『仮面ライダー』
 第三部
 第七章             樹林の獣人

「こうして我等四人が揃うのも久し振りだのう」
 鬼火司令は他の三人を見回しながら言った。
「そうね。今まで何かと飛び回ってばかりだったし」
 妖怪王女が悪戯っぽく笑って言った。
「全くじゃ。この老骨には少し堪えるわい」
 幽霊博士はその髭に手を入れながら可笑しそうに笑う。
「それはそれだけ私達が首領に信頼されてることだからいいのだけれど」
 魔女参謀は妖怪王女と幽霊博士の言葉に突っ込みを入れるように言った。
「やっぱりメガール将軍は来ていないのね」
「奴は今北欧で二号ライダー達の攻勢に備えておるらしいぞ」
「まあそうでなくても来るとは思えないけれど」
 鬼火司令と妖怪王女が言った。王女は相変わらず悪戯っぽく笑っている。
「全くあいつは変わらんのお。ああやっていつも堅苦しいことばかり好みよる」
「本当だな。少しはハメを外さねば息が続かんぞ」
「そういう鬼火司令は外し過ぎだけれどね」
「おい、お主には言われたくはないな」
 二人は口論を始めた。
「まあそれはいいわ。将軍がいないのは少し残念だけれど」
 魔女参謀はそんな二人を制しながら言った。
「アマゾンの方はどうなっているの?」
「アマゾンか」
 幽霊博士が彼女の言葉に対し反応した。
「アマゾンとスカイライダーは別行動をとっておるようだの」
「幽霊博士、それは本当!?」
 妖怪王女が問うた。
「本当じゃ。嘘を言って何になるというのじゃ」
「博士ってよくぼけるから」
「そうそう、歳だからのう」
「鬼火司令、お主までそんなことを言うか。わしはまだぼけてはおらんぞ」
 幽霊博士は彼等の言葉に対し顔をむくれさせた。
「博士、それはいいから」
 魔女参謀はそんな彼を嗜めた。
「おお、済まん済まん。つい熱くなってしまったわ」
 幽霊博士は頭を掻きながら彼女に対し謝罪した。
「それは本当じゃ。スカイライダーはギアナ高地に向かったようじゃがな」
「そしてアマゾンは!?」
「そのままアマゾンに残っておるぞ」
 彼は魔女参謀の問いに対して答えた。
「どうやらアマゾンに新たな改造魔人が送り込まれたらしい」
「誰だ、それは」
 鬼火司令が問うた。
「隊長ブランクじゃ」
「へえ、あの男が」
 妖怪王女はそれを聞いて以外そうに声をあげた。
「妖怪王女、意外というわけでもないぞ。何しろ一度あ奴はアマゾンライダーに敗れておるからのう」
「あっ、そうだったわね」
「どちらにろ面白くなりそうね。一体どうなることか」
 魔女参謀はそれを聞いてほくそ笑んだ。
「そうだな。楽しませてもらうか」
 鬼火司令が大きな口を開けて笑った。そして他の二人も笑った。

 筑波洋と別れたアマゾンは相変わらずアマゾン川流域を船で移動していた。
「アマゾン、やっぱりここが一番いいよなあ」
 その隣には人間態のモグラ獣人がいる。ここで合流したのだ。
「うん、ここアマゾンとモグラの故郷。やっぱりアマゾンもここが一番好き」
 アマゾンは笑顔で答えた。彼は本来日本生まれだがここで育ったので故郷と考えているのだ。
「ところで何でここに残ったんだい!?俺らまで呼んで」
「それはすぐにわかる」
 アマゾンは顔を引き締めて言った。
「ここに新しい悪い奴が来ているから」
 
 その頃隊長ブランクは自身の基地の中にいた。
「今度こそ仕留める」
 彼は自分のライフルを手入れしながら言った。
「気合がはは入っているようだな」
 そこに百目タイタンがやって来た。
「貴様か」
 彼はタイタンの姿を認めて言った。
「うむ。作戦の進行状況はどうかと思ってな。このアマゾン川流域制圧作戦だが」
「順調にはかどっている」
 隊長は答えた。
「それならばいいがな」
 タイタンはそれを聞いて満足したように言った。
「だが一つ障害がある」
「アマゾンライダーだな」
 タイタンはそれを聞いて言った。
「そうだ。どうやら俺がここに来たのも知っている」
「だろうな。奴の勘はずば抜けている」
 タイタンは顎に手を当てて言った。
「しかし攻めるのは俺だ。この密林を使ってな」
「そうだな」
 だがこのアマゾンは彼にとっては遊び場である。タイタンはそれを隊長に言おうとしがた止めた。
「では健闘を期待する」
「うむ、今度こそあの男を倒す」
 タイタンはそれを聞くとその場を後にした。
 隊長ブランクは指令室に行きモニターを見上げた。
「アマゾンライダーを映せ」
「ハッ」
 戦闘員は彼の命令に対し敬礼してモニターのスイッチを入れた。そこには川を船で進むアマゾンとモグラ獣人が映し出されていた。
「行くぞ」
 彼はその姿を見ると部下達に対して言った。そして指令室を出て行った。
「イィッ」
 戦闘員達もそれに従った。そして彼等は密林に出た。

 アマゾンはモグラ獣人と共にアマゾン川を進んでいた。
「なあアマゾン」
 モグラはアマゾンに対して話しかけた。
「どうした、モグラ」
「アマゾンは巨大なアナコンダに会ったことはあるかい?」
 アマゾンにはアナコンダという大蛇がいる。半水棲の巨大なボア科の蛇であり性質は比較的大人しい。しかし問題はその巨大さであり大きいものでは十メートルを越えるものまでいる。中には二十メートルを越えるものまでいるという。アマゾンを象徴する生物の一つであり巨大なアナコンダの存在はよく話題になる。
「アナコンダ?」
 アマゾンはその言葉に対し顔を上げた。
「ああ。俺らは土の中いいることが多いからよくは知らないんだけれど本当にいるのかなあ」
「いるぞ」
 アマゾンは微笑みながら頷いて答えた。
「何度か会ったことがある。確かに物凄く大きかった」
「本当にいるのかよ」
 モグラ獣人はそれを聞いて思わず身震いした。
「だが安心していい。アナコンダは大人しい。少なくともこの川にいるのは餌もたっぷりあるから飢えていない」
「そうなんだ。俺らはてっきり貪欲に何でも貪るのかと思ってたよ」
「それはモグラが考え過ぎ。アナコンダはアマゾンの友達。だからアマゾンアナコンダ怖くない」
「アナコンダとも友達なのかよ」
 モグラ獣人はそれを聞いて思わず呟いた。
「アマゾンの生き物は皆アマゾンの友達。アマゾン友達は大事にする」
 彼はこの密林に育てられた。だから彼はここに住む全てのものを深く愛しているのだ。
「けれどあいつ等は別」
 アマゾンはそこで険しい顔をして言った。
「バダンは何でも貪り食う。そして罪の無い人まで殺す。そんな奴等は絶対に許さない」
 彼はゲドンに師であり親代わりであったバゴーを殺されたことをまだ覚えていた。
「アマゾンバダンの奴等倒す。この川を絶対に奴等には渡さない」
 彼は強い表情でそう言った。そして川を進んでいった。
 夕方になった。二人は川辺にある小さな村に入った。そしてそこの近くで野宿した。
「ここにいたか」
 アマゾンはモグラ獣人の掘った穴の中に入っていた。雨露を凌ぐ為だ。そしてその入口に何者かがやって来た。
「どうやら完全に眠っているようだな」
 ゴッド悪人軍団の一人カメレオンファントマである。怪人は穴の中を慎重に窺いながら言った。
「これは好都合だ。早速中に入り始末するぞ」
 そして引き連れている戦闘員達と共に中に入って行く。
 中は真っ暗闇であった。だが彼等はそれに構わず進んで行く。
「広いな」
 中は思ったより広い空間であった。人が立って歩ける程である。
「流石はモグラ獣人か。こうした穴を掘ることにかけては他の者の追随を許さないな」
「穴を掘るのだけが俺らの特技じゃないぞ」
 不意に下から声がした。
「何っ!?」
 土の下から何者かが襲い掛かって来た。
「ケケーーーーーーッ!」
 それはアマゾンとモグラ獣人であった。彼等は土の中に潜み彼等が来るのを待っていたのだ。
 戦闘員達はアマゾンとモグラ獣人により瞬く間に倒されていく。残るはカメレオンファントマ一人となった。
「おのれっ!」
 怪人は舌を伸ばしてきた。だがそれはアマゾンの鰭により断ち切られてしまった。
「くっ!」
 怪人は今度は姿を消した。アマゾンは闇の中で怪人を探した。
「どこだっ!?」
 闇の中に紅い両眼が輝く。彼はその後ろに何かを察した。
「そこだっ!」
 アマゾンは後ろに向けて蹴りを放った。
 それは姿を消していた怪人の身体をかすった。だがそれだけで怪人の右脇から血が噴き出た。彼は脚にも鰭があるのだ。
「グォッ!」
 カメレオンファントマは思わず叫び声をあげた。そしてたまらず姿を現わした。
「もう一撃っ!」
 アマゾンは回し蹴りを浴びせた。鰭を怪人に向けている。
 蹴りが怪人を一閃した。そしてカメレオンファントマは横に両断された。
 二人は穴を出た。その瞬間入口が爆発した。
 そこにナイフが飛んで来た。二人はそれを咄嗟にかわした。
「ギリギリギリギリ!」
 ナイフの主は怪人であった。デストロンの硬質怪人ナイフアルマジロである。
 怪人は右腕の巨大なナイフを振るって来た。アマゾンはそれを身を屈めてかわす。
 そして脚を払った。鰭により怪人の両脚を断ち切った。
 そして倒れた怪人に覆い被さる。そしてその喉笛を喰い千切った。
「ギャオオオーーーーッ!」
 怪人は断末魔の叫びと共に爆発した。アマゾンはそれを避け上に飛び上がる。
 そして木の枝に着地した。その後ろにも敵がいた。
 ネオショッカーの俊足怪人ジャガーバンであった。怪人はその刀でアマゾンの首を断ち切らんとした。
 アマゾンはそれより速く怪人の腕を掴んだ。そして怪人と力比べを開始する。
「ヒャオーーーーゥ」
 怪人は唸り声をあげた。そしてアマゾンを捻じ伏せんとする。
 しかし二つの腕輪の力を身に着けているアマゾンの敵ではなかった。彼は力負けし木の下に投げ飛ばされた。
 アマゾンはそこに急降下した。そして左手の鰭を一閃させた。
 怪人の首と胴が分かれた。そして別々に爆発した。
「瞬く間に三体の怪人が倒されたか」
 それを遠くから見る影があった。
「心配になり戻ってみればやはりな。アマゾンライダーとジャングルで戦うのは止めた方がよい」 
 それは百目タイタンであった。
「しかしそれならば何処で戦えばよいのだ」
 傍らにいる隊長ブランクは彼に対し問うた。
「貴様はこの密林が何により支えられているかわかっておらんのか」
 タイタンは彼に顔を向けその無数の眼で見た。
「この密林を支えているのは川だ。川の中ならば奴もあれ程は動けまい」
「そうか、そうだったな」
 隊長はそれを聞いて思わず大きな声を漏らした。
「声が大きいぞ。アマゾンに知られる」
 タイタンはそんな彼を嗜めた。
「済まぬ」
「わかればいい。それでは水の中で戦える怪人も必要だな」
「それなら問題ない。丁度おあつらえ向きのを用意してある」
「そうだったのか。ではそれを見せてもらおうか」
「うむ」
 二人はその場から消えた。アマゾンも人の姿に戻りモグラ獣人と合流していた。

「そうか、タイタンはアマゾンで隊長ブランクと共にいるのか」
 マシーン大元帥は自分の基地の会議室で席に座りそれを聞いていた。
「そうだ。そしてあの男に何かと策を授けているらしい」
 同席しているヨロイ騎士が言った。
「この前には死神博士と会っていたな」
 磁石団長もいた。この二人はマシーン大元帥の同士達である。
「どうやらまた色々とコソコソ動き回っているようだな」
 大元帥はそれを聞いて呟いた。
「あの男は汚い策を好むからな。またライダーを陥れようとしているのだろう」
 ヨロイ騎士は正攻法を好む。従ってタイタンのやり方は好きではない。
「だが有効ではあるな。あの男は実際にそれまでそのやり方でかなりの戦果を挙げている」
 マシーン大元帥はタイタンのやり方を批判したヨロイ騎士に対して言った。彼もまたどちらかというと正攻法を好むがタイタンのやり方を否定するつもりはなかった。
「マシーン大元帥の言う通りだな。タイタンはあのシャドウですら認めているからな」
 磁石団長が言った。その通りであった。ゼネラルシャドウと百目タイタンはブラックサタンにおいてその勢力を二分しながらも互いの力は知っていたのである。
「どのみち今は我等には関係はないがな。奴が隊長ブランクと共に何をしようが我々に対して向けられるものではないのだしな」
 マシーン大元帥は考える目をしている。
「しかしタイタンと組む者の中には危険な男もいる」
「・・・・・・あの男か」
 ヨロイ騎士と磁石団長はそれを聞いて同時に言った。
「そうだ。あの男の動きには注意しろ。奴はタイタンに勝るとも劣らぬ策謀家だ。我々の隙も狙っているぞ」
「そうだな。あの男は危険だ」 
 磁石団長はそれを聞いて言った。
「タイタンやシャドウも危険だがあの男からも目を離してはなるまい」
 ヨロイ騎士も考える目をしていた。
「我等の敵はライダー達だけではない。それだけはよく知っておかねばな」
 マシーン大元帥の言葉が響いた。それは三人の心に深く刻み込まれた。

 アマゾンは再び川の中に入った。見れば漁師達が何かを釣ろうとしている。
「電気ウナギをとろうとしているな」
 アマゾンはそれを見て言った。見れば皆その手にゴム手袋をしている。
「電気ウナギって食えるのか!?」
 モグラ獣人は彼に対して問うた。
「食べたことはある。けれどアマゾンは美味しいとは思わない」
 アマゾンは苦笑して答えた。デンキウナギはよく知られているとおり身体の中に発電装置を持っている。これで周囲の小魚や蛙等を感電させてショック死させて食べるのである。尚デンキウナギはウナギの仲間ではなく独自の科である。
「そうなんだ。けれどそんな危なっかしい魚をよく捕る気になれるなあ」
 モグラ獣人は漁師達の横を通り過ぎながら言った。
「ここには学者さんが来ることも多い。だから捕まえるのを頼まれること多い」
 アマゾンには多くの生物が生息している。その生態は実に多様でしかも複雑である。その為興味を持つ学者も実に多いのである。
「そうなんだ。俺らはあんなおっかない魚捕まえるなんてまっぴら御免だな」
 もう漁師達の姿は見えなくなっている。彼はその後ろを見ながら言った。
「まあモグラはそう言うと思った。けれどデンキウナギは見ていて面白い」
 アマゾンはモグラに対し微笑んでそう言った。
「電気出す魚なんてあまりいない。アマゾンあの魚の味は好きじゃないけどあの魚は好き」
「そんなもんかね」
「そうだ、電気を出す魚というのは素晴らしいものだ」
 その時不意に何処からか声がした。
「ムッ!?」
 アマゾンとモグラ獣人はその声を聞き不意に身構えた。
「死ね、アマゾンライダー!」
 川の中から鞭のようなものが飛び出してきた。そしてアマゾンの足を掴んだ。
「ガッ!」
 アマゾンは川の中に引き摺り込まれていった。
「アマゾン!」
 モグラ獣人は怪人態に変身し川の中に飛び込もうとする。だが船の上に無数の影が現われた。
「貴様の相手は俺達だ!」
 見ればバダンの戦闘員達である。彼等は銛を手にモグラ獣人に襲い掛かった
 アマゾンは川の中に引き摺り込まれながらも変身していた。そして襲撃に備えていたのだ。
「喰らえっ!」
 アマゾンの足に絡み付いていたその鞭のようなものに緑の光が宿った。
「ウワッ!」
 その辺りを凄まじい電圧が襲った。アマゾンはそれを受け思わずのけぞった。
「アレアレアレアレアレアレアレアレッ!」
 怪人の叫び声が聞こえてくる。ショッカーの放電怪人ナマズギラーであった。
「どうだ俺の電撃は、かなり効いただろう」
 怪人はアマゾンに対して言った。
「この電流を受けてまともにいられる奴は存在しない。さあ死ぬがいい!」
 そして再び電撃を放とうとする。だがアマゾンはそれより前に動いた。
「そうはさせないっ!」
 アマゾンは動いた。水中とは思えない程の速さである。
 そしてその右腕を振り下ろした。ナマズギラーは一撃で両断されてしまった。
 真っ二つになった怪人はそのまま下に落ちていく。そして川の底で爆発した。
 怪人はまだいた。今度はゲドンの洗脳怪人ヘビ獣人である。
「ヒュルルルルルーーーーーーッ!」
 ヘビ獣人は奇声を発し襲い掛かって来る。そしてその長い尻尾をアマゾンに振るってきた。
「ムッ!」
 アマゾンは上にそれをかわした。そして前へ向けて泳ぐ。
 そこに獣人の牙が来た。アマゾンを一飲みにせんとする。
「クッ!」
 アマゾンは怪人の顎を両手で掴んだ。そしてその動きを止めた。
 怪人はそれでも顎を下ろさんとする。そしてアマゾンを飲み込まんとする。
 しかしアマゾンの力が勝った。怪人の顎は次第に広げられていく。
 そのまま顎を引き裂かんとする。だが怪人はそれを顎を外してかわした。
 今度は頭から体当たりを仕掛ける。アマゾンはそこで身体を右に思いきり捻り蹴りを怪人の顔に浴びせた。
 その蹴りは怪人の右目を直撃した。目を潰された怪人は怯んだ。
 それを見逃すアマゾンではなかった。即座に身体を今度は左に捻り右腕から大切断を放った。
 鰭が怪人の額を断ち切った。怪人は眉間から鮮血をほとぼしらせながら川の底に沈み爆発した。
 次に来たのはドグマの食人怪人ジョーズワニであった。怪人はアマゾンの首に食い付かんと牙を向けてきた。
 アマゾンはその顔を蹴り飛ばした。だが怪人は一向に怯まない。
「キシャシャシャシャシャーーーーーーッ!」
 アマゾンはなおも拳と蹴りを浴びせる。しかしそれは一向に効果が見られない。
 むしろ逆であった。怪人の動きは攻撃を受ければ受ける程速くなっているとうであった。
「これはどういうことだ・・・・・・!?」
 アマゾンはそれを見て不思議に思った。そして攻撃を一旦止めた。
「まさかアマゾンの攻撃を吸収するのか!?」
 かってそういう怪人がいたということも聞いている。ならばこちらにも考えがあった。
「ケケーーーーーーッ!」
 アマゾンは奇声を発し怪人に襲い掛かった。そして左腕を大きく振り被った。
「これならどうだっ!」
 そしてその腕を一閃させた。大切断であった。
 怪人は唐竹割りにされた。これは吸収できるものではなかった。ジョーズワニも底に沈み爆発した。
「他にはいないな」
 最早川の中には何者の気配もしなくなっていた。アマゾンはそれを確かめると水の上へ上がった。
「よおアマゾン、心配したぜ」
 船の上にはモグラ獣人がいた。彼は既に戦いを終えていた。
「モグラの方も終わったみたいだな」
 アマゾンは船の上に上がると彼の他に誰もいないのを確かめて言った。
「ああ。やっつけた奴等を川に捨てるのがえらく疲れたけれどな」
 モグラは首を捻って笑いながら言った。

「多分また来る。けれど今度はアマゾンにも考えがある」
「考えって!?」
 モグラ獣人はそれに対して問うた。
「すぐにわかる」
 アマゾンは微笑んだ。そして夕暮れとなり夜となった。
 三日後アマゾンはある街に入った。今までの小さな村ではなく少し大きめの都市であった。アマゾンの中にも都市はあるのだ。もっとも川沿いだけであるが。
 二人は船を港に泊め街の中に入った。そしてホテルに泊まった。
「アマゾンが街に泊まるなんて珍しいな」
 モグラ獣人は部屋に入って言った。
「うん。アマゾンこうした部屋はあまり好きじゃない」
 アマゾンは答えた。
「じゃあどうして泊まることにしたんだい!?」
 彼は不思議そうな顔をして問うた。
「すぐにわかる。夜になったら外に出よう」
「ああ」
 こうして二人は暫し休養をとった。そして夜になるとアマゾンの言葉に従い街に出た。
 夜の街には誰もいなかった。深夜であり吸血蝙蝠等物騒な生き物が出て来る為である。
「誰もいないな」
 二人はその静かな夜の街を進んでいた。モグラ獣人がふと言った。
「すぐ来る。心配いらない」
 アマゾンは彼に言った。そして夜の街を慎重に進んでいった。

 この時百目タイタンは自分の基地に戻っていた。
「さて、あの男がアマゾンライダーを上手くやればいいが」
 彼は洞窟をくりぬいて作った地下の基地にいた。壁は硬い岩石である。そしてそこにある自室で彼は席に座し葉巻を口にしながら言った。
「あとはあいつ次第だな。ここは任せておくか」
 そこに戦闘員が一人入って来た。
「どうした」
 タイタンはその戦闘員に対し問うた。
「お客人です」
 その戦闘員は答えた。
「客!?一体誰だ」
「ゾル大佐です」
「何っ、ゾル大佐がか!?」
 彼はそれを聞き思わず声をあげた。彼はゾル大佐とは特に何の関係もないからだ。
「如何されますか。今すぐお会いしたいと申し出ておられますが」
「わかった、すぐ行く」
 彼はそう言うとすぐに席を立った。そしてゾル大佐がいる場所に向かった。
「久し振りだな、百目タイタンよ」
 ゾル大佐は彼の姿を認めると声を掛けてきた。その声も顔も普段と何ら変わらない。
 だが何処か違う。何かを探っているようだ。
「一体どうしたのだ、こんなところにわざわざ来るとは」
 彼は今中近東にいる筈である。それなのに自分の基地に来るとは思いもよらぬことであった。
「うむ、実は貴様に聞きたいことがあってな」
「聞きたいこと!?」
 タイタンはそれを聞いて思わず声をあげた。
「そうだ。岩石男爵のことだが」
 彼が岩石男爵と結託していることはバダンにいる者なら誰でも知っていることであった。
「あの男がどうかしたか」
 彼は今中近東にいる。ゾル大佐と共に中近東での作戦行動にあたっている。
(また何かやらかしたのか)
 彼は心の中でそう思った。だがそれは仮面の下に隠しゾル大佐に顔を向けた。
「ここにはいないようだな」
 大佐は周囲の気配を探りながら言った。
「当然だ、あの男は今中近東にいるではないか。貴公と共にな」
「・・・・・・どうやらお主は何も知らぬようだな」
 大佐はその左眼で彼を見据えて言った。まるで鉄を射抜くような目である。
「知らぬ!?俺がか!?」
「そうだ。実はあの男の姿が見えないのだ」
「潜伏しているのではないか?作戦に備えて」
 だがタイタンはそう言いながらそんな筈はない、と考えていた。そんな器用なことが出来る男ではない。
「違う。中近東から姿を消したのだ。忽然とな」
「何っ!?」
 タイタンはそれを聞いて思わず声をあげた。
「作戦を放り出してか!?そんな筈なかろう」
 そう言いながらも奴なら有り得る、と思った。
「本当だ。俺も手を尽くして探したが一向に見つからんのだ。ここにいるのではないかと思い来てみたのだが」
 彼は口元を顰めてバツが悪そうに言った。
「生憎だがこの地には俺しかおらん。そして他の者が来たならばすぐにわかる」
 タイタンはそんなゾル大佐に対して言った。
(しかしあの男、何処へ行ったのだ)
 タイタンはゾル大佐と話をしながら考えはじめた。
(また何か愚かなことをしていなければよいのだが)
 その時だった。戦闘員が一人やって来た。
「百目タイタン、我等が同志がアマゾンライダーと遭遇しました」
「おお、隊長ブランクめ、思ったより早いな」
 タイタンはそれを聞いて顔をそちらに向けて言った。
「いえ、それが・・・・・・」
 戦闘員は隊長ブランクの名を聞いて顔を俯けた。
「どうしたのだ!?」
 タイタンはそれを見て妙だと思った。そして問うた。
「遭遇したのは岩石男爵です」
「何っ、それは本当か!」
 普段は冷徹で知られる彼が思わず声をあげた。
「はい、本当です。指令室にいらして下さい」
 タイタンに肩を掴まれ問われた戦闘員は狼狽しながらもそう言った。
 タイタンは指令室に半ば駆けながら向かった。ゾル大佐もそれに続く。
「モニターをつけろ。アマゾンに合わせてな」
 タイタンは敬礼に対する挨拶もそぞろに戦闘員達に対して言った。すぐにモニターのスイッチが入れられる。
 そこにはアマゾンが映っていた。まだ変身はしていない。
 そして彼と対峙する人物。そこにいたのは紛れもなく彼であった。
「あの男、一体何を考えているのだ・・・・・・」
 タイタンは彼の姿を認めて怒りで身体を震わせた。
「おいっ」
 そして戦闘員達に対して顔を向けた。
「ここは暫く任せる。少し行って来るぞ」
 そう言うとマントで全身を包んだ。そしてその中に消えていった。
「早いな」
 ゾル大佐はそれを見て言った。
「だが今更行ってもどうなるものではあるまい。言って聞くよな男でもない」
 大佐はモニターを見ながら言った。
「どのみち中近東は俺一人でどうにでもなる。ここはアマゾンの戦い方を見せてもらうとしよう」
 彼は岩石男爵の所在を確かめられればそれでよかった。彼は粗暴な男爵を戦力とは考えていなかったのだ。だが所在が掴めていなくては首領に責任を問われる。そうすれば他の者に付け込まれる。それを避けたかっただけなのである。
 彼は落ち着いた顔でモニターに映る戦いを観戦しはじめた。

「フッフッフ、アマゾンよここで会ったが百年目じゃあ〜〜〜〜〜」
 岩石男爵は夜の街の道路で右手に持つ棍棒を振り回しながらアマゾンに対して言った。
「貴様を倒すのはわしじゃあ。覚悟するんじゃの〜〜〜〜〜」
 彼は自信満々である。だがそれに対するアマゾンは何処かキョトンとしている。
「・・・・・・モグラ」
 彼は隣にいるモグラ獣人に顔を向けた。
「こいつ誰だ!?」
 そして呆気に取られた顔で問うた。
「デルザーの改造魔人だった岩石男爵だよ。アマゾン、そんなこと忘れるなよ」
 モグラ獣人はいささか呆れた様子で言った。
「何じゃあ御前等わしを知らんのかあ!」
 岩石男爵はそれを聞いて怒りの声をあげた。
「知ってるも知らないも何でここにいきなり出て来るんだよ」
 モグラは彼に顔を向けて言った。
「そう、アマゾン御前じゃなくて隊長ブランクが来ると思った」
「フン、どいつもこいつもわしを軽く見おって。わしはなあ、神出鬼没だということを知らんのかあっ!」
「そんなことはどうでもいいっ!」
 そこで怒りに満ちた声がした。
「こんなところで何をやっているのだっ!」
 百目タイタンが岩石男爵の側に姿を現わした。
「おお、タイタンか。悪いが助けはいらぬぞ」
「誰が助太刀なぞするか。貴様は持ち場を離れて何をやっている!」
 彼は激昂した声で彼を怒鳴りつけた。
「・・・・・・一体何をそんなに怒っておるのじゃ!?」
 岩石男爵は彼が何故怒っているのか理解出来なかった。
「これが怒らずにいられるか、貴様のその勝手な行動が一体どのようなことになるか考えられぬのか!」
「アマゾンライダーを倒すことか?」
 彼は何もわかってはいなかった。
「な・・・・・・」
 この言葉にさしものタイタンも絶句した。
(隊長ブランクに倒させる計画はこれで失敗か)
 タイタンは自分の計画が失敗に終わることを悟った。
(だがこの男がアマゾンを倒せればどのみち変わりはないな。ここは退いても構わぬか)
 彼は計算を終えた。そして男爵に対して言った。
「わかった。ではアマゾンライダーは貴様に任せよう」
「ほう、わかってくれたか」
 岩石男爵はそれを聞いて思わず嬉しそうな声をあげた。
「うむ。好きにするがいい。アマゾンライダーは貴様に任せるとしよう」
「流石はタイタンじゃのう。話がわかるわい」
(勝手に言っていろ。貴様はどうせ捨て駒だ)
 タイタンは心の中でそう毒づいたがあえて口にはしなかった。
「それでは期待するぞ。俺はこれで帰らせてもらう」
 彼はマントで全身を包んだ。
(隊長ブランクとかち合ったら面倒なことになるしな。ここは高見の見物としよう)
 彼は姿を消した。岩石男爵はあらためてアマゾンと対峙した。
「さてと、アマゾンよ」
 彼はアマゾンに顔を戻した。
「御前をぶったおすのはわしじゃあ。覚悟は出来とるんじゃろうなあ」
 右手に持つ棍棒で彼を指し示して言った。
「さあ行くぞ。わしは気が短いからのう」
 アマゾンはそれには答えなかった。ただ黙って身構えた。

 アーーーーーー
 両手の指を半ば曲げて広げる。そしてその手を肩の高さで真横に大きく広げる。手は肘のところで直角に上に向けられている。身体が緑と赤のまだらのバトルボディに包まれる。
 マーーーーーー
 その手を胸のところでクロスさせる。胸がオレンジになる。手袋とブーツが黒くなる。
 ゾーーーーーーン!
 そしてその手を元に戻した。
 アマゾンの両目が赤く光った。すると彼の全身を光が包んだ。
 顔の右半分がまだらの仮面に覆われる。そして左も。その瞳は血の色である。
 
 光が消えた。アマゾンは仮面ライダーアマゾンとなっていた。
「ケケーーーーーーッ!」
 そして奇声を発し岩石男爵に襲い掛かる。男爵は棍棒を振るってそれに対抗する。
「死ねっしゃあ!」
 その棍棒でアマゾンの胸を打たんとする。しかしアマゾンの動きは速い。それを上に跳びかわした。
「ケーーーーーーーッ!」
 アマゾンは鰭で切り裂かんとする。だがそれは彼の岩の身体の前に防がれた。
「ケッ!?」
 アマゾンはそれを見て思わず声を発した。そこに棍棒が再び襲い掛かる。
 それを横にかわす。そして間合いを離した。
「ふん、無駄じゃ無駄じゃ」
 岩石男爵はアマゾンに対して高笑いを浮かべて言った。
「わしの身体は石で出来ておるのじゃぞ。そんなちゃちなもんが通用すると思うてか」
「ガッ」
 彼はそれを聞いて再び声を漏らした。
「きさんは所詮引っ掻いたりするしか脳がない奴じゃ。そんなもんでわしに敵うとでも思うちょるんかい」
 彼は今度は空に跳んだ。
「今度はわしの番じゃのう。これ喰らってあの世に行きんしゃい!」
 そう言うと巨大な岩石に変身した。
「岩石落としっ!」
 そしてアマゾンに向けて急降下する。それは彼の全身を砕かんばかりの勢いであった。
 だがアマゾンはそれをかわした。そして体勢を整えようとする。
 しかし岩石男爵はその隙を与えようとはしない。次々に攻撃を仕掛けて来る。
 アマゾンはそれを持ち前の素早さでかわす。岩石男爵は執拗に攻撃を仕掛け続けてきたがやがて疲れたのか間合いを離し変身を解いた。
「どうじゃわしの攻撃は。かなり堪えるじゃろう」
 彼は自慢げにそう言った。
「これだけではないぞ。わしの恐ろしさはまだまだこの程度ではないからのう」
 そして今度は体当たりを仕掛けんとする。
「喰らうっしゃあ!」
 しかしアマゾンはそれを全身で受け止めた。
「ほう、なかなか力持ちじゃのう」
 男爵はアマゾンのその力を感じて笑った。
「だがのう、このわしに力で挑もうというその考えが愚かじゃ。わしは力では誰にも負けんからのう」
 そして力でアマゾンを押し潰そうとする。しかし彼はアマゾンの力を侮っていた。
 アマゾンは全身に力を込めた。そして岩石男爵を次第に押し返していく。
「ぬわにっ!?」
 岩石男爵はその予想外の力に驚いた。彼は自分の考えが浅かったと悔やんだだろうか。だが例え悔やんだとしてもこの時には既に手遅れであった。
「クケーーーーーーッ!」
 アマゾンは絶叫した。そして岩石男爵の全身を掴んだ。
 そして空に跳んだ。空中で激しく回転し岩石男爵を頭上に持っていった。
 それはまるでダブルライダーの使うライダーきりもみシュートであった。だがその回転数が明らかに違っていた。
 どれだけ回したであろうか。アマゾンは岩石男爵を地面に投げ飛ばした。
「グオオオオオオーーーーーーッ!」
 彼は叫び声をあげた。そして地面に叩き付けられた。
「グハアアアアアアッ!」
 アスファルトを砕いた。そしてそのまま大きくバウンドし幾度となく叩き付けられる。勝負はあった。
「成程のう、投げ飛ばしてくるとはな」
 岩石男爵は片膝を付いて起き上がり言った。
「どうやらわしの予想以上に知恵のある奴だったようじゃな。これはわしの負けじゃ」
 側に着地して身構えるアマゾンに対して言った。
「負けたもんに用はないじゃろ。下がるがいい」
 彼はそれでもアマゾンに対して言った。
「さらばじゃ。どのみち一度死んどるんじゃ。二回死のうが同じことじゃ」
 彼は最後にそう言うと爆発した。そして彼はこの世を去った。
「やったな、アマゾン」
 モグラ獣人が彼の許に駆け寄ってきた。
「いやモグラ、安心するにはまだ早い」
「どうしてだい!?もうやっつけたじゃないか」
 モグラ獣人はアマゾンの言葉にキョトンとした。
「アマゾンにはわかる。すぐに別の奴がやって来る」
 そう言った瞬間だった。不意にナイフが飛んで来た。
「ムッ!」
 二人は左右に跳んでそれをかわした。そしてナイフの飛んで来た方を見た。
「よくも岩石男爵を倒してくれたな」
 隊長ブランクが姿を現わした。
「敵討ちだ。死ねいっ!」
 そう叫ぶとライフルを構えた。そしてナイフを次々に放ってくる。
「ケッ!」
 だがアマゾンはそれを鰭で弾き返す。業を煮やした隊長はライフルを捨て素手で挑みかかってきた。
「死ねえっ!」
 アマゾンの爪と隊長ブランクの拳が撃ち合った。彼もまた鉄の身体を持つ。鰭や爪は期待できそうにない。アマゾンはそれを見て攻撃の仕方を考えていた。
(カンボジアでは蹴りでやっつけた)
 しかし相手もデルザーの改造魔人である。同じ攻撃が二度も通用するとは思えない。
(ではどうするか) 
 アマゾンは思案した。そこに拳が来た。
 アマゾンはそれを手で払った。その瞬間隊長の首筋が見えた。
(ムッ!?)
 そこも鉄に覆われている。だが他の部分に比べて防御が弱い。これは稼動部分だからであろう。
(ここだっ!)
 アマゾンは心の中で叫んだ。そしてその喉に喰らい付いた。
「ケケーーーーーーッ!」
 奇声を発した。そして喉を食い千切った。
「グオッ!」
 隊長ブランクは首筋を手で押さえた。だが鮮血は止まらなかった。
「グオオオ・・・・・・」
 血は止まらない。彼は片膝をついた。その足下は既に血の海となっている。
「まさか鉄で覆われた俺の首筋を食い破るとは」
 彼は顔を見上げアマゾンを見て言った。
「御前の首筋確かに鉄に覆われていた。だが他の部分に比べ弱かった」
 アマゾンは鮮血に濡れた口で言った。
「だから食い破れた。他の部分では無理だった」
「そうだろうな。それでも俺の鉄の身体を食い破ることが出来るとはな」
 彼は死相を浮かべながらも言った。
「これでは俺が勝てる筈もないな」
 彼はそう言うと最後の力を振り絞り立ち上がった。
「それでは俺は去るとしよう。偉大なる先祖フランケンシュタイン様の許にな。幸いこの地は森に覆われている。あの方が眠られている場所とは違うがな」
 彼はそう言うと不敵に笑った。
「それでは俺は戻る、あの森へ。さらばだアマゾンライダー!」
 そう叫ぶと姿を消した。暫くして遠くの森で爆発が起こった。
「隊長ブランク・・・・・・敵ながら見事な最後」
 こうしてアマゾンでの戦いは終わった。

 二人の改造魔人が敗れたとの報告はすぐにバダン全体に伝わった。
「・・・・・・あの馬鹿者共が」
 タイタンはそれを自分の基地の中で聞いていた。
「これで手駒を二つも失ったことになる」
 彼は右手の上に作った炎をいらだたしげに握り潰した。
「まあそう怒るな。あの二人の替わりはいくらでもいるではないか」
 そこに一人の男がやって来た。
「・・・・・・貴様か」
 そこにいたのはオオカミ長官であった。
「どのみちあの二人はシャドウやマシーン大元帥への捨石にするつもりだったのであろう。ならば替わりの石を使えば良いだけだ」
「簡単に言ってくれるな。あの二人以上の力の持ち主などそうはいないぞ」
「そんなものすぐに見つかる。あの二人は力だけだったしな」
「頭も回る奴か」
「そうだ。そうならば幾らでもいるだろう」
「・・・・・・そうだな」
 タイタンはその言葉でようやく機嫌をよくした。
「だがそれでも不安がある。やはりマシーン大元帥もかなり切れる男だしな。シャドウは最早言うまでもない」
「だが奴の両腕はどうだ!?」
「両腕!?」
 タイタンはそう言ったところで気がついた。
「あの二人か」
「そうだ、あの二人は幾らでもつけいることが出来るだろう」
「確かにな。あの二人ならば与しやすい」
 そうであった。彼は思わぬとおろに活路を見出した。
「礼を言う。おかげで面白いことを思いついた」
「礼などはいらん。貴様の成功が俺の成功に繋がるのだからな」
「フ、確かに」
 二人は闇の中に姿を消した。こうして悪の胎動は人知れぬところで続いていた。



樹林の獣人   完


           2004・4・14


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