『仮面ライダー』
 第四部
 第十一章             戦士達の集結
            
「じゃあ先に行っています」
「ああ」
 朝になった。ライダー達はまず自分達のマシンに乗っていた。
 そして立花達の見送りを受けアミーゴを後にする。行く先は決まっていた。
 すぐにその姿は見えなくなった。ただ爆音だけが朝の人気のない道に轟いていた。
「おい」
 立花は彼等の爆音が聴こえなくなったのを見計らって皆に声をかけた。
「滝にケン、モグラにがんがんじい、チョロ、そして竜はわしと一緒に行くぞ」
「はい」
 名を呼ばれた者達はそれに答えた。
「谷さんは博士達と合流して。車は裏に用意してありますんで」
「わかりました」
 谷はそれに対して頷いた。
「史郎と純子達はここに残ってくれ。そして後方支援を頼む」
「ええ」
「わかりました」
 彼等もそれに頷いた。こうして一同の行動が決まった。
 立花はトラックにメンバーを乗せ出て行く。谷は後ろからライトバンを持って来た。そして城南大学に向かった。
 史郎達はアミーゴの中に入った。こうして最後の戦いの前の最後の挨拶と出陣が終わったのであった。

「ライダー達が動いたようだな」
 首領は伊勢の地下深くにある基地の底で暗闇大使に対して語り掛けていた。
「ハッ、どうやらこちらに向かっているようであります」
 彼はバダンの紋章の前に跪き答えていた。
「おそらく我々の所在を掴んだものと思われます」
「そうか、三影は失敗したようだな」
「いえ、それは違います」
 彼はここで三影を庇った。
「今回は基地の警戒を怠った私の不始末でございます。あの者は的確に動いておりました」
「そうなのか」
「はい、私の責任であります。どの様な処罰も受けましょう」
「・・・・・・・・・」
 首領はそれに対して沈黙していた。大使はその前で跪いたままである。
「よい」
 首領は沈黙の後で彼に対して言った。
「どのみちわかるものであった。ゼクロスの力をもってすればな」
 彼は大使を不問にすることにした。
「それに今はそうこう言っている場合ではない。ライダー達を倒すには少しでも戦力が必要だ。貴様のその力は貴重なものだ」
「有り難き幸せ」
「責任は戦いでとるがよい。見事ライダー達の首を挙げるのだ」
「ハッ」
 暗闇大使はそれに謹んで言葉を述べた。
「必ずやライダー達の首級を首領の御前に持って来ましょうぞ」
「うむ、楽しみにしているぞ」
 首領は笑いを含みつつそれに応えた。そしてすぐに次の指令を発した。
「そして関東にいる者達を急ぎ招集せよ」
「ハッ」
「今回は間違いなく決戦になるからな。あの者達が戻って来るまではここの防御に徹することとする」
「わかりました」
「その防衛は貴様に任せる。あと時空破断システムも用意しておけ」
「それは既に出来ております」
 大使は顔を上げて言った。
「何時でも出せる状況であります」
「ほう、そうだったのか」
 それを聞いた首領の声が上機嫌なものとなった。
「それでは今関東にいる者達が戻って来たならばすぐに出すがよい」
「わかりました」
 彼はそれに応えた。
「そして三影にも伝えよ」
 首領の指示は続く。
「すぐにここに戻るようにな」
「わかりました。ではその様に言っておきます」
「頼むぞ」
 首領は厳粛な声で言った。
「そしてだ」
「はい」
 話はこれで終わりではなかった。
「今村雨は何処にいるのだ」
「ハッ、それですが」
 彼はそれを受けて答えた。
「今は津の方にいるようです」
「あの街にか」
「はい、そこでこちらを探っておるようです。どうやら我等が動くものと思っているようです」
「そうか、ここのすぐ側にはいないのだな」
「はい」
 彼は答えた。
「如何致しましょうか」
「放っておけ。だがあの場所にいるとなると少し厄介だな。戻って来る者への障壁となる」
「陽動の兵を送りましょうか」
「そうだな。だがそれは僅かでよいぞ。今は少しでも多くの兵が欲しい」
「ハッ」
 大使はその言葉に頷いた。
「ではそのように致します」
「うむ。松坂にはまだ何人かいたな。そこの者を使え」
「松坂の」
「そうだ。あそこは津に近い。どうだろうか」
「それでしたら私に考えがあります」
 大使はそれを受けて上奏した。顔を上げる。
「どのような考えだ」
「はい、あの地に我等の防衛線を築いておくのです。如何でしょうか」
「松坂にか」
「そうです、あの地は交通の要衝。必ずやライダー達も通りましょう。悪くはないかと」
「ううむ」 
 首領はそれを聞いて考える言葉を漏らした。それから大使に対して言った。
「よし、やってみるがいい。確かにあの地は重要だ」
「ハッ」
「だが急ぐようにな。既に他のライダー達がこの地に迫って来ているということを忘れるな」
「それは承知しております」
「ならばよい。ではすぐに取り掛かれ。だがこの地の防衛も忘れてはならんぞ」
「それは三影に任せましょう。私は松坂を担当します」
「そうか。では松坂は貴様に任せよう」
「有り難き幸せ」
「それではすぐに取り掛かるがよい。そしてライダーを倒すのだ」
「ハッ」
 大使はそこで立ち上がった。
「この暗闇大使、必ずやバダンの理想世界を築き上げて御覧に入れましょう」
「期待しているぞ、フフフ」
 首領は笑った。その声が部屋の中に木霊する。
「全てはこの地からはじまるのだ」
「はい、バダンの世界が」
「ショッカーよりの夢が遂に叶うのだ。私が神となる日がな。フフフフフ」
 首領の無気味な声が部屋の中に響き続けた。暗闇大使はそれを聞きながら凄みのある笑みを浮かべていた。

 村雨はバダンの情報通り津市にいた。そしてその街中を歩き回っていた。
「参ったな、ここで落ち合う約束だったのに」
 彼は誰かを探していた。その眉に不安の色がよぎる。
 商店街に入った。すると後ろから気配がした。
「ムッ」
 それを感じてすぐに振り向く。するとそこに彼がいた。
「やあ」
 それは役であった。彼は村雨の肩を叩いて微笑んだ。
「探されたようですね」
「ええ」
 彼は苦笑いしてそれに答えた。
「今まで何処に行ってたんですか」
「ちょっとね」
 彼はそれに対しては答えをはぐらかせた。そして自分の話に持って行った。
「ところでバダンがこの津に来ているのは御存知ですか?」
「本当ですか、それは」
 彼はそれを聞いて顔色を変えた。
「ええ。ほら、見て下さい」
 彼はそこで親指で後ろを指し示した。
「妙な行動をとっている人が何人かいるでしょう」
「確かに」
 どうやら彼等をつけているようである。外見は普通の者と変わりはないが気配が明らかに違っていた。
「場所を変えますか」
 村雨はそれを見て役に対して囁いた。
「そうするべきかと」
 彼もそれに賛成した。そして二人はそこから立ち去った。脇道に入り込みそこから追っ手をまく。そして別の道に出た。そこで歩きながら話をした。当然周囲への警戒は怠ってはいない。
「そして松坂には暗闇大使が来ているようです」
「あの男がですか」
「はい。どうやらあの街に防衛拠点を置くようですね」
「そうですか。あの街は交通の要衝ですからね」
 松坂は伊勢と奈良、そして愛知を結ぶ場所にある。古来より交通の要地であった。
「おそらく彼はそこで最初の決戦を挑むものと思われます」
「伊勢に通すことは許さない、と」
「そうでしょうね。ただ伊勢もかなりの防衛が施されているでしょうが」
「では海から攻めるのも難しいでしょうか」
「残念ながら。おそらく彼等の守りはかなり堅いでしょう。海から攻めるのは危険です」
「そうですか」
「これは既に他のライダーの皆さんにも伝えておきました。彼等は陸路でこちらに来られることになりました」
「陸からですか」
「はい。何処かで落ち合うべきでしょうね」
「それならこの津は少し危険でしょうか」
「多分。北の方が宜しいかと」
「北ですか」
 村雨はそれを受けて少し考え込んだ。
「それでしたら」
 そして口を再び開いた。
「四日市辺りはどうですかね。あそこからですと攻撃にも移り易い距離にありますし」
「ええ、それでいいと思います」
 役はそれに対して頷いた。
「ただ関東にいるバダンの動きが気になりますね」
「ええ」
 それは村雨も気にしていた。
「彼等が陸路で来るとなると厄介ですね。俺達は挟み撃ちに遭う危険性があります」
「はい、それを避ける為にもこの津にいるのは危ないでしょうね」
「やはりここを移りますか」
「そうするべきかと。幸いこの三重県には隠れる場所も多いですし」
 三重県は東には海を持つが西には山が多い。かなり地形が複雑なのである。
「隠れるとしたら何処がいいですかね」
「そうですね」
 これは役も一緒になって考えた。
「青山峠にでも行きますか」
「青山峠」
「はい、あそこは山に覆われていますから。隠れるにはもってこいです」
「ふむ」
 村雨はそれを聞いてまた考えに入った。
「四日市にも近いですか?そこは」
「ええ、マシンだとすぐですよ」
「そうですか。それなら問題はありませんね」
「はい」
「ではそこにしましょう」
「わかりました」
 こうして二人は青山峠に向かった。そしてそこで他のライダー達を待つと共に身を隠すことにしたのであった。バダンは彼等の姿が消えたのを見てすぐに津市の追っ手を他に向けた。だが彼等を見つけることはできなかった。
「何処に消えたか」
 本部で防衛の指揮にあたっている三影にもそのことは耳に入っていた。
「ハッ、その件に関しては既に津に向かった者に捜索を命じておりますが」
「消息は掴めていないのだな」
「はい」
 報告をした戦闘員は答えた。
「残念ながら今のところは」
「そうか」
 三影はそれを受けて頷いた。
「こちらに奇襲を仕掛けるようなことはないでしょうか」
 ここで別の戦闘員が尋ねてきた。だが三影はそれには首を横に振った。
「それはないだろう」
「そうですか」
「今ここには関東に向けた者が戻ってきつつある。それに海と松坂を押さえてある。そうそう奇襲を仕掛けてはこれない」
 彼は言った。
「ここの防御もかなり堅くなっている。そして警備もな。これで襲撃を仕掛けるのはゼクロスですら不可能だ。そのうえ」
「そのうえ?」
「他のライダー達も来ているのだろう。おそらく奴等との合流を優先させる筈だ。今ここへの奇襲は有り得ない」
「わかりました」
 その戦闘員はそれを聞いて納得した。
「しかし所在が掴めないのではやはり危惧は拭えません。何としても探し出しておかなくては」
「いざという時にも危険です」
「そうだな。ゼクロスの能力を考えると」
 村雨はそれに納得した。ここで他の戦闘員に問うた。
「今他の九人のライダー達は何処にいる」
「ハッ」
 それに対して彼の後ろにいる戦闘員が敬礼をして答えた。
「今彼等は静岡におります。まずはライダー達が先行しています」
「ライダー達がか」
「はい、そしてその後ろに立花藤兵衛や谷源次郎達が続いております。戦える者は全て来ているようです」
「ふむ」
 三影はそれを聞いて思索に入った。
「そして同志達は今何処だ」
「はい、それですが」
 彼は言おうとした。その時指令室に音が鳴った。
「ムッ」
 警戒警報の音ではなかった。それとは別の音であった。
「何だ!?」
「落ち着け、敵ではない」
 三影は身構えた部下達に対して言った。
「戻って来たようだな」
「関東の同志達がですか」
「うむ。それ以外にはない」
 彼はそれに答えた。
「思ったより早かったな」
「はい」
「ライダー達の動きに気をとられるのではないかと思っていたが」
「それは杞憂だったようですね」
「うむ。では彼等を迎えよう」
「ハッ」
 三影は戦闘員達の一部を引き連れ指令室を後にした。そして基地の入口に向かった。

 岩場に彼等はいた。そこから上陸していた。
「足下に気をつけなさい」
 ジェラインド=ブリックことヤマアラシロイドは他の者に対して言った。
「ここで怪我をしては何もなりませんからね」
「ハッ」
 戦闘員達がそれに頷く。他の改造人間達もそこにいた。
「同志ヤマアラシロイドよ」
 タカロイドが彼に声をかけた。今は人間の姿であった。
「はい」
 ヤマアラシロイドはそれを受けて彼に顔を向けた。
「今この基地に暗闇大使がおられぬというのは本当か?」
「そのようですね」
 彼はそれに答えた。
「どうやら松坂におられるようです」
「そうか」
 彼はそれを聞いた後で頷いた。
「あの地に防衛線でも築いておられるのかな」
「詳しいことはわかりませんが」
 彼もまだそこまでは聞いてはいなかった。
「おそらくそうではないでしょうか」
 だがそれ位の予想はつけることはできる。そしてそれは当たっていた。
「ならば我等もそこに行くことにるかもな」
 アメンバロイドがここで入って来た。
「そこでライダー達を食い止めるということも可能だからな」
「そうですね。伊勢に入る前に彼等を倒せることができればそれでよし。ただ」
「ただ、どうした?ドクガロイド」
「いえ」
 彼はジゴクロイドの問いに言葉を濁した。
「そうそう楽観はできないだろうな、と思いまして」
「確かにな」
 ここで前から声がした。
「今は決戦の時だ。ほんの少しの油断が命取りとなるだろう」
 そこには三影がいた。彼は基地の入口の前で立っていた。
「ライダー達は手強い。奴等に勝つ為には少しでも力が必要だというのが首領の御考えだ」
 彼は同志達に対して言った。
「そして今貴様等の力が必要なのだ。いいわ」
「無論」
 ヤマアラシロイドだけではない。他の者達もそれに答えた。
 ニヤリと笑う。三影もそれに対して不敵な笑みで返す。
「わかっているな。ならばいい」
 そして同志達に対してまた言った。
「入ろう。首領がお待ちだ」
「うむ」
 そして彼等は中に入った。そして首領への謁見を行うのであった。
 謁見を終えた彼等はある部屋に入った。そこは奈落であった。
 暗闇が底まで続いている。そしてその果ては見えない。ただ闇があるばかりであった。
 そこから円柱がそびえ立っている。それはそれぞれの長さで段のようになっていた。
「でははじめましょうか」
 ヤマアラシロイドが他の者に声をかける。
「ああ」
 彼等はそれを了承する。そして彼等は跳びそれぞれの席にそれぞれの姿勢で位置した。
「三影、いやタイガーロイドは」
 カニロイドが辺りを見回して問うた。
「仕事だ。この基地の防衛を備えているらしい。今は来れないとのことだ」
「そうか」
 彼はクモロイドの言葉に頷いた。
「ならばよい。だがあの男はどうも我等とは少し違うな」
「それは当然よ」
 バラロイドがそれに答えた。
「彼は元々私達とは違うから。生粋のバダンの者なのよ」
「確かに」
 カメレオロイドが闇の中からスッと姿を現わした。
「彼は私達の様に選ばれたのとはまた違う。バダンを選んだのだからな」
「そしてバダンはそれを認めた」
 カマキロイドがそれを聞いて呟いた。
「彼自身を」
「そういうことですね」
 ヤマアラシロイドがそれを総括するようにして言葉を発した。
「私達はバダンに選ばれた。だが彼は選んだ。違うのは当然でしょう」
「だが我等があの男より劣っているわけではないがな」
 アメンバロイドがそこで言った。
「それは言うまでもない」
 トカゲロイドもそれに同意する。
「しかしあの男の気は我等とはまた違う。何かが違うのだ」
「邪悪さがないといいまようかね」
 ヤマアラシロイドの言葉が本質を衝いていた。
「純粋なものを感じます、今も。そしてその向けられる先は」
「あの男か」
「はい、彼です」
 彼は同志達に答えた。
「彼の目はあの時から変わってはいませんよ」
「確かにな」
 それは彼等にもよくわかっていた。
「では今ここにいるのは何かと不満かもな。すぐにでて出向きたいだろうから」
「それはどうでしょうか」
 しかしヤマアラシロイドはそれには賛同しなかった。
「どういうことだ」
 彼等はそれに対して問わずにはいられなかった。そして問うた。
「牙も爪も時には研ぐ必要があるということです」
 彼は怪しい笑みを浮かべてそれに答えた。
「ましてや彼は虎なのですから。全ての獣の頂点に立つ王者なのですよ」
「ううむ」
 実際に虎の力はかなり大きい。よく獅子と比較されるがその身体は虎の方が遙かに大きい。そしてその力もだ。虎の強さはそれだけのものがあるのだ。
「そして虎は誇り高い。時も知っています」
「時もか」
「そうです。今は戦いの時ではありません。ですが時が来たならば」
「狩る」
「はい」
 彼は同志達の言葉に頷いた。
「それで全てが終わるでしょう。ふふふ」
 彼は再び怪しい笑みを発した。それは闇の中に響いていた。
 彼等はそのまま闇の中に消えた。そして哄笑だけがそこに響いていた。

 ライダー達はこの時静岡を過ぎ愛知に入っていた。
 九台のバイクが進む。その先頭には本郷がいる。
 その横には一文字がいる。そして彼等に導かれるようにして他のライダー達が続く。
 風見と神、アマゾンと城、筑波と沖。結城は最後尾にいた。
 豊橋に着いた。彼等はそこで一旦止まった。ドライブインに入った。
「ふう」
 バイクから降りヘルメットを外す。そして中に入った。
 大きなテーブルに着く。そしてようやく一息ついた。
「どうやら奴等はもう伊勢に入ったようだな」
 まずは一文字が口を開いた。
「そうみたいですね。ここか渥美から海で行ったようです」
 神が答えた。
「だろうな。一番近いからな」
 本郷がそれを聞いて言った。その顔はやはり真剣なものであった。
「じゃあこっちも急がないとな。おやっさん達は今どの辺りだ?」
「静岡を出たところだ。そんなに離れてはいない」
 結城が風見の問いに答えた。
「じゃあ問題はありませんね。問題があるとしたら」
 沖が言った。
「良の奴だな。何処にいるか、だ」
 城がそこで口を入れてきた。皆それに頷いた。
「多分もう津にはいないでしょうね」
 筑波が考えながら自分の考えを述べる。
「だろうな。そのまま留まるには危険だ。バダンの奴等と挟み撃ちに遭う可能性があったからな」
「だとすれば何処だ」
 ダブルライダーはそう言いながら考え込む。ここでアマゾンが口を開いた。
「これアマゾンの予想」
「おお」
 一同は彼に目を向けた。
「良は多分山の方にいる。そういう予感する」
「山か」
 彼等はそれを聞き顔を見合わせた。
「だとしたら大体予想はつくな」
「ええ。三重で山と言えば」
 西の方しかない。そしておそらく伊勢より北だ。ならば大体彼がいそうな場所が絞れてくる。
 地図を取り出した。そしてそれを見ながら色々と話をする。そして遂に結論が出た。
「ここだ」
 彼等は一斉にある場所を指差した。
「そこ以外には考えられないな」
「ああ」
 皆同じ考えであった。そして彼等は食事を終えた後一斉に席を立った。
「行くか」
「うむ」
「まずは合流だ」
 そして彼等は戦場に向かうのであった。爆音が道に轟いた。
 
 その頃伊勢では謎のテロが起こっていた。伊勢のとあるテーマパークが謎の爆発を起こしたのだ。
 建物は全壊した。幸い客は全く入っておらず犠牲者は少なかった。だがここで経営している者達の不正や利権が露になり、このことで大量の逮捕者が出た。
「わしは悪くない!悪いのはあいつ等だ!」
 その総責任者であるとある大企業の社長がテレビの前に醜く叫ぶ。彼は多くの社員をリストラし、関連企業を次々と潰してこのテーマパークに巨大な利権を置いていたのだ。そしてそれを貪り続けていた。
 この男は会社にどれだけの損害を与えても平然と居座っていた。そして私腹を肥やし続けていたのだ。
 彼とその一味に対する批判は頂点に達していた。とりわけ彼にリストラされた者や関連会社を潰された者達の怒りは凄まじかった。そして遂に正義の裁きが下された。
 彼はある日世論の追求を逃れて一人愛人のマンションで酒を飲んでいた。
「わしの何が悪いんじゃ」
 古い歴史ある街に彼はいた。この様な愚劣な男には相応しくはない街である。
「私腹を肥やして何が悪い。わしの様に偉い人間は何をしても許されるんじゃ」
 彼はそうした考えの人間であった。経営者というよりは犯罪者といった方がいい顔立ちをしている。醜く、下衆な顔をしていた。
「おい」
 彼は酒を飲みながら愛人を呼んだ。
「ツマミを持って来い」
 しかし返事はなかった。そのかわりに何かが彼のところに投げ込まれた。
「ん!?」
 泥酔しきった目でその投げ込まれたものを見る。それは床にゴロゴロと転がっていた。
「う・・・・・・」
 それは首であった。美しい黒髪の女の首である。言うまでもなく彼の愛人の首であった。
「ひ・・・・・・!」
 彼はそれを見て失禁した。小だけでなく大の方もである。忽ち部屋の中に悪臭が漂う。
 立ち上がった。そして部屋の中を見回す。
「誰じゃ!」
 だが返答はない。次には部屋の灯りが消えた。
 その中で何かが動いた。そしてこの男はその醜い生涯を終えた。
 翌日彼が行方不明になったと新聞で報道があった。そして数日後この愛人のマンションでバラバラ死体となって発見された。世の人々はそれを聞いて喝采を叫んだ。彼の無能で卑劣な部下達は刑務所に入ることになった。そしてそこで徹底的な虐待を受けたという。
「自業自得だな」
 立花はその記事をライトバンの中で読みながら言った。
「悪人の末路なんてこんなもんだ」
「そうでしょうね」
 隣で車を運転している滝がそれに応えた。
「けれどこのテーマパークのテロって臭くないですか?」
「確かにな」
 立花にもそれはわかっていた。
「バダンの仕業だろうな、間違いなく」
「でしょうね。おそらくこれは警告ですよ」
「わし等へのか」
「ええ、他には考えられません」
「だとしたらかなり手荒な警告でんな」
 後ろの席からがんがんじいが顔を出してきた。
「連中らしいと言えばそうでっけど」
「まあな。ただ爆弾を使っただけなのか、記事だとそう書いてあるが」
「まさか」
 ここで一同は顔を暗くさせた。
「ああ、あれを使ってたんじゃないか」
「時空破断システム」
 竜がここで言った。
「あれを使った、と仰りたいのですね」
「テストも兼ねてな。ほら人の全くいない場所だっただろ、テーマパークなのに」
「ええ」
「実験にはもって来いだろ。それに経営している奴等もろくでもない連中だったからそっちに目がいく。実際このテロよりも奴等の悪事の方に目がいってるしな」
「そういえば犯人も捕まっていないですしね」
「犯人は多分バダンじゃないだろうがな」
 立花はそう見ていた。
「これは奴等に恨みを持つ連中だろう。相当汚いことや悪いことをやって私腹を肥やしていたからな。会社の経営まで出鱈目にして」
「とんでもない奴ですね」
「そんな奴はどうなっても自業自得だがな。ただそれでバダンの影が隠れちまうのはな」
「俺達だけしか気付かない、ってことですね」
 ここでチョロも話に入って来た。
「ああ、もっともそれが目的かも知れんがな」
「警告、ですか」
 佐久間がそこで呟いた。
「ああ。バダンの力を見せ付けるって意味でもな。多分使ったのは爆弾じゃない」
「ですね」
 他の者もそれに賛同した。
「ただダミー工作はしているかも知れんがな、テロの現場は」
「他の者が見てもわからないように、ですか」
「奴等ならその程度はやれる」
「確かに」
「だとするとやっぱり伊勢での戦いは決戦になるだろうな」
「ええ」
「気合入れて行くぞ、そして勝つぞ」
「当然ですよ」
 彼等もそれは同じ考えであった。
「バダンをぶっ潰しましょう」
「そして世界に平和を」
「よし」
 立花は彼等の言葉に対して頷いた。
「ライダー達に遅れるなよ。いいな」
「はい!」
 彼等は力強く答えた。戦いの前から士気は既に高かった。
 それはその後ろの車でも同じであった。そこには谷と三人の博士達が乗っていた。
「前の車は元気ですね」
 助手席に座っている志度がそれを見て微笑んでいた。
「でしょうね。あっちには戦闘要員が集まっていますから」
 車を運転する谷がそれを受けて言った。
「血気も盛んですよ」
「立花さんもいますし」
 後ろにいる海堂が言った。
「ははは、確かに」
 伊藤がそれを聞いて笑った。
「あの人は元気ですからね、何時でも。最初御会いした時は驚きましたよ」
「私もですよ」
 志度もそれに同意した。
「谷さんみたいな方ももう一人おられたのですから」
「おいおい、そりゃどういう意味ですか」
 谷がその言葉に口を尖らせた。
「私はそんなに変わってますかね」
「御存知ない」
 三人は呆れた素振りでそう言った。
「またそんなことを仰る」
 谷は口を尖らせた。
「自分ではそうは思ってはいないですけれどね」
「いやいや、御気を悪くされたのでしたら申し訳ない」
「けれど我々にとっては谷さんも立花さんも非常に頼りになる存在なのですよ」
「そうなのですか」
 彼はそれを聞いていささか機嫌を直した。
「だったらいいですけれどね、私みたいなおっちゃこちょいが」
「いえいえ」
 三人は謙遜する谷に対して言った。
「頼りにしてますよ、本当に」
「今回も頼みますから」
 彼等はやはり科学者である。戦闘員達は何とか相手できるにしろ戦いは苦手である。だからこそ谷の様な存在は有り難いのである。
 谷もそれは同じであった。やはり彼等の存在は有り難い。彼等は互いに仲間であるからこそ信頼し合い、助け合っているのである。
 二台の車もまた伊勢に向かっていた。そして戦場に向けて進むのであった。

 その頃村雨と役は青山町にいた。
 ここは木津川が流れる緑の山地である。見渡す限り山が続き緑の木々が生い茂っている。
 二人はその中に潜んでいた。そして時が来るのを待っていた。
「それでもこんな家があるとは思いませんでしたね」
 役は山の中の家のリビングで呟いた。
「ええ」
 その隣の台所から村雨が出て来た。
「どうやら廃家みたいですけれどね。それでも生活するには支障はありませんよ」
 誰かの別荘であったのだろうか。傷んではいるがかなりいい造りの家である。
「確かに。少なくとも雨露はしのげますし」
「それだけでも大きいですね」
 二人はそう話しながら食事の用意をしていた。見ればカレーである。
「それにわりかし近くに店もありますし」
「ええ」
 道に出ればコンビニもある。二人はそこで色々と買い物もしているのだ。
「姿を隠すのにも苦労しませんね」
「ただ用心は必要ですけれどね」
 ハンバーグカレーであった。ハンバーグはレトルトのものである。二人はそのハンバーグを切ってカレーと共に口に入れる。
「美味い」
 村雨はそれを一口食べてそう言った。
「いいですね。実はハンバーグカレーは食べるのははじめてですが」
「そうなんですか」
「はい。ハンバーグ自体あまり食べたことがありませんので」
「へえ」
 これは少し意外であった。
「タルタルステーキの方が多いですかね、食べてきたのは」
「タルタルステーキですか」
 馬の生肉を細かく刻んで卵や玉葱の細かく切ったものと混ぜて食べる料理である。元々モンゴルで食べられていた料理がもととなっている。
「あれも美味しいですよ。馬の肉は癖もありませんし」
「そうですね」
 馬肉は村雨も食べたことがある。
「俺は馬刺しが好きですね」
「あれもいいですね。大蒜醤油で」
「はい。一度食べたら病みつきになりますよね」
 村雨の顔がほころんでいた。
「あれが好きでして」
「私もですよ。日本ではあれが好きなだけ食べられるのですから:
「そういえば他の国ではあまり食べないですね」
「ええ、生肉自体が」
「確かに。東南アジアで生の魚食べて驚かれた日本人がいたそうですね。それも鯛を」
「そうらしいですね。まあそうでしょう」
 役は首を縦に振りながらそう言った。
「生の肉や魚をあれだけ食べるのは日本だけですから」
「俺も外国でそれ見てびっくりしましたね。生で食べるのを凄く嫌がるんで」
「大昔はそうも言っていられなかったのですけれどね」
 役はここで微かに微笑みながら言った。
「人も豊かになったものですよ、本当に」
 その眼は不自然な程温かかった。まるで親が子を見るようであった。
(・・・・・・・・・)
 村雨はそれをやはり違和感を覚えながら見た。彼には何かあるのだろうと思えてならなかった。
「さて」
 一足先に食べ終えた役は彼に声をかけた。
「食べ終わったら行きますか」
「はい」
 ここで丁度彼も食べ終えた。
「食器を洗ってから」
「おっと、そうでした」
 そして二人は食器を洗った。これも見れば何処かで買った安いものである。中には紙のものもある。
 洗いを終えると彼等は家を出た。そして山の中に入って行った。
 その山の中で蠢く影がいた。

「ここにいるのか」
 それはバダンの戦闘員達であった。
「間違いない」
 その中の一人が答えた。
「家に灯りが点いていたからな」
「他の者ではないな」
「ああ、間違いない」
 彼はそれに頷いた。
「二人の顔も見た、この目でな」
「そうか、なら間違いないな」
 彼等はそれを聞いて頷いた。
「では行くとしよう。だがわかっているな」
「無論だ。我々の任務はあくまで偵察だ。彼等を倒すことではない」
「そういうことだ」
 そして彼等は木々の中に消えていった。
 村雨と役は山の中を歩き回っていた。そして青山公園に辿り着いた。
 ここは青山の山地を公園にした場所である。風光明媚であり緑豊かな公園である。
 二人はここで何か打ち合わせをしていた。
「ではもうすぐですね」
「はい」
 彼等は椅子に座り話をしている。
「それでは我々も」
「ええ。時は来ました」
 何かがあったようである。二人は頷き合う。
 それから立ち上がる。そして再び公園の中に消えた。
「あそこだ」
 それを遠くから見る影達がいた。あの戦闘員達である。
「遂に尻尾を掴んだな」
「うむ」
 彼等もまた頷き合う。そして姿を消した。
「本部に連絡だ」
 そう囁き合っていた。そのまま消えていった。
 それから数日経った。ここに何人かの異様な風采の者達が入って来た。
「行きましょう」
「おお」
「了解」
 彼等はそれぞれに別れた。そして個々に山に入っていくのであった。
 その時村雨と役はあの家にいた。丁度朝になった時であった。
「お早うございます」
 村雨は居間でソファーに横になって寝ていた。家に残されていた古い皮のソファーである。
「はい」
 役は二階から降りて来た。彼は二階で寝ていた。これはここに隠れる時に二人で決めたことであった。一人が互いに警戒をする為である。
 一階は村雨が担当する。そして二階は役。彼等はこうして手分けしてバダンを警戒していたのだ。
「ところで」
 役が彼に声をかけた。
「わかっていますよ」
 村雨はそれに対して引き締まった顔で答えた。
「では」
「はい」
 村雨は起き上がった。そして二人はすぐに家を出た。そしてそのまま森に入って行った。
 二人は青山公園に出た。森から出るとすぐに日差しに迎え入れられた。そして他の者達にも。
「お待ちしておりましたよ」
 そこで誰かの声がした。
「その声は」
 村雨はその声を聞くとすぐに身構えた。そして辺りを見回した。
 そこに彼等はいた。皆既にゼクロスを取り囲んでいる。
 村雨と正対する位置にヤマアラシロイドがいた。彼は村雨を見ながら不敵な笑みを浮かべている。
「ふふふふふ」
「何がおかしい」
「いえ、楽しいのですよ」
 彼は余裕に満ちた様子でそう返した。
「貴方と再び御会いできたのがね」
「戯れ言を」
「戯れ言ではありませんよ」
 彼は言った。
「ようやくあの時の戦いの続きができるのですからね」
「横須賀での時か」
「はい」
 彼は答えた。
「まさかお忘れになったわけではないでしょう。貴方が記憶を取り戻された時なのですから」
「確かにな」
「そしてこれも」
 彼はここで腕を振るった。するとその手の中に一本の槍の様な針が現われた。
 そしてそれを村雨に向けて投げた。しかし村雨はそれを上に跳んでかわした。
「どういうつもりだ」
「挨拶ですよ。ほんのね」
 彼は笑いながらそう言った。
「これから貴方を地獄にお送りする前の」
「どうやら復活しても大言する癖はなおっていないようだな」
「大言!?とんでもない」
 彼はやはり笑いながらそう言った。
「真実ですよ。私が言う事は全て真実です」
「バダンが真実なぞ言うのか」
「ええ。何故なら」
 彼の後ろにいる他の者達も動いた。
「貴方がここで死ぬのも事実だからです」
「やってみるか」
「ええ」
 彼はそう言いながらニヤリと笑った。
「今ここでね」
 左手を広げて顔の前にかざす。するとまず目が変わった。
 髪が伸びそれが針になる。そして服が徐々に化け物の身体になっていく。
 他の者達も同じであった。皆バダンの改造人間に変身していた。
 そして戦闘員達も姿を現わす。彼等もまた村雨と役を取り囲んだ。
「さあ貴方も」 
 ヤマアラシロイドは村雨に対して言った。
「変身しなさい。そして私達に倒されるのです」
「倒されるつもりは毛頭ないが」
 彼はゆっくりと前に出ながら言った。
「だが変身するのは同意だ。言われずともな」
「ふふふ」
「では行くぞ、バダンの者達よ」
 彼はゆっくりと変身の構えに入った。
「ここを逆に貴様等の墓場にしてくれる」

 変・・・・・・
 まずは右手を真横に置く。そしてそこから斜め上四十五度に上げる。そして左手をそれと合わせ垂直にする。
 それから左手を上げて左斜め上に持って行く。右手はそれを合わせて垂直にさせる。
 それと共に身体が変わっていく。銀色になり手足が赤い炎の色になる。だがその先の手袋とブーツは機械の色である。
 ・・・・・・身!
 左手を拳にし、それを脇に入れた。右手はそれと連動し斜め前に突き出す。
 顔を赤い仮面が覆った。まずは右を、そして左を。眼が緑になった。

 光が彼を覆う。そしてそれが消え去るとそこに赤い機械のライダーがいた。
「トォッ!」
 彼はすぐに跳んだ。そして空中で攻撃の態勢に入る。
「無駄なことを」
 ヤマアラシロイドはそれを見上げて不敵に笑った。
「空中でも貴方の相手をしてくれる者はおりますよ」
 ここで彼の後ろにいる二体の改造人間が動いた。
「頼みますよ」
「了解」
「わかりました」
 タカロイドとドクガロイドがすぐに動いた。彼等は翼を羽ばたかせ天にあがった。
「食らえっ!」
 まずはタカロイドが羽根を投げつけてきた。
 だがゼクロスはそれをかわした。空中で身体を捻ったのだ。
「甘いっ!」
「甘いですか!」
 だがそこにドクガロイドが襲い掛かって来る。間髪入れぬ攻撃だ。
「バダンが甘い。よくぞ言ってくれました」
 そう言いながら翼をはばたかせる。
「その言葉、後悔させてあげましょう」
 毒粉を撒き散らしてくる。そしてそれでゼクロスを覆おうとする。
 だがゼクロスはそれに対して急降下してかわした。だがその下には既に他の者が待っていた。
「見え見えだ!」
 そこにはトカゲロイドとクモロイドがいた。
 まずはクモロイドが攻撃を仕掛ける。口から糸を吐いてきた。
「フン!」
 それはゼクロスに向けて襲い掛かる。だがゼクロスはここで足に赤い光を溜めた。
「これでどうだっ!」
 そしてその赤い光で糸を切り裂いた。そのまま急降下を続けクモロイドに攻撃を仕掛けようとする。
 だがそこにトカゲロイドが出て来た。
「させんっ!」
 口から炎を吐く。それでゼクロスを焼き尽くさんとする。
「これは防げまい!」
 だがゼクロスはそれも薙ぎ払った。何と赤い光の足でその炎を断ち切ったのである。
「何と!」
「この程度の炎で!」
 そのまま急降下を仕掛ける。そしてこの二体の怪人を倒そうとする。だがそれはならなかった。
「そうはさせないわ」
 横からバラロイドが攻撃を仕掛けてきたのだ。バラの棘の蔦でゼクロスを打とうとする。
「ムッ!」
 それは上からゼクロスに襲い掛かってきた。彼は止むを得なくそちらに攻撃を向けた。
 腕に光を集める。それでバラの蔦を弾き返した。
 そして着地する。攻撃に移る暇もなくカマキロイドとカメレオロイドが攻撃を仕掛けてきた。
「死ねぃ!」
 鎌と刀が来る。ゼクロスはそれを巧みなフットワークでかわす。そして一旦後方に退いた後攻撃に移ろうとする。
 しかしそこにも怪人達の攻撃が来た。
 ジゴクロイドとアメンバロイドである。拳が彼を襲う。
「クッ!」
 それは普通の拳ではなかった。ボクサー、そして拳法家の拳である。動きが尋常なものではない。
 だがゼクロスはそれを身を屈んでかわす。そして彼等の腹に逆に拳を繰り出そうとする。
 そこで二体の怪人は退いた。そして今度はカニロイドが出て来た。
「これならどうだ!」
 鋏でゼクロスの首を狙う。それで断ち切るつもりなのは言うまでもない。
 彼はその鋏を掴んだ。だがカニロイドは力で押し切ろうとする。
「グググ・・・・・・」
 両者は力比べに入った。互いに一歩も譲らない。
 しかし遂にゼクロスが勝った。彼は怪人を上に放り投げた。
「今だ!」
 そこから飛び上がり蹴りを放とうとする。しかしそこにも邪魔が入った。
「そうはさせません」
 ヤマアラシロイドが来た。彼は棘の槍でゼクロスを追い詰めてきた。
 稲妻の様な速さで槍を繰り出す。それは的確にゼクロスの急所を狙っている。
 ゼクロスはそれを巧みな動きでかわす。だがその後ろに他の怪人達も迫って来ていた。
「危ないゼクロス!」
 役がそれを見て叫ぶ。後ろからバラロイドの蔦が来た。
「喰らえっ!」
「クッ!」
 ゼクロスはそれを避けようとする。だがヤマアラシロイドの槍に気をとられそれは鈍かった。
 間に合わない。蔦がその背を撃つ。そう思われた瞬間であった。
 蔦が弾け飛んだ。何かがその蔦を撃ったのだ。
「ムッ!?」
 バラロイドだけではない。他の怪人達も動きを止めた。
「誰だっ!」
 まずはその弾き飛ばしたものが何であるか確かめようとした。それは一本のロープであった。
「まさか」
「そうだ、そのまさかだ」
 左手からあの声がした。
「バダン、ゼクロスは倒させはしないぞ!」
 そこには仮面ライダー]がいた。彼はライドルロープを手に太陽を背にして立っていた。
「]ライダー!」
 怪人達は彼の姿を見て思わず叫んだ。
「どうしてここに!」
「貴様等の行動なぞすぐにわかることだ。もっとも今回はゼクロスと合流する為にここに来たのだがな」
 彼はライドルをスティックに換えながらそう答えた。
「さてと」
 彼は跳躍してゼクロスの側に来た。
「加勢するぞ、ゼクロス。もう安心していいぞ」
「申し訳ありません」
 ゼクロスは彼に対して礼を述べた。だが]はそれに対して言った。
「礼はいい。今はこの連中を退けることだけを考えよう」
「はい」
 ゼクロスはそれに答えた。そして彼もナイフを取り出した。
「さあ来い」
 彼等は背中合わせに取り囲む怪人達と対峙した。彼等はジリジリと睨み合う。
「フン、たった二人だ。どうということはない」
 トカゲロイドがそう言った。
「そうだな、確かに」
 それにジゴクロイドも同調する。
「ならばさっきと大して変わらん。二手に別れてやるぞ」
「うむ」
 怪人達はその言葉通り二手に別れようとする。だがここで]ライダーが言った。
「誰が俺一人だけだと言った!?」
「何!?」
 その時だった。怪人達の周りに雷が落ちてきた。
「ムッ!」
「これはまさか!」
 その雷の主が誰か、わからないものはいなかった。
「その通りだ!」
 そこにまた一人ライダーが姿を現わした。彼は雷を全身に纏っていた。
「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ、悪を倒せと俺を呼ぶ!仮面ライダーストロンガー見参!」
「クッ、ストロンガーもか!」
「俺だけではないぞ!」
 ストロンガーが叫ぶ。すると林の中からもう一人姿を現わした。
「ケケーーーーーーーッ!」
 それはアマゾンであった。彼は天高く跳躍しゼクロス達のところに来た。
「ゼクロス、もう大丈夫!」
 ゼクロスの前に来てそう言った。
「アマゾンが来たから何も心配いらない!ここは任せる!」
 そして怪人達を睨みつける。その背鰭が激しく動いた。
「おのれ、四人もライダーが」
 ヤマアラシロイドはそれを見て歯噛みした。だがそこでまた声がした。
「ハリケーーーーーン!」
 青いマシンがこちらにやって来る。そしてそこから何者かが跳んだ。
「トォッ!」
 空中で一回転する。そしてストロンガーの横に着地した。
「仮面ライダーX3、貴様等に引導を渡す為に来たぞ!」
「X3もか!」
「そうだ、そして俺もいる!」
 そこでX3に目掛けて放たれたクモロイドの糸を炎が焼き尽くした。
「スーパー1か!」
「その通り!」
 銀のライダーがそこに姿を現わしてきた。
「どうやら間に合ったな」
 そしてまた一人声がした。
「俺も忘れてもらっては困るな」 
 ライダーマンであった。彼はゆっくりとこちらにやって来てスーパー1の横に来た。
「空には俺がいるぞ!」
 怪人達は空を見た。するとそこにはスカイライダーがいた。
「バダン、空は押さえたぞ!」
「おのれ!」
 怪人達は逆に取り囲まれる形となってきた。そしてあの二人が姿を現わした。
「これで全員揃ったな」
「ああ、やっとな」
 二人のライダーが銀のマシンに乗ってこちらにやって来る。彼等はマシンから飛び降りた。
「トゥッ!」
 そしてストロンガー達とは逆の位置に着地する。そして怪人達と対峙した。
「ダブルライダー」
 怪人達の誰かが彼等の名を呼んだ。
「そうだ」
 そして彼等はそれに答えた。
「ゼクロスと合流する為にここへ来たのだがな。だが貴様等までいるとは思わなかった」
「戦いは先になると思っていたが遭ったからには仕方がない。ここで決着をつけさせてもらうか」
 ライダー達はその言葉を合図にするかのように構えをとった。そして怪人達に向かい合う。
「フフフ、面白い」
 だがヤマアラシロイドはここで余裕の笑みを浮かべた。
「我々にとっても好都合ですね、ここで貴方達と戦えるとは」
「どういう意味だ」
 X3がそれに問うた。
「貴方達の首級を挙げることができるからですよ。そしてそれを偉大なる我等が首領に献上する」
「あの首領にか」
「ええ。それでバダンの世界征服は成ったも同然です。貴方達は我等が理想世界の為に礎となるのです。感謝しなさい」
「戯れ言を」
 ゼクロスがそれを聞いて言った。
「我々は貴様等に倒される為に生きているわけではない」
「その通り、むしろその逆だ」
 二号が言った。
「貴様等を倒すことこそ我等が使命、それは決して変わることがない」
「確かに」
 ヤマアラシロイドはそれでもなお笑っていた。
「しかしそれは我々にとっても同じことなのです」
「所詮戦うしかないということか」
「まあそういうことになるでしょう」
 スーパー1に言葉を返した。
「そして我々はこれ以上貴方達とお話するつもりはありません」
「やるということか」
「ええ」
 ]ライダーの問いに答えた。
「今更言う必要も無いでしょう、それは」
「確かにな」
 スカイライダーが着地してきた。
「ではここで決着をつけようか」
「グルル」
 一号とアマゾンが再び構えをとる。他のライダー達もだ。
「それは我等とて望むところ」
 怪人達も構えに入った。そして両者は睨み合いをはじめた。その時であった。
「同志達よ」
 そこでしわがれた低い声がした。
「その声は」
 ダブルライダーがまず反応した。そして他のライダー達も続いた。怪人達もである。
「フフフ、やはり貴様等がまず振り向いたか」
 暗闇大使はそれを見て満足したように笑った。
「どうやらわしはダモンとは声まで似ているようだな従兄弟だから当然か」
「何をしに来た」
 ゼクロスが彼に問うた。
「まさか貴様も戦うつもりか」
「そうして欲しいか?」
 彼は不敵な様子でそれにこたえた。
「ならばそうしてもよいがな」
「ムッ」
 ゼクロスは彼と向かい合った。だが彼は攻撃を仕掛けては来なかった。構えもとってはいない。
「どういうつもりだ」
「これでわかるだろう」
 暗闇大使は構えをとっていないことでそれを示した。
「今は貴様等と戦うつもりはないということだ」
「どういうことだ」
「まあそうつっかかるな。わしとて戦いは心得ている」
 そう言いながら怪人達に顔を向けた。
「今は下がるがいい。よいな」
「しかし」
 だが彼等はそれに抵抗を示す。大使はそんな彼等に対して言った。
「同志達よ」
 その時目が怪しく光った。
「偉大なる我等が首領の御命令である。それ以上は言わぬぞ」
「首領の」
「そうだ。わかったな」
「はい」
 彼等は頭を下げた。そして変身を解いた。
「先に行くがいい。ここはわしに任せよ」
「ハッ」
 怪人達は姿を消した。そして大使と戦闘員だけが残った。その戦闘員達も暗闇大使の側に来た。
「さてライダー達よ」
 彼はライダー達と正対した。
「よくぞここまで来た。この伊勢までな」
「伊勢か」
「そうだ。ここに我等の本拠地があることは既に知っているな」
「無論、だからこそ来たのだ」
「貴様等を倒す為にな」
「威勢がいい。やはりこうではなくてはな」
 暗闇大使は余裕に満ちた笑いを発した。
「面白くとも何ともないわ」
「戯れ言はいい。どういうつもりだ」
「どういうつもりか?」
 大使はライダー達のその言葉にもまだ笑っていた。
「それは貴様等が一番わかっていることであろう」
「我々をからかうのもそれまでにしておけ。貴様が腹に一物あるのはもうわかっている」
「買い被ってくれるな、また」
「バダンの大幹部、それがどういったものか俺達がわからないとでも思うか」
 ライダー達はそう反論した。
「ましてや貴様はあの地獄大使の従兄弟、そう簡単に言葉を信じられはせん」
「ダモンのか。かってはそれが怒りの源であったな」
 彼はその名を聞き目を細めた。
「だが今では懐かしい。我が半身であった」
 そしてライダー達を睨みつけた。その目はもう笑っていなかった。
「半身の仇はとらねばならぬな。だがそれは今ではない」
「まだ言うか」
「フン」
 大使はここで彼等を鼻で笑った。
「機が来ておらぬからな。ライダー達よ、松坂に来い」
「松坂」
「そうだ、わしはそこで待っている。バダンの同志達と共にな」
 これは事実上の宣戦布告であった。
「そこで貴様等を倒してくれよう。さあ、来るのか来ないのか」
「言うまでもない」
 ライダー達の返答は決まっていた。
「言われずとも来てやる。暗闇大使」
 ここで彼の名を呼んだ。
「松坂が貴様の最後の地になる。覚悟していろ」
「その言葉、貴様等に返らねばよいがな」
 だが彼の余裕は変わることがなかった。
「バダンの力、見せてやろうぞ」
「望むところだ」
 ライダー達もその宣戦布告を受け取った。こうして両者の最後の戦いが決まった。
「では松坂で会おうぞ」
 そう言うと身体をマントで覆った。そしてその中に消えた。戦闘員達も姿を消した。
「消えたか」
 ライダー達はそれを見送った。後には青山の緑の山々だけが見えている。
「行くか」
「おう」
 ライダー達は口々に言い合った。
「最後の戦いだ」
「これで全てが決まるぞ」
「うむ」
 彼等は頷き合う。そして最終決戦に思いを馳せるのであった。


戦士達の集結   完


                               2004・12・5



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