雨の音が……俺の耳に聞こえてきた。雨が降っている……
「一成っ!いっせぇぇぇーーーーーーっ!!」
 って、勝人…雨に濡れてんじゃねえか……何泣いてんだよ、男らしくもない。
 ……何か体中痛いな、しかも…血が流れてんじゃないか。
 そう言えば、俺……トラックに跳ねられた?……クソ痛てぇ…

 だけどクソ痛いだけだ……それだけで、俺は大丈夫…
 俺は鼻で笑った……何せ俺は…

 死のない体だからな……



超人伝説活劇
スーパーヒーロー IN THE アース
第一話『灼熱特捜』


 俺はそのまま、病院まで運ばれる救急車の中にいた。勝人もその救急車に同乗している。
 そうだ……勝人はまだ、俺の体の事を知らないんだった…

 俺は子供の頃一度、今みたいに死にかけた……だが、その時から俺は不死身の体となっていた。誰が頼んだのでもなく…





 それは俺が5歳の時だ、私立の幼稚園に通っていた時……俺は一人で高い木を見つけては昇りたくなる奴だった、そんなある日、背のかなり木登りをしていてかなり高く上ってしまった。この街を一望できるのが何よりも楽しみだったからな。
 だけど、俺は過って……木から滑り落ちてしまった。地面に小さな体が叩き落される瞬間は…今でも思い出させる。体に何トンもの衝撃が伝わって、体がぐしゃりとする感覚…この痛みはどう形容したらいいかも解らないのに……なぜか、俺は生きていた。
 高い木から落ちたのに……なぜか、俺は無傷でいた。最初はすごい…自分は超人になったんだっ!!と喜んだ…
 だけど、それは……俺の身を天蓋孤独にする切欠にもなった。俺の母親は……この不死身の体を気持ち悪がって…俺を孤児院に届けて…何処かに逃げやがった。元々親父の居ない母子家庭、それとなく母親の愛情なんて無かったような気がする。
 その時俺はこれ以上、自分の体が憎いと思ったことはない……何度も死を決意して、手首を何度となく切った…だが、俺の不死身の体はそんな事許さなかった。痛くて血は流れるのに…俺は生きている。

 だけど…不死身の体と言ってもその時の手首の傷は全く癒えない……最初の事故の時の背中の傷もその日の内に癒えたが……左手首にはまだこうして、傷が残ってやがる。
 なぜ……そこだけ、と思ったが、俺はこの体への憎しみの印として取っておく事にした。

 そして……今また、俺は死ぬほどの事故にあった、けどまた傷が癒されて行く。

 誰が、誰が俺をこんな体変えた……いつ不死身にしてくれと頼んだ!

「ふざけんなよっ!!!」
「わぁっ!!」
 突然飛び起きた瞬間、俺の前に勝人がいた……しかも、変な体制だ…って俺…病院のベッドの上じゃねぇか!!
「なんだよ一成、意外と元気そうじゃねぇか」
「…勝人?」
「勝人?じゃねぇよっ!お前、トラックに跳ねられたんだぞ!ったくぼーっと突っ立ってるから……」
「…俺、あれから眠っていたのか?」
「おおよ!寝ているのに気付いていないなんて、余程の重症かもしれない…」
 そこで、勝人は息をスーっと吸って……
「と言いたい所だけど、お前病院に運ばれた時には、もう掠り傷しかなかったんだぜ!!骨にも全然異常なんて見られなかったし……お前」
 何!?そう言えば、包帯なんて言う物は躯に巻き付いていない……と言う事は、この体の秘密が勝人にばれたっ!?
 孤児院で、こいつにあった時…親に捨てられたと言う同じような境遇の持ち主で気が合い、親友同士だ…でも、俺の体質を知って、幻滅するよな。でも隠しようも無い…
「ああ、俺は子供の頃から不死身の体を持っていた…それで、俺は母親に捨てられたんだ…だから、俺はさっきみたいにトラックに跳ねられても死なないし、ナイフで心臓を刺しても死なないんだ……」
 俺の話しを聞いて、勝人は驚いたように顔をしかめている。当然と言っちゃ当然だな…
「幻滅したろ……こんな俺…」
「す……すげぇよ、一成…」
「はい?」
「すげぇよ本当に、凄くカッコイイよ!お前、不死身だったなんて知らなかった!」
「はい?」
「ったく、そうならそうと言ってくれればいいのに……心配してそんしたぜ」
 何言ってるんだ?こいつは……
「勝人、俺が怖くないのか?」
「ん?怖い?何が?」
 勝人は?顔で聞き返してきた。なんだ…俺の力を凝視しないどころか、逆に誉めていやがる。本心なのか……それともただのバカなのか……
 でも…俺はこの時だけ、なんだかこの体が誇れる存在となった。
「ふふふ、あはははっ…お前って変だな…誰もが、毛嫌いしたこの不死身の体が始めて人に誉められたのって始めてだ」
「そうか?でもお前は誰もが欲しがるような力を、今その手にしているんだ…もっと胸を張りやがれ!一成っ!」
ドンッ!
 勝人が思いっきり背中を叩くと俺の体に物凄い衝撃と激痛が走る。
「いつつ…まだ跳ねられた時の傷が癒えてないのに叩くな」
「何っ!まだ傷はそんなに直ってないのか!?てっきりもう直っているかと……っていうかお前、痛みも感じるのか!?」
「バカかっ!?不死身と言っても痛みや苦しみはある…今度から気をつけてくれ」
「おっ…おう……気をつける」
 勝人は申し訳ないように、ベッドの横の椅子に腰掛けた。
「それで、今は何時だ?」
「事故ってから、一成が意識を失って二週間になるな…あ、それより聞けよ!平和なこの街にもまた事件が発生したぜ!」
 勝人はよくこういう情報を集めてくる、まったくニュースを見ていなくてもこんな真実めいたことは勝人は好きで、よく話の中心になってくるのだ。
「事件?」
「ああ、人体自然発火!火の気のない所で人が燃えて消失しちまうんだ…」
「それって、巷で話題になっていたって言う『アンノウン』って奴の仕業じゃ…無いのか?」
 よくニュースで取り上げられている、アンノウンとか呼ばれる不可能犯罪を起こす怪物が居るって聞いた事がある。
「いんや、アンノウンってよ最初やった奴の親族を必ず根絶やしにするって奴なんだけど、この人体自然発火事件の被害者の共通点、関連性は0!無差別なんだ…」
「良くそんな情報持ってこれるな〜」
「オレの耳はいいの!それで警察ももはやお手上げ状態……でもこの2週間で6人も死んでるから、捜査本部がそろそろ出来てもおかしくねぇんじゃないの?」
 まあ、そういう奴等は警察任せって事か……
「俺らには関係ないさ……」
「そだな、ちょっと待ってろ!オレ先生呼んでくっから…」
 勝人はそう言うと、病室を飛び出して担当の先生を呼びに行った…人体自然発火か……俺にして見れば無関係だけど、俺の町で起こってる身近な事だからな……そう関係は無いとも言い切れまいな…

 しばらくして、勝人が俺の担当医を呼んで来てくれた、先生は傷の状態はもう完治していて、二週間ほど意識を失っていたのではなく、寝ていたと言う事を聞いた。今日にでも退院は出来るとそう言ってくれた。けど、今日の所はまだ退院する必要は無いから、明日退院する事にして今日はもう少し寝る事にした……
 面会時間が終わった勝人は「じゃ、明日迎えにくっから」と言い残して、俺の病室を後にした。

 今日の所は飯を食って寝る…事にするか。
 勝人が居なくなった一般病棟の窓から夕日に染まる不気味は程、赤く染まった空を見た…それは朝の青い空とは違い、血をぶちまけたような赤…いや、燃える様な炎を見ているような、そんな気持ちだ。
「……」
 勝人が持ってきてくれた暇つぶしの漫画から目が離れるくらいの空だった。何だろう、この鼓動の高鳴りは……


 同じころ、とある場所…ある社長室みたいな所で、その椅子に座った男が秘書から書類を貰う。
「トラックに跳ねられても…上空から落下しても、決して死ぬ事の無い不死身の体を持つ少年…赤星一成か…」
「はい、彼の経歴は白紙に近く……とある孤児院で育てられたと聞きます」
 秘書はその社長らしき人物にそう告げると、その男は書類から目を離して赤く染まった空を見上げた。
「そうか…面白い『ディアブロス』…フレイムガゾーンの守備はどうか?」
「は…ここ2週間に戦火を広げて行きます、そして着実とこちらに……」
「…ありがとう、まだ協定を結んだわけでもない魔界の紛い物…我々の元に到着する時は…来ないだろうな」
「それと、宇宙刑事が二人、地球に向けて降りて来るのを確認しました」
「新人宇宙刑事など敵ではない……それより獣神忍軍の末裔を至急発見せよ」
「は…はは!!」
 秘書はそう言うと、闇の中に消えて行った。そして男は一成の書類に再び目を通す。
「ふーん、不死身の体ね…」
 鼻で笑いながらその書類を見て、彼は再び…赤い空を仰いだ。


「……眠れない」
 とっくに病院の消灯時間は過ぎ、病院内は真っ暗くなっているのに、俺は何故か眠れないでいた、そりゃ2週間も寝ていれば当然だろうな。
「だからと言って起きるわけにも行かないな…」
 巡回の看護婦に見つかるのが落ちだろうな…しゃーない、大人しくしてるか…
この窓から、真っ暗な夜空が一望できる幾つもの星が散りばめられてる。たしか、この宇宙のどこかで、戦争してるって言う組織があったな、さ…えっとなんだっけ、さぁ…
 だけど地球は大丈夫なのかな、そんな奴等宇宙に出して…勝人の言ってた人体自然発火事件も起きて…ん?何だろう、焦げ臭い…
 窓を開けてるからか?外から何かが焦げるような匂いがした。
「何だ?」
 俺はそう思い上体を起こす、窓の外の暗闇が妙に明るい…そして煙が上がっている。おれは窓から下を覗いた。丁度病院前の道路が見える、この時間帯は車は一台も通らない…
 道路の真ん中で何かが燃えてるのが見えた。それが焦げ臭いのだろうと思った…けどその燃えてる物が…人間だと気づくのには時間が掛からなかった。
「!?」
 俺は息を呑んだ…あれって、勝人の言ってた人体自然発火だよな…人が、火達磨になってもがき苦しんでいる。まだ生きてる!早く助けないと…
 俺は居ても立っても居られずに、ベッドから起き上がるとすぐに病院の外へと走って行った、その足音で巡回の看護婦に見つかり。
「そこのあなた、病院の廊下を走っちゃ…」
「ごめんなさい、ちょっと急ぎ!」
「ま、待ちなさい!こらー!」
 ここであの人にかまけてる時間など無い…早く外に出ないと!

 俺は病院の門を出るとその足でさっき人の燃えていたところまで到着する。
「遅かったか…」
 もう消し炭状態となっている、男性とも女性とも解らないほど焼かれた死体…何故、こんな事に…
ボ!
 明かり?俺は前を向いてみる、道路の真ん中に何かが居る…月明かりでぼうっと浮かび上がったそれは、俺の知ってる常識を全て焼き尽くした。
 真っ赤に燃え上がる炎を体に纏った炎の化け物…この世の者じゃない、鬼にも似ていた。
『……見られた…』
 その炎の化け物は、俺の姿を見てそう呟く。まさか、こいつ…事件を見た俺を…
「赤星君、捕まえたわよ、この事は院長に……え、何!?あれ…」
 後ろから、俺を追っかけていた看護婦がようやく俺に追いついて…今の情況と俺の前にいる炎の化け物を見てしまう。
 だめだ!
「逃げ…!」
『ムン!』
 炎の化け物は手を前にかざすと、念波見たいのが俺の横を通り過ぎる…その念波は俺の後ろの看護婦の体に当たったと思ったら、看護婦の腕から真っ赤な炎が上がった
「な!!」
「きゃぁぁぁぁーー!!」
 腕の炎を見て看護婦はパニックとなり、暴れまわるが炎は腕から段々体へと移り、彼女の体をみるみる炎に包み込んだ。火達磨となった看護婦の悲鳴は途中で途切れ…段々と炭となり、灰が落ちるように体が崩れていった。
「……」
 目の前で起きてる光景が俺には信じられなかった、こんな事ってあるのか?さっきまで俺を追っかけていた人が…炎に巻かれて灰となり、死んでいく…
「お前ぇ…なんて事を…」
 俺の怒りは爆発して、炎の化け物に向かって殴りかかろうとする。
『メルトダウン…』
 炎の化け物はさっき看護婦にやったように俺にその手をかざした…
ボォ!!
 殴りかかろうとした腕が燃え上がる…そしてさっきと同じように俺の体を奴の炎が燃え広がっていく。
「う!」
 何て熱さだ、立っていられないくらいに熱い…俺の体が焼ける…とても、とても熱い…この炎で俺は死ぬのか?化け物の炎で俺は…
 俺は火達磨となって倒れこんだ……
『他愛ない……』
 炎の化け物はそう呟くと、ゆっくりと反転して去ろうとした…俺を殺して行こうってのか…熱い…
 とても熱いが…俺の体にしてはそれだけだ…

『な、何!?』
 今だ火達磨状態の俺はすくっと立ち上がる…意識を失うくらい熱い炎が俺の体を纏っている、何時倒れてもおかしくないくらい熱い…だが、俺は立ち上がった。
 許せない、俺は奴を許せない…
『…私の炎を食らいながら、立てるだと?たかが人間が…何故!?』
「だぁぁーーー!!」
 俺は燃え上がる拳を振り上げ、奴に走りよりその顔面を殴りつけた。
バシィィーーー!!
 奴はそれで5メートルほど飛ばされ、それにより術が解けたのか、俺の炎は鎮火した。しかも体の火傷が徐々に治ってゆく…炎でも焼けない不死身の体…
『…私の炎を受けながらも、私を退けるとは……不死身の体…』
「来い!もうお前の炎なんて通用しない!」
 俺は拳を振り上げ奴を威嚇する…
『……ふ、気に入ったぞ、人間…だが今のお前では不死身の体とて焼き尽くされるのは必至だ…良いだろう、お前にこれを渡す』
 炎の化け物は至って冷静に俺にそう言うと…俺に何かを投げ渡す。見るとそれは赤いブレスレットのような物だった。
『お前に決闘を申し込もう……明日の同刻より、私はそこの巨大な橋に赴く…そこでどちらかが焼き尽くすまで戦う』
「……もし俺が負けたら…」
『私の炎がこの町を焼き尽くすだろう……そうしたくなければ、素直に従う事だ』
 決闘を申し込んでおいて脅迫か…この化け物…おかしい。それにこのブレス…罠かもしれない。着けたら焼けちまうって事もある。
『明日、そこで待っている…必ず来い、人間よ…』
ブゥン
「ま、待て!」
 炎の化け物は脚から炎を出してその炎が体を包み込むと、何事も無かったかのように消えてしまった。
「…明日、来なければ街が……」
 炎の化け物に何もかも焼き尽くされる…俺の町が、化け物に焼かれてしまう…さっきまで関係ないと思っていた事が…今ではこの様だ。
「ちぇ、俺に町を守れってのかよ…」
 炎の化け物が俺に渡したブレスを見てみる、中には赤い宝石がはめられてそれが炎が上がるように輝いている。
「これをどうしろってんだよ!」
 ブレスを地面に叩きつけようとして俺は躊躇した。もし俺が行かなかったら…だとしてもこの地球には、もうスーパーヒーローは居ない…あんな奴を倒すのは不可能だ。
 俺はスーパーヒーローでもない…どうしたら良いんだ…

 ただ、許せなかった。奴が人体自然発火の犯人と言う事は確定しているだろう。俺の目の前で2人の人を殺したあいつが…人の命を平気で焼き尽くす奴が……
 心の中で何かが燃え上がるような気がした。


 病室に何事も無く戻り、俺はブレスを枕元に置くと眠りについた…
「どちらかが焼き尽くすまで…か」
 俺はさっきの光景が目から離れず、眠りにつけなかった。炎に焼かれる人…そして自分、だがその火傷もまた治ってしまう俺の体…
 全くこんな時まで死なないなんて…本当誰が頼んでこんな体に…

「ああ、どうしよ…」
 それでも、俺は戦う決心がつかないで居た…あいつと戦う。不死身でも死ぬってどんな感じかな、一瞬か…強烈な痛みがあるのか…
 このブレスもどんな効果を齎すのか解ったもんじゃない。怖いと感じた事は、久しぶりか……

 次の朝、退院の時だってのに病院で出された食事が喉を通らない…今日は朝から夕べから行方の解らなくなった看護婦さんの事で病院が慌しかった。
 客観的に言ったのは俺は真実を知ってるから…だ…『メルトダウン』…完全に消失したんだ、彼女は…外にあるのはただの不審火の後として処理されるだろうな。
 俺はそう思いながら、退院の支度をする為着替え始めた。とも角今日は風呂は入ってまた寝たい…炎の化け物と会ったのが、夢だと…思いたかった。
「よ!一成、迎えに来たぜ!!」
 勝人がドアをバターンと開けて俺を迎えにやって来る。
「勝人、お前は相変わらず元気だな」
「そういうお前は、かなり顔色が悪いぜ。もう一日ここに居た方が良いんじゃないか?」
 ニカニカと笑いながら、勝人は俺の顔色を伺う。
「気分でも悪いのか?」
「いや…そうじゃない」
 勝人はあの事を知らない、いや知る必要は無い…俺が人体自然発火の犯人と接触したなんて、それが化け物だって事も、言えるはずが無い。
「何だ?よし、退院祝いだ!ラーメン食いに行こうぜ!」
「あ、勝人…俺、食欲が…」
「良いから来い!」
 俺は勝人に強引に連れられて、病院を急ぎで退院する。途中「あらあら、仲がよろしい」と病院で知り合ったばあさんに言われても気にせず、勝人は俺を行き着けのラーメン屋に連れて行った。
「おっちゃん!大盛りスタミナラーメン!!二人前!オーダー!」
「あいよ〜」
「…って勝人、俺…今食欲が…」
 ラーメン食うだけの食欲が無いのに…こいつはどうして…
「おまち〜…お?一成のあんちゃん。退院したんか?事故ったって勝人坊に聞いた時は驚いたぜ、こいつはわしの退院祝いだ!」
 そう言いおやっさんはチャーシューを2枚追加してくれた。
「あ、いや…俺は…」
「食え、一成!今はとにかく食え!オレが奢ってやるよ」
「ま、勝人?」
 俺はしぶしぶ、勝人の奢ってくれたスタミナラーメンを食う…これって、なんか妙に懐かしい気分がしたのは…そのせいか…
「勝人、そういやお前が部活の大会で、おまえすっごいへこんでたよな…」
「……」
 ドキッとしたように勝人は箸を止める…わっかり安い奴。それは中学の頃勝人が所属していた駅伝部の大会前…急に勝人が居なくなったと連絡が来た、案の定その時は勝人は俺の家にいた、本番前のプレッシャーに押し潰されそうになってへこんでいたのだ…
 連絡を貰った俺は、今のようにこうしてラーメン屋に強引に勝人を連れて行って…
「くぅ、忘れてるかと思ったぜ、親友!」
「まあな、あの時も俺の奢りだったろ?」
「うん、一成がここに連れて来なかったら、今頃…棄権だったからな」
 結局はギリギリセーフで到着して…何とか勝人の部は優勝を勝ち取った。
「とにかく、さっきまでのお前、あん時のオレと同じようにへこんでっからよ、同じようにやった、何をしようとして、何が不満か知らないが…」
 そう言いかけてすうっと勝人は息を吸うと、立ち上がって…
「逃げんなよ!目の前の真実から!」
「!?」
「って、前もお前オレに言ったよな…」
 勝人は頭をかきながら聞き返してきた。本当、俺もお前も似た者同士だな…馬鹿みたいに…。俺はそう思うと、スタミナラーメンが伸びない内に口に放り込んだ。
「お、おい一成!よーし…負けられっか!」

 考えてみると、とても重たい事だ…人命それも一つの街に住む何人もの命…俺は不死身でたとえ焼き尽されても生き返るだろう。だがその時はこの街はあの炎の化け物に焼き尽されている。何もかもが…俺の知ってる町並みは、生き返ったら無かった
…まるで浦島太郎だ。だけど、年月が経ったんじゃない…一瞬にして消し炭となるのだ。

 人が死ぬ所を見た、奴なら簡単に人など焼き尽す事ができる。繰り返したくない…決して…絶対に…そんな事あっちゃいけない!
 自分だけ助かって、勝人や街の人を見殺しにするなんて、寝覚めが悪すぎる。俺がやらないと…
「サンキュウな…勝人」
「ああ?これで、あの大会の借りは返したからな!」
「…つけにしといても良かったんだけどな…ま、いいか」
「む、もしかして…わざとか?なあ、一成」
「んなわけねぇだろ」

 その後、勝人といつも通り馬鹿話をしながら、ラーメンをお替りしながらしばらく時間を潰した。時間が来れば、俺は…行かなきゃならないからだ…。
「本当なんだって、なぁ…一成もなんか言えよ…」
「不死身ねぇ、いかにもそうには見えないが、長生きしそうな顔だよな」
 今ラーメン屋の親父に勝人が俺の不死身の体のことを離しているが一向に信じてくれない。まあ、信じた所で…どうなるか…だけど…
「で、長生きしそうってどういう意味だ?」
「まあ、こっちの話だ」
 もうそろそろ、日も落ち時間も段々と決戦の時間に近づいて来た。炎の化け物もそろそろ来たかも知れない。
「勝人、そろそろ俺…家に帰るが…どうだ?」
「ああ?そか、オレはちょっと用あるから遅いかも……たぶん帰ったら寝そうだから…明日…また起こしてくれ」
「またか…いつも起こしに来る俺の身ににもなれ」
「ま、いいだろ?じゃな」
 そう言うと、俺は勝人に手を振って、店を後にした…

 空が昨日と同じように、血の様に、炎のように真っ赤になっていた。思えば事故る前に空を見た時も…同じように空は真っ赤だったような気がする。奴が来る兆候だったらしい…そもそも、奴は何者なんだ?
 いや、何にしたって俺達にとって危険な存在だって事は確かだ…でも何故これを渡したんだろう…俺は奴から渡されたブレスを手にとって見た。
 ブレスに装着されていた赤い宝石が赤く光っている。燃えるように…試しに腕にはめてみるが、それほど熱くないが、手から暖かな気のような物が流れてくるのが解った。
「何だろう、この熱い何か…心に、心に響いてくるこの熱い鼓動…」
 この時俺は自分自身が真っ赤に燃え上がる『炎』となったような気がした。
「これなら…やれるかもしれない!!」
 そう思うと、俺は奴の感覚を探し、街を走った。心なしか体が軽くて、走りが早くなっていくのが解る。こいつをつけた瞬間、俺の体の情報が一から書き換えられたようなそんな気がした。
 走り出してから、しばらくして…満月が昇ってくるのが見えて…勝人を思い出した。
 勝人も今日は用事があるらしいな、それだったら都合がいい…後で勝人が俺のうちに行ってもぬけの殻だったらなに聞かれるか解んないから…な。

ビキーン!
 ガラスが鳴り響くような、高い耳鳴り…右から左に抜けるように過ぎ去って行く奇妙な感じ。覚えてる、この感じ…間違いない、奴だ!
「ち!あっちか!」
 俺は右から左に抜けて行った感じを辿って、奴が何処に向かってるのか解った。右、左…真っ直ぐ、また曲がった…今度は右…この先は確か高速道路の為に作りかけの陸橋があるはず…あいつは確か…
『私はそこの巨大な橋に赴く』
 といって居やがった、巨大な橋ってそこの事だったのか!!

 俺は陸橋の誰も居なくなっている工事現場をすり抜けると、奴の感覚に向かって走った。不思議と息も切れていない。むしろ奴の感覚を察知して早く会いたいという感情さえある。
「危険な物だな、これ…」
 腕のブレスは明らかに奴と共鳴している、呼び合っている。

 陸橋の先がない所で…赤い炎が見えると俺はそこで走るのをやめて、ゆっくりとそいつに向けて歩く。
「約束どおり来てやったよ…」
 炎の化け物に言うと、後ろを向いていた奴は、くるりと踵を返して俺を見た。
『ほう、いい心がけだ。ますます気に入ったぞ…人間…よくこの私と戦う気になれたな…』
「気が触れたと、言いたいのか?」
『そう取っても構わんだろう…だが、お前はそのブレスを装着してもその意思を保っているとは…本来なら、灼熱の炎が体に回っているはずだが』
「やっぱ、罠だったか」
『いや…罠と言うよりお前の力を試したかった…見事、お前はブレスを我が物としている』
「試す?」
 相変わらず、何を言ってるんだ?この炎の化け物は……真剣勝負を挑もうとしているのか、それとも罠にはめようとしたのか…どちらにせよ解らない。
『むん!』
ボォ!
 奴は体から、昨日とは比べ物にならないくらいの炎がまるで火山のように噴出した。本気かよ!!
「ちぃ!」
 お世辞じゃないが、俺はこのブレスの使い方を知らない。我が物としたと言うが実際どうして使えばいいんだ…
『さて、先日の続きと行こうか…人間よ、お前の力を見せてみろ!』
 その炎を両手に宿すと俺に投げつけてきた。
『メテオ!』
 それまでの炎とは随分違った、灼熱の炎の塊が俺に命中する。体が抉り取られるような感覚が一瞬あったが、体は引き千切れた部分が…すぐに再生する。
『メルトダウン!』
「ぐあぁ!」
 炎の化け物が、一瞬にして焼き尽す技を使ってきて俺の体に確実にダメージを与えていく。
 再生能力が格段に増している…奴もその事が解って攻撃の手を休めないんだ。
 炎が俺の体を焼き……俺の体を再生する前に破壊しようとする。これが奴の戦法…『焼き尽す』と言う戦法か…
 意識が…朦朧となるほど…
『私に力を本気で打ち込んだ炎だ…再生の隙も見えまい…。たとえ不死身の体とて、永遠の命など無いのだ……これで終りにしてやる』
 手の内にメテオをチャージして、炎は手の中で圧縮して行き小さいながらも体を一瞬でバラバラにできるくらいの炎を作り出した。
『炎を極限まで圧縮したメテオだ!これを食らえば、お前の体は跡形も無く消滅するであろう…』
 く、炎が視界を遮って…何時撃って来るのか解らない…
「ぐぁぁぁーーー!!」
『死ね!メテオ!』
ギュワァァァーーーー!!
「…く!」
 一瞬炎の球が俺の目の前に来た時、俺の命令を反して体が勝手に動きブレスをしていた腕を炎の球の前に防御するように出す。勿論、そんな事をすれば腕は愚か体を貫いてしまうほどの攻撃力を持つ物だと最初からわかっていた。
 だが、腕にはめられたブレスに仕込まれている赤い宝石はその火球を吸い込んでいった。
「『炎を吸い込んだ!?』」
 俺がそう思った瞬間、赤い石から更に強い炎が出て俺の体を包み込んで行った。奴の炎を消し去りその炎は俺の体に纏わりついていった。
「熱くない…この炎は!?」
 不思議な感じのする炎だ…俺の体を…優しく包み込んでくれるような。何だ…このイメージ…この言葉を言えと言うのか?
 ブレスが俺にイメージを与えていく…これなら、勝てる!
バーーン!
 奴の炎が相殺され俺は天高く腕を振り上げると…浮んだイメージを、叫んだ。
「炎装!」
 ブレスから光が放たれ、俺の体に纏っていた炎が、光の筋となって…体全体を包み込んで、頭にはマスクが装備される。
 体を覆う、赤いスーツとなった炎は俺の体にぴたりとフィットした。この装備…SUPの戦隊のレッドに似ている…
『な、何!?『炎』のクロスブレスの力を引き出しただと!?』
「こいつは…」
 レッドコマンド?これは、レッドコマンドと俺の頭にイメージが浮んできた。次に浮んできたイメージは…
『まさか、『炎の鳥人』灼熱特捜…ファルコレッダーにただの人間がなったと言うのか!?』
「灼熱特捜ファルコレッダーか、今の俺は…」
『常人なら、あれに封印された『炎の鳥人』の炎に焼き尽されてしまうはず…私の炎もその力を反映させているのに…奴にはその適応力が…そうか『不死身』の体が…ふ、不死鳥と化したのか…』
「うおぉぉーーーーーー!!!」
 俺の気合の咆哮が、響き渡り炎の化け物を威圧する。
『く、この熱の篭った、プレッシャー…まさしく『炎の鳥人』に相応しい…ふ、ならば…私と貴様、どちらが炎に相応しいか決着をつけようか!ファルコレッダー!メテオ!』
 炎の化け物はギンと俺を睨みつけると、両腕に炎の帯を作り出し投げつけてきた。殺気までのメテオではなく、炎の蛇のように俺の体に巻きついて爆発した。
ボーン!
『メテオスネーク…たとえお前が炎の鳥人となろうと、私には勝てない』
「そうかな?」
 俺は爆炎の中腰のベルトに装着されていた、赤い銃を引き抜いた。戦い方が頭に浮んでくる…奴と戦う力を俺はイメージに浮んでくる。この銃を使い方は…
「エナジーシューター!」
 赤い銃のから炎の弾丸が発射されて、奴が放ったメテオを打ち壊した。
『何!炎が炎で相殺した!?』
「お前の技が負けてるんだ……伝わってくるファルコレッダーの鼓動が…お前の所では伝説かもしれないが…不死身の体と灼熱の炎を手に入れた…今は、ファルコレッダーは俺だ!」
 戦い方のイメージが俺の頭に流れ込んでくる…今の俺は、無敵だ!
「火玉!!」
 そう言い放つと、俺の体の周りに無数の赤い火の玉が浮かび上がる。俺は気を込めながら、エナジーシューターの照準を奴に向け…ターゲットをインサイトし…
「炸裂炎!」
ババババババ!!
 引き金を引くと、無数の火の玉は奴に向かって全部放たれた。
『ぐおぉぉーーー!!』
 全弾命中した奴は燃え上がり、もがいている…よし、この一発で終わらせよう。
『この私が炎に焼かれるとなど!あって、たまるかぁ!』
「む…」
 止めのエナジーシューターを食らわせようとした所を、奴が近距離まで間合いを詰めてきた。
「く!!」
『食らえ!』
ザシャ!
 奴は両腕を一つにして、炎の剣を作り出すと俺の胸を斬り付けた。
『焼き尽す刃、フレイムシュナイダーだ…これで貴様の心臓など焼ききってくれようぞ!』
 胸の傷はゆっくりと回復していく…いくら不死身でもあの炎の剣を心臓に一突きだと…
「炎の刃か……そっちも接近戦なら」
『何!?』
ボウゥ
 俺は炎を両腕に宿すと、それにイメージを注ぎ込み具現化しき、強固な手甲を作り出した。手甲からは絶えず灼熱の炎が噴出している。
「イフリートグラブ!」
『炎を具現化させて、手甲を作り出しただと?』
「そっちが剣なら…俺は、拳でその刃を砕いてやる!来い!!」
 炎の手甲から指を差すと、奴は楽しそうに笑い…
『ふ、いいだろう!勝負!』
 両手に出来た刃を振るい、周囲を焼ききりながら俺に襲い掛かってきた。
『お前を魂から焼き尽してやる…』
「やってみろ!」
 手甲が刃を弾き返し…一糸乱れぬ攻防が繰り広げられた。俺は頭から来るイメージ便りに、奴に攻撃を加え、俺と奴の間には火花が散った。
 互いの拳と刃が交わる瞬間に、アスファルトに火が点き…周りを炎の海と変えて行った。俺もあいつも炎を使う。二人の炎は赤く燃え上がり…ぶつかり合った。
「でやぁ!」
『ふん、遅いぞ!ファルコレッダー!』
 奴の刃が一足早かったか、俺の先手を取って俺に攻撃して来た。
 俺の手甲で、奴のフレイムシュナイダーを受ける…鉄鋼に段々と刃が食い込んで行く…ち、焼き斬れそうだ。
 魂を焼き切るつもりで来るらしいな……腕が熱くなってきた…
『ここまでだ、死ね!ファルコレッダー!!』
 奴の押しが激しい、このままだと手甲が持たない…どうする…考えろ。イメージが頭の中で固まっていく、この技なら!
「ぐおおお!炎よ!」
バキィィ!!
 手甲が炎を噴出し、炎の化け物のフレイムシュナイダーを叩き割った。
『ちぃ、炎で…負けるとは!?これも、ファルコレッダーと私の各の違いという奴なのか?』
「確かに言った通り、お前の刃を拳で砕いたぜ!それにこれはファルコレッダーになったからじゃない、お前を倒したいと思う気持ちと…お前に焼かれ殺された人達の仇!」
ズバァァーーーーン!!
 灼熱の炎を纏った拳を奴の胸に叩き付け、奴の胸の装甲版が砕け落ちた。
『ぐあああーー!私が、人間の炎で負ける…』
「確かに、炎と炎だと勝負にならない、だが今お前を焼き尽しているのは、俺の『怒りの炎』!今のお前の炎に俺の炎を打ち消す事は出来ない!」
『気持ちと言う物か…それだけで燃え上がらせる…う…これで、私の役目も終わりか…』
 俺は両手を広げ、その中心にバレーボール程の炎の球(メテオ)を作り出し上空の満月に向かって投げ、俺自身もそれに向かって大ジャンプをした。月を隠す炎の球より高く飛ぶと炎の球の中に飛び込むようにキックを放った。
『お前の勝ちだ!継承者よ!』
「ファイヤーエナジーアタック!!」
ゴォォォーーーーー!!
 自ら炎の塊となった俺に奴がそう言い放ったが、俺は構わず奴の体に突撃した。
ズガァァーーーーーン!!
 キックと共に灼熱の炎が奴を直撃し…奴は大きく吹き飛ばされた。
『ぐあああぁぁぁーーー!!…がぁ…ぐ…』
 炎の化け物はその衝撃で赤い体が燃え尽きた灰のような色に変わり、膝をついた。
『がぁ…』
スチャ!
 顔を上げた所でエナジーシューターの銃口を額に突きつけた。

『撃て…私は敗北した…』
「まだ、聞きたい事があるからな…まだお前にはしばらく…生きてもらおう」
『それが人間の情けと言う物か?魔界では通用せんぞ』
「魔界か、お前達の出身は…今宇宙から来ようとしている侵略者とは別物ってことか…」
 何でだろう、宇宙に宇宙人が居るって…なんで解ったんだろう…イメージが頭に入って来る、それだけか?
「例えなんであろうと、今のお前は炎を出せない状態だからな…さあ、吐け!お前たちは何者だ!」
『…私は、魔天13使徒12番『フレイムガゾーン』…』
 おかしい、こいつからもう悪い気がしないし殺気さえない…むしろ銃口を向けて無くても安心できそうだ。
『お前たちで言う魔物と言う者だ…魔界の秩序を守る役目である13使徒の一人だ…』
「その魔界の秩序を守る役目の一人が何故こんなマネをした…今のお前からじゃさっきの行動が全然理解できない…」
『いい観察能力だ、その通り先ほどの私は…自分の意思で動いていない。元々魔界の秩序を守り、魔界の平和を保つ役割を持っていたのが私達13使徒だった、だが、何時の日か魔界はおかしくなった…魔界の住人である『ルシファー』が人間界に行く確率が増えたのだ…当然、人間界に行ったものは魔界の掟破りとして処刑される…その危険を顧みず、彼らの危行は続いた…まるで、何かに操られてるかのように』
「操られてる?何者にだ?」
『それは、解らない……ただ、操られる前に…私は保険をかけたそれが、これだ…』
 フレイムガゾーンは俺の腕にはめられてるブレスを指差した。
『それは…いずれ、人間界を襲うだろう我が同胞達から…人間界を守る為、炎の鳥人の力を封印していた。いつか、これを持つべき者が現われ…炎の鳥人となる事を、私の願いどおり、お前は表れた……礼を言おう人間』
「魔物に礼を言われる義理じゃないが…俺が選ばれたと言うのか?」
『そうだ、お前は私には無い『炎』が心にある…その炎があれば、魔界を止める事ができるやもしれぬ…だが、『怒り』だけの感情だと…お前は自らの炎に焼き尽されるだろう…』
 俺の怒りの炎が、フレイムガゾーンの危行を止める事ができた。だがそんな資格俺にあるのか?俺はヒーローでもない…不死身の体を持った、こいつよか俺の方が化け物ではないか。
『じ…時間が来た…私も燃え尽きる時が来たようだ、最後に…お前の名前を聞かせてもらおう……』
「赤星一成だ…」
 俺は戸惑いながらも、灰となっていくフレイムガゾーンに名前を教える。フレイムガゾーンの体は燃え尽きた灰のように…崩れていきながら…
『一成か、最後にお前に託せて良かった……我が一生に一片の悔い…無…し…』
ザザザァァーー
 フレイムガゾーンは燃え尽きたボクサーのように、力なく俯きながら本当に燃え尽きた灰のように崩れて行き…最後にはそこに灰の塊ができた。
「結局、俺は…このフレイムガゾーンが言ったとおり、『炎の鳥人』になれってのか…」
 はぐらかされて、消えていったようにも見える。何だか、寝覚めが悪い夢のようにも感じられた…魔界、ルシファー、魔天13使徒、炎の鳥人、全てが嘘の様にも見える。
 だけど…俺は勝った。俺も何度も誰かと喧嘩をして来たがこれだけ勝利の感じがしないのは初めてだった。
 不死身の体故、俺は炎の鳥人…ファルコレッダーになった…戦いのイメージが頭に浮んできた、敵に対して『怒りの炎』で戦って…そして勝った。
それだけじゃ、いけないと言うのか?

 俺は燃え尽きたフレイムガゾーンの灰に問いかけるように見つめながら俺はエナジーシューターを左のホルダーにしまい…複雑な心境の中変身を解こうとした。
「!?」
ドクン
 変身を解こうとした時、何かに睨まれるような強い視線を感じた。おそらくはフレイムガゾーンと戦ってる時から、ずっと監視していたのだろう…俺のことをじっと見ていたに違いない。
 ホルダーからエナジーシューターを引き抜いて、構える。そいつは俺を獲物と判断して…隙あらば、食いつくつもりだったに違いない。

 正面にはやけに目に付く、満月がそこにあった。もう宇宙開発の手が伸びて、段々と月に移住する人間が出てくるのは間違いない…それでも、満月は美しく俺に青白い光を捧げてくれる。夜の女王と言うのはあながち嘘じゃないかもしれない…
 満月につい目が行ってしまい…俺はその美しさに体が硬直するような感じがした。
「……」
 いや、ちがう、これは…見とれているからとか、そうじゃない!つきに見とれている俺の後ろに…奴が居る…冷たく、背筋に氷をつけたようなゾクッとする感じ。一瞬の隙、月に目が行っただけの僅かな時間だけで俺の背後に回りこんだ。
月を獲物を狩る為の罠にして俺は奴の氷室の中に閉じ込められたのだ…落ち着け一成、奴も俺が自分に気づいて、攻撃しようにも攻撃できない状況下だ…
こっちが先手を取れば……炎で氷を溶かす事ができる。イメージだと、後3秒後奴の爪が来る、チャンスは1度だ!
ジャ!
 今だ!
 エナジーシューターの引き金に指を置き、振り向き様にそいつに銃口を向けた。

 一閃の光が、月夜に走った。

続く

 設定資料集

敵〜魔天13使徒〜

12番『フレイムガゾーン』
コードネーム『尽きぬ炎』
身長:2m13cm 体重:(体が気化組織な為不明)
パンチ力:4t キック力:4t
技:フレイムシュナイダー(両手に作られる、炎の刃。人の心臓から『魂』を焼き尽くす事も出来る。43t)
   メテオ(炎系の魔人なら大抵できる技。炎を固形に集中して球体にしたのを放つ。威力は溜め込んだ炎によりまちまち)
   メテオ・スネーク(メテオを蛇のように鞭状にして巻きつけて爆発させる。魔界広しといえど、フレイムガゾーン以外この技は出せない)
   メルトダウン(物体の周りにある空気中の酸素を爆発させて燃え上がらせる技。自然発火現象に最も使用した技で、回避は不可能)
   焼き尽す(メテオとメルトダウンを使ったフレイムガゾーンの連続技。強力な再生能力を持った者でも連続的な炎の攻撃には耐え切れない)
 一成達の町で連続放火魔、人体自然発火現象の犯人たる魔人。魔界の秩序を守る13方向の内12方位の位置に当たる、『使徒』で本来なら魔界の平和と秩序を守る為の存在であった魔人であったが、何かを記に自らの意思に反して人間界へと現われたらしく、残虐な行為に走った。自らの炎の力に加え、『炎の鳥人』のブレスに宿った炎で、燃え尽きぬ炎としてあったが…一成にそれを渡してしまい敗北後…尽きた。

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