『仮面ライダー』
第四部 光と闇の死闘


序曲
ライダー達の活躍により世界各地におけるバダンの作戦はことごとく失敗に終わった。そしてそれに携わった大幹部や改造魔人達も戦死しその戦力は大きく失われていた。
だが首領は諦めてはいなかった。いや、むしろさらにその野心を膨らませことに当たっていた。
彼には自信があった。世界をその手に収められるという自信が。彼には力があった。
この世界は光と闇から成る。光がライダー達だとしたら彼は闇である。彼はその闇の力を使おうと考えていた。
それを知る者はまだいなかった。バダン以外は彼等はライダー達との戦いを続けながらその毒牙を磨いていたのだ。
その毒牙が今剥かれた。そして世界を、人々を、そしてライダーを殺さんと口を開いた。新たなる戦いが今ここに幕を開かんとしていた。

序章             闇の集結
「随分と減ったものだな」
 暗闇の中首領の声が響く。
「かってあれ程いたというのに」
 その声からは感情が感じられない。ただ言った、そういう感じであった。
「申し訳ありません」
 暗闇の中に立つ地獄大使が言った。
「皆ライダー達により倒されてしまいました」
 見れば他の大幹部達もそこにいる。地獄大使の他には死神博士、ドクトル=ゲー、キバ男爵、アポロガイスト、百目タイタン、ゼネラルシャドウ、ゼネラルモンスター、メガール将軍といった顔触れである。
「そして残ったのはこれだけか」
 首領は地獄大使に対して問うた。
「残念ながら」
 彼は頭を垂れたまま報告した。
「ふむ」
 首領はここで考えるような声を出した。
「だがまだまだ作戦行動は可能だな」
「はい」
 彼等は一様にそう答えた。
「ならばよい」
 首領はそれを聞き満足した声を出した。
「それでは諸君」
 そして彼等に対し言った。
「これより我がバダンの最大の作戦を発動する」
「最大の作戦!?」
 それを聞いた大幹部達は一斉にざわめいた。首領はそれを見下ろすかのように沈黙をしちえたがやがて言った。
「新兵器のことは聞いていよう」
「はい」
 死神博士が答えた。
「それを使い世界を破壊するのだ」
「世界をですか!?」
 ゼネラルモンスターが問うた。
「そうだ、世界をだ。そしてその廃墟の後に我がバダンの理想とする世界を作り上げる」
 首領は見下ろすような声でまた言った。
「そしてライダー達だが」
「ハッ」
 彼等は顔を声の方へ顔を向けた。
「必ずやこの作戦を阻止しに来るだろう。だがそれを必ずや叩き潰せ」
「わかりました」
 彼等は答えた。
「ですが首領」
 ここで百目タイタンが言葉を出した。
「何だ!?」
 首領はそれに対して問うた。
「その兵器とは一体どのようなものでしょう」
「そうです、我等はまだそれが届くとしか聞いておりませんが」
 メガール将軍も言った。
「フフフ、まあそう焦るな」
 首領は彼等に対して言った。
「すぐにわかることだ。その兵器が諸君等のもとに届いた時にな」
「そうですか」
 彼等はその言葉に納得するしかなかった。首領の言葉は絶対であるからだ。
「ところで首領」
 今度はドクトル=ゲーが尋ねた。
「何だ?」
「仮面ライダーのことですが」
 彼は言った。
「私は希望があるのです」
「わかっておる」
 首領はそれを聞いて笑みを含んだ声で言った。
「貴様の願いは叶えてやろう。見事あの男を討ち取って来い」
「では私もそうさせて頂いてよろしいでしょうか」
 今度はアポロガイストが尋ねてきた。
「無論だ。私はライダー達が倒れればそれでよい」
 首領はいささか機嫌のよい声で彼に対しても言った。
「ゼネラルシャドウよ」
 そしてシャドウに対しても言葉をかけた。
「ハッ」
 彼はそれに対して姿勢を正した。
「貴様もわかっていような」
「有り難き幸せ」
 彼は片膝を折りそれに感謝の意をあらわした。タイタンはそれを睨みつけていた。
「では首領」
 キバ男爵が言った。
「早速その作戦を発動すると致しましょう」
「そうだな」
 首領はそれを聞いて言った。
「では暗闇大使よ」
「ハッ」
 ここで暗闇大使が闇の中から姿を現わしてきた。
「ヌッ」
 地獄大使は彼の姿を見て顔を顰めさせた。
「フン」
 暗闇大使はそれを一瞥しただけであった。だがその目には明らかに敵意と憎悪の色があった。
「作戦の名を伝えよ」
「わかりました」
 彼は一礼してから口を開いた。
「今回の作戦名を」
 他の大幹部達をゴクリ、と喉を鳴らした。
「時空破断作戦とする」
「時空破断作戦・・・・・・」
 彼等はその名を聞いて思わずその作戦名を口にした。
「そうだ、時空破断作戦だ」
 首領はそんな彼等に対して言った。
「では諸君よ」
 首領は言葉を続けた。
「行くがいい、そして全てを破壊しライダーを倒せ、そして我がバダンの世界を築き上げるのだ」
「ハッ!」
 彼等は敬礼した。そして一斉にその場から姿を消した。
「さて、ライダー達よ」
 一人残った首領の声が暗闇の中に木霊する。
「今度こそ貴様等の最後だ。楽しみにしているがよい。フフフフフ・・・・・・」
 哄笑が闇の中に木霊する。そこに姿はない。だが明らかに何者かの気がその場を支配していた。

 ライダー達はそれぞれ世界各地に散っていた。だが何かが動いたのを感じた。
「まさか・・・・・・」
 彼等は同時に顔を顰めた。各地に散っているというのに。
「行くか」
 そして彼等は戦場へ向かった。マシンの爆音と共に彼等は向かう。
「はじまりましたよ、おやっさん」
 日本に戻っていた結城は立花に対して言った。
「ああ、わかってるよ」
 彼もまた感じていた。その正義を愛する心で。
「いよいよだな」
「ええ」
 二人は固い表情で頷き合った。
「おそらく今までの最も辛い戦いになるぞ」
「ですね」
「丈二、御前は日本にいるんだな」
「はい、ここで村雨と一緒に」
 彼は固い顔のまま言った。
「そうか、なら日本は安心だな。わしも安心してあいつ等のフォローに行ける」
「というとおやっさん」
「当然だ、あいつ等にだけ戦わせてたまるか、あいつ等を助けるのがわしの仕事だ」
 立花は険しい顔でそう言った。
「御前もその一人だ」
「はい」
 結城が人として温かい心を知るようになったのは立花の存在も大きかった。彼にとっても立花は父親のような存在であったのだ。
 その立花にそう言ってもらえる、それが嬉しかった。だが顔には出さない。結城はあくまで自分を冷静な状態で留めるようにしているのだ。
「頼むぞ」
「任せて下さい、あんな連中の思うようにはさせませんから」
「そうか」
 立花はそれを聞いて目を細めさせた。
 それから数日後立花は日本を発った。息子達を助ける為に。結城はそれを空港で見送った。
 立花を乗せた飛行機が飛び去っていく。彼はそれを見えなくなるまで見ていた。
「おやっさん行っちゃいましたね」
 彼の隣にいた史郎が言った。
「そうだな、だが感傷に耽っている暇はないよ」
 結城はそんな彼に対して言った。
「日本にもバダンは攻めてくるだろうし」
「やっぱり」
 彼はそれを聞くとしょげた顔になった。それが面白い程似合っている。
「いつもそうだっただろう、連中が活動している時に日本が無事だったことがあるかい?」
「いえ、俺もショッカーにはいつも殺されかけてましたhし」
「おいおい、大袈裟だなあ」
 結城は思わず顔を綻ばせてしまった。史郎のそんな様子に思わずふきだしてしまったのだ。
「笑い事じゃないですよ、俺本当に危なかったんですから」
「けれど今もこうして生きているだろう」
「そりゃそうですけれど」
「君も戦士なんだよ。だから戦ってここまで生きてこられた」
「そうですかね。俺が戦士だなんて。戦死ならしそうですけれど」
「まあまあ、そう弱気ならない」
 そこへチコとマコがやって来た。
「史郎さんだって戦闘員達と戦ってきたじゃない、大丈夫よ」
「そうそう、私達も結構史郎さんを頼りにしてるのよ」
「そうかなあ、俺君達にはいつもからかわれてるような気がするんだけれど」
「史郎さん面白いから」
 ここで純子も出て来た。
「ついついそうやってからかいたくなるのよね」
「純子ちゃんまでそう言うのかい!?」
 彼は口を尖らせてそう言った。
「おいおい、三人共それ位にしとけよ」
 ここで結城が間に入ってきた。
「俺は本当に史郎さんは頼りにしてるんだから。いつも必死にやってくれるしな」
「丈二さん・・・・・・」
 三人はそれを聞いて史郎をからかうのを止めた。
「君達もだよ。君達の存在がなければ俺達は戦えないんだ」
 結城は真摯な顔でそう言った。
「ライダーは一人じゃ戦えない、決してね」
 かって彼は一人で戦おうとしていた。だがそれでは悪は倒せない、自らの経験でそれを知ったのだ。
「おやっさんや滝さん達だけじゃないんだ、君達みたいに俺達を支えてくれる人達がいてはじめて仮面ライダーは戦えるんだ」
「そんな、言い過ぎよ」
 マコが言った。
「そうよ、丈二さん私達を買い被ってるわ。私達なんて単なる足手まといだし」
 チコも続いた。彼等は幾度となくゴッドに捕らえられ神に救出されているのだ。
「それは俺だって同じさ、いや全てのライダーが」
 どのライダーも幾度となく絶体絶命の危機に陥った。だがそれを立花やライダーと共に戦う彼女達により救い出されてきたのだ。
「君達がなければ今の俺達はない。当然バダンとも戦えない」
「丈二さん・・・・・・」
 純子が彼を見上げて思わず彼の名を言った。
「だから・・・・・・これからも頼むよ。バダンを倒す為に力を貸して欲しい」
「はい!」
 史郎とチコ、マコ、純子は笑顔で答えた。そして空港を去りアミーゴに戻った。
 丁度それと入れ違いに空港の出口にサングラスをかけた一人の男が姿を現わした。
「暫くぶりだな」
 それは村雨だった。彼はサングラスを取り外すと感慨を込めて言った。
「バダン、ここにも来るか」
 彼は何者かの気配を感じていた。
 右に顔を向ける。サッと影が消えた。
「来るなら来い。俺は逃げも隠れもしない」
 彼はそれを見て言った。
「俺の前に来るならば倒す、例え俺がどうなってもな」
 村雨はそう言うと空港を去った。そして一人アミーゴへ向かった。


序章 闇の集結   完


                                2004・7・15

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