『仮面ライダー』
 第三部
 第二章             死霊舞う森
             
 アマゾン川流域はジャングルとして有名である。ここは密林と多くの野生動物でも知られている。
「どうですかアマゾン、久し振りの故郷は」
 アマゾン川を行く船の上に二人の男がいた。筑波洋とアマゾンである。
「うん、やっぱりいい」
 アマゾンは笑顔で答えた。
「アマゾン自然が好き。緑を見ると心が落ち着く」
「そうですか、それは良かった」
 筑波はそれを聞いて微笑んだ。
「けれどこれが戦いじゃなかったらもっと良かった」
 アマゾンは残念そうな顔で言った。
「ですね」
 筑波もそれを見て表情を暗くした。粗野に思われがちだがアマゾンはライダー達の中でも特に繊細で心優しいライダーなのである。
「けれど悪い奴と戦うのがライダーの仕事、アマゾンあいつ等がいる限り戦う」
「はい」
 筑波はその言葉に頷いた。そして船はアマゾンの濁った大河の中を進んで行く。

「そうか、ヨロイ元帥が死んだか」
 暗い部屋で一人の男が言った。
「惜しい男だったが」
 見れば鬼火司令である。表情を曇らせている。
「あら、やけに優しいのね」
 向かい側にいる誰かが囃し立てる様に言った。妖怪王女だ。
「わしは素直に死を悼んでいるのだが」
「あら、そうだったの。そうは見えなかったけれど」
 妖怪王女は面白そうに言った。
「妖怪王女、お主はそういうところがいかん。もう少し真面目な態度をだな」
 鬼火司令はそれを見て口を尖らせる。
「あらあら、お説教?悪いけれど私お説教は聞かない主義なの」
 彼女はおどけて言った。
「だからそういう不真面目なところがいかんと」
 司令は更に口を尖らせた。
「二人共」
 その奥から誰かが不機嫌そうな声で二人に対して言った。
「もう少し静かにしてもらえないか」
 見ればツバサ大僧正である。二人を嫌そうに見て言う。
「あ、いたのツバサ大僧正」
 妖怪王女はふと気付いたように言った。
「いたのではない。ここはわしの基地だぞ」
 彼は顔を顰めて言った。
「そういえばそうであった。余りにも居心地が良いので忘れておった」
 鬼火司令は高笑いをして言った。
「迷惑なことだ」
 ツバサ大僧正はポツリと呟いた。
「そもそも二人共何をしに来たのだ?生憎わしは怪人の方は間に合っているが」
「いい情報が入ったのよ」
 妖怪王女は微笑んで言った。
「わし等が特別に仕入れた情報だ」
 鬼火司令も笑顔で言った。
「フン、どうせいつもの噂話であろう。大体そなた達ジンドグマの者はどうしてそう緊張感が無いのだ」
「さっきも言ったでしょ。お説教は嫌いだって」
「そうじゃ、折角情報を持って来てやったというのに」
 鬼火司令も不満を口にした。
「では聞いてやる。言ってみよ」
 ツバサ大僧正は不機嫌さと隠しもせず言った。
「こっちにライダーが来ているんだけれど」
「それはもう知っている」
 大僧正は仮面の下の顔を顰めて言った。
「アマゾンライダーであろう。今アマゾン川を上っている」
「甘いわね」
 妖怪王女はそれを聞いて笑った。
「それじゃあ情報は半分しか知らないわね」
「半分だと?」
「そう、もう一人来ているのだ」
 鬼火司令が言った。
「もう一人・・・・・・それは誰だ?」
「空と言えばわかるかしら」
「あの男か」
 その時部屋の扉が開いた。そしてある男が入って来た。
「ナスカでの借り、返す時が来たな」
 それは荒ワシ師団長であった。
「ここにいる改造魔人はお主だったか」 
 鬼火司令は彼を見て言った。
「うむ、まあ色々とあってな」
 彼は少し不機嫌そうに言った。
「俺は本当は本拠地である中東に行きたかったのだが」
「今あそこにはマシーン大元帥がいるんじゃなかったっけ」
 妖怪王女が言った。
「そういえば奴はエジプト出身だったな」
 鬼火司令がそれを聞いて言った。
「それはもういい。あの男がここに来たというのは本当だろうな」
「嘘は言わないわよ」
「言っても仕方がない」
 二人は澄ました顔で言った。
「そうか」
 荒ワシ師団長は考える顔をした。
「最初にここに来た時は落胆したものだが」
 彼はそう言うとニヤリ、と笑った。
「こういうことが起こるとはな。わからんものだ」
「塞翁が馬というからな」
 それを聞いたツバサ大僧正が言った。
「うむ、その通りだ」
 師団長はさらに上機嫌になった。
「こうなれば何としてもあの男をこの手で始末してやる。ツバサ大僧正、悪いがアマゾンは任せた」
「うむ」
 ツバサ大僧正は答えた。別に深く考えたわけではない。だがこの決定が後々にまで響く。
「悪いがそうとなれば早速作戦を練らせてもらう。一刻も早く奴を倒さなくてはな」
 荒ワシ師団長はその場を去った。後には三人が残った。
「あら、案外せっかちなのね。策士だって聞いていたけれど」
 妖怪王女はそれを見て可笑しそうに言った。
「普段冷静な者程いざとなるとああなるものだ」
 鬼火司令は彼が去った扉の向こうに目をやりながら言った。
「鬼火司令とは大違いね」
「何を言う、わしは何時でも冷静だぞ」
「電話機のボックスを叩き壊したのは誰だったかしら」
「あれは海兵隊式だ、役に立たん機械はいらん」
 二人は再び口喧嘩を始めた。
「ええい、止めぬか」
 ツバサ大僧正はそんな二人の間に入った。
「二人共わしへ情報を伝えることは終わったのであろう。ならばすぐに持ち場に戻るがいい」
「そうね」
「山の様な仕事が待っておるしな」
 二人はその言葉に対し頷いた。
「では早く戻られよ。もうライダー達が既に向かっているかも知れぬぞ」
「それは楽しみだわ」
「一体誰が来るのかのう」
 二人は笑みを浮かべた。
「じゃあ私はこれで。ツバサ大僧正御機嫌よう」
「次に会う時を楽しみにしているぞ」
 妖怪王女は蝶に変身して、鬼火司令は火の玉に変身してその場を去った。ツバサ大僧正はそれを黙って見送った。
「仮面ライダーアマゾンか」
 彼はアマゾンの名を言った。
「この地での戦いはいささか不利だな」
 このアマゾンは彼にとっては遊び場である。空からの攻撃を得手とする彼にとって密林での戦いは未知のことである。
「荒ワシ師団長には悪いが戦場を選ばせてもらうか」
 彼は壁に掛けられている地図を見ながら言った。
「無駄に戦力を消耗するわけにもいかぬからな」
 ツバサ大僧正も部屋を後にした。そして部屋は闇の中に消えていった。

「全員準備は出来たな」
 密林の中で何者かの声がする。
「ハッ、既に全員準備を終えております」
 戦闘員の一人が敬礼して答えた。その背には小型のプロペラがある。
「ならば良い。早速行くぞ」
「ハッ」
 荒ワシ師団長であった。配下の戦闘員達に取り囲まれている。
「怪人達には伝えておろうな」
「それはもう。上空で合流する手筈となっております」
「これで良し。スカイライダーの首を始末しに行くぞ」
 その時声がした。
「フフフフフ、案外性急なことだな」
 そして火の玉が姿を現わした。
「・・・・・・貴様か」
 荒ワシ師団長はその火球を睨み付けて言った。
「貴様かは無いだろう。折角顔を見せに来てやったというのに」
 火球から一人の黒いスーツの男が現われた。百目タイタンである。
「フン、貴様がただ顔を見せに来るだけで済ますような奴か」
「邪険だな。俺は貴様とは何の因果も無い筈だがな」
 タイタンは無数の眼で彼を見ながら言った。
「それはそうだがな。しかし一体何の用だ?」
「うむ。貴様に頼みたいことがあってな」
 タイタンは葉巻を取り出しながら言った。
「頼みたい事!?」
「そうだ。どうやらスカイライダーの命を狙っているそうだが」
「隠しはせん」
「あの男の重力低減装置を欲しいのだ」
「・・・・・・何に使うつもりだ?」
 荒ワシ師団長はその言葉を聞いて顔を顰めた。
「うむ。ちょっとな」
 タイタンは葉巻を口にして言った。
「俺は構わんがな。どのみち自分の力で空を飛べる俺にとっては無用の長物だ」
 彼はタイタンが死神博士と接触していることを知らなかった。
「しかしそれは貴様とて同じであろう。貴様は元々地底出身ではなかったのか」
「確かにな」
 タイタンは不敵に笑った。
「だが興味を持ってはいけないというわけでもなかろう」
「・・・・・・それはそうだが」
 どうも腑に落ちない、荒ワシ師団長は心の中に疑念を抱いていた。
「ならば頼んだぞ。重力低減装置のデータを俺に渡してくれ」
「解った。それではそろそろ作戦を開始するので帰ってくれないか」
「うむ。では健闘を祈る」
 タイタンは炎の中に消えた。荒ワシ師団長はそれを見送って言った。
「フン、何を考えているのかは知らんが」
 その顔にはあからさまな嫌悪が滲んでいる。
「精々今のうちに威張っているがいい。地底の王といってもこの砂漠の覇王に勝てるとでも思っているのか」
 彼は戦闘員達の方へ顔を向けた。
「行くぞ。そしてスカイライダーを討つ」
「ハッ」
 戦闘員達はその言葉に対し敬礼した。
 荒ワシ師団長は飛び立った。そして戦闘員達もそれに続く。

「それにしても凄い川ですね」
 筑波は船の上から川を見ながら言った。
「対岸が見えない。まるで海だ」
「それ日本の川が小さいだけ。アマゾンではそれが普通」
 アマゾンは笑顔で言った。
「だからといって日本の川が悪いわけじゃないけど」
「まあ大きけりゃいいってもんじゃないですしね」
「それでもアマゾンこの川が一番好き。やっぱり心が落ち着く」
 彼はこの川の水で生まれ育ってきた。だからこそこの川を深く愛しているのだ。
「この川たくさんの生き物いる。そして多くの話ある」
「話、ですか?」
 筑波はその言葉に興味を持った。
「そう。巨大なアナコンダや人を飲み込むナマズの話とか」
「それは俺も聞いたことがありますよ。けれど本当ですか?」
「本当。アマゾン実際に戦ったことある」
 アマゾンは笑顔で答えた。
「バゴーと一緒に船に乗っていた時に大蛇がやって来た。二十メートルはあった」
「二十メートルですか」
 筑波はそれを聞いて驚いた。彼が今まで見た最も大きな蛇は十メートルのものが精々であったからだ。
「アマゾン川に飛び込んでそいつと戦った。そして追っ払った」
 アマゾンは目を輝かしている。どうやら本当らしい。
「ナマズもそうだった。危うく飲み込まれそうになったが何とかやっつけた」
「人間を・・・・・・。ここのでかい魚はピラルクだけじゃないんですね」
「ピラルク大人しい。この川には鮫や鰐もいる」
「鰐は知っていますけど鮫までいるんですか!?」
「うん。たまに川を上って来る。だから気をつけた方がいい」
「そうなんですか・・・・・・」
 筑波は川を覗き込んで呟いた。
「だとしたら結構厄介ですね」
「厄介?何が?」
「いえ、バダンの他にも危険が多そうですし」
「それは心配無い」
 アマゾンは微笑んで言った。
「普段はどの生き物も大人しい。アナコンダもアマゾンが追っ払ったらそれで帰って行った」
「そうなんですか!?」
 筑波は疑問符を付けて言った。
「うん。ここは食べ物が豊富にある。だから飢えてない」
「そうなんですか」
「そう。アマゾンは食べ物一杯ある。だからアマゾンも食べるのに困ったことない」
 獣達との戦いはあったようだが食べるのには困ったことがないようだ。
「けれど筑波がこの川の水をそのまま飲んだり魚を生で食べることは良くない」
「でしょうね」
 それはよくわかった。
「よく火をとおす。さもないと飲んだり食べたりしたら駄目」
 その理由はよくわかった。
「わかりました」
 筑波は答えた。そして川を進んで行く。
 やがて川の色が変わってきた。茶色から緑になる。
「川の色が変わりましたね」
 これは筑波にとって初めて見る光景だった」
「うん。これもアマゾン。日本では絶対に見られない」
 アマゾンは最早ガイドの様である。
「川の色も色々とある。そしてそれが合わさる」
「凄いですね」
 そこに何かが飛び上がってきた。
「・・・・・・イルカですか?」
 筑波はそれを見て言った。
「そう」
 アマゾンは答えた。
「これがアマゾンのイルカですか。話には聞いてましたが」
「アマゾン海にイルカいるって聞いて最初驚いた」
 彼にとってはイルカは川にいるものであったのだ。
「けれどイルカは海にいるのが本当らしい。これ凄く不思議」
「いや、それは不思議じゃないですよ」
 筑波はそれに対して言った。
「元々鯨の仲間なんですから」
「そう。アマゾンそれ知らなかった」
 イルカ達は暫くピンク色のその身体を見せていたがやがて川の中に消えていった。
 暫くして別のものが川から出て来た。
「ん!?」
 それは金色の魚であった。
「・・・・・・何ですか、あの魚は」
 筑波はその金色の魚を見て言った。
「ドラード。あれを見れた筑波とても運がいい」
「そうなんですか!?」
「うん。よく釣りに来る人いるがそうそう釣れない。物凄く気の強い魚」
「気が強いんですか」
「そう、大きいし力も強い。だから糸なんか簡単に引き千切られてしまう」
「それは厄介ですね」
「筑波は釣りには興味あるか?」
「いえ、あまり」
 筑波はそれを否定した。
「やっぱり俺は空を飛ぶのが一番好きですね」
「そう言うと思った」
 アマゾンはそれを聞いて微笑んで言った。
「それが筑波らしい」
「それはどうも」
 筑波はそれを聞いてはにかんで答えた。
 ドラードも川の中に消えた。今度は岸の森がざわめきだした。
「今度は何だ?」
 筑波はふとそちらを見た。
「ジャガーか!?」
 だが違った。それは空に出て来た。
「ムッ!」
 バダンの戦闘員たちであった。空に現われボウガンを放ってきた。
「危ないっ!」
 二人はそれを跳んでかわした。そして川の中に飛び込んだ。
「糞っ、川の中に飛び込んだか」
 荒ワシ師団長がやって来た。そして上から主がいなくなった船を見下ろす。
「だが安心しろ。奴等は絶対に川から出て来る」
 彼はそう言ってニヤリ、と笑った。
「カイゾーグでなかったのを不運に思うのだな」
 そう言って右手を上げる。戦闘員達が下に向けてボウガンを構える。
「慌てる必要は無いぞ。よく狙え」
 そして二人が上がって来るのをまつ。しかし。
「・・・・・・おかしいな」
 二人は上がって来なかった。柔分経っても上がって来ない。
「おかしいな。まさかピラニアに喰われる連中でもあるまい」
 荒ワシ師団長はいぶかしんだ。
「だが焦る必要は無い。ゆっくり待つのだ」
 戦闘員達にはそう言った。彼は水の中での戦いはあまり得意ではない。
「我々には切り札があるしな」
 そう言って上を見上げる。
 三十分経った。流石に痺れを切らした。
「何人か下へ行け」
 調べてみるよう言った。その言葉に従い戦闘員が何人か降りる。
 船に降りた。そして川の中を見る。
「何か変わったところはあるか?」
 荒ワシ師団長は上から問うた。
「あまり・・・・・・」
 戦闘員の一人が答えた。その時だった。
 何かが川から飛び出て来た。そして船の上にいた戦闘員達を蹴散らす。
「ムッ!」
 それはジャングラーGであった。戦闘員達を蹴散らすと再び川の中に消えた。
「油断するな、すぐにこっちにも来るぞ!」
 荒ワシ師団長はそれを見て言った。
「ケーーーーーーッ!」
 彼の予想は当たった。ジャングラーGは再び川から出て来た。
「今だ、狙えっ!」
 荒ワシ師団長は斧を持った右腕を振り下ろした。戦闘員達がボウガンを発射する。
 だがアマゾンはマシンから跳んだ。弓矢は空しく宙を切った。そして空中で一回転し戦闘員の一人に襲い掛かった。
「ケケーーーーーッ!」
 鰭でその戦闘員を切り裂く。川に落ちる戦闘員を踏み台に再び跳び上がる。
 そして別の戦闘員に襲い掛かる。こうして次々と戦闘員達を倒していく。
「クッ、何という奴だ」
 荒ワシ師団長はそれを見て舌打ちした。
「だがこちらにはこういう時の為の決戦兵力がある」
 そう言って再び上を見上げた。
「行けっ!」 
 上から二体の怪人が姿を現わした。
「クワァーーーーーーッ!」
「キキキキキキーーーーーーッ!」
 ブラックサタンの猛禽怪人奇械人ハゲタカンとショッカーの吸血怪人蝙蝠男である。怪人達はアマゾンに向けて急降下して来る。
「如何に貴様といえどその足場で二体の怪人を同時に相手には出来まい、どうだ!」
「甘いっ!」
 その時左手から叫び声がした。
「その声はっ!」
 荒ワシ師団長は左を振り向いた。そこにあの男がいた。
「来たか・・・・・・」
 彼はその男を見て言った。スカイライダーはそちらへ一直線に飛んで来ている。
「アマゾンは後回しだ」
 師団長は怪人達に対して言った。
「先にスカイライダーをやれ!」
 怪人達はそれに従った。そしてスカイライダーの方へ飛んで行く。
「来たな」
 スカイライダーは怪人達を見て呟いた。
「相手にとって不足はない」
 そして二体の怪人と向かい合った。
「キキーーーーーーッ!」
 まずは蝙蝠男が来た。翼を広げ迫り来る。
 爪を剥いた。そしてスカイライダーを切り裂かんとする。
「甘いな」 
 ライダーはそれを何なくかわした。
 だが蝙蝠男は足を絡めてきた。
「ムッ」
 そしてしがみ付く。牙を剥く。
「そうはさせんっ!」
 ライダーはそれを両手で止めた。怪人の顔を掴み引き剥がそうとする。
 引き剥がした。そして遠くへ向けて放り投げた。
 スカイライダーは間合いを一気に詰めた。怪人の真横に来た。
「水平回転チョーーーーーップ!」
 怪人の胸に手刀を入れる。たて続けに四つ入れた。
「グキィーーーーーーッ!」
 怪人は断末魔の叫びをあげた。そして爆発四散した。
「クワーーーーーーッ!」
 今度はハゲタカンが来た。小型バズーカで砲撃して来る。
「ムッ」
 スカイライダーはそれをかわした。そして懐に飛び込みパンチを入れる。
「ウオッ!」
 だが叫びをあげたのはライダーであった。思わず拳を押さえる。
 見れば怪人の身体は厚い装甲に覆われている。パンチが効かないのも当然であった。
 ハゲタカンは体当たりを敢行してきた。それはスカイライダーの胸を打った。
「まずいな」
 中々の威力であった。それを受けたスカイライダーは思わず呟いた。
「だがこの程度では」
 ライダーは怪人から目を離さなかった。そしてその動きをよく見る。
 怪人は一度間合いを離した。そして再び体当たりを仕掛けようとする。
「もう一度仕掛けるつもりか」
 それを見て呟いた。
 来た。頭から突っ込んで来る。
「頭から来たか」
 それを冷静に見ている。
 脳天をこちらにぶつけるつもりのようだ。それを見てライダーは閃いた。
「これだ!」
 怪人が迫る。ライダーはそれに対し右足を大きく振り上げた。
「ライダァーーーー踵落としっ!」
 それは怪人の後頭部を直撃した。その動きが一瞬止まった。
「ガガガ・・・・・・」
 怪人は呻き声を出した。そしてゆっくりと顔を下に向ける。
 そのまま落ちて行く。そして川に落ち爆発した。
「おのれ、あの怪人達を倒すとは」
 荒ワシ師団長はその爆発を見ながら呻く様に言った。
「荒ワシ師団長、残るは貴様だけだ」
 スカイライダーが彼を指差して言った。
 見れば戦闘員達もいない。全てアマゾンの驚異的な戦いの前に倒されていた。
「おのれ・・・・・・」
 斧を振るおうとする。だが二人のライダーが相手では如何に空にいようと分が悪い。アマゾンはジャングラーGに乗りこちらに向かって来ている。
「勝負はお預けだ。今日は貴様等に勝ちを譲ってやろう」
 そう言うと踵を返した。
「だがこれだけは覚えておけ。スカイライダーよ、貴様を倒すのはこの俺だ」
 そう言い残すと空の彼方へ飛び去って行った。
「行ったか」
 そこへアマゾンがやって来た。
「ええ。今のところは」
 スカイライダーは答えた。目は師団長が消えた空の彼方を見ていた。

「何っ、このアマゾンから撤退するだと!?」
 基地に帰った荒ワシ師団長はツバサ大僧正の言葉を聞いて激昂した。
「そうだ。このアマゾンで戦うのは我等にとって不利だからだ」
 ツバサ大僧正は落ち着いた声で答えた。
「言っている意味がわからん。どうしてここで戦うことが不利なのだ」
「ここはアマゾンだ」
「それはわかっておるわ。それがどうしたというのだ」
「仮面ライダーアマゾンの生まれ育った地だ」
「それがどうしたっ!」
 荒ワシ師団長はさらに語気を荒いものにする。
「我々はこの地での戦いに慣れてはおらん。空と密林では戦い方が違う」
 ツバサ大僧正は彼を宥める様に言った。
「何故密林で戦う必要がある」
 荒ワシ師団長は顔を顰めて言った。
「空で戦うのが一番であろう。奴等のうちで空を飛べるのはスカイライダー一人なのだしな」
「アマゾンに戦闘員達を全滅させられたのは誰だ」
「グッ・・・・・・」
 その言葉にさしもの荒ワシ師団長も沈黙した。
「アマゾンライダーの空中戦における能力も無視出来ない。あのマシンは空も飛べるのだしな」
 彼は言葉を続けた。
「そして密林の中に誘い込まれたら我等には為す術は無い。我々はあの中では将に翼を?がれた鳥だ」
「フン、臆病者が」
 反論は出来なかった。だが苛立ちを抑える事が出来ずに吐き捨てる様に言った。
「臆病ではない」
 ツバサ大僧正は彼を睨み付けて言った。
「有利な場所で戦うのも戦略だ。必ず勝てる場合以外は迂闊に動かぬことだ」
「そうだ、俺は必ず勝つのだ」
 師団長は拳を振り回して力説した。
「この俺があの男に負ける筈がない。誇り高き中東の空の覇王がな」
「・・・・・・そうか」
 大僧正はそれ以上反論しようとはしなかった。
「ならばこのアマゾンはそなたに任せよう。私はギアナ高地にでも退かせてもらう」
「フン、勝手にしろ。あの地で俺の勝利を聞き歯噛みするがいい」
「・・・・・・それを楽しみにしている」
 彼はそう言うと荒ワシ師団長に背を向けた。そしてその部屋を後にした。
「腰抜けが。よくあれでツバサ一族の長が務まるな」
 彼は顔を顰めて言った。そして部下達を呼び寄せた。

 その光景を水晶から見ている者がいた。
「愚かな。あの状況で勝てると思っているのか」
 白い煙が立ち込める暗闇の中に浮かび上がる赤いテーブルの上に置かれたその水晶から見ていた。
「どうやらプライドだけは相変わらず高いようだが。進歩の無い男だ」
 その男は水晶の荒ワシ師団長を見ながら笑っていた。
「シャドウ様、所詮その男はその程度でございます」
 そこへ一人の改造魔人が姿を現わした。
「フフフ、貴様か」
 ゼネラルシャドウはその改造魔人ヘビ女を見て笑った。
「思ったより早いな。調査は順調のようだな」
「はい。やはりタイタンが動きました」
「ほう、あの男が」
 シャドウは目を光らせた。
「はい。どうやらスカイライダーの重力低減装置を欲しがっているようです」
「重力低減装置を?」
「はい。そして死神博士とも最近よく会っているとか」
「死神博士か。成程な」
 シャドウはそれを聞いて頷いた。
「何かおわかりになられたようですね」
 ヘビ女はそれを見て笑って言った。
「うむ、よくわかった。それにしても面白い交換材料だな」
「交換材料ですか」
「そうだ」
 シャドウは答えた。
「どうやらタイタンはかなり強くなっているようだな」
「といいますと?」
「それはやがてわかることだ」
 シャドウはそれに対して言った。
「少なくともあの時のようにパワーが限界に達することはあるまい」
 彼はブラックサタンにいた時のことを思い出して笑った。
「思えば不思議なことだ」
 シャドウは笑みをたたえたまま笑った。
「奴とはブラックサタンで会ってから今までいがみ合っている」
「シャドウ様の地位を脅かさんとしている為でしょう」
「いや、違うな」
 シャドウはヘビ女に対し言った。
「俺と奴は確かにブラックサタンで最高幹部の地位を争った。そして今も勢力圏争いをしている」
 彼は言葉を続けた。
「だがそれはあくまで副次的なものなのだ」
「といいますと?」
「俺も奴も一人の男の首が欲しいのだ。そういう意味で俺と奴はよく似ている」
「あの様な男とシャドウ様がですか!?それは悪い冗談です」
「いや、冗談などではない。俺はジョークは言わん主義だ」
 彼はカードを玩びながら言った。
「やり方は違えど俺も奴も欲しいのはあいつの首だけだ。俺も所詮は戦いが好きなのだ」
 カードを引いた。スペードのエースだ。
「地位などどうでもいいのだ。戦いさえあればな」
 シャドウは笑った。そしてカードを壁に投げた。
「待っていろ、貴様を倒すのはこの俺だ」
 壁にはストロンガーの写真があった。カードはその心臓のところに突き刺さった。
「フフフフッ、ハハハハ」
 シャドウの笑い声が木霊する。それは地の底から響いていた。

 アマゾンと筑波は川を上り続けていた。そしてバダンの基地を探していた。
「ありませんね」
「落ち着いて探す。さもないと駄目」
 アマゾンは少し苛立ちを感じ出していた筑波に対して言った。
「奴等はもうすぐ来る、その時後をつければいい」
「まあいつものやり方ですけれどね」
 筑波はそれを聞いて言った。
「しかしそう言ってもう一週間ですよ。ひょっとしてもうこの地域から撤退したんじゃないでしょうか」
「それはあるかも」
 アマゾンはそれを聞いて言った。
「でしょう?かといってここから離れるわけにはいかないし」
「そう、全部が撤退したとは思えない」
 アマゾンは緑の岸を見ながら言った。
「このアマゾンは隠れる場所一杯ある。全部逃げたとは思えない」
 それは彼の動物的な勘が教えていた。
「ですね。では撤退したとすればその連中は一体何処に・・・・・・」
「多分ギアナ高地」
 アマゾンは言った。
「あそこですか」
 筑波はそれを聞いて真摯な顔で言った。
「そう。あそこは人はそう簡単には行けない。だから基地を作るのにはもってこい」
「そうですね。それにこのアマゾンは何と言ってもアマゾンの故郷、戦うにしても不利ですし」
 筑波はアマゾンの能力を頭に入れながら話した。
「アマゾンここで戦い限り絶対に負けない」
 それは一週間前の荒ワシ師団長との戦いでよくわかっていた。彼は密林や複雑な地形での戦いにおいてその力を最も発揮するのだ。
「空を飛ぶ怪人は密林での戦いには不向き。それだけでバダンにとっては不利」
「しかしギアナ高地は違う」
「はい」
 筑波はその言葉に対し頷いた。
「ギアナ高地にはこんな密林はありませんしね。そして空での戦いも思う存分挑める」
「そう、その時は筑波の出番。アマゾンは休んでいられる」
 アマゾンは悪戯っぽく笑って言った。
「ちょっと、アマゾンも戦って下さいよ」
「これは冗談、アマゾンも戦う。心配しなくていい」
 そして二人は航路を変えることにした。
「ネグロ川からブランコ川に向かいますか」
「うん、それがいい」
 こうして二人は航路を北に転じた。

「そうか、ネグロ川に向かったか」
 荒ワシ師団長は基地で偵察に出ていた戦闘員の報告を受けていた。
「では我等も行くか」
 戦闘員達はその言葉に対し敬礼した。
「今度こそスカイライダーを倒す。全員死兵となるつもりで行くぞ!」
「ハッ!」
 彼等は基地を去った。そして最後の一人が出撃した時基地は跡形も無く爆発した。
「・・・・・・この近くで謎の爆発があったらしいですよ」
 ある朝休息に入った港で筑波はアマゾンに対して言った。
「跡形もなく吹き飛んでいて何があったのか一切わからないそうですけれど」
 彼は新聞を持っていた。現地のポルトガル語の新聞である。
「それかなり怪しい」
 アマゾンは岸辺で歯を磨いていた。口をゆすいだ後でそう言った。
「やっぱりそう思いますか」
 筑波は彼がそう言ったのを聞いて言った。
「うん。多分奴等はもうすぐこっちに来る」
「来ますね」
 それは筑波も感じていた。
「ではここにいたら迷惑がかかりますね。すぐに出ますか」
「それがいい。けれど川には行かない方がいい」
「といいますと」
「アマゾンに任せて。いい考えある」
 アマゾンはニカッと笑って筑波に対して言った。そして話しはじめた。
「あの二人は何処にいる」
 荒ワシ師団長は空を駆りながら戦闘員の一人に問うた。
「ハッ、この下の辺りのようです」
 背のプロペラで空を駆るその戦闘員は探知機を見ながら言った。
「そうか、この下か」
 荒ワシ師団長はそれを聞き下を見下ろした。鬱蒼と茂った密林である。
「降りるぞ」
 彼は戦闘員達に対し言った。
「えっ、しかし・・・・・・」
 空で戦いを挑むと思っていた彼等はそれを聞いて顔を見合わせた。
「心配するな、俺は必ずライダーの首をとる」
 そう言って自ら降りて行った。
「怪人達にも伝えよ、すぐに来いとな」
「ハ・・・・・・」
 戦闘員達は力無く答礼した。そして連絡した後彼に続く。
「出て来い、ライダー達!」
 荒ワシ師団長は密林に入り叫んだ。
「この荒ワシ師団長が貴様等の首を貰いに来てやったぞ!」
 その周りを戦闘員達が取り囲む。ようやく追いついたのだ。
「荒ワシ師団長、迂闊に叫ぶのはあまり・・・・・・」
 戦闘員の一人が諫めようとする。
「貴様等は黙っておれ!」
 しかし彼はそれを一喝した。
「貴様等は俺の言う通りに動いておればよいのだ!」
 普段は戦闘員達の言葉もよく聞くが今は違っていた。スカイライダーに敗れたことによる屈辱からであろう。彼は明らかに冷静さを失っていた。
(これはまずいな・・・・・・)
 戦闘員達はそう思った。だがそれを口に出すことは出来なかった。
 これ以上の諫言はかえって自分達の禍となる。彼等は口を噤むことにした。
「言われなくてもここにいる」
 その前に二人の戦士が姿を現わした。
「出てきおったか」
 荒ワシ師団長は彼等の姿を見て舌なめずりするように笑った。
「そうだ、貴様を倒す為にな」
 筑波は彼を指差して言った。
「フン、戯言を」
 師団長は筑波を見下すように見て笑った。
「貴様はこの俺が倒すと何度も言っているというのに」
「じゃあやってみろ」
 筑波は珍しく強い声で言った。
「最初からそうしてやるつもりだ」
 それが返事であった。
「よし、行くぞ!」
 筑波は構えを取った。アマゾンもそれに続く。

 スカイ・・・・・・
 右手の平を前に突き出す。そしてそれをすぐに懐に入れる。
 左手も平を作りる。右に持って行きすぐに手刀にする。
 そしてそれを上から左へ旋回させる。
 身体が黄緑のバトルボディに覆われる。胸はオレンジになり手袋とブーツは黒くなる。
 変身!
 身体を捻り左脇に入れる。そして右手を左斜めに突き出す。
 顔の右半分が緑の仮面に覆われる。その眼は真紅だ。そして左半分も。
 光が放たれた。

 アーーーーー
 両手を爪の様にして肩の高さで上げる。肘は直角に上に向けている。
 マーーーーー
 その両手を胸のところでクロスさせる。身体が深緑に赤い縞の入ったバトルボディに覆われる。手袋とブーツは鰭のある黒いものだ。
 ゾーーーーーン!
 両手を戻す。その眼が赤く光った。
 顔の右がマダラの仮面に覆われる。そして左も。光が包んだ。

「行くぞ!」
 変身を終えた二人のライダーは荒ワシ師団長達に向かって行った。
「フン、変身したか」
 彼はそれを見ながらまだ笑っていた。
「出でよ、出番だ」
 その声に従い怪人達が姿を現わした。
「チュウウウウウーーーーーーッ!」
 怪人のうち一体が叫んだ。
 ゲルショッカーのペット怪人ネズコンドルである。その他にもいる。
 ジンドグマの雨傘怪人アマガサンダーだ。彼等は左右に散りライダー達に迫る。
「来たか」
 スカイライダーは二体の怪人を見て呟いた。
「ならば」
 拳を握る。戦うつもりだ。だがアマゾンが前に出た。
「ムッ!?」
 アマゾンは怪人達の前に出た。
「ここはアマゾンに任せる!」
 彼はスカイライダーを降り向いて言った。
「しかしそれは・・・・・・」
 やはり気が引けた。
「スカイライダーは荒ワシ師団長倒す、それでいい!」
 そう言うと怪人達と対峙した。
「そうですか」
 スカイライダーは彼の心遣いに感謝した。
「ならばそうさせてもらいます!」
 彼はアマゾンの左肩を飛び越えて言った。
「アマゾン期待している!」
「はい!」
 スカイライダーは振り返らずに頷いた。顔はそのまま荒ワシ師団長を見ていた。
「来おったな」
 彼はそれを見てまたもや笑った。
「まずは改めて挨拶といこうか」
 彼はそう言うと斧を投げ付けてきた。
「甘いな」
 スカイライダーはそれを屈んでかわした。
 なおも走り続ける。間合いが迫る。
 戦闘員達が左右から来た。その手には斧がある。
「どけっ!」
 ライダーは拳で彼等を退けた。戦闘員達が左右に吹き飛ぶ。
 その後ろではアマゾンが二体の怪人を相手に戦っていた。
「カァサァーーーーーーッ!」
 アマガサンダーが叫ぶ。そして左手に持つ傘をアマゾンに向けてきた。
 そこからロケットが放たれる。アマゾンはそれをかわした。
「ケーーーーーーーッ!」
 かわしたアマゾンは斜めに跳んでいた。空中で宙返りし両足で木を蹴る。
 そこに怪人のミサイルが再び迫る。今度は頭頂部から放ってきた。
 だがそれは当たらなかった。アマゾンの動きの方が速かったのだ。
「ケケケーーーーーーーッ!」
 アマゾンが右手を一閃させた。アマガサンダーは左肩から右脇まで両断された。
 今度はネズコンドルが来た。両腕のカッターで切りかかる。
 アマゾンはそれを両手の鰭で受け止めた。怪人はさらに嘴で突こうとする。
 しかしそれも効かなかった。アマゾンはその嘴を両手で掴んだ。
 そして後ろに投げる。怪人は木に叩き付けられた。
 アマゾンはそこに襲い掛かった。そして牙で噛み付いた。
 喉を引き千切った。怪人の血が噴き出した。
 二体の怪人は爆発した。そして密林の中に消えていった。
 その爆発を見るアマゾン。その後ろでも戦いが行なわれている。
「喰らえっ!」
 荒ワシ師団長が斧を振り下ろす。スカイライダーはそれをかわした。
「トォッ!」
 そして蹴りを放つ。師団長は楯でそれを受け止める。
「やるおるな」
 師団長はその蹴りの衝撃を見て言った。
「蹴りもやはり以前より強くなっておる」
「それもこれもバダンを倒す為だ」
 スカイライダーはそれに対して言った。
「それに攻撃はこれで終わりじゃないぞ!」
 さらに攻撃を続ける。蹴りをさらに出す。
「フンッ!」
 それを楯で受け止める。流石に楯の裁きも見事だ。
 しかしそれよりもスカイライダーの蹴りの衝撃が勝った。楯はその衝撃に次第に勝てなくなっていた。
 割れた。楯は粉々に砕け散ってしまった。
「な・・・・・・」
 荒ワシ師団長はそれを見て呆然とした。その隙を逃すスカイライダーではなかった。
「喰らえっ!」
 パンチが胸を撃った。後ろに吹き飛ばされる。
「グググ・・・・・・」
 だがそれでも立った。斧を握り直す。
「まだ立てるか」
 スカイライダーはそれを見て言った。
「流石はデルザーの改造魔人といったところか」
「そうだ、甘く見てもらっては困るな」
 荒ワシ師団長はその言葉に対して返した。
「エルサレムで勇名を馳せ砂漠を支配した我が祖先の名誉にかけて俺は勝つのだ」
「名誉か」
 スカイライダーはそれを聞いて呟いた。
「確かにそれは貴様にとって何よりも大事なものなのだろうな」
「そうだ、俺はその為なら何でもする」
「だがそれに気を取られ策に陥ったな」
「何!?」
 彼はその言葉に眉を顰めた。
「貴様は本来空での戦いを得意とする。その翼を使ってな」
「それがどうした!」
 荒ワシ師団長は侮辱されていると感じ激昂した。
「それは俺も同じだ。この空を駆るスカイライダーにとってはな」
「何が言いたいのだ・・・・・・!?」
 師団長はスカイライダーの真意を計りかねていた。
「だが俺は空を駆るだけではない。多くの場所での戦いの経験がある」
 彼は言葉を続けた。
「だが貴様にはそれは無い、貴様はこの場所に誘い込まれたのだ!」
「何ィッ!」
 彼はその言葉に驚愕した。そして今ようやく己が罠にかかったことを悟った。
「行くぞっ!」
 上に飛び去ろうとする荒ワシ師団長に襲い掛かった。そして地面に投げ付ける。
「グワッ!」
 だが立ち上がる。そして斧を投げ付ける。
「甘いっ!」
 スカイライダーはそれをかわした。そして荒ワシ師団長にさらに突進した。
「受けてみろ!」
 彼は跳んだ。そして激しく前転する。
「スカイキィーーーーーック!」
 キックを放った。それは一直線に師団長に向かっていく。
 蹴りはその胸を直撃した。衝撃で大きく後ろに吹き飛んだ。
「ガハアァッ!」
 木に背をぶつけた。その木は衝撃で折れた。
「ヌヌヌ、まだまだ・・・・・・」
 荒ワシ師団長はそれでも立ち上がってきた。
「無駄だ、最早立っていることすら出来ないだろう」
 スカイライダーは彼を見て言った。
「フン、この俺を誰だと思っている」
 彼はその言葉に対して言った。
「俺は荒ワシ師団長だ、デルザーの空の支配者だ」
「・・・・・・・・・」
 スカイライダーはそれを聞いて沈黙した。
「この俺は森の中では死なん、俺が死ぬ場所は決まっているのだ」
 そう言うと背中から翼を出した。
「俺は大空で死ぬ。スカイライダーよ、この俺の死に様よく見ておれ!」
 そう言うと大きく羽ばたいた。そして密林を出た。
「バダンに栄光あれーーーーーーっ!」
 そう言うと空中で爆発四散した。後には破片一つ残らなかった。
「卑劣な男だと聞いていたが」
 スカイライダーはその爆発を見上げながら呟いた。
「最後は見事だったな」
 その足下には彼が先程砕いた楯があった。バダンの紋章の一片がそこに描かれていた。

「これでバダンの強い奴が一人いなくなった」
 戦いが終わりアマゾンは変身を解いて言った。
「ええ、しかし敵はまだまだいますよ」
 筑波は彼と共に密林の中を歩きながら答えた。
「うん、けれど一人ずつやっつけていく。それが一番いい」
「ですね。敵の戦力を少しずつ削いでいきましょう」
 朝いた港に出た。
「筑波、じゃあ行こう。バダンはこうしている間にも動いている」
「そうですね、今度はギアナ高地ですか」
 彼は次の戦場に思いを馳せた。
「ツバサ大僧正と・・・・・・他にも来るでしょうね」
「うん、ここよりも激しい戦いになる」
「だからといって逃げるわけにはいきませんからね」
 二人は船に飛び乗った。エンジンをかける。
「そう、悪い奴がいる限り戦う。それがライダーの仕事」
 エンジンがかかった。泊めてあるロープを解いた。
「アマゾンも筑波もそれは同じ。だけどそれ少しも怖いことじゃない」
「はい、武者震いがしてきましたよ」
 その通りだった。彼はこれからの戦いに思いを馳せると身体が奮ってきた。
「バダンを倒せるというのなら」
「それでいい」
 アマゾンはそれを見て微笑んだ。
 船は出発した。そしてギアナ高地へ向かって旅立った。


死霊舞う森   完



                                  2004・3・25

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