充血している。まるでゾンビ……墓場から蘇った紛い物、青白い魂達のような綺麗なものじゃない。
 あいつだ、あいつが俺に痛みを…
「ひ!?」
 宮子がその姿に気付いてぺたんと腰を抜かしてしまった。
「っく!」
 俺は痛む体を押さえながら、結界の中へと走っては行った。突然の事で、魂達がパニックを起しているかのようになり、赤色の警戒色の光を放つ。
 周りが血をぶちまけた様に真っ赤になった。
 奴はゆっくりと腰を抜かす宮子に近づいていく。
「と、智也…君…いや、いやぁ…」
「……」
 助けを求める宮子とゆっくりと近づくゾンビの間に割って入り、宮子を庇う。
「!!」
「きゃぁ!」
 とっさに宮子を抱きかかえて地面に転がる、背中に激しい痛みを感じた。
「くああ!」
 奴の指先には鋭い刃物を持ったような爪…には真っ赤に染まる血…魂達が放つ警戒色よりも濃い濃厚な朱…

「智也君、智也君!!」
「……う…ぐああ」
 体中に痛み、背中にさらに激しい痛み……頭がその痛みを全て処理しきれずパンクしそうだった。痛い…痛い…痛い…痛い…痛い。
 ゾンビが近づく……俺は宮子に覆いかぶさりながら意識が『痛み』に支配されている。痛い…それは=死へと繋がって行っていた。
 痛みが増して、体がもう動かない…血が流れて、俺の体から生気が抜けていく…このままだと本当に……
 そして凄まじく、喉が渇いた…そして、俺は空腹感を感じた……水いや、渇きを癒せればそれでいい…この渇きを癒して欲しかった。
 苦しいくらい……
 不意に、目の前で怯えてしゃがみ込んでいる宮子が眼に入ってきた。ゾンビのような化け物に…そしてそれに殺されかけてる俺…彼女の表情は恐怖で引きつり…完全に怯えきってる。
 だけど、この危機的状況にもかかわらず俺は……宮子が、その凄まじい渇きを満たしてくれる物と思った。
 彼女の首筋…動脈のある部分……そこに俺を満たしてくれる物が…あると思った。
「み…や…こ……ご…め…ん…助けて…」
 何かが俺を衝動的に突き動かした。自分が何をしてるのか理解は出来なかった、まだ幼い宮子の首に自分の牙を突き立てる。宮子は何が何だか解らないように俺の行動に身を任せている。
「くぁぁ」
「はぅ!」
 歯が宮子の首筋にするりと入って俺はそこから、誰に教わったわけでもなく俺は宮子の首筋に出来た噛み傷から、宮子の血を吸っていた。
 宮子は小さな悲鳴を上げるが、俺に血を吸われて…途端に気絶した。
「とも…や…」
 美味い?宮子の血は美味い?頭の中でそんな言葉が交錯する。宮子を殺す?宮子の血を貰って死ぬ?このまま逃げる?…いやこのままだとどっち道死ぬ、どっちにしろ俺は宮子を殺すつもりもないし、心中する気も無い。
 宮子と生きて帰りたい…頭にその考えが固定された瞬間、宮子の血で体の痛みが和らいだ。
「……くわ」
 宮子から牙を抜く……口についた宮子の血を手でふき取って、まだかろうじて心臓が動いている宮子を寝かせる。一言誤ってから……
「ごめん……」
 左手が妙に熱くなっていた、宮子の血を吸ったからか?それとも…俺は痛みの元凶……をこれで、心置きなく殺す事が出来るから…。

 後ろに居る俺を苦しめていた痛みに俺は振り返る、今まさに俺を殺そうと牙を向けてきた痛みに俺は熱くなった左手を突き出した。
ザシャ!
 顔に奴の臭い反吐のような返り血がつく…宮子の血とは比べたくないくらい腐った血…
 痛みの背中からは、金色の怪しい光を放つ刃が突き抜けていた。俺の左手の平から、それは『生まれた』。
子供の自分の左手には納まりきれないほどの巨大な剣…だけど、不思議と軽い両刃の剣が左手から生えていた…。
「……」
 嫌気が差す…痛みが、完全に引いていった。手から生えた剣を落とすように貫いたゾンビの胸からわき腹を切り裂いて、俺は…自分の『痛み』を殺した。
 大きく切り裂かれた、痛みが、灰となって消えていった。

 ゾンビが消えると同時に、手から生えていた剣も左手に戻るように消えてなくなった。
「ふふふ…」
 薄く笑う…俺は宮子の血をすって訳も解らないゾンビを殺して、手から変な剣が生えて…子供なら半狂乱になってるかもしれない、だけど…子供だから?と思うくらい俺は満たされていた。
 何故こんなに満たされているのだろう?俺はそして何故笑えるのだろう。



 一頻り笑った後、気付いたら浅倉邸のベッドの上で寝ていた。使用人で看護士の資格のある由良(ゆら)さんによれば、4日と半日ずっと俺は眠っていたそうだ。4日前、宮子ちゃんと遊んでいて、石段から転んでしまい頭を打ったそうだと、当時聞いていた。
宮子ちゃんはと言うと、何事も無かったかのように元気で何時もの宮子ちゃんだった。本当あの事が夢のように思えた。いや、夢じゃなくて何になろう?宮子ちゃんの秘密の遊び場を見て、ゾンビに襲われて、宮子ちゃんの血を吸って、手から剣が生えて、それでゾンビを殺して…そんな事が夢じゃないわけが無い。
 宮子ちゃんも元気になったし、俺もこうして目が覚めたから……その事は4日間眠っていた時の悪夢として忘れる事にしよう。
 人間ってのは、とてつもない悪夢は都合よく忘れるという人もいて……俺があの事を忘れたのではなく、記憶の片隅に『夢』として処理してしまったから。本当なら、しっかりと覚えていた方が良かったのかもしれないな。

 当然、起きた途端に親父と叔父さんからきついお灸をすえられたのは言うまでも無いが、母さんと真知子さんの機転でなんとかお仕置きだけは免れたけど。けっこうきつくしかられたからそっちの方が印象に残ってしまっていた。




……

「あの時の事を俺は、『夢』だって思ってたから、忘れていたなんて嘘…うろ覚えで都合よく忘れていたんだな」
 シャツを取って、着ながら俺は宮子ちゃんに呟いた。
「うん、でも私はあの事が夢じゃないって言えるよ……だって」
 宮子ちゃんはすこし服をはだけて、亮二に噛まれた傷とは違う、肩に近い部分にある牙でつけたような噛み傷を俺に見せた。
 古傷だが、それが一生消えない傷になってる事は解っていた。
「宮子ちゃんもしかして、その事怒ってる?」
「うん、とっても怒ってる。あの後、輸血を2回もして痛かったんだからね」
 ぷいっと横を向きながら宮子ちゃんは、はだけた首元を正しく直した。
「でもね、智也君に血を吸われた時ね、何だか智也君と一つになれたような気がした……一番好きな人と、繋がってるんだって思った」
「……そうか」
 俺はそう言って宮子ちゃんの頭をと撫でてやった。
「もう…智也君責任感じてる?」
「はぁ、ここまでやったんだ、もう挫折しそうなくらい感じてるよ」
「あ、挫折しちゃダメだよぉ、智也君にはちゃんと責任を取ってもらわなくちゃ」
 俺の唇に人差し指を当てて、むーっと宮子ちゃんが言う。
「それに、もう宮子って呼んでもいいんだよ」
 怒ったと思っていたら、顔を赤くしてしまった。俺はちょっとからかってやろうと頭の悪魔の角が生えて…
「まあ、その前にもう一寸、ここも大きくなっていたら…考えてやるよ」
「んもー!いつかは大きくなるもん!ぶーぶー」
 今までの雰囲気が台無しよーと宮子ちゃんはぶーぶー唸っている。そんな宮子ちゃんの肩を後ろから抱いてやる。
「わ!」
「これで雰囲気は戻ったか?」
「……うん」
 今のところはこれで勘弁して欲しいけど、機嫌を取り戻してくれた彼女がとても愛しく思えた。
 思い出したら、俺はこの子の為に吸血鬼としての覚醒を果たしたんじゃないかと思った。



……

別の場所では
「ふーん、あの小娘には100に及ぶ守護霊を憑けて、家を結界の如くガードしているから佐倉家にこちらからの潜入は…無理…か…」
 一人の髪の短い金髪の男が溜息混じりに呟いた。遠くから佐倉家を監視するように双眼鏡を使って見下ろしている。
「さってと、調子に乗ってた奴等もぶっ殺した所だし……兄貴も、新月で動きにくから、向こうから彼を呼んでやろうか?餌を使えば、彼は自然とやってくるな」
 男の手には、先程狩ったと思われる、人狼の頭を持たれていた。にたりと笑ってその頭を放り投げる。巨大なビルの屋上から人狼の頭はサッカーボールが掛け落ちるように転がっていった。
「……お姫様が待ちくたびれる前に、さっさと連れて帰るか」

 その男ゲリは…佐倉家を…智也を見下ろしながら、ほくそ笑む…



第十二話……『追跡』つづく。


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