満月を見ると、何時に無く興奮する。俺の深層心理をかき乱して、心の奥底…深層心理の裏手にある『殺意』と言う欲求を開放させる。
 今までの道徳概念を一瞬で凍りつかせて、冷血無比の怪物へと俺を作り変える。多重人格なんて生易しい物じゃない。俺自身それを望んでやっている事だから。
 獣の数字『666』満月の夜、6時6分6秒…その時間に俺は月の光と共に人間の名前を捨て、獣と化す。
 一族伝来の能力の中で党首である『青い豹』…それが俺だ。今まで、俺は豹を薬で抑えてきた…今年になって薬を使っても押さえられなくなったのは…何故だか解らない。

 数分前に別れた親友に俺は嘘をついた、用があると言って俺は別の場所へと向かった。俺の目標は、今この町で頻繁に起きる人体自然発火現象を引き起こす、犯人である炎を出す化け物にあった。



超人伝説活劇
スーパーヒーロー IN THE アース
第二話『超獣大帝の咆哮』



スチャ
 俺が向けた、エナジーシューターの銃口を向けた敵は俺が引き金を引くより早く、その豪腕でいなした。
『ガルルル…』
バキュン!
 放たれた、火の玉の軌道は反れあさっての方向に飛んでいった。
「こいつ!」
 一瞬で銃を弾くなんて、こいつ!?フレイムガゾーンが言ってた『ルシファー』って奴か!?
狼のようなイヌ科の顔を持って豹の様なはん点がある…青黒い獣人、氷のような凍て付く青い瞳を持ち、その眼が放つ冷たい極寒の眼差しが俺の動きを凍り付かせるように引き込まれ、爪や牙よる攻撃がダメージを与えていく。
 早すぎて、接近戦に回り込めない!フレイムガゾーンと同等かそれ以上か!?
『がるる…ぐわ!』
バシ!
 宙返り反転の蹴りで吹き飛ばされ、距離が出来る、俺にとっては好都合だ!エナジーシューターの銃口を獣人に向け。
「火玉!炸裂炎!!」
 火の玉を周りに出現させ、エナジーシューターの引き金を引くと同時に無数の火玉が炸裂して、獣人に向かって飛んだ。
「いっけぇーーー!!」
『ぐわう…』
ビキビキ…
 空気中の水分が、凍っていく…!?
 獣人は向かってくる、無数の火玉と同じ数の氷の塊を作り出し、襲い掛かる火玉に対して打ち返してきた。
バババババババババ!!
「相殺したのか?」
 フレイムガゾーンを追い込んだ、必殺技を相殺した?やはり、『怒りの炎』があったからフレイムガゾーンを倒しただけで…俺はまだまだ自分の炎を100%引き出せないのか…
 それとも奴が強いのか!?あの獣人…
「ブラスト!」
 エナジーシューターを連射させて、距離を取りつつ攻撃をしてくる…奴は放たれた火玉を爪で弾きつつ、接近戦を仕掛けようとする…
『がう!』
ジャイン!!
 獣人の爪を俺は紙一重で避けると、凍て付く衝撃波がアスファルトを切り裂いて橋を砕き、橋桁がその力で崩壊した。
「何て馬鹿力…」
 作りかけの橋が崩壊して柱一本で支えられた、橋桁はまさに闘技場を思わせる、向こうに居た奴は驚異的なジャンプ力で飛翔して、こちら側に戻ってくる。爪の一振りの衝撃波でこれだけの破壊力。
「食らったら心臓が抉れるか…」
 こっちは抉られても、元に戻っちまう体だけど…流石に痛そうか…
『がるる…』
 おかしい、さっきから戦ってるのに戦いのイメージがつかめない。俺も闇雲に戦っているが…ファルコレッダーは何も俺にイメージを与えてくれない。そもそも、こいつから殺気は感じられるが、邪気(らしき物)は一切感じられない。
 それになんだ、この感覚…この獣人と前と合ったような…
『ぐわぁ!!』
 だが奴は俺を待ってはくれないようだ。確実に喉元に食らいつこうとしていた。
「イフリートグラブ!」
 両腕に炎をまとって、イフリートグラブにすると接近戦を挑んだ。柱一本で支える橋桁だ!エナジーシューターの遠距離攻撃は通用しないだろう。
「ストレート!」
『がう!!』
 奴は俺のパンチを紙一重で避けるが、イフリートグラブの炎が奴の肩を反れて、その余波で奴の腕が多少切れて血が出た。
「早い!」
『ぎゃぁ!』
バシィ!
 奴の平手が俺をはたく、何とか防御で凌いだが俺はアスファルトに二本の筋を残して後ろに後退させられた。
『グルゥ…』
「ち!…ん?」
 追撃が来ない…どころか、奴の動きはさっきの一撃を当てて以来…止まってしまった。
『…が…う…』
「……??」
 小刻みに獣人の体は震えている、明らかにさっきとの様子が違う。何かを訴えるかのように身もだえ…鋭い爪の生えた指を俺に向けると
『…が…い…イッセ…イ……』
「…な、お前!?何故俺の名前を!?」
『あ…ああ…オ…オレ…は』
 は、奴の動きが鈍くなった?今だ!
「はぁぁーー!!」
 イフリートグラブに炎の力を手中させて、獣人に向けて拳を振り上げた。奴はよろめいていて避けるそぶりは見せない。
『ぐああ…!』
 奴に拳が当たる瞬間、俺は叫ぶ獣人が…苦しみもがく勝人に見えた。
「勝人!?く!!」
 俺はとっさに拳をそらして、俺の真下にある橋桁を支える一本の柱に向かって叩き付けた。
ズガァァァーーーーーン!!
 太い柱ごと橋桁に皹が入り、皹からマグマのような炎が噴出し一気に粉砕した。
『ぐ、は!』
 獣人は崩れる橋桁から飛んで、逃れたが俺は崩れる橋桁と共に落下していく。
「ぐあーー!」
 瓦礫と共に落下した俺に更にその上から、瓦礫の山が降り積もった。

 スタンと獣人は橋から離れた所に着地して、瓦礫の山に目を向ける。
『い…いっせい…ぐぅ…がぁぁぁーーーーーーーー!!!』
ジャ!
 咆哮と共に、獣人は冷たく輝く満月の夜空に飛び、消えて行った。


ズガァァーン
 俺は何とか、瓦礫を砕いて瓦礫の中から脱出し…変身を解いた。ち、やっぱり色々な所を瓦礫で怪我をしている。不死身の体が無ければ普通の人間なら死んでるはずだ…
「不死身か…獣人は?」
 周りを見渡すと、獣人の姿はそこには影も形も無かった。どうして奴から勝人を…獣人からフレイムガゾーンと同じような気がしなかったからか、奴が『ルシファー』じゃないって事は確かかもしれない。
 だとしたら、あいつは?
「勝人…」
 なわけないよな、あいつは多分用を済ませて自分の部屋に行ってるはずだ。あれが、勝人なわけない。
 疲れたな、フレイムガゾーンとあの獣人と戦って、力を消耗しきったらしい。そう言えば何日も家に帰ってない。早く帰って休みたい気がした…突然フレイムガゾーンに俺はこのブレスを渡され…俺はこの町を救った…だけど、奴の言うようにまたあの獣人のような化け物と戦うのか?炎の鳥人…灼熱特捜ファルコレッダーになって…
 少し不安になった。とにかく今日の所は帰って眠る事にしよう…俺は人が来る前に瓦礫から抜け出して、家に帰る事にした。
空を見上げると…満月が嫌に目に付いたようだった。

ガサガサ…
『しぇ〜』
『キリキリ…』
 端の傍を去っていく一成の背を見送る二つの影……闇に溶け込みながら、それは一成の後をつけて行った。

『はぁ…はぁ…』
 俺は自分の住むマンションの屋上に、着地して…月の光が差さない壁の向こうに走った。
「……く、はぁ」
 『豹』の体から人間の姿に戻り、自分がした取り返しのつかないことを思い出し、頭を抱えた。
 やっちまった、あいつに…一成を襲ってしまった。もうそこまで理性を失ったのか…たとえ、あいつが不死身であっても俺が変身したら、本当に死んじまうかもしれねぇ…

 俺は本当はあの炎の化け物に狙いを定めていた…奴を追って着いた先に、一成が居た…何度も、化け物の火に焼かれながら…一成は赤いスーツを着た戦士に変身し…炎の化け物の力を凌駕して、勝った。
一成も変身できた事に少し驚いた…あの時、ラーメン奢った時なんか少し様子がおかしかった……あいつの用も俺と同じ…炎の化け物を倒す事だ。一成は…俺達のために戦いその体を炎で焼きながらも奴をねじ伏せた。
だけど、俺は自分を抑える為奴を倒して満足させようとした…だけだ…

 しかも獣の本能は勝った物が獲物になる……そう思ってしまった。俺は一成を攻撃したくなかったが、獣の本能に振り回され何も考えられなくなっていた。
 気づいたらこれだ…

 なさけねぇ、親友に合わす顔がねぇよ。

 どうして、獣神忍者の首領の血筋を辿っちまったんだろうな、俺…


「勝人の奴、帰ってるかな?」
 隣の部屋の扉に目をやった。そんな筈じゃないよな、あの獣人が…勝人な筈ない。そう思い俺は自分の部屋に戻って…寝る事にした。
 ブレスは外せないと思ったら、簡単に外す事が出来た。ファルコレッダーになって外せないと思ったら…どうしよう…次使うかどうか解らない。
このまま、これを捨ててもいい…
「俺にスーパーヒーローは向かないっての…」

 俺はそう言いベッドに横になって疲れを癒す事にした。疲れていたのか…俺はすぐ眠りにつく事ができた…今日の出来事が全て夢だと信じたかった。


……
………

「……」
 太陽の光で俺は、目を覚ました……時間を見てみる。
「あれ?げ!?もうこんな時間かよ!!一成の奴、起こしに来いって言ったのに…って」
 昨晩の一成の姿を思い出して俺があいつに何をしたかを思い出し、言葉が詰った。
 あいつに会えねぇ…会わす顔がない…俺って最悪だ。
「く…」
 一斉の部屋の前で止まって、そしてそこを去って行った。

 すまねぇ、一成…本当にすまねぇ…


「やばい!?勝人を起こさなきゃ遅刻だ!!」
 昨日のことでかなり疲れていていたのか、俺はぐっすり眠っていただけで、かなり寝過ごした。あ…このブレス、どうする?一応持っていくか…もしかしたら、ルシファーって奴が出てくるとも限らないし、いざって時だけだ…それ以外は…
とにかく、勝人を起こさなきゃ…
「勝人!おい、起きろ!寝過ごしちまった!」
 勝人の部屋のドアをドンドンと叩きながら勝人の名前を呼んだ、反応が無いからもう寝てるのか?
「勝人、入るぞ!」
 勝人の部屋に上がりこんで、勝人の姿を探す…しかし勝人は何処にもいなく、先に学校に行った様だ…ベッドにも居ない。
 まったく、俺より先に起きたんなら置手紙でも置いてけっての…あいつ、自分で起こしてくれって言って置いて。
 まあ、昼前だから仕方ないだろうな…俺は少し笑って、勝人の部屋を出ようとした…雑誌とかゴミとか色々散らばってて、正直歩ける範囲は少ないけど、そういう所は勝人らしいと思った。
 しかもテレビをつけっ放しに出て行きやがって……俺はリモコンでテレビを止めようとしたら…その指が止まった。
「え?」
 テレビではニュースがやっていて、そして見慣れた背景が写っていてその内容に驚いた。
俺達の住む町…華音市某所の路地裏で、24歳未満の女性の腐乱死体が見った。全身を獣の爪のような者で数回にわたって斬られた痕があり、死体には何かに噛まれたような牙の痕もあったそうだ。警察では近辺の動物園で猛獣が逃げ出したどうか調べているらしい。
 死亡時刻が、俺とあの獣人と戦って逃げられた時と重なりしかも…この場所は俺とフレイムガゾーンと獣人と戦ったあの崩れ去った橋にも近い。
 ニュースではあの戦いで崩れた橋の事も取り上げられていた。それとの関係も調べているらしい…

 もしあの獣人が、もし俺と戦った後に…人を殺していたとしたら…
「奴に人が食い殺される…」
 放って置いたら、また人が食い殺される…これが、フレイムガゾーンが行ってたルシファーって奴なのか!?

 だが、あの時拳を振り上げた時俺は、奴に勝人を見た…しかも今日勝人は俺に顔も合わす事無く、勝人ならどちらかが寝坊しても俺を起しに来るだろう。
 でも来なかった…だとしたら、勝人は何かを隠してるんじゃないのか?

 もしあの獣人が、勝人が変身した物だったら…俺が不死身の体を持つように、あいつが獣人になる能力を持ってるとしたら…。

 俺の中で、あの獣人がルシファーなのか勝人なのか…迷った。どっちにしても俺は戦わなくちゃならないのか?

 俺は不安を押し殺しながらも、テレビを止めて勝人の部屋を飛び出した。


学校にて

 丁度休み時間で、俺が遅刻しても余り気にされなかった。空席が二つ…、鮫島と陣内…行方不明でもなく病気でもないらしい…なんでも、二人とも家族旅行らしいが、ほんとの所怪しい。もう何日も顔を見せてない…
 それより、勝人だ…勝人は何事も無かったかのように居る…勝人は俺が来た事に気づいて、何故か目を伏せた。
「よう、勝人」
 俺はなるべく、何時ものように勝人に近づいた。勝人はわざとらしく…顔を上げて…
「い…一成、なんだよ…起しに来なかったから先に行ったと思ってたぜ」
「まったく、お前も俺が寝坊したらそっちを起しに来いっての」
「わりい…ほんと先に行ったかと思ってな…」
「お陰で遅刻しちまったよ…」
「……」
「……」
 やっぱ、勝人は俺に何か後ろめたい事でもあるらしいな。
「そうだ、勝人…お前ラーメン屋行った後、どうしたよ…俺用が済んだ後勝人の部屋のインターホン押したんだけど、出なかったからさ」
 本当はあの後居たか居ないか…解らないけど、これで勝人の反応を見てかけてみるか。
「あ、え…、お前こそあの時何のようだったんだよ…もしかして、女?」
「ばーか、んな別けないだろ」
 何時ものように笑いながら、話をする勝人でも最初の反応は収穫だったな…これで、勝人があの後…俺より遅く帰ってきたって事になるな。
 屈託の無い笑いの中にどこか後ろめたさを感じるぜ……もしかしたら、本当に勝人が…
「……お、すまねぇ一成、ちょっとトイレ行ってくるわ!さっきから我慢できなくて…」
「お…おお…」
 勝人は急に、鞄から何かを取り出して教室から出ようとした。
「なんだそれ、薬?」
 なにかの、カプセルみたいな薬の束を勝人は持っている。それに気づかれて、勝人は表情を変えて薬を見ると。
「実は私お便秘なの♪」
 気持ち悪いオカマ口調で口元に指を当てる。
「なんだ、下剤かよ…さっさと行きやがれ!」
 勝人はひーと言いながら、薬を持って出て行った。こんな時でもお調子者なんだな…


 薬を、一成に見られちまった…どうしようもねぇな俺…本当はこいつ、下剤じゃないのに……
ガルル…
「…く…」
 体の奥で「豹」が蠢いてる…何時もはこんな事無かったのに…気を抜いたらいつ学校の中で変身するかわからねぇ…
 変身衝動って奴か?…周りにいる沢山の獲物を求めて、俺が腹空かせてるのか?

 だめだ、間違っても人を餌にしたくねぇ…間違っても人を食っちゃいけない…そしたら、もう二度と、一成と顔向けできねぇ…

 だから俺は自分を抑える為に、何時もこの薬を使ってる…変身を抑える為に「先生」から貰ったこの薬は…俺を押さえる唯一の物…でも今年に入って、変身する回数が日増しに増えた。今では、満月になれば必ず…6時6分6秒の時間に正確に変身しやがる。
 これは薬を使ってもどうしようもねぇ……ただ、その後も変身は発作の如く衝動的な物として起こりやがる…
 今度変身したら…戻れるかな、人に……

 薬を飲んで…ようやく正気を取り戻した。
「はぁ…はぁ…」
 手にはうっすらと、豹の模様が浮かび上がってる…もう、余裕は無いってか。


「たっだいまぁ」
 勝人は授業が始まる寸前に戻ってきた…
「お帰り、ってすっげー汗だな。もうじき冬だってのに」
「それだけ、でっかいのが出たのよ」
「まったく…」
 俺が見たところ、それは冷や汗じゃないか…今俺が知りたかった事って、その事じゃないはずだ。
「なあ、勝人…」
「何だよ一成…怖えー顔して」
「いやな、昨日の夜……殺人事件、知ってっか?」
 殺人事件の話をして、勝人もどきっと感づかれたような顔をする。
「あ、ああ…悲惨だってな」
「獣仕業だって言うぜ…」
 何だろう、勝人…何かに恨みを持つような引きつった表情、こんな勝人今まで見た事無い。
「一成、俺思うんだけど、通り魔かなんかじゃないかな?」
 口調もゆったりとして、なんか怖い。
「何でそう思う?」
 俺が思ってることを、勝人は先に言った…もしかしたら見透かされてるのか?
「…罪も無い人を、無差別に殺す…許せると思うか?その人にはそいつの未来が会ったはずなのに…」
「そうだな…許せる事じゃないな」
 勝人じゃないのかあの犯人は…
「わりい、なんかシリアスになっちまって」
「俺もすまんな、こんな話しちまって…」
 勝人は別にいいよと言って、丁度授業の開始と同時に先生が入ってきて前を向いた。
「勝人…」

 俺も、何年の付き合いの親友を疑いたくない…ただ、今回の通り魔事件はルシファーかあの獣人…そして勝人が関わってる事は確かだ…
 犯人が勝人であったとしても、俺は……戦えるのか。


学校の体育館裏…
2時間後
 ここは、人通りが悪くよく不良が群れて溜まったり、喧嘩したりするのには都合のいい場所である。今日も授業をサボった不良達のグループが固まっている。
 何人かで一人の生徒を取り囲んで、その生徒の自由を奪い彼をサンドバックのように殴りつける。
 離した所で、彼は倒れこみ…周りの不良たちにより何度も蹴りつける……集団でリンチを受けてる少年は身に覚えの無い事で暴行を加えられている。
 ようやく止んだ所で…動けようも無い……
「かは…」
 口から血が流れる…どっかを切ったか内蔵から出てるのか…どっちにしろ、体中がいたいから彼には解らない。
「へ、おめーが悪いんだよ」
 口々に文句を言われる、何を言っているのか彼には身に覚えが無い…ただ、彼らは自分と誰かを間違えているに違いない。
 彼らに対する、恨みの念と共に…それと同時に、彼らが間違えた「陣内」と言う人物を呪った。
 彼らを殺してやりたい…ここで、皆殺しに出来たら…八つ裂きにして首を見せしめに校舎の屋上からたらしたら、どんなに気持ちが晴れるか…
『何て気持ちの良い邪気だ……』
 誰かの声が少年の頭に響いた…どす黒い、背筋の凍るような声。
『人間と言う種も悪くは無い、心の闇を持っておる…のう兄弟』
『ああ…これ程気持ちの良い殺気と…怨みの念…とって食うには勿体無い』
 二人…声の主は二人いてどれも邪悪な殺気と絡みつく蛇のような声…背筋が凍りつく。
『小僧、気に入ったぞ…お主の望み、我等が変わりに敵えてやろうぞ』
『この者たちを殺し、見せしめにしてやろう…それが、お前の望み…お前の欲望』
『お前の願望…邪悪な感情…それが我等の糧…我等の食料…』
 少年は二人の声にこたえるかのように微笑んだ…

 その後、体育館裏の笑い声が悲痛な叫び声となり…血が血飛沫となって飛び散り…首の無い4つの死体ができた。
「へ…へへ…」
 返り血を浴びながら多量の血の海の中で少年は壁に寄りかかって笑った、首の無い4つの死体が転がっている。その両側には…先に刃のある式杖を持った変わった服を着た、二人の男が立っている。
 二人の男の頭部は人の物ではなく…爬虫類の…蛇の物だった。


「……であるからして」
 先生の眠くなる声が…一瞬で覚めるくらい、血の匂いがはっきりと匂って来た。豹の感覚を、薬で強制的に抑えてる為か鼻ははっきり感じる。
 もうすぐ授業も終わる…4時になれば、調べに行ける。
 時間を…早く、早く…
ドクン・ドクン・ドクン・ドクン…
 焦ると同時に心音が上がり、変身衝動が上がってくる…やばい、抑えろ…焦るな!気を抜くと…変身する!

キーンコーンカーンコーン

ば!
 勝人は授業が終わると同時に、何も言わずに走り出した。
「おい、勝人!!」
ズゥゥーン!
 廊下で勝人を呼び戻そうとした時、勝人の後姿に、獣のような気配を感じた。あの気配…俺は覚えている。
 あの夜の獣人の匂いがする。まさか…本当に勝人が…俺は手にあのブレスをはめて、勝人の後を追った…もし、あいつが獣人であの事件の犯人だったら…
「俺は、勝人を殺すのか…」
 今まで、勝人といた子供の頃…孤児だった俺と同じ境遇を持って、俺と気が会った勝人は…笑う時も泣く時も、喧嘩した時もあいつと一緒だった。
 不死身の体も、あいつは何にも気にしなかった。それは俺の隠し事だったが…勝人も俺には言えないことを隠していたんだな……
 もう、貸し借り無しだぜ!


 血の匂いを辿って、来た場所は体育館の裏…夕日の光が差さない、この場所もこの時ばかりは、真っ赤な色に染まっている。
 その赤は血の赤…朱に染まって、体育館裏全体を血の海となってる。
「……ぐぅ」
 なんて強烈な死の匂いだ…血の海の中で、4つの首の無い死体が転がっていた。
「……」
 駄目だ、これを見ただけでも『豹』になっちまいそうだ。
 その衝動を必至に抑えながら、俺は血の海に足を踏み入れる…その中で、一人だけ生きてる匂いを感じて振り返ると…そこには、背を体育館に寄りかからせて…虚ろな目をした俺と同じ制服を着た奴が座っていた。学年からして俺より下だろう…
「おい!お前、何を見たんだよ!」
 顔にべったりと返り血を浴びているのに…けたけたと不気味な笑いを浮かべてやがる。この顔は間近で殺人を目撃して狂ってるか…もしくは、こいつがやったのか…
「答えやがれ…」
 体の変身衝動を少しずつ開放しながら、俺はそいつの胸倉を荒々しく掴んで聞いた。奴はうあの空で、にたにたと笑いながら…
「ははは…僕だ……殺した…僕だ…」
「つ…!?ぐぅぅ…」
 こいつにこう言う芸当が出来るとか、そんな事…関係なく思え、こいつが殺したとなれば、俺が始末しなくてはいけない…もう『豹』を抑える必要は無くなった。
 腕の腕力が上がり、俺は奴の首根っこを持ち上げる、片手で持てるようになった俺は…余った右手に爪を出現させる。
「勝人…」
 腕を奴に叩きつける瞬間、後ろで声がして振り返った…

 そこには、俺の親友と呼ぶ存在が立っていた。
 目の前の惨劇に驚いてるだけじゃない…今の俺の姿に…驚いてるんだ。
「お前なんだな……」
 俺は少年の首を離すと、一成の顔を見る。驚きと同時に…激しい怒りを感じる。
「あの時の、獣人も…あの殺人事件も…こいつ等を殺したのも…」
 まさか、一成はこの惨劇を作り出したのや、あの通り魔殺人も俺の仕業だと思ってるのか!?
「ち、違う!確かにお前に襲い掛かったのは俺だ…だけど、俺は誰も殺しちゃいない!」
「だまれ!何も聞きたくない!」
「嘘じゃねぇ!信じてくれ、一成!」
 必死に一成に誤解を解いてもらおうとしたが、一成は聞き入ってくれない。
「お前とは戦いたくなかった……だが、人を殺しちまったお前を…許すわけには行かない」
 一成は泣いている…親友と呼んだ奴が、人殺しする存在になる事を隠していたんだ、弁解の余地はねぇ…
「せめて俺が楽にしてやる…」
…腕にはめてるブレスを一成は掲げた…
「炎装!」
 そう言い放つと、一成のブレスから赤い凄まじい炎が出て一成の体を包み込んで、その炎は一成の体に装着されて…
 一成は赤い戦隊物のヒーローのような姿になった。あの時俺と戦った時の姿に…
「お前も変身しろ!俺と戦え…でないと…やりにくい…」
 一成は悲痛に訴えながら、俺に銃を向けた…一思いにやってくれた方がまだ良かったが。

「解ったぜ…一成…」
 俺も解放しかけた『豹』を体に開放していった…凍て付く獣の殺気と共に…


 炎と氷が正面で激突しようとしていた。



続く

設定資料集

青葉勝人・『豹』
能力 パンチ力10t キック力20t ジャンプ力500m 走力300km/h
変身プロセス
獣神忍者の末裔である勝人が満月期6時6分6秒に皮膚組織と筋肉組織が変形して、一族最強の獣…『豹』の姿へと変身する。
武器
 爪と牙(獣としての爪と牙を使って、野性的な戦い方を得意とする)
必殺技
 氷解弾(空気中の水分を無数の氷の塊にして放つ、威力は20t)
 氷解咆哮(野獣の咆哮、全てを氷にしてしまう吐息を吐きつける。72t)
勝人が満月期になると、衝動的に変身する姿。実は勝人は獣神忍軍と言われる、忍者の末裔で、その頭領である最強の獣の称号『豹』の血が流れている為、成人になる前に彼の体に衝動的に豹への変身衝動が起きる。豹といっても、顔は山犬の物であり…豹の斑点と青い毛を持つのが…獣神の『豹』の姿。

ルシファー集

ハブテーラー&マムシテーラー
身長:2m10cm(マムシ)2m20cm(ハブ)
体重:92キロ(両方とも)
パンチ力:5t キック力:8t
技:テールフィアー(ハブには右手、マムシは左手にある鞭状の武器 30t)
  デモンススピア(先に刃のある式杖テーラー系が持つ通常武器 40t)
  ポイズンバイト(両者共々使える口の牙で毒を注入する、並みの血清は効かない)
 一種にテーラー系のルシファー。兄弟で、マムシが弟でハブが兄。テーラー系は人間の持つ内面的な闇を捕食対象としている…最も濃い闇を持った者を選び、その闇を糧として生き…その人間の願いをかなえて、もっと深い闇を作り出し、その人間を宿主とする。だが、闇が無くなると用済みとなり殺す。

有馬
 内向的で引きこもりがちな華音学園の2年生。元から心に闇を抱えていた少年で陣内と言う人物に似ている為、彼を怨む不良たちに絡まれ…それが切欠でハブテーラー&マムシテーラーを呼び寄せ、彼らのマスターとなってしまうが…


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