戦士小話 クイーンモネラの娘
宇宙を飛ぶ光玉がひとつ。光玉は、地球を目指していた。
光玉は、地球に降り立つとひとつの生命体の形になっていった。それは、植物生命体が特殊な進化を遂げたクイーンモネラによく似た姿だった。
クイーンモネラに似た姿の獣の出現に驚く人類。だが、その獣が暴れる様子もなく何かを待つような様子に、暫し顔を見合わせる。
「ダイナ様…会いに来ましたぞ」
クイーンモネラに似た姿の獣の呟きに応えるように、銀の光玉が飛ぶ。
銀の光玉は、ダイナの姿になった。
「私を呼ぶは、お前か? …クイーンモネラ?! なぜ?!」
「ダイナ様!」
ダイナの驚きに、クイーンモネラに似た姿の獣は、嬉しげに駆け寄ってきた。
「人間たちよ、下がるがいい。私はこの者と話がある」
ダイナの厳かな言葉に、人類はその場を離れていった。
人類が近寄らない場所で、ダイナはクイーンモネラに似た姿の獣と向き合う。
「…それで、私に用事があるのか?」
クイーンモネラは倒したはず…と思いながらも問いかけるダイナ。
「ダイナ様…私は過日、あなたとティガ殿に倒されたクイーンモネラの娘、プリンセス・モネでございます。
あなたにお話があって、会いに来た次第です」
「クイーンモネラの娘だと?!」
プリンセス・モネの言葉に驚いたダイナは、ティガに助けられながら協力してクイーンモネラを倒したことを思い出した。
「私どもモネラ星の民は『地球の民が目障り』という理由でこの地球を襲い、地球の民たちに多大なる迷惑をかけてしまいました。今更詫びても許してもらえぬことは承知の上で、こうしてダイナ様に会いに…。
私はモネラ星の民たちの集合体である母の遺伝子より生まれし者」
「しかし、モネラ星に戻った方がお前のためだぞ。クイーンモネラの娘にしてモネラ星の次期クイーンたるお前の責任でモネラ星をより良い惑星にすることがお前のなすべき使命のはずだ」
プリンセス・モネの言葉に、ダイナは一瞬絶句したが諭すように言った。
「ごめんなさい、私が帰るべきモネラ星はありませぬ…過日の地球襲撃の際はモネラ星は既に放棄されていたのです」
プリンセス・モネは泣きながらダイナに縋った。
「モネラ星が滅びたというのか?」
「モネラ星の民は皆攻撃性の強い精神の持ち主ばかり、目障りなものは手当たり次第に滅ぼしていきます。モネラ星ごと移動するので定まった場所を持たぬゆえ、モネラ星はあってもなくても同じこと」
ダイナは、プリンセス・モネの言葉に『そういう事情だったか』と納得した。
「もし、許してもらえるならば、ダイナ様の傍にいてもいいですか? ダイナ様のために、役に立ちとうございます」
「はぁ?!」
ダイナは、プリンセス・モネの思わぬ言葉に驚いた。だが、ダイナは頭を横に振る。
「想いは嬉しいが、私は私のなすべきことがあるゆえ、お前の傍にいることはできぬ」
「私がクイーンモネラの娘だからですか?」
ダイナの拒絶の言葉に、プリンセス・モネはダイナを見つめる。
「そのつもりで言ったのではない。この地球においても、広大なる宇宙においても、平和を脅かす存在があとを絶たぬので、その存在を鎮めるのが私をはじめとする戦士≠フ使命。その使命に本当の終止符が打たれた時、お前の傍にいてあげよう。
それより、私よりも優しく強い戦士≠ェ見守る惑星があるので、そこにお前を連れて行こう」
ダイナはプリンセス・モネを抱えて飛び立った。
宇宙の片隅にある惑星ビオトークでは、コスモスとジャスティス、そして2人が過日助けたサンドロスが雑談をしていた。ビオトークには故郷をなくした宇宙の住人がジャスティスの計らいで暮らしており、ジャスティスは時折コスモスとともにその住人たちの様子を見守っている。宇宙の住人たちは新しい惑星を探し、見つからなければビオトークに戻るという繰り返しをしている。
「この波動は、ダイナか?」
「確かにダイナだ…もうひとつ、我らの知らぬ波動もある」
ジャスティスの言葉に、コスモスも頷いた。サンドロスはキョトンとした仕種でジャスティスとコスモスを見守る。
光とともに、ダイナとプリンセス・モネが舞い降りた。
「ジャスティス、コスモス、突然の頼みですまぬが、この者をこの惑星に暫く住まわせてくれぬか?」
ダイナは、ジャスティスとコスモスにプリンセス・モネの事情を語った。
「なるほど…そのような事情ならばこのビオトークに住むことを許そう」
「この惑星なら、誰も危害を加えることはない。安心するがいい」
「あ…ありがとうございます」
ジャスティスとコスモスの心遣いに、プリンセス・モネは礼を言った。
「モネ、私はこれで帰るが、この惑星で暮らしている者たちに迷惑をかけるのはダメだぞ」
「わかりました。いずれまた、お会いできる時がありますように」
ダイナの言葉に、プリンセス・モネは頷いた。
(完〉