『仮面ライダー』
 第四部
 第一章             サバンナの巨象
            
 アマゾンはアフリカのサバンナに来ていた。
「話には聞いていたけれど凄いな」
 隣にいるモグラ獣人が感嘆の言葉を出した。彼は人間の姿をとっている。
「うん、アマゾンここへは何度か来たことあるけれど何時見ても凄い」
 彼も目を細めて言った。
「アマゾンとはまた違う。こうした自然もいい」
「そうだよな、おいらもそう思うよ」
 モグラ獣人もまた自然が好きだ。彼もまた密林の中で生きているからだ。
 二人は象やガゼルの群れの間を歩いている。ふとライオンの群れの中に入った。
「ちょっと通る、心配いらない」
 アマゾンは突然の侵入者を見て立ち上がったライオン達に対して言った。ライオン達はアマゾンの目を見てそこで止まった。そして逆にアマゾンを出迎えるように道を開けた。二人はその間を進んでいく。
「相変わらず動物達に凄い人気だなあ」
 モグラ獣人はそれを見て言った。
「アマゾン動物好き、だからその想いが伝わる、だから動物道を開ける」
 彼は笑顔でそう答えた。
「動物アマゾンの仲間。仲間は助け合うもの、アマゾンそう思う」
 彼はそう考え今までライダーとして戦ってきた。彼はライダーの中でも特に純粋で心優しい戦士なのである。
「動物もいいけれどさあ」
 モグラ獣人はそんなアマゾンに対して言った。
「アマゾン、ここで何をするつもりだい!?見たところ草原と木だけで何もないよ」
 サバンナは見渡す限りの大草原である。ここにいる人々は狩猟により暮らしている。彼等もまた自然と共に生きているのだ。
「モグラ、心配いらない」
 アマゾンは心配するモグラ獣人に微笑んで言った。
「もうすぐわかるから」
「もうすぐ、もうすぐ、っていったもう一週間だよ」
 彼は不満を露わにして言った。彼等はこの一週間ずっとサバンナを歩き回っているのだ。
「まだバダンの奴等は見つからないのかい!?」
「バダン!?」
 アマゾンはそれを聞いてキョトンとした顔をつくった。
「そうだよ、バダンだよ」
 モグラはその口をさらに尖らせて言った。
「ここにもバダンがいるんだろう!?だから来たんだと思うけれど」
「うん、確かにバダンここにいる」
 アマゾンは顔を真面目なものにして答えた。
「けれどまだバダンの連中には会えない」
「どうしてだい!?」
「奴等アマゾン達を狙っている」
 アマゾンは言った。
「じゃあ今すぐにでも来そうなものじゃないか」
 モグラ獣人は不思議そうな顔をして言った。
「奴等は待っている」
「何をだい!?」
「アマゾン達が隙を見せるのを。多分その時に来る」
「そうか」
 モグラ獣人はようやく事情を理解した。そして二人はサバンナを歩いていった。

 アマゾン達の動きはアマゾンが予想した通りバダンによって見張られていた。彼等はサバンナ中に網の目の様に監視網を作り二人を監視していた。
「アマゾンの動きはどうだ」
 キバ男爵は夕闇が覆うサバンナで戦闘員からの報告を受けていた。
「ハッ、やはり手強いです」
 その戦闘員は敬礼をして答えた。
「中々隙を見せません。どうやらこちらの動きを知っているようです」
「そうだろうな」
 彼はそれを聞いて言った。
「アマゾンライダーはああ見えても手強い男だ。わしはそれをカンボジアで知った」
「カンボジア・・・・・・アンコールワットの戦いでですね」
「そうだ、あの時はアマゾン一人を狙ったが」
 彼はマンモスの骨の兜の下で言った。
「全く相手にならなかった。こちらの刺客は全て倒されてしまった」
「そして日本でもアマゾンでも我々は奴の前に一敗地にまみれましたな」
「うむ。まるで獣の様な男だ。おそらく今は逆にこちらの隙を窺っているのだろう」
「こちらのですか」
「そうだ、油断してはならぬぞ」
「わかりました」
 その戦闘員は答えた。
「だがこちらにも切り札がある」
 キバ男爵は顔を上げて言った。
「奴ですら一撃で倒すあの兵器がな」
「はい、アマゾンライダーをこのサバンナと共に消し去ってやりましょう」
 戦闘員は頭を垂れて言った。
「その為には何をするべきか」
 キバ男爵はここで考え込んだ。
「誘き出すべきか、それとも」
 彼は言葉を続ける。
「一気に消し去るか」
 そう言いながら闇の中へ消えた。夜のサバンナに象の咆哮が聞こえた。

 アマゾンとモグラ獣人は休んでいた。二人はモグラ獣人の掘った穴に入っている。
「何かツチブタみたいだな」
 モグラ獣人は穴の中で笑いながらアマゾンに対して言った。
「ツチブタ!?ああ、あれか」
 アマゾンはそれを聞いてある動物を思い出した。
 ツチブタとはサバンナに住む動物である。土に穴を掘ってその中で暮らしている。夜行性の哺乳類である。
「似てるだろ、こうして穴の中にいるから。まあおいら達は昼に動いているけれど」
「確かに似てる。アマゾンとモグラツチブタそっくり」
「おいおい、けれどおいらはあんなに不細工じゃないよ」
 彼は困った顔をしてそれを否定した。
「こんな男前を捕まえて何を言うんだよ」
「御免」
 アマゾンは素直に謝罪した。
「モグラいい奴。アマゾンそれ保証する」
「顔はなしかよ。まあいいや」
 元々そんなことにこだわる男ではない。彼等はそのまま穴の中で休息に入った。
「なあアマゾン」
 モグラ獣人が不意に話しかけてきた。
「モグラ、どうした?」
 アマゾンは顔を上げて尋ねてきた。
「何で昼動かないんだい!?おいらもアマゾンも夜でも平気なのに」
 彼は不思議そうに尋ねた。
「夜は特別」
 アマゾンはそう答えた。
「特別!?」
「そう、サバンナは昼と夜じゃ違う。出ている動物達も違う」
 ライオンも実は夜行性である。彼等は昼は寝て夜に狩りをするのだ。
「だから出歩かない。さもないとそこにバダン来る」
「そうか、気をつけないとな」
「気をつけるの凄く大事。よく見ておくことも大事」
 アマゾンは言った。
「バダン隙を見せる。その時に動く」
「そうか、それを考えていたのか」
 モグラ獣人はそれを聞いてようやく納得した。
「その時は近い。アマゾンその時になったら一気に戦う、モグラも頼む」
「わかったよ」
 二人はそう言い合うと眠りに入った。そして夜になった。
 
 二人は穴から出てまたサバンナの中を歩きはじめた。やがて木の陰に止まった。
「御飯にしよう」
 そしてその木の実をとり食べはじめた。
「アマゾンは食事を採っているな」
 それを遠くから見る者達がいた。
 一見この辺りに住む部族の者達である。だが何故か周りに山のようにいる獲物達を一瞥だにしない。ただアマゾン達を見ているのである。
「気をつけろよ。気付かれたら終わりだ」
 リーダー格の一人が言った。
「はい」
 彼等はそのリーダーの指示に従いゆっくりと風下からアマゾン達に近付く。そして一気に攻勢に出た。
「死ねっ!」
 槍を投げ踊りかかる。だがアマゾンとモグラ獣人はそこにはいなかった。
「ムッ!?」
「何処だっ!?」
 彼等は慌てて周りを探る。その時上から声がした。
「ケケーーーーーッ!」
 いきなりその中の一人が引っ掻かれた。見れば仮面ライダーアマゾンがいた。
「バダン、覚悟っ!」
 彼はすぐに他の者に挑みかかった。そして別のバダンの者を噛み殺す。モグラ獣人も姿をあらわした。
「ヌウウ、こちらの動きを読んでいたか」
 リーダー格の男は既に怪人の姿になっていた。ジンドグマの扇風怪人ゴールダーである。
「御前達の殺気、ここにみなぎっていた。アマゾンそれに気付いた」
「迂闊だったわ」
 ゴールダーはそれを聞いて舌打ちした。
「だが貴様を倒せばそれですむこと」
 怪人は身構えてそう言った。
「これでも受けるがいい」
 そして力を溜めた。
 口から冷凍ガスを放ってきた。だがアマゾンはそれを上に跳躍してかわした。
「ケケーーーーーーーッ!」
 そして空中で一回転する。そのまま怪人へ向けて急降下する。
 そして両手の爪で切り裂いた。それは怪人の胸を切った。
「ブブーーーーーーーッ!」
 怪人は絶叫した。そして前に倒れた。
 起き上がれなかった。ゴールダーは爆死して果てた。
「アマゾン、やったな!」
 モグラ獣人はそれを見て喝采した。
「モグラ、油断しては駄目」
 だがアマゾンはそんな彼に対して言った。
「何でだよ、折角怪人をやっつけたのに」
 彼は口を尖らして反論した。だがアマゾンはそんな彼に対して言った。
「もう一人いる」
「えっ!?」
 モグラ獣人はその言葉に思わず身構えた。そこへ何かが飛んできた。
「ムッ!」
 二人はそれを左右に跳びかわした。それは溶解液であった。後ろの木がそれにより溶ける。
「ファンファンファーーーーーンッ!」
 ゲルショッカーの触手怪人イソギンジャガーであった。怪人は無気味な唸り声を出してこちらにやって来た。
「ケケーーーーーーッ!」
 アマゾンがそこに跳びかかる。まずは爪で切り裂かんとする。
 だが怪人はそれをかわした。そして右腕の触手で首を絞めようとする。
「甘いっ!」
 しかしアマゾンはそれをかわした。だが左腕に絡み付いてきた。
「ムムム」
「ファファファファファ」
 イソギンジャガーは得意そうに笑う。そして口から溶解液を出そうと身構える。
アマゾンはそこで右腕を振り下ろした。そしてそれで触手を断ち切った。
「ヌッ!」
 一気に攻勢に転ずる。蹴り飛ばし怯んだところにまた襲い掛かる。
「ケーーーーーーーーッ!」
 右腕を振り下ろした。大切断だ。それで怪人を上から真っ二つにした。
 イソギンジャガーの身体が左右に分かれる。鮮血をほとぼしらせた後怪人の身体は爆発して果てた。
 しかしそこにもう一体やって来た。今度は空からだ。
「ヴェーーーーーーーッ!」
 ショッカーのカマイタチ怪人ムササビートルだ。怪人は空中からアマゾンに急降下攻撃を仕掛けてきた。
「アマゾン!」
 モグラ獣人はアマゾンに声をかけた。
「モグラ、大丈夫!」
 しかし彼はそんなモグラ獣人に対して逆に元気付け、安心させるようにして言った。
 一撃目はかわした。だがムササビートルは上空に舞い戻ると旋回した後また狙いを定めてきた。そしてまた急降下攻撃を仕掛ける。
「今だっ!」
 そこで跳んだ。そしてこちらに襲い掛かってくるムササビートルに蹴りを放った。
「ケケケーーーーーッ!」
 アマゾンキックであった。それは急降下してくるムササビートルの顔を直撃した。
「ヴァッ!」
 それを受けたムササビートルは空中に吹き飛ばされた。そして激しく回転し地に落ちた。
 そしてそこで爆死した。こうしてバダンの怪人達は皆アマゾンにより退けられてしまった。
「アマゾン、よくやったね」
 モグラ獣人は着地したアマゾンに対して声をかけた。
「よくやってない」
 だがアマゾンはそれに対して首を横に振った。
「ライダーが怪人倒す、これ当然のこと。アマゾン当然のことしただけ」
「そうか、そうだったね」
 モグラ獣人はそれを聞いて顔を綻ばせた。
「じゃあ言い方を変えるよ。勝ってよかったな」
「うん、それだといい」
 人間の姿に戻ったアマゾンは笑顔でそれに応えた。そして二人はまた歩きはじめた。

 キバ男爵はそれを遠くから見ていた。そして言った。
「怪人はあと三体残っていたな」
「はい」
 戦闘員の一人が答えた。
「よし」
 彼はそれを聞くと頷いた。
「あの兵器だがな」
「はい」
「可動式にできるか」
「可動式ですか!?」
 戦闘員達はそれを聞き思わず声をあげた。
「そうだ、可動式だ」
 キバ男爵はそれに対し顔を向けて言った。
「誘き出そうと思ったがそれはできないようだ。むしろこちらが攻めてくるのを待っている」
 彼はアマゾン達に顔を戻して言った。
「あの男は生まれついての狩人だ。その程度のことはできる」
 彼もまたロシアで勇名を馳せキバ一族の長として君臨してきた男である。密林において猛獣達を屠ってきた。そのことはよくわかる。
「ならばこちらもそれに乗ってやる」
 彼は目の光を鋭くさせた。
「こちらから出向いて倒す、怪人達に召集をかけよ」
「わかりました」
 戦闘員達はその指示に対して敬礼した。
「そしてあれだがな」
 キバ男爵はここで兵器について言及した。
「自走式にできるか」
「自走式ですか」
「そうだ、それなら狩りに使える。アマゾンを追ってな。できるか」
「お任せ下さい」
 戦闘員の一人が答えた。
「万難を排してやってみせます」
「頼むぞ」 
 キバ男爵は顔をアマゾン達に向けたまま言った。
「アマゾンライダーよ」
 そして遥か遠くのアマゾンに対して言葉をかけた。
「貴様の望み通りこちらから攻めてやる。しかしな」
 彼はまた目の光を強くさせた。
「勝利を収めるのは我々だ。このバダンがな」
 彼はそう言うと姿を消した。そしてサバンナはまた太陽の光に支配された。

 アマゾンとモグラ獣人は川辺にいた。そして水を飲んでいる。
「いいなあ、やっぱり久し振りに川で飲む水はいいよ」
「うん、普段飲む水とやっぱり違う。いい」
 モグラ獣人は水浴びまでしている。アマゾンは水を手ですくって飲んでいる。
「いつもは土を掘って飲んでいるもんな。それに比べたら全然違うよ」
「けれどサバンナはそういうところ。水凄く貴重」
 アマゾンは愚痴を言うモグラ獣人に対して言った。
「アマゾンとは違う。それはわからないといけない」
 その口調ややや厳しめであった。
「そうなんだよなあ、アマゾンと違うんだよな」
 モグラ獣人は残念そうな顔をした。
「アマゾンなら水は飽きる程あるし食べ物も豊富なのに。ここはそれに比べてかなり苦しいよ」
 彼等は主に魚や果物を食べる。だからサバンナの食事には慣れていないのだ。
「けれど仕方ない」
 アマゾンはそんな彼に対して言った。
「アマゾンにはアマゾンの、サバンナにはサバンナの状況がある。アマゾンそう考えている」
「そうなんだ」
「そう、だから文句言うのよくない。それよりもバダン倒す、その方が大事」
「そうだったな、バダンがいるんだ」
 モグラ獣人はその言葉に対し頷いた。
「今もここの何処かでおいら達を見ているんだよな」
「うん」
「そして隙あらば、か。油断できないな」
 モグラ獣人は川から出て周りを見回したあとで言った。
「うん、けれどそれいつものこと」
 アマゾンは言った。
「だから特に気を張り詰める必要ない。いつもと同じ」
「いつもと同じか」
 モグラ獣人はやや困ったような声をあげた。
「いつもバダンと戦っているもんなあ。本当に」
「それアマゾン達の仕事」
「そうなんだよなあ、早く終わって平和に暮らしたいよ」
「その日何時か必ずやってくる」
 アマゾンはモグラ獣人に対して言った。
「けれどそれにはバダン倒さなくてはいけない。その為にアマゾンいる」
「アマゾン」
 モグラ獣人はその言葉に顔を向けさせた。
「モグラの力も必要、アマゾンも一人じゃ戦えない」
「わかってるよ」
 彼はそれに対して微笑んでみせた。
「おいらは弱いし臆病だけれどアマゾンのことは好きだよ。だからこんなおいらでも力になれたらいいと思ってるよ」
「モグラ」
 アマゾンはそれを聞き嬉しそうな表情を作った。
「おいらも出来ることの範囲で力になるよ。そしてバダンをやっつけようぜ」
「うん、アマゾン戦う。そして世界平和にする」
「そうこなっくちゃ」
 彼等はここで両手を握り合った。そしてまた歩きはじめた。
 
 二人はシマウマの群れの横にやって来た。サバンナの名物である動物の一つだ。
「本当に変わった模様だなあ」
 モグラ獣人はそれを見ながら呟いた。
「何でこんな模様なんだろう」
「これ保護色」
 アマゾンは彼に対して言った。
「保護色!?こんなに派手な色と模様なのに!?」
「そう、保護色」
 アマゾンはにこりと笑って答えた。
「ライオンや豹の目人間のと違う。色がわからない」
「そうなんだ」
 哺乳類で色の識別ができるのは人間と猿だけである。他の哺乳類は白黒でしかものを見ることができない。
「だから隠れられる。シマウマ周りの風景に隠れられる」
「そうやって自分の身を守っているんだね」
「そういうこと、要するにアマゾンの生き物と同じ」
「そうだったんだ、勉強になるなあ」
「アマゾンもモグラもこの身体は隠すことできる。シマウマもそれをしている。だから同じ」
「そうだね、けれどおいら達は戦う相手が違うけれど」
 二人はシマウマの群れの間に入った。そしてその草を食べる様子を目を細めて見ていた。
 だがそれはすぐに終えなければならなかった。ここでバダンの攻撃を受けたのだ。
「!?」
 草原の向こうから何かが向かってくる。それはバイクに乗った一団だった。
「環境保護の連中かな」
 モグラ獣人は最初それを見てそう思った。
「いや、違う」
 だがアマゾンはそれを見て言った。彼にはその一団が何者かすぐにわかった。
「モグラ、あれバダン!」
「えっ!?」
 モグラ獣人はアマゾンのその言葉に思わず声をあげた。
「こちらにやって来る、すぐに用意しよう!」
「けれどどうやって・・・・・・」
 モグラ獣人は慌てて周りを見回す。だが周りには何もない。
「モグラは潜る、それでいい」
「ああ、そうか」
 アマゾンの言葉にハッとした。そして急いで地を掘り進む。
「アマゾンも来なよ」
「いや」
 だがアマゾンはここで首を横に振った。
「アマゾンは隠れない。考えがある」
「どうするつもりだよ」
「アマゾンに任せる。何も心配いらない」
 そしていつもの笑みを見せた。
「そうか、じゃあ」
 その微笑みはいつも見ていた。彼がその笑みを見せた時は必ず勝利をおさめている。
「アマゾン、頼むよ」
「うん、モグラは下から頼む」
「わかった」
 こうして両者は一旦別れた。そして迫り来るバダンの使者達に備えた。
「アマゾンライダーは何処に行った!?」
 その一団がシマウマの群れの中にやって来て彼を探しはじめた。
「見たところシマウマしかいないが」
 その先頭にいる怪人が辺りを見回した。ショッカーの吸血怪人モスキラスである。
「そんな筈はない、絶対にここにいる筈だ」
 もう一体の怪人が言った。デストロンの突撃怪人サイタンクだ。
「しかし何処にいるというのだ」
 モスキラスは焦っていた。アマゾンが奇襲を得意とするのを知っているからだ。
「落ち着け」
 サイタンクはそんなモスキラスに対して言った。
「焦れば奴の思う壺だ」
「そうだな」
 モスキラスは同僚のその言葉に落ち着きを取り戻した。そして再び辺りを見回した。
「この辺りにいる筈だが」
 だが見つからない。また次第に焦りはじめた。
「ムムム」
 その時だった。不意に奇声が何処からか聞こえてきた。
「ケケーーーーーーーーッ!」
「その声はっ!」
 彼等はその声を発する者wよく知っていた。そう、彼である。
 アマゾンライダーが姿を現わした。彼は前からジャングラーDに乗ってやってきた。
「前からかっ!」
 バダンの一団はそれを見て一斉に前に機首を向けたシマウマ達が左右に散っていく。
 両者を隔てるものはなくなった。バダンも突っ込む。両者はそのまま激突した。
「ケーーーーーーーーッ!」
 アマゾンはマシンをそのまま突っ込ませた。戦闘員達はそれだけで何人か吹き飛んだ。
「クッ!」
 モスキラスが憤怒の声を出す。そして突き抜けたアマゾンに機首を向ける。
 そしてこちらに振り返ったアマゾンに突き進む。サイタンクは後ろから叫んだ。
「止めろ、俺と連携しろ!」
 だがモスキラスは頭に血が上っていた。彼の制止を振り切りそのまま突き進む。

「ブゥゥーーーーーーーーヨンッ!」
 アマゾンもまた突っ込んできた。モスキラスは彼を捕らえその血を吸いそれで倒すつもりだった。
 しかしアマゾンの方が一歩上であった。彼は両手の鰭を一閃させた。
「ムンッ!」
 それで終わりであった。両者が交差する。そしてマシンはそのまま突き進んでいく。
 モスキラスはその間動かなかった。だがその頭が一瞬ぐらついた。
 その頭が落ちた。すると首を失った身体はマシンにもたれかかるようにして倒れる。そしてそのまま横転し爆発に巻き込まれた。
「モスキラス・・・・・・」
 サイタンクはそれを見て歯噛みした。そしてあらためてアマゾンを見た。
「仇はとってやる」
 その声には明らかに怒りが込められていた。
「行くぞっ!」
 マシンごと突っ込む。彼は額にある角を向けてきた。
「フワァーーーーーーッ!」
 その堅固な皮に覆われた巨体でアマゾンを叩き潰そうとする。彼の武器はその巨体と角であった。
 アマゾンもマシンをそちらに向ける。そして突撃する。
 アマゾンは身構えた。そしてその右腕を左肩のところに置く。
「ケケーーーーーーーッ!」
 そしてそれを横に払った。丁度サイタンクと交差した時だった。
「・・・・・・・・・」
 サイタンクは動かなかった。そして何も言おうとしなかった。
 やがてその上半身がゆっくりと落ちていく。そしてサバンナの草の上に落ちた。
 マシンが爆発した。上半身も爆発した。こうして二体の怪人はアマゾンによりほぼ一瞬で倒された。
「見事だ、流石はゲドン、ガランダーを倒しただけはある」
 ここで新たな声がした。
「仮面ライダーアマゾンよ」
 二体の怪人を倒したアマゾンの前にもう一体の怪人が姿を現わした。
「今度は俺が相手だ」
 ネオショッカーの切断怪人グランバザーミーであった。怪人はマシンに乗りその巨大な鋏の右腕を振り回していた。
「チョキチョキチョキチョキチョキチョキッ!」
 そして奇声と共に向かって来た。アマゾンもそれに応じた。
「ケケーーーーーーーッ!」
 マシンを正面からぶつける。凄まじい衝撃がサバンナに走った。
「ゲッ!?」
 グランバザーミーはマシンから放り出された。だが上手く受け身をとり着地した。そしてアマゾンの襲撃に備える。
「何処だ」
 ジャングラーDも何処かへ消えていた。当然アマゾンもいない。
 辺りを見回す。だがアマゾンの姿はない。
 八方に気を張り巡らす。その時だった。
 後ろから何かの気配がした。慌ててそちらを振り向く。
「そこかっ!」
 だがそこにあったのは一つの巨大な穴だった。それ以外には何もなかった。
「どういうことだ、モグラ獣人か!?」
 彼はすぐにアマゾンと共に戦う獣人のことを脳裏に浮かべた。
「裏切り者が、一度死んでもまだ懲りないというのか」
 穴に入ろうとする。入口を覗き込んだその時だった。
「ケケーーーーーーーッ!」
 不意に上から声がした。怪人は咄嗟に上へ鋏を繰り出した。
 だが遅かった。アマゾンはそれより前に腕を振り下ろしていた。
 怪人の首が落ちた。そしてそれは穴の中に落ちていった。
 首をなくした胴体が倒れ込む。そして爆発した。
 穴の奥からも爆音が聞こえてきた。どうやらグランバザーミーの首が爆発したらしい。
「やったな」
 アマゾンの後ろから声がした。モグラ獣人がそこにいた。
「モグラ、有り難う」
 アマゾンは彼に対して言った。
「まさかこんな使い方するなんて思わなかったよ」
「咄嗟に思いついた。アマゾンもまさかこんなに上手くいくとは思わなかった」
 アマゾンは変身を解きながら言った。
「まずジャングラーDで上に飛ぶ。そしてそこでマシンで空に留まる」
 彼はマシンの激突の直後上に跳んでいたのだ。そこでマシンで空を飛んでいたのだ。
「そしてモグラにテレパシーで送った。あいつの後ろに向かってくれ、と」
「うん」
 これもガガの腕輪の力だった。この腕輪はアマゾンに超絶的な力を授けるだけではないのである。
「そして怪人がモグラの穴に気をとられている時にマシンから降りて襲い掛かる。やることはいつもと同じだけれどちょっと変えたらそれだけでかなり違う」
「そうだよな、おいらもびっくりしたよ」
「バダンの奴等強い、だからアマゾンの頭使わなくては駄目。そうでないと勝てない」
 彼とて馬鹿ではない。そうした頭脳戦も得意なのである。
「けれどこれでバダンさらに追い詰められた。今度は全力で来る」
「全力でかい」
「そう、アマゾンバダンの攻撃二回退けた。そろそろ痺れを切らす頃」
 その読みは当たっていた。
「モグラも気をつける。もうすぐバダンが総攻撃を仕掛けてくる」
「ああ」
 アマゾンはマシンを呼び寄せた。アマゾンが乗った。
「モグラも乗るか」
「うん」
 モグラ獣人は人間態になるとアマゾンの後ろに乗った。アマゾンはそれを確かめるとアクセルを踏んだ。
 マシンは走りはじめた。そしてその場をあとにした。後に戦いの後を残して。

 キバ男爵は夜のサバンナにいた。そして一人夜空を見上げていた。
「あの者達も敗れたか」
 彼は星の動きから戦いの行方を見ていた。そして呟いた。
「こうなったら私自身が行くしかないな」
「そうか、遂に行くのか」
 ここで後ろから声がした。
「うむ、これ以上は捨てておけぬ。無駄に戦力を消耗してしまうのでな」
「兵器の準備はできているのだろうな」
 声の主はゆっくりとキバ男爵に近付いてきていた。
「当然だ、だからこそ行くのだ」
 キバ男爵は落ち着いた声で言った。
「そういうお主も準備はできているのだろうな」
 そして後ろを振り向いた。
「無論だ。後はあの男が来るのを待つだけだ」
 その男はドクトル=ゲーだった。彼は血に飢えた陰惨な笑みを浮かべながら言った。
「仮面ライダーX3か。できるならこの私が相手をしたかったが」
 キバ男爵はデストロンにいた時の屈辱を忘れたわけではなかった。恨みを込めた声でそう言った。
「それは致し方あるまい。だがお主にも獲物があるではないか」
「確かに」
 男爵はゲーの言葉に対して頷いた。
「私にとってはおあつらえ向きの獲物かも知れぬな」
 彼は表情を変えることなくそう言った。
「奴には何か感じるところがある」
「それは何だ!?」
 ゲーは問うた。
「うむ、何かな。このサバンナで戦う運命だったような気がするのだ」
「運命か」
「そうだ、私はこのアフリカで長い間戦ってきた」
 キバ一族はアフリカの暗黒宗教を信じる部族であった。その長となった彼もまたその暗黒宗教を信奉している。
「奴はアマゾンだがな。しかしどちらも文明とは無縁の場所だ」
「そういえばそうだな」
 ドクトル=ゲーはそれを聞いて言った。
「そうだ、私は日本に来た時妙な違和感を覚えたものだ。ここは私に相応しい場所ではない、とな」
「ではこのサバンナの方がよいのだな」
「うむ。アフリカこそ私が戦う場所に相応しい。そう考えている」
「そうか」
 ゲーはそれを聞いて頷いた。
「では仮面ライダーアマゾンはお主に任せてもよいな」
「うむ。お主は仮面ライダーX3をやるがよい。それを私に約束させたくてここに来たのだろう」
「わかっていたか」
 ゲーはその言葉を聞いて不敵に笑った。
「わからないと思ったか。お主のあの男への執念を知っていて」
「フフフ、ならばいい」
 彼は満足そうに頷いた。
「仮面ラァーーーーイダX3は私が倒す。手出し等は一切無用だ」
「こちらもだ。私は獲物を狩るのに他の者の手は借りない主義だ」
「ならばこれで決まりだな」
「うむ、健闘を期待するぞ」
「そちらこそな。見事アマゾンの首をとるがよい」
「わかっておる、その時はまずお主に見せてやろう、アマゾンライダーの首を」
「楽しみにしているぞ。それではな」
「うむ」
 ドクトル=ゲーは別れの挨拶と共に姿を消した。あとにはキバ男爵だけが残った。
「アマゾンライダーよ」
 彼の後ろで何か巨大なものが動く音がした。
「今度こそ貴様の最後だ」
 まるで何か巨大な生物が歩くような音がする。それは夜のサバンナに地響きを立てて進んでいた。

 アマゾンとモグラ獣人は相変わらずサバンナを歩いていた。そこを謎の一団が取り囲んできた。
「バダンか」
「その通り」
 問うたアマゾンに対し誰かが答えた。
「キバ男爵」
 その者はアマゾン達の正面にいた。そして彼に答えた。アマゾンはその者の名を呼んだ。
「アンコールワット以来だな。ここで決着を着けさせてもらう」
 彼はその無気味に光る眼でアマゾンを見ながら言った。
「これでもってな」
 彼は右手に持つ槍を掲げた。すると後ろから何かがやって来た。
「な・・・・・・」
 それは一匹の巨大な象であった。恐竜程の大きさである。
 いや、それは象ではなかった。それは機械であった。象に似せた巨大なロボットであった。
「これは・・・・・・」
「驚いたか。これが我がバダンの秘密兵器だ」
 キバ男爵は驚くアマゾンに対して言った。
「秘密兵器・・・・・・」
「そうだ、時空破断システムという」
「何だそれは!?」
「答える必要はない」
 キバ男爵はアマゾンに対し冷たい声で言い放った。
「今ここで見せてやるのだからな」 
 そう言うと槍をゆっくりと振り下ろした。
「貴様の命と引き換えに」
 巨象はゆっくりと口を開いた。そしてそこから何かを吐き出した。
「ムッ!?」
 それは光の帯だった。ただし普通の光ではない。何と黒い光だ。
「モグラ、跳べ!」
 アマゾンは咄嗟に横にいるモグラ獣人に対して言った。モグラ獣人はそれに従いすぐに左に跳んだ。アマゾンは右に跳んでいた。
 黒い光がそれまで二人がいた場所に突き刺さった。そうするとそこは跡形もなく消えていた。
「ふむ、かわしたか」
 キバ男爵はそれを見て言った。
「だが何時までかわしきれるかな」
「ヌヌヌ」
 アマゾンはその言葉を聞き激昂した。
「アマゾン甘く見るな。アマゾンそんなものに負けない」
「ではどうするつもりだ」
「見ていろ」
 彼はそう言うと隣にいるモグラ獣人に顔を向けた。
「モグラ、ここはアマゾン一人でやる。モグラは安全な場所行く」
「しかしアマゾン・・・・・・」
 彼はそんなアマゾンを気遣った。だがアマゾンはそれに対しいつもの微笑みを見せた。
「心配ない。アマゾン勝つ」
「・・・・・・わかったよ」
 彼はいつものようにアマゾンを信じることにしtら。そしてその場を去った。
「フン、まあ雑魚の一匹や二匹どうでもいい」
 キバ男爵は地を掘りその中に消えたモグラ獣人を見て言った。
「今はアマゾンライダーさえ倒せればそれでいいからな。さて」
 そして再びアマゾンに顔を向けた。
「覚悟はいいな」
「覚悟するのはそっち」
 アマゾンはそんな彼に対して言い返した。そして構えに入った。
「行くぞ」
 その身体にゆっくりと気が集まりはじめた。

 アーーーーー
 両手を半ば拡げる。その指はまるで爪を立たせたようである。
 雨腕は肩の高さで横に開いている。そして肘を直角にし上に向けている。
 マーーーーー
 その腕を胸の前でクロスさせた。
 身体が緑と赤のマダラに覆われる。背中と両手両足に鰭が生え手袋とブーツが黒くなる。
 ゾーーーーーン!
 その両腕を元に戻す。眼が赤く光った。
 白い光がアマゾンの全身を包む。その中右半分、左半分と獣の仮面が顔を覆っていく。
 
 光が消えた。仮面ライダーアマゾンがそこに姿をあらわした。
「ケケーーーーーーッ!」
 アマゾンは奇声を発した。そして両手の鰭を擦り合わせ威嚇の音を出した。
「変身したか」
 キバ男爵はそれを見て言った。
「ならば容赦する必要はない。やれい!」
 再び槍を振り下ろした。巨象の口から再びあの黒い光が放たれる。
「ケケッ!」
 アマゾンは恐るべき跳躍でそれをあくぁす。だが巨象はそこに続けて光を放つ。
 それに対しアマゾンは空中で方向転換してかわした。そこに戦闘員達が襲い掛かる。
「無駄っ!」
 アマゾンはその戦闘員達を爪で切り裂いた。胸や腹を切り裂かれた彼等はそのまま地に落ちる。
 アマゾンは着地した。そこへまた黒い光が襲い掛かる。
 今度は横に滑った。そして追いかけてくるその光をかわす。
 戦闘員達はそこに骨の槍を投げる。だがそれはアマゾンの鰭の前に全て叩き落とされる。
 アマゾンはまた跳躍した。天高く跳ぶ。
「ケケーーーーーーーーーーーッ!」
 光がそれを追うが間に合わない。アマゾンは空中で一回転した。
 そして巨象の頭上に着地した。
「ここなら攻撃受けない」
「ヌウウ」
 キバ男爵はそれを見上げて歯噛みした。
「黒い光、この世に存在しない」
 アマゾンは巨象を見下ろしながら言った。
「だから潰す、そして世界救う!」
 そう言うと右腕を大きく振り被った。
「スーーーパーーーー大切断っ!」
 ギギの腕輪とガガの腕輪の力を最大にまで出したうえで繰り出すアマゾン最大の大技の一つである。それを巨象の脳天めがけ振り下ろしたのだ。
 白い光が巨象の身体の中心を走った。そしてそれが消えた時アマゾンは地面に着地していた。
「これで巨象死んだ。黒い光もう出ない」
 巨象は動きを止めていた。そしてやがてゆっくりと左右に分かれていく。
 アマゾンの後ろで巨象が真っ二つになった。そして爆発が起こった。
「おのれ、よくも」
 キバ男爵は爆風を背に受け立っているアマゾンを睨みつけた。
「かくなるうえは」
 戦闘員達がアマゾンを取り囲んだ。キバ男爵は彼の正面に立った。
「私自ら貴様を倒してやろうぞ」
 彼は槍を顔の前にかざした。そして何かを唱えはじめた。
「見るがいい、アマゾンライダーよ」
 彼はその呪文を唱え終わるとアマゾンに対し言った。
「これが私の真の姿だ」
 その身体が灰色の毛に覆われる。牙が生え鼻が異様に伸びる。そして左腕が醜く変形した
「怪人・・・・・・」
「そうだ」
 キバ男爵は彼に対し言った。
「キバ一族の長吸血マンモス、これが私の正体だ」
 キバ男爵、いや吸血マンモスは言った。槍はその右手にある。それでアマゾンを指していた。
「一つ言っておく」
 吸血マンモスはまた言った。
「私のこの姿を見て生きている者はいない。唯一人を除いてな」
「何ッ」
「その一人ももうすぐ死ぬ。ドクトル=ゲーの手にかかってな」
 それが風見志郎であるのは言うまでもないことであった。
「そしてアマゾンライダーよ」
 吸血マンモスのその目が赤く光った。
「貴様はここで死ぬのだ。行くぞ!」
「ケケッ!」
 アマゾンはその言葉に対して身構えた。それが戦争のはじまりだった。吸血マンモスと戦闘員達は槍を手に一斉にアマゾンに襲い掛かった。
 まずは戦闘員達が来る。アマゾンはそれを爪や蹴りで退ける。
「何処を見ているっ!」
 そこに吸血マンモスの槍が襲い掛かる。だがアマゾンはそれを身体を右に捻ってかわした。
 そして左手の鰭で切ろうとする。しかしそれは吸血マンモスの長い毛と厚い皮膚に防がれる。
「なっ」
「ククククク」
 驚くアマゾンに対して吸血マンモスは不敵に笑った。
「今度はこちらの番だ」
 そして左腕で打った。アマゾンはそれを胸にまともに受け後ろに吹き飛んだ。
「ウググ・・・・・・」
 だがアマゾンは一瞬で立ち上がった。しかしダメージは隠せない。
「私はかって世界を支配したマンモスの力を手に入れている」
 吸血マンモスは痛みをこらえるアマゾンを見下ろすようにして言った。
「そして誇り高きキバ一族の長でもある」
 その言葉には重みがあった。
「その二つにかけて負けるわけにはいかん」
 そこで槍を繰り出した。
「ムッ」
 アマゾンはそれを身体を捻ってかわした。
「仮面ライダーアマゾンよ」
 吸血マンモスは槍を繰り出しながらアマゾンに対して言った。
「このサバンナが貴様の墓場だ」
 槍をアマゾンの首に突き出した。だがアマゾンはそれもかわした。
「ケケッ!」
 そしてその槍の穂に噛み付いた。その牙でもって砕こうとする。
「ムムム」
 それを見た吸血マンモスは槍を離した。アマゾンはそれを見ると槍を手にとった。
「喰らえっ!」
 そして槍を投げる。だがそれも吸血マンモスの堅固な皮膚の前に阻まれる。
「フフフフフ」
 吸血マンモスは余裕の笑みを浮かべた。そしてアマゾンを見据えて言った。
「今度はこれだ」
 そう言うとその左腕を地面に打ちつけた。
「ムッ!?」
 すると辺りを地震が襲った。
「まさか」
 アマゾンはその地震に必死に耐えながら怪人を見た。
「ククククク」
 吸血マンモスは笑っていた。そしてまた左腕を地面に打ちつける。
 再び大地が揺れる。そして地割れがアマゾンを襲った。
「どうだ、地震の味は」
 何とかその地割れから身をかわしたアマゾンを嘲笑するように言う。
「大地を支配したマンモスの力、とくと味わうがいい」
 そう言うとまた地面を打った。また地割れがアマゾンを襲う。
 サバンナを無数の地割れが襲った。それはやがて四方八方からアマゾンに向かって来た。
「まずい、このままでは」
 アマゾン自身の身も危なかった。だが彼は別のことを危惧した。
「サバンナの自然が・・・・・・」
 彼はこの時も自然を愛する心を忘れてはいなかった。そしてそれはその自然を破壊する者への怒りとなった。
「させない!」
 アマゾンは吸血マンモスを見据えた。怪人は勝ち誇った顔で大地を打ち続ける。
「倒す、そして自然守る」
 アマゾンは誓った。だがどうしてあの怪人を倒すのか。問題はそこであった。
 あの毛と皮膚には大切断すら通じない。他の攻撃も効果は期待できない。
 だが倒さなくてはならない。どうするべきか、アマゾンは考えた。
「象の力大きい」
 それはわかっていた。だがそれをどうするか、である。
「その力の源は」
 彼は考えた。それを絶てばいい。今までの戦いとアマゾンでの生活でそれはよくわかっている。
 象の力は。そしてそれをあらわすのは何か。
「牙・・・・・・」
 そう、牙であった。
 吸血マンモス、いやキバ男爵はキバ一族の長である。ならばその力の源も牙である筈だ。アマゾンはそう考えた。
「牙さえ取れば・・・・・・!」
 アマゾンは思った。そして跳んだ。
 それまで彼がいた場所を地割れが蜘蛛の巣の様に襲い掛かった。彼は咄嗟のところでそれをかわした。
「ケケーーーーーーーーーーッ!」
 彼は叫んだ。そして空中で一回転した。
「また来るか」
 吸血マンモスはその動きを見上げて言った。
「無駄なことを」
 彼は自分の皮膚と毛の防御力に絶対の自信を持っていた。アマゾンの大切断ですら怖くはなかった。
 そう、身体は。だがキバは違った。
 アマゾンは急降下する。その真下にはキバがある。
「ケケーーーーーーーーーッ!」
 アマゾンは再び叫んだ。そしてそれと共に右腕を大きく振り被った。
「スーーーーーーパーーーーーーー・・・・・・」
 彼は技の名を叫びはじめた。
「効かぬというのがわからぬようだな」
 吸血マンモスはそれを受けるつもりであった。そしてそこで彼に絶対的な敗北を悟らせるつもりだった。
 だがそれは叶わなかった。
「大切断!」
 アマゾンは右腕を振り下ろした。それは吸血マンモスの二本の牙を一閃した。
「ウオッ!?」
 牙が地に落ちた。そこから鮮血がほとぼしり出る。
「グオオオオオオッ!」
 両腕でその牙の傷口を押さえる。だが血は止まることなく溢れ出る。
「まだだっ!」
 アマゾンはさらに攻撃を続けた。今度は吸血マンモスを掴み空中に放り投げた。
「ケケーーーーーッ!」
 そして自らも跳んだ。空に舞い上がった吸血マンモスに向かって蹴りを放つ。
「アマゾンキィーーーーーーーーック!」
 蹴りを放った。それは吸血マンモスの牙の間を直撃した。
 攻撃を終えたアマゾンは両足で着地した。吸血マンモスはその前に落ちた。 
「グググ・・・・・・」
 吸血マンモスは傷口から血を流しながらも立ち上がってきた。
「まだ来るつもりか」
 アマゾンはそんな彼に対して身構えた。
「心配するな」
 吸血マンモスはそんなアマゾンに対して言った。
「私にはもう戦える力は残ってはおらぬ」
 そしてキバ男爵の姿に戻った。
「ようやく復活した我がキバ一族が再び滅ぶとはな」
「悪が滅ぶ、これ運命」
「フン、運命か」
 キバ男爵は蒼白の顔でアマゾンを見据えて口の左端を歪めた。
「ならば最後に勝つのはバダンだ」
 そして槍を右手に構えながら力を振り絞って言った。
「偉大なる我等が首領が世界を手に入れられるのは定められしこと。ライダー達の死と共にな」
「それ違う、悪は滅びる運命になる」
 アマゾンはそれに対し反論した。
「戯れ言を」
 キバ男爵は言い返した。
「まあそれはすぐにわかることだ」
 そしてまた口の端を歪めた。
「その時を見れないことだけが残念だが地獄での楽しみにとっておこう」
 そう言うと最後の力を振り絞って両足で立った。
「仮面ライダーアマゾンよ」
 そしてアマゾンを見て言った。
「キバ一族の火が消えるこの瞬間、よく見ておけ。そして」
 彼は言葉を続けた。
「これが近いうちの貴様の未来だということを忘れるな」
 そこまで言うとゆっくりと後ろに倒れた。
「バダンに栄光あれーーーーーーーーーっ!」
 そう言い残し爆死して果てた。キバ一族の偉大なる長の見事な最後だった。
「アフリカでの戦いはこれで終わりか」
 アマゾンはその爆発を見ながら呟いた。
「だけどまだ戦いは終わりじゃない。まだ首領が残っている」
 そう言うとその場をあとにした。それまでサバンナをズタズタに引き裂いていた地割れもキバ男爵の死と共に消えていた。
戦いの傷跡は草原の中に消えていた。

「よく帰ってきたね」
 モグラ獣人は川辺でアマゾンを出迎えていた。
「うん、何とか倒した」
 アマゾンは出迎えたモグラ獣人に対して笑顔で応えた。
「手強かったけれど」
「仮にも大幹部だからな」
「うん、けれどこれでアフリカのバダンの勢力はかなり減った。キバ一族も滅んだ」
 アマゾンは感慨深げに言う。
「他のライダーにも勝って欲しい」
「大丈夫だよ」
 モグラ獣人はここでアマゾンを元気付けるようにして言った。
「皆あんなに強いんだよ、負ける筈ないじゃないか」
「モグラ」
「アマゾンも言ったじゃないか、正義は必ず勝つ、って。だろ!?ライダーが負ける筈ないさ」
「そう、そうだった」
 アマゾンはその言葉に笑みを取り戻した。
「モグラ、有り難うアマゾン気が楽になった」
「アマゾン・・・・・・」
「やっぱりアマゾン一人では戦えない」
 彼はここで一瞬しょげた顔をした。
「けれどモグラやおやっさん、まさひこ、りつ子さんがいるから戦える。皆がいるからアマゾン戦うことできる」
 それがアマゾンであった。鬼神の様に戦い敵を切り裂く。だがその心は繊細で心優しいのだ。
 だからこそ悪と戦うことができるのだ。その友を守る為に、世界を守る為に戦うのだから。アマゾンの心は他のどのライダーよりも素朴で温かいのだ。
「行こう、モグラ」
 アマゾンは言った。
「まだバダンは残っている。一人残らず倒して世界を平和にしよう」
「よし!」
 二人は歩きはじめた。夕陽が二人を照らしていた。
 長い影が消えていく。そして二人は新たな戦場に向かっていった。

「キバ男爵は死んだか」
 ドイツの古城でドクトル=ゲーはその報告を聞いた。
「惜しい男だったが」
 デストロンにいた頃はツバサ大僧正等と共に競い合った。ヨロイ元帥とはうまが合わなかったが彼らは互いを認め合い功を競っていたのだ。
「やはりライダーは一筋縄ではいかんな」
 ここで後ろから声がした。ゼネラルモンスターが闇の中から姿を現わした。
「うむ。そちらもそろそろ作戦を発動するようだな」
 ゲーが彼に顔を向けた。
「既に全て整っている」
 ゼネラルモンスターは胸を張って答えた。
「来るぞ、あの男が」
「それも計算のうちだ」
「そうか」
 ゲーは彼の言葉を聞きやや機械的に頷いた。
「健闘を祈る」
 そして儀礼的に言った。
「そのようなもの祈ってもらいたくはない」
 だがゼネラルモンスターはそれに対して反論した。
「何っ!?」
「我がナチスの掟を忘れたのか」
 ゼネラルモンスターは目をひそませたゲーに言った。
「総統は仰ったな。勝利こそ全てだ、と」
 彼等はかってナチスにいた。その時ヒトラーに言われたことであった。
「私は勝利しか望まない。スカイライダーを倒し中東を死の荒野に変えることだけしかな」
「そうか、そうだったな」
 ゲーはそれを聞き満足したように笑った。
「そういうことだ。ではシャンパンを用意して待っておくがいい」
 彼はそう言うと背を向けた。
「スカイライダーの首を持って来る故な」
「楽しみにしいるぞ。私も持って来るからな」
 彼はここで残忍な笑みを浮かべた。
「あの男の首をな」
「では私も祝いの酒を用意しておかなくてはならんな」
 ゼネラルモンスターは振り向いて言った。
「当然だ」
「では用意しておこう。楽しみにしておくがいい」
 彼はそこまで言うと顔を元に戻した。そして闇の中に消えた。
「仮面ラァーーーーイダX3よ」
 一人残ったゲーは呟いた。
「あの時のようにはいかぬ、覚悟しておれ」
 そこまで言うと彼も姿を消した。そしてあとには古城の古い苔むした石の壁だけが残った。


サバンナの巨象    完


                                  2004・7・24


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