『仮面ライダー』
 第三部
 第四章             長城の髑髏

 世界各地でライダーとバダンの戦いが行なわれていた。風見志郎こと仮面ライダーX3も例外ではなく彼もまた戦場に身を置いていた。
「滝さん、それにしてもここは凄く長いですね」
 彼は傍らにいる滝に対して声をかけた。
「ああ。いつも思うがよくもこれだけのものを作ったよ」
 滝が賞賛を込めた声で言った。二人は今北京郊外万里の長城の上にいた。
 この長城は古来より中国が北方の異民族に対する防御として建築されていた。
 よく秦の始皇帝が作ったと言われるがそれは少し違う。確かに彼も作るよう言ったがそれ以前より戦国時代の国家であった趙や燕等異民族と国境を接する国が作っていた。彼はそれを繋ぎ合わせ本格的なものにしたのだ。これは司馬遷の『史記』にも詳しい。
 この史記においては始皇帝は無慈悲で冷たい心を持つ暴君として書かれている。一面においてはそうであろう。だが彼が傑出した人物であったことは事実なのだ。
 彼は北に秦でも特に優れた将と精鋭、そして自身の嫡子を送った。これは息子が自分に従わないからだと後の世にまで言われた。だが違っていた。これは彼の能力を知っておりそして名将の補佐を得て彼を自身の後継者として育てる目的であったのだ。
 彼等の防衛の下長城は建造された。膨大な金と多くの人材が必要であった。そして作られていったのだ。確かに労役に駆り出される方としてはかなわなかっただろう。だがそれ程までに北の異民族である騎馬民族は脅威であったのだ。その証拠に始皇帝が倒れ秦が滅びその後に漢を建国した劉邦もまた彼等には苦しめられた。元々農耕民族である彼等にとって馬を自由に操る彼等はこれ以上はないという程の難敵であったのだ。
 彼等は匈奴と言われた。ここには漢民族の彼等に対する怖れが見られる。彼等に対して積極的に兵を出し打ち破った漢の武帝にしろ多くの犠牲を払っている。
 それ以後も彼等の脅威は続く。我が国でも有名な三国時代の後中国を統一した晋はその内乱の後疲弊したところを攻め込まれ南に逃れている。以後黄河流域は彼等が支配した。なおこの時中国の人口が激減したと言われることがあるがこれは単に戸籍が崩壊しただけである。中国の戦乱の時にはよく人口が激減しまた急に増加するがこれは戦乱により戸籍の資料が失われるからである。従って再び戸籍を調査すると人口はそんなに減ってはいないのである。この時代は戸籍はかなりいい加減になっていた。これは戦乱と貴族の土地に人々が逃れていたからである。南朝には大貴族達が多く秦以来の中央集権制はかなり崩壊していた。北方の遊牧民の系列の北朝は北朝で戦乱に明け暮れていた。従って戸籍がいい加減なのである。
 それも隋の登場により終わった。久方振りに中国を統一したこの王朝は北にありその出自は異民族であった。だが皇室も自分達を漢民族だと思っているふしがあった。これはすなわち異民族とは関係が良くないということでもある。
 隋もやはり北の異民族とは対立した。ここで長城を修復したのだ。
 その後の唐も同じである。北の異民族との対立は続いた。唐の後中国を統一した宋になると事態は更に深刻なものとなっていた。
 北の異民族の国家遼はあまりにも強大であった。何と長城を越えていたのだ。これはこの長城をもって境とする漢民族には耐えられるものではなかった。
 当然衝突がある。しかし軍の力を抑える為文治主義を採っていた宋が勝てる筈もない。結局毎年貢物を送る羽目になった。遼の後の金になるとさらに酷くなった。外交の失態から金を激怒させた宋は北半分を取られる。そして再び南北朝のようになってしまった。
 宋はモンゴル帝国の元に滅ぼされる。そして明が起こる。
 明は長城を重要視した。北にはまだモンゴルがいたからである。長城を当時の技術の粋を集め再建築した。これが今の長城である。モンゴルの後の女真族の清もこれには苦戦した。だが明が農民反乱で崩壊し内応者が出て越えることが出来た。こうして清は中国を征服した。
 だが彼等も皇族がその本来の言語を忘れてしまう程漢化してしまった。漢民族の文化と同化してしまっていたのだ。ここに新たな北の勢力がやって来た。ロシアである。
 帝国主義時代にはロシアは南下してきた。だが長城のところで止まった。漢民族にとってはその地は領土ではないので彼等は騒がなかったのだ。もっとも満州人にとってみればたまったものではなかっただろうが。
 清が滅び中華民国になる。丁度その時満州は空き地であり日本がやって来た。そういう時代であった。朝鮮半島を日本としていた彼等にとっては満州は防衛上の要地であった。しかも資源が期待できた。資源の無い我が国にとっては生命線となっていた。
 彼等は清の最後の皇帝溥儀を皇帝に迎え満州国を建国した。これは溥儀の強い要望もあった。
 ここで中華民国はあまり騒がなかった。それ以前も満州でのことに対して彼等は無関心であった。何故なら自分達の領土ではないからだ。日中戦争はそれを読み違えていた。長城を越えなければ彼等にとってはどうでもいい話なのである。
 これは今でも言える。彼等にとって境は長城である。従って北にある勢力を特に警戒する。中国人が最も嫌う国は実は日本でもアメリカでもインドでもない。韓国とロシア、とりわけロシアだという。何故か、北にあるからだ。ソ連時代に彼等は激しく対立した。一時同盟関係にあったが彼等にとって北の勢力は無視出来るものではなかった。
 今もそれは変わらない。ロシアが少しでも力をつければ彼等にとっては最大の脅威となる。そうなると台湾や尖閣などとは言っては言られなくなるのだ。
「そう思うと本当に歴史的に意義があるんですね、この長城は」
 風見は北を見ながら言った。
「そうだな、境の象徴だからな」
 滝も中国の歴史はある程度知っているつもりである。
「だからここでは多くの血が流れている」
「・・・・・・はい」
 風見はその言葉に頷いた。
「多くの戦いがありましたからね」
 長城にある多くの櫓や城壁がそれを物語っている。
「歴史というのは戦いの歴史でもある。俺達がこれからもずっと戦争を続けていくんだろうな」
「・・・・・・でしょうね。それは人間の悲しい一面です」
 風見は暗い顔をして言った。そして二人は長城を降りていった。
「ケケケケケ、戦いか」
 二人が去った後その後ろに青白い鬼火が現われた。
「それこそが我等の無上の喜び」
 その中からドクロ少佐が姿を現わした。
「そしてそこに流れる血こそ我等が最も美味とするもの」
 彼はその空洞の目に残忍な光を宿して言った。
「俺もそれは同じ、いやこのドクロ少佐は人の血を浴びて生きている」
 見れば彼の赤い軍服は人の血のその色であった。
「風見志郎、いや仮面ライダーX3よ」
 風見達が消えた方を見て呟いた。
「今度は貴様の血で俺の軍服を染め直してやる。シンガポールでの借りを含めてな」
 そう言うと再び鬼火となった。そしてその場から消えていった。

「鋼鉄参謀もやられたか」
 地下の奥深くから聞こえて来る。見ればそこにある部屋で誰かが話をしている。
「そうじゃ、見事な最後だったという」
 見れば魔神提督と幽霊博士である。
「惜しい男じゃったが」
 魔神提督は口惜しそうに言った。
「だが死んでしまった者を嘆いていても仕方はない。荒ワシ師団長やヨロイ元帥ももいないのだしな」
「そうじゃな。だがこれはすぐに我等にかかってくる言葉になるかも知れん」
 幽霊博士は暗い声で言った。
「おい、驚かすでないぞ、縁起でもない」
 魔神提督は顔を顰めて言った。
「ホッホッホ、冗談じゃ。そんなに驚くでない」
 博士はそんな魔神提督の顔を見て笑って言った。
「お主も人が悪いのう。だがライダーは十人いる」
「そう、ゼクロスが向こうにいったからのう」
「わしの時は八人だった。その八人にネオショッカーは完全に破壊されたが」
「何を言う、わし等の時は九人じゃぞ、甘い甘い」
「・・・・・・そういう問題でもなかろう」
 魔神提督は呆れたような顔で言った。
「まあそうじゃがな。ところでお主は何か用意をしておるのか?」
 幽霊博士は彼に倒して問うた。
「一応はな。わしとて作戦がある」
「ならば良いが。それだけで良いのかのう」
 彼はそこで意味ありげに笑った。
「何が言いたいのじゃ!?」
 魔神提督はその言葉に眉を顰めた。
「お主自身じゃ。果たしてライダー達に対しても戦えるのかと思うてな」
「何だ、そのことか」
 魔神提督はその言葉を聞くとニヤリ、と笑った。
「それは心配無用じゃ。わしもネオショッカーの大幹部だった男じゃぞ」
「おっと、そうであったな」
 幽霊博士はその言葉の意味を察した。
「ではわしからは何も言うことはないな。それでは楽しみにしておくか」
「うむ、世界征服の折には二人で飲もうぞ」
 魔神提督はそう言ってニヤリ、と笑った。
「楽しみにしておるぞ、フォフォフォ」
 幽霊博士は足の下から白い煙を発した。そしてその中に姿を消していった。
「面白い奴じゃ、ジンドグマの者とは妙に馬が合うのう」
 彼は上機嫌な様子で言った。
「では楽しく飲む為の準備に取り掛かるとするか。さて、連中を呼ぶか」
 彼は部屋の片隅に置かれていた鈴を鳴らした。
「お呼びでしょうか」
 すぐに戦闘員達がやって来た。
「うむ、かねてよりの計画だが」
 彼はニンマリと笑いながら言った。
「唯今より開始するぞ」
「ハッ!」
 戦闘員達はその言葉に対し敬礼した。そしてその場をあとにした。

 風見と滝は食事を終え再び長城に向かった。
「北京の料理は案外脂っこいですね」
 風見は滝に対して言った。
「そうだったな、羊を使ったものが多いし」
 滝もそれに同意した。
「北京は北に近いからな。羊を使ったものも多くなるとは思っていたが」
「それに寒いからでしょうかね」
「だろうな。ここは冬になると特に寒いらしいし」
 滝は乾いた風を頬に受けながら言った。
「その分脂っこいものを食わなきゃやってられないのだろう。俺は何とも無かったが御前さんには少し辛かったかな」
「ええ、まあ。俺はどちらかというと広東の料理のほうが好きですね」
「敬介の奴は上海の料理が好きだと言ってたな。日本人はやっぱり魚介類か」
 実は滝は日系アメリカンである。
「はい。シンガポールの料理は口に合いましたし」
「ううむ、俺は最初あの刺身や寿司を見た時はえらく驚いたがなあ。生で魚を食うなんて信じられなかったよ」
「ははは、外国人は皆そう言いますね。けれど美味いでしょう」
「ああ、今じゃ日本に行くとあれを食いたくてしょうがなくなるよ」
 滝は笑いながら言った。
「何だかんだ言って俺のルーツは日本だからな。あの味を何処かで覚えていたんだろうな」
「実は刺身はこの国が発祥なんですけれどね」
「えっ、そうなのか!?」
 滝は風見の言葉に驚いた。
「はい。水滸伝なんかにも出て来ますよ」
 風見はニコリとした顔で言った。
「それは意外だな。中華料理は全部火を通すものだと思っていた」
「一概には言えないみたいですね。和食にだって脂っこいものがありますから」
「そうだな。イギリスでも美味いものが食える時があるし」
「滝さん、それは少し違いますよ」
「そうだな、ハハハ」
 二人は談笑しながら長城を歩いていた。その時だった。
 不意に遥か目の前の長城が爆発した。
「ムッ!」
 二人はそれに反応した。そしてバイクで現場に急行する。
「どうしたっ!」
 数十分後滝はインターポールの身分証明書を見せながら現場にやって来た。風見も一緒だ。見れば中国の公安警察の警官達が現場で捜査に当っている。
「インターポールの方ですか。これは都合がいい」
 制服姿の警官達が滝を迎えた。
「都合がいいって・・・・・・。何かあるのか!?」
 滝はそれを聞いて彼等に対して問うた。
「はい。実はこうしたことが以前より起こっているのですよ。数ヶ月前から」
「数ヶ月前から・・・・・・」
「そうなんです。一体何処のテロ組織がやったのか皆目見当がついていない状況でして」
 中国にも多くの民族問題がある。そして中国政府に反発する者も多い。
「そうか、しかしこれは・・・・・・」
 見ればかなり威力のある爆弾を使ったらしい。長城は広範囲に渡って破壊され死傷者も多い。大怪我をして担架で運び込まれている者が次々と現場から救急車に入れられている。
「いつもこんな爆発なんですか!?」
 風見は警官の一人に問うた。
「はい。物凄い威力でしょ。正直私達もこれ程威力のある爆弾は見たことがありません」
 その警官は困った顔で言った。
「犠牲者も後を絶ちませんし・・・・・・。我々も警戒して四六時中警戒に当っているのですが効果は上がってはいない状況なんです」
「上層部に話したら最初はすぐ捕まるだろう、と楽観視していたのですが今は何かに怯えているように動かないんです」
「そうか、何かおかしいな」
 滝はその話を聞いて首を傾げた。
「何かに怯えている、か。どうやら何かあったようだな」
「そのようですね」
 風見もそれを聞いて答えた。
「良かったら俺も捜査に協力させてくれ。俺の名は滝和也、インターポールの捜査官だ」
「そして俺は風見志郎。上の方にはこの二人の名前だけ出しておけばいい」
「わかりました」
 その場にいた警官達はその言葉にいささか変に思いながらも頷いた。
 こうして風見と滝は捜査に協力うることとなった。いや、何と中国政府の上層部からの直々の命令で公安警察はこの事件の捜査から外された。そしてこの二人が捜査をすることとなった。
「滝さん」
 風見は長城の脇をマシンで走りながら傍らをワルキューレで走る滝に対して話しかけた。
「何だ」
 滝はこちらに振り向いて声を返した。
「公安の上層部の怯えといい政府から直々に捜査をしてくれるよう言われたところを見ると」
「間違いないだろうな。この事件の黒幕はバダンだ」
 滝は眉を決した顔で言った。
「それにあんな威力を持っている爆弾を作れるのは連中以外には考えられないしな」
 彼は長城での爆発事故を思い出しながら言った。
「テロですか。相変わらず非道な奴等だ」
 風見は顔を顰めて言った。
「連中の行動は変わらないな。これだけは組織の名前が幾ら変わろうとな」
「ですね。あの首領ですから」
 彼はデストロンの、デルザーの、そしてネオショッカーの首領を思い出しながら言った。
「しかし妙だな。前から思っていたんだが首領は御前さん達に宇宙に送り込まれて死んだんだろう?」
「ええ。デルザーの首領も自爆しています」
 風見は答えた。
「だったら何であの首領なんだ?そう考えても死んでいるだろう」
「しかしゲルショッカー崩壊後も生きていましたからね」
「それだよ、実は俺はあの首領は本当に死んだと思っているんだ」
 滝は言った。
「じゃあデストロンの首領は?」
「それだ。デルザーの首領は御前さん達に自分の声に聞き覚えがあるだろう、って問うてきたというじゃないか」
「はい」
「あの首領が今までの組織の黒幕だということはわかっている。ドグマやジンドグマにしてもな。だが組織崩壊の度に首領は死んでいる」
「はい、俺もこの手で倒しましたから」
 風見は答えた。彼は白骨の化け物であるあの首領をこの手で倒したことは今でも覚えている。
「若しかして今までの首領はあの首領の分身の一つじゃないか?それだと今まで何度も死んでいてもすぐに別の組織を作り上げ復活してくるというのも理解出来る」

「・・・・・・・・・」
 風見は滝の話に考え込んだ。
「これは俺の仮定だがな。しかしそれだと説明がつくだろう。ネオショッカー崩壊で死んだ筈の首領が今いまたこうして俺達の前にその声を現わしていることが」
「だとすればあの首領は・・・・・・」
 その時だった。不意に二人の周りが爆発した。
「ウォッ!」
 二人はマシンから跳んだ。そして長城の上に着地する。
「ケケケケケ、油断している暇はないぞ」
 無気味な笑い声がした。ドクロ少佐である。何と櫓の上に立っている。
「貴様、ドクロ少佐か」
 滝は彼の姿を見て言った。
「そうだ。滝和也よ、貴様と会うのは初めてだったな」
「フン、出来ればずっと会いたくなかったな」
 彼は吐き捨てるように言った。
「そうだな。だが安心しろ、会うのはこれが最後になる」
「それはどういう意味だ!?」
「貴様がここで死ぬからだ」
 そう言うとその右手に持つ大鎌を滝に向けた。
「喰らえっ、ドクロ火焔!」
「うわっ!」
 滝は咄嗟に後ろに跳び退いた。そして何とかその火焔をかわした。
「ほう、やはりショッカー、ゲルショッカーと最後まで戦っただけはある。中々見事な身のこなしだ」
 ドクロ少佐は滝の身のこなしを見て言った。
「だがそれだけでは勝てん」
 彼の下に戦闘員達が姿を現わした。長城の上にヌッと出て来た。
「やれっ、滝の相手は貴様等がしろ」
「ギッ」
 戦闘員達はそれに従い動いた。忽ち滝は取り囲まれる。
「さて、風見志郎よ」
 ドクロ少佐は滝と部下達の戦いを上から眺めながら言った。
「いや、仮面ライダーX3と言った方がよいな」
 彼はそう言うと後ろを振り返った。そこに彼はいた。長城の上に立っていた。
「貴様の相手はこの俺がしてやろう」
 そう言うと下に跳び降りた。そしてX3と対峙する。
「行くぞっ!」
 前に突進する。そして大鎌を振るう。
 X3はそれを首を屈めてかわした。そして拳を出す。
 だがドクロ少佐はそれをかわした。上に跳ぶとさっきまでいた櫓の上に立った。
「ケケケ、奇厳山以来だな」
 彼はX3を見下ろして言った。
「あの時は貴様を倒したくて仕方がなかったぞ」
 彼は無気味な笑い声を出しながら言った。
「ほざけっ、その減らず口二度と立てなくしてくれる」
 X3は彼を指差して言った。
「ケケケケケ、出来るものならな」
 彼はそう言うと右手を上げた。するとX3の周りに三体の怪人が現われた。
「ムウ・・・・・・」
 ショッカーの地獄怪人地獄サンダー、ブラックサタンの怪力怪人奇械人メカゴリラ、ドグマの拳闘怪人アリギサンダーである。
彼等はX3を取り囲み身構えた。
「ほう、見たところ何かを壊そうという顔触れだな」
 X3は怪人達を見て言った。
「そうだ、この長城を破壊する為のな」
 ドクロ少佐はX3を見下ろしながら言った。
「そうか、ではあの爆発事故も貴様等の仕業か」
「その通り」
 ドクロ少佐は答えた。
「テロは我がバダンの作戦の中でも主幹の一つとなるもの。特にこうした人の集まる観光場所で行なうのは最適なのだ」
 彼は笑いつつ言った。
「それだけ多くの血が流れるからな」
「フンッ、貴様等らしいな」
 X3はそれを聞き言葉を吐き捨てた。
「有り難い、褒め言葉として受け取ろう」
 少佐はそれを涼しい顔で受けた。
「では貴様にはここで死んでもらおう。立派な墓を築いてやるから安心しろ」
 その声が終わると共に怪人達が一斉に動きだした。
「アリリリリリリリーーーーーーッ!」
 まずはアリギサンダーが来た。その右拳の鉄球でジャブを放つ。
「ムッ」
 X3はそれを上体を動かしてかわす。そして反撃の手刀を放った。
 怪人はそれを左手で受け止めた。そして右ストレートを繰り出す。
「見切った!」
 X3はそこにチョップを放った。それで右拳を砕いた。
 そしてその身体を掴んだ。上へ思いきり放り投げた。
「X3ボディアターーーーーーーーック!」
 そこへ跳び上がり体当たりを仕掛けた。怪人は遠くに吹き飛ばされ空中で爆死した。
 下へ降りるX3.だがそこに地獄サンダーが待ち構えていた。
 X3の着地地点は長城から少し外れていた。怪人はそこに蟻地獄を作っていたのだ。
「ケケケケケケケケケッ!」
 怪人は奇声を発した。X3をその中に引きずり込まんとする。
「成程な、そうくるか」
 X3はそれを見下ろしながら呟いた。そして空中で反転した。
「X3ドリルアターーーーーーーック!」
 X3はそこにドリル状に回転して急降下する。そして地獄サンダーを直撃した。
 怪人は自らの蟻地獄の中に沈んだ。そして土の中で爆発が起こった。
「ムッ、X3は何処だっ!?」
 ドクロ少佐が叫んだ。X3もまた土の中に消えていた。奇械人メカゴリラが長城の下に跳び下りていった。
「ギィッ」
 怪人は辺りを探る。だが気配は無い。
「ここだっ!」
 不意に後ろから声がした。X3が後ろから襲い掛かって来たのだ。
「ギィーーーーーッ!」
 怪人はその左手のアンカーをハンマーに変形させX3の頭部に振り下ろした。だがX3はそれを何なくかわした。
 そしてその腹に蹴りを入れる。怯んだところに拳を入れた。
「喰らえっ!」
 X3は上に跳躍した。そして蹴りを放つ。
「X3反転キィーーーーーーック!」
 そして反転してもう一撃蹴りを放った。これにより怪人は爆死した。
「ドクロ少佐、残るは貴様だけだっ!」
 長城の上に戻ってドクロ少佐を指差す。少佐は不敵に笑った。
「ケケケケケ、望むところだ」
 下に跳び降りて来た。そして再びX3と対峙する。
「今度こそ負けはせぬ。この大鎌で切り刻んでやる」
 そう言うと振り被った。そしてX3の首を狙う。
 しかしX3はそれを蹴りで弾き返した。大鎌は回転しながら宙を舞った。
「ほほう、考えたな。俺の武器をまず外させるとは」
 彼はそれでも尚不敵に笑った。
「だがそれだけで勝てるとは貴様も思ってはいないだろう」
 X3は答えない。ただ身構えている。それが答えであった。
「ならばこれはどうだっ!」
 今度はマキビシを放ってきた。X3はそれをかわした。
「まだだ、それだけではないぞっ!」
 右の拳をX3に向ける。そしてそれを放って来た。
「何っ!」
 これにはさしものX3も驚いた。左手で弾こうとするが間に合わない。顔に受けた。
「ガハッ・・・・・・」
 思わず蹲る。右拳を戻したドクロ少佐はそれを見て満足げに笑った。
「どうだ、これも中々の味だろう」
 彼は蹲るX3を見下ろして言った。
「どうかな、それ程聞いてはいないがな」
 X3はそう言うと立ち上がって来た。
「フン、相変わらず痩せ我慢も見事だな」
 彼はそれを見て嘲笑する声を出した。
「だが口ではそう言っても結構ダメージを受けているのは確かなようだな」
 X3の脚を見て言った。見れば少しふらついている。
「俺の拳を受けてそうそう無事な者はいない。それは貴様とてわかっていよう」
 彼は戻ってきた大鎌を左手に取って言った。
「だが俺も貴様のことはよく知っている。手加減するつもりは毛頭ない」
 そう言うと大鎌を再び構えた。
「今度こそ貴様を仕留める」
「望むところだ」
 X3もダメージから立ち直り身構えた。そして両者は互いの隙を窺った。
「ドクロ少佐、大変です!」
 そこに一人の戦闘員がやって来た。
「どうした!?」
 彼はその戦闘員に対して問うた。
「すぐに基地にお戻り下さい、何者かの襲撃を受けております!」
「何っ、他にライダーがいたのか!?」
 ドクロ少佐はそれを聞いて驚きの声をあげた。
「いえ、それが・・・・・・」
 その戦闘員は今一つ口篭もっている。
「どうした、言えぬ事情でもあるというのか」
「ハッ・・・・・・」
 戦闘員は沈んだ声で答えた。
「よし、では戻るぞ。X3よ、勝負はお預けだ!」
 ドクロ少佐は青白い炎に姿を変えて消えた。戦闘員も姿を消した。
「何があったというのだ?」
 X3はドクロ少佐が変化した炎を見ながら言った。
「X3、大丈夫か」
 そこに滝がやって来た。
「ええ、ドクロ少佐が急に撤退しましたし」
 X3は滝に顔を向けて答えた。
「そうか。連中も中で色々とあるようだな」
「ええ。特に奴はデルザー軍団でしたからね」
 デルザー軍団の内部対立の激しさは彼等もよく知っていた。
「だがこれで時間が出来たな」
「はい、今のうちに奴等の作戦に対する対策を練りましょう」
 こうして二人は長城をあとにした。

 その基地は張家口の地下にあった。炎がそこに入って来た。
「誰かいるかっ!」
 炎から戻ったドクロ少佐は辺りを見回しながら叫んだ。
「ハッ、何でしょうか」
 早速戦闘員が一人出て来た。
「他の者は無事かっ!?」
 少佐はその戦闘員に対して強い口調で問うた。
「はい。如何なされたのですか、そんなに慌てられて」
「馬鹿者、基地が襲撃されて慌てぬ者がいるかっ!」
 彼はそれを聞いて戦闘員を一喝した。
「・・・・・・慌てるも何も襲撃などされてはいませんが」
 戦闘員はキョトンとした顔で答えた。
「何っ、それはまことか!?」
 ドクロ少佐はその言葉に面食らって言った。
「はい、よろしければ基地の中をお調べ下さい」
「ううむ・・・・・・」
 見れば基地の中はいつもと変わりがない。皆それぞれの持ち場で普通に働いている。そこへさっき長城にやって来た戦闘員が戻って来た。
「おいっ、貴様」
 ドクロ少佐はその戦闘員の姿を認めると詰問した。
「一体これはどういうことだ、事と次第によってはただではおかんぞ」
「おやおや、相変わらず戦い方の割に気が短いねえ」
 その戦闘員は無気味で嫌らしい女の声で言った。
「その声はっ!」
 ドクロ少佐はその声の主を知っていた。戦闘員の身体を白い煙が包んだ。
「イーーーーッヒッヒッヒッヒッヒッヒ」
 その戦闘員の正体はヘビ女であった。彼女は本来の姿に戻ると気色の悪い笑い声を出した。
「・・・・・・やはり貴様か。一体何のつもりだ」
 ドクロ少佐は彼女を睨み付けて問うた。
「何、あんたにちょっといい話があってねえ」
 彼女はその口を耳まで裂けさせたまま言った。
「いい話!?」
 少佐は訝しげに問うた。
「そうだよ。あんたは今一人でいるねえ」
「・・・・・・それはこの張家口でのことか。それとも組織でのことか」
 彼は問うた。
「両方だよ。それだとあんたも何かと不便だろう」
 ヘビ女はそう言うとニヤリ、と笑った。
「どうだい、あたし達と手を組むつもりはないかい?」
 彼女は笑みを浮かべたままドクロ少佐ににじり寄る様に顔を近付けた。
「つまりシャドウと手を組め、ということか」
「そうだよ、あんたもタイタンやマシーン大元帥を快く思ってはいないだろう。それに一人じゃ何かとやりにくいだろうし。どうだい、悪い話じゃないだろう?」
 彼女はまるで蛇の穴に誘い込む様な顔で彼の耳元で囁いた。
「・・・・・・・・・」
 ドクロ少佐はそれを黙って聞いていた。
「さあどうだい?これからは仲良くやっていこうじゃないか」
「・・・・・・確かに悪くはないな」
 ドクロ少佐はようやくその重い口を開いた。
「そうだろう、流石に切れるねえ」
「だが一つ聞きたいことがある」
 少佐はヘビ女に顔を向けて言った。
「それはシャドウからの話なのか?」
 そう言うとヘビ女の目を見た。まるでその心を探る様に。
「何でそんなことを聞くんだい!?」
 だがヘビ女も流石である。その真意を決して見せようとはしない。
「俺を誰だと思っている、DDD団のボスだぞ。そうそう易々と動くと思ったか」
「それは一体そういう意味だい?」
 彼女は顔を少し離して問うた。
「シャドウに伝えておけ。話があるなら直接来いとな。俺はあの男が頭を下げぬ限り手を組むつもりは無い」
「ほお言ってくれるねえ。シャドウ様に頭を下げろっていうのかい」
 ヘビ女は怒気を込めた声で言った。
「そうだ、俺は別に一人でも一向に構わんからな」
 彼はヘビ女を睨み返して言った。
「偉いねえ、そこまで強気だと逆にこっちが惚れ惚れしちまうよ」
 彼女は皮肉をふんだんに込めて言った。
「言うな。俺は今までも一人でやってきた。そしてこれからも変わりはないということだ」
 彼はそう言うと彼女から離れた。
「協力を申し出るというのなら断るつもりはない。だが俺はシャドウの軍門に降るつもりも手を組むつもりもないということだ。ただそれだけだ」
「チッ、そうかい、わかったよ」
 ヘビ女は舌打ちをしつつ言った。
「わかったか。ならば帰ってもらおうか。俺はこれ以上話すつもりはない」
「フン、後悔するでないよ」
 彼女はそう言うと一匹の蛇に変化した。そしてその場を立ち去った。
「奴も相変わらず何かと動き回っているようだな」
 ドクロ少佐はヘビ女の気配が消えたのを確かめてからそう呟いた。
「だがそう上手くいくかな。タイタンもマシーン大元帥もその目は節穴ではないぞ」
 彼はそう言うとその場を後にした。
「そうか、やはりドクロ少佐は首を縦には振らなかったか」
 ゼネラルシャドウは己の基地でその報告を戦闘員から聞いて言った。
「それはそれでいい。敵になる者と味方になる者がはっきりわかるからな」
 彼は真紅のテーブルに座しながら呟いた。
「さて、と今後の連中の動きだが」
 彼は懐からトランプのカードを取り出した。
「一つ久し振りに占ってみるか」
 そして彼はトランプを切りはじめた。そしてカードを一枚一枚床に置いていった。

「これがあの爆弾ですか」
 風見と滝は公安の警官達に自分達が取り出してきたバダンの爆弾を見せていた。
「えらく大きいですね」
「それに構造もかなり複雑な様です」
 彼等は口々にそう言った。
「これは解体するのは骨が折れそうですね」
 彼等は難しい顔をして言った。
「いや、それが案外そうでもないみたいなんです」
 風見は彼等に対して言った。
「実はここをこうやると・・・・・・」
 彼は実際にその場で解体をはじめた。
「ちょ、ちょっと風見さん・・・・・・」
 警官達は風見がここでいきなり解体をはじめたので思わず顔を青くさせた。
「ほら」
 だが彼はすぐにそれを解体してしまった。
「外部は確かに複雑ですが単なる見掛け倒しです。こういうふうに素人の俺でも簡単に解体出来るんですから」
「何と・・・・・・」
 素人というのは嘘だったが解体が案外楽なのは事実だった。警官達はそれを見て少し安堵した。
「まあ解体は爆発物取扱班に任せれば問題ないでしょう。問題はどうやって探すかです」
 警官達の長である人物が言った。
「これを発見するのがまたかなり困難でして」
 彼は苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「それも問題ありませんよ」
 風見は答えた。
「既におおよその場所は掴んでいますから」
 彼はX3の能力の一つであるOシグナルを使用したのだ。
「えっ、本当ですか!?」
 警官達はそれを聞き流石に驚きの声をあげた。
「はい。この地図に書き込んでおきました」
 彼は懐から一枚の地図を取り出した。そこには所々にバツ印が書き込まれている。
「このバツ印のところにあります。これ探し出すのはズッと簡単になったでしょう」
「有り難うございます・・・・・・」
 彼等はその地図を見ながら風見達に感謝の言葉を述べた。
「いえいえ、それもこれも連中の野望を挫く為ですから」
「連中!?」
 彼等はその言葉に問うた。
「いえ、こちらのことです。お気になさらずに」
「そうですか」
 彼等は何かあると思ったがそれ以上は聞かなかった。一度は政府上層部から直々に声がかかったような者達である。彼等が相手にするような連中などどのような危険なものかわかったものではないからだ。これは彼等の生存本能が聞いてはいけない、と教えていたのだ。
 そして彼等は爆弾の捜索及び処理を開始した。そして的確に一つずつ爆弾を取り除いていった。
「これで問題ありませんね」
 風見は山海関のところでその処理を見守りながら滝に対して言った。ここはかって長城の防衛の要であった。清朝もここを抜くことが中々出来ず苦労した。
「ああ。爆弾はな」
 滝もれを見ながら言った。
「だがここではまだやることは残っているぞ」
「はい。じゃあ行きますか」
「おお」
 二人は頷き合いマシンに乗った。
 そしてそのまま走って行く。やがて誰もいないところまで来た。そこにあるのは果てしない荒野と何処までも連なる長城だけであった。
 二人の周りを爆発が起こる。風見はそれをマシンをダッシュさせることでかわした。滝もそれに倣った。
「来たな!」
 風見はマシンのハンドルから手を離した。そして両手をゆっくりと旋回させ始めた。

 変身
 右腕を肩の高さで真横に置く。左腕は肘を直角にしそれに水平にする。両手の平は手刀となっている。
 そしてそれを右から左にゆっくりと旋回させる。身体が緑のバトルボディに覆われ胸が白と赤になる。手袋は白、ブーツは赤である。
 ブイ・・・・・・スリャアアアーーーーーーーーーッ!
 両手を左斜め上に持っていったところで右腕を脇に入れる。そしてそれをすぐに戻すと同時に左腕を脇に入れる。
 顔の右半分が赤い仮面に覆われる。その眼は緑となる。そしてそれはすぎに左半分も覆った。
 
 腰にあるバブルタイフーンが激しく回転する。そして全身が光に包まれそのマシンがニューハリケーンになる。
「ギエーーーーーーッ!」
 そこに奇声と共に怪人が姿を現わした。ゴッド悪人軍団の一人コウモリフランケンである。
「どうやらさっきの砲撃はこいつの仕業だな」
 X3はその怪人の姿を認めて言った。
 怪人は空に飛んだ。X3もニューハリケーンを飛ばした。
「行くぞっ!」
 怪人はそのまま突っ込んで来る。砲撃も仕掛けて来るが当たらない。
「にゅーハリケーーーーンアターーーーーーック!」
 そしてそのまま体当たりを敢行する。ニューハリケーンのボディが怪人の胸を直撃した。
「ギエエエエーーーーーーーッ!」
 コウモリフランケンは大きく後ろに弾き飛ばされた。そして地面に叩きつけられ爆死した。
「トォッ!」
 X3はマシンから飛び降りた。そこには新たな敵が待ち構えていた。
「キリーーーーーッ!」
 デストロンの双頭怪人カマキリメランだ。怪人はX3めがけブーメランを放ってきた。
「来たな」
 X3はそのブーメランを空中で身体を捻ってかわした。だがブーメランは反転しX3の背中を狙って来た。
 ブーメランが迫る。X3は耳でその音を聞いていた。
「それは予想通りだっ!」
 彼は上体を思い切り屈めた。ブーメランはそのまま飛び去っていってしまった。
「今度はこっちの番だっ!」
 X3はそう叫ぶと屈めたその力でもってそのまま前転した。そして空中で激しく回転しつつ怪人めがけ急降下する。
「X3回転フルキィーーーーーーーック!」
 空中でそのまま三回転し両足で怪人の胸を蹴った。カマキリメランはその衝撃に耐えられず爆死した。
「今度は誰だっ!」
 着地したX3は叫んだ。そこに新たな敵が現われた。
「グルルルルアーーーーーッ!」
 ブラックサタンの奇械人ゴロンガメであった。怪人は姿を現わすと同時に口から粘液を放って来た。
「危ないっ!」
 X3はそれを跳躍でかわした。怪人はそれを認めると両手両足を身体の中に入れた。
「グルルルルルルルーーーーーッ!」
 首も入れた。そしてX3めがけ突っ込んで来る。
「させんっ!」
 だがX3はそれを両手で受け止めた。そして怪人を投げる。
 怪人は両手両足を出し着地した。そして身構えた。
 そして再び口から粘液を放ってきた。
「そんなものっ!」
 X3は再び上に跳躍した。そしてそこにニューハリケーンが飛んできた。
「トォッ!」
 それを踏み台に再び跳躍する。怪人の頭上にきた。
「ここだっ!」
 そしてそこで急降下する。眼下にあるのは怪人の頭頂部だ。
「X3パァーーーーンチッ!」
 その脳天に拳を浴びせた。さしもの奇械人もこれには耐えられず爆死した。
「これで三体か」
 X3は怪人の爆発を見ながら呟いた。
「そろそろ出て来たらどうだ」
 そしてその爆発を見たまま言った。
「怪人達ももう残ってはいまい。今度こそ決着を着けてやる」
「ケケケケケ、俺もそう思っていたところだ」
 不意に後ろから声がした。
「仮面ライダーX3よ」
 X3は後ろを振り返った。そこに無数の人魂が浮かび上がっていた。
「今度こそ決着を着けてやる」
 中央の一際大きな人魂がドクロ少佐となった。そしてその周りに戦闘員達が現われた。
 彼等が姿を現わした時滝がこちらにやって来た。
「X3、遅れて済まない」
「いえ、かまいません」 
 X3は滝に対して言った。
「戦闘員達は俺がやる。御前さんはドクロ少佐をやってくれ」
「わかりました」
 滝は降りて来る戦闘員達に向かって行った。そして彼等を相手に拳を振るう。
「行くぞ、ドクロ少佐」
 X3はそう言うと跳んだ。そしてドクロ少佐の前に着地した。
「ケケケ、望むところだ」
 彼は無気味な笑い声を浮かべてそう言った。
「シンガポールでの借り、今こそ返してやる」
 そしてマキビシを放ってきた。X3はそれを横にかわす。
「さて、と」
 ドクロ少佐はそれを見ながら大鎌を空中に浮かび上がらせた。そしてそれを手に取る。
「覚悟は出来ているだろうな」
 その鎌を投げ付けてきた。X3はそれを上に跳びかわした。
 その後ろに迫る。X3は前転しその蹴りで鎌を弾き返した。
「やはりこの程度では効かぬか」
 ドクロ少佐はそれを見て言った。
「ならばこれしかあるまい」
 彼は右腕をX3に向けた。
「喰らえっ!」
 そしてそれをX3に向けて放ってきた。
「来たな」
 X3はそれを見て言った。冷静にそれを見ている。
 右に動いた。腕はこちらに軌道を変えてやってくる。
「無駄だ、この腕は俺が操作しているのだ」
 ドクロ少佐はそれを見て笑いながら言った。
「ドクロ分体では頭がガラ空きになる。だがこれではそうはならない」
 彼は今度は左腕を飛ばしてきた。
「逃げられぬぞX3.潔く覚悟を決めるがいい」
「生憎だがな」
 X3はそれに対して言った。
「俺は敗れるわけにはいかない。そしてドクロ少佐よ」
 彼はドクロ少佐の両腕を見据えながら言った。
「俺には一度受けた技は通用しないということを忘れていたな」
「何っ!?」
 ドクロ少佐はそれを聞いて思わず声をあげた。
「貴様の動き・・・・・・既に見切っているということだっ!」
 そう言うと前に突っ込んだ。そして飛んでくる両腕を左右の手で払った。
「ムッ!」
 ドクロ少佐はそれを見て思わず声をあげた。X3はそのまま突っ込んで来る。
「喰らえっ!」
 全身の筋肉を硬化させた。特殊強化筋肉である。
 そしてそのまま体当たりを敢行する。ドクロ少佐は後ろに吹き飛んだ。
「まだだっ!」
 X3は跳んだ。そして空中で激しくきりもみ回転する。
「X3必殺きりもみキィーーーーーック!」
 態勢を整えようとするドクロ少佐の胸を蹴った。ドクロ少佐はそれにより大きく吹き飛んだ。
「ガハァッ・・・・・・」
 致命傷であった。だがそれでも立ち上がって来た。
「見事だX3、よくぞ俺の攻撃を二度目で見切った」
 彼はX3を見据えて言った。
「この俺を倒したのはストロンガーと貴様だけだ。褒めてやる」
 X3はそれに対して答えなかった。ただ思わぬ行動に対して構えをとっている。
 両腕が戻って来た。それはすぐにドクロ少佐の腕に収まった。
「これでよし」
 ドクロ少佐はその腕を見て笑った。
「俺は去るとしよう。誇り高きDDD団の長としてな」
 そう言うと長城から身を投げた。
「見よ、これが死神の最後だ!」
 そして長城の下で爆死した。彼は爆発の中に消えていった。
「死んだか」
 X3はその爆発を見て呟いた。
「しかも長城の向こう側でか」
 古来より中国では長城を境としていた。長城より向こうを『化外の地』と呼んでいたのだ。
 そこに住む者は化け物とすらみなされることがあった。彼はその化外の地で死んだのだ。
「魔人の最後ではあるな」
 彼はそう言うと変身を解いた。そこに滝がやって来た。

「ドクロ少佐まで死んだか」
 地獄大使はその報告を自身の指令室において聞いていた。
「ハッ、立派な最後だったと言われています」
「そうか、ならよい」
 彼はそれを聞いて言った。
「奴もそうでなければ気が済まなかったであろうしな」
 そう言うとモニターを見た。
「わしも奴との勝負が控えておるしな」
「ほう、何時になく殊勝な言葉だな」
 そこに誰かの声がした。地獄大使のそれと全く同じ声であった。
「貴様・・・・・・」
 地獄大使はそれを聞くと表情を一変させた。そして声がした方に顔を向けた。
「どうした、この世でただ一人の従兄弟に対しその顔はないだろう」
 暗闇大使は地獄大使に対し皮肉に満ちた笑みを浮かべながら言った。
「こうして会いに来てやったというのに」
「呼んだ覚えはないぞ」
 地獄大使は顔を顰めたまま言った。
「聞こえなかったのか。来てやったと言ったのだ。わざわざな」
「くっ・・・・・・」
 地獄大使はその言葉に対しさらに顔を顰めさせた。
「そして一体何の用だ。わしをからかいに来たのならこちらにも考えがあるぞ」
 彼は右手に持つ鞭を突き付けて言った。
「だからそう怒るなというのだ。その短気さは幼い頃から変わらぬな」
「過去に何の意味があるのだ!」
 彼は遂に激昂した。
「意味か!?」
 暗闇大使はその言葉に対し口の端を歪めた。
「わしにはあるぞ。思い出したくもないことが山程な」
 そう言うと地獄大使を憎悪の目で睨んだ。
「面白い。ならば言ってみよ」
 地獄大使も怯まない。従兄弟を睨み返してきた。
「フン、まあいい」
 暗闇大使はその憎悪を押し殺して言った。
「今は貴様とやりあうつもりはないからな」
 そして表情を戻した。
「貴様は黒魔術にも通じておったな」
「一応はな」
 地獄大使は答えた。実際にそれにより怪人達を甦らせたこともある。
「ならば頼みがある。わしにその黒魔術について教えて欲しいのだ」
「?何故だ」
 地獄大使はそれを聞いて眉を顰めた。
「少し必要になってな。残念なことにわしは黒魔術には疎いのだ」
「そうだったな。だがわしも詳しくは知らぬ。ネクロノミコンで学んだことだけだ」
 ネクロノミコンとはラグクラフトの小説等に出て来る謎の書物である。発狂したアラビア人が書いたとも言われている魔道書だとされている。だがそれを実際に見た者は誰もいない。
「それで充分だ。ではネクロノミコンを貸してくれないか」
「それ位なら良いがな。ついて参れ」
 彼は従兄弟を自室に連れて行った。
「これじゃ」
 漆黒の表紙である。絹か何かで作られている。文字は古いアラビア文字であり魔法陣も描かれている。見ただけで邪な瘴気が漂っていることがわかる。
「これか。噂には聞いていたが手にするのははじめてだ」
 暗闇大使はそれを手に取って言った。
「そしてどうするつもりじゃ。何か考えがあるのだろうが」
「それはおいおいわかる。その時を楽しみにしておれ」
 彼はそう言うと不敵に笑った。
「フン、終わったらすぐに返すようにな」
 地獄大使はその笑みを見て不機嫌になった。
「わかっておる。心配は無用じゃ」
 暗闇大使はそう言うとネクロノミコンを懐に収めた。
「それではな。吉報を期待しておれ」
 彼はそう言うと部屋を後にした。そして基地からも立ち去っていった。
「また何か企んでいるようだな」
 地獄大使はそんな従兄弟を見ながら顔を顰めて言った。そして彼も闇の中に戻っていった。

「・・・・・・ふむ、ドクロ少佐は死んだか」
 ゼネラルシャドウはカードの結果を見て言った。
「こうなるとは思っていたがな」
 彼はそれを見てニヤリと笑った。
「ほう、またトランプで占いか」
 そこで後ろから何者かの声がした。
「貴様か」
 シャドウは声がした方を振り向いて言った。そこには百目タイタンがいた。
「ドクロ少佐が死んだようだな」
「貴様も知っていたか」
「当然だ。万里の長城で仮面ライダーX3との戦いに敗れたそうだな」
「そうだ。今カードが俺に教えてくれた」
「フン、カードか」
 タイタンはそれを聞くと嘲笑するような声を出した。
「俺は情報収集で知ったのだがな。貴様は相変わらず全てをカードに頼るか」
「心配無用だ。俺はカード以外でも情報を集めている」
 シャドウはタイタンに対し不敵な笑みを浮かべて反論した。
「貴様も何かと忙しいようだな。アマゾンで荒ワシ師団長に会っていたようだし」
「知っていたか」
 彼はそれを聞くと悪びれもせずに言った。
「当然だ。貴様が今誰と関係を深めているのかも知っている」
「詳しいな。ではあの男のことも知っているな」
「当然だ」
 シャドウは言った。
「あの男の存在が目障りなのは俺も貴様も同じだ。だがな」
 シャドウはそこで言葉を一旦切った。
「俺は貴様と手を組もうなどとは全く思わんぞ」
「心配するな。俺もそれだけはせん」
 タイタンはシャドウをその無数の眼で見ながら言った。
「俺はあの男も貴様も嫌いだ。貴様とはいずれ決着を着けてやる」
「望むところだ。だが今は止めておこう」
「そうだ。貴様との決着はストロンガーとの戦いの後だ」
 タイタンは急に態度を引き締めて言った。
「そしてその為に今あの男と結託しているのか」
 シャドウはタイタンを見上げて言った。
「さてな」
 だが彼はそこでとぼけてみせた。
「だがこれだけは覚えておけ。シャドウ、ストロンガーを倒すのは俺だ。そしてその後で貴様との決着を着ける」
「面白い。だがストロンガーは俺も狙っているということを忘れるな」
 シャドウは不敵に笑って言った。
「当然だ。これも勝負のうちだ」
「フ、面白い。ではどちらが先に奴を倒すか賭けるか」
「その必要はない。勝つのは俺だからな」
「ならば貴様の戦いをよく見せてもらおうか」
「フン、いずれな」
 タイタンはそう言うとその場から消え去った。火の球となりその場から消えた。
「行ったか」
 シャドウはそれを席に座し頬杖をついたまま見送った。後ろに影が現われた。
「シャドウ様、よろしいのですか」
 その影はヘビ女であった。
「何なら私があの男を始末しますが」
 彼女はタイタンの消えた方を嫌悪の眼差しで見ながら言った。
「よい、あの男は俺が相手をする」
 シャドウは彼女を制止するように言った。
「奴のことは俺が最もよく知っている。それに奴も俺が行かなくては相手にはしないだろう」
「そうなのですか」
「そうだ。奴はああ見えてもプライドが高い。そして手強いぞ」
「そうは思えませんが」
「それもおいおいわかる。下手に動いてはこちらが危険だ」
 シャドウはそこではじめてヘビ女の方に顔を向けた。
「それよりも貴様にはこれからも情報収集を頼むぞ。俺には貴様の力が必要なのだ」
「シャドウ様の頼みとあれば」
 ヘビ女はそれを聞きニンマリと笑った。その無気味な哄笑が部屋に木霊した。


長城の髑髏   完


                               2004・4・7


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